(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097749
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】インスリンのような薬物を保存するための容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20170306BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20170306BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
A61J1/10 331A
A61K37/26
A61M5/142 522
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-524464(P2014-524464)
(86)(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公表番号】特表2014-522712(P2014-522712A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】IB2012053827
(87)【国際公開番号】WO2013021303
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年7月10日
(31)【優先権主張番号】11177173.9
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511280951
【氏名又は名称】デバイオテック・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ビアンキ
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−501043(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/023567(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/014839(WO,A2)
【文献】
特表2011−507631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
A61K 38/28
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードシェル(2)及び可撓性フィルム(1)を含む、薬物を保存するための高分子容器であって、ここでハードシェル(2)は第一の材料を含み、そして可撓性フィルム(1)は第一の材料と第二の材料のブレンドを含み、ここで第二の材料は第一の材料をエラストマ化したものである、上記容器。
【請求項2】
前記ハードシェル(2)は単一層でできている、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
可撓性フィルム(1)の材料は、エラストマ部分及び非エラストマ部分のブレンドである、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記エラストマ部分は25%未満である、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記材料は環状オレフィン共重合体(COC)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
可撓性フィルム(1)の厚さは、5と100μmの間で構成される、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
可撓性フィルム(1)は、定常状態レジーム中、+/−20mbar以内の圧力を及ぼす、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記可撓性フィルム(1)は単層である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記フィルムは、上で接触がなされ得るハードシェル(2)の形状に厳密に嵌合するように熱成形されそして形作られ得る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
前記容器は透明である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
可撓性フィルム(1)が、更なるハードシェル内に封入される請求項1〜10のいずれか1項に記載の容器であって、該更なるハードシェルは、該更なるハードシェルの内側と外側間の圧力平衡を保証するための開口部を含有する、上記容器。
【請求項12】
薬物がインスリンである、請求項1に記載の容器。
【請求項13】
前記容器は、前記容器の内容物を患者に注入するために使用されるポンピング機構(7)に接続される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療容器、特にインスリン保存するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかのインスリン注入デバイスは現在市販されている。第1世代の使い捨てシリンジタイプ容器及びチューブは、例えば特許文献1、2、3、及び4に記載されている。一般に、これらのデバイスの容器は対称性で円形、そしてチューブ状であり、そしてポンプピストン(プランジャ)の滑らかな動きを可能にし、そして適切な密閉を維持する剛体壁を有する。
【0003】
比較的大きなデバイスは患者のポケットで携行され、又は患者のベルトに取り付けられる必要がある。それ故に流体送達チューブは、体の遠隔部位に針挿入を可能にするために長く、通常60cmよりも長い。これらの長いチュービングを備えたこれらの不快で大きな流体送達デバイスは、これらのデバイスが睡眠及び運動などの日常活動を妨害することから、大多数の糖尿病のインスリン使用者に普及していない。更に、ティーンエイジャーの体に映し出されるイメージの影響はティーンエイジャーに受け入れ難い。
【0004】
チュービングの制限を回避するために、第2世代のポンプが開発されている。これらのポンプは、使用者の皮膚に取り付けに適合される底面を有するハウジング、ハウジング内に配列される容器、及び容器と流体連通するように適合される注射針を含む。これらの皮膚付着デバイスは通常、第1世代のポンプで用いられる注入セットと同様に2〜3週毎に廃棄される。そのような第2世代デバイスは、例えば、特許文献5、6、7、及び8に記載されている。皮膚固定ポンプの他の構成は、例えば特許文献9及び10に記載されている。第1世代のポンプで使用される容器のようにそのようなデバイスの容器は通常、チューブ状及びシリンジ様で、従って比較的大きな占有スペース及び太いハウジングを必要とする。
【0005】
容量及びコスト制約に取り組むために、第3世代の皮膚固定ポンプが、例えば、特許文献11に記載のように提案された。そのような投薬パッチ剤単位では、投薬パッチ剤単位は2つの部材、使い捨て部材及び再使用可能部材を含む。再使用可能部材は一般的に、電子部材及び計量部分を含む。使い捨て部材は一般的に、治療流体用の容器を満たすための入口ポート、短い薬物送達を保護するフィルタ、並びにポンピング機構及び出口ポートを含む。再使用可能及び使い捨て部材の連結後、組立デバイスは非常に薄い寸法を有し、デバイス全体を安価で、軽量に及び個別化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】U.S.Pat.Nos.2,631,847
【特許文献2】U.S.Pat.Nos.3,771,694
【特許文献3】U.S.Pat.Nos.4,657,486
【特許文献4】U.S.Pat.Nos.4,544,369
【特許文献5】U.S.Pat.Nos.4,498,843
【特許文献6】U.S.Pat.Nos.5,957,895
【特許文献7】U.S.Pat.Nos.6,589,229
【特許文献8】U.S.Pat.Nos.6,740,059
【特許文献9】U.S.Pat.Nos.6,723,072
【特許文献10】U.S.Pat.Nos.6,485,461
【特許文献11】U.S.Pat No 7,935,104
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明は、ハードシェル及び可撓性フィルムを含む、薬物、例えばインスリンを保存するための高分子容器に関係し、ここで両エレメントは同じ材料から作られている。
【0008】
本発明では、同じ材料は、同じ化学物質、同じ重合体又は単量体から作られている材料である。更に、前記の同じエレメントを作るために使用される方法が異なっていても、該エレメントは少なくとも1つの機能を有する。
【0009】
限定されない例として、同じ単量体が重合後連鎖を形成する場合、それは同じ単量体が重合してネットワークを形成して異なる機械的性質を示し得る。本発明では、発明者らは、これらの2つの材料を同じ材料と考える。
【0010】
有利なこととして、ハードシェルは単一層でできている。
【0011】
ハードシェルの剛性及びフィルムの可撓性は、様々な方法で得られてよく、あるものは本文書に記載されている。例えば、可撓性フィルムは、同じ材料のエラストマ設計による剛性高分子材料のブレンドの製造にある方法に従って製作され得る。
【0012】
発明に記載の容器は、糖尿病CSII治療のための、携帯型皮膚用パッチ剤注入デバイスと治療用流体容器の組み合わせとして有利に使用し得る。1つの実施態様では、容器は、ハードシェルに厳密に嵌み合い、患者によって行われる充填手順中にデッドボリューム及び気泡を最小化する熱成形可撓性フィルムがその上にあるハードシェルを含む。好ましくは、ハードシェル及び可撓性フィルムはいずれも、環状オレフィン重合体(COC)でできており、そして使用目的に対して薬物溶液の完全性を確保する。
【0013】
類似の既存技術と比べてこの容器の1つの元の機能は、可撓性フィルムがハードシェルと同じ高分子から作られる材料から構成されるという事実にある。好ましい実施態様では、フィルムに対して、COCエラストマは、より大きい強靭性及び耐久性強化を備えた可撓性フィルムを得るためのCOCに対する改質剤として使用される。フィルム強度は
25%以下のCOCエラスト
マを含有するCOC
成分で大幅に改善される。
【0014】
別の実施態様では、本発明による容器は透明である。
【0015】
容器は好ましくは、充填を可能にし、そして密閉を維持し、そしてシリンジによって充填できる入口ポート、及び気泡の取込を阻止するように送達流体に連結されるフィルタによって保護される出口ポートを有する。
【0016】
容器の材料は低温融点の材料から作られ得て、それ故、加熱溶接を可能にし、そしてそれは1つ又は複数の溶接温度を含む1つ又は複数の高温に耐え得る。容器は、全使用期間(例えば6〜12日)に薬剤の効力の顕著な変化なしに、水及び保存剤(例えばフェノール、m−クレゾール)を含有する薬剤の保存を可能にするように、十分に防湿性、耐保存剤(例えばフェノール、m−クレゾール)性であり得る。容器の幾何構造は、流体の最適充填を可能にし、そして、例えあったとしても残存容量は最小限にとどめて完全又はほとんど完全に空にし得る。流体を保持し、そして容器中に保持される薬物及び/又は保存剤の化学的安定性を維持し、そしてまた浸出可能材料を回避する、単一材料の半可撓性容器が提供される。加えて、容器の薄壁は、流体蒸気に対するバリアとして機能を果たすように適合され、そして壁材料の比較的低い水蒸気透過速度(MVTR)によって示されるように、流体成分(例えば水、m−クレゾール、フェノール)の吸収に化学的に不活性である。それ故、容器壁の厚さは最大1.5%の1日当りの流体ロスを可能にするのに十分である必要があり得る。
【0017】
例えば、可撓性フィルムは熱成形によって形作られ得て、そして次いで接着なしで入口及び出口ポートアセンブリを含有する、射出成形によって得られるハードシェルと合わせて溶接され得る。前記フィルムは、その上で接触がなされ得るハードシェル(2)の形状に厳密に嵌合するように形作られ得る。可撓性膜は充填中気泡のトラッピングを回避するため、加工中にハードシェル上で折り畳まれる。その上、折り畳める容器は、例えばγ線照射により滅菌でき、そしてその生体適合性を維持し、そして接着剤のような接着性物質の使用を回避する製造方法によって製作できる。容器は溶接され得て、そして入口及び出口ポートは圧力によってポンピング機構に接続され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ハードシェル(2)上に折り畳まれた可撓性フィルム(1)を示す。
【
図3】ポンピング機構(7)とインターフェースしたハードシェル(2)の底面図を示す。
【
図4】フローチャートによって記載された試験手順を表す。
【
図5】インスリンアスパルトのインスリン効力を示す。
【
図6】インスリンアスパルト中のm−クレゾールの保存レベルを示す。
【
図7】インスリンアスパルト中のフェノールの保存レベルを示す。
【
図8】アスパルトの高分子量タンパク質レベルを表す。
【
図9】アスパルトのB3Asp+A21Asp+B3isoAsp関連化合物レベルを示す。
【
図10】アスパルトのB28isoAsp関連化合物レベルを示す。
【
図11】同じ厚さを有しそしてハードシェルに取り付けられた異なるフィルムに対する蒸発モニタリングを表す。
【
図12】注入容量による容器中の圧力を示す。エレメントのリスト:(1)可撓性フィルム、(2)ハードシェル、(3)フィルタ、(4)入口ポート、(5)出口ポート、(6)ボトムシェル、(7)ポンピング機構。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明は、下記の非排他的実施例に更により良く理解され得て、そのうちの幾つかが説明されている。
【0020】
本発明は好ましくは、1つ又はそれ以上の下記の性質を含み得る、同じ材料で作られ、熱成形されそしてハードシェル上に折り畳まれる単層ソフトフィルムでできている、透明、半可撓性、防水容器を製造するために、基材として重合中、広範囲にわたって変化できる特性プロファイルを備えた特殊なクラスの高分子材料として、環状オレフィン共重合体(COC)の使用を提案する:
1.薬物(インスリン)の有効成分と適合性
2.流体ロス、含有流体中に存在する例えば、水及び保存剤、例えばm−クレゾールに不浸透性又は実質的に不浸透性、
3.好適なMVTR及び厚さ;
4.可撓性及び折り畳み可能な機械的性質。
5.滅菌可能(例えばγ線照射、蒸気、エチレンオキシド);
6.非浸出可能又は実質的に非浸出可能;
7.溶接可能。
【0021】
1.53の屈折率と相まって可視及び近紫外領域でのTopas COC(Topas 5013)の高い透明性は、透明性が必要な適用に高分子を好適にする。Topas COCは特有の組み合わせの性質−無色明澄透明性、優れた水蒸気バリア、低吸水性、及び水性媒体、酸及びアルカリに及び極性有機物に対して良好な耐化学性を示す。それらの優れた生体適合性と合わせて、これらの材料は医薬品、医療デバイス及び診断用消耗品の一次包装に特に関心がもたれる。
【0022】
容器設計
容器の可能な設計は図に記載される。容器はセプタムとして充填のための入口ポート、下流流体経路を保護するためのフィルタ並びにこの場合はMEMSであるポンピング機構、及びカニューレコネクタ出口ポートを含む。可撓性フィルムはまた、ボトムシェルによ
り機械的接触から保護される。
【0023】
図1は、主要部材として(1)可撓性フィルム、(2)ハードシェル、(3)フィルタ、(4)入口ポート、(5)出口ポート及び(6)ボトムシェルを示す容器の立体分解図である。
図2は、ハードシェル(2)上に折り畳まれた可撓性フィルム(1)を示す。
図3は、フィルタ(3)によって保護された下流流体経路を形成しているポンピング機構(7)とインターフェースされた、そして出口ポート(5)に連結されたハードシェル(2)の底面図を示す。
【0024】
1つの実施態様では、可撓性フィルム(1)が更なるハードシェル(2)内に封入され、該更なるハードシェルは、該更なるハードシェルの内側と外側間の圧力平衡を保証するための開口部を含有する。
【0025】
薬物の適合性及び完全性
容器は、12日間インスリン溶液(アスパルト)の良好な適合性を示し、標識した使用目的(6日)と比べて2つの安全域(safety margin)を表す。薬物の適合性は安定性及び外観を通して評価され得る。
【0026】
試験手順は
図4に示されるフローチャートによって記載される。
【0027】
この試験の目標安定性は安全の理由で6日とし、研究は37℃において最悪ケースシナリオをシミュレートするために、13日間行われている。インスリンに対して、インキュベーションの6日及び13日後に、2つのサンプリングポイントが選択されていた。
【0028】
薬物完全性を実証するための各試験の受入基準及び基準値は、表1に挙げられる。解析及びデータ処理の方法は外部プロトコール及び検証方法を用いて行われる。
【0030】
インスリン含量に関する結果は
図5に示され、インスリンアスパルトのインスリン効力をより正確に示す。3つの使い捨てユニットサンプルの結果は標準溶液に対する相対百分率として表される;エラーバーはHPLC解析のRSD(1.4%)である。「薬局方」線は限界受入基準(90−110%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。
【0031】
インスリンアナログ溶液は、USPに記載のように抗微生物効果を確保するのに十分なレベルに維持され得る、抗菌保存剤:アスパルト溶液−m−クレゾール(1.72mg/mL)及びフェノール(1.5mg/mL)を含有する。
【0032】
図6はインスリンアスパルト中のm−クレゾールの保存レベルを示す。3つの使い捨てユニットサンプルの結果は標準溶液に対する相対百分率として表される;エラーバーはHPLC解析のRSD(0.8%)である。COA線は限界受入基準(90−110%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。「ソロマイクロポンプ(Solo MicroPump)」の破線は、同様の実験条件でインキュベーションの6日後のSolo MicroPump出口のm−クレゾールレベルを表し、そして「USP」破線はUSP基準によるm−クレゾールの有効性レベルを表す。
【0033】
図7はインスリンアスパルト中のフェノールの保存レベルを示す。3つの使い捨てユニットサンプルの結果は標準溶液に対する相対百分率として表される;エラーバーはHPLC解析のRSD(1.1%)である。COA線は限界受入基準(90−110%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。「Solo MicroPump」の破線は、同様の実験条件でインキュベーションの6日後のSolo MicroPump出口のm−クレゾールレベルを表し、そして「USP」破線は基準によるm−クレゾールの有効性レベルを表す。
【0034】
高分子量タンパク質値は13日間中1.50%閾値以下に維持された。
【0035】
図8はアスパルトの高分子量タンパク質レベルを表す。3つの使い捨てユニットサンプルの結果はインスリン含量(100%)の相対百分率として表される。「薬局方」線は限界受入基準(1.5%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。
【0036】
関連物質は、すべての送達サンプルにおいて13日の試験中閾値以下に維持された。
【0037】
図9はアスパルトのB3Asp+A21Asp+B3isoAsp関連化合物レベルを示す。3つのポンプサンプルの結果はインスリン含量(100%)の相対百分率として表される。「薬局方」線は限界受入基準(5%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。
【0038】
図10はアスパルトのB28isoAsp関連化合物レベルを示す。3つの使い捨てユニットサンプルの結果はインスリン含量(100%)の相対百分率として表される。「薬局方」線は限界受入基準(2.5%)であり、別の線は5℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL0バルク溶液)であり、そして別の線は、インスリンがその元の包装において熱応力にさらされた場合の、37℃でのコントロールT(インスリンバイアルのCTRL37バルク溶液)である。
【0039】
他の関連物質は13日後の溶液中に検出されず、そしてインキュベーションの日後のpHは7.73であった。
【0040】
本研究は、アスパルトに対し極端な条件においてこの文書に開示された容器で13日の適合性を示した。これらの結果は、長期使用期間のための「ポケットベル様」CSIIデバイスとアスパルトのようなインスリンアナログインスリンとの適合性を示した以前の研究と一致した。
【0041】
MVTR及び厚さ
バリア蒸発速度を実証するために、同じハードシェルに取り付けられた三層フィルム(BK)と単層COCフィルム間で比較研究が行われた。フィルムの相対的厚さはBK及びCOCフィルムに対してそれぞれ42μm及び51μmであった。
【0042】
図11は同じ厚さを有しそしてハードシェルに取り付けられた異なるフィルムに対する蒸発モニタリングを表す。
【0043】
COCフィルムは三層蒸発バリアと類似の厚さでより良い蒸発バリアを示す。これは表1に提示された薬物溶液の完全性を維持することを確実にする。
【0044】
可撓性及び折り畳みを可能にする機械的性質
フィルム及びハードシェル上へのその結合は、容器の過剰充填に因る可能な過剰圧力に抵抗するようにされ得る。その上、可撓性フィルムに加えられたエラストマ高分子の一部は、通常使用中容器にもはやいずれの残存弾性強度を誘導しないように十分小さくし得る。
【0045】
図12は注入容量による容器中の圧力を示す。
【0046】
送達システムは容器中の過不足圧上昇に敏感であり得て(前者の場合には過剰注入及び後者の場合にはポンプの閉塞のリスク)、フィルムは容器を空にする間その変形に因る大きな圧力変動を回避するようにされ得る(フェーズ1)。
【0047】
その上、容器の膜は、ポンプの通常使用中(フェーズ2)容器中にゼロ又はやや陰圧を確保し得る。
【0048】
容器枯渇中(フェーズ3)、容器の柔軟性は圧力の漸減を確実にする。これは、枯渇アラームがトリガーされる時点及びポンプがより多くの液体を効果的に注入できない時点間に大きな予備容量を有することを可能にする。
【0049】
好ましい実施態様では、可撓性フィルム(1)は定常状態レジーム中に+/−20mbar以内の圧力を加え得る。(注記:定常状態レジームによっていわゆる
図12の「通常使用」即ちプライミングフェーズ後の期間を理解し−ここでは容器中の液体量は該容器の公称値よりも上回っており−そして枯渇フェーズ−ここではフィルムのある部分は容器のハードシェルと接触している。)
【0050】
滅菌可能性及び生体適合性
多くの場合、医薬品及び診断薬部門におけるプラスチックの使用は、プラスチック材料の滅菌適性を必要とする。高エネルギー照射(γ線及び電子ビーム)、ETO、熱風及び熱蒸気を用いる種々の滅菌法の効果は、Topasを用いて検討されている。標準試験試料が1回の露出をシミュレートする条件にかけられた。Topas は1つ又は2つの滅菌サイクルより多くを必要とする用途に使用されるべきではない。Topas COC試験試料は、50kGyのγ線線量の露出後機械的性質を維持する。多くの他のプラスチックのように、Topas COCはγ線に露出後線量依存性変色を示す。γ線照射における色安定性改善の等級が要求できる。
【0051】
医薬品及び診断薬部門におけるプラスチックの使用基準は各国薬局方(US、EU及びJP)中で、そして適切な規制当局によって規定される。材料試験プログラムガイドラインは、FDA、及び国際標準化機構(ISO10993)によって与えられる。試験プログラムは特定の用途及び人体との接触期間によって決められる。Topas COC材料の生体適合性試験は、FDAブルーブックメモランダムによって与えられたガイドラインに従って、そして国際標準化機構(ISO10993)によって実施された。Topas等級の範囲はこの材料の生体適合性試験プログラムにかけられた。プロトコールは以下を含んだ:急性全身及び皮内毒性、筋肉移植、物理化学的試験、血液適合性(溶血)、及び細胞毒性。これらの等級はUS薬局方XXIII−クラスVIの規格を満たす。特定の等級に対応する証明書は入手可能である。化学的性質及び抽出試験は、US、EU及び日本薬局方に記載のプロトコールに従って成功裏に実施されている。これらの試験は材料の全般スクリーングを目的としている。ここで議論される情報は、特定な用途に対して具体的に試験するために使用される予定のプロトコールの包装/デバイスメーカーの考察への出発点としてだけに使用されるべきである。それ故にこれらの結果の提示は、包装又はデバイスのメーカーで必要とされる試験を置き換えることを目的とするものではない。それはまたいずれか特定の用途のための材料の推奨と考えられるべきではない。特定の用途に使用される材料が使用目的に好適であることを確実にするのは、包装/デバイスメーカーの責任である。
【0052】
非浸出可能又は実質的に非浸出可能
容器は激しい条件下に許容可能な抽出性結果を示す必要がある。原理上は、強制条件下に溶出するすべての有機及び無機化合物はモニターされる必要がある。実際には、化合物の検出は解析評価閾値を越えた濃度に限定される。
【0053】
ICP−MS結果
ポンプチップを通したICP−MSによる抽出物の解析は下記の結果を示している:下記のエレメントに対する抽出は
・500−1300mg/Lの濃度範囲の穴
・100−1100mg/Lの濃度範囲のナトリウム
・16−20mg/Lの濃度範囲のカルシウム
のポンプチップ抽出から由来するかなりの量の化合物を提示している。
【0054】
すべてのこれらのエレメントが毒作用を有することは公知ではない;しかしながらこれらの結果は安全性評価のために毒物学者によって精査される必要がある。
【0055】
GC−MS結果
半揮発性化合物の分析結果はここで提示される。コントロール(容器材料と接触していない)として使用されたプラセボ中にも存在しなかった試験項目から生じる唯一のピークは、暫定的に単一窒素を備えたフタラートと同定された。しかしながら、このピークの半定量的分析では、その化合物が0.1と0.2mg/Lの範囲内に存在していることを示す。10の安全係数を取ることにより、この量は遺伝毒性エレメントの限界閾値内に残る。
【0056】
この抽出研究の結果は、過大な抽出条件を用いてさえも、容器の材料は限定量の化合物を放出し、そしてそれ故に実質的に非浸出可能であることを示唆する。
【0057】
溶接能力
高周波溶接を除いた、種々の溶接法は、Topas COCレジンから作られる成形部材を接合するのに使用されることができる。最も好適な溶接法は主として特定の部材によって決まり得る。