(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097825
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】殺菌性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/80 20060101AFI20170306BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20170306BHJP
A01N 33/20 20060101ALI20170306BHJP
A01N 43/32 20060101ALI20170306BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20170306BHJP
A01N 43/70 20060101ALI20170306BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20170306BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
A01N43/80 102
A01N31/08
A01N33/20 101
A01N43/32
A01N43/40 101E
A01N43/70
A01N47/44
A01P3/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-514146(P2015-514146)
(86)(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公表番号】特表2015-517578(P2015-517578A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013042185
(87)【国際公開番号】WO2013177258
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】61/651,170
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エメレンティアナ・シアナワティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビー・レイモンド
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−99773(JP,A)
【文献】
特開2009−1561(JP,A)
【文献】
特開2009−24003(JP,A)
【文献】
特表2004−507475(JP,A)
【文献】
特開2006−273801(JP,A)
【文献】
特表2003−523367(JP,A)
【文献】
特開2004−131478(JP,A)
【文献】
特開2011−195581(JP,A)
【文献】
特表2012−509330(JP,A)
【文献】
特開昭54−129124(JP,A)
【文献】
特開平10−298102(JP,A)
【文献】
特表2004−510862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび
(b)ドデシルグアニジン、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)、ナトリウムピリチオン、オルト−フェニルフェン酸ナトリウム、テルブトリン、ジメトキサンおよび2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールから成る群から選択される少なくとも1つの殺菌剤を含み、
N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ドデシルグアニジンの重量比が1:1〜1:650、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)の重量比が4:1〜2:1または1:533〜1:1067、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ナトリウムピリチオンの重量比が21:1〜1:40、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:オルト−フェニルフェン酸ナトリウムの重量比が1:60〜1:135、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:テルブトリンの重量比が1:100〜1:110,000、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ジメトキサンの重量比が1:1〜1:650、およびN−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの重量比が3:1〜1:5である、殺菌性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの前記殺菌剤がドデシルグアニジンであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ドデシルグアニジンの重量比が1:1〜1:650である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの前記殺菌剤がポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)であり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)の重量比が4:1〜2:1または1:533〜1:1067である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの前記殺菌剤がナトリウムピリチオンであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ナトリウムピリチオンの重量比が21:1〜1:40である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの前記殺菌剤がオルト−フェニルフェン酸ナトリウムであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:オルト−フェニルフェン酸ナトリウムの重量比が1:60〜1:135である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの前記殺菌剤がテルブトリンであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:テルブトリンの重量比が1:100〜1:110,000である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの前記殺菌剤がジメトキサンであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:ジメトキサンの重量比が1:1〜1:650である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの前記殺菌剤が2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールであり、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの重量比が3:1〜1:5である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別の殺菌剤について観察されるよりも高い活性を有する選択された殺菌剤の相乗的な組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの場合では、市販の殺菌剤は、ある種の微生物、例えば、いくつかの殺菌剤に耐性のある微生物に対して活性が弱いため、または、活動的な環境条件のため、使用濃度が高くても、微生物を効果的に制御することができない。様々な殺菌剤の組み合わせを使用して、特定の最終使用環境の微生物を全体的に制御することがある。例えば、米国特許第2007/0078118号は、その他の殺生物剤とN−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(MBIT)の相乗的な組み合わせを開示する。しかしながら、微生物を効果的に制御するために、微生物の様々な菌株に対して高い活性を有する追加の殺菌剤の組み合わせが必要とされる。さらに、環境および経済的利益のために、低いレベルの個々の殺菌剤を含む組み合わせを必要とする。本発明が扱う問題は、殺菌剤のこのような追加の組み合わせを提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、(a)N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、並びに(b)ドデシルグアニジン、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)、ナトリウムピリチオン、オルト−フェニルフェン酸ナトリウム、テルブトリン、ジメトキサンおよび2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールから成る群から選択される少なくとも1つの殺菌剤を含む相乗的な殺菌性組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の用語は、本明細書で使用するとき、文脈がそうではないと明白に示さない限り、説明された定義を有する。「MBIT」は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンである。「ジメトキサン」は、2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−オールアセタートである。用語「殺菌剤」は、ある場所での微生物の殺傷、増殖の抑制、または増殖の制御が可能な化合物を意味し、すなわち、殺菌剤は、殺菌剤(bactericide)、殺真菌剤および殺藻剤を含む。用語、「微生物」は、例えば、真菌類(イーストおよびカビ等)、細菌、並びに藻類を含む。用語「場所」は、微生物によって汚染された工業システムまたは製品を意味する。以下の略語は、明細書全体にわたって使用する。ppm=重量による百万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、MBC=最小生物致死性濃度、およびMIC=最小発育阻止濃度。特に断りがない限り、温度は、摂氏(℃)であり、パーセンテージに対する参照は重量による(重量%)。有機殺菌剤の量は、ppm(w/w)の活性成分ベースである。
【0005】
本発明の組成物は、個別の殺菌剤より低いレベルの活性成分を組み合わせると、殺菌効果が高くなることを予想外にも示した。請求項に挙げられていない追加の殺菌剤が組成物に存在してもよい。
【0006】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびドデシルグアニジンを含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとドデシルグアニジンの比は、1:1〜1:650であり、好ましくは1:1〜1:30または1:50〜1:650であり、好ましくは1:3〜1:30または1:80〜1:650であり、好ましくは1:3.5〜1:28または1:80〜1:640である。
【0007】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)を含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとポリ(ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩)の比は、4:1〜2:1または1:533〜1:1067である。
【0008】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびナトリウムピリチオンを含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとナトリウムピリチオンの比は、21:1〜1:40であり、好ましくは5:1〜1:40であり、好ましくは3.3:1〜1:35である。
【0009】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびオルト−フェニルフェン酸ナトリウムを含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとオルト−フェニルフェン酸ナトリウムの比は、1:60〜1:135であり、好ましくは1:60〜1:130であり、好ましくは1:62.5〜1:125である。
【0010】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびテルブトリンを含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとテルブトリンの比は、1:100〜1:110,000であり、好ましくは1:104〜1:106,667である。
【0011】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびジメトキサンを含み、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとジメトキサンの比は、1:1〜1:650であり、好ましくは1:1〜1:30または1:50〜1:650であり、好ましくは1:3〜1:30または1:80〜1:650であり、好ましくは1:3.5〜1:28または1:80〜1:640である。
【0012】
本発明のある好ましい実施形態では、抗菌性組成物は、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを含む。好ましくはN−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの比の重量比は、3:1〜1:5であり、好ましくは2:1〜1:4である。
【0013】
本発明の組成物中の殺菌剤は、「そのままの状態で」使用してもよいし、または最初に溶媒または固体担体と配合してもよい。適切な溶媒として、例えば、水;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリコールエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、フェネチルアルコールおよびフェノキシプロパノール等のアルコール類;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸トリアセチル、およびグリセロールトリアセテート等のエステル;炭酸プロピレンおよび炭酸ジメチル等の炭酸塩;並びにその混合物が挙げられる。溶媒は、水、グリコール類、グリコールエーテル類、エステル類、およびその混合物から選択されることが好ましい。適切な固体担体として、例えば、シクロデキストリン、シリカ、珪藻土、ワックス、セルロース系材料、アルカリおよびアルカリ土類(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム)、モンモリロナイト、ゼオライト、層状複水酸化物金属塩類(例えば、塩化物、硝酸塩、臭化物、硫酸塩)並びに木炭が挙げられる。
【0014】
殺菌剤成分は、乳状液、分散液または溶液の形態で配合されてもよい。溶媒成分は、有機溶媒または水であってもよく、好ましくは水である。当該混合物はアジュバント、共溶媒、増粘剤、凍結防止剤、乳化剤、分散剤、充填剤、顔料、界面活性剤、バイオ分散剤(biodispersant)、消泡剤、スルホサクシネート、テルペン、フラノン、ポリカチオン、安定剤、スケール防止剤および防食添加物を含む。
【0015】
両方の殺菌剤がそれぞれ最初に溶媒と配合されるとき、第一の殺菌剤に使用される溶媒は、水が大部分の工業用殺生物剤の適用に好ましいが、その他の市販の殺菌剤を配合するために使用される溶媒と同じであっても、異なっていてもよい。2つの溶媒を混和することが好ましい。
【0016】
当業者は、本発明の殺菌剤成分を、ある場所に、連続して、同時に加えてもよいし、その場所に加える前に化合してもよいことを認識する。第一の殺菌剤および第二の殺菌剤を、ある場所に、同時に、または連続して加えることが好ましい。殺菌剤を同時に、または連続して加える場合、個別の成分はそれぞれ、アジュバント、溶媒、増粘剤、凍結防止剤、着色料、捕捉剤(エチレンジアミン四酢酸、チレンジアミンジコハク酸、イミノジコハク酸およびその塩等)、分散剤、界面活性剤、バイオ分散剤(biodispersant)、スルホサクシネート、テルペン、フラノン、ポリカチオン、安定剤、スケール防止剤および防食添加物を含んでもよい。
【0017】
微生物の攻撃を受けている場所に、その上、またはその中に殺菌有効量の組成物を導入することによって、微生物またはより高次の形態の水生生物(原生動物、無脊椎動物、苔虫類、渦鞭藻類、甲殻類、軟体動物等)の増殖を抑制するために、本発明の殺菌性組成物を使用してもよい。適切な場所として、例えば、工業プロセス水;電着成膜システム(electrocoat deposition system);冷却塔;空気清浄器;ガス浄化装置;鉱物スラリー;下水処理;観賞用噴水器;逆浸透濾過;限外濾過;バラスト水;蒸発コンデンサー;熱交換機;パルプおよび紙加工用液体およびその添加物;でんぷん;プラスチック;乳状液;分散液;塗料;ラテックス;ニス等のコーティング;マスチック、コーキング、およびシーラント等の建設製品;セラミック系接着剤、カーペット裏地接着剤、および貼り合わせ用接着剤等の建設接着剤;工業用または消費者向け接着剤;写真用薬品;印刷用液体、着色料;浴室および台所クリーナーおよびサニタリーワイパー等の家庭用品;化粧品;トイレタリー製品;シャンプー;石鹸;洗剤;工業用クリーナー;床磨き剤;洗濯すすぎ剤;金属加工液体;コンベヤ潤滑剤;作動液;革および革製品;織物;織物製品;合板、チップボード、壁材、木片ボード、積層はり、配向性ストランドボード、ハードボード、およびパーティクルボード等の木および木製品;石油精製液体;燃料;注入水、破砕流体、および掘削泥水等の油田液体;農業用補助維持剤;農業製品の維持剤、界面活性維持剤;医療機器;診断薬維持剤;プラスチックまたは紙の食品用ラップ等の食品保存用品;食物、飲料、および工業プロセス低温殺菌器;便器;リクリエーション用水;プール;並びに温泉がある。
【0018】
好ましくは、鉱物スラリー、パルプおよび紙加工用液体および添加物、でんぷん、乳状液、分散液、塗料、ラテックス、コーティング,セラミック系接着剤、カーペット裏地接着剤、写真用薬品、印刷用液体、着色料等の建設接着剤,浴室および台所クリーナーおよびサニタリーワイパー等の家庭用品、化粧品、トイレタリー製品、シャンプー、石鹸、洗剤、工業用クリーナー、床磨き剤、洗濯すすぎ剤、金属加工用液体、織物製品、木および木製品、農業製品の維持剤および農業用アジュバント、界面活性維持剤、診断薬維持剤、食品保存、および食物、飲料、および工業プロセス低温殺菌器の1つ以上から選択される場所での微生物の増殖を抑制するために、本発明の殺菌性組成物を使用する。
【0019】
ある場所の微生物またはより高次の水生生物形態の増殖を抑制、または制御するのに必要な本発明の組成物の特定量は、保護される特定の場所に依存する。典型的には、ある場所の微生物の増殖を制御するための本発明の組成物の量は、その場所に、組成物の0.1〜1,000ppmのイソチアゾリン成分を提供すれば十分である。その場所に存在する組成物のイソチアゾリン成分は、好ましくは少なくとも0.5ppm、好ましくは少なくとも4ppm、好ましくは少なくとも10ppmである。組成物のイソチアゾリン成分の量は、好ましくは1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは200ppm以下、好ましくは100ppm以下である。
【実施例】
【0020】
本発明の殺生物剤の組み合わせの相乗効果を、Applied Microbiology 9:538−541(1961)に記載のKull、F.C,らの方法を使用して決定した。
【0021】
相乗作用インデックス(SI)は、
Qa/QA+Qb/QB=SIであり、
ここで、
QA=化合物Aの濃度(ppm)、単独作用がエンドポイントを生成し、またはエンドポイントが確立できなかった場合、試験した最高濃度をエンドポイントとして計算に使用し、SIは値の「未満または<」で記録する。
Qa=混合物中の化合物Aの濃度(ppm)であり、エンドポイントを生成した。
QB=化合物Bの濃度(ppm)、単独作用がエンドポイントを生成し、またはエンドポイントが確立できなかった場合、試験した最高濃度をエンドポイントとして計算に使用し、SIは値の「未満または<」で記録する。
Qb=混合物中の化合物Bの濃度(ppm)であり、エンドポイントを生成した。
【0022】
SIの値が1未満のときの2つの殺生物剤内の相乗効果を説明する。混合物は、SIが1に等しい場合には相加効果を示し、SIが1超である場合には拮抗性を示した。当該発明では、2つの異なる相乗的試験方法を実施した。1つは最小発育阻止濃度(MIC)に基づいて決定する相乗試験であり、最小濃度の殺生物剤が、特定の条件下で、試験対象の微生物の増殖を防ぐ。2つ目は3〜4の連続した負荷試験に基づく試験である。この試験は、殺生物作用様式および殺傷速度を考慮して実施される。相乗効果についてのデータは、各負荷試験の任意の時点で表され、相乗効果が観察され、大部分の活性が示された。
【0023】
試験対象の微生物は大腸菌(E.coli、ATCC#8739)、イースト、カンジダ・アルビカンス(c.albicans、ATCC#10231)およびカビ、クロコウジカビ(a.niger、ATCC#16404)である。試験培地中の微生物の最終濃度は約10
4cfu/mLである。
【0024】
実験方法1:最小発育阻止濃度(MIC)
第二の殺生物剤とのMBIT相乗作用を、微生物の増殖を抑制するのに必要とされる最小殺生物剤または殺生物剤混合濃度を評価することによって決定した。96ウェルのマイクロタイタープレートフォーマットを使用して、全試験を実施した。全試験について、MBIT単独、第二の殺生物剤単独、両方の殺生物剤化学物質の組み合わせの様々な濃度を含む200μlの微生物増殖培地を、マイクロタイタープレートの個別のウェルに加えた。特に、細菌(E.coli、ATCC#8739)にはトリプチックソイブロス(TSB)を、イースト(カンジダ・アルビカンス、ATCC#10231)にはイースト麦芽エキスブロス(YMB)を、およびカビ(クロコウジカビ、ATCC#16404)にはポテトデキストロースブロス(PDB)を使用した。最終濃度が10
4CFU/mLまたは10
4胞子/mLの試験微生物を、並行実験の各ウェルに適用し、MIC評価を開始した。殺生物剤を含まない増殖培地を、各実験装置の対照として使用し、各微生物の増殖生存可能性を確認した。これらの殺生物剤濃度の64個の可能な組み合わせの他に、個別の殺生物剤それぞれの8つの濃度(2倍希釈)を微生物増殖阻害試験で評価した。個別の殺生物剤の濃度の評価には、相乗作用インデックスを計算するために、抑制濃度のエンドポイントを達成することを必要とした。有機体を加えた後に、96ウェルのマイクロタイタープレートを、25℃で48時間、または殺生物剤が含まれていない対照ウェル内に増殖が観察されるまでインキュベートした。目に見える有機体増殖による濁度に基づき、個々のウェルに、増殖ありまたは増殖なしとして、スコアを付けた。微生物の増殖を阻害した組み合わせられた殺生物剤の濃度の他に、MBITと第二の殺生物剤の両方について、有機体が増殖しなかった単一の活性殺生物剤の最低濃度を、相乗作用インデックスのために記録した。相乗作用を表す2つの殺生物剤の比を表1〜6に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
実験方法2:最小殺傷濃度(MKC)
MIC評価では特定の殺生物剤化学物質を評価することができないため、MKC評価を使用し、共殺生物剤DXN(6−アセトキシ−2、4−ジメチル−m−ジオキサン)およびTHNM(2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1、3−プロパンジオール)とMBITの相乗作用を特定した。前述の相乗的な組み合わせを評価するために以下の試験方法を設計した。結果は表7および表8で見ることができる。
【0032】
細菌
96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに、2.0%のTSBを補充した無菌水を適用することによって、試験を開始した(第0日目)。様々な濃度のMBIT単独、共殺生物剤単独、または両方の殺生物剤化学物質の組み合わせをマイクロタイタープレートの個別のウェルに加え、次に、最終濃度が5x10
4CFU/mLの大腸菌(ATCC#8739)を加えた。試験の第7、14および21日目に等量の播種を行った。細菌の殺傷の程度を確認するために、第1、7、8、14、15、21、22日目に各試料の一定分量(20μl)を取り出し、トリプチックソイブロス(180μl)に移した。30℃でインキュベーションしてから48時間後、TSB内の濁度の存在または喪失によって、細菌殺傷(最大検出限界は5x10
1CFU/mL)を視覚的に確認した。
【0033】
イースト
96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに、2.0%のイースト麦芽エキスブロスで補充した無菌水を適用することによって、試験を開始した(第0日目)。様々な濃度のMBIT単独、共殺生物剤単独、または両方の殺生物剤化学物質の組み合わせをマイクロタイタープレートの個別のウェルに加え、次に、最終濃度が5x10
4CFU/mLのカンジダ・アルビカンス(ATCC#10231)を加えた。試験の第7、14、21日目に等量の播種を行った。イースト殺傷の程度を確認するために、第1、7、8、14、15、21、22日目に各試料の一定分量(20μl)を取り出し、イースト麦芽エキスブロス(180μl)に移した。30℃でインキュベーションしてから48時間後、YMB内の濁度の存在または喪失によって、イースト殺傷(最大検出限界は5x10
1CFU/mL)を視覚的に確認した。
【0034】
カビ
96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに、2.0%のポテトデキストロースブロスで補充した無菌水を適用することによって、試験を開始した(第0日目)。様々な濃度のMBIT単独、共殺生物剤単独、または両方の殺生物剤化学物質の組み合わせをマイクロタイタープレートの個別のウェルに加え、次に、最終濃度が5x10
4胞子/mLのクロコウジカビ(ATCC#16404)を加えた。試験の第7および14日目に等量の播種を行った。カビ殺傷の程度を確認するために、第1、7、8、14、15、21日目に各試料の一定分量(20μl)を取り出し、ポテトデキストロースブロス(180μl)に移した。30℃でインキュベーションしてから48〜96時間後、PDB内の濁度の存在または喪失によって、カビ殺傷(最大検出限界は5x10
1胞子/mL)を視覚的に確認した。
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】