特許第6097763号(P6097763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097763ポリアミド顆粒を製造する方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097763
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ポリアミド顆粒を製造する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20170306BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20170306BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20170306BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20170306BHJP
   D01F 6/90 20060101ALI20170306BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20170306BHJP
   D03D 1/02 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCFG
   C08G69/46
   C08K3/16
   C08L77/00
   C08L77/06
   D01F6/90 301
   D03D15/00 E
   !D03D1/02
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-546414(P2014-546414)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-505884(P2015-505884A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2012074408
(87)【国際公開番号】WO2013087464
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】1161680
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508076598
【氏名又は名称】ロディア オペレーションズ
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ティエブレモン
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−037704(JP,B1)
【文献】 特開2003−055549(JP,A)
【文献】 特開平08−325382(JP,A)
【文献】 特開昭49−034550(JP,A)
【文献】 特開2010−185028(JP,A)
【文献】 特開2008−285767(JP,A)
【文献】 特開2010−047036(JP,A)
【文献】 特開昭48−052846(JP,A)
【文献】 特開平10−324800(JP,A)
【文献】 特開平10−292107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C08G 69/00− 69/50
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
D01F 1/00− 6/96
9/00− 9/04
D03D 1/00− 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液を用いたポリアミド顆粒の湿式含浸により、耐熱性を備えるポリアミド顆粒を製造する方法であって、
前記ポリアミド顆粒を、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液と接触させるが、前記ポリアミドに対する前記水溶液の全量が1重量%以下であること
前記ポリアミド顆粒を、少なくとも1種の熱安定剤を含む前記水溶液と接触させるステップが、少なくとも1種の熱安定剤を含む前記水溶液を噴霧することによって実施されること、並びに
少なくとも1種の熱安定剤を含む前記水溶液と接触させた後に得られる前記ポリアミド顆粒を固相後縮合ステップに直接付すこと、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記熱安定剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とハロゲン化銅の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属ハロゲン化物が、ヨウ化カリウム又はナトリウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化銅が、ヨウ化銅である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記熱安定剤が、ヨウ化カリウムとヨウ化銅の混合物である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化物のモル数と前記銅のモル数の比が、7/1以上である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヨウ化銅が、50重量%のヨウ化カリウム水溶液中の6重量%以下に等しい量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記顆粒を、少なくとも1種の熱安定剤を含む前記単一水溶液と接触させた後、水ですすぐステップを実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアミドに対する水溶液の量が、0.15重量%〜1重量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミドが、ポリアミド66である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工業用糸の製造を目的とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られるポリアミド顆粒の使用。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法から得られる前記顆粒を紡糸することによる工業用糸の製造方法
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られる工業用糸の、織物製品の製造のための使用
【請求項14】
前記織物製品がエアバッグ又はタイヤコードである、請求項13に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドに耐熱性を賦与する、ポリアミド顆粒の製造方法、並びにまた、特にエアバッグ又はタイヤコード用の工業用糸を製造する分野におけるこれら顆粒の使用に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、熱安定剤を含む水溶液を用いたポリアミド顆粒の湿式含浸により、耐熱性を備えたポリアミド顆粒を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
工業用糸、すなわち一般にタイヤ又はエアバッグ用のコード織物を製造するための糸の分野において、ポリアミドの使用が広がっている。このようなポリアミド糸は、耐熱性でなくてはならず、そのためには、1種以上の安定剤を用いることが常用の方法である。
【0004】
通常の熱安定剤は、一般に、銅化合物、特に銅塩(酢酸塩、ヨウ化物、臭化物など)であり、往々にしてハロゲン化カリウム又はナトリウムなどのハロゲン化鉱物と組み合わされるが、これらのハロゲン化物は、銅をin situで再生する役割を有する。
【0005】
しかし、「タイヤコード」及び「エアバッグ」適用は、ポリマーマトリックスの均質性に関して異なる特殊性を有する。
【0006】
具体的には、エアバッグ用の糸は、タイヤコード製造用の糸より、細い番手でなければならない。細番手の規定は、ポリマーマトリックスが、紡糸中に破断しないように完全に均質でなければならないことを意味する。
【0007】
さらに、このようにして得られた糸は、実施工程(例えば、紡織)の性能の低下を一切引き起こさず、従って、それらの適用において完全な信頼性を達成できるように、破断を招き得る欠陥、又は外観上の欠陥が一切あってはならない。
【0008】
現時点で、添加剤を添加する複数の方法が知られている。主として次の3つの添加方法が知られている:重合中に、顆粒化前、又は紡糸ステップ直前のポリアミド融液への添加、並びに例えば、顆粒の固相後縮合のステップ前の顆粒上への添加。
【0009】
工業用糸の製造の場合、ポリアミド66の重合中に、3種の熱安定剤:酢酸銅、ヨウ化銅、臭化銅の溶液の添加が用いられている。
【0010】
しかし、重合中に添加された銅化合物は、還元を被り、これによって、機械内(中でも、非撹拌反応器内)に付着物が形成されることが知られている。
【0011】
このような現象のために、機械の頻繁な洗浄が必要となり、これにより設備の生産性低下が生じる。その上、これらの付着物の分離は、マトリックスの均質性の欠如という問題を引き起こし、紡糸にマイナスの影響をもたらす。
【0012】
さらには、臭化カリウムの存在は、特定の条件下で、機械の腐食の問題を引き起こす可能性がある。
【0013】
しかも、重合中の添加によって、同じ設備内で製造されるポリマーの品質の変化に伴うコスト(洗浄時間、労働コスト、すすぎ工程中の不良品など)のために、該当する工業プロセスの柔軟性が制限される。
【0014】
前述のような重合中の添加の問題を解決するために、製造業者は、顆粒の湿式含浸による後期添加を利用している。「湿式含浸」という用語は、ポリアミド顆粒への熱安定剤の水溶液の添加を意味する。
【0015】
とは言え、現在提案されているようなポリアミド顆粒への水溶液のこの種の添加には、熱安定剤の水溶液による多量の水の使用から大きな問題が生じる。熱安定剤の溶媒として作用する水は、顆粒を濡らして、これらを熱安定剤で被覆する。
【0016】
従来の方法では、添加の均質性(顆粒の湿潤)を確実にするために、比較的多量の水が必要である。
【0017】
この多量の水は、安定剤の溶解に関する懸念からも必要とされる。さらに、安定剤の各々を溶解するのに少なくとも2種、例えば、一方で酢酸銅を、他方でヨウ化カリウム又は臭化カリウムの水溶液を用いるのが普通である。
【0018】
しかし、このような量の水の使用により、顆粒の自己凝集が起こる。その結果、顆粒は扱いにくくなり、一旦凝集すると、その表面に均質な添加を達成するのは不可能である。2種の溶液の使用はまた、機械の複雑さの問題ももたらし、品質の問題(汚染)及びプロセス活用の問題(付着)の原因である、不溶性銅化合物の沈殿の問題を回避するために、機械に2つの異なる供給管を備えなければならないか、又は2種の溶液の間にすすぎステップが必要となる。
【0019】
さらに、従来の方法は、固相後縮合の前に乾燥ステップの使用を必要とする。この乾燥ステップは、現在不可欠であるが、エネルギーに関して高価である。
【0020】
この問題を解決しようとして、日本特許第2004−231807号公報は、ハロゲン化鉱物の水溶液又は分散液の添加方法を提案しており、この方法では、水の量を、ポリアミドの重量に対して2%〜6%の重量濃度まで減少させる。この水の量は、確かに少量ではあるが、凝集の問題、及び添加済顆粒表面の均質性の不足を解決するには不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、特に均質な添加を可能にする方法によって、ポリアミド顆粒への湿式含浸により熱安定剤を添加する方法を改善する必要があり、この方法は、実施するのが簡単で、続く顆粒の乾燥ステップに関するコストを最小限に抑えるものである。
【0022】
そのため、本発明の目標の1つは、従来の方法の欠点がなく、特に、顆粒凝集の問題がなく、添加された顆粒の乾燥の作業を最小限にすると共に、顆粒の表面への熱安定剤の均質な添加を可能にするポリアミド顆粒を製造する方法を提案することである。さらに、この方法は、実施するのが簡単で、経済的であり、しかも、エアバック織物製造用のポリアミド糸及びタイヤコード織物製造用のポリアミド糸の両方の品質要件を満たすものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液を用いたポリアミド顆粒の湿式含浸により、ポリアミド耐熱性を付与するためにポリアミド顆粒を製造する方法を提案することにより、上記の要求を満たし、この方法は、ポリアミド顆粒を、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液と接触させるものであり、ポリアミドに対する水溶液の全量は1重量%以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明はまた、工業用糸の製造のために得られるポリアミド顆粒の使用、並びにこのようにして得られる工業用糸にも関する。
【0025】
本発明の他の主題は、本発明の工業用糸から得られる製品、特に、エアバッグ織物又はタイヤコード織物などの織物製品である。
【0026】
本発明の方法は、ポリアミド顆粒を必要とする。
【0027】
ポリアミドは、2つの異なるモノマー同士の反応か、又はただ1つのモノマーの重縮合のいずれかによって得られる。
【0028】
本発明は、第1に、2つの異なるモノマーから得られるポリアミドに適用するが、そのうち最も重要なポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)又はポリアミド66である。言うまでもなく、これらのポリアミドは、二酸とジアミンの混合物から得ることができる。従って、ポリアミド66の場合、主要なモノマーは、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸である。しかし、これらのモノマーは、25モル%以下の他のジアミン及び/又は二酸モノマー及び/又はアミノ酸及び/又はラクタムモノマーを含んでもよい。
【0029】
本発明は、第2に、ただ1つのモノマーから得られるポリアミドに適用するが、そのうち最も重要なポリアミドは、ポリカプロラクタム又はポリアミド6である。言うまでもなく、これらのポリアミドは、ラクタム及び/又はアミノ酸の混合物から得ることができる。従って、ポリアミド6の場合、主要なモノマーは、カプロラクタムである。しかし、これらのモノマーは、25モル%以下の他のアミノ酸及び/又はラクタムモノマー及び/又はさらにはジアミン若しくは二酸モノマーを含んでもよい。
【0030】
2つの異なるモノマーから得られるポリアミドのクラスは、一般に、水などの溶媒中で、二酸とジアミンを化学量で混合することによって得られる塩を出発材料として用いて、一般に製造される。
【0031】
従って、ポリアミド66の製造において、一般に、水中でアジピン酸をヘキサメチレンジアミンと混合することにより、アジピン酸ヘキサメチレン二アンモニウムを取得するが、これは、より一般的には、ナイロン(Nylon)塩又は「N塩」として知られる。N塩溶液は、任意選択で水の一部又は全部蒸発により濃縮させる。
【0032】
単一モノマーから得られるポリアミドのクラスは、一般に、ラクタム及び/又はアミノ酸、並びに少量の水を出発材料として用いて製造され;水の重量比は、一般に1%〜15%である。
【0033】
ポリアミドは、モノマーの水溶液(例えば、前述したナイロン塩の溶液)、又はモノマーを含む液体を高温及び高圧で加熱することにより、水を蒸発させると同時に、混合物が固体に凝固しないように、上記段階でのあらゆる形成を回避することによって得られる。
【0034】
重合ステップは、所望の重合度まで継続される。
【0035】
重合方法は、当業者には公知である。これらは、回分式又は連続式方法のいずれであってもよい。
【0036】
重合工程中に添加剤を導入してもよい。挙げることができる添加剤の例として、二酸化チタンのような艶消し剤、酢酸マンガンのような光安定剤、フェニルリン酸又はフェニルホスフィン酸などの触媒、消泡剤などがある。これらの添加剤は、当業者には周知である。上に挙げたリストは、網羅的なものではない。
【0037】
好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4.6、ポリアミド5.6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド9.T、ポリアミド10.T及びこれらのコポリマーから選択される。これらはまた、イソフタル若しくはテレフタル酸などの二酸モノマー、又はメタ−キシレンジアミン若しくはパラ−キシレンジアミンなどのジアミンモノマーを用いて得られる単位を含むコポリマーであってもよい。例えば、4.T、6.T、6.I、MXD.6及びPXD.6単位などが挙げられる。
【0038】
本発明の特に有利な形態によれば、ポリアミド6.6が好ましい。
【0039】
一般に、重合ステップから得られる溶融ポリアミドを押し出し、成形、特に顆粒に成形する。
【0040】
本発明の目的のために、「顆粒」と言う用語は、それらが固体ポリアミド粒子であることを意味する。
【0041】
本発明の方法で用いることができる顆粒は、様々な形態であってよい。これらは、例えば、円筒、球、長円などの形状であってもよい。
【0042】
ポリアミド顆粒は、溶融ポリアミドの押出、続いて顆粒化ステップにより得られる。
【0043】
ダイを用いたポリアミド融液の押出からなるステップは、当業者には周知の常用の方法で実施する。
【0044】
ダイは、一般に、重合化反応器の出口、又はポンプを用いて溶融ポリマーが供給される輸送管の出口、又は大気圧より高い圧力を形成することができる混練装置、一般に押出機の出口に配置する。
【0045】
ダイ出口で、ポリアミドは、一般に、ロッド又はストリップの形態であるか、又は例えば、水中ペレット化の場合には、直接、顆粒の形態である。
【0046】
顆粒化ステップは、押出後に得られるポリアミドの冷却を含む。材料の冷却により、特に、この材料を少なくとも表面的に凝固することが可能になる。
【0047】
このようなステップに好適な冷却装置は、当業者には公知である。この冷却装置は、ダイプレートの装置付近に位置する冷水噴霧装置から構成されるものでもよい。これはまた、押し出されたポリアミドが導入されるダイプレートの装置付近又はそれと接触して位置する水浴若しくは水流であってもよい。また、散水装置を用いてもよい。
【0048】
次に、冷却されたポリアミドを顆粒状に切断する。この切断は、冷却ステップ中又はステップ後に実施してもよい。
【0049】
このステップに好適な切断装置は、当業者には公知である。切断装置は、刃を備えるミリングカッター装置であってもよいし;また、ナイフ及びナイフブロックを備える装置であってもよい。
【0050】
切断前に、冷却液、一般に水をポリマーロッド又はストリップから分離する場合、ロッド又はストリップを「乾式」切断する。
【0051】
顆粒状への切断後に、冷却液、一般に水をポリマー顆粒から分離する場合には、顆粒からこの液体を分離する前に、一般に顆粒も冷却液で冷却する。
【0052】
冷却装置は、ダイプレートの装置付近に位置する冷水噴霧又は循環装置から成るものであってもよい。これは、当業者には公知の「ペレット化」造粒機の場合に該当する。切断装置及びダイプレートはまた、水を充填したチャンバ内に配置してもよく、この場合、これは、「水中ペレット化」造粒機である。このような「水中ペレット化」造粒装置は、例えば、米国特許第5,059,103号明細書に記載されている。
【0053】
造粒は、造粒プラットフォーム上で実施してもよく、これは、一般に、押出ポリアミドを誘導及び冷却する装置、切断装置、並びに分離装置に輸送する装置を含む。これらの造粒プラットフォームは、当業者には公知である。
【0054】
ポリアミド顆粒は、一般に、ISO307規格に従い90重量%のギ酸中で115〜150mL/g、好ましくは、ISO307規格に従い90重量%のギ酸中で125〜140mL/gの粘度指数(VI)を有する。
【0055】
本発明の別の特徴によれば、ポリアミド顆粒の末端基は、任意の固相後縮合ステップ中のポリマーのモル質量の変化を制限しないように、十分に平衡させる。これらは、有利には、絶対値として、0〜35meq./kgのカルボキシル及びアミン末端基Δ(GT)同士の濃度差を有する。
【0056】
本発明の耐熱性を有するポリアミド顆粒の製造方法は、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液も必要とする。
【0057】
熱安定剤は、有利には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とハロゲン化銅の混合物である。この混合物中、熱安定化の役割は、ハロゲン化銅が果たし、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物はそれ自体で、酸化銅を再生する働きをする。好ましくは、ハロゲン化アルカリ金属は、ヨウ化カリウム又はナトリウムであり、ハロゲン化銅はヨウ化銅である。
【0058】
熱安定剤は、ヨウ化カリウムとヨウ化銅の混合物であるのが特に好ましい。
【0059】
本発明によれば、すすぎ液、例えば、水を用いたすすぎステップは、顆粒を水溶液と接触させた後、実施するのが好ましい。
【0060】
本発明によれば、「ポリアミドに対する水溶液の全量」という用語は、あらゆるすすぎステップに由来する水を含む、用いられる水溶液の量の和を意味し、この和は、1重量%以下である。
【0061】
特に有利には、また、顆粒表面へのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の付着のあらゆる問題を解決するために、本発明で用いられる水溶液は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属臭化物を含まず、その際、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ヨウ化物が選択される。
【0062】
本発明によれば、ポリアミドに対する水溶液の全量は、0.15重量%〜1重量%、好ましくは0.20重量%〜1重量%、より優先的には0.3重量%〜0.9重量%であるのが有利である。
【0063】
ポリアミドに対して水溶液が1重量%を超えると、残留水の量によって、続く顆粒乾燥及び/又は縮合後ステップの生産性が損なわれる。ポリアミドに対して水溶液が2重量%以上になると、顆粒の自己凝集が観察され始める。ポリアミドに対して水溶液が3重量%以上になると、添加均質性が悪化し、顆粒の自己凝集が非常に顕著になる。
【0064】
熱安定剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とハロゲン化銅の混合物である場合、ハロゲン化物のモル数と銅のモル数との比は、7/1以上であるのが好ましい。好ましくは、この比は、10/1以上である。上限は、所望の熱安定性と経済的制約の間の妥協の理由から、有利には、25/1以下、好ましくは15/1以下が選択される。
【0065】
さらに、水溶液中の熱安定剤の量は、この水溶液中の熱安定剤の溶解限度に応じて変動する。好ましくは、水溶液中の熱安定剤の量は、熱安定剤の溶解限度以下である。従って、熱安定剤がヨウ化カリウムとヨウ化銅の混合物である場合、ヨウ化銅は、約50重量%のヨウ化カリウムの水溶液中に、6重量%以下の量で存在するのが有利である。
【0066】
熱安定剤が、臭化カリウムと臭化銅(CuBr2)の混合物である場合、臭化銅は、30重量%の臭化カリウムの水溶液中に、15重量%以下の量で存在するのが有利である。
【0067】
顆粒と水溶液との接触は、室温(RT、約20℃)又はそれより高い温度で実施してよい。対象とする温度は、顆粒の温度である。好ましくは、接触は、熱安定剤を含む水溶液の沸点(Tb)を超える温度で実施すべきではない。
【0068】
特に有利には、接触は、ポリアミドのガラス転位温度(Tg)を超える温度で実施する。
【0069】
従って、接触させる温度は、室温から、熱安定剤を含む水溶液の沸点(RT〜Tb)までが有利であり、より優先的には、ポリアミドのガラス転位温度から、熱安定剤を含む水溶液の沸点(Tg〜Tb)までである。
【0070】
好ましくは、ポリアミド66の場合、接触は、温度が20℃〜100℃、好ましくは80℃〜95℃である顆粒で実施する。
【0071】
一般に、接触は、大気圧でのチャンバ内で実施する。
【0072】
本発明の方法の好ましい変形態様によれば、本発明の方法は、不活性ガスの制御雰囲気下で実施する。希ガス、好ましくはアルゴンの雰囲気を形成することができるが、窒素を使用する方が経済的である。
【0073】
ポリアミド顆粒と、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液との接触は、水溶液の噴霧により実施するのが有利である。
【0074】
噴霧は、フラットジェットタイプの噴霧ノズルを用いて実施するのが有利であり、このタイプのノズルは、ブレード状に均質に液体を散布し、単位表面積当たり最大の効果を提供する。噴霧は、例えば、1〜5バール、好ましくは約3バールの噴霧圧で実施してよい。噴霧の持続時間は、処理しようとするポリマーの量に応じて変動する。
【0075】
すすぎ液、例えば、水を用いるすすぎステップを考慮する場合、これもまた、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液について用いたものと同じ噴霧ノズルを用いて噴霧することにより実施する。すすぎステップは、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液及びポリアミド顆粒を接触させるステップと連続的に行ってもよい。好ましくは、すすぎ液の噴霧は、少なくとも1種の安定剤を含む水溶液の噴霧から1分未満に実施する。
【0076】
少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧ステップは、例えば、パドルミキサーを用いて顆粒を撹拌しながら実施するのが好ましい。さらに、当業者には公知の他のいずれのミキサーも使用に好適でありうる。
【0077】
少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の混合(又は撹拌)及び噴霧は、同時に開始するのが有利である。顆粒の混合もまた、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧の開始前に始めてもよい。
【0078】
噴霧ステップの長さは、噴霧する水溶液と接触する表面の再生と適合可能であるように計算する。表面の再生は、混合時間、すなわち、所与の不均質状態から所望される程度の均質化を達成するのに必要な時間に準えることができる。この長さは、用いる装置に応じて変動し、当業者が常用の試験を用いて、容易に決定することができる。混合速度は、処理しようとする顆粒の量により、また、使用する装置によっても変動する。当業者は、どのようにしてこのパラメータを調節するかを熟知している。有利には、少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧を、撹拌した顆粒に実施し、それから撹拌を継続する。少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧後の顆粒の撹拌(又は混合)は、0.1〜40分、好ましくは5〜30分持続する。
【0079】
室温で、10〜40分、好ましくは15〜30分の水溶液の噴霧後の混合時間は、一般に計算すべきである。温度がポリアミドのガラス転位温度を上回る場合、噴霧後の混合時間は、一般に、約1〜10分であり、好ましくは2〜5分である。
【0080】
実用的観点から、本方法は、回分式又は連続式で実施してよい。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明の方法を説明するために、実施例を以下に記載する。
1)噴霧ノズルを備える窒素流下のパドルミキサー中に、ポリアミド66顆粒を窒素下で導入する。顆粒は、約85℃の温度を有する。撹拌を速度150rpmで開始し、次に、3バールの圧力で、噴霧ノズルを用いて少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液を噴霧する。少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧後、任意選択ですすぎ液を噴霧し、顆粒を150rpmの速度で5分撹拌し続ける。その後、このようにして添加した顆粒を窒素の保護下で排出させる。
【0082】
2)噴霧ノズルを備えるパドルミキサー中に、ポリアミド66顆粒を導入する。顆粒は室温、すなわち約20℃である。速度150rpmでの撹拌と、3バールの圧力で、噴霧ノズルを用いた少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧を同時に開始する。少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の噴霧後、任意選択ですすぎ液を噴霧し、顆粒を150rpmの速度で20分撹拌し続ける。その後、このようにして添加した顆粒を排出させる。
【0083】
このようにして添加した顆粒を好ましくは乾燥ステップに付した後、溶融紡糸工程に直接用いてもよい。
【0084】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1種の熱安定剤を含む単一の水溶液と接触させて得られるポリアミド顆粒を、固相後縮合ステップ(PCS)に直接付すが、これは連続式又は回分式のいずれで実施してもよい。
【0085】
このPCSステップは、下記の条件下で実施するのが有利である:窒素流又は減圧下、160〜220℃の温度で、所望のモル質量に達するのに必要な時間。
【0086】
この段階で、PCS前の顆粒の乾燥ステップを実施する必要がないことに留意すべきである。この態様は、乾燥時に起こり得る熱劣化を制限する利点がある。
【0087】
本発明の方法によれば、熱安定剤がその表面に均一に添加されたポリアミド顆粒が得られる。「その表面に」という用語は、熱安定剤が、顆粒の表面すぐ下に存在する、すなわち、熱安定剤の最大濃度が、表面から約40μm下にあることを意味する。従って、添加された顆粒は、その取扱い中に何ら問題を呈示しない。こうした問題は、添加均質性の不足、微粉の外観及び紡糸中の挙動劣化(破断、破損)を起こしうる。
【0088】
さらに、こうして得られた顆粒は、互いに凝集しない。加えて、このような顆粒は、エアバッグ織物の製造用のポリアミド糸、及びタイヤコード織物の製造用のポリアミド糸のいずれの品質要件も満たす。
【0089】
本発明の方法の具体的特徴の1つは、添加後のPCSステップを経た顆粒が、「コアで」安定していることである。顆粒の表面とコアの間の熱安定剤の濃度勾配はもはや存在しない。従って、このような顆粒は、熱安定化の見地から、重合時に添加された顆粒と同じ特徴を有する。
【0090】
本発明の方法によって安定化された顆粒から得られる工業用糸の熱耐性は、老化試験を受けた後の靱性を測定することにより、評価する。
【0091】
上に説明した本発明の方法により、熱安定剤がその表面に均質に添加されたポリアミド顆粒を得ることが可能になる。
【0092】
本発明の方法は、従来の方法の欠点、とりわけ、顆粒凝集の問題がなく、しかも、添加済顆粒の乾燥ステップを必要としないことから、特に有利である。また、工業設備での実施が簡単であり、生産的であるために経済的にも効率的である。
【0093】
本発明の方法はまた、エアバッグ織物用のポリアミド糸の製造、及びタイヤコード織物用のポリアミド糸の製造の両方に用いられうる顆粒を提供するという利点も有する。
【0094】
さらには、水溶液がアルカリ金属又はアルカリ土類金属臭化物を含まないその好ましい様式で、本方法は、特に、これら顆粒の水分に応じた、顆粒表面への臭化物の付着現象を解消する。この現象は、微粉の形成を招き、これは、PCS中に、熱安定剤を多く含む固体粒子を形成して、紡糸時に挙動の不良又は欠陥の問題を引き起こすことから、特にエアバッグの分野では許容できない。
【0095】
本発明はまた、工業用糸の製造を目的とする、このようにして得られたポリアミド顆粒の使用、並びにこのようにして得られた工業用糸にも関する。本発明の他の主題は、本発明の工業用糸から得られる製品、特に、エアバッグ織物又はタイヤコード織物などの織物製品である。
【0096】
本発明の実施例を以下に記載するが、これらは、説明の目的のために提供されるのであり、限定を意図するものではない。
【0097】
実施例において、下記の略語は次の意味を有する:
Cul:ヨウ化銅、Kl:ヨウ化カリウム
CuBr2:臭化銅、KBr:臭化カリウム;AgNO3:硝酸銀
ICP:誘導結合プラズマ;OES:光学発光分析
EDX:エネルギー分散型X線分光法
GC−SM:ガスクロマトグラフィー−小質量
CEG:カルボキシル末端基の濃度
AEG:アミン末端基の濃度
【実施例】
【0098】
1−少なくとも1種の熱安定剤を含む水溶液の調製
1.1−Cul/Klの単一水溶液:
200gのCul/Klの単一水溶液を調製するために、予備洗浄し、脱イオン水ですすいでおいた撹拌ミキサーを用い、これに、80gの脱イオン水、次に94.9gのヨウ化カリウム、さらに残りの14.9gの脱イオン水を導入する。混合物を1時間撹拌する。溶解反応は、高度に発熱性である。次いで、10.2gのヨウ化銅を添加した後、混合物を20分間撹拌する。このようにして得られた水溶液を濾過し、褐色のガラス容器に保存する。
【0099】
溶液の組成を元素分析(ヨウ素については、AgNO3を用いた電位差測定、また銅及びカリウムについては、ICP/OES)により調べる。
【0100】
1.2−CuBr2/KBrの単一溶液:
200gのCuBr2/KBrの単一水溶液を調製するために、予備洗浄し、脱イオン水ですすいでおいた撹拌ミキサーを用い、これに、120gの脱イオン水、次に58gの臭化カリウム、さらに残りの15.5gの脱イオン水を導入する。混合物を1時間撹拌する。溶解反応は、高度に発熱性である。次いで、6.5gの二臭化銅を添加した後、混合物を20分間撹拌する。このようにして得られる水溶液を濾過し、褐色のガラス容器に貯蔵する。
【0101】
溶液の組成を元素分析(臭素については、AgNO3を用いた電位差測定、また銅及びカリウムについては、ICP/OES)により調べる。
【0102】
2−ポリアミド顆粒の調製:
52重量%のN塩の水溶液からポリアミド6.6を調製し、9ppmの消泡剤(シリコーン組成物)の外部再循環を備える蒸発器内に配置する。0.24MPaの圧力で154.0℃まで加熱することにより、N塩の溶液を濃縮する。蒸発の終了時に、溶液中の溶解種の濃度は、85.0重量%である。次に、この溶液をオートクレーブ内に移す。オートクレーブを加熱して、1.85MPaの自己圧力を達成する。圧力下の重合段階を42分間持続させた後、圧力を大気圧まで徐々に減じる。次に反応器を大気圧で20分間維持するが、このステップの終了時に反応塊が達した温度は277℃である。次に、ポリマーのロッド状の押出を可能にするために、反応器を0.4〜0.5MPaの窒素圧力下に置き、これらのロッドを水で冷却して、切断することにより顆粒を取得する。
【0103】
得られるポリアミド6.6は、0.5g/100mLの濃度の90%ギ酸中で測定して、134mL/gの粘度指数を有する。この水分は、Karl−Fischerにより測定して、0.3%であり、その粒度は、粒子当たり25mgである。
【0104】
得られるポリアミド6.6は、Δ(GT)=GTC−GTA=68.6−53.7=14.9mモル/kgを有する。
【0105】
3−湿式含浸による添加
顆粒への湿式含浸試験は全て、加熱又は冷却可能なジャケット、プロシェアタイプの撹拌ロータ及び液体噴射装置を備えるMAP(WAMGROUP)製のMLH12L横型ミキサーを用いて実施する。使用する噴射ノズルは、流量0.1L/分及び圧力0.3MPaで噴霧角50°のTeejetノズルである。
【0106】
混合を最適化するために、ミキサータンクにその容量の60%、すなわち約4.7kgまで新鮮なポリアミドを充填する。高温顆粒への含浸中、ミキサージャケットを90℃まで予熱する。
【0107】
ポリマー顆粒をミキサータンク内に配置してから、タンクを窒素で5分間不活性にし、その間、150rpmで撹拌を開始する。この値は、混合を最適化し、かつ顆粒の磨滅を抑えるように選択した。次いで、熱安定剤の水溶液の噴射を、所望の量を達成するのに必要な量の溶液を導入することにより実施する。液体導入装置は、0.3MPaの窒素圧力に設定し、このロック室を噴射ノズルと接続する弁を開く。1分後に、液体導入ロック室の弁を閉じる。すすぎ水をロック室に導入して、ロック室を再度0.3MPaの窒素圧力下に置くことにより、噴射ノズルからすすぎ水を噴射する。この工程の終了時に、撹拌停止及びポリアミドの取出しまでの混合時間を計る。
【0108】
添加条件:顆粒温度、熱安定剤の種類、熱安定剤溶液及びすすぎ水の量、混合時間は、比較例については表1に、また、本発明の実施例については表2に明示する。
【0109】
4−添加条件の要約表
4.1−比較例:
1’:水溶液の全重量/ポリアミドの重量=2%
2’:水溶液の全重量/ポリアミドの重量=3%
【0110】
【表1】
【0111】
4.2−本発明の実施例:水溶液の量=最大1%
1:水溶液の全重量/ポリアミドの重量=1%
2:水溶液の全重量/ポリアミドの重量=1%
【0112】
【表2】
【0113】
5−結果
5.1.顆粒
添加済顆粒に対し実施した試験及び測定についての説明
ICPによる銅及びカリウムのアッセイ
0.5gのポリアミド顆粒を5mlの硝酸と一緒にパールボンブ(Parr bomb)中に導入する。ポリアミドの鉱化を電子レンジで行う。鉱化が終わったら、材料を水と一緒に回収してから、水を用いて用意した50mlフラスコ中に移した。銅及びカリウムを、10容量%のHNO3媒質での外部校正を用いたICP/OESによりアッセイする。
【0114】
銀滴定によるヨウ素及び臭素のアッセイ
0.5gのポリアミド顆粒、2gの0.06M亜硫酸ナトリウム及び6gの浸透水を正確に計量してから、50mlのギ酸を90重量%で添加する。混合物を約1時間の撹拌により溶解させる。ポリアミドを溶解させたら、8gの水を添加する。0.02M硝酸銀(AgNO3)溶液を用いて、ヨウ素及び臭素の電位差測定アッセイを実施する。
【0115】
走査型電子顕微鏡観察分析
顆粒の表面状態の分析のために、2つの顆粒を炭素ペレットに結合させた後、白金で鉱化させる。顆粒の内部を観察するため、2つの顆粒を(取り扱いやすくするため)Araldite(登録商標)エポキシ樹脂中に閉じ込め、次に、ナイフで平らに切断する。これらの切片を炭素ペレットに結合させた後、白金で鉱化させる。EDX分析と共に、15kVの走査型電子顕微鏡(SEM)で様々な調製物を観察する。
【0116】
紫外分光法による熱劣化
0.8gのポリアミド顆粒を20mlのトリフルオロエタノール/クロロホルム混合物(重量比10/3)に添加する。この混合物を約1時間の撹拌により溶解させる。次に、溶液をクォーツ製キュベットに移し、600〜240nmのスペクトルの補足のために分光計内に配置する。約285〜330nmのピークについてUVインデックスを計算する。
【0117】
結果の比較表
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
結論
顆粒の重量に対し2%の水溶液で実施した顆粒含浸試験の結果(実施例1’)は、目標に対して添加剤の若干の不足と、均質性の不足を示している。さらに、顆粒同士及びミキサー壁への若干の凝集も見られ、これによって、取り扱いにくくなる。
【0121】
顆粒の重量に対し3%の水溶液で実施した顆粒含浸試験の結果(実施例2’)は、目標に対して添加剤の真正の不足(約20%)と、高度の不均質性を示している。さらに、顆粒同士及びミキサー壁への実質的な凝集も見られ、これによって、取扱いが困難になる。
【0122】
顆粒の重量に対し最大1%のCul/Kl溶液で実施した顆粒含浸試験の結果(実施例1)は、目標を満たしており、しかも均質である。室温での含浸の際には、90℃で5分後に得られるのと同じ均質性を達成するために、15分間混合するのが好ましい。
【0123】
CuBr2/KBr溶液で実施した顆粒含浸試験の結果(実施例2)は、KBr結晶の存在が顆粒表面に観察される。いずれの場合も、顆粒の含浸を90℃で実施すると、ポリマーの具体的熱劣化は全く起こらず、また、顆粒の表面下の熱安定要素の勾配が観察される。
【0124】
5.2.糸
実施した後処理の記述
固相後縮合
ポリマーの数平均分子量を十分に増大させるために、固相後縮合ステップを、各々4.7kgの後期添加ポリマーのバッチに対して実施する。この固相後縮合ステップは、50L回転蒸発器中で行う。顆粒を、500L/時の窒素下で195℃まで270分かけて加熱する。
【0125】
紡糸−引抜
縮合後のポリマーを紡糸した後、940/136糸を取得するように、工業用糸用の標準的条件下で引抜を実施する。
【0126】
糸に対して実施した試験及び測定の説明
強制換気の下で、165℃のオーブン内で、糸に熱老化を168時間にわたり被らせる。老化前後の糸のサンプルを標準的引張試験機械での機械的試験に付すことにより、老化後の靱性、破断応力及び破断伸びの低下を決定する。あご(jaw)同士の距離200mm及びプレテンション300gで、速度500mm/分にて試験を実施する。粘度指数の減少率(%)も測定するが、粘度指数は、90%ギ酸中の0.5%溶液として測定する。測定したパラメータの減少率(%)の結果を以下の表6に記載する。
【0127】
固相後縮合ステップ中の顆粒並びに紡糸及び引抜中の糸の熱劣化、並びに老化後の糸の機械的性質に対する熱安定剤の後期添加の影響を比較するために、重合ステップ中に熱安定剤を添加した工業用糸用のポリマーを参照標準として用いた(以下の表5を参照)。このポリマーは、酢酸銅、臭化カリウム及びヨウ化カリウムの水溶液で安定化させ、後期添加に用いる新鮮なポリマーと同じ工程及び同じ反応器で製造した。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
老化後の糸の機械的性質の劣化は、比較例の方法を用いて得られた糸より、本発明の方法を用いて得られた糸の方が低いことが認められる。同様に、本発明の方法を用いて得られた糸の粘度指数の低下も、比較例の方法を用いて得られた糸より小さい。
【0131】
結論
本発明の方法に従い添加した顆粒は、固相後縮合中の重合時に安定化させた参照標準と同様に挙動し、異なる熱劣化を全く呈示しない。固相後縮合後に熱安定剤の喪失は全く認められない。
【0132】
糸に対する老化試験では、本発明の方法を用いて得られた糸の機械的性質の劣化がより小さいことを示している。