【実施例】
【0068】
(実施例1)(比較例)エタノールを用いたと大豆油のエチルエステルの形成(小型オゾン発生器を用いて実施した)。
本方法は、共沸蒸留による利益を得ない、従来のオゾン分解を示す。大豆油(80g;0.4091モル二重結合;1.0909モル反応部位)を、98%硫酸(2.33mL;1モル/25モル反応部位)を含むエタノール(400mL;6.3当量)中に溶解させた。リアクター内にオゾンを2リットル/分で9.5時間注入し、その時に、最初のブレイクスルーが生じた。反応物はそれから、3時間還流した。オゾンを再度、2リットル/分、60℃でさらに3時間リアクター内に注入し、アセタールがまだ残っていると判定された際に、反応物を3時間還流した。オゾンを再度、2リットル/分、60℃でさらに2時間リアクター内に注入して、反応物を3時間還流したところ、16%アセタールがまだ残っていることが分かった。オゾンを再度、2リットル/分、60℃でさらに3時間リアクター内に注入して、反応物を2時間還流したところ、3.5%アセタールがまだ残っていると判定された。オゾンを再度、2リットル/分、60℃でさらに1時間リアクター内に注入して、反応物を2時間還流したところ、2%アセタールがまだ残っていると判定された。オゾンを再度、2リットル/分、60℃でさらに1.5時間リアクター内に注入して、反応物を2時間還流した。
【0069】
送達されたオゾンの合計は、二重結合モルあたり必要なオゾン2モルに基づいて、オゾン理論量の157.6%であった。ブレイクスルー後の、この反応の第二段階におけるオゾン分解反応時間の合計は、10.5時間であった。それから、混合物を酢酸エチル(500mL)中に溶解して、10%水酸化アンモニウム中の10%亜硫酸ナトリウム(100mL)で分配した。有機相を20%塩水(8×100mL分)で分配して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相を濾過して、蒸留により酢酸エチルを除去した。81.17gのエチルエステル最終生成物が得られ、それは61.1%収率に相当し、生成物は98.5%の純度であった。
【0070】
これに対して、本発明の実施態様では、アセタール化合物へのシフトが顕著である。水と共沸する溶媒の存在下での、水と共沸するモノアルコールの反応は、還流中に、水相と共沸するモノアルコールが縮合後に分離し、全てまたは実質的に全てまたはほとんどのアルデヒド官能基を、最大限達成可能な量の非環状アセタール類に最初に転換することにより、最初のブレイクスルー後に添加されるオゾンのより効率的な使用を可能にする。第二段階のオゾン分解は、最初のブレイクスルーの後にオゾンが添加されたときに生じる。本発明の溶媒ベースのオゾン分解の別の利点は、適切な共沸溶媒が、水除去の効率を増大させることであり、より高いアセタール濃度をもたらす。したがって、オゾンとのアセタール反応率が、第二段階のオゾン分解において増加する。さらに、オゾンは高価であり、その効率的使用は反応コスト全体を低減させる。
【0071】
特に実施例2および3では、最初のオゾンブレイクスルーは、全ての利用可能な二重結合の酸化に相当する。溶媒ベースのオゾン分解の別の利点は、溶媒が、比較的高い水組成を有する共沸混合物を生じることであり、縮合後、水は本質的に溶媒/水混合物に不溶である。それらの組み合わせた特性は、反応混合物を還流するステップおよび縮合チューブ中の溶媒から水を分離するステップにより、最初のオゾンブレイクスルー後に存在する全ての水の効率的な除去を可能にする。水除去は、平衡をアセタール側にシフトさせるために必要であり、平衡をアセタール側に効率的にシフトさせる適切な共沸溶媒と共に還流する。このことは、実施例2および実施例3に示すように、非環状ジブチルアセタールを、継続的なオゾン分解による利用を可能とさせて、高収率で切断型アルキルエステル類を形成する結果となる。
【0072】
実施例2および実施例3は、全てのアルデヒド官能基を、最大限達成可能な量の非環状アセタール類に転換することにより、オゾンとのアセタール反応率を増加させることを示し、したがって、高価なオゾンの使用全体の減少を導く。以下に示すように、実施例2で、1−ブタノールを単独で用いた場合、理論上のオゾンの119.8%が消費された。実施例3で、酢酸ブチルを補助溶媒として組み合わせて1−ブタノールを用いた場合、理論上のオゾンの106.9%が消費された。
【0073】
(実施例2)モノアルコール(1−ブタノール)を用いたブチルエステルの形成
本実施例は、水と共沸するモノアルコール(つまり、1−ブタノール)を用いた本発明による方法を示す。分画されたパーム油脂肪酸留出物(250.0g;0.914モル二重結合;2.7240モル反応部位)を、98%硫酸(1.45mL;反応部位に基づいて1/100モル比)を含む1−ブタノール(875mL;3.5当量)中に溶解させた。オゾンをリアクター内に2.5リットル/分で3時間注入して、その時に、ブレイクスルーを観察した。それから反応物を、ディーン・スタークチューブを用いて1時間還流して、水を除去した。第一段階のオゾン分解と比べて半分のオゾン濃度を用いて、オゾンを再度、リアクター内に2リットル/分で8時間注入した。第二段階のオゾン分解は、合計119.8%(二重結合モルあたりに必要とされるオゾン2モルに基づく)のオゾンの送達を有した。
【0074】
それから、結果として生じる混合物を、ディーン・スタークチューブ内で、1.5時間還流した。それから、混合物を、洗浄したAmberlite IRA−67(硫酸に基づき4当量)とともに撹拌した。pHが5.5の時点で、樹脂を濾過してリンスした。ブタノールとのオゾン分解中に形成される残留酸の自己エステル化による、生成物の最終酸価を減少させるために、シュウ酸錫(II)(0.12g)を混合物に添加した。それから、過剰のブタノールを蒸留により除去して、触媒を濾過により除去した。最終のブチルエステル生成物は、酸価(AV)が4.62で、重量が448.83gであった(103.8%の収率)。過剰な収率は、ブタノールの酪酸への部分的酸化、および、これらの構成要素のその後のエステル化の結果としてのブチル酪酸の形成から生じた。
【0075】
第二段階のオゾン分解の反応時間は8時間であり、オゾンの送達は合計119.8%である。
【0076】
(実施例3)モノアルコール(1−ブタノール)および溶媒(酢酸ブチル)を用いた、ブチルエステルの形成。
本実施例は、水と共沸する溶媒および酢酸ブチルの存在下で、水と共沸するモノアルコールおよび1−ブタノールを用いた、本発明による方法を示す。Emery Edenor OL 72は、飽和脂肪酸(300g;1.0652モル二重結合;3.2186モル反応部位)の部分的除去によるオレインの分画により得られた脂肪酸の混合物であり、オレインを、1−ブタノール(590mL;2当量)および98%硫酸(2.30mL;75モル反応部位あたり1モル)を含む酢酸ブチル(295mL)中に溶解させた。
【0077】
オゾンをリアクター内に2リットル/分で4.75時間注入して、その時に、ブレイクスルーを観察した。それから、ディーン・スタークチューブを用いて1時間、反応物を還流して、水除去をもたらした。オゾンを再度、第一段階のオゾン分解の濃度のおよそ半分で、リアクター内に2リットル/分でさらに7.5時間注入したところ、オゾンの送達は合計106.9%(二重結合モルあたり必要な2モルオゾンに基づく)に達した。反応混合物は、オゾン分解反応後に、オゾン分解の触媒を中和するために反応混合物を塩基性樹脂の中に通す精製プロセスを受けてよく、それから、過剰試薬を蒸留により除去した。
【0078】
それから、結果として生じる混合物を、ディーン・スタークチューブ内で2時間還流して、それから、洗浄したAmberlite IRA−67(81mL;硫酸に基づき1.5当量)とともに撹拌した。pHが4.5よりも高くなった時点で、樹脂を濾過してリンスした。シュウ酸錫(II)(0.10g)を混合物に添加して、1−ブタノールおよび酢酸ブチルを蒸留により除去して、触媒を濾過により除去した。ブチルエステルの最終生成物は、酸価(AV)が0.9で、重量が525.42gであった(99.5%の収率)。
【0079】
第二段階のオゾン分解の反応時間は7.5時間であり、オゾンの送達は合計106.9%であった。
【0080】
実施例2および実施例3は、1−ブタノールを単独で用いた場合、理論上のオゾンの約120%が消費されたことを示す。酢酸ブチルを補助溶媒として組み合わせて1−ブタノールを用いた場合、理論上のオゾンの約107%が消費された。オゾン消費の100%よりも多い分は、1−ブタノールのブタン酸への部分的酸化に起因すると考えられ、それから、エステル化を受けてブチル酪酸を生成した。要するに、実施例2および実施例3は、比較例1に示すようにエタノールを用いる場合よりもオゾンの消費が少ないことを示す。比較例1は、水と共沸混合物を形成するエタノールを用いる。しかしながら、縮合された水およびエタノールは、相分離しない。したがって、水はディーン・スタークまたはバレットチューブから反応混合物に戻り、そして、平衡シフトは生じない。さらに、水と共沸混合物を形成する溶媒を用いた共沸性の水の除去が有効であり、それから縮合後に相が分離するため、実施例2および実施例3では反応時間がより短い。
【0081】
本発明による別態様は、
図2に示すように、第二のモルのオゾンの添加後に還流するステップを含んでいる。本発明での、第二のモルのオゾンの添加後に還流するステップは:(1)全てのカルボン酸官能基をブチルエステルに転換するのを完了させる働き、および、(2)酸素除去により、アセタールヒドロトリオキシドをブチルエステルに転換するのを完了させる働きがある。効果的な共沸蒸留が行われる場合、より少ないオゾンが必要とされ、従来のオゾン分解の方法よりも反応時間が著しく早い。
【0082】
特に、効果的な共沸蒸留がオゾン分解とともに行なわれる場合、還流するステップは、最初のオゾンのブレイクスルーの直後に生じる。1つの好ましい共沸溶媒はイソ酪酸エチルである。
【0083】
特に、水と共沸するモノアルコールは1−ブタノールであり、水と共沸する溶媒はイソ酪酸エチルまたは酢酸ブチルである。
【0084】
1−ブタノール中および酢酸ブチル中の水の溶解度は、それぞれ、20.1−重量%水および3.3重量%水である。1−ブタノール/水の共沸組成物および酢酸ブチル/水の共沸組成物は、それぞれ、42.5重量%の水分および28.7重量%の水分の含水量を有する。
【0085】
さらに、酢酸ブチルおよび1−ブタノールは、互いに可溶性であり、したがって、これらの2つの構成要素を共沸蒸留で用いることは、1−ブタノール/酢酸ブチルの相をもたらし、水は難溶解性である。溶媒は、水の分配に関して、約20.1%の水溶性である1−ブタノールを単独で用いるよりも効果的であり、したがって、反応混合物からの効果的な水除去をもたらす。
【0086】
非環状アセタール類を形成する、アルデヒド類とモノアルコール類、例えば1−ブタノールとの間の平衡は、
図2(上経路)に示す反応矢印(
)により表されるように、アルデヒド側にある。したがって、水除去は、平衡をアセタール側にシフトさせるのに必要である。水と共沸する溶媒での還流ステップは、この平衡をアセタール側に効率的にシフトさせる。平衡がシフトするため、継続的なオゾン分解に非環状ジブチルアセタールが利用可能であり、エステル類を高収率で形成する。したがって、エステル収率は、実施例2および実施例3のそれぞれにおいて、103.8%および99.5%である。実施例2での収率の増加は、ブタノールの、ブタン酸への酸化、およびその後のエステル化の結果である。
【0087】
本発明の別態様によれば、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する物質は、オゾン分解触媒の存在下で反応してよい。オゾン分解触媒は、ルイス酸またはブレンステッド酸であってよい。本発明での使用に適切なオゾン分解触媒の例は、WO2007027223に記載されている。オゾン分解触媒の例は、限定されないが、硫酸、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、ハロゲン化錫(例えば、塩化錫)、ハロゲン化アルミニウム(例えば、塩化アルミニウム)、ゼオライト(固体酸)、モレキュラーシーブ(固体酸)、リン酸、ホウ酸、酢酸、およびハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)を含む。上述の酸触媒、例えば、硫酸は、容易に利用可能であり安価である。
【0088】
オゾン分解触媒は、樹脂結合型の酸触媒とすることもできる。樹脂結合型の酸触媒の例は、限定されないが、Silicycleのプロパンスルホン酸、モンモリロナイト、またはAmberlite(登録商標)IR−120(スルホン酸基またはカルボン酸基に共有結合した、マクロレティキュラーまたは細胞の樹脂またはシリカ)を含む。
【0089】
発明の好ましい実施態様では、本発明の方法での使用のためのオゾン分解触媒は、硫酸を含む。
【0090】
本発明による方法では、製造されるエステルは、少なくとも1つのアルキルエステルであり、少なくとも1つの一級ポリオールの存在下でさらにエステル交換されて、少なくとも1つのエステルポリオールを製造する。本発明で用いられる一級ポリオールは、ヒドロキシル基を1よりも多く含む、化合物および/またはアルコールである。
【0091】
ここで
図3を参照する。
図3は、1−ブタノールの存在下でオゾン分解を受ける場合の、パーム系供給原料に由来する主な脂肪酸からの、個々のブチルエステルの形成を示す。パーム系供給原料の例はパーム油であり、分画されていないパーム脂肪酸である。我々が生成した生成物の一部は、全組成物で、または分画しない場合、パフォーマンスが高くあり得る。しかしながら、部分的または完全な分画が、脂肪酸の供給原料に必要とされてよい。
【0092】
図4および
図5は、オゾン分解後の、切断型アルキルエステル類の混合物の分画を示す。加えて、
図5は、脂肪酸アルキルエステル類の蒸留による分画を示す。パーム原料由来の潤滑剤は分画が必要であり、一方でまた、一部のポリオール類も分画が必要である。
【0093】
パーム系供給原料を使用する利点は、それらの価格がより低いため、反応全体にかかる費用が減少することである。パーム油は、
図3に示すように、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、およびステアリン酸を含む脂肪酸からなる。パーム油のオゾン分解は、溶媒の存在下であり、ブチルエステル類を形成する。
【0094】
それから、ブチルエステル類は、錫エステル交換触媒を用いると、一級ポリオール類、例えばグリセリン、および一級ポリオール類の混合物と、効率的なエステル交換反応を受けて、エステルアルコール類の生成物、具体的にはエステルポリオール類を形成する。ブチルエステル類は、
図3に示すように、アゼライン酸ジブチル、ノナン酸ブチル、マロン酸ジブチル、ヘキサン酸ブチル、プロパン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、および/またはステアリン酸ブチルを含む群から選択されてよい。
【0095】
比較的高濃度の一級ポリオール類が用いられる場合、
図3に示すように、比較的低分子量のエステルポリオール類の生成物が形成されることが予想される。低分子量のエステルポリオール類の生成物は、アゼライン酸ジ(モノグリセリド)、ノナン酸モノグルセリド、マロン酸ジ(モノグリセリド)、ヘキサン酸モノグリセリド、プロパン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、およびステアリン酸モノグリセリドを含む群から選択される。あるいは、比較的低濃度の一級ポリオール類を用いる場合は、かなり、より分子量のエステルポリオール類の生成物が形成される。
【0096】
具体的には、一級ポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、グルシトール、フルクトース、グルコース、スクロース、アルドース、ケトース、アルジトール、二糖類、またはそれらの組み合わせを含む群から選択されてよい。
【0097】
本発明によれば、塩基性中和剤は、通常、オゾン分解反応後にオゾン分解触媒を中和するために必要とされる。塩基性中和剤の例は、限定されないが、Amberlite(登録商標)IRA−67;塩基性塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム;アミン類;およびポリアミン類を含む。固体イオン交換樹脂、例えばAmberlite(登録商標)IRA−67が、オゾン分解後の反応混合物の洗浄が必要でなく、ポリオール生成物がほぼ定量的な収率の結果となるため、酸触媒を中和するのに好ましい。
【0098】
さらにまた、本発明は、本発明の任意の態様による方法より得られる、または得ることが可能な、少なくとも1つのエステルポリオールを提供する。
【0099】
また、本発明は、本発明によるエステルポリオールを含む製品に関する。製品は、制限されないが、ポリウレタン系の用途、ポリエステル用途、および潤滑剤のために使用されてよい。
【0100】
また、本発明は、発明によるエステルポリオールを含む、コーティングまたはフォームに関する。例えば、コーティングまたはフォームは、本発明によるエステルポリオールから製造されるポリウレタンのコーティングまたはフォームを含んでよい。
【0101】
ここで、
図4を参照する。
図4は、トリグリセリド(例えば、パーム油)および/またはパーム脂肪酸留出物(PFAD)から、水と共沸するモノアルコールの存在下での脂肪酸のオゾン分解ステップを経由して、切断型アルキルエステル類(またはオゾンエステル類)の混合物を形成して、エステルアルコール類の生成物(具体的にはエステルポリオール類)を製造するプロセスを示す。
【0102】
トリグリセリド、脂肪酸、または、グリセリドと脂肪酸の混合物、例えばパーム脂肪酸留出物(PFAD)が、出発原料として用いらえる場合は、切断型アルキルエステル類の混合物の蒸留による分画の随意的なステップ、および、ポリオール(例えば、グリセリン)の存在下でのエステル交換が行われる。
図4で破線により示すように、切断型アルキルエステル類の混合物の蒸留による随意的な分画が行われて、分画された切断型アルキルエステル類が製造される。
【0103】
トリグリセリドの加水分解は、脂肪酸を形成し、それからオゾン分解に供されて、切断型アルキルエステル類(オゾンエステル類としても知られる)を製造する。また、脂肪酸のオゾン分解は、共沸蒸留およびさらなる加熱の間、モノアルコール類と元の脂肪酸部位とのこれらの部位でのエステル化も伴う。切断型アルキルエステル類は、
図4に示すように、水と共沸するモノアルコールの存在下で、オゾン分解のステップを経由して、トリグリセリドから直接形成することができる。トリグリセリドのオゾン分解は、共沸蒸留およびさらなる加熱の間、元のカルボン酸部位でのエステル交換ステップを伴い、切断型アルキルエステル類の混合物を製造する。トリグリセリドから得られる切断型アルキルエステル類の混合物は、それから分画して、分画されたアルキルエステル類を製造する。分画されたアルキルエステル類の混合物は、それから、一級ポリオール類、例えばグリセリンとのエステル交換プロセスを受けて、エステルポリオール類の生成物を製造する。エステルポリオール類の生成物は、アゼライン酸ジ(モノグリセリド)、ノナン酸モノグルセリド、マロン酸ジ(モノグリセリド)、ヘキサン酸モノグリセリド、プロパン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、およびステアリン酸モノグリセリドを含む群から選択される。
【0104】
別の実施態様では、パーム脂肪酸留出物(PFAD)を、出発原料または供給原料および脂肪酸源として用いてよい。脂肪酸を、水と共沸するモノアルコールとのオゾン分解に供して、アルキルエステル類の混合物を製造した。水と共沸するモノアルコールは、別の共沸溶媒とともに用いてもよく、ともに用いなくてもよい。共沸蒸留の間に除去される水の量に応じて、オゾンをより少ない量で用いて、脂肪酸をアルキルエステル類に転換することができる。
【0105】
ここで、
図5を参照する。
図5は、エステルアルコール類の生成物を脂肪酸から製造するプロセスを示し、トリグリセリドおよび/またはPFADが脂肪酸源である。脂肪酸をモノアルコール類とエステル化して、脂肪酸アルキルエステル類を製造する。
【0106】
別の実施態様では、パーム油などのトリグリセリドを、モノアルコール類とエステル交換して、脂肪酸アルキルエステル類を製造する。また、さらに別の実施態様では、切断型アルキルエステル類の混合物は、水と共沸するモノアルコールの存在下で、トリグリセリドのオゾン分解から製造することもできる。トリグリセリドのオゾン分解は、エステル交換ステップを伴って、切断型アルキルエステル類の混合物を生じる。
【0107】
さらに別の実施態様では、脂肪酸アルキルエステル類は、モノアルコールとのエステル交換を経由して、PFADを直接転換して製造される。脂肪酸アルキルエステル類は、それから、
図5で破線により示すように、蒸留により分画される。したがって、脂肪酸アルキルエステル類は、異なるグループの飽和脂肪酸に分画される。
【0108】
結果として生じる分画された脂肪酸アルキルエステル類は、水と共沸するモノアルコールとのオゾン分解反応を受ける。水と共沸するモノアルコールは、蒸留を介して、反応からの水除去を促進する。オゾン分解後、切断型アルキルエステル類の混合物を、一級ポリオール(例えば、グリセリン)とエステル交換して、エステルポリオール類を製造する。
【0109】
図5(破線)に示すように、前のステップで脂肪酸アルキルエステル類が分画されなかった場合は、切断型アルキルエステル類の混合物の蒸留による代替の分画が行なわれる。
【0110】
(実施例4)ポリオールの形成
本実施例は、ブチルエステル類の特定のコレクションの、エステルポリオールの生成物への転換を示す。これらのブチルエステル類は、前述した方法により、1−ブタノール存在下で、オレイン酸(70.0%)、リノール酸(12.9%)、リノレン酸(2.76%)、パルミチン酸(11.1%)およびステアリン酸(3.19%)の混合物(分画されたPFADをほぼ示すと考えられる)のオゾン分解により得られた。これらのブチルエステル類(224.42g;1.4144モルの酸エステル)を、グリセリン(73.87g)、ソルビトール(43.60g)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(8.93g)、ヘキサン酸(24.64g)、シュウ酸錫(II)(0.20g)、およびジブチル錫ジラウレート(0.57g)と結合させた。反応混合物を機械的に撹拌しながら、さらなる留出物が得られなくなるまで210℃までゆっくり加熱して、それはおよそ1.5時間かかった。それから、混合物を、標準状態の気体の体積0.5/時間(SCFH)のアルゴン注入で、210℃まで6.25時間加熱した。最終的なエステルポリオールの重量は256.80g(97%の収率)であり、酸価(AV)が0.9でヒドロキシル価(HV)が392.3であった。マスバランスの合計は98.5%であった。
【0111】
(実施例5)脂肪酸アルキルエステル類からの、切断型ヘキシルエステル類中間体の形成。
本実施例は、メチルオレインの、1−ヘキシルオゾンエステル類への転換を示す。メチルオレイン(100.03g;メチルエステル0.3527モルおよび二重結合0.2010モル)を、1−ヘキサノール(198.32g;1.9411モル)および98%硫酸(0.40mL;0.0075モル)と混合した。磁気撹拌しながら、熱電対、バレットチューブ、およびコンデンサーを含む丸底フラスコ内で、混合物をオゾンと反応させた。オゾンを反応容器内に、オゾンのブレイクスルーが達成されるまで注入した。この時点でオゾンを止めて、混合物を30分間還流した。
【0112】
還流後、さらなるオゾンを添加し、このステップに引き続きさらに30分還流したところ、
1H NMRによりアセタールが残っていないと判定された。その時点で理論上のオゾンの100.6%が添加されていた。Amberlite IRA−67(15mL;硫酸プロトンの合計に対して1.5当量)を添加して反応フラスコ内で2時間撹拌し、その時点後に、混合物のpHは中性であることが分かった。それから、混合物を濾過して、クーゲルロール減圧蒸留装置上、70℃で2時間、160ミクロンの水銀圧力で揮散させた。最終生成物の混合物は、重量が259.40gであり、
1H NMR分光法により63.4重量%の生成物であり、残りは99.7%収率の1−ヘキシルオゾンエステル類に相当する1−ヘキサノールであると決定された。
【0113】
(実施例6)トリグリセリドからの、切断型ヘキシルエステル類中間体の形成。
本実施例は、パーム油の、1−ヘキシルオゾンエステル類への転換を示す。パーム油(100.51g;脂肪酸0.3582モルおよび二重結合0.1934モル)を、1−ヘキサノール(203.78g;1.9945モル)および98%硫酸(0.40mL;0.0075モル)と混合した。磁気撹拌しながら、熱電対、バレットチューブ、およびコンデンサーを含む丸底フラスコ内で、反応混合物をオゾンと反応させた。オゾンを反応容器内に、オゾンのブレイクスルーが達成されるまで注入した。この時点でオゾンを止めて、混合物を30分間還流した。
【0114】
還流後、さらにオゾンを混合物に添加して反応させた後、30分還流したところ、
1H NMRによりアセタールが残っていないと判定された(その時点で、理論上のオゾンの104.9%が加えられていた)。Amberlite IRA−67(15mL;硫酸の酸性プロトンに対して1.5当量)をリアクター内で2時間撹拌し、その際、混合物のpHは中性であった。それから混合物を濾過した。最終生成物の混合物は、重量が349.51gであり、
1H NMR分光法により、52.5重量%の生成物であり、残りの材料は、
1H NMRにより、100.8%収率の1−ヘキシルオゾンエステル類に相当する1−ヘキサノールおよび微量のグリセロールであると決定された。また、
1H NMR分光法は、元のトリグリセリドカルボン酸部位が、本質的に完全に1−ヘキサノールとエステル交換されて、これらの部位で1−ヘキシルオゾンエステル類が生じることを示した。
【0115】
本発明で提案する手段および方法論は、改善された収率でエステルを製造することに対する解決策を提供する。本発明の特徴および特性は、限定されないが、水と共沸するモノアルコールの存在下で、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する物質を、オゾンと反応させるステップを含む。エステルの最終生成物の収率を高めるために、さらなる還流ステップを、特に第二段階のオゾン分解の前に含んでよい。
【0116】
本明細書において特許請求の範囲に記載される要旨は、任意のデメリットを解決する実施態様または上述のもののような環境でのみ実施する実施態様に限定されない。むしろ、この背景は、本明細書に記載の一部の実施態様が実施され得る、例示的な技術分野を説明するためにのみ提供される。本明細書に記載の書誌参照は、参考文献一覧の形で便宜上載せられ、実施例の終わりに追加される。そのような書誌参照の全内容は、本明細書中に参照により援用される。
[参考文献]