【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液を用いたポリアミド顆粒の湿式含浸により、ポリアミド耐熱性を付与するためにポリアミド顆粒を製造する方法を提案することにより、上記の要求を満たし、この方法は、ポリアミド顆粒を、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液と接触させるものであり、ポリアミドに対する水溶液の全量は1重量%以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明はまた、工業用糸の製造のために得られるポリアミド顆粒の使用、並びにこのようにして得られる工業用糸にも関する。
【0025】
本発明の他の主題は、本発明の工業用糸から得られる製品、特に、エアバッグ織物又はタイヤコード織物などの織物製品である。
【0026】
本発明の方法は、ポリアミド顆粒を必要とする。
【0027】
ポリアミドは、2つの異なるモノマー同士の反応か、又はただ1つのモノマーの重縮合のいずれかによって得られる。
【0028】
本発明は、第1に、2つの異なるモノマーから得られるポリアミドに適用するが、そのうち最も重要なポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)又はポリアミド66である。言うまでもなく、これらのポリアミドは、二酸とジアミンの混合物から得ることができる。従って、ポリアミド66の場合、主要なモノマーは、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸である。しかし、これらのモノマーは、25モル%以下の他のジアミン及び/又は二酸モノマー及び/又はアミノ酸及び/又はラクタムモノマーを含んでもよい。
【0029】
本発明は、第2に、ただ1つのモノマーから得られるポリアミドに適用するが、そのうち最も重要なポリアミドは、ポリカプロラクタム又はポリアミド6である。言うまでもなく、これらのポリアミドは、ラクタム及び/又はアミノ酸の混合物から得ることができる。従って、ポリアミド6の場合、主要なモノマーは、カプロラクタムである。しかし、これらのモノマーは、25モル%以下の他のアミノ酸及び/又はラクタムモノマー及び/又はさらにはジアミン若しくは二酸モノマーを含んでもよい。
【0030】
2つの異なるモノマーから得られるポリアミドのクラスは、一般に、水などの溶媒中で、二酸とジアミンを化学量で混合することによって得られる塩を出発材料として用いて、一般に製造される。
【0031】
従って、ポリアミド66の製造において、一般に、水中でアジピン酸をヘキサメチレンジアミンと混合することにより、アジピン酸ヘキサメチレン二アンモニウムを取得するが、これは、より一般的には、ナイロン(Nylon)塩又は「N塩」として知られる。N塩溶液は、任意選択で水の一部又は全部蒸発により濃縮させる。
【0032】
単一モノマーから得られるポリアミドのクラスは、一般に、ラクタム及び/又はアミノ酸、並びに少量の水を出発材料として用いて製造され;水の重量比は、一般に1%〜15%である。
【0033】
ポリアミドは、モノマーの水溶液(例えば、前述したナイロン塩の溶液)、又はモノマーを含む液体を高温及び高圧で加熱することにより、水を蒸発させると同時に、混合物が固体に凝固しないように、上記段階でのあらゆる形成を回避することによって得られる。
【0034】
重合ステップは、所望の重合度まで継続される。
【0035】
重合方法は、当業者には公知である。これらは、回分式又は連続式方法のいずれであってもよい。
【0036】
重合工程中に添加剤を導入してもよい。挙げることができる添加剤の例として、二酸化チタンのような艶消し剤、酢酸マンガンのような光安定剤、フェニルリン酸又はフェニルホスフィン酸などの触媒、消泡剤などがある。これらの添加剤は、当業者には周知である。上に挙げたリストは、網羅的なものではない。
【0037】
好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4.6、ポリアミド5.6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド9.T、ポリアミド10.T及びこれらのコポリマーから選択される。これらはまた、イソフタル若しくはテレフタル酸などの二酸モノマー、又はメタ−キシレンジアミン若しくはパラ−キシレンジアミンなどのジアミンモノマーを用いて得られる単位を含むコポリマーであってもよい。例えば、4.T、6.T、6.I、MXD.6及びPXD.6単位などが挙げられる。
【0038】
本発明の特に有利な形態によれば、ポリアミド6.6が好ましい。
【0039】
一般に、重合ステップから得られる溶融ポリアミドを押し出し、成形、特に顆粒に成形する。
【0040】
本発明の目的のために、「顆粒」と言う用語は、それらが固体ポリアミド粒子であることを意味する。
【0041】
本発明の方法で用いることができる顆粒は、様々な形態であってよい。これらは、例えば、円筒、球、長円などの形状であってもよい。
【0042】
ポリアミド顆粒は、溶融ポリアミドの押出、続いて顆粒化ステップにより得られる。
【0043】
ダイを用いたポリアミド融液の押出からなるステップは、当業者には周知の常用の方法で実施する。
【0044】
ダイは、一般に、重合化反応器の出口、又はポンプを用いて溶融ポリマーが供給される輸送管の出口、又は大気圧より高い圧力を形成することができる混練装置、一般に押出機の出口に配置する。
【0045】
ダイ出口で、ポリアミドは、一般に、ロッド又はストリップの形態であるか、又は例えば、水中ペレット化の場合には、直接、顆粒の形態である。
【0046】
顆粒化ステップは、押出後に得られるポリアミドの冷却を含む。材料の冷却により、特に、この材料を少なくとも表面的に凝固することが可能になる。
【0047】
このようなステップに好適な冷却装置は、当業者には公知である。この冷却装置は、ダイプレートの装置付近に位置する冷水噴霧装置から構成されるものでもよい。これはまた、押し出されたポリアミドが導入されるダイプレートの装置付近又はそれと接触して位置する水浴若しくは水流であってもよい。また、散水装置を用いてもよい。
【0048】
次に、冷却されたポリアミドを顆粒状に切断する。この切断は、冷却ステップ中又はステップ後に実施してもよい。
【0049】
このステップに好適な切断装置は、当業者には公知である。切断装置は、刃を備えるミリングカッター装置であってもよいし;また、ナイフ及びナイフブロックを備える装置であってもよい。
【0050】
切断前に、冷却液、一般に水をポリマーロッド又はストリップから分離する場合、ロッド又はストリップを「乾式」切断する。
【0051】
顆粒状への切断後に、冷却液、一般に水をポリマー顆粒から分離する場合には、顆粒からこの液体を分離する前に、一般に顆粒も冷却液で冷却する。
【0052】
冷却装置は、ダイプレートの装置付近に位置する冷水噴霧又は循環装置から成るものであってもよい。これは、当業者には公知の「ペレット化」造粒機の場合に該当する。切断装置及びダイプレートはまた、水を充填したチャンバ内に配置してもよく、この場合、これは、「水中ペレット化」造粒機である。このような「水中ペレット化」造粒装置は、例えば、米国特許第5,059,103号明細書に記載されている。
【0053】
造粒は、造粒プラットフォーム上で実施してもよく、これは、一般に、押出ポリアミドを誘導及び冷却する装置、切断装置、並びに分離装置に輸送する装置を含む。これらの造粒プラットフォームは、当業者には公知である。
【0054】
ポリアミド顆粒は、一般に、ISO307規格に従い90重量%のギ酸中で115〜150mL/g、好ましくは、ISO307規格に従い90重量%のギ酸中で125〜140mL/gの粘度指数(VI)を有する。
【0055】
本発明の別の特徴によれば、ポリアミド顆粒の末端基は、任意の固相後縮合ステップ中のポリマーのモル質量の変化を制限しないように、十分に平衡させる。これらは、有利には、絶対値として、0〜35meq./kgのカルボキシル及びアミン末端基Δ(GT)同士の濃度差を有する。
【0056】
本発明の耐熱性を有するポリアミド顆粒の製造方法は、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液も必要とする。
【0057】
熱安定剤は、有利には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とハロゲン化銅の混合物である。この混合物中、熱安定化の役割は、ハロゲン化銅が果たし、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物はそれ自体で、酸化銅を再生する働きをする。好ましくは、ハロゲン化アルカリ金属は、ヨウ化カリウム又はナトリウムであり、ハロゲン化銅はヨウ化銅である。
【0058】
熱安定剤は、ヨウ化カリウムとヨウ化銅の混合物であるのが特に好ましい。
【0059】
本発明によれば、すすぎ液、例えば、水を用いたすすぎステップは、顆粒を水溶液と接触させた後、実施するのが好ましい。
【0060】
本発明によれば、「ポリアミドに対する水溶液の全量」という用語は、あらゆるすすぎステップに由来する水を含む、用いられる水溶液の量の和を意味し、この和は、1重量%以下である。
【0061】
特に有利には、また、顆粒表面へのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の付着のあらゆる問題を解決するために、本発明で用いられる水溶液は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属臭化物を含まず、その際、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ヨウ化物が選択される。
【0062】
本発明によれば、ポリアミドに対する水溶液の全量は、0.15重量%〜1重量%、好ましくは0.20重量%〜1重量%、より優先的には0.3重量%〜0.9重量%であるのが有利である。
【0063】
ポリアミドに対して水溶液が1重量%を超えると、残留水の量によって、続く顆粒乾燥及び/又は縮合後ステップの生産性が損なわれる。ポリアミドに対して水溶液が2重量%以上になると、顆粒の自己凝集が観察され始める。ポリアミドに対して水溶液が3重量%以上になると、添加均質性が悪化し、顆粒の自己凝集が非常に顕著になる。
【0064】
熱安定剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とハロゲン化銅の混合物である場合、ハロゲン化物のモル数と銅のモル数との比は、7/1以上であるのが好ましい。好ましくは、この比は、10/1以上である。上限は、所望の熱安定性と経済的制約の間の妥協の理由から、有利には、25/1以下、好ましくは15/1以下が選択される。
【0065】
さらに、水溶液中の熱安定剤の量は、この水溶液中の熱安定剤の溶解限度に応じて変動する。好ましくは、水溶液中の熱安定剤の量は、熱安定剤の溶解限度以下である。従って、熱安定剤がヨウ化カリウムとヨウ化銅の混合物である場合、ヨウ化銅は、約50重量%のヨウ化カリウムの水溶液中に、6重量%以下の量で存在するのが有利である。
【0066】
熱安定剤が、臭化カリウムと臭化銅(CuBr
2)の混合物である場合、臭化銅は、30重量%の臭化カリウムの水溶液中に、15重量%以下の量で存在するのが有利である。
【0067】
顆粒と水溶液との接触は、室温(RT、約20℃)又はそれより高い温度で実施してよい。対象とする温度は、顆粒の温度である。好ましくは、接触は、熱安定剤を含む水溶液の沸点(Tb)を超える温度で実施すべきではない。
【0068】
特に有利には、接触は、ポリアミドのガラス転位温度(Tg)を超える温度で実施する。
【0069】
従って、接触させる温度は、室温から、熱安定剤を含む水溶液の沸点(RT〜Tb)までが有利であり、より優先的には、ポリアミドのガラス転位温度から、熱安定剤を含む水溶液の沸点(Tg〜Tb)までである。
【0070】
好ましくは、ポリアミド66の場合、接触は、温度が20℃〜100℃、好ましくは80℃〜95℃である顆粒で実施する。
【0071】
一般に、接触は、大気圧でのチャンバ内で実施する。
【0072】
本発明の方法の好ましい変形態様によれば、本発明の方法は、不活性ガスの制御雰囲気下で実施する。希ガス、好ましくはアルゴンの雰囲気を形成することができるが、窒素を使用する方が経済的である。
【0073】
ポリアミド顆粒と、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液との接触は、水溶液の噴霧により実施するのが有利である。
【0074】
噴霧は、フラットジェットタイプの噴霧ノズルを用いて実施するのが有利であり、このタイプのノズルは、ブレード状に均質に液体を散布し、単位表面積当たり最大の効果を提供する。噴霧は、例えば、1〜5バール、好ましくは約3バールの噴霧圧で実施してよい。噴霧の持続時間は、処理しようとするポリマーの量に応じて変動する。
【0075】
すすぎ液、例えば、水を用いるすすぎステップを考慮する場合、これもまた、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液について用いたものと同じ噴霧ノズルを用いて噴霧することにより実施する。すすぎステップは、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液及びポリアミド顆粒を接触させるステップと連続的に行ってもよい。好ましくは、すすぎ液の噴霧は、少なくとも1種の安定剤を含む水溶液の噴霧から1分未満に実施する。
【0076】
少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧ステップは、例えば、パドルミキサーを用いて顆粒を撹拌しながら実施するのが好ましい。さらに、当業者には公知の他のいずれのミキサーも使用に好適でありうる。
【0077】
少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の混合(又は撹拌)及び噴霧は、同時に開始するのが有利である。顆粒の混合もまた、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧の開始前に始めてもよい。
【0078】
噴霧ステップの長さは、噴霧する水溶液と接触する表面の再生と適合可能であるように計算する。表面の再生は、混合時間、すなわち、所与の不均質状態から所望される程度の均質化を達成するのに必要な時間に準えることができる。この長さは、用いる装置に応じて変動し、当業者が常用の試験を用いて、容易に決定することができる。混合速度は、処理しようとする顆粒の量により、また、使用する装置によっても変動する。当業者は、どのようにしてこのパラメータを調節するかを熟知している。有利には、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧を、撹拌した顆粒に実施し、それから撹拌を継続する。少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧後の顆粒の撹拌(又は混合)は、0.1〜40分、好ましくは5〜30分持続する。
【0079】
室温で、10〜40分、好ましくは15〜30分の水溶液の噴霧後の混合時間は、一般に計算すべきである。温度がポリアミドのガラス転位温度を上回る場合、噴霧後の混合時間は、一般に、約1〜10分であり、好ましくは2〜5分である。
【0080】
実用的観点から、本方法は、回分式又は連続式で実施してよい。