(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記代替基板の表面に複数の微構造体が形成され、前記代替基板の微構造体を有する表面を、前記カーボンナノチューブアレイの成長基板から離れる表面に接触させることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブアレイの転移方法。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は1991年に飯島によって発見され、カーボンナノチューブは21世紀において重要な新素材の1つとして、特に機械・電気・熱特性に優れていることから、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、エネルギー、複合材料等、広範な分野での応用に期待されている。しかし、一本のカーボンナノチューブはナノスケールの大きさであるので利用し難い。現在、複数のカーボンナノチューブを原材料として、大きい寸法の巨視的なカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。巨視的なカーボンナノチューブ構造体は、例えば、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルム、及び複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤである。
【0003】
特許文献1に、カーボンナノチューブアレイから直接にカーボンナノチューブフィルムが引き出されることが開示されている。該カーボンナノチューブフィルムは分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造体であり、優れた透明度及び巨視的な寸法を有する。カーボンナノチューブアレイから直接に引き出されるカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されるので、カーボンナノチューブの軸方向において優れた導電性及び熱伝導性を有し、広範な分野で応用できる。例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、スピーカ、加熱装置、薄膜トランジスタなどの分野である。
【0004】
カーボンナノチューブフィルムを形成する原理は、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブが分子間力で緊密に結合され、一部のカーボンナノチューブが引き出される際、隣接するカーボンナノチューブが分子間力の作用で端と端とが接続されて引き出されるので、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムを形成することができる。しかし、カーボンナノチューブの間の分子間力のみによって、カーボンナノチューブが相互に吸着され、カーボンナノチューブフィルムが形成されるので、いったんカーボンナノチューブアレイの形態が破壊されたり、或いは変化したりすると、均一なカーボンナノチューブフィルムを連続に引き出すことができない。従来の方法では、成長基板(一般的に、単結晶のシリコン)の表面にカーボンナノチューブアレイを成長させた後、成長基板に直接に成長したカーボンナノチューブアレイを引き出す工程を行い、カーボンナノチューブフィルムを獲得している。
【0005】
現在、カーボンナノチューブアレイの生産者はカーボンナノチューブアレイと成長基板とを共に、ユーザーに提供する。しかし、これでは、成長基板の回収までの期間が長くなり、新たなカーボンナノチューブアレイの成長基板として迅速に利用することができない。また、コストが高い単結晶のシリコンは運送中に破壊され易い。また、カーボンナノチューブアレイから直接にカーボンナノチューブワイヤを引き出すことには、上述した問題が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1を参照すると、本発明は、カーボンナノチューブアレイ10の転移方法を提供する。該カーボンナノチューブアレイ10の転移方法は、下記のステップを含む。
【0016】
ステップS1:
図1に示したように、代替基板30及び成長基板20を提供し、成長基板20の表面にカーボンナノチューブアレイ10を形成するステップであって、カーボンナノチューブアレイ10の形態は、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証でき、カーボンナノチューブ構造体は端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含み、また、代替基板30の表面302には複数の微構造体304が形成される。
【0017】
ステップS2:カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30に転移するステップであって、代替基板30に転移されたカーボンナノチューブアレイ10の形態は、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出せることを保証している。
【0018】
またステップS2は、代替基板30の微構造体304を有する表面302を、カーボンナノチューブアレイ10の成長基板20から離れる表面に接触させるステップ(S21)と、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方を移動させて代替基板30と成長基板20とを離し、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させて、代替基板30に転移させるステップ(S22)と、を含む。
【0019】
カーボンナノチューブ構造体は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で相互に結合され、且つ端と端とが接続されて形成された巨視的な構造体である。例えば、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤである。
【0020】
カーボンナノチューブアレイ10は、化学気相蒸着法(CVD)によって成長基板20の表面に成長する。カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブは相互に基本的に平行であり、且つ成長基板20の表面に垂直である。隣接するカーボンナノチューブは相互に接触して、且つ分子間力で結合されている。成長条件を制御することによって、カーボンナノチューブアレイ10に基本的に不純物を含ませない。ここで不純物とは、例えば、アモルファスカーボン或いは残留した触媒の金属粒である。カーボンナノチューブアレイ10は、基本的に不純物を含まず、カーボンナノチューブが相互に緊密に接触して、且つ隣接するカーボンナノチューブの間に、大きな分子間力を有するので、一部のカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブセグメント)を引き出す際、隣接するカーボンナノチューブが分子間力の作用によって端と端で接続され、連続的に引き出され、自立構造体(例えば、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤ)を形成する。カーボンナノチューブが端と端で接続されて引き出すことのできる前記カーボンナノチューブアレイ10は、超配列カーボンナノチューブアレイである。超配列カーボンナノチューブアレイについては特許文献1に掲載されている。
【0021】
成長基板20は超配列カーボンナノチューブアレイの成長に適した基板であり、その材料は、例えば、P型シリコン、N型シリコン、或いは酸化シリコンなどである。
【0022】
カーボンナノチューブアレイ10から引き出されるカーボンナノチューブ構造体は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含む。具体的には、カーボンナノチューブ構造体はカーボンナノチューブフィルムでもよい。該カーボンナノチューブフィルムは自立構造体であり、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。
図2を参照すると、カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って配列されている。複数のカーボンナノチューブが延伸する方向は、カーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行である。また、複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。具体的には、複数のカーボンナノチューブにおける各カーボンナノチューブは、延伸する方向における隣接するカーボンナノチューブと、分子間力で端と端とが接続されているので、カーボンナノチューブフィルムは自立構造を実現できる。更に、カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメントを含むことができる。複数のカーボンナノチューブセグメントは、カーボンナノチューブの長軸方向に沿って、分子間力で端と端とが接続されている。各カーボンナノチューブセグメントは、相互に平行に分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。単一のカーボンナノチューブセグメントにおいて、複数のカーボンナノチューブの長さは同じである。
【0023】
また、カーボンナノチューブフィルムは、少数のランダムなカーボンナノチューブを含む。しかし、大部分のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されているので、このランダムなカーボンナノチューブの延伸方向は、大部分のカーボンナノチューブの延伸方向には影響しない。具体的には、カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、絶対的に直線状ではなくやや湾曲している。または、延伸する方向に完全に配列せず、少しずれている場合もある。従って、同じ方向に沿って配列されている複数のカーボンナノチューブにおいて、隣同士のカーボンナノチューブが部分的に接触する可能性がある。実際に、カーボンナノチューブフィルムは複数の空隙を有する。即ち、隣接するカーボンナノチューブの間に空隙が形成されている。これにより、カーボンナノチューブフィルムは優れた透明度を有する。さらに、隣接するカーボンナノチューブの接触した部分の分子間力及び端と端とが接続された部分の分子間力は、カーボンナノチューブフィルムの自立構造を維持できる。カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5nm〜100μmであり、好ましくは、0.5nm〜10μmである。カーボンナノチューブ構造体の幅が狭い場合、カーボンナノチューブ構造体は自立構造を有するカーボンナノチューブワイヤである。
【0024】
ここで自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤを独立して利用することができる形態のことである。即ち、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤの構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤを懸架させることができることを意味する。カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが分子間力によって接続されているので、自立構造体が実現される。
【0025】
カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルムを引き出す方法は、特許文献1に掲載されている。
【0026】
代替基板30は、固体の基板であり、軟質基板或いは硬質基板である。代替基板30は、カーボンナノチューブアレイ10が設置される表面を有する。カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30に転移させる工程において、カーボンナノチューブアレイ10の形態を基本的に維持し、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出せることを保証している。即ち、カーボンナノチューブアレイ10は超配列カーボンナノチューブアレイの形態を維持する。
【0027】
カーボンナノチューブアレイ10の形態を維持することを前提に、カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に転移させる際、カーボンナノチューブアレイ10は、代替基板30の表面302に逆さに設置される。具体的には、カーボンナノチューブアレイ10は、第一表面102及び該第一表面102に対向して位置する第二表面104を含む。各カーボンナノチューブは、成長基板20の表面から成長し、カーボンナノチューブアレイ10を形成する。各カーボンナノチューブが成長基板20と隣接する一端をカーボンナノチューブの下端と定義し、下端と対向する端部をカーボンナノチューブの上端と定義する。成長基板20において、第一表面102は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの下端側に形成され、第二表面104は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの上端側に形成される。すなわち、カーボンナノチューブアレイ10の第一表面102は、成長基板20の表面と近接し、或いは成長基板20の表面202に位置される。よって、第一表面102は、カーボンナノチューブアレイ10における各カーボンナノチューブの成長下端である。第二表面104は、成長基板20の表面から離れ、カーボンナノチューブアレイ10における各カーボンナノチューブの成長上端である。カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に転移させた後、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104は代替基板30の表面302と近接し、或いは代替基板30の表面302に位置される。
【0028】
ステップ(S21)及びステップ(S22)は常温の環境下で行うことができる。ステップ(S21)及びステップ(S22)において、カーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出せることを保証している。カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に転移させた後で、カーボンナノチューブ構造体を連続的に引き出すことができるように、代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間は分子間力のみで結合している。すなわち、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10との間の結合力(F
BC)は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブ同士の間の分子間力(F
CC)より小さい。また、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10との間の結合力(F
BC)は、成長基板20の表面202とカーボンナノチューブアレイ10との間の結合力(F
AC)より大きい。これにより、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移させることができる。即ち、F
AC<F
BC<F
CCである。
【0029】
カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移させる工程において、代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104とが接触することのみによって、代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10との間に、十分な結合力(例えば、分子間力)を発生させて、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させる。
【0030】
代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10との間の結合力(F
BC)を高め、F
AC<F
BC<F
CCを満たすために、代替基板30の表面302に複数の微構造体304を設置することができる。これにより、代替基板30の表面302の表面積は大きくなり、代替基板30の材料を変えなくても、該結合力(F
BC)を高めることができる。微構造体304は、代替基板30の表面302に設置された突起又は凹部である。
図1、
図3、
図4及び
図5を参照すると、微構造体304の断面の形状は、半球形、矩形、先細形、歯形、階段形又は他の形状であり、微構造体304は、点状、線状又はシート状からなる。
図6を参照すると、一つの実施形態において、微構造体304は、互いに平行し、且つ間隔をあけて設置された槽状の構造体である。
図7を参照すると、別の実施形態において、微構造体304は、互いに間隔をあけて、且つ均一に設置された半球形の突起である。また、大多数の微構造体304は、代替基板30の表面302に均一に設置されるのが好ましい。また、微構造体304の数量は、代替基板30の表面302の表面積を平面の表面積より30%〜120%増加させる数量であるのが好ましい。代替基板30の微構造体304を有する表面302は、カーボンナノチューブアレイ10と十分に接触することができる。微構造体304によって、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10との接触面積を増やし、代替基板30に大きな吸着力を保持させ、結合力(F
BC)を高める。また、代替基板30は、通常の無機材料又は有機材料からなる基板である、例えば、ガラス、シリコン、石英、プラスチック又はゴムである。プラスチックは、例えばアクリル樹脂(PMMA)又はポリエチレンテレフタラート(PET)である。
【0031】
突起の微構造体304の高さ又は凹部の微構造体304の深さは、カーボンナノチューブアレイ10の高さの0.5%〜10%であることが好ましい。より好ましくは、5μm〜50μmである。即ち、表面302は、かなりの平坦性を有する必要があり、カーボンナノチューブアレイ10が代替基板30の表面302に設置された時、該表面302との不十分な接触を防止することができる。微構造体304は、光エッチング、レーザーエッチング又は化学エッチングなどの方法によって形成される。
【0032】
F
AC<F
BC<F
CCを満たすために、適切な表面エネルギー及び界面エネルギーを有する材料を利用して代替基板30を製造することができる。或いは適切な表面エネルギー及び界面エネルギーを有する材料を代替基板30の表面に設置することもできる。本実施形態において、代替基板30の材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0033】
代替基板30を接着剤によってカーボンナノチューブアレイ10に貼り付けることはしない。従来の接着剤によって、F
AC<F
BCを満たし、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させることができる。しかし、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブ同士の間の分子間力は小さいので、従来の任意の接着剤では、F
BC>F
CCとなってしまう。これにより、後のカーボンナノチューブ構造体を引き出すステップを行うことができない。ステップ(S21)及びステップ(S22)において、代替基板30は固体状態を維持する。
【0034】
ステップ(S21)において、代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの上端とを十分に接触させるために、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10に小さい圧力(f)を印加する。ただし、代替基板30が、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブを倒してしまわないようにする。でないと、カーボンナノチューブアレイ10の形態を変えてしまい、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことができない。
【0035】
代替基板30の微構造体304と代替基板30の表面302との間に高さの差を有するので、該表面302の凹部とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104とが接触する際、表面302の突起が該突起と接触するカーボンナノチューブに圧力を加える。これにより、カーボンナノチューブアレイ10における直立するカーボンナノチューブはやや湾曲する。しかし、微構造体304の高さは低いので、カーボンナノチューブの湾曲は小さい。代替基板30と成長基板20とを分離させる過程において、カーボンナノチューブアレイ10は、従来の高さに回復することができ、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことができる形態を維持する。
【0036】
ステップ(S22)において、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させる工程では、好ましくは、カーボンナノチューブアレイ10における全てのカーボンナノチューブを同時に成長基板20から脱離させる。即ち、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直であり、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの成長方向に沿って成長基板20から脱離させる。代替基板30及び成長基板20が共に移動する場合、両者の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直である。
【0037】
ステップ(S21)及びステップ(S22)において、まず、カーボンナノチューブアレイ10が成長基板20から押される力を受け、次に、代替基板30に向けて引かれる力を受ける。
【0038】
(実施形態2)
図8を参照すると、本発明は、カーボンナノチューブアレイ10の転移方法を提供する。該カーボンナノチューブアレイ10の転移方法は、下記のステップを含む。
【0039】
ステップS1:代替基板30、成長基板20及び間隔装置60を提供し、成長基板20の表面にカーボンナノチューブアレイ10を形成するステップであって、カーボンナノチューブアレイ10の形態は、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出せることを保証している。
【0040】
ステップS2:カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30に転移させるステップであって、代替基板30に転移されたカーボンナノチューブアレイ10の形態は、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出せることを保証している。
【0041】
また、ステップS2は、代替基板30の表面302を、カーボンナノチューブアレイ10の成長基板20から離れる表面に接触させ、間隔装置60によって、代替基板30と成長基板20との間隔をあけるステップ(S21)と、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方を移動させて、代替基板30と成長基板20とを離し、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移させるステップ(S22)と、含む。
【0042】
カーボンナノチューブ構造体は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で相互に結合され、且つ端と端とが接続されて形成された巨視的な構造体であり、例えば、カーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤである。
【0043】
カーボンナノチューブアレイ10の生長方法及び構造は、実施形態1におけるカーボンナノチューブアレイ10の生長方法及び構造と同じである。実施形態2におけるカーボンナノチューブ構造体の構造は、実施形態1におけるカーボンナノチューブ構造体の構造と同じである。
【0044】
本実施形態2におけるステップS2の工程は、本実施形態1におけるステップS2の工程と基本的に同じであるが、異なる点は以下の通りである。
【0045】
ステップ(S21)において、代替基板30の表面302とカーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの上端とを十分に接触させるために、代替基板30のカーボンナノチューブアレイ10と接触する表面302と成長基板20のカーボンナノチューブが成長した表面202との間の距離を、カーボンナノチューブアレイ10の高さと同じにするか、又はカーボンナノチューブアレイ10の高さより小さくする。これにより、代替基板30は、カーボンナノチューブアレイ10に小さい圧力を加える。代替基板30は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブを倒すことはない。でないと、カーボンナノチューブアレイ10の形態を変えてしまい、カーボンナノチューブ構造体40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことができない。従って、圧力は大き過ぎてはならない。即ち、代替基板30の表面302と成長基板20の表面202との距離が近過ぎてはならない。即ち、極限距離より大きい必要がある。ここで極限距離とは、カーボンナノチューブ構造体をカーボンナノチューブアレイから連続的に引き出すことを保証できない形態までカーボンナノチューブアレイ10が押されてしまう距離である。つまり、表面302と表面202との間の距離を制御することによって、カーボンナノチューブアレイ10の形態において、カーボンナノチューブ構造体を前記カーボンナノチューブアレイから連続的に引き出すことができる形態に維持することを保証できる。
【0046】
前記圧力は、容易に制御することができず、少し大きくなっただけで、カーボンナノチューブアレイ10は倒されてしまう。また、カーボンナノチューブアレイ10の高さは、僅かに数十マイクロメートル〜数百マイクロメートルであるため、代替基板30を利用してカーボンナノチューブアレイ10を転移させる場合、代替基板30と成長基板20との距離を制御しにくい。従って、代替基板30と成長基板20との間に、間隔装置60を設置することができる。該間隔装置60によって、代替基板30の表面302と成長基板20の表面202との間の距離が近過ぎないことを保証できる。間隔装置60が代替基板30と成長基板20との間に位置する際の高さは、カーボンナノチューブアレイ10の高さに相等するか、又はカーボンナノチューブアレイ10の高さより低く、この場合間隔装置60とカーボンナノチューブアレイ10との間には、高さの差(X)が形成される。間隔装置60の高さは、極限距離より大きい。ステップ(S21)において、間隔装置60とカーボンナノチューブアレイ10とは、代替基板30と成長基板20との間に設置される。
【0047】
間隔装置60は、固体であり、且つ剛性の素子であることが好ましい。また、該間隔装置60は、代替基板30の表面302と成長基板20の表面202との間に位置し、間隔装置60の高さを制御することによって、代替基板30と成長基板20との間の距離を精確に保持できる。間隔装置60の高さ(m)は、カーボンナノチューブアレイ10の高さ(n)の0.9倍〜1倍である。即ち、m=0.9n〜1nである。
【0048】
間隔装置60の高さがカーボンナノチューブアレイ10の高さより低い場合、代替基板30は、カーボンナノチューブアレイ10上で直立するカーボンナノチューブをやや湾曲させる。しかし、間隔装置60を有するので、カーボンナノチューブの湾曲は小さい。代替基板30と成長基板20とを分離させる過程において、カーボンナノチューブアレイ10は、従来の高さに回復することができ、カーボンナノチューブ構造体40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことができる形態を維持する。
【0049】
また間隔装置60は、成長基板20に設置することができる。
図9を参照すると、他の実施形態において、間隔装置60は、代替基板30に設置することもできる。
図10を参照すると、間隔装置60は、代替基板30の一部であってもよく、代替基板30の表面から突出する構造体である。間隔装置60の形状は制限されず、ブロック状、シート状、柱状又は球状であり、最適な高さを有すればよい。また、間隔装置60は、カーボンナノチューブアレイ10の周囲に均一に設置される複数の間隔装置であってもよい。これにより、成長基板20と代替基板30との間は安定的に支持される。
図11を参照すると、一つの実施形態において、間隔装置60はリング・ガスケットであり、カーボンナノチューブアレイ10の周囲に設置される。
図12を参照すると、もう一つの実施形態において、間隔装置60は複数の円柱形のガスケットであり、カーボンナノチューブアレイ10の周囲に均一に設置される。
【0050】
(実施形態3)
本発明は、カーボンナノチューブアレイ10の転移方法を提供する。該カーボンナノチューブアレイ10の転移方法は、実施形態2のカーボンナノチューブアレイ10の転移方法と基本的に同じであり、共に間隔装置60を有するが、異なる点は、代替基板30の表面に微構造体304が形成されている点である。また、実施形態3の代替基板30の構造は、実施形態1における代替基板30の構造と同じである。つまり、代替基板30の表面302には複数の微構造体304が形成されている。
【0051】
図13、
図14を参照すると、本発明は、カーボンナノチューブ構造体40の製造方法を提供する。カーボンナノチューブ構造体40の製造方法は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3におけるステップ(S1)及びステップ(S2)を含み、更に、代替基板30におけるカーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブ構造体40を引き出すステップ(S3)と、含む。
【0052】
図15を参照すると、ステップ(S3)が従来のカーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ構造体を引き出すステップと異なる点は以下の通りである。カーボンナノチューブ構造体40は、代替基板30に転移したカーボンナノチューブアレイ10から引き出されたものであり、成長基板20に成長したカーボンナノチューブアレイ10から直接に引き出されたものではない。好ましくは、カーボンナノチューブ構造体40は、代替基板30の表面に逆さに設置されたカーボンナノチューブアレイ10から引き出される。即ち、カーボンナノチューブアレイ10の成長下部からカーボンナノチューブ構造体40を引き出す。
【0053】
またステップ(S3)は、引き出し道具50によって、代替基板30の表面に設置されたカーボンナノチューブアレイ10における一部のカーボンナノチューブセグメントを選択するステップ(S31)と、引き出し道具50を移動させることによって、特定の速度で選択したカーボンナノチューブセグメントを引き、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメントを引き出し、連続したカーボンナノチューブ構造体40を形成するステップ(S32)と、を含む。
【0054】
ステップ(S31)において、カーボンナノチューブフィルムを引き出す際、特定の幅を有する接着テープ或いは接着性を有するストリップを採用し、カーボンナノチューブアレイ10と接触させ、特定の幅を有するカーボンナノチューブセグメントを選択する。カーボンナノチューブワイヤを引き出す場合、幅が狭い道具(ピンセット)によって、幅が狭いカーボンナノチューブセグメントを選択する。ステップ(S32)において、選択したカーボンナノチューブセグメントの引き出す方向は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの成長方向と角度αを成す。角度αは0°〜90°(0°は含まず)であり、好ましくは、30°〜90°である。
【0055】
ステップ(S22)はステップ(S3)と異なる。ステップ(S22)では、カーボンナノチューブアレイ10全体を成長基板20から脱離させ、カーボンナノチューブアレイ10が成長基板20から脱離した後でも、カーボンナノチューブアレイ10の形態を維持できることを目指す。ステップ(S3)では、カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルム或いはカーボンナノチューブワイヤを引き出すことを目指す。従って、カーボンナノチューブアレイ10全体が代替基板30から脱離せず、一部のカーボンナノチューブ、例えば、カーボンナノチューブセグメントを代替基板30から脱離させ、引き出されたカーボンナノチューブセグメントが隣接するカーボンナノチューブセグメントを動かし、隣接するカーボンナノチューブセグメントが端と端とが接続されて引き出され、次々に代替基板30から脱離する。
【0056】
本実施形態のカーボンナノチューブアレイの転移方法及びカーボンナノチューブ構造体の製造方法は以下の有利な効果を有する。カーボンナノチューブアレイを成長させる工程及びカーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ構造体を引き出す工程において、カーボンナノチューブアレイが成長基板から異なる基板に転移設置されたので、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ構造体を引き出す工程において、カーボンナノチューブアレイが設置される基板を、コストが低い材料から製造することができる。これにより、カーボンナノチューブアレイの生産者は、カーボンナノチューブアレイを代替基板に転移させ、カーボンナノチューブアレイと代替基板とを共にユーザーに提供することで、コストが高い成長基板を迅速に回収することができ、生産プロセスを簡単にする。よって、本発明のカーボンナノチューブアレイの転移方法及びカーボンナノチューブ構造体の製造方法は、カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤに対しての産業的応用に有利であり、生産方式を変えて、生産コストを低くする。また、カーボンナノチューブアレイを転移する工程において、間隔装置は、代替基板と成長基板との間の距離が近過ぎないことを保証できるため、カーボンナノチューブアレイの形態の保護に有利である。また、代替基板の表面に微構造体を設置して、代替基板の表面積を増加させることによって、代替基板とカーボンナノチューブアレイとの間の結合力を高めることができるので、代替基板の材料の選択範囲を広めることができる。