【実施例】
【0033】
〔実施例1〕―ペプチド同定
A.試料調製
ワクシニア・バリオラエ(Vaccinia variolae)ウイルスの接種によって誘発される炎症を有するウサギの皮膚組織から抽出された生物活性な薬物の混合物が記載(Y.Imai,K.Saito,S.Maeda et al.Inhibition of the release of bradykinin−like substances into the perfusate of rat hind paw by neurotropin.Jpn J Pharmacol 1984,36:104−106)されているように調製され、商品名をAGC(登録商標)(10U/mL、25mL/バイアル)としてVanworld Pharmaceutical Co Ltd,Rugao,Chinaによって提供された。約200μLのAGC(登録商標)の粗製調製物を真空遠心分離機において乾燥させた。凍結乾燥された材料は、37℃で1時間、8M尿素および0.5Mジチオスレイトール(DTT)を含有する0.5M炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH8.5)の100μLで再構成され、10μLの0.5Mヨードアセトアミド(IAM)をアルキル化のために添加した場合、暗条件下でさらに2時間4℃にて再構成された。その後、次に得られた溶液は18時間37℃にて、0.2μgのトリプシンで消化され、続いて、トリプシン消化された溶液は、10%トリフルオロ酢酸(TFA)/H
2OによってpHが3.0値になるまで酸性にされた。反応後、完全に酸性化された溶液は、200μLの0.1%TFA/H
2O(pH3.0)で前平衡化された逆相C18カラムに適用された。また、カラムを200μLの0.1%TFA/H
2O(pH3.0)で洗浄し、次に室温にて0.1%TFA中で50%から100%の段階的なアセトニトリルの勾配を用いて溶出した。
【0034】
B.ナノ−LC−MS/MS分析
溶出された画分を回収し、真空遠心分離機において乾燥させ、次にH
2O中の0.1%ギ酸(FA)10μLにおいて再構成し、LTQ Orbitrap XL(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)によって分析した。逆相ナノ−LC分離は、Agilent 1200シリーズナノフローシステム(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)において行われた。画分からの全10μL試料をAgilent Zorbax XDB C18プレカラム(0.35mm、5μm)に装填し、続いてC18カラム(内径75μm×25cm、3μm、Micro Tech、Fontana、CA)を用いて分離した。使用した移動相は、(A)0.1%FAおよび(B)100%ACN中の0.1%FAであった。流速300nL/分で90分時間をかけた5%から35%(B)の直線勾配を適用した。ペプチドは、1.8Kvの電圧をインジェクションニードルに適用することによって、陽イオンモードにおいて分析された。MSはデータに依存して操作され、ここではm/zが300〜2000で1回の全スキャンを30ms/スキャンの速度を用いてOrbitrap(R=60000、m/z 400)において行われた。LTQ中で35%の標準化された衝突エネルギーによる断片化に対する6つの最大強度ピークを選択した。30秒の反復期間が断片化に関する再選択から同じm/zイオンを排除するために適用された。対照としての再構成された液体は、還元、アルキル化および脱塩によって処理もされ、酸性にし、トリプシン消化を除いて、上記したナノ−LC−MS/MS分析に供された。
【0035】
C.データベースサーチおよび同定
MASCOTサーチプログラム(http://www.matrixscience.com;Hirosawa et al.、1993)を用いた正確な適合について、NCBIデータベースにおける動物分類に対するサーチによって、ナノ−LC−MS/MSスペクトルから変換されたピークリストによって、ペプチドを同定した。前駆イオンと断片イオンの両方の質量許容範囲を0.8Daにセットした。サーチは、カルバミドメチル化(C)として固定された変性を可能にし、酵素としてトリプシンを含まないようにして行われた。得られた同定は、統計的に有意な(P≦0.05)ペプチドスコア(組み合わせたMSとMS/MSスペクトルに基づく)と最良のイオンスコア(MS/MSスペクトルに基づく)を有していた。
【0036】
D.結果
次に、トリプシン消化してまたはトリプシン消化しないで生じたタンパク質断片の質量スペクトルパターンは、無傷なタンパク質(タンパク質ID)を同定するために使用することができる、ペプチド配列を確認するためのデータバンクに寄託された以前より知られているタンパク質の質量スペクトルパターンと比較するために使用された。したがって、本発明者らは、ショットガン分析によってペプチドの大規模な範囲を達成し、ペプチドまたは小ペプチドの発現の概要を解明し、配列ならびに生化学的特徴を同定することができる。本研究において使用したフローチャートと、生化学的特徴を用いて同定されたすべてのペプチドを表2に列挙する。MS/MS分析からの代表的なペプチドピークを検出し(
図2)、MASCOTサーチによって確信のあるタンパク質同定をもたらした。二重に荷電されたイオンm/z772.745のMS/MSスペクトルを示す。
SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列DEAQETAVSSHEQDは、yおよびb断片イオンシリーズにおけるMS差から決定され、ヒト、マウスまたはウシとは異なるウサギのα1−アンチプロテイナーゼFの残基1〜14と適合した。さらに、それはまた、オピオイドアゴニストDAGOを含む他の鎮痛関連ペプチドとの相同性を共有しない。計算による予測によれば、線形であり、α−ヘリックス、β−シート、β−ターン、または曲げ部分のような構造を有している可能性は低い。
【0037】
表2はナノLC−MS/MSからのMS/MSスペクトルによって同定された6つの小ペプチドの特徴付けを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例2〕−インビボにおける鎮痛作用
固相Fmoc化学を用いたMission Biotech Co.(MB、Taipei、Taiwan)の商業機関でペプチドを合成し、90%超の純度まで逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製し、MSによって確認した。実験使用のために、最終ペプチド生成物をDMSOに溶解した。
マウスにおける急性内臓痛モデルについて、体重が20〜25gのC57BL/6雄性マウスは、1mgのモルヒネ(陽性対照として)または合成ペプチド
1−6(
SEQ ID NO:1−6、それぞれ2mg)を腹腔内に注射された。30分後、続いて、マウスは、腹腔内に1%酢酸を1ml注射された。1回目の身悶えの開始と以降30分間での身悶えの頻度を記録した。
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5(14個のアミノ酸のペプチド)は、足引っ込めの遅延した反応時間(
図3)、および30分以内に測定される身悶え発現の減少(
図4)において示されるように、1mgのモルヒネに匹敵する類似した疼痛軽減作用を有する。
【0040】
〔実施例3〕−抗痛覚過敏作用
体重が20〜25gのC57BL/6雄性マウスを用いた。外科的手法は、ハロタン(2〜3%)麻酔下で実施された。部分的な坐骨神経損傷は、記載(Malmberg AB and Basbaum AI.Pain 1998;76:215−222)されているように、坐骨神経の直径のおよそ3分の1から2分の1を9−0絹縫合糸でしっかりした結紮を試みることによってなされた。シャム手術のマウスにおいては、坐骨神経を露出させたが、結紮しなかった。その後、マウスは、熱試験とフォン・フォーリー(von Foley)ヘア試験前の少なくとも1時間に試験環境に慣れさせた。熱試験において、足引っ込め反応時間は、疼痛の指標として測定された。フォン・フォーリー試験において、刺激強度は、正常なマウスにおける10秒の足引っ込め反応時間を与えるように調節され、一方、応答がない場合のカットオフは20秒であった。フォン・フォーリーヘアの機械的感度は、アップダウンパラダイム(Chaplan et al,J Neurosci Methods 1994;53:53−66)によって評価された。検証パラダイムのためのフィラメントは、0.3−gmとなるものが選ばれた。
【0041】
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、坐骨神経結紮を受けたマウスにおけるその抗痛覚過敏作用について試験された。シャム手術されたマウスと神経損傷を受けたマウスの熱試験の結果は、手術後の5日目、10日目および30日目に並行して比較された。神経損傷を受けた肢が、対側肢またはシャム手術肢と比較して、大幅に減少した足引っ込め反応時間によって示されるように痛覚過敏を有したことを結果は明確に示した(
図5)。さらに、2mgの
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の腹腔内注射(「処理」と表記される)は、DMSO溶媒を与えられた対照マウス(「未処理」と表記される)と比較して、足引っ込め反応時間の増加によって示されるように(
図5)、実際に熱誘発性疼痛に対する耐性を有意に増加させることができた。
【0042】
〔実施例4〕−抗アロディニア作用
実施例3と同じ動物モデルを使用した。
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、坐骨神経結紮を受けたマウスにおける抗アロディニア作用について試験された。シャム手術マウスと神経損傷マウスの機械的刺激(フォン・フォーリー試験)からの結果は、手術後の5日目、10日目および30日目に並行して比較された。結果は、対側肢またはシャム手術肢と比較して、有意差のある低いフォン・フォーリー閾値によって示されるように、神経損傷を受けた肢が過剰アロディニアを有したことを明確に示した(
図6)。さらに、2mgの
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の腹腔内注射(「処理」と表記される)は、純水を与えられた対照マウス(「未処理」と表記される)と比較して、フォン・フォーリー閾値の増加によって示されるように(
図6)、実際に、有意差をもって機械的刺激に対する耐性を増加させることができた。
【0043】
〔実施例5〕−抗ウイルス作用
A.ウイルスおよび細胞
H5N1分離株A型/ベトナム/1194/04およびA型/香港/97は、香港大学微生物学部から入手された。ウイルスは、実験用に3×10
5TCID
50で使用された。また、A型/台湾/01/86(H1N1)は、実験用に3×10
5TCID
50で使用された。H5N1実験は、バイオセーフティーレベル(BSL)3+封じ込め施設で実施された。ストックウイルスのアリコートを−80℃で保存した。Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas,Va,USA)から入手し、10%ウシ胎児血清および1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。50%組織培養感染量(TCID
50)は、37℃で3日間のインキュベーション後、MDCK細胞において決定され、値は、ReedおよびMuench法(Reed LJ,Muench H.A simple method for estimating fifty percent endpoints.American Journal of Hygiene.1938;27:493−497)によって計算された。ウイルス複製の阻害における
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の有効性を決定するために、pfu/mlは、播種された初期のpfu/mlと比較され(初期のpfu/mlによって除され)、初期力価のパーセンテージとして表された(5×10
3pfu/mlであった)。
【0044】
B.プラークアッセイによるウイルス力価の決定
本明細書において使用されるすべてのウイルスは、最初に、MDCK細胞で定量し、感染力価(mLあたりのプラーク形成単位、pfu/ml)を決定した。要約すると、24ウェルプレート中でMDCK細胞を単層に増殖させ、
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5(0.001、0.01、0.1、1および10μM)による処理後、5×10
3pfu/mlでウイルスに感染させた。コンフルエントなMDCK細胞に37℃にて1時間結合後、未結合のウイルスをPBSで穏やかに洗い出し、1:1のノーブル寒天(1.8%)と2×DME−F12〔Glutamax(Invitrogen、Carlsbad、CA)、ITS(Invitrogen)、および3μg/mlアセチル化トリプシン(Sigma、St.Louis、MO)が補充されている〕で覆った。寒天を固化した後、プレートを約72時間、37℃にてインキュベートした後、クリスタルバイオレットで固定し、それぞれの希釈でのプラーク数をカウントした。3日後、プラーク数を手動でカウントし、未処理の対照(すなわち、0μM)に対して標準化した。
【0045】
C.
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5はインビトロでインフルエンザウイルスH5N1とH1N1の複製を阻害する
インフルエンザウイルスH5N1とH1N1の複製に対する
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の阻害効果を決定するために、連続希釈した
SEQ ID NO:5に示されるような合成ペプチド5は、5000pfu/mlのH5N1のA型/ベトナム/1194/04、A型/香港/97およびA型/ガチョウ/台中/Q156/05、またはH1N1に曝露された、24ウェルプレート中の単層MDCK細胞の培養物に補充された。3日後、それぞれの薬物濃度を有するウイルスプラークの数をカウントし、プラーク数を未処理の対照に対して標準化した(
図7)。これは、
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5が、インビトロにおけるH5N1とH1N1ウイルスの複製の阻害において強力な作用を有することを示した。
【0046】
本明細書に記載されている実施形態の態様は、他の形態で具現化され、またはその精神もしくは本質的な特徴から逸脱することなく他の方法で実施することができる。したがって、本開示は、すべての態様において、例示であり、限定的ではないとみなされるべきであり、均等の意味と範囲に入るすべての変更が、そこに受け入れられることを意図している。