(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム成分に対して親和性を有する樹脂で被覆されたエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部〜100質量部であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びポリオレフィンアイオノマー樹脂又は無水マレイン酸変性α−ポリオレフィン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、必要に応じて図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0011】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、少なくとも、路面と接するトレッドに設けられた発泡ゴム層を備え、さらに必要に応じて、その他の部材を備える。
【0012】
<タイヤの構造>
図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。
本発明に係るタイヤは、路面と実質接する面に発泡ゴム層が設けられるタイヤ、具体的には、
図1に示すように、タイヤトレッドの少なくとも路面と実質接する面に、独立気泡を含有する発泡ゴム層を設けた空気入りタイヤからなる。
例えば、
図1に示すように、一対のビード部11、11’と、該一対のビード部11、11’にトロイド状をなして連なるカーカス12と、該カーカス12のクラウン部をたが締めするベルト13と、キャップ部15とベース部16との二層から成るトレッド14とを順次配置したラジアル構造を有する。トレッド14のキャップ部15は、ゴム組成物を加硫させて形成した発泡ゴム層である。
なお、トレッド14以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
タイヤ10は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、未加硫のトレッドが加硫されてなる本発明の発泡ゴム層で形成されたキャップ部15を有するタイヤ10が得られる。
なお、
図1においては、二層構造を有するトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は、特に制限はなく、一層構造でもよい。さらに、タイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向又はトレッド幅方向に分割された構造でもよい。トレッドの表面層の少なくとも一部がゴム組成物により構成されていることが好ましい。
【0013】
<発泡ゴム層>
前記発泡ゴム層を構成するゴム組成物は、少なくとも、ゴム成分と、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維と、無機化合物粉体とを含み、さらに必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、発泡剤、発泡助剤、その他の成分、を含む。
【0014】
−ゴム成分−
前記ゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム、各種ブタジエンゴム(例えば、ポリブタジエンゴム)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含むものが好ましい。
【0015】
前記天然ゴムの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、20質量部〜80質量部が好ましく、30質量部〜50質量部がより好ましい。
前記天然ゴムの含有量が、前記好ましい範囲外であると、タイヤ性能に影響が出て、氷上性能が悪化することや、加工性が悪化することがある。
【0016】
前記ポリブタジエンゴムの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、20質量部〜80質量部が好ましく、50質量部〜70質量部がより好ましい。
前記ポリブタジエンゴムの含有量が、前記好ましい範囲外であると、タイヤ性能に影響が出て、氷上性能が悪化することや、加工性が悪化することがある。
【0017】
なお、タイヤのトレッドに用いるゴム成分のガラス転移温度としては、−60℃以下が好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
【0018】
−エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維−
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維としては、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂で被覆されたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の表面は、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層が形成されてなる。かかる被覆層を形成することで、エチレン−ビニルアルコール共重合体自体が有する水との親和性を有効に保持しつつ、繊維近傍のゴム成分との良好な親和性を発揮することができる。すなわち、ゴム成分中における繊維の良好な分散を確保することとなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体に起因する排水性効果を充分に発揮させることができる。また、加硫時には、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂が、溶融して流動性を帯びた被覆層となってゴムと繊維との接着を図ることに寄与し、良好な排水性と優れた耐破壊力が付与されたタイヤを容易に実現することができる。また、上記被覆層は、繊維の全表面にわたって形成されていてもよく、繊維の一部の表面に形成されていてもよく、具体的には、少なくとも繊維全表面積の50%を占める割合で被覆層が形成されていればよい。
【0020】
−−ゴム成分に対して親和性を有する樹脂−−
前記ゴム成分に対して親和性を有する樹脂としては、特に制限は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、分岐状、直鎖状等のいずれであってもよい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂であってもよい。前記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、これらのアイオノマー樹脂(ポリオレフィンアイオノマー樹脂)、無水マレイン酸変性α−ポリオレフィン樹脂、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィンアイオノマー樹脂、無水マレイン酸変性α−ポリオレフィン樹脂が好ましい。ここで、ポリオレフィンアイオノマー樹脂や無水マレイン酸変性α−ポリオレフィン樹脂を用いた場合、水酸基とも接着するため、ゴム強度をより向上させることが可能となる。
【0022】
前記ゴム成分に対して親和性を有する樹脂を有する樹脂からなる被覆層が形成されたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる繊維を製造するには、
図2に示すようなダイ1を具えた二軸押出機を2台用いる。ダイ出口2からはエチレン−ビニルアルコール共重合体が、ダイ出口3からはゴム成分に対して親和性を有する樹脂を有する樹脂が各々同時に押し出され、これから未延伸糸を形成し、かかる未延伸糸を熱延伸しながら繊維状にする。ホッパーへの投入量は、得られる繊維の長さや径によっても変動し得るが、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂を0.1質量部〜80質量部、好ましくは0.1質量部〜20質量部の量であるのが望ましい。これらの樹脂を上記範囲内の量で投入することにより、延伸工程を経た後に得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる繊維の表面に、所望の効果を発揮し得る被覆層が有効に形成されてなる。
【0023】
−−繊維の平均長さ−−
前記繊維の平均長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、0.1mm〜500mmであり、0.1mm〜7mmが好ましい。
前記繊維の平均長さが0.1mm〜500mmであると、繊維同士が必要以上に絡まるおそれがなく、良好な分散性を阻害するおそれもない。
【0024】
−−繊維の平均径−−
前記繊維の平均径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、0.001mm〜2mmであり、0.005mm〜0.5mmが好ましい。
前記繊維の平均径が0.001mm〜2mmであると、繊維同士が必要以上に絡まるおそれがなく、良好な分散性を阻害するおそれもない。
【0025】
−−繊維の配合量−−
前記繊維の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量部〜100質量部が好ましく、0.1質量部〜50質量部がより好ましい。
前記繊維の配合量が0.1質量部〜100質量部であると、良好な排水性を保持しつつ、充分な耐破壊性を付与することが可能となる。
【0026】
前記被覆層が形成されたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる繊維100の一例を
図3(a)〜(b)の縦断面斜視図に示す。
図3(a)に示すように、繊維100のほぼ中心に位置するエチレン−ビニルアルコール共重合体Aの周囲をゴム成分に対して親和性を有する樹脂Bが取り巻く態様で被覆していてもよく、
図3(b)に示すように、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂B内にエチレン−ビニルアルコール共重合体Aが随所に散在する態様で、エチレン−ビニルアルコール共重合体Aの表面をゴム成分に対して親和性を有する樹脂Bが被覆していてもよい。
【0027】
−無機化合物粉体−
前記無機化合物粉体としては、下記一般式(I)で表される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
M・xSiO
2・yH
2O・・・・・・(I)
〔一般式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaからなる群より選択される金属の金属酸化物又は金属水酸化物であり、x及びyはそれぞれ独立に0〜10の整数である。〕
【0028】
前記一般式(I)で表される無機化合物粉体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)
2]、酸化マグネシウム(MgO)、チタン白(TiO
2)、チタン黒(TiO
2n−1)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO
2・9H
2O)、クレー(Al
2O
3・2SiO
2)、カオリン(Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O)、パイロフィライト(Al
2O
3・4SiO
2・H
2O)、ベントナイト(Al
2O
3・4SiO
2・2H
2O)、などが挙げられる。なお、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO
4)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO
3)も本発明の無機化合物粉体と同等の効果を発揮する。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]、下記一般式(II)で表される無機化合物粉体が好ましく、水酸化アルミニウムが、氷上性能及びWET性能の向上の点で、より好ましい。また、本発明で用いる水酸化アルミニウムは、アルミナ水和物も含むものである。
Al
2O
3・mSiO
2・nH
2O・・・・・(II)
〔一般式(II)中、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。〕
前記一般式(II)で表される無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ、クレー(Al
2O
3・2SiO
2)、カオリン(Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O)、パイロフィライト(Al
2O
3・4SiO
2・H
2O)、ベントナイト(Al
2O
3・4SiO
2・2H
2O)、等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、クレー(Al
2O
3・2SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)が好ましい。
【0029】
−−無機化合物粉体の平均粒径−−
前記無機化合物粉体の平均粒径としては、10μm以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜40μmが好ましく、18μm〜30μmがより好ましい。
前記無機化合物粉体の平均粒径が10μm以上であると、氷上性能を向上し得る。無機化合物粉体の粒径を大きくすることにより排水溝が大きくなるため、排水が効率よく行われる。これにより、排水性能が向上する。一方、40μm以下であると、タイヤトレッド用ゴムの耐破壊特性、特に耐摩耗性に対する影響が小さいので好ましい。
【0030】
−−無機化合物粉体の配合量−−
前記無機化合物粉体の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して5質量部〜30質量部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部〜15質量部が好ましい。
前記無機化合物粉体の配合量が5質量部未満であると、氷上性能を向上させることができず、30質量部を超えると、耐摩耗性に悪影響を及ぼす。
【0031】
−カーボンブラック−
前記カーボンブラックとしては、そのゴム層の力学的性能を高め、加工性等を改善させるものである限り、特に制限はなく、I
2吸着量、CTAB比表面積、N
2吸着量、DBP吸着量等の範囲を適宜選択した公知のカーボンブラックを使用することができる。
前記カーボンブラックの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SAF、ISAF−LS、HAF、HAF−HS等の公知のものが挙げられる。
前記カーボンブラックの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、5質量部〜55質量部が好ましく、10質量部〜50質量部がより好ましい。
前記カーボンブラックの配合量が、5質量未満又は55質量部超であると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能に悪影響を与えることがある。
【0032】
−シリカ−
前記シリカとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、湿式シリカ及び乾式シリカのいずれであってもよいが、湿式シリカが好ましい。
前記シリカの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、5質量部〜55質量部が好ましく、30質量部〜50質量部がより好ましい。
前記シリカの配合量が、5質量未満又は55質量部超であると、耐破壊性を低下させ、作業性にも悪影響を与えることがある。
【0033】
−発泡剤及び発泡助剤−
前記発泡剤は、加流後に気泡を形成させるために、前記発泡ゴム層の成形前の未加硫ゴム組成物中に配合される。前記発泡剤を用いることにより、加硫ゴム又はトレッドとなる発泡ゴム層は、長尺状気泡を有してミクロな排水溝を形成して、水膜除去性能が付与される。
前記発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。前記発泡剤の作用により、得られた加硫ゴムは発泡率に富む発泡ゴムとなる。
前記発泡剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して1質量部〜10質量部程度が好ましい。
【0034】
また、効率的な発泡を行う観点から、その他の成分として発泡助剤を用い、前記発泡剤と併用するのが好ましい。
前記発泡助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等の発泡製品の製造に通常使用する助剤、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛が好ましい。
【0035】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない範囲で用いることができ、例えば、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフイド等の加硫促進剤、加硫促進助剤、N一シクロへキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の硫化防止剤、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、カーボンブラック及びシリカ以外の無機充填材、通常ゴム業界で用いる各種配合剤、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよく、市販品を使用してもよい。
【0036】
−発泡ゴム層の形成方法−
前記発泡ゴム層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ゴム組成物を、以下の条件及び手法にて、混練り、熱入れ、押出等する方法が挙げられる。
【0037】
前記混練における、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を使用することができる。
前記熱入れ又は前記押出における、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を使用することができる。
なお、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合は、その発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。前記押出温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90℃〜110℃程度が好ましい。
【0038】
加硫の条件乃至方法としては、特に制限はなく、ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができる。トレッドとしての発泡ゴム層を製造する場合には、モールド加硫が好ましい。加硫の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。加硫装置は、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。
【0039】
−発泡ゴム層の発泡率−
前記発泡ゴム層の発泡率としては、3%〜50%である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15%〜40%が好ましい。
前記発泡率が3%未満であると、前記トレッドにおける凹部の体積が小さく、氷上性能を十分に向上させることができない。一方、前記発泡率が50%を超えると、トレッドにおける氷上性能は十分であるものの、トレッド内における気泡が多くなり破壊限界が低下する傾向にあり、耐久性の点で好ましくない。
なお、前記発泡率Vsは、加硫ゴム又はトレッドにおける全発泡率を意味し、次式により算出できる。
Vs={(ρ
0/ρ
1)−1}×100(%)
ここで、ρ
1は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm
3)を表す。ρ
0は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm
3)を表す。なお、加硫後のゴム(発泡ゴム)の密度及び加硫後のゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出することができる。
【0040】
前記発泡ゴム層に形成される長尺状気泡の平均径(μm)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜500μm程度が好ましい。前記平均径が10μm未満であると、ゴム表面に形成されるミクロの排水溝の水排除性能が低下する。前記平均径が500μmを超えると、ゴムの耐カット性、ブロック欠けが悪化し、また、乾燥路面での耐摩耗性が悪化することがある。
【0041】
本発明に係るタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用できる。氷雪路面上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適に使用できる。タイヤのトレッドは、前記氷上でのスリップを抑えることが必要な限り、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ等に使用できる。また、タイヤが空気入りタイヤである場合、内部に充填する気体としては空気のほかに窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0042】
タイヤのトレッドに設けられた発泡ゴム層を構成するゴム組成物が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)繊維、及び、無機化合物粉体を含むことにより、本発明の目的を達成し得る。
【0043】
より詳細には、タイヤのトレッドに設けられた発泡ゴム層を構成するゴム組成物として、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂で被覆されたエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維と、大粒径(平均粒径10μm以上)の無機化合物粉体(例えば、水酸化アルミニウム)を用いることにより、タイヤ表面において、無機化合物粉体が脱離して空泡が形成され、これにより氷上性能が向上する。
【0044】
また、発泡ゴム層内には、大粒径(平均粒径10μm以上)の無機化合物粉体(例えば、水酸化アルミニウム)が存在したままであるので、気泡成分の増大を抑制することができ、転がり抵抗を低減することができる。
【0045】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維は、親水性であるため、効率よく排水することができる。
【0046】
さらに、大粒径(平均粒径10μm以上)の無機化合物粉体(例えば、水酸化アルミニウム)は、発泡成分とは異なり、近接するエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維に取り込まれることはないため、無機化合物粉体がタイヤ表面に露出して脱離することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維間に流路が形成されて排水性を更に向上させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(製造例1:被覆層が形成された繊維Aの製造)
上述した二軸押出機を2台用い、ホッパーにエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、エバールF104B)100質量部とポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックU360)10質量部とを投入し、ダイ出口2からエチレン−ビニルアルコール共重合体を、ダイ出口3からポリエチレンを各々同時に押し出して、常法に従って得られた繊維を長さ5mmにカットして、ポリエチレンからなる被覆層が形成された繊維Aを作製した。
また、下記評価方法により、繊維Aの分散性、引張強度(Tb)及び破断伸び(Eb)を測定したところ、それぞれ、7.3、23.5MPa、578%であった。
【0049】
《分散性》
マイクロスコープ(VHX−500、(株)キーエンス製)を用い、倍率100倍のときの画面に存在する繊維の数を測定し、これを同一ゴム中で10箇所の異なる場所で測定した。次いで、繊維の数の平均値と、それぞれの場所に存在する繊維の数の標準偏差との値から分散性を評価した。
【0050】
《引張強度(Tb)》
JIS K 6301に準拠して、引張強度(MPa)を求めた。
【0051】
《破断伸び(Eb)》
JIS K 6301に準拠して、破断伸び(%)を求めた。
【0052】
(製造例2:繊維Bの製造)
上述したホッパーにポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックU360)のみを投入し、ダイ出口2及びダイ出口3の双方からポリエチレンを押し出して、製造例1と同様にして繊維Bを作製した。
また、上記評価方法により、繊維Bの分散性、引張強度(Tb)及び破断伸び(Eb)を測定したところ、それぞれ、7.5、23.5MPa、521%であった。
【0053】
(実施例1〜8及び比較例1〜11)
表1に示す配合処方により実施例1〜8及び比較例1〜11の19種類のゴム組成物を調製した。これら各ゴム組成物を用い、タイヤのトレッド(発泡ゴム層)を形成し、常法に従って各試験用の19種類の乗用車用ラジアルタイヤ(タイヤサイズは195/65R15)を製造した。これらの乗用車用ラジアルタイヤを以下の評価方法により、氷上性能及び転がり抵抗(RRC)を評価した。結果を表1に示す。
なお、発泡ゴム層の発泡率Vs(%)は、次式により算出した。
Vs={(ρ
0/ρ
1)−1}×100(%)
ここで、ρ
1は、発泡ゴム層の密度(g/cm
3)を表す。ρ
0は、発泡ゴム層おける固相部の密度(g/cm
3)を表す。なお、発泡ゴム層の密度及び固相部の密度は、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出した。
【0054】
<氷上性能>
トレッド部の摩耗率が20%のタイヤを装着した乗用車にて、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上での制動性に優れることを示す。
なお、トレッド部の摩耗率は、下記式により算出された。
摩耗率(%)=(1−摩耗後の溝深さ/新品時の溝深さ)×100
【0055】
<転がり抵抗(RRC)>
タイヤを回転ドラムにより80km/hの速度で回転させることで測定した。なお、荷重を4.41kNとした。比較例1の測定値を100として指数化した。数字が大きいほど、低転がり抵抗であることを示す。
【0056】
【表1】
(注)
1)シス−1,4−ポリブタジエンゴム:(商品名BR01、JSR株式会社製)
2)カーボンブラック:(商品名:カーボンN220、旭カーボン株式会社製)
3)シリカ:(商品名:ニップシールAQ(BET表面積220m
2/g、日本シリカ工業株式会社製)
4)水酸化アルミニウム:(商品名:ハイジライトH−31(平均粒径20μm)、昭和電工(株)製)
5)ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
6)ポリエチレンで被覆されたエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(繊維平均長さ5mm)
7)ポリエチレン繊維(繊維平均長さ5mm)
8)老化防止剤(IPPD):(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
9)加硫促進剤(MBTS):ジベンゾチアジルジスルフィド
10)加硫促進剤(CBS):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
11)発泡剤(DPT):ジニトロソペンタメチレンテトラミン
12)水酸化アルミニウム:(商品名:ハイジライトH−32(平均粒径8μm)、昭和電工(株)製)