特許第6097745号(P6097745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6097745-健康的ビスケット 図000005
  • 特許6097745-健康的ビスケット 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097745
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】健康的ビスケット
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/80 20170101AFI20170306BHJP
【FI】
   A21D13/08
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-516327(P2014-516327)
(86)(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公表番号】特表2014-516585(P2014-516585A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012061887
(87)【国際公開番号】WO2012120154
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】11290278.8
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11290279.6
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/498,986
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300063895
【氏名又は名称】ジェネラル ビスキュイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット フォルツ
(72)【発明者】
【氏名】アリエッテ ヴェレル
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ビノイ
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−011741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0073240(US,A1)
【文献】 特開2008−011858(JP,A)
【文献】 特開2000−333614(JP,A)
【文献】 特開2010−263793(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178204(US,A1)
【文献】 特開平06−090654(JP,A)
【文献】 特表2010−502235(JP,A)
【文献】 特表平06−503228(JP,A)
【文献】 わが家の受け継ぐANZACビスケット,cookpad,2009年 8月11日,レシピID:343189
【文献】 柴田茂久、中江利昭,4.1小麦粉の種類,小麦粉製品の知識,株式会社 幸書房,2000年,改訂増補第2刷,p. 67-72
【文献】 山木一史他,北海道産小麦のスポンジケーキへの利用,北海道立食品加工研究センター報告,1996年,No. 2,p. 5-10
【文献】 オートミールのザクザクビスケット ,cookpad,2011年 2月16日,レシピID:1360938,2015/06/26検索,URL,http://cookpad.com/recipe/1360938
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 13/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスケットの総重量に対して、少なくとも29重量%の全粒穀類粉、5重量%から22重量%の脂肪、および多くとも30重量%の糖を含み、ビスケットの利用可能なデンプンの合計に対する徐々に消化可能なデンプンの比率が少なくとも31重量%である、すぐに食べられるビスケットを製造する方法であって、
前記方法は、
前記全粒穀類粉を含む穀類粉を、脂肪および糖、ならびに生地の総重量に対して多くとも8重量%の添加水と混合して、生地を形成する工程と、
前記生地をビスケットの形状に成形する工程と、
前記ビスケットを焼成する工程と
を含み、
前記穀類粉が、前記生地の少なくとも14.5重量%の量の精製穀類粉を含み、
前記精製穀類粉が、NF−ISO−5530−1標準に従ってBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定する場合に55%未満の吸水率を有し、
前記ビスケットが、ビスケット100g当たり少なくとも15.0gの徐々に利用可能なグルコース値を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記全粒穀類粉が、少なくとも2つの異なる種類の全粒穀類粉を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製穀類粉が精製小麦粉であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製小麦粉が、軟質小麦粉、低損傷デンプンの小麦粉、および熱処理小麦粉、ならびにそれら2つ以上の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記成形が、回転式成形であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
回転式成形が、
(i)前記生地を前記ビスケットに成形するための成形シリンダおよび溝付シリンダであって、前記成形シリンダが前記生地を受け入れ、5から15mm、好ましくは10mmの溝を有する前記溝付シリンダが前記成形シリンダ内の前記生地を押し付ける、成形シリンダおよび溝付シリンダ;および任意選択的に、
(ii)前記成形シリンダおよび前記溝付シリンダに供給するための漏斗の役割を果たすホッパ;および/または
(iii)前記ビスケットを離型するための離型ベルト、
を備える回転式成形機を用いて実施され、
前記溝付シリンダと前記成形シリンダの間の速度差が、好ましくは10%未満に維持されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回転式成形機が、前記離型ベルトのための加湿器をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
すぐに食べられるビスケットであって、
前記ビスケットの総重量に対して、少なくとも29重量%の全粒穀類粉、5重量%から22重量%の脂肪、および多くとも30重量%の糖を含み、
前記ビスケットの利用可能なデンプンの合計に対する徐々に消化可能なデンプンの比率が、少なくとも31重量%であり、
100gのビスケット当たり少なくとも15.0gの、徐々に利用可能なグルコースの値を有することを特徴とする、ビスケット。
【請求項9】
前記ビスケットの総重量に対して少なくとも30重量%のデンプンの合計をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のビスケット。
【請求項10】
前記全粒穀類粉が、少なくとも2つの異なる種類の全粒穀類粉を含むことを特徴とする、請求項9に記載のビスケット。
【請求項11】
前記全粒穀類粉が、
全粒小麦粉と、
全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉、全粒エンバク粉、およびそれら2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1種の全粒穀類粉と、
を含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載のビスケット。
【請求項12】
前記全粒小麦粉が、前記全粒穀類粉の多くとも80重量%に相当することを特徴とする、請求項11に記載のビスケット。
【請求項13】
前記全粒穀類粉が、全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉および全粒小麦粉を含むことを特徴とする、請求項10から12のいずれかに記載のビスケット。
【請求項14】
前記ビスケットが全粒穀類フレークをさらに含み、前記全粒穀類フレークの量が、前記ビスケットの総重量に対して、好ましくは多くとも11重量%であることを特徴とする、請求項8から13のいずれかに記載のビスケット。
【請求項15】
前記ビスケットの総重量に対して9重量%から18重量%の脂肪、および/または前記ビスケットの総重量に対して多くとも27重量%の糖を含むことを特徴とする、請求項8から14のいずれかに記載のビスケット。
【請求項16】
フィリング部分、および請求項8から15のいずれかに記載の少なくとも1つのビスケットを含むビスケット部分を含むことを特徴とする、クッキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスケットに関する。より詳細には、本開示は大量の徐放性エネルギーを有する、すぐに食べられるビスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界では、ビスケットは、従来、精製穀物粉から作られる。消費者の健康食品に対する意識の高まりに伴い、全粒穀物粉から作られる食品に対する需要が高まっている。これは、全粒穀物粉の栄養パターンが、精製穀物粉のものよりも健康的であると消費者から見なされているからである。
【0003】
炭水化物の徐放を可能にし、したがって長時間持続するエネルギー放出をするビスケットは、消費者の健康にとって有益であると考えられている。徐々に消化されるデンプン画分(徐々に消化可能なデンプン(slowly digestible starch)またはSDS)は、この長時間持続するエネルギー放出の原因である。ビスケットのような製品は、焼成前にかなりの量の徐々に消化可能なデンプンを含む。しかしながら、この徐々に消化可能なデンプンの量は焼成プロセスの間に減少する。これは、焼成プロセス中のSDSのゼラチン化によるものである。ゼラチン化は、生地混合物中の水の存在のために生じる。ゼラチン化はデンプンの結晶性ドメインの部分溶融を指し、消化率の上昇をもたらす。湿った生地の熱処理中に、デンプン粒は最初膨潤し、次いで徐々にそれらの結晶構造が緩くなり、ついには破裂して、顆粒に含まれる多糖類(アミロースおよびアミロペクチン)の浸出をもたらす。ビスケット生地などの高度な濃縮系において、この一連の事象は、含水量を抑えることによって制限することができるが、結晶性ドメインの進行的な溶融は依然として発生する。
【0004】
全粒穀物粉の使用は、加工可能な生地の形成をさらに困難にする。これは、全粒穀物粉が精製穀物粉とは違って、胚乳に加えて、ふすまおよび胚芽を含んでいるからである。ふすまおよび胚芽は胚乳よりも多くの量の繊維を含んでいるため、より高い保水能力を有する。生地の水和のレベルが同一に保たれた場合、生地はより多い顆粒性の稠度および、より固く乾燥した質感を有し、それは加工をより困難にする。
【0005】
精製穀物粉を含む生地のものと比較して、全粒穀物粉ベースの生地で同一の加工性を維持するために、生地の脂肪含量を増加させることができる。脂肪は可塑剤として作用することにより、低水分レベルでの加工を可能にする。脂肪が穀粉を被覆するため、小麦粉はより少ない水を保持する。保持される水が少ないほど、生地を滑らかにするために利用可能な水がより多くなる。さらに、脂肪はまた生地を滑らかにすることにも寄与する。しかしながら、大量の脂肪の添加は健康的ビスケットの提供とは相容れない。
【0006】
また、生地の糖含量を増加させると、より加工可能な生地をもたらすことができることも知られている。これは糖もまた生地のための可塑剤として作用するからである。しかしながら、大量の糖の添加もまた健康的ビスケットの提供とは相容れない。さらに、糖の添加は利用可能なグルコース(available glucose)含有量を急速に増加させることになる。これは、糖が、急速に消化可能なデンプン(rapidly digestible starch)および糖由来のグルコース単位で構成されてためである。
【0007】
別の解決策としては、生地中にポリオールまたは短鎖可溶性繊維(フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、耐性デキストリンなど)を含めることであろう。ポリオールおよび短鎖可溶性繊維は、加工中の糖の挙動とよく似た挙動をし、それ故に生地の加工性を向上させる。しかしながら、これらの原材料は胃腸耐性の問題を生じ得る。
【0008】
さらに別の解決策は、微粉化ふすま、好ましくは小麦ふすまを使用することである。これは粗いふすまと比較してより低い保水能力を有する。しかしながら、微粉化ふすまを含む生地から作られたビスケットは、全粒穀物製品の典型的な外観を有しておらず、消費者の期待に応えていない。全粒穀物製品の典型的な外観は、一般に、表面上に目に見える茶色っぽいふすま片のある製品である。
【0009】
生地の加工性の悪さを改善するために、当然、生地に水を添加することができる。しかしながら、水はビスケット焼成中にデンプンのゼラチン化を引き起こし、これにより結果的に焼成ビスケット部分における徐々に消化可能なデンプンの含有量が低くなるので望ましくない。したがって、長時間持続するエネルギーの性質が失われ得る。
【0010】
特許文献1において、生地は、70重量%の小麦粉、7重量%のバター、28%の含水量を有する5重量%のフルクトースから作製される。特許文献1は、この配合組成を使用して、徐々に消化可能なデンプンの含有量が多く、健康的と見なすことができるビスケットを得ようと試みている。デンプン製品は、短鎖アミロースにより、少なくとも部分的にゼラチン化または少なくとも部分的に可塑化された生地中で使用される。これは、結果的にアミラーゼによる徐々に消化されるデンプン製品の結晶構造をもたらす。しかしながら、特許文献1のビスケットは、長時間持続するエネルギーの基準を満たしていない。
【0011】
低い水和を保ちながら高いレベルの徐々に消化可能なデンプンを維持するための更なる解決策は、生地中に天然デンプンを添加することを含む。しかしながら、天然デンプンはビスケットに粘着性のある食感を与え、ビスケットは溶けるようには思われないであろう。さらに、この解決策は、ビスケットの全粒穀類の合計含有量を減少させ、したがって健康的ビスケットを提供するという目的に反する。
【0012】
フレークの使用はSDS含有量を改善することができる。フレーク由来のデンプンは、生地中において任意に添加された水(以下、添加水)との接触がより少なく、それ故に例えば、細挽き穀物粉中のデンプンよりもゼラチン化の程度は少ない。その結果、フレーク・デンプンは徐々に利用可能なデンプン(slowly available starch)の高い値を維持することを助けるための良好な候補である。フレークはまた、穀物粉よりも必要とする水和は少ない。しかしながら、ビスケットにあまりに多いフレークを使用することは理想的でない。消費者はビスケット中の高いフレーク含有量を期待していないからである。あまりに多いフレークを含むこれらのビスケットの質感は過度に噛み応えがあり腰が強すぎて、ビスケットの一部は歯に張り付いたままとなる。特に、これらのビスケットは、より高密度で薄片状/砂状の質感を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/134392号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】"Rapidly Available Glucose in Foods : an In Vitro Measurement that Reflects the Glycaemic Response", Englyst et al., Am.J.Clin.Nutr., 1996(3), 69(3), 448-454
【非特許文献2】"Glycaemic Index of Cereal Products Explained by Their Content of Rapidly and Slowly Available Glucose", Englyst et al., Br.J.Nutr., 2003(3), 89(3), 329-340
【非特許文献3】"Measurement of Rapidly Available Glucose (RAG) in Plant Foods : a Potential In Vitro Predictor of the Glycaemic Response", Englyst et al., Br.J.Nutr., 1996(3), 75(3), 327-337
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、従来技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組む、またはそれに対する商業的に有用な代替案を少なくとも提供する、改良されたビスケットが要求されている。
【0016】
特に、脂肪および糖に関して期待される栄養的側面を満たしており、従来のビスケットと比較して多くの量の徐々に消化可能なデンプンを含むビスケットを製造する方法が依然として必要とされている。特に、本開示は、長時間持続するエネルギーおよび健康的ビスケットのための栄養的な基準を満たすビスケットを提供することを目的とする。これまで、嗜好性と加工性を損なうことなく、このようなビスケットを得ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の態様において、本開示は、ビスケットの総重量に対して、少なくとも29重量%の全粒穀類粉、5重量%から22重量%の脂肪、および多くとも30重量%の糖を含み、ビスケットの利用可能なデンプンの合計に対する徐々に消化可能なデンプンの比率が少なくとも31重量%である、すぐに食べられるビスケットを製造する方法を提供し、
該方法は、
全粒穀類粉を含む穀類粉を、脂肪および糖、ならびに生地の総重量に対して多くとも8重量%の添加水と混合して、生地を形成する工程と、
生地をビスケットの形状に成形する工程と、
ビスケットを焼成する工程と、を含み、 前記穀類粉が、前記生地の少なくとも14.5重量%の量の精製穀類粉を含み、該精製穀粉が、NF−ISO−5530−1標準に従ってBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定した場合に55%未満の吸水率を有する、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示について、非限定的な例によって与えられた、図に関連して説明する。
図1】本開示の方法の好ましい実施形態の種々の工程を示すフローチャートである。
図2】本開示の方法のために使用される回転式成形機の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本開示をさらに説明する。以下では、本開示の種々の態様をより詳細に定義する。明確に別途指摘しない限り、定義される各態様は、任意の1または複数の他の態様と組み合わせてもよい。特に、好ましい、または有利なものとして示される任意の特徴は、好ましい、または有利なものとして示される任意の1または複数の他の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
ビスケットは焼成した、食用の、穀類ベースの製品である。それらは一般に低水分でサクサクした質感を有している。それらは通常小さく、ベーキングパウダー、重曹、または時に酵母を用いて膨らませている。それらは一般に甘い。それらは包含物およびフィリングを含むことができる。ビスケットは、それらが販売や消費に適した完成した最終的な製品であるという意味において、すぐに食べることができる状態にある。
【0021】
当該すぐに食べられるビスケットは、少なくとも31重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは少なくとも38重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の、利用可能なデンプンの合計に対する徐々に消化可能なデンプンの比率(SDS/(SDS+RDS))を有する。消化可能性から、最も高い比率は好ましくは多くとも80重量%であろう。利用可能なデンプンの合計は、徐々に消化可能なデンプン(SDS)および急速に消化可能なデンプン(RDS)を含む。利用可能なデンプンの合計とデンプンの合計の違いは、利用可能なデンプンの合計が、消化できない、すなわち小腸での消化から逃れる難消化性デンプンを含まないことである。
【0022】
徐々に消化可能なデンプンは、急速に消化可能なデンプンよりも健康上の有益性が高いと考えられている。実際、急速に消化可能なデンプンは、消化中に迅速にグルコースに分解され、これにより急速に体内で使用できるようになる。したがって、血糖値は急激に上昇する。これは、脂肪組織におけるいくらかの貯蔵につながるインスリン送達を引き起こし得る。その結果、エネルギーは短時間においてのみ供給されることが可能である。逆に、徐々に消化可能なデンプンは徐々に体に取り入れられる。その結果、エネルギーは、より長時間供給されることができる。
【0023】
SDSまたは徐々に利用可能なグルコース(slowly available glucose)(SAG)は、エングリスト法(Englyst method)による徐々に利用可能なグルコース(SAG)の測定を通して特徴付けることができる(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。SAGは、ヒトの小腸での緩慢な吸収のために利用できる可能性が高いグルコース(マルトデキストリンを含む、糖およびデンプン由来)の量を指す。開示される本件において、デンプンすなわちSDS以外のSAG源が存在しないため、SDS含有量はSAG含有量に等しい。急速に利用可能なグルコース(rapidly available glucose)(RAG)は、ヒトの小腸での迅速な吸収のために利用できる可能性が高いグルコースの量を指す。
【0024】
エングリスト法では、ビスケットサンプルは、1または複数のビスケットを手動で粗く粉砕することによって調製する。次いで、ビスケットサンプルは、標準化条件下で、インベルターゼ、膵αアミラーゼおよびアミログルコシダーゼの存在下でのインキュベーションによって酵素消化にかける。pH、温度(37℃)、粘度および機械的混合などのパラメータは、胃腸条件を模倣するように調整する。20分間の酵素消化時間の後、グルコースを測定し、RAG標識する。120分間の酵素消化時間の後、グルコースを再び測定し、利用可能なグルコース(AG)標識する。SAGは、RAGをAGから引くことによって得られ(SAG=AG−RAG)、したがって、SAGは20分目と120分目との間に放出されたグルコース画分に相当する。スクロースから放出されるグルコースを含む遊離グルコース(FG)は別の分析によって得られる。次いで、RDSはRAGからFGの減算として得られる(RDS=RAG−FG)。
【0025】
すぐに食べられるビスケットは、ビスケット100g当たり少なくとも15gのSAGを有することが好ましい。このようなビスケットは、長時間持続するエネルギーの基準、すなわちビスケット100g当たり15gを超えるSAG値、またはビスケットの総重量に対する利用可能なデンプンの合計に対する徐々にと消化可能なデンプンの比率としての少なくとも31%に適合している。すぐに食べられるビスケットは、好ましくは少なくともビスケット100g当たり16.5g、より好ましくは少なくともビスケット100g当たり18.0g、さらにより好ましくは少なくともビスケット100g当たり21.0gのSAG含有量を有する。最も高いSAGは好ましくは多くとも100g当たり50.0gであろう。
【0026】
ビスケットは穀類粉、脂肪、糖および添加水を含む生地から形成される。穀類粉は少なくとも29重量%の全粒穀類粉を含み、55%未満の吸水率を有する精製穀類粉を少なくとも14.5重量%含む。
【0027】
生地は、生地の総重量に対して多くとも8重量%の量で添加水を含む。すなわち、添加水は焼成前の総生地の8重量%を形成する。この水は焼成中に実質的にビスケットから除去される。添加水は、いくつかの原材料においてすでに存在する水(穀類粉の約12重量%を占める水など)を含まない。これらの原材料中に存在する水の少なくとも一部もまた、焼成中にビスケットから除去される。それ故、生地および最終ビスケットにおける穀類粉の重量%は、水分のこの損失により実質的に同じである。含水量のない成分(脂肪など)は生地におけるよりも大きい、ビスケットでの重量%を形成するであろう。
【0028】
生地は、多くとも8重量%、好ましくは3から8重量%、より好ましくは4から7重量%、最も好ましくは5から6重量%の添加水を含む。上述したように、用語「添加水」は、他の原材料に加えて添加される水を意味する。したがって、「添加水」は、穀類粉(典型的には約10〜15重量%)、フレークまたはふすまおよび胚芽などの任意の他の原材料に含まれている水を含まない。糖、短鎖可溶性繊維、ポリオールなどのシロップについては、シロップ中に存在する水は添加水の一部と見なされる。
【0029】
本明細書に記述され、3から8重量%の含水量を有するビスケット生地のレオロジーはかなり特徴的である。生地は典型的にはパン/ピザ生地のような「連続的な」構造を有さず、むしろ分断された粒子の集合体のようなものである。生地が3重量%未満の含水量を有する場合、生地を形成することができない。このような低い水和レベルでは、生地はむしろ顆粒状物質(砂に類似した)のように振る舞う。生地の質感はショートブレッドまたはクランブル生地のものに似ており、ごくわずかに凝集性(cohesion)を示す。このような生地はまた、圧縮に際して、より水和した生地に比べてはるかに固い。したがって、生地の加工性は損なわれ、回転式成形によって加工することができない。8重量%よりも多い量の添加水で、生地の機械加工性は向上するが、焼成におけるデンプン加水分解の程度が高まり、SDSは減少する。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「全粒穀類粉(複数可)」は、胚乳、ふすまおよび胚芽を含む全粒穀類から直接的または間接的に製造される穀物粉を意味する。また、全粒穀物粉は好ましくは、再構成された全粒穀物粉に依然としてふすまおよび胚芽を保持する穀粒から直接製造される全粒穀物粉と同じ組成を与えるそれぞれの比率で、別個の胚乳(例えば、精製小麦粉)、ふすまおよび胚芽から再構成できる。
【0031】
「全粒穀類粉」は、穀物の胚乳のみから作られた穀物粉を指す「精製類粉」と区別されるべきである。本開示の方法によって得られるビスケットは、少なくとも29重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも31重量%の全粒穀類粉を含む。ビスケットは、好ましくは多くとも70重量%、より好ましくは多くとも60重量%、さらにより好ましくは多くとも50重量%の全粒穀類粉を含む。これらの量は、最終ビスケットの重量に対する全粒穀類粉の総重量から算出される。全粒類粉の量が70重量%を超える場合、生地を加工することが非常に困難になる。
【0032】
全粒穀類粉は、好ましくは少なくとも2つの異なる種類の全粒穀類粉を含む。これらの種類の全粒穀類粉は好ましくは、全粒小麦粉、全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉、全粒エンバク粉、全粒米粉、全粒トウモロコシ粉、全粒キビ粉、全粒モロコシ粉、全粒テフ粉、全粒ライ小麦粉、ならびに擬似穀類粉(アマランス粉およびキノア粉など)、ならびにそれらの混合物から選択される。好ましくは、全粒穀類粉は、全粒小麦粉、全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉、全粒エンバク粉およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、それらは、全粒小麦粉、全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉およびそれらの混合物から選択される。
【0033】
一実施形態では、全粒類粉は全粒小麦粉を含む。全粒小麦粉は、精製小麦粉、小麦ふすまおよび小麦胚芽の混合物から得られる再構成された全粒小麦粉であることができる。好ましくは、精製小麦粉は、本方法で使用されるBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定される場合に55%未満の吸水率を有する精製小麦粉と同じである。この後者の場合、この精製小麦粉の一部は全粒小麦粉を再構成するために使用されるが、この部分は生地の精製小麦粉含有量に含まれると同時に、全粒類粉含有量の一部に含まれるであろう。したがって、それは、加工可能な生地を有するために必要である、少なくとも14.5重量%、好ましくは少なくとも29重量%の精製小麦粉に含まれるであろう。好ましくは、他の全粒穀類粉(複数可)は、全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉およびそれらの混合物の中から選択される。
【0034】
好ましい一実施形態では、全粒穀類粉は、全粒穀類粉の総重量に対して、多くとも80重量%、好ましくは多くとも60重量%、より好ましくは多くとも50重量%、さらにより好ましくは多くとも32重量%の全粒小麦粉を含む。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、全粒穀類粉は、4つの異なる種類の全粒類粉、すなわち全粒大麦粉、全粒ライ麦粉、全粒スペルト小麦粉および全粒小麦粉を含む。
【0036】
好ましくは、全粒穀類粉は多種穀類粉であり、すなわち、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも68重量%の全粒穀類粉が全粒小麦粉ではない。
【0037】
全粒小麦粉以外の種類の全粒穀類粉が使用される場合、31重量%を超える十分なSDS/(SDS+RDS)値を有する最終ビスケットを得ることはより困難である。これは、ライ麦、大麦およびスペルトなどのいくつかの種類の全粒穀類粉が、全粒小麦粉よりも少ないSDSを含むからである。
【0038】
ビスケットは精製穀類粉を含む。好ましくは、精製穀類粉は、軟質小麦粉、低損傷デンプンの小麦粉および熱処理小麦粉ならびにそれらの混合物から選択される。これらの種類の穀物粉を使用することで、焼成中のデンプンのゼラチン化を抑えることが可能となる。実際、これらの穀物粉において、デンプンは従来の精製小麦粉より損傷が少ない。デンプンのゼラチン化は、デンプンがより容易に消化可能であるようにし、これにより最終製品中の徐々に消化可能なデンプンの含有量を低減する。
【0039】
軟質小麦粉および硬質小麦粉は、両方ともコムギ(Triticum aestivum)から製造される小麦粉の種類である。軟質小麦粉はコムギのみから製造された穀物粉と混同されるべきではなく、硬質小麦粉はデュラムコムギ(Triticum durum)から製造された穀物粉と混同されるべきではない。用語「軟質」および「硬質」は、穀物粉を作るために使用されるコムギの穀粒の硬度を指し、小麦の種を指すものではない。穀粒の硬度は胚乳細胞の密度に起因する。軟質小麦の胚乳は密度が低く、それはデンプンとタンパク質のより弱い結合に対応している。したがって、軟質小麦の穀粒は硬質小麦の穀粒よりも細かい粒子に粉砕でき、より損傷の少ないデンプンになる。
【0040】
軟質小麦粉は、例えば、Crousty、Alteo、Epson(ともにSyngenta製)またはArkeos(Limagrain製)などという名称で商品化された軟質小麦の製粉から得ることができる。より少ない水を吸収する、より軟質の小麦粉を使用することによって、より硬質の小麦粉を使用する場合よりも、よい幅広い範囲の添加水を使用できる。すなわち、たとえ8重量%までの水が使用されたとしても、穀物粉は一般により少ない水を吸収し、その結果として焼成中のデンプン含量のゼラチン化はより少ない。さらに、水の吸収がより少ないため、生地を滑らかにするために利用可能な自由水が多くなり、減少させた量の添加水(約3〜4重量%)であっても加工可能な生地を製造できる。一実施形態において、軟質穀物粉を使用する場合、生地は添加水を10重量%まで含んでもよい。
【0041】
低損傷デンプンの小麦粉とは、穀物粉重量の5.5%より低い含有量の損傷デンプンを有する穀物粉を意味する。損傷デンプンの含量は、製粉作業中に物理的に損傷するデンプン粒の百分率である。これは、AACC76−31.01法によって測定される。
【0042】
熱処理小麦粉の例としては、いくつかの加熱および冷却サイクルでの処理またはアニールされた小麦粉である。アニーリングとは、結晶成長を改善することによって、およびデンプン鎖間の相互作用を促進することによって、デンプンの物理化学的性質を変化させる熱水処理である。
【0043】
精製小麦粉は、好ましくは特に選択された製粉画分から製造され、もってNF−ISO−5530−1標準に従ってBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定される場合に55%未満の非常に低い吸水率を有する。好ましくは、選択される製粉画分は小さい粒径を有する、すなわち40μm未満の微粒子の百分率は50%を超える。製粉画分の選択は、製粉中の粒度分析(レーザー粒度分析またはメッシュ直径による)によって支援することができる。これらの試験の使用は、焼成の技術分野において周知であり、以下で説明する。
【0044】
NF−ISO−5530−1標準に従ってBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定される55%未満、好ましくは52%未満の吸水率を有する精製穀類粉は、生地の少なくとも14.5重量%、好ましくは少なくとも29重量%に相当する。精製穀類粉は、好ましくは多くとも生地の40重量%、好ましくは多くとも35重量%に相当する。
【0045】
Brabender(登録商標)Farinograph(登録商標)による測定は、NF−ISO−5530−1の下で標準化される。この標準において、吸水率は最大稠度500UFの生地を有するために必要とされる、含水量14重量%の穀物粉100g当たりの水の量として定義される。稠度は、Farinograph(登録商標)内部にて標準で指定された一定の速度で混練中の生地の、任意の単位(ファリノグラフ単位UF)で表された抵抗である。まず、穀物粉の含水量が測定される。次に、水が穀物粉に添加され、水の量は生地の粘度が500UF(480UFから520UF)に近くなるように算出される。穀物粉および水は一緒に混練され、測定は2つの生地こね鉢(troughs)について記録される。これらの測定および生地を形成するために穀物粉に添加された水の体積から吸水率が得られる。
【0046】
この種の穀物粉の使用は、生地を形成するのに必要な水がより少なく、これによりデンプンのゼラチン化を抑えるという利点を与える。結果として、健康的ビスケットが得られる。
【0047】
含水量を測定するための技術は当技術分野において周知である。穀物粉、生地および最終ビスケットの含水量は、1999年に改訂されたAAC 44−15.02 International法(Moisture−air oven methods)を用いて測定することができる。
【0048】
用語「脂肪」または「脂肪類」は、食用で、ビスケットを作製するために使用できる、植物または動物源の任意の脂質源を意味する。このような脂肪の例は、パーム油、ナタネ油または他の植物油、動物源からのバターである。すぐに食べられるビスケットは、好ましくは5重量%から22重量%の脂肪、より好ましくは9重量%から18重量%の脂肪、さらにより好ましくは15重量%から17.5重量%の脂肪を有する。
【0049】
本明細書で定義されるように、「糖」または「糖類」は、起源が何であれ任意の単糖類および二糖類の乾燥物質、および更に拡張して、グルコースフルクトースシロップまたはフルクトースグルコースシロップとも呼ばれるグルコースシロップのすべての乾燥物質をも意味する。単糖類の中には、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノースおよびそれらの混合物がある。二糖類の中には、サッカロースがあるが、サッカロースは部分的にまたは全体的にラクトースまたはマルトースなどの別の二糖類に置き換えられていてもよい。グルコースシロップは単糖類および二糖類を含むが、重合されたデキストロースの長い鎖をも、いくらか含む。本開示の方法で得ることのできるビスケットは、ビスケットの総重量に対して、多くとも30重量%の糖、好ましくは多くとも28重量%の糖、さらにより好ましくは多くとも25重量%の糖を含む。疑義を回避するために付言すると、グルコースシロップまたは他の糖懸濁液の形態で混合物に添加される糖の量を考慮する場合、糖の乾燥重量のみが考慮されるべきである。シロップまたは懸濁液の含水量は、本明細書に記載されている添加水の一部として考慮されるべきである。
【0050】
ビスケット中に存在する糖の最も好ましい量は、少なくとも12重量%である。これは官能的影響および技術的理由両方のためである。理論に拘束されることを望むものではないが、12重量%未満の糖では、生地の機械加工性が影響を受けると推測される。一般に、生地中には、添加水によって連続相が形成され、該連続相は、溶解できる可溶性原材料に富んでいる。糖は水に溶解することができるため、存在する水の有効容積を効果的に増大させる(1gの糖を1mlの水に溶解すると、総容積は1.6mlになる)。それ故、少なくとも12重量%の糖の存在は、さらに添加水を含むための必要条件を減少させ、従って、より少ない水を可能にすることによって、最終ビスケットのSDS値を増大させる。
【0051】
「健康的ビスケット」とは、最終製品に対して原材料の50重量%を超える穀類含有量を有し、最終製品に対して少なくとも29重量%の全粒穀類粉を有するビスケットまたはクッキーを意味する。健康的ビスケットまたはクッキーはまた、最終製品の総カロリー値の多くとも27.5%まで占める糖、最終製品の総カロリー値の多くとも35%まで占める脂肪、および最終製品の総カロリー値の少なくとも55%の利用可能な炭水化物を含む。
【0052】
ビスケットは、約19から約50重量%のさらなる原材料をさらに含むことができ、該原材料として、全粒穀類フレーク、未精製、非全粒穀物粉、および追加の原材料(乳化剤、膨張剤、ビタミン、ミネラル、塩、香味料およびにミルクまたは乳製品原材料など)、および、それらの組み合わせを含む。これらの追加原材料について以下でさらに詳細に論じる。
【0053】
ビスケットは、多くとも34.5重量%、好ましくは多くとも19重量%、好ましくは多くとも16重量%、より好ましくは多くとも11重量%、さらにより好ましくは多くとも9重量%の全粒穀類フレーク、例えば全粒オート麦フレークまたは麦芽入り全粒ライ麦フレークをさらに含んでもよい。過剰のフレーク、すなわち19重量%超のフレークはビスケットに予想外の外観、すなわち潜在的消費者を落胆させる可能性があるグラノーラビスケットおよび、より高密度の製品の外観を与えるであろう。フレークが存在するとき、好ましくは、それらはビスケットの少なくとも約0.9重量%を構成する。より少量だと最終製品において識別可能でない場合があるためである。
【0054】
より一般的に、すぐに食べられる層状クッキーのビスケット部分は、全粒穀物の目に見える部分を含んでよい。消費者に与える官能的影響により、好ましいフレークはオート麦フレークおよび麦芽入りライ麦フレークである。これはまた、最終ビスケットのおいしさを損なうことなく、生地処方の全粒穀物含有量を高めるために役立つ。最も好ましいフレークは赤ちゃん用オート麦フレークである。それらの外観が消費者に有利であり、それらは焼成中に容易に加水分解することのより少ないビスケットに、付加的なSDSを提供するからである。それらは加工時に、大きいフレークよりも損なわれにくい。
【0055】
例えば、種々のフレークの含有量の一部の範囲は、以下の表に記載されている。
【0056】
【表1】
【0057】
すぐに食べられるビスケットは、さらに付加的な穀類ふすまおよび/または穀類胚芽を含むことができる。付加的な穀類ふすまおよび穀類胚芽がある場合、ふすまおよび胚芽は、小麦、大麦、ライ麦、スペルト、エンバクまたはそれらの混合物の中から選択される種々の穀物に由来する。
【0058】
生地を形成するための、穀類粉および水と混合することができる他の原材料は、乳化剤、膨張剤である。
【0059】
乳化剤は、大豆レシチン、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウムであってよい。
【0060】
膨張剤は、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム(sodium pyrophosphate acid)またはそれらの混合物であってよい。
【0061】
他の原材料はまた、ビタミンB1、ビタミンE、ビタミンPP、鉄およびマグネシウム、ならびにそれらの混合物などの、ビタミンまたはミネラルであってよい。
【0062】
さらに他の原材料は、塩、香味料、ココアパウダー、固体片、ミルクおよび乳製品誘導体、蜂蜜であることができる。
【0063】
香味料は、粉末形態または液体形態であることができる。
【0064】
固体片は滴状チョコレート、果実片、ヘーゼルナッツのようなナッツ類(好ましくはヘーゼルナッツ片)、押出穀類などであってよい。固体片は穀類フレークを含まない。固体片はSAG含有量を増加させることなく、質感および香味をもたらす。ビスケットは好ましくは4重量%から15重量%、好ましくは7重量%から13重量%の固体片を含む。
【0065】
滴状チョコレートは固形チョコレートの小片である。「チョコレート」は、「ダークチョコレート」、「ミルクチョコレート」または「ホワイトチョコレート」のいずれかを意味すると理解される。滴状チョコレートは好ましくは少なくとも35重量%のカカオリカー(米国の法制)、より好ましくは35重量%のカカオ固形物(欧州連合の法制)、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、を含むダークチョコレート片である。
【0066】
本開示の請求の範囲内で、「果実片」とは、果物にたとえることのできる植物の任意の甘い食用部分の断片を意味し、例えば、レーズン、イチジク、プルーン、オレンジ、クランベリー、ブルーベリー、ラズベリー、イチゴ、アプリコット、クロフサスグリ、アカフサスグリ、モモ、ナシ、キウイ、バナナ、リンゴ、レモン、パイナップル、トマトなどである。果実のこれらの断片は乾燥または加工される。この文言にはナッツ類は含まれない。
【0067】
ミルクおよび乳製品誘導体は、新鮮なミルク、粉乳、甘味ホエー粉末、乳タンパク質、ホエータンパク質などであり得る。
【0068】
ビスケットはまた、ポリオールまたは短鎖可溶性繊維を含んでよい。これらは、ビスケット中に存在するデンプンの加水分解を増大させることなく、生地の機械加工性を向上させる上で、糖と同様に作用する。ポリオールまたは短鎖可溶性繊維の使用は、無糖または低糖のビスケットの提供を可能にする。原材料は、胃腸耐性の問題およびクリーンラベルのために、好ましくは20%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは5%未満のポリオールまたは短鎖可溶性繊維を含む。糖についてと同様に、ポリオールまたは短鎖可溶性繊維の乾燥重量のみが考慮されるべきである。ビスケットが10重量%超のポリオールを含む場合、それは緩下作用を有すると考えられ、それに応じてラベル表示されなければならない。最も好ましくは、原材料はポリオールまたは短鎖可溶性繊維を含まない。一実施形態において、ビスケットは少なくとも0.1重量%のポリオールまたは短鎖可溶性繊維を含む。一実施形態において、原材料は、グアーガムまたは他の粘稠性可溶性繊維(ペクチン、キサンタンガム、オオバコもしくはグルコマンナンなど)を含まない。
【0069】
焼成における、穀類粉中に自然に存在する水の損失により、生地の穀類含有量に関する重量%の値は、最終ビスケットのための重量%の値と実質的に同じである。
【0070】
一実施形態において、本開示に従ってビスケットを製造する方法は、
− 少なくとも2つの異なる種類の全粒穀類粉を含む穀類粉を、生地の総重量に対して多くとも8重量%の添加水、脂肪および糖と混合E1して、生地2を形成する工程と、
− 生地2をビスケット3の形状に成形E3、好ましくは回転式成形する工程と、
− ビスケット3を焼成E5する工程と、
を含み、
前記穀類粉は、生地の少なくとも14.5重量%、好ましくは少なくとも29重量%に相当する精製穀物粉、好ましくは精製小麦粉を含み、前記精製穀物粉が、NF−ISO−5530−1標準に従ってBrabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定した場合に55%未満、好ましくは52%未満の吸水率を有する。
【0071】
混合工程E1は、好ましくは二重ジャケットを備える水平混合機内で実施される。含水量が制御されるように、混合段階は調整される。混合中、生地の温度は、好ましくは15℃から35℃、より好ましくは15℃から30℃である。
【0072】
従来の回転式成形装置では、そのような顆粒状の生地を加工することは困難であり、時には不可能である。そのため、回転式成形工程のために新たな特定の回転式成形機が設計された。それにもかかわらず、他の成形技術を使用してよいが、これらはあまり好ましくない。
【0073】
この特定の回転式成形機1(図2に示されるように)は、
− 生地2をビスケット3に成形するための、成形シリンダ11および溝付シリンダ12;および任意選択的に、
− 成形および溝付シリンダ11、12に供給するのに役立つ漏斗の役割を果たすホッパ13、および/または
− ビスケット3を離型するための離型ベルト14
を備える。
【0074】
成形シリンダ11は、生地2を受け入れるための型孔を有する。型孔は生地2にビスケット3の形状を与えるであろう。溝付シリンダ12は、好ましくは5から15mm、好ましくは10mm±50%の溝を備えて、フレークや固体片のような包含物を粉砕することなく生地に十分な粘着性を与え、動作中に、成形シリンダ11の型孔内に収容されている生地2を押し付け、もって生地は完全に型孔を充填し、その形状をとる。溝付シリンダ12は、好ましくは水平軸上に搭載され、生地2に加えられる圧縮力を変化させるように、その上で調整することができる。生地2は連続性を欠いているため、高圧縮を使用する必要があり、したがって、凝集性の生地片は離型可能であり、離型ベルト14から未調理のビスケット3を、焼成用オーブン内に運ぶオーブンベルトへと移転可能であろう。
【0075】
ビスケット3の形成が損なわれないように、溝付シリンダ12と成形シリンダ11の間の速度の差は好ましくは10%未満に維持される。実際、成形シリンダ11と溝付シリンダ12の両方の回転速度の間の大きな差異は、生地にせん断応力を誘発し、生地を型孔上へ押し付けることができずに、むしろ生地が成形シリンダ11と溝付シリンダ12の外周面の間に広がり、詰め込みにくくなるであろう。
【0076】
ホッパ13内の生地2の量は好ましくは、それが最小となり、成形および溝付きシリンダ11、12がほぼ目に見えるように制御することができる。その目的は、生地の圧縮を防止し、したがって、ベルトの幅に沿った成形シリンダの規則的な供給を確実にすることである。生地は、可能な限り最小限に詰め込まれるようにしなければならない。
【0077】
カッター15は、成形および溝付シリンダ11、12の軸線AAの下に、その先端部151を備え、好ましくは型孔の上部で生地2を切断する。カッター15は、型孔内部に残る生地2の量を決定し、その中の生地片の重量を調整することを可能にする。未調理のビスケットを形成する各生地片は、好ましくは0.5グラムから40グラム、より好ましくは1から35グラム、さらにより好ましくは1から30グラムの重さがある。
【0078】
離型ベルト14は、好ましくは綿および/またはポリアミドから作られ、従来の生地より乾燥した生地片、すなわち顆粒状の生地を取り出すために、好適な寸法の横糸を有する。離型ベルト14は、好ましくは少なくとも2つのシリンダ16、17上に装着され、それら内の一方(一般には、ゴムシリンダ16)が成形シリンダ11を押圧する。成形シリンダ11へのゴムシリンダ16の押圧に際し、型孔内にある生地片は離型ベルト14に付着し、焼成用オーブンの方へ運ばれる。
【0079】
回転式成形機1は、離型ベルト14のための加湿器18をさらに含んでよく、例えば加湿器18は水蒸気処理装置または水噴霧装置である。
【0080】
この回転式成形機1は、少なくとも穀類粉および水を含む顆粒状の生地からのビスケットなど、他の種類のビスケットを製造するために使用することができる。顆粒状の生地とは、ショートブレッド生地やクランブル生地のような非凝集性または非連続的な生地を意味する。
【0081】
形成する前の生地2の静置工程E2の静置時間は、生地2の高い乾燥を避けるために制限されるべきである。それは、さらなる水の添加を必要とし、したがってデンプンゼラチン化を誘発することによってSAG含有量を妨げるだろうからである。
【0082】
焼成工程E5の前に、ビスケット3は艶出しして、光沢のある外観を得ることができる。したがって、この方法は、成形されたビスケット3の艶出し工程E4という、任意のさらなる工程を含むことができる。ビスケット3は水性艶出しで艶を出すことができ、好ましくは、前記水性艶出しは、粉乳および/または粉糖および/または緩衝剤(重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなど)を含む。好ましくは、艶出しE4は脱脂粉乳を含む。さらに好ましくは、艶出しは、好ましくはデンプン質の粉糖、すなわち、氷砂糖を粉砕し、抗凝集剤としてデンプンを添加して得られ、その微細な粒度分布によって特徴付けられるスクロース天然甘味料を含む。
【0083】
焼成工程E5は、好ましくは焼成したビスケット(最終製品)の含水量が0.5重量%から5.0重量%になるまで焼成することにより実施され、例えば穏やかに焼成すること(すなわち、焼成温度は、焼成時間の最初の3分の1の間(焼成時間が7分の場合は2分20秒間)はビスケット内部で110℃未満、好ましくは100℃未満である)により実施される。
【0084】
焼成後、焼成したビスケットはオープンベルト、すなわちカバーがされていないベルト上で冷却E6され、冷却トンネルは好ましくは使用されない。投入と排出の間にあまりにも大きな温度差がありビスケットの乾燥割れ(破損)の原因になるからである。次いで、ビスケットは包装E7される。例えば、ビスケットは50gのビスケットを含む包装内にパッケージ化され、該包装は6、8または12ケの包装を含むように設計される小包にまとめられる。好ましくは、ビスケットは一つの包装が一食分を含むように包装内にパッケージ化されてよい。
【0085】
最終ビスケットの含水量は、焼成後の最終ビスケット中、好ましくは3重量%未満、好ましくは1から2重量%の間である。
【0086】
低含水量は、長期間にわたって貯蔵安定な製品を提供するのに役立つ。例えば、本ビスケットおよびサンドイッチビスケットは、可食性を維持しながら、20〜25℃で1年まで保管することができる。官能試験専門家パネルの評価に基づいた貯蔵寿命の研究が行われてきた。完全な官能プロファイルが原材料に応じて、7カ月から1年まで維持されたことが分かった。それにもかかわらず、ビスケットの可食性は少なくとも1年まで延長された。
【0087】
本開示はまた、上記の方法によって得ることができる、すぐに食べられるビスケットに関する。好ましくは、ビスケットは、ビスケットの総重量に対して少なくとも30重量%のデンプンの合計をさらに含む。
【0088】
本開示はさらに、少なくとも一つの上記ビスケットを含むビスケット部分、およびフィリング部分を含むクッキーに関する。このクッキーは、ビスケットの上にフィリングがのったタイプのビスケットであって、ビスケットは上記の方法で製造され、フィリングは焼成前または後にビスケットの上に積層できる。
【0089】
このクッキーは、さらにサンドイッチクッキー、すなわち、フィリングの層がビスケットの二つの層の間にあるクッキーであって、ビスケットが異なっていてよい。ビスケットは上記の方法により製造される。サンドイッチクッキーは、最も一般的にはビスケットを焼成した後に組み合わせられる。
【0090】
クッキーのフィリング部分は、さらに少なくとも部分的にビスケット部分によって囲まれてよい。この後者の場合、ビスケット部分は連続的なビスケットを構築し、その中にフィリング部分を収容するための空洞を含む。クッキーはさらに、複数の工程において形成することができ、ビスケット部分は、その中に空洞を伴って形成され、ビスケット部分を焼成する前または後に、フィリング部分は空洞内に注入される。
【0091】
本開示について、以下の非限定的な実施例に関連して説明する。
【実施例1】
【0092】
プレーンココアビスケットを調製した。ビスケットは次の組成(最終ビスケットの百分率で)を有する。
生地原材料 115.41重量%
艶出し原材料 1.69重量%
水分除去 −17.10重量%
合計 100 重量%
【0093】
より詳細には、以下の処方で形成された生地からビスケットを製造した。
【0094】
【表2】
【0095】
(量は、最終ビスケットおよび未焼成の生地、それぞれの重量に対する百分率で表す)
全粒小麦粉は、以下から再構成される。
最終ビスケット 未焼成の生地
精製軟質小麦粉 16.87重量% 14.62重量%
小麦ふすまおよび胚芽 3.45重量% 2.99重量%
総全粒小麦粉 20.32重量% 17.61重量%
【0096】
Brabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定される場合の精製小麦粉の吸水率は52%である。
【0097】
生地が均質化された稠度を取得するまで、生地の原材料を水平混合機で混合する。次いで、生地を30分間静置する。静置した後、ビスケットを形成するための回転式成形機のホッパに生地を供給する。回転式成形機の成形および溝付シリンダがほぼ目に見えるように生地を供給する。成形および溝付シリンダの速度差を10%未満に維持する。次に、ビスケットは、以下を含む(最終ビスケットの重量百分率で)艶出しで艶を出す。
水 1.48重量%
脱脂粉乳 0.169重量%
デンプン質の粉糖 0.0425重量%
【0098】
艶を出した後、ビスケットを約7分間焼成用オーブンに入れる。焼成中、生地の温度は160℃未満のままである。焼成の終了時、含水量は約2.0重量%である。
【0099】
ビスケットをオーブンから取り出すとき、ビスケットの温度が30℃未満になるまでそれらをオープンベルトの上で冷却する。
【0100】
ビスケットは、57.15重量%の穀類原材料、より具体的には総穀類粉の64.55%に相当する31.19重量%の全粒穀類粉を含む。ビスケットは、17.1重量%の脂肪および27.1重量%の糖を有する。脂肪はビスケットの総カロリー値の35%に相当し、炭水化物が58%に相当し、より正確には、糖が24%に相当する。ビスケットは、40.75%のSDS/(RDS+SDS)比率およびビスケット100g当たり16.3gのSAGを有する。ビスケットは、36.5重量%のデンプン含量を有する。
【実施例2】
【0101】
ビスケットは次の組成(最終ビスケットの百分率で)を有する。
生地原材料 112.46重量%
艶出し原材料 1.69重量%
水分除去 −14.15重量%
合計 100 重量%
【0102】
より詳細には、以下の処方で形成された生地からビスケットを製造する。
【0103】
【表3】
【0104】
(量は、最終ビスケットおよび未焼成の生地、それぞれの重量に対する百分率で表す)
全粒小麦粉は、以下から再構成される。
最終ビスケット 未焼成の生地
精製軟質小麦粉 16.83重量% 14.97重量%
小麦ふすまおよび胚芽 3.45重量% 3.07重量%
総全粒小麦粉 20.28重量% 18.04重量%
【0105】
Brabender(登録商標)Farinograph(登録商標)によって測定される場合の精製小麦粉の吸水率の値は53%である。
【0106】
生地が均質化された稠度を取得するまで、生地の原材料を水平混合機で混合する。次いで、生地を静置する。静置した後、ビスケットを形成するための回転式成形機のホッパに、生地を供給する。回転式成形機の成形および溝付シリンダがほぼ目に見えるように生地を供給する。成形および溝付シリンダの速度差を10%未満に維持する。次に、ビスケットは、以下の成分を含む(最終ビスケットの重量百分率で)艶出しで艶を出す。
− 水 1.47重量%
− 脱脂粉乳 0.170重量%
− デンプン質の粉糖 0.040重量%
【0107】
艶を出した後、ビスケットを約7分間、焼成用オーブンに入れる。焼成中、生地の温度は160℃未満のままであり、含水量はそれが約1.5重量%に達するまで減少する。
【0108】
ビスケットをオーブンから取り出すとき、ビスケットの温度が30℃未満になるまでそれらをオープンベルトの上で冷却する。
【0109】
ビスケットは、56.4重量%の穀類原材料、より具体的には総穀類粉の60.34%に相当する29.66重量%の全粒穀類粉を含む。ビスケットは、17.24重量%の脂肪および24.56重量%の糖を有する。脂肪はビスケットの総カロリー値の34%に相当し、炭水化物が60%に相当し、より正確には、糖が22%に相当する。ビスケットは、44.18%のSDS/(RDS+SDS)比率およびビスケット100g当たり18.6gのSAGを有する。ビスケットは、38.1重量%のデンプン含量を有する。
【0110】
特に指定のない限り、本明細書に列挙した百分率の値は重量により、適切な場合には、最終ビスケットの重量によるものである。
【0111】
本開示の好ましい実施形態を本明細書で詳細に説明してきたが、その変形が、本開示のまたは添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、なされ得ることは当業者には理解されるであろう。
【符号の説明】
【0112】
図1の符号は以下の通りである:
E1:原材料を混合する工程
E2:生地をの静置する工程
E3:生地を回転式成形してビスケットを形成する工程
E4:ビスケットを艶出しする工程
E5:ビスケットを焼成する工程
E6:ビスケットを冷却する工程
E7:ビスケットを包装する工程
図1
図2