【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、容易にアクセスでき、生理条件下で優れた分解能を示し、生理条件下にて硬化剤で有益な接着性を示す物質に速やかに変形するプレポリマーを提供することである。
【0014】
この課題は、
a)少なくとも1個のツェレビチノフ活性H原子を有するH官能性スターター化合物とアルキレンオキシドおよびコモノマーとのヒドロキシル基を有する前駆体(Hydroxygruppen tragenden Vorstufe)への反応、ここで、該コモノマーは、ラクチド、グリコリド、環状ジカルボン酸無水物ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択され、該コモノマーは、統計共重合によりヒドロキシル基を有する前駆体のポリマー鎖中に組み込まれ、および
b)工程a)からのヒドロキシル基を有する前駆体と多官能性イソシアネートとの、イソシアネート官能性プレポリマーへの反応
によって得られるイソシアネート官能性プレポリマーによって解決された。
【0015】
換言すれば、本発明のポリマー鎖中のイソシアネート官能性プレポリマーは、アルキレンオキシド化合物と、およびラクチド、グリコリドおよび/または環状ジカルボン酸無水物とを、ツェレビチノフ活性H原子を含有するスターター化合物上で統計共重合に付して得られるエステル基を含有する。該エステル基は、特に、ブロック中に組み込まれるものではない。該方法にて、不定冠詞「a」、「an」等は、各々、これらの成分が数種ある時でさえ、所望により互いに反応しうることを意味する。特定の成分、特にコモノマーはまた、二量体または三量体として、例えばジラクチドとして使用され得る。
【0016】
意外にも、かかるイソシアネート官能性プレポリマーが、例えば患者の体内で生物学的に分解可能であることが明らかにされた。この点において、分解期間は、創傷部を塞ぐ治癒の持続期間より長く、例えば、4週間である。これに関して、特にポリマー鎖中のコモノマー単位の統計分布は、それらが硬化接着剤における「所定の破壊点」として作用するため、分解速度に有益に働くようである。コモノマー成分が生分解の間に影響を受けるか、または破壊されるとすれば、ポリマーの鎖長は結果的に極めて迅速に短くなる。
【0017】
同時に、本発明のイソシアネート官能性プレポリマーは、特にヒトまたは動物組織への高接着性ならびに高硬化速度により区別される。その上、本発明のイソシアネート官能性プレポリマーを含む接着剤系は、上記した組織毒性、血栓形成およびアレルギー形成の可能性に関する要件とも合致する。
【0018】
本発明は、その範囲にて、少なくとも1個のツェレビチノフ活性H原子を有するH官能性スターター化合物を提供する。ツェレビチノフ活性H原子とは、本発明の範囲内にある酸性H原子または「活性」H原子を示す。それは、通常、適切なグリニャール試薬との反応を通して決定され得る。ツェレビチノフ活性H原子の量は、典型的には、試験される物質と、臭化メチルマグネシウム(CH3−MgBr)との反応である、次の反応式:CH
3−MgBr + ROH → CH
4 + Mg(OR)Br
に従って発生する、メタンの放出を通して測定される。
【0019】
ツェレビチノフ活性H原子は、典型的には、C−H酸性基、有機基、−OH、−SH、−NH2または−NHR(有機基としてのRを有する)、および−COOHから由来する。
【0020】
特に適切なH官能性スターター化合物は1〜35の、特に1〜16の、好ましくは1〜8の1個のH官能基を有し、ここでH官能基は上記したツェレビチノフ活性H原子と関連する。
【0021】
直鎖および/または分岐鎖のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテル−ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル−ポリカーボネートおよびそれらの組み合わせより特に選択される、ポリヒドロキシ官能性ポリマーは、H官能性スターター化合物として特に適する。
【0022】
H官能性スターター化合物として用いられるヒドロキシル基を有するポリマーがポリエーテルであるか、またはポリエーテル基を有する限りにおいて、それらは、より好ましくはエチレンオキシド単位を含有し、ここでそのような最終前のアルキレンオキシド付加生成物中のエチレンオキシドの比例重量は、特に少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%である。例えば、エチレンオキシド単位の比例重量は、各々、ヒドロキシル基を有するポリマーの質量に関連して、40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%である。ポリエーテル構造またはポリエーテル成分の基は、各々、他のアルキレンオキシド単位、特に例えば、(ポリ)プロピレンオキシド、(ポリ)ブチレンオキシドまたは他の(ポリ)アルキレンオキシド基およびその混合物を通して形成され得る。H官能性スターター化合物の分子量は広く変化し得る。かくして、平均分子量は、例えば、17〜10000g/モル、とりわけより好ましくは200〜9000g/モルである。平均分子量は、一般的方法を用いて、例えばゲル浸透クロマトグラフィーを介して、またはOH値を測定することにより決定され得る、ポリマー化合物の数平均を示す。言い換えれば、モノマースターター化合物は、アンモニアまたはエチレングリコールなどの本発明のプレポリマーのH官能性スターター化合物として選択され得る。また、オリゴマースターター化合物として、例えば、平均分子量が200〜600g/モルのポリエーテル、ならびに600より大きく10000g/モルまでの、または800〜9000g/モルの高分子量のポリマースターター化合物が挙げられる。
【0023】
使用が好ましい、ヒドロキシ官能性スターターの他に、アミノ官能性スターターが使用されてもよい。ヒドロキシ官能性スターター化合物の例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび高級脂肪族モノオール、特に脂肪族アルコール、フェノール、アルキル置換のフェノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース、ヒドロキノン、ベンズカテコール、レソルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ならびにホルムアルデヒドおよびフェノールからなるメチロール基を含有する縮合体またはウレアである。高官能性スターター化合物もまた、水素添加された澱粉の加水分解生成物に基づいて使用されてもよい。これらは、例えばEP1525244A1に記載される。
【0024】
アミノ基含有のH官能性スターター化合物の例は、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、トルイジンの異性体、ジアミノトルエンの異性体、ジアミノジフェニルメタンの異性体、ならびにメチロール基を含有ホルムアルデヒドとメラミンとからなる縮合物の他に、アニリンとホルムアルデヒドを縮合させてジアミノジフェニルメタンとするより固形の生成物、ならびにマンニッヒ塩基である。また、環状カルボン酸からの開環生成物もまた、水素化物およびポリオールにおけるスターター化合物として使用され得る。一例として、一方で、フタル酸無水物またはコハク酸無水物からなる開環生成物が挙げられ、他方で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールが挙げられる。さらに、一または多官能性カルボン酸をスターター化合物として直接使用することも可能である。
【0025】
さらには、該スターター化合物のプレハブ化アルキレンオキシドの付加生成物、すなわち好ましくは、5〜1000mgKOH/gの、好ましくは10〜1000KOHmg/gのOH値を有するポリエーテルポリオールも、この方法におけるスターター化合物として用いることができ、あるいは反応混合物に添加され得る。ポリエステルポリオール、好ましくはOH値を6〜800mgKOH/gの範囲で含むポリエステルポリオールをコスターターとして本発明の方法にて用いることも可能である。この点、適当なポリエステルポリオールは従来の方法に従って、例えば炭素数2〜12の有機ジカルボン酸および多価アルコール、好ましくは炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜6のジオールより生成することができる。
【0026】
その上、H官能性スターター物質として、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオールまたはポリエーテルカーボネートポリオール(好ましくは、ポリカーボネートジオール、ポリエステルカーボネートジオールまたはポリエーテルカーボネートジオール)であって、好ましくは各々が6〜800mgKOH/gの範囲のOH値を有する化合物をスターターまたはコスターターとして用いることができる。これらの化合物は、例えば、ホスゲン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルまたは炭酸ジフェニルと、二またはそれ以上の官能性アルコールあるいはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとの反応を通して生成される。
【0027】
ポリエーテルカーボネートポリオールはまた、それらが、例えば、H官能性スターター物質の存在下、アルキレンオキシド(エポキシド)と二酸化炭素との触媒反応を通して得られるようにも使用し得る(例えば、EP−A 2046861を参照のこと)。これらのポリエーテルカーボネートポリオールは、好ましくは、5mgKOH/g以上で、240mgKOH/g以下のOH値を、特に好ましくは9mgKOH/g以上で、200mgKOH/g以下のOH値を有する。
【0028】
本発明のプレポリマーを製造する工程a)にて、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび高級脂肪族モノオール、特に脂肪アルコール、フェノール、アルキル置換のフェノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース、ヒドロキノン、ブレンズカテコール、レゾルシン、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,3,5−トリヒドロキシベンゾール、メチロール基含有のホルムアルデヒドとフェノールとの縮合体、および水素化デンプン加水分解生成物などの、好ましくはヒドロキシル基を含むアミノ基不含のH官能性スターター化合物を活性水素の担体として供する。H官能性スターター化合物の混合物も同様に使用され得る。
【0029】
本発明に従って用いることのできるアルキレンオキシド化合物として、それらは、代替的に、炭素数2〜24の、特に炭素数2〜12の、より好ましくは炭素数2〜6のアルキレンオキシドより、ならびに上記される型の種々のアルキレンオキシド化合物の組み合わせより選択される。炭素数2〜24のエポキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブテンオキシド、2,3−ブテンオキシド、2−メチル−1,2−プロペンオキシド(イソブテンオキシド)、1−ペンテンオキシド、2,3−ペンテンオキシド、2−メチル−1,2−ブテンオキシド、3−メチル−1,2−ブテンオキシド、1−ヘキセンオキシド、2,3−ヘキセンオキシド、3,4−ヘキセンオキシド、2−メチル−1,2−ペンテンオキシド、4−メチル−1,2−ペンテンオキシド、2−エチル−1,2−ブテンオキシド、1−ヘプテンオキシド、1−オクテンオキシド、1−ノネンオキシド、1−デセンオキシド、1−ウンデセンオキシド、1−ドデセンオキシド、4−メチル−1,2−ペンテンオキシド、ブタジエンモノキシド、イソプレンモノキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、スチレンオキシド、メチルスチレンオキシド、ピネンオキシド、モノ−、ジ−およびトリ−グリセリドなどの1または複数のエポキシ化脂肪、エポキシ化脂肪酸、エポキシ化脂肪酸のC1−C24エステル、エピクロロヒドリン、グリシドール、およびメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのグリシドールの誘導体、ならびに3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、および3−グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシシランなどのエポキシド官能性アルキルオキシシランからなる群より選択される1または複数の化合物である。エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを用いるのが好ましい。特に、エチレンオキシドの重量は分配されるアルキレンオキシド化合物の全質量に比例して、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%である。例えば、エチレンオキシドの重量は、分配されるアルキレンオキシド化合物の全質量に比例して、各々、40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%である。
【0030】
本発明は、統計共重合を通して、ヒドロキシル基を有する前駆体のポリマー鎖に組み込まれる、ラクチド、グリコリドおよび/または環状二カルボン酸無水物から由来の成分を含有するイソシアネートプレポリマーを提供する。好ましい方法で、ヒドロキシル基を有する前駆体中の、アルキレンオキシド化合物のこのコモノマーに対するモル比は200:1ないし1:1、特に10:1ないし5:1である。そのような前駆体のプレポリマーを含有する組織接着剤は、最低限の硬化時間で良好な接着特性を有し、生理学的条件下で速やかに分解するため、これらのモル比が特に好ましい。
【0031】
特に、環状無水物または二酸化炭素などのさらなる成分を統計共重合を通してヒドロキシル基を有するプレポリマーのポリマー鎖中に組み入れることも可能である。
【0032】
好ましい態様において、工程b)で用いられる多官能性イソシアネートが、脂肪族イソシアネートから、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレンジイソシアネート(BDI)、ビスイソシアナトシクロヘキシルメタン(HMDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ビスイソシアナトメチルトリシクロデカン、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアナトドデカンまたはそれらの組み合わせより選択される。この点において、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレンジイソシアネート(BDI)およびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)が好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートが特に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートがさらに特に好ましい。
【0033】
しかしながら、本発明は、基本的には、脂肪族イソシアネートの使用に制限されるものではなく、かくしてトルエンジイソシアネート(TDI)またはフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの従来の芳香族イソシアネートが使用され得る。
【0034】
工程a)で得られるヒドロキシル基を有するプレポリマーと、工程b)の多官能性イソシアネートとの反応が、NCO/OHの割合(4:1〜12:1、好ましくは8:1)で起こり、その後で共有されている未反応のイソシアネートを適当な方法を用いて分けることができる。通常、このために薄膜蒸留法が使用され、プレポリマーは、残りのモノマー含量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.03重量%未満であるように得られる。
【0035】
塩化ベンゾイル、イソフタロイルクロリド、ジブチルホスフェート、3−クロルプロピオン酸またはメチルトシレートなどの安定剤が、イソシアネート官能性プレポリマーを生成する間に潜在的に添加され得る。
【0036】
工程b)の反応のための反応温度は、好ましくは20〜120℃で、より好ましくは60〜100℃である。
【0037】
イソシアネート官能性プレポリマーは、好ましくは、DIN EN ISO 11909に従って測定して、2〜10重量%、好ましくは2.5〜8重量%の平均NCO含量を有する。
【0038】
イソシアネート官能性プレポリマーの平均NCO官能度は、好ましくは1.5〜6、より好ましくは1.6〜5、さらにより好ましくは1.7〜4、特により好ましくは1.8〜3.5、とりわけ3である。
【0039】
本発明のさらなる目的は、次の工程:
a)少なくとも1個のツェレビチノフ活性H原子を有するH官能性スターター化合物とアルキレンオキシドおよびコモノマーとをヒドロキシル基を有する前駆体へ反応させる工程、ここで、該コモノマーはラクチド、グリコリド、環状ジカルボン酸無水物ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択され、該コモノマーは統計共重合によりヒドロキシル基を有する前駆体のポリマー鎖中に組み込まれ、および
b)工程a)からのヒドロキシル基を有する前駆体と多官能性イソシアネートとをイソシアネート官能性プレポリマーへ反応させる工程
を含む、イソシアネート官能性プレポリマーの製造方法に関する。
【0040】
本発明の方法は、触媒を用いることなく達成され得るが、触媒を用いることが好ましい。この点、特に工程a)は、特にヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、亜鉛ヘキサシアノイリデート(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛またはヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)を含有する複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)を用いて触媒化され得る。
【0041】
本発明の方法のこの構成における特有の利点は、工程a)の中間生成物として得られるヒドロキシル基を有する前駆体が比較的近い分子鎖長分布を有する、ということである。DMC触媒ではいわゆる「キャッチアップ」速度論を説明しているため、その理由の一つをかかる触媒の使用に認めることができる。これは、隣接するモノマー成分を結合させる触媒活性が鎖長の増加に伴って次第に減少し、かくして反応速度も減少することを意味する。
【0042】
この効果を用いて、本発明の方法を半連続的に、または完全に連続的に操作することもできる。半連続的方法の場合には、特定量のヒドロキシル基を有する前駆体が溶媒として添加され、ここでこのヒドロキシル基を有する前駆体は本発明の方法における工程a)より以前の製造工程に由来するか、あるいは他の供給源に由来するものであってもよい。新たに合成されるヒドロキシル基を有する前駆体が「溶媒」として用いられる初期の製造段階から該前駆体の適切な鎖長に達するまでは、DMC触媒は確実に該前駆体がそのような鎖長の構造体となるようにさせる。次に、ヒドロキシル基を有する前駆体を共有する特定の生成物は、工程b)を行うために反応混合物より、例えば90%が除去され、その場合、残りの10%は工程a)の新たな反応を行うために留まることとなる。
【0043】
適切なDMC触媒は現状より周知であり、例えば、US3404109A1、US3829505A1、US3941849A1、およびUS5158922A1に公開されている。
【0044】
US5470813A1、EP700949A1、EP743093A1、EP761708A1、WO97/40086A1、WO98/16310A1、およびWO00/47649A1に記載のDMC触媒は、アルキレンオキシドの高分子化において極めて高い活性を有し、極めて低い触媒濃度(25ppm以下)でポリエーテルポリオールの生成を可能とし、それで触媒の最終生成物からの分離は一般的にはもはや必要ではない。EP700949A1には、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛などの複合金属シアン化化合物、およびtert−ブタノールなどの有機錯体配位子の他に、500g/モルより大きな数平均分子量を有するさらなるポリエーテルを含有する、典型例としての高活性DMC触媒が記載される。EP出願番号10163170.3に公開されているアルカリ性DMC触媒を用いることも可能である。
【0045】
複合金属シアン化化合物を生成するのに適するシアン化物不含の金属塩は、好ましくは、一般式(II):
M(X)
n (II)
[式中
Mは金属カチオン、すなわちZn
2+、Fe
2+、Ni
2+、Mn
2+、Co
2+、Sr
2+、Sn
2+、Pb
2+およびCu
2+より選択され、その中でもMはZn
2+、Fe
2+、Co
2+またはNi
2+が好ましく、
Xは一または複数の(すなわち、様々な)アニオンを表し、それは好ましくはハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、オキサレート、およびニトレートの群より選択され;
Xがサルフェート、カーボネートまたはオキサレートである場合、nは1であり、および
Xがハロゲン化物、ヒドロキシド、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネートまたはニトレートである場合、nは2である]
で示される。
【0046】
さらに適切なシアン化物不含の金属塩は、一般式(III):
M
r(X)
3 (III)
[式中
Mは金属カチオン、すなわちFe
3+、Al
3+、およびCr
3+より選択され、
Xは一または複数の型のアニオンを表し、ここで該アニオンは好ましくはハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、オキサレート、およびニトレートの群より選択され;
Xがサルフェート、カーボネートまたはオキサレートである場合、nは2であり、および
Xがハロゲン化物、ヒドロキシド、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートまたはニトレートである場合、nは1である]
で示される。
【0047】
他の適切なシアン化物不含の金属塩は、一般式(IV):
M(X)
s (IV)
[式中
Mは金属カチオン、すなわちMo
4+、V
4+、およびW
4+より選択され、
Xは一または複数の型のアニオンを表し、ここで該アニオンは好ましくはハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、オキサレート、およびニトレートの群より選択され;
Xがサルフェート、カーボネートまたはオキサレートである場合、sは2であり、および
Xがハロゲン化物、ヒドロキシド、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートまたはニトレートである場合、nは4である]
で示される。
【0048】
同様に適切なシアン化物不含の金属塩は、一般式(V):
M(X)
t (V)
[式中
Mは金属カチオン、すなわちMo
6+、およびW
6+より選択され、
Xは一または複数の型のアニオンを表し、ここで該アニオンは好ましくはハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、オキサレート、およびニトレートの群より選択され;
Xがサルフェート、カーボネートまたはオキサレートである場合、tは3であり、および
Xがハロゲン化物、ヒドロキシド、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートまたはニトレートである場合、tは6である]
で示される。
【0049】
適切なシアン化物不含の金属塩の例が、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、硫化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、塩化ニッケル(II)、および硝酸ニッケル(II)である。種々の金属塩の混合物も同様に使用されてもよい。
【0050】
複合金属シアン化化合物を製造するのに適する金属シアン化物は、好ましくは、一般式(VI):
(Y)
aM’(CN)
b(A)
c (VI)
[式中
M’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、およびV(V)からなる群の1または複数のカチオンより選択され、M’は好ましくはCo(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)、およびNi(II)からなる群の1または複数のカチオンであり、
Yはアルカリ金属(すなわち、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+)およびアルカリ土類金属(すなわち、Be
2+、Ca
2+、Mg
2+、Sr
2+、Ba
2+)からなる群の1または複数のカチオンより選択され、
Aはハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、オキサレートまたはニトレートからなる群の1または複数のアニオンより選択され、および
a、b、およびcは整数であって、a、b、およびcの値は金属シアン化物が電気的中性のあるように選択され;aは好ましくは1、2、3または4であり、bは好ましくは4、5または6であり、cは好ましくは0である]
で示される。
【0051】
適切な金属シアン化物の例は、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウム、およびヘキサシアノコバルト(III)酸リチウムである。
【0052】
本発明のDMC触媒に含まれる好ましい複合金属シアン化化合物は、一般式(VII):
M
x[M’
x,(CN)
y]
z (VII)
[式中、Mは式(I)ないし(IV)で定義されるとおりであり、
M’は式(V)で定義されるとおりであり、および
x、x’、yおよびzは整数であり、複合金属シアン化化合物の電気的中性があるように選択される]
で示される化合物である。
【0053】
好ましくは、
x=3、x’=1、y=6、およびz=2であり、
M=Zn(II)、Fe(II)、Co(II)またはNi(II)であり、および
M’=Co(III)、Fe(III)、Cr(III)またはIr(III)である。
【0054】
好ましく用いられる複合金属シアン化化合物の例が、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、亜鉛ヘキサシアノイリデート(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛、およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)である。適当な複合金属シアン化化合物のさらなる例が、例えばUS5158922A1に記載されている。ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛の使用が特に好ましい。
【0055】
DMC触媒を製造する間に添加される有機錯体配位子が、例えば、US5158922A1、US3404109A1、US3829505A1、US3941849A1、EP700949A1、EP761708A1、JP4145123A1、US5470813A1、EP743093A1、およびWO97/40086A1に公開されている。複合金属シアン化化合物との錯体を形成しうる、酸素、窒素、リンまたは硫黄などのヘテロ原子を有する水可溶性有機化合物は、例えば有機錯体配位子として使用される。好ましい有機錯体配位子は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ウレア、ニトリル、スルフィド、およびそれらの混合物である。特に好ましい有機錯体配位子は、脂肪族エーテル(ジメトキシエタンなど)、水溶性脂肪族アルコール(エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、および2−メチル−3−ブチン−2−オールなど)、脂肪族または脂環式エーテル基、および脂肪族ヒドロキシル基を含有する化合物(エチレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−モノ−メチルエーテル、および3−メチル−3−オキセタン−メタノールなど)である。さらに好ましい有機錯体配位子は、ジメトキシエタン、tert−ブタノール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、エチレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテル、および3−メチル−3−オキセタン−メタノールからなる群の1または複数の化合物より選択される。
【0056】
ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ(N−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)、ポリビニルメチルケトン、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(アクリル酸コスチレン)、オキサゾリンポリマー、ポリアルキレンイミン、マレイン酸および無水マレイン酸コポリマー、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリアセチレンあるいはそのグリシジルエーテル、グリコシド、多価アルコールのカルボン酸エステル、胆汁酸またはその塩、エステルまたはアミド、シクロデキストリン、リン化合物、α,β−不飽和カルボン酸エステルまたはイオン性表面または界面活性化合物からなる化合物種から由来する1または複数の錯体形成成分が、本発明の好ましいDMC触媒の製造に使用されてもよい。
【0057】
好ましくは、本発明の第一工程にて、金属シアン化物に対して化学量論量的に過剰量(少なくとも50モル%)の好ましいDMC触媒を製造するのに用いられる金属塩(例、塩化亜鉛)(すなわち、2.25〜1.00モルの金属シアン化物に対して少なくとも1モルのシアン化物不含の金属塩の割合)と、金属シアン化物(例、ヘキサシアノコバルト酸カリウム)とを、有機錯体配位子(例、tert−ブタノール)の存在下で反応させ、複合金属シアン化化合物(例、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛)、水、残りのシアン化物不含の金属塩、および有機錯体配位子を含有する懸濁液を形成させる。この方法にて、有機錯体配位子はシアン化物不含の金属塩および/または金属シアン化物の水溶液中に存在してもよく、または複合金属シアン化化合物の沈殿後に得られる懸濁液に直接添加されてもよい。シアン化物不含の金属塩、金属シアン化物および有機錯体配位子の水溶液を激しく攪拌しながら混合するのが有益であることが判明した。次に、第一工程で形成された懸濁液をさらなる錯体形成成分で所望により処理してもよい。この方法にて、錯体形成成分は、好ましくは、水および有機錯体配位子の混合物中で使用される。第一工程を行うための(すなわち、懸濁液を製造するための)好ましい方法は、混合ノズルの使用を通して、特に好ましくはWO01/39883A1に記載のスプレー式分散装置の使用を通して得られる。
【0058】
第二工程にて、遠心分離または濾過などの通常の技法を通じて懸濁液から固形物(すなわち、本発明の触媒の前駆体)を単離する。
【0059】
触媒を製造するための好ましい実施態様の型において、単離した固形体を、その後、該方法の第三工程にて有機錯体配位子の水溶液で洗浄する(例えば、再び懸濁させ、その後で濾過および遠心分離で再び単離する)。この方法にて、例えば、塩化カリウムなどの水溶性の副生成物は本発明の触媒より除去することができる。有機錯体配位子の水性洗浄液中にある量は、好ましくは、全溶液に対して40重量%〜80重量%である。
【0060】
水溶液で洗浄する第三工程にて、好ましくは全溶液に対して0.5〜5重量%の範囲にあるさらなる錯体形成成分が所望により添加されてもよい。
【0061】
その上、単離された固形物を2回以上洗浄するのが有益である。この点において、例えば最初の洗浄工程を繰り返すことができる。しかしながら、さらなる洗浄工程には、例えば、有機錯体配位子および他の錯体形成成分の混合物を含む水溶液を用いないことが好ましい。
【0062】
単離され、可能性として洗浄された固形物を、その後で、可能性として粉砕された後で、約20−100℃の温度で、および約0.1ミリバールから常圧(1013ミリバールの圧力)で乾燥させる。
【0063】
本発明のDMC触媒を濾過により懸濁液から単離し、濾過ケーキを洗浄し、乾燥させる好ましい方法が、WO01/80994A1に記載されている。
【0064】
工程a)にて使用されるDMC触媒の濃度は、生成されるヒドロキシル基を有するプレポリマーの量に対して、5〜1000ppm、好ましくは10〜900ppm、特に好ましくは20〜500ppmである。必要とされる塗布の特性に応じて、生成物が(一部)分離されるならば、DMC触媒を除去することができる。DMC触媒は、例えば、吸着剤で処理することにより(一部)分離され得る。DMC触媒を分離する方法が、例えば、US4987271A1、DE3132258A1、EP406440A1、US5391722A1、US5099075A1、US4721818A1、US4877906A1およびEP385619A1に記載されている。
【0065】
本発明の方法が複合金属シアン化物の触媒を用いて実施されるならば、まずH官能性スターター化合物、触媒およびコモノマーを加え、次にアルキレンオキシド化合物を分配するのが有益である。この方法はコモノマー成分をポリマー鎖に統計的分布に供するのに有益な作用を有し、かくして組織接着剤系の生分解能を改善する。
【0066】
次に、本発明の方法の工程a)を詳細に記載するが、以下の記載に限定されるものではない:
【0067】
本発明の方法のある態様において、H官能性化合物がまず、DMC触媒およびコモノマーと一緒に反応装置/反応装置系に添加される。この点で、すべてのコモノマーを最初に添加することができる。H官能性スターター化合物中にある微量のアルカリを中和するのに、あるいは生成方法を一般により安定した方式で行うことを意図として、最小量の無機鉱酸、好ましくはリン酸が、DMC触媒と接触する前に、可能性としてH官能性化合物に添加され得る。
【0068】
あるいは、この時点でH官能性化合物と、DMC触媒だけを加え、続いてコモノマーならびにアルキレンオキシドを特に並行して添加することも可能である。
【0069】
さらなるプロセス変形によれば、H官能性化合物およびDMC触媒をまず加え、次にアルキレンオキシドの一部を分配する。こうすることで、オキシアルキレン単位の形成を通してまずH官能性化合物の鎖長を伸ばし、このことは低分子H官能性化合物にて、例えば平均モル重量が600g/モルまでの化合物にて特に有用である。このセクションではコモノマーの成分は未だに存在しない。その後で、共重合化を実施するために、コモノマーならびに他のまたは残りのアルキレンオキシドを添加し得る。この点で、全量のコモノマーをまず添加し、次に残りのアルキレンオキシドを導入し得る。コモノマーを連続して加えることも、ならびに残りのアルキレンオキシドを同時に添加することも可能である。
【0070】
さらに、上記したプロセス変形では他の混合物の形態も想定しうる。
【0071】
これらの基本的変形を導入した後、該方法を実施するための細部をさらに詳しく説明する。50〜160℃、特に60〜140℃、特に好ましくは70〜140℃の温度に加熱した後、反応装置の中身を、好ましいプロセス変形にて、不活性気体を用いて攪拌しながら好ましくは10〜60分間にわたってストリッピングした。不活性気体でストリッピングした後、不活性気体を液相に導入し、同時に5〜500ミリバールの絶対圧の減圧にすることにより揮発性成分を除去した。添加したH官能性化合物、および添加されていてもよいコモノマーの量に対して、1または複数のアルキレンオキシドを典型的には5〜20重量%で添加した後、DMC触媒は活性化される。
【0072】
1または複数のアルキレンオキシドの添加は、反応装置の中身を50〜160℃、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは70〜140℃の温度に加熱する前、加熱する間または加熱した後に行ってもよく;ストリッピングの後に行うのが好ましい。触媒の活性化は、反応装置の加速的減圧を介して分かるようになり、それを通して初期のアルキレンオキシドの容量/コモノマーの容量が分かる。
【0073】
次に、所望の量のアルキレンオキシドまたはアルキレンオキシド混合物、および可能性としてのさらなるコモノマーが、該反応混合物に連続的に加えることができ、その場合、20〜200℃、好ましくは50〜160℃の反応温度が選択される。反応温度は多くの場合で活性化温度と同じ温度である。
【0074】
触媒は非常に迅速に活性化されることが多く、アルキレンオキシド/コモノマーを分けて分配することで触媒の活性化について除外し、アルキレンオキシドの、および可能性としてのコモノマーの連続的分配を、最初は潜在的に分配速度を遅くしてすぐに開始することができる。アルキレンオキシドの分配段階での/一方で、不飽和環状カルボン酸無水物を分配する間の反応温度は、記載される範囲内で変更してもよい。同様に、アルキレンオキシドおよびコモノマーは別個に反応基に添加されてもよく:気体段階の間に、あるいは例えば、十分に混合された領域内の反応器の底部近くに設けられた浸漬管またはディストリビューターリングを介して液体段階にて直接分配することが可能である。
【0075】
DMC触媒の方法では、液体段階の間に分配するのが好ましい。アルキレンオキシドおよびコモノマーは、使用される反応装置系の安全性関連の圧力限界を越えないように、反応装置に連続して添加される。特にエチレンオキシドを含有するアルキレンオキシドまたは純粋なエチレンオキシドと共に分配する場合に、開始段階および分配段階の間に不活性気体の十分な分圧が反応装置中で維持されることを確保する必要がある。これは、例えば、希ガスまたは窒素を通して構成され得る。
【0076】
液体段階の間に分配する場合、例えば、ディストリビューターリングの底部に分配孔を設けることにより、分配装置が自己で空になるように設計される。反応媒体の分配装置および反応体テンプレートへの逆流は、一般に、機械を用いる技術的測定を通して防止される。アルキレンオキシド/コモノマーの混合物を分配し、各アルキレンオキシドおよび各コモノマーを別々にまたは混合物として反応装置に加えることができる。アルキレンオキシドの相互の、およびコモノマーとの予備混合は、例えば、一般的な分配セクションに設置される混合装置(「インラインブレンド」)を介して達成され得る。
【0077】
ポンプ放出側で、例えば、熱交換器により制御されるポンプ循環を介して、アルキレンオキシドおよび可能性としてのコモノマーを、別々に、または予め混合して分配することが有益であることも明らかにされている。反応媒体と適切に混合するには、高剪断混合装置をアルキレンオキシド/コモノマー/反応媒体の流れの中に組み入れるのが有益である。発熱開環付加反応の温度は冷却を通じて所望のレベルに維持される。発熱反応用の高分子化反応器の設計についての最新技術(例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. B4, pp. 167ff, 5th Ed., 1992)によれば、この冷却作用は、一般に、反応器壁(例えば、二重胴式パイプ、半装荷コイルパイプ)を介して、ならびに反応器の内部に設置されたさらなる熱交換器を介して、および/またはポンプ循環にて、外部にある、例えば冷却コイル、冷却プラグ、パネル管束またはミキサー熱交換器によってなされる。それらは、分配段階の開始の際に、すなわち最小量が充填される時に、既に効果的な冷却を提供しうるように配置される。
【0078】
一般に、市販されている攪拌機の配置および使用を通して反応器の中身があらゆる反応段階で適切に混合されることを確保する必要があり、ここで特に単一または複数の段階で配置された撹拌機または撹拌機の型はこの場合に適する充填レベルにて広く作用する(例えば、「Apparatuses」 manual; Vulkan-Verlag Essen, 1st Edition (1990), pp.188-208を参照のこと)。この場合、特に技術的に関連することは、反応器の中身を通じて媒体に導入される混合エネルギーであり、このエネルギーは一般に0.2〜5W/lの範囲にあって、攪拌機それ自体が直接影響を及ぼす範囲では、および可能性として充填レベルが低い場合には、各々、その局所的性能レベルは高い。最適撹拌を達成するために、バッフル(例、平坦なまたは管状のバッフル)および冷却コイル(または冷却プラグ)の組み合わせを、最新の反応器に、該反応器のフロアーを横切って伸びるように配置し得る。混合装置の撹拌能はまた、分配段階における充填レベルに応じて変化してもよく、臨界的反応段階では特に高いエネルギー入力を確保しうる。例えば、分散体(反応の開始時点で添加されてもよい固形物を含有する分散体)を混合するのが有益であり、例えば、シュークロースを用いる場合に特に大きな利益がある。
【0079】
また、反応混合物中の固形物の十分な分散が攪拌装置の選択を通して保証され、特に固体H官能性スターター化合物を用いる場合に確保することが必要とされる。この場合、反応器のフロアー上での攪拌装置ならびに懸濁させるのに特に適する攪拌機を用いるのが好ましい。その上、攪拌機の形状は反応生成物の泡沫化を減少させる助けとなる。反応混合物の泡沫化は、例えば、分配段階の終わりに、および後の反応段階で残りのエポキシドが1〜500ミリバールの範囲にある絶対圧の減圧下でさらに除去される場合に観察され得る。液体面の連続混合を達成する攪拌機がかかる場合に適していることが明らかにされた。必要に応じて、攪拌機のシャフトはフロアー支持体を有し、可能性として容器中に支持軸受を有してもよい。この点において、攪拌機のシャフトは上下に駆動可能である(ここで、シャフトは中心付近に、または偏心して配置されている)。
【0080】
あるいは、必要な混合を熱交換器により制御されるポンプ循環によって独占的に達成することが可能であり、または攪拌装置とは言わないが、さらなる混合部材(必要に応じて、反応器の中身を移動させる(典型的には、1時間に1〜50回))として操作することも可能である。
【0081】
種々の型の反応器が本発明の方法を行うのに適している。高さ:直径の割合が1:1〜10:1の円筒状容器が使用するのに好ましい。反応器のフロアーとして、例えば、球面、トーラス球面、平坦または円錐形のフロアーが考えられる。
【0082】
工程a)でのアルキレンオキシドおよびコモノマーの分配が完了した後、その後の反応段階を続けて行ってもよく、そこで残りのアルキレンオキシドおよびコモノマーを反応させる。反応槽中の圧力の減少がもはや測定できない場合に、その後の反応段階は完了している。微量の未反応のアルキレンオキシドおよび未反応のコモノマーは、反応段階の後に、可能性として1〜500ミリバールの絶対圧での減圧下で、またはストリッピングを通して定量的に除去することができる。不活性気体または水蒸気を液体段階で導入し、同時に減圧に供することにより(例えば、5〜500ミリバールの絶対圧で不活性気体を送ることにより)、ストリッピングして(残りの)アルキレンオキシドなどの揮発性成分が除去される。未反応のエポキシドなどの揮発性成分の除去は、減圧下で、または20〜200℃、好ましくは50〜160℃の温度でストリッピングして、好ましくは撹拌しながら行われ得る。これらのストリッピング工程はまた、いわゆるストリッピングカラムにて実施され、その場合、不活性気体または水蒸気は反対方向に流れる。ストリッピングは水蒸気の存在下で不活性気体を用いてなされるのが好ましい。適正な圧力に達した後、または真空処理および/またはストリッピングを通して揮発性成分が除去された後、生成物を反応装置より取り出すことができる。
【0083】
最初に全量のコモノマーが加えられないとすれば、アルキレンオキシドの分配を中断し、その後の反応段階の後で、さらなるコモノマーの分配が再開されるように、工程a)のプロセス変形A)でコモノマーを分配することができる。本来、このプロセスは一連の反応の間に複数回繰り返すことができる。その後のアルキレンオキシドブロックは、スターター化合物として使用されるH官能性化合物から由来の活性H原子1モルに付き1モルより多くの量のアルキレンオキシドを含むことが特に好ましい。
【0084】
アルキレンオキシドの分配速度およびコモノマーの分配速度の割合を、これら両方の成分を相反する方式にて同時に加えながら、例えば、コモノマーの分配流速:アルキレンオキシドの分配流速の割合を0:1〜1:0の値と想定して、連続的または段階的に変化させることも同様に可能である。
【0085】
DMC触媒の一の特徴は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトールまたはシュークロースなどの多量のスターター、ならびに反応混合物またはスターターの極性不純物により引き起こされる、高濃度のヒドロキシル基に対するその特有の感受性にある。DMC触媒は反応開始段階の間に高分子化活性形態に移行されない。不純物は、例えば水あるいは炭水化物および炭水化物誘導体などの多数のヒドロキシル基が近接して位置する化合物であり得る。カルボニル基が近接して位置する物質またはヒドロキシル基が隣接する物質は触媒活性に対して負の効果を有する。
【0086】
OH基を高濃度で有するスターター、あるいは触媒毒であると考えられる汚染物質を含むスターターがそれでもDMC触媒アルキレンオキシド付加反応を受けることを確保するのに、ヒドロキシル基の濃度を減少させるか、または触媒毒を無害としなければならない。この点で、まず塩基性触媒を用いてこれらのスターター化合物からプレポリマーを生成し、次にそれをDMC触媒で処理した後に高モル質量の所望のアルキレンオキシド付加生成物に変換しうる。プレポリマーは、例えば、スターターとして適する上記の「最終前のアルキレンオキシド付加生成物」を含む。この方法の不利な点は、塩基性触媒を通して得られるかかるプレポリマーが、該プレポリマーにより可能性として導入された微量の塩基性触媒を介してDMC触媒の失活を回避するように注意深く処理されなければならないことである。
【0087】
この不利な点は、いわゆるスターターの連続分配方法を通して解決され得る。この点、スターター化合物は臨界量で反応装置に添加されず、それよりもむしろアルキレンオキシドの他に、反応を行う間は連続的に反応装置に添加される。プレポリマーはこの方法にて該反応のスターター媒体として加えられてもよく、少量の生成物その物をスターター媒体として用いることもできる。このように、さらなるアルキレンオキシドの付加に適するプレポリマーを別個に生成しなければならないという最初の必要性は排除される。
【0088】
かくして、本発明の方法の工程a)の変形B)において、スターターポリオールおよびDMC触媒を反応装置系に加え、H官能性化合物をアルキレンオキシドおよびコモノマーと一緒に連続して添加する。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテル−エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオールなどのアルキレンオキシド付加生成物は、各々、例えばOH値を3〜1000mgKOH/g、好ましくは3〜300mgKOH/gの範囲にて有する、工程a)におけるスターターポリオールとして、および/または工程a)とは別に生成されるヒドロキシル基を有する前駆体として適している。好ましくは、工程a)とは別に生成されるヒドロキシル基を有する前駆体はスターターポリオールとして使用される。
【0089】
この実施態様のあまり好ましくない変形B)にて、アルキレンオキシドの分配速度と、コモノマーの分配速度の割合を、これらの両方の成分を同時に加えながら、その場合、例えばコモノマーの分配流速:アルキレンオキシドの分配流速の割合が0:1〜1:0の値であると想定して、対向的に連続的にまたは徐々に変えることも同様に可能である。この実施態様によれば、工程a)のヒドロキシル基を有する前駆体がそれほど一貫した形態にて得られないため、該実施態様はあまり好ましくない
【0090】
工程a)の実施態様B)にて、H官能性化合物の分配ならびにアルキレンオキシドおよびコモノマーの分配は同時に終えるか、あるいはH官能性化合物と、第1の一部の量のアルキレンオキシドおよび第1の一部の量のコモノマーとをまず一緒に加え、その後で第2の一部の量のアルキレンオキシドおよびコモノマーを加え、第1と第2の一部の量のアルキレンオキシドと、第1と第2の一部の量のコモノマーの合計が、工程a)で用いられる1または複数のアルキレンオキシドまたは1または複数のコモノマーの総量に相当するところの方法が好ましい。第1の一部の量は、工程a)にて分配されるアルキレンオキシドの総量の60〜98重量%で、第2の一部の量は40〜2%であることが好ましい。第1の一部の量が工程a)にて分配される1または複数の不飽和環状カルボン酸無水物の0〜100重量%であり、第2の一部の量が100〜0重量%であることが好ましい。
【0091】
H官能性化合物の分配が終わった後で、アルキレンオキシドの組成および/または1または複数のコモノマーの組成および/または分配速度を修飾すれば、プロセス変形B)に従ってマルチブロック構造の生成物も製造され得る。このようにして、コモノマー単位の静的分布がブロック内で提供される。プロセス変形B)ではまた、アルキレンオキシドを分配する前にコモノマーの分配を終えることが好ましく、この最終のアルキレンオキシドブロックがスターター化合物として用いられるH官能性化合物から由来の活性H原子1モル当たり1モルより多くの量のアルキレンオキシドを含むようにすることが特に好ましい。試薬を添加した後に、その後の反応段階が続き、その反応段階でのアルキレンオキシド/コモノマーの使用は圧力をモニター観察することで定量され得る。一定圧に達した後、最終生成物がリリースされてもよく、可能性として減圧下に付した後、またはストリッピングを通して、上記されるように未反応性アルキレンオキシドを除去してもよい。
【0092】
本発明の方法の工程a)の変形C)において、ヒドロキシル基を有する前駆体が連続して生成され得る。この点において、アルキレンオキシドおよびH官能性化合物ならびにコモノマーの他にDMC触媒を、アルコキシ化条件下で、反応溶液または反応装置系に連続して添加し、予め選択された平均保持時間後に反応装置または反応装置系より生成物を連続して取り出す。プロセス変形C)の場合には、反応装置カスケードが反応装置系として使用されることが好ましく、そのために第三の連続操作の反応装置が第二反応装置と実際の反応装置の間に配置され、そこで独占的に1または複数のアルキレンオキシドが連続して分配される。プロセス変形C)の特に好ましい実施態様において、この最終のアルキレンオキシドブロックは、スターター化合物として使用されるH官能性化合物から由来の活性H原子1モルに付き、1モルより多くのアルキレンオキシドを含む。
【0093】
その後に連続的反応段階が、例えば反応装置カスケードにて、または管型反応装置にて続いてもよい。揮発性成分は、上記されるように、減圧下で、および/またはストリッピングを通して除去され得る。
【0094】
DMC触媒作用による付加工程a)に従って得られるヒドロキシル基を有する前駆体のOH値は、好ましくは3mgKOH/g〜200mgKOH/gであり、特に好ましくは10〜60mgKOH/gであり、さらにより好ましくは20〜50mgKOH/gである。
【0095】
OH値は、例えば規定DIN 53240による滴定分析により、またはNIRを介する分光分析により決定され得る。
【0096】
等価モル質量とは、活性水素原子を含有する物質の全質量を活性水素原子の数で割ったものをいう。ヒドロキシル基を含有する物質の場合には、等価モル質量はOH値と次のように関連付けられる:
等価モル質量=56100/OH値[mgKOH/g]
【0097】
酸化防止剤などのアンチエージング剤が、可能性として、本発明の方法の工程a)に従って得られるヒドロキシル基を有する前駆体に添加することができる。
【0098】
工程b)は上記されるようにこのプロセス変形と一緒に生じる。
【0099】
本発明のさらなる目的は、
本発明のイソシアネート官能性プレポリマーの形態の成分A)、および一般式(VIII):
【化1】
[式中
Xはn価の有機ラジカルであり、
R
1、R
2は、ツェレビチノフ活性H原子のない同一または異なる有機ラジカルを有し、
nは2以上の整数、特に2または3である]
で示されるアミノ官能性アスパラギン酸エステルの形態の成分B)、および/または
イソシアネート官能性プレポリマーA)と、アミノ官能性アスパラギン酸エステルB)との反応生成物(成分C)と称する)のを有する、組織接着剤を含む組織接着剤系に関する。
【0100】
成分A)およびB)が硬化すると、ポリウレアポリマーができ、ここで該成分Bは該成分Aの硬化剤として機能する。
【0101】
本発明の組織接着剤系は、その有益な生分解性の他に、硬化時間が短いことで主として区別される。本発明の組織接着剤系は、室温およびヒトの皮膚の平均的な湿潤性で一般に5分未満でその表面がもはや粘着しない程度まで硬化する。例えば、このことは指で確認することができる。好ましい組織接着剤系は4分未満でもはや既に粘着性はない。
【0102】
アミノ官能性アスパラギン酸エステルは、例えば、二官能性不飽和有機酸のジエステル(マレイン酸ジエチルなど)を少なくとも2個の第一アミノ基を有する有機アミン(ビス(ヘキサメチレン)トリアミンなど)の第一アミノ基への付加(マイケル付加反応)を通して生成され得る。例えば、EP11153810.4はその製造を記載しており、その内容は本明細書中に十分に開示されている。マレイン酸のジエステルの他に、例えば、テトラヒドロフタル酸のジエステル、特に3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸のジエステルならびにその組み合わせも考慮に値する。
【0103】
もちろん、鎮痛剤(抗炎症作用のある、またはない鎮痛剤)、消炎剤、抗菌活性物質、抗真菌剤、および抗寄生虫活性物質などの薬理学的に活性な物質も同様に組織接着剤系に組み入れることができる。
【0104】
活性物質は純粋な活性物質であってもよく、あるいは例えば遅延放出性を達成するのにカプセルの形態であってもよい。本発明の範囲内で、多数の型または種類の活性物質が医学的に活性な物質として使用され得る。
【0105】
一のかかる医学的に活性な物質は、例えば、インビボ条件下で一酸化窒素を放出する成分、好ましくはL−アルギニン、あるいはL−アルギニン、特に好ましくはL−アルギニン塩酸塩を含有または放出する成分を含んでもよい。プロリン、オルニチンおよび/または生体ポリアミン(スペルミン、スペルミジン、プトレシンまたは生物活性人工ポリアミン)などの他の中間段階の生体起源物質も同様に使用されてもよい。知っているとおり、これらの型の成分は創傷の治癒を促進し、創傷の治癒には、それらをほぼ等量で定量的に連続して放出することが許容可能である。
【0106】
本発明に応じて使用可能なさらなる活性物質は、ビタミンまたはプロビタミン、カロチノイド、鎮痛剤、防腐剤、止血剤、抗ヒスタミン、抗微生物性金属またはその塩、創傷の薬草治癒を促進する物質またはその物質混合物、薬草エキス、酵素、成長因子、酵素阻害剤ならびにそれらの組み合わせの群より選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0107】
特に非ステロイド系鎮痛剤、特にサリチル酸、アセチルサリチル酸およびその誘導体(例えば、アスピリン(登録商標))、アニリンおよびその誘導体、アセトアミノフェン(例えば、パラセタモール(登録商標))、アントラニル酸およびその誘導体(例えば、メフェナミン酸)、ピラゾールまたはその誘導体、メタミゾール、ノバルジン(登録商標)、フェナゾン、アンチピリン(登録商標)、イソプロピルフェナゾン、および特に好ましくはアリール酢酸ならびにその誘導体、ヘテロアリール酢酸およびその誘導体、アリールプロピオン酸およびその誘導体、およびヘテロアリールプロピオン酸およびその誘導体、例えばインドメタシン(Indometacin)(登録商標)、ジクロフェナク(登録商標)、イブプロフェン(登録商標)、ナキソプロフェン(登録商標)、インドメタシン(Indomethacin)(登録商標)、ケトプロフェン(登録商標)、ピロキシカム(登録商標)が鎮痛剤として適している。
【0108】
成長因子として、特に次の因子:aFGF(酸性線維芽成長因子)、EGF(表皮成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、rhPDGF−BB(ベカプレルミン)、PDECGF(血小板由来内皮細胞成長因子)、bFGF(塩基性線維芽成長因子)、TGFα(形質転換成長因子アルファ)、TGFβ(形質転換成長因子ベータ)、KGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF1/IGF2(インスリン様成長因子)およびTNF(腫瘍壊死因子)に言及する。
【0109】
特に、それらの脂溶性または水溶液ビタミン類、ビタミンAであるレチノイド群、プロビタミンAであるカロテノイド群、特にβ−カロテン、ビタミンEであるトコフェロール群(特にα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、およびα−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、およびδ−トコトリエノール)、ビタミンK、フィロキノン、特にフィトメナジオンまたはハーブビタミンK、ビタミンC、L−アスコルビン酸、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンG、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸、およびニコチン酸アミド、ビタミンB5、パントテン酸、プロビタミンB5、パンテノールまたはデキサパンテノール、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンH、ビオチン、ビタミンB9、葉酸ならびにそれらの組み合わせが、ビタミンまたはプロビタミンとして適している。
【0110】
防腐剤としては、殺細菌剤、殺菌剤、静菌剤、殺真菌剤、殺ウイルス剤、静ウイルス剤、および/または通常の殺微生物剤として作用する媒体を用いる必要がある。
【0111】
特に、レゾルシノール、ヨウ素、ヨウ素ポビドン、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、過酸化ベンゾイルまたは塩化セチルピリジニウムの群より選択されるそれらの物質が適している。その上、特に抗微生物性金属は防腐剤として用いることができる。特に、銀、銅または亜鉛、ならびにそれらの塩、オキシドまたは錯体は抗微生物性金属として一緒にまたは独立して使用され得る。
【0112】
本発明と関連して、特にカモミールエキス、マンサクエキス、例えば、アメリカマンサク、キンセンカエキス、アロエエキス、例えば、アロエベラ、アロエ・バーバデンシス、アロエ・フェロックスまたはアロエ・ブルガリス、緑茶エキス、海藻エキス、例えば、紅藻類または緑藻類エキス、アボカドエキス、ミルラエキス、例えば、コモホラ・モルモル(Commophora molmol)、竹類エキスならびにそれらの組み合わせが、創傷の治癒を促進する薬草活性物質と称される。
【0113】
活性物質の含量は、主に、医学的に必要とされる用量、ならびに本発明の組成物に配合される残りの成分との耐性で調整される。
【0114】
特に好ましい変動にて、本発明のアミノ官能性アスパラギン酸エステルの組織接着剤系を、一般式(IX):
[式中、R
1、R
2、R
3は、ツェレビチノフ活性H原子のない同一または異なる有機ラジカルを有し、ここでR
1およびR
2はメチル、エチル、プロピル、およびブチルラジカルより特に選択され、R
3は炭素数1〜12の、好ましくは炭素数3〜7の直鎖または分岐鎖アルキレンラジカルより特に選択される]
で示される構造物より選択することが可能である。
【0115】
しかしながら、本発明の組織接着剤系は、上記した硬化剤(成分B)の使用に限定されるだけでなく、むしろ1または複数のさらなる硬化剤も有し得る。かくして、本発明の組織接着剤系はまた、特に好ましい実施態様に従って、1000Da以下の、特に600Da以下の、より好ましくは400Da以下の、あるいはさらには300Da以下の数平均モル質量を有するポリオールより特に選択されるさらなる硬化剤を含む。例えば、PEGまたはPPGがポリオールとして適している。これらの特別な硬化剤の添加は、本発明の組織接着剤系の硬化速度に影響を及ぼし、すなわち普通は硬化時間が短くなり、その結果、必要に応じて組織接着剤で包み込むことが可能となる。
【0116】
本発明の組織接着剤系のさらなる変形によれば、その組織接着剤系は組織保護剤が塗布され得る平坦な保護層(特に、金属箔、合成泊、フリース、組織、布地、繊維またはそれらの組み合わせ)を含むこともできる。この変形方法では、接着剤を創傷部などの接着させる部分に押し当て、接着剤の接着性を改善し、該方法にて使用者が接着剤に触れることなく接着剤が流れ出ることを防止した。また、塗布の際に加えられる圧力により、血管も局部的に圧迫されるため、出血は容易に止めることができる。次に保護層をその領域に残したままとすることも、または除去することもできる。この点において、保護層は、必然的に、接着剤の少なくとも反対側に抗接着性コーティングを、例えば関連する表面にシリコーンコーティングを提供することが必要である。
【0117】
本発明はまた、該発明の組織接着剤系用の少なくとも2個のチャンバーを有する分配システムであって、組織接着剤系の成分A)が一のチャンバーに含まれ、成分B)および含まれてもよい成分C)が別のチャンバーに含まれるところの、分配システムにも関する。
【0118】
本発明のさらなる目的は、本発明の組織接着剤系より得ることのできる、接着剤フィルムならびにその結果として生成される複合部材の提供である。
【0119】
最後に、本発明の目的は、細胞組織を塞ぐか、結合させる方法であって、そのために本発明の組織接着剤系を用いることである。
【0120】
次に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。特記されない限り、%はすべて重量に関連する。
【0121】
方法:
【0122】
DIN 53240の規定に従ってOH値を測定した。
【0123】
DIN 53018の規定に従ってポリオールの粘度を回転粘度計(Physica MCR 51、製造業者:Anton Paar)を用いて測定した。
【0124】
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)ならびに多分散度(Mw/Mn)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。この方法では、DIN 55672−1:「Gel Permeation Chromatography, Part 1 - Tetrahydrofuran as an Eluent」(PSS Polymer ServiceのSECurity GPC system、流速1.0ml/分;カラム:2xPSS SDVリニアーM、8x300mm、5μm;RID検出器)を用いた。分子量が既知のポリスチレンサンプルを該方法の較正に用いた。
【0125】
明示的に別段の定めをした場合を除き、NCOの含量をDIN−EN ISO 11909に従って容量で測定した。
【0126】
残りのモノマー含量をDIN ISO 17025に従って測定した。
【0127】
ポリオールの製造
【0128】
ヒドロキシル基を有する前駆体1(ポリオール1):
【0129】
OH値が400mg KOH/gであるグリセリン開始のポリ(オキシプロピレン)トリオール(98.1g)、ジラクチド(48.4g)およびDMC触媒(0.107g)(WO01/80994A1の実施例6の記載に従って調製した)を、窒素下でステンレス製の2Lの圧力容器に入れ、その後で100℃に加熱した。0.1バールの下、窒素でストリッピングして30分後、温度を130℃に上げ、次に酸化エチレン(701.8g)および酸化プロピレン(217.8g)からなる混合物をこの温度で130分以内に分配する。130℃で45分間の反応時間が経過した後、共有する揮発物を90℃で30分間にわたり真空下で蒸留して取り除き、次に反応混合物を室温に冷却する。
【0130】
生成物特性:
OH値:33.7mg KOH/g
粘度(25℃):1370mPa
多分散度(Mw/Mn):1.13
【0131】
ヒドロキシル基を有する前駆体2(ポリオール2):
【0132】
OH値が260mg KOH/gであるプロピレングリコール開始のポリ(オキシプロピレン)ジオール(140.0g)、ジラクチド(145.3g)およびDMC触媒(0.087g)(WO01/80994A1の実施例6の記載に従って調製した)を、窒素下でステンレス製の2Lの圧力容器に入れ、その後で100℃に加熱した。0.1バールの下、窒素でストリッピングして15分後、温度を130℃に上げ、次に酸化エチレン(526.8g)および酸化プロピレン(54.5g)からなる混合物をこの温度で80分以内に分配する。130℃で75分間の反応時間が経過した後、共有する揮発物を90℃で30分間にわたり真空下で蒸留して取り除き、次に反応混合物を室温に冷却する。
【0133】
生成物特性:
OH値:29.3mg KOH/g
粘度(25℃):1185mPa
多分散度(Mw/Mn):1.41
【0134】
イソシアネート官能性プレポリマーの製造:
【0135】
イソシアネート官能性プレポリマー1の合成:
【0136】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(183.1g)および塩化ベンゾイル(0.9g)を、1Lの四つ口フラスコに入れた。ポリオール2(478.7g)を80℃で2時間以内に加え、その後で1時間攪拌した。次に、過剰量のHDIを130℃および0.13ミリバールでの薄膜蒸留に付して取り除いた。NCO含量が2.38%のプレポリマー1を得る。残りのモノマー含量は<0.03%HDIであった。粘度:4930mPa/23℃。
【0137】
イソシアネート官能性プレポリマー2の合成:
【0138】
HDI(293g)および塩化ベンゾイル(1.5g)を、1Lの四つ口フラスコに入れた。ポリオール1(665.9g)を80℃で2時間以内に加え、その後で1時間攪拌した。次に、過剰量のHDIを130℃および0.13ミリバールでの薄膜蒸留に付して取り除いた。NCO含量が2.37%のプレポリマー2を得る。残りのモノマー含量は<0.03%HDIであった。粘度:5740mPa/23℃。
【0139】
アスパルテート硬化剤の製造:
【0140】
アスパルテートA:
【0141】
2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(1モル)をマレイン酸ジエチル(2モル)に反応温度が60℃を超えないようにゆっくりと滴下して加えた。その後で、該反応混合物中にマレイン酸ジエチルがもはや検出されなくなるまで60℃に加熱した。定量的反応が起こった。
【0142】
アスパルテートB:
【0143】
ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(1モル)をマレイン酸ジエチル(2モル)に反応温度が60℃を超えないようにゆっくりと滴下して加えた。その後で、該反応混合物中にマレイン酸ジエチルがもはや検出されなくなるまで60℃に加熱した。定量的反応が起こった。
【0144】
組織接着剤の製造:
【0145】
組織接着剤1の製造:
【0146】
イソシアネート官能性プレポリマー2を当量のアスパルテートAと一緒に一の容器中で十分に攪拌した。その直後に、反応混合物の薄被膜を結合させる組織に塗布した。各々を強く結合する透明膜への硬化が2分以内に起こった。接着剤の表面は6分後にはもはや粘着性を有しなかった。処理時間は5分45秒であった。
【0147】
組織接着剤2の製造:
【0148】
イソシアネート官能性プレポリマー1を当量のアスパルテートBと一緒に一の容器中で十分に攪拌した。その直後に、反応混合物の薄被膜を結合させる組織に塗布した。各々を強く結合する透明膜への硬化が1分以内に起こった。接着剤の表面は3分後にはもはや粘着性を有しなかった。処理時間は1分30秒であった。
【0149】
生分解性の測定:
【0150】
試験する組織接着剤系を管(直径:0.5cm、長さ:2cm)中で硬化させた。得られた硬化試験試料(2.7g)を、該材料が完全に溶けるまで、すなわち残留物がなくなるまで、撹拌インキュベーター中、60℃または37℃、150RPMで、緩衝溶液(pH:7.4、Aldrich:P−5368)(10ml)中でかき混ぜた。試料の分解が以下に示す期間で完了した:
組織接着剤1:60℃で11週間
組織接着剤2:60℃で6時間
【0151】
細胞傷害性の測定:
【0152】
硬化した組織接着剤2を、ISO 10993−5:2009に従って、L 929細胞で細胞傷害性について試験した。該材料は非細胞傷害性であることが証明された。
【0153】
硬化速度の加速:
【0154】
組織接着剤の硬化速度を上げ、組織接着剤系の4:1ダブルチャンバー式スプレーシステムへの適用を可能とするために、十分な量のポリエチレングリコール(PEG)200を、硬化剤、すなわちアルパルテートAに混合し、イソシアネート官能性プレポリマー2(4ml)および硬化剤(1mL)の混合割合とした。硬化時間は処理時間に相当する1分30秒に短縮された。
【0155】
出血がひどい場合に不可欠である硬化速度を上げるために、PEG200とアスパルテートAおよびBの様々な混合物を製造した。配合量は、プレポリマーの硬化剤に対する容量割合が4:1に維持されるように、選択された。
【0156】
【表1】
【0157】
イソシアネート官能性プレポリマー2およびアスパルテートA/アスパルテートB/PEGの混合物の0.29/0.175/0.55の割合でのモルモットについてのインビボ実験:
【0158】
肺瘻の治療:
【0159】
肺瘻のある約4cm長の肺の一片を外科的に摘出した。気管支の直径は約3mmであった。動脈出血も生じた。メドミックス(Medmix)社製の4:1ダブルチャンバーシリンジの接着剤(約3mL)を塗布した。接着剤を適切なホイルで創傷部に押し当て、接着剤が流れ出ることを防止した。接着剤は約30秒以内に硬化した。肺を密閉し、出血が止まった。接着剤は22mmHgのベンチレーター圧に持ちこたえた。
【0160】
比較試験−肺瘻のフィブリン接着剤での密閉:
【0161】
同じ操作を繰り返した。上記の接着剤の代わりに、フィブリン(Tisseel)を使用した。フィブリン接着剤を混合するための調製時間は約10分であった。肺瘻に塗布すると、少量の凝血が直ちに形成されたが、その下で空気はまだ漏れていた。肺瘻は密閉できなかった。
【0162】
心臓の刺創:
【0163】
心臓の左心室の冠動脈を外科用メスで傷つけ、約1cm長の創傷部から噴霧出血がもたらされた。メドミックス社製の4:1ダブルチャンバーシリンジの接着剤(5mL)を塗布した。接着剤を適切なホイルで創傷部に押し当て、接着剤が流れ出ることを防止した。創傷部は40秒以内に完全に密閉することができ、140mmHgの一定血圧を維持した。