【実施例】
【0012】
図1および
図2に示すように、保冷ボックス10は、前方に開放した袋体12と、この袋体12の内側に配設された複数の板状体16,18,20,22,22とを備え、袋体12の内側において箱状に組み立てた板状体16,18,20,22,22によって前側に向けて開口する収納室15が画成される。保冷ボックス10は、外面をなす袋体12および複数の板状体16,18,20,22,22によって横長な長方体形状の箱状本体部14が構成され、該箱状本体部14の前面にあいた開口部14aを介して収納室15に物品が出し入れされる。また、保冷ボックス10は、箱状本体部14における開口部14aの両側に設けられた一対の扉取付手段24,26,28によって箱状本体部14に対して取り付けられた一対の扉30,30を備えており、観音開きする一対の扉30,30によって開口部14aが開閉される。各扉30は、その一側縁部に設けられた扉ヒンジ32が、袋体12の側面前縁部に設けられた扉取付手段24,26,28によって着脱可能に支持されており、扉取付手段24,26,28から扉ヒンジ32を取り外すことで、扉30を箱状本体部14から分離し得るようになっている。そして、保冷ボックス10は、袋体12の内側に複数の板状体16,18,20,22,22を箱状に組み立てると共に一対の扉30,30を取り付けた組み立て状態(
図1および
図2参照)と、取り外した扉30および板状体16,18,20,22,22を袋体12の内側に重ね合わて収容すると共に袋体12を折り畳んだ折り畳み状態(
図4参照)とに変形可能に構成される。保冷ボックス10は、組み立て状態で収納室15に物品を収納して使用され、物品が入っていないときに、扉30,30を板状体16,18,20,22,22に重ねて袋体12に収容した折り畳み状態にすることで小さくなるようにまとめることができる。
【0013】
前記袋体12は、折り曲げ可能な可撓性、空気を通さない気密性、熱を通さない遮熱性および撥水性などの各種機能を有するシート材からなり、下面、上面、後面および左右の側面をなす略矩形状のシート材を互いに接続することで、前側が開口した長方形の袋状に縫製されている。シート材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル(PE)、ポリエチレン(PE)などの合成樹脂のフィルムや前記合成樹脂の繊維からなる織布等の強度を有する層や、アルミニウムまたはその他金属の層などを重ねた複層構造であり、例えばアルミ蒸着層を間に有するポリエチレンクロスシートを用いることができる。
【0014】
前記板状体16,18,20,22,22は、EPS等のポリスチレンフォームやポリウレタンフォームや発泡ゴムなどからなる板状の断熱材Dと、前記袋体12と同様の複層構造のシート材からなる被覆体Sとから構成され、袋状に形成された被覆体Sの内部に断熱材Dが収容されている(
図5〜
図7参照)。保冷ボックス10は、板状体として、箱状本体部14の組み立て状態において、収納室15の下面をなす底板16と、この底板16の上側に対向して配置されて、収納室15の天井をなす天板18と、収納室15の後面をなす奧板20と、左右に対向配置されて、収納室15の左右の側面をなす一対の側板22,22とを備えている。底板16、天板18、奧板20および側板22は、何れも矩形状であり、その厚さが同じに設定してある。天板18の下面および左右の側板22,22の内側面には、柔軟な網状体から前側に開口する袋状に形成されて、蓄冷材を出し入れ可能な収容部40が設けられている。
【0015】
前記底板16は、袋体12の下面を構成する下面シート12aと幅(左右)および奥行き(前後)が略同じ大きさに設定され、該下面シート12aの内面に、面ファスナー等の取付具(図示せず)を介して着脱可能に取り付けられている。天板18は、袋体12の上面を構成する上面シート12bと幅および奥行きが略同じ大きさで、底板16と同じ大きさに設定され、該上面シート12bの内面に、面ファスナー等の取付具(図示せず)を介して着脱可能に取り付けられている。奧板20は、その高さ(上下)が袋体12の後面を構成する後面シート12cの高さよりも底板16および天板18の厚さ分だけ小さく設定されると共に、その幅が後面シート12cの幅よりも左右の側板22,22の厚さ分だけ小さく設定される。各側板22は、その高さが袋体12の側面を構成する側面シート12dの高さよりも底板16および天板18の厚さ分だけ小さく設定されると共に、その奥行きが側面シート12dの奥行きと同じに設定される。奧板20および側板22は、同じ高さに設定される。なお、底板16、天板18、奧板20および側板22の寸法および方向は、組み立て状態にある姿勢で説明している。
【0016】
図5に示すように、奧板20は、その上縁部が奧板ヒンジ34を介して天板18の後縁部に接続されており、前記組み立て状態にある組み立て姿勢において、下面が底板16の上面に当接すると共に上面が天板18の下面に当接し、底板16と天板18との間に嵌って該天板18を底板16から離間するように支えている。また、奧板20は、前記組み立て状態において、両側面が左右の側板22,22に夫々当接し、左右の側板22,22の間に嵌って該左右の側板22,22を互いに離間するように位置規制している。奧板20は、袋体12、底板16および左右の側板22,22とは接続されず、奧板ヒンジ34を支点として左右方向の軸周りに回動可能に構成されている。そして、奧板20は、組み立て姿勢(
図5の2点鎖線参照)から上縁部の奧板ヒンジ34を支点として下部を手前側に回動して、天板18の下側に重ね合わせた折り畳み姿勢(
図5の実線参照)に姿勢変位可能になっている。奧板ヒンジ34は、奧板20の被覆体Sと天板18の被覆体Sとを左右全体に亘って繋いだ部分であり、奥板ヒンジ34によって奧板20の上面前端が、天板18の下面における該天板18の後端から奧板20の厚さ分前側の位置で接続されている。
【0017】
図6に示すように、各側板22は、折り曲げ可能な連結ヒンジ36で互いに隣り合う縁部を繋いだ2枚(複数)の側板パネル22a,22bで構成されると共に、最下段の第1側板パネル22aの下縁部が、折り曲げ可能な側板ヒンジ38を介して底板16の側縁部に接続されている。側板22は、前記組み立て状態にある組み立て姿勢において、第1側板パネル22aの下面が底板16の上面に当接すると共に、第1側板パネル22aの上側に繋がる第2側板パネル22bの上面が天板18の下面に当接し、底板16と天板18との間に嵌って該天板18を底板16から離間するように支えている。第1側板パネル22aおよび第2側板パネル22bは、被覆体Sの内側に断熱材Dが収容された互いに独立した板状体であり、第1側板パネル22aの上面外側端と第2側板パネル22bの下面外側端とが前後全体に亘って連結ヒンジ36を介して接続されている。すなわち、第1側板パネル22aおよび第2側板パネル22bは、連結ヒンジ36を支点として前後方向の軸周りに回動可能になっている。第1側板パネル22aは、下面内側端が前後方向全体に亘って側板ヒンジ38を介して底板16の上面における第1側板パネル22aの板厚分内側の位置に接続され、第1側板パネル22aは、側板ヒンジ38を支点として底板16に対して前後方向の軸周りに回動可能になっている。なお、側板22のヒンジ36,38は、組み立て姿勢において上下に隣り合うものが、内外の側端に互い違いに配置される。
【0018】
前記側板22は、袋体12および天板18とは接続されておらず、組み立て姿勢(
図6の2点鎖線参照)の第1側板パネル22aを側板ヒンジ38で内側へ回動して、第1側板パネル22aを底板16の上側に重ね合わせた折り畳み姿勢(
図6の実線参照)に姿勢変位可能になっている。また、側板22は、第2側板パネル22bを第1側板パネル22aに対して連ねた組み立て姿勢から連結ヒンジ36を支点として外側へ回動して、第2側板パネル22bを折り畳み姿勢にある第1側板パネル22aの上側に重ね合わせた折り畳み姿勢(
図6の実線参照)に姿勢変位可能になっている。なお、連結ヒンジ36は、第1側板パネル22aの被覆体Sと第2側板パネル22bの被覆体Sとを繋いだ部分であり、側板ヒンジ38は、第1側板パネル22aの被覆体Sと底板16の被覆体Sとを繋いだ部分である。側板22は、組み立て姿勢において第1側板パネル22aおよび第2側板パネル22bが図示しない面ファスナーを介して袋体12の側面シート12dに着脱可能に取り付けられる。
【0019】
前記扉30は、前記板状体と同様の断熱材Dと被覆体Sとからなる断熱構造の扉本体部31と、この扉本体部31の一側端から延出するように形成された扉ヒンジ32と、扉本体部31の上端および下端の夫々から延出するように形成された鍔部33とを備えている。扉本体部31は、その高さが、組み立て状態にある底板16と天板18との離間寸法と略同一に設定され、その幅が左右の側板22,22の離間幅の略半分に設定される。扉ヒンジ32は、扉本体部31の外面を構成する被覆体Sを延長して、扉本体部31の側端から側板22の厚さよりも長く側方へ延出するように形成されて、扉本体部31の側端から側板22の厚さ以上離間した先端部位両面に、面ファスナーFが配設されている。なお、扉ヒンジ32の先端部位および鍔部33には、ポリエチレンなどの合成樹脂からなる硬質な板状芯材P(
図7参照)が、被覆体Sに収容されており、扉ヒンジ32は、扉本体部31と当該先端部位との間で折り曲げ可能になっている。一対の扉30,30は、開口部14aを閉じた際に、各扉本体部31が底板16と天板18との間に嵌り込むと共に、左右の扉本体部31,31が左右の側板22,22間に嵌り込み、上下の鍔部33,33が面ファスナーFを介して底板16の前端面および天板18の前端面に着脱可能に貼り付けられる。なお、左扉30には、開口部14aを閉じた際に、右扉30の左側縁部前面に重なる横鍔部33が、扉本体部31の右側端から右側方へ延出するように形成され、横鍔部33と右扉30の左側縁部とが面ファスナーFを介して着脱可能に貼り付けられる。
【0020】
図3に示すように、前記扉取付手段は、袋体12の側面前縁に設けられた取付フラップ24と、この取付フラップ24を開き止めする上下一対の規制ベルト26,28との組によって1つの扉30を支持し、取付フラップ24および一対の規制ベルト26,28の組を、左右の扉30,30に対応して2組備えている。取付フラップ24は、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維からなる織布などの折り曲げ可能な可撓性を有する帯状片から形成され、袋体12の側面シート12dの上下に亘って配設されている。取付フラップ24は、その後縁部が側面シート12dの前縁部に繋ぎ合わせられて、前側が側面シート12dに対して近接・離間するように開閉可能に構成され、側面シート12dと取付フラップ24との間に前側から扉ヒンジ32を挿脱可能になっている。取付フラップ24は、側面シート12dの前縁部に上下に亘って設けられた面ファスナーFに対向して、側面シート12dに臨む内面に上下に亘って面ファスナーFを備えており、側面シート12dの面ファスナーFと取付フラップ24の面ファスナーFとが着脱可能になっている。そして、取付フラップ24は、側面シート12dの面ファスナーFによって側面シート12dに一面が貼り付く扉ヒンジ32を挟むと共に、該扉ヒンジ32の他面に該取付フラップ24の面ファスナーFを介して貼り付けて、該扉ヒンジ32を保持するようになっている。
【0021】
前記各規制ベルト26,28は、袋体12に接続した部分から延びる延出部分を取付フラップ24の外面に面ファスナーFを介して貼り付けて、該取付フラップ24が側面シート12dから離間しないように開き止めするようになっている。規制ベルト26,28は、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維からなる織布などの折り曲げ可能な可撓性を有する帯状片から形成される。ここで、扉取付手段は、長手方向の一端部が袋体12における下面シート12aの側縁部前側に接続された下部規制ベルト26と、長手方向の一端部が袋体12における上面シート12bの側縁部前側に接続された上部規制ベルト28とを備えている。下部規制ベルト26は、下面シート12aに接続した部分から延びる延出部分を下面シート12aから側面シート12d側に折り返して、取付フラップ24の外面下部に面ファスナーFを介して着脱可能に貼り付けられる。上部規制ベルト28は、上面シート12bに接続した部分から延びる延出部分を上面シート12bから側面シート12d側に折り返して、取付フラップ24の外面上部に面ファスナーFを介して着脱可能に貼り付けられる。
【0022】
前記保冷ボックス10は、袋体12の側面下部に長手方向の一端部が接続されると共に、長手方向の他端部が、組み立て状態において袋体12の側面中央部に面ファスナーFを介して着脱可能に貼り付く保持ベルト42を備えている。保持ベルト42は、折り畳み状態において、袋体12の上面に面ファスナーFを介して着脱可能に貼り付いて、折り畳んだ袋体12が開かないように保持し得るようになっている。また、保冷ボックス10は、袋体12の左右の後角部の夫々に上下に離間して、一対の板状片からなる固定ベルト44が設けられている。各固定ベルト44は、一対の板状片を面ファスナーFを介して貼り付けることで環状にすることができ、保冷ボックス10を台車などに載置した際に、固定ベルト44によって台車の柱に固定する。なお、符号46は、取っ手である。
【0023】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る保冷ボックス10の作用について説明する。保冷ボックス10は、組み立て状態において、扉30の扉ヒンジ32を袋体12の側面シート12dと取付フラップ24との間で両側から面ファスナーFで貼り付けた状態で挟持し、扉ヒンジ32を保持している取付フラップ24を上下の規制ベルト26,28によって外側から押さえている。すなわち、取付フラップ24は、側面シート12dおよび扉ヒンジ32から離れるように変位することが上下の規制ベルト26,28によって規制され、扉ヒンジ32を面ファスナーFで貼り付けて保持した状態を保つことができる。扉30を開閉する際に、扉ヒンジ32を保持する取付フラップ24に扉30の重量が加わり、特に扉30を開放する際に取付フラップ24に対して側面シート12dから離す方向にも力が加わるが、実施例の扉取付手段24,26,28によれば、扉30の重量を扉取付手段24,26,28で受け止めることができ、片持ちした扉30を適切な姿勢で保持することがでる。すなわち、上下方向の軸周りに開閉する扉30であっても外れ難くし得る。しかも、保冷ボックス10は、一対の扉30,30によって箱状本体部14の開口部14aを開閉する構成であるので、各扉30の軽量化を図り得る。
【0024】
前記保冷ボックス10を組み立て状態から折り畳み状態にする場合は、上下の規制ベルト26,28を取付フラップ24から外して、取付フラップ24を袋体12の側面シート12dから離すように開放して、扉ヒンジ32を面ファスナーFから取り外すことで、扉30を箱状本体部14から分離できる(
図3参照)。次に、奧板20を上縁部の奧板ヒンジ34を支点として手前側に回動することで、天板18の下側に収容部40を挟んで重ね合わせる(
図5参照)。ここで、奧板20が天板18に対して奧板ヒンジ34を介して接続されているので、奧板20を奧板ヒンジ34を支点に姿勢変位する際に、奧板20が天板18の下面に設けられた収容部40に引っ掛からない。
【0025】
前記側板22の第1側板パネル22aを側板ヒンジ38を支点として内側に回動することで、第1側板パネル22aを底板16の上側に重ね合わせると共に、第2側板パネル22bを連結ヒンジ36を支点として第1側板パネル22aに対して外側に回動することで、第2側板パネル22bを第1側板パネル22aの上側に重ね合わせる(
図6参照)。左右の扉30,30を、奧板20と第2側板パネル22bとの間に重なるように袋体12の内部に挿入し、袋体12の後面シート12cおよび左右の側面シート12d,12dを折り畳み、左右の保持ベルト42,42を上面シート12bに面ファスナーFを介して貼り付けることで、折り畳み状態にまとめられる。ここで、保冷ボックス10は、2枚の扉30,30によって開口部14aを開閉する構成であるので、各扉30の左右幅が天板18および奧板20の左右幅よりも小さく、扉30を袋体12の内側に収納した際に、奧板20と側板22との間に扉30の左右に位置して隙間ができる。そして、保冷ボックス10は、袋体12の側面シート12dを前記隙間に折り込むように畳むことができる。
【0026】
このように、保冷ボックス10は、扉30を箱状本体部14から取り外して、板状体16,18,20,22に重ねて袋体12の内部に収容することができるから、折り畳み状態において、扉30が袋体12の外部に露出することはなく、袋体12によって板状体16,18,20,22だけでなく扉30も保護することができる。すなわち、保冷ボックス10を折り畳み状態で取り扱う際に、収納室15の内面となる部分が汚れたり、板状体16,18,20,22や扉30を構成する断熱材Dが座屈するなどの不具合を回避することができる。しかも、保冷ボックス10は、一対の扉30,30によって箱状本体部14の開口部14aを開閉する構成であるので、各扉30を小型化することができ、折り畳み状態において扉30を袋体12の内部に収容し易い。
【0027】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することが可能である。
(1)実施例では保冷ボックスを挙げて説明したが、収納した物品を保温する保温ボックスであってもよい。
(2)実施例では、2枚の扉で開口部を塞いだが、1枚の扉で開口部を塞いでもよい。1枚の扉の場合は、扉の途中でヒンジで折れ曲がる構成とし、扉を折り畳めるようにしてもよい。