(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の靴下の編成方法では、指袋のつけ根部分の幅を幅広に形成して指を指袋に入れ易くすることにより、比較的履きやすいものとはなっているものの、各指袋自体が十分に立体的に編成されていないため、当該従来の靴下では、未だに、指を指袋に通し難いものであり、指先にストレスを感じるという上記した問題点を解消するまでに至っていない。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、指袋自体を立体的に編成することにより、指を指袋に通し易くて、履き易い靴下を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、
左右方向に延びて、且つ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対
の針床と、
前後の針床が相対的にラッキング可能に形成され、且つ、前後の針床で編目の目移しが可能なベッドとを有する横編機で編成され、つま先側部分に5本の足指の内の少なくとも1本以上を収容する指袋を含む靴下であって、指袋は、足指の厚み方向に対向する上面編地部および下面編地部と、足指の幅方向に対向する
2つの側面編地部
と、足指のつま先部側の開口部を閉鎖する先端面編地部とを含み、
上面編地部および下面編地部の編み目方向は、足指の長さ方向に延びて編成され、先端面編地部の編み目方向は、上面編地部および下面編地部の編み目方向と同方向に編成され、2つの側面編地部の編み目方向は、足指の高さ方向に延びて編成され、上面編地部、下面編地部および先端面編地部の編み目方向と、2つの側面編地部の編み目方向とは、直交する方向に編成され、足指の挿入口部が4角形筒状に編み立てられていることを特徴とする、靴下である。
請求項1に係る本発明は、
特に、上面編地部、下面編地部および先端面編地部の編み目方向と、2つの側面編地部の編み目方向とが、直交する方向に編成され、足指の挿入口部が4角形筒状の指袋に編み立てられている。そのため、上面編地部、下面編地部および先端面編地部と、2つの側面編地部の編み目とは、互いに反発する方向に編成され
、当該指袋は、立体的な4角形筒状の態様となるように編成されている。そのため、
請求項1に係る本発明の靴下では、当該
立体的な4角形筒状の態様を有する指袋に足指を通し易く、結果として、履き易いものとなっている。
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、
上面編地部と下面編地部と先端面編地部とには、平編み部が編成され、平編み部の編み目方向は、足指の長さ方向に延びて編成されていることを特徴とし、2つの側面編地部には、ガーター編み部が編成され、ガーター編み部の編み目方向は、足指の高さ方向に延びて編成されていることを特徴とする、靴下である。
請求項2に係る本発明は、
請求項1に係る発明と同様の作用・効果を備え、さらに、上記した構成を有することにより、編み目方向が足指の長さ方向に延びる平編み部を上面編地部と下面編地部と先端面編地部とに編成し、編み目方向が足指の高さ方向に延びるガーター編み部を2つの側面編地部に編成することによって、指袋を形成する編み目が平編み部とガーター編み部とに編み分けられる。
請求項3に係る本発明は、請求項2に係る発明に従属する発明であって、靴下のつま先側部分
は、5本の足指の内の少なくとも1本以上を収容する、2つ、3つ、および5つの内のいずれかの数の指袋を有し、指袋の根元部側には、他のガーター編み部が編成されていることを特徴とする、靴下である。
請求項3に係る本発明は、
請求項2に係る発明と同様の作用・効果を備え、さらに、上記した構成を有することにより、ガーター編み部を、対向する2つの側面編地部に加えて、上記指袋部の根元側にも配設することによって、当該各指袋部自体がより一層立体的な態様を有するものとなる。
請求項4に係る本発明は、
請求項2に係る発明に従属する発明であって、
靴下のつま先側部分に、5本の足指をそれぞれ別個に収容する5つの指袋を含み、5つの指袋の根元部側には、他のガーター編み部が編成されていることを特徴とする、靴下である。
請求項4に係る本発明は、
請求項2に係る発明と同様の作用・効果を備え、さらに、上記した構成を有することにより、ガーター編み部を、対向する2つの側面編地部に加えて、上記5本の足指の指袋部の根元側にも配設することによって、当該5本の足指の各指袋部自体がより一層立体的な態様を有するものとなる。
請求項5に係る本発明は、
請求項4に係る発明に従属する発明であって、
5つの指袋の先端面編地部、上面編地部、下面編地部および2つの側面編地部間の境界部の内、少なくとも上面編地部および下面編地部と、2つの側面編地部との境界部に、足指の長さ方向に延びるメッシュ部が編成されていることを特徴とする、靴下である。
請求項5に係る本発明は、
請求項4に係る発明と同様の作用・効果を備え、さらに、上記した構成を有することにより、メッシュ部による通気効果を各指袋に付与することが可能となっている。すなわち、各指袋における通気性が向上するため、たとえば従来の指袋付き靴下と比べて、より一層、汗をかいたりしたときの各足指間の蒸れや異臭および水虫等を防止して足指間の快適性を確保することが可能となっている。
請求項6に係る本発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に係る発明に従属する発明であって、
ラッキングおよび目移しが可能な横編み機によって、指袋は、ウエール方向の編み目の数を調整することで、指袋の高さが調整可能となる、靴下である。
請求項6に係る本発明は、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に係る発明と同様の作用・効果を備え、さらに、上記した構成を有することにより、足指の高さ、すなわち、厚み(太さ)の変化にも対応した指袋を編成することが可能となっている。この場合、ラッキングおよび目移しが可能な横編み機で、ウエール方向の編み目の数を調整することによって指袋の高さが調整される。
請求項7に係る本発明は、
左右方向に延びて、且つ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対
の針床
と、前後の針床が相対的にラッキング可能に形成され、且つ、前後の針床で編目の目移しが可能なベッドとを有する横編機で編成され、つま先側部分に5本の足指の内の少なくとも1本以上を収容する指袋
を含む靴下の編成方法であって、
編成方法は、足指の厚み方向に対向する上面編地部および下面編地部と、足指の幅方向に対向する
2つの側面編地部
と、足指のつま先部側の開口部を閉鎖する先端面編地部とを備えた指袋を編成する工程を含み、上面編地部および下面編地部の編み目方向は、足指の長さ方向に延びて編成され、先端面編地部の編み目方向は、上面編地部および下面編地部の編み目方向と同方向に編成され、2つの側面編地部の編み目方向は、足指の高さ方向に延びて編成され、上面編地部、下面編地部および先端面編地部の編み目方向と、2つの側面編地部の編み目方向とは、直交する方向に編成され、足指の挿入口部が4角形筒状に編み立てるように編成したことを特徴とする、靴下の編成方法である。
請求項7に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項1に係る発明と同様の作用・効果を備えた指袋を有する靴下が編成される。
請求項8に係る本発明は、請求項7に係る発明に従属する発明であって、指袋を編成する工程は、
上面編地部、下面編地部および先端面編地部に、編み目方向が足指の長さ方向に延びる平編み部を編成する工程と、2つの側面編地部に、編み目方向が足指の高さ方向に延びるガーター編み部を編成する工程
とを含む
ことを特徴とする、靴下の編成方法である。
請求項8に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項2に係る発明と同様の作用・効果を備えた靴下が編成される。
請求項9に係る本発明は、請求項8に係る発明に従属する発明であって、指袋を編成する工程は、靴下のつま先側部分に、5本の足指
の内の少なくとも1本以上を収容する、2つ、3つ、および5つの内のいずれかの数の指袋を編成する工程と、指袋の根元部側に、他のガーター編み部を編成する工程
とを含む
ことを特徴とする、靴下の編成方法である。
請求項9に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項3に係る発明と同様の作用・効果を備えた靴下が編成される。
請求項10に係る本発明は、
請求項8に係る発明に従属する発明であって、
指袋を編成する工程は、靴下のつま先側部分に、5本の足指をそれぞれ別個に収容する5つの指袋を編成する工程と、5つの指袋の根元部側に、他のガーター編み部を編成する工程とを含むことを特徴とする、靴下の編成方法である。
請求項10に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項4に係る発明と同様の作用・効果を備えた靴下が編成される。
請求項11に係る本発明は、
請求項10に係る発明に従属する発明であって、
指袋を編成する工程は、5つの指袋の先端面編地部、上面編地部、下面編地部および2つの側面編地部間の境界部の内、少なくとも上面編地部および下面編地部と、2つの側面編地部との境界部に、足指の長さ方向に延びるメッシュ部を編成する工程
を含むことを特徴とする、靴下の編成方法である。
請求項11に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項5に係る発明と同様の作用・効果を備えた靴下が編成される。
請求項12に係る本発明は、請求項7〜請求項11のいずれか1項に係る発明に従属する発明であって、
指袋を編成する工程は、ラッキングおよび目移しが可能な横編み機によって、ウエール方向の編み目の数を調整することで、指袋の高さが調整可能となる、靴下の編成方法である。
請求項12に係る本発明は、上記した構成を有することにより、請求項6に係る発明と同様の作用・効果を備えた靴下が編成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、指袋自体を立体的に編成することにより、指を指袋に通し易くて、履き易い靴下及びその編成方法が得られる、という効果がある。
【0008】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る靴下の実施の形態の一例を示す斜視図であって、特に、当該靴下を平面側(足表側)から見た斜視図である。また、
図2は、
図1に示す靴下の概略平面図であり、
図3は、
図1に示す靴下を底面側(足裏側)から見た斜視図であり、
図4は、
図3に示す靴下の概略底面図である。さらに、
図5の(A)は、本発明に係る靴下を足型に履かせた状態を示す斜視図であり、
図5の(B)は、その要部[
図5の(A)のA部]を示す拡大図解図であり、
図5の(C)は、
図5の(B)の変形例を示す拡大図解図である。
靴下10は、靴下本体と、つま先部12とを含み、靴下本体は、当該靴下10の履口部分となる足挿入口部10A、足首側部14、足甲部16、足側面部18および足底を含み、足底は、土踏まず部20、拇指球部24、踵部26を含む構成となっている。
【0011】
また、この靴下10のつま先部12には、指袋30が形成されている。指袋30は、親指用指袋部32、人差し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38および小指用指袋部40の例えば5つの指袋部を有している。この靴下10を着用した場合、5つの指袋部32〜40は、5本の指をそれぞれ別個に収容するものとなっている。
図1〜
図5に例示した靴下10は、左足用を示し、右足用を省略しているけれども、右足用は、左足用と左右対称の形状を有するようにすればよい。すなわち、右足用とする場合には、親指用指袋部32、人差し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38および小指用指袋部40の配置を対称にすればよい。
【0012】
この靴下10は、つま先部12から編成される、親指用指袋部32、人指し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38、小指用指袋部40の各指袋部と、この指袋部32〜40を統合し、1つの筒状編地に編成された足甲部16のつま先部12側(所謂、「5本胴」と称する部位)と、この足甲部16のつま爪部12側から括れを有するように形成された土踏まず部20と、踵部26および足首側部14とを形成した後、当該足首側部14の上端側に足挿入口部10Aが形成されるものとなっている。なお、この靴下10は、たとえば足挿入口部10A側から、つま先部12側へと編成されるものであってもよい。
【0013】
この場合、靴下10は、横編機(図示せず)の前後のニードルベッドの編針に亘って編糸を給糸し、それぞれ、つま先部12から編み出された親指用指袋部32、人指し指用指袋部34、中指用指袋部36の各指袋が形成され、これらの指袋部32〜36が統一された、所謂、3本胴が所定のコース方向に編成された後、薬指用指袋部38が編成される。さらに、当該3本胴と薬指用指袋部38とが統一された、所謂、4本胴が筒状に編成された後、小指用指袋部40が編成され、4本胴と小指用指袋部40とが1つに統一した、所謂、靴下10の5本胴が所定のコース数分、編成される。そして、5本胴が形成されると、土踏まず部20および踵部26が形成された後、足首側部14から足挿入口10Aまで筒状に編成されるものとなっている。
【0014】
この靴下10を編成する横編機としては、例えば、左右方向に延びて配設され、編針を摺動可能に装着した少なくとも前後一対の対向する針床を有し、その歯口部が近接する状態で側面視において略「ハ」の字形で前後に配設し、各針床の上面をスライド走行するキャリッジによって、各編針が進退自在にスライド操作されると共に、前後の針床が相対的にラッキング可能に形成された構造の横編機が用いられ得る。
なお、横編機としては、左右方向に延びて、且つ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床と、前後の針床間で編目の目移しが可能な2枚ベッドの横編機以外にも、例えば、4枚ベッドの横編機も用いられ得る。
【0015】
この靴下10は、特に、5つの指袋部32〜40の各指袋部自体を立体的に編成するための編成構造に特徴を有しているため、先ず、当該編成構造について、たとえば
図5、
図6および
図7を参照しながら、以下、詳細に説明する。5つの指袋部32〜40の各指袋部は、基本的に同じ編成構造を有しているので、小指用指袋部40を一例に挙げて、以下、説明する。
小指用指袋部40は、
図5の(A)に示すように、足指(この場合、足小指)の厚み方向に対向する上面編地部42および下面編地部44と、足指の幅方向に対向する2つの側面編地部46,46と、上面編地部42,下面編地部44,側面部46,46で囲繞された足指のつま先部12側の開口部を閉鎖する先端面編地部48とを含む。上面編地部42および下面編地部44は、本靴下10を着用したときに、足指の上面側および下面側を覆い、2つの側面編地部46,46は、足指の対向する側面側を覆い、先端面編地部48は、足指の先端部側を覆うようにして、当該小指用指袋部40に足小指を収容する編地部位となっている。
【0016】
上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48は、それぞれ、その全面に、たとえば平編み部43,45および49が編成され、当該平編み部43の編み目方向は、
図5,
図6および
図7に示すように、足指の長さ方向に延びて編成されている。
一方、足指の幅方向に対向する2つの側面編地部46,46は、その全面に、たとえばガーター編み部47が編成され、当該ガーター編み部47の編み目方向は、
図5,
図6および
図7に示すように、足指の高さ方向(厚み方向)に延びて編成されている。
【0017】
すなわち、上面編地部42および下面編地部44の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とは、
図5の(B)および
図7の(B)に示すように、互いに直交する方向に編成されている。なお、先端面編地部48の編み目方向は、
図5および
図6で見ると、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向と同様に、足指の高さ方向(厚み方向)に延びて編成されているように見えるが、編み方向として考えた場合、上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48には、横編機により平編み部が同方向に編成されているため、当該上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とは、直交する方向に編成されるものとなっている。
この靴下10の5つの指袋部32〜40は、それぞれ、上面編地部42、下面編地部44および先端面編地部48の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とが、特に、直交する方向、つまり、互いに反発する方向に編成されているため、各指袋部32〜40自体を立体的に編成することができる。すなわち、足指の挿入口部をたとえば4角形筒状に編み立てることによって、当該足指の挿入口部を立体的に編成することができる。そのため、この靴下10は、5本の足指を各指袋部32〜40に通し易くて、従来の5本指付きの靴下に比べて、極めて、履き易い靴下となっている。
【0018】
次に、上記した指袋部40の対向する側面編地部46,46のガーター編み部47の編成方法について、たとえば
図12を参照しながら、以下、詳細に説明する。
図12において、左側枠外の英文字Bは、横編機の後側針床を示し、英文字Fは、前側針床を示し、右側枠外の英文字S1〜S10は、工程番号を示し、英文字NKは、選針しない無編成の空コースを示し、図中の黒点・は、前側針床Fおよび後側針床Bに配設される編針を示し、図中の上下方向の矢印は、矢印の方向に目移しが行われることを示している。
【0019】
以下に、
図12を参照しながら、ステップS1〜ステップS10に係る編成工程ついて、順次、説明する。ステップS1〜ステップS10に係る編成工程では、表糸の一例として、綿、ポリエステル等の合成繊維の混合糸が用いられ得る。また、裏糸の一例としては、ポリウレタン弾性糸等を芯糸に用いて、ナイロン糸およびポリエステル糸等で巻いたFTY(カバードヤーン/カバーリングヤーン)が用いられ得る。
【0020】
(1)ステップS1
表糸と裏糸が後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸および裏糸のループがコース方向(
図12の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
(2)ステップS2
表糸と裏糸が前側針床Fの編針に給糸され、それぞれ、表糸および裏糸のループがコース方向(
図12の紙面で見て右側から左側方向)に形成される。
(3)ステップ3
後側針床Bのループ位置において、目移し針が横編機上で選別され、目移し(給糸された編針を空き針に移す)の準備がなされる。
(4)ステップ4
ステップ3で選別された編針を後側針床Bから前側針床Fに対して、ステップ4の矢印の方向に目移しを行う。この場合、後側針床Bの編針から前側針床Fの空き針に目移しが行われる。
(5)ステップ5
表糸と裏糸が前側針床Fおよび後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸および裏糸のループがコース方向(
図12の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
(6)ステップ6
前側針床Fのループ位置において、目移し針が横編機上で選別され、目移しの準備がなされる。
(7)ステップ7
ステップ6で選別された編針を前側針床Fから後側針床Bに対して、ステップ7の矢印の方向に目移しを行う。この場合、前側針床Fの編針から後側針床Bの空き針に目移しが行われると同時に返還される。(返還とは、目移し動作後、元の給糸針に戻すことを意味する。)
(8)ステップ8
表糸と裏糸が前側針床Fおよび後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸および裏糸のループがコース方向(
図12の紙面で見て右側から左側方向)に形成される。
(9)ステップ9
後ろ側針床Bのループ位置において、目移し針が横編機上で選別され、目移しの準備がなされる。
(10)ステップ10
ステップ9で選別された編針を後側針床Bから前側針床Fに対して、ステップ10の矢印の方向に目移しが行われる。これによって、目移し返還動作が終了となって、組織名ガーター編みが編成される。
このステップ10が終了すると、再度、ステップ1に戻り、ステップ1〜ステップ10の編成工程が繰り返されることによって、コース方向およびウエール方向に所定量のガーター編部47が編成される。
【0021】
上述した靴下10において、5つの各指袋部32〜40のウエール方向の編み目の数を調整することによって、各指袋部32〜40の高さ(厚み方向の長さ)を適宜調整することができる。そのため、より一層、着用者の5本指の足指の大きさに対応した、この場合、親指から小指まで足指の厚みの変化に対応した履きやすい靴下を編成することができる。
【0022】
上述した靴下10では、上面編地部42、下面編地部44および先端面編地部48の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とが、特に、直交する方向に編成されているが、それに限定されるものではなく、直交(90°に交差)する方向以外にも、たとえば90°以外の角度で交差する方向に編成するようにしてもよい。この場合、上面編地部42、下面編地部44、先端面編地部46の内の少なくとも上面編地部42および下面編地部44の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とが、直交(90°に交差)する方向、あるいは、90°以外の角度で交差する方向に編成されていればよい。
【0023】
さらに、上述した靴下10では、上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48の全面にそれぞれ平編み部43,45および49が編成され、対向する2つの側面編地部46,46の全面にそれぞれガーター編み部47が編成されたが、平編み部43,45および49は、上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48の編地面の少なくとも一部に編成されていてもよく、また、ガーター編み部47は、対向する2つの側面編地部46,46の編地面の少なくとも一部に編成されていてもよい。要するに、上面編地部42、下面編地部44、先端面編地部46の内の少なくとも上面編地部42および下面編地部44の編み目方向と、対向する2つの側面編地部46,46の編み目方向とが、直交(90°に交差)する方向、あるいは、90°以外の角度で交差する方向に編成されていれば、平編み部43,45,49、および、ガーター編み部47は、それぞれ、部分的に編成されていてもよい。
【0024】
また、上述した靴下10では、上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48のそれぞれに平編み部43,45および49が編成され、対向する2つの側面編地部46,46のそれぞれにガーター編み部47が編成されたが、反対に、面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48のそれぞれにガーター編み部を編成し、対向する2つの側面編地部46,46のそれぞれに平編み部を編成するようにしてもよい。
【0025】
さらに、上述した靴下10において、対向する2つの側面編地部46,46のそれぞれにガーター編み部47が編成されたが、ガーター編み部は、対向する2つの側面編地部46,46に加えて、5つの各指袋部32〜40の足表側部10Bの根元側に配設することによって、当該各指袋部32〜40自体がより一層立体的なものとなる。なお、
図1,
図2,
図6,
図7および
図8では、たとえば人指し指用指袋部34、中指用指袋部36および薬指用袋部38の各指袋の根元部側に、それぞれ、ガーター編み部54,56および58を配設した場合を例示している。
【0026】
また、上述した靴下10では、上面編地部42,下面編地部44および先端面編地部48のそれぞれに平編み部43,45および49が編成されたが、平編み部に替えて、リブ編み部を編成するようにしてもよい。
【0027】
ところで、この靴下10は、上記したように、5つの指袋部32〜40の各指袋部自体を立体的に編成するための編成構造に特徴を有している以外にも、以下に示す他の特徴を有している。
すなわち、この靴下10は、たとえば
図1〜
図9に示すように、当該靴下10を着用したときに、足甲部16、足側面18および土踏まず部20を含む周胴部22と対向する靴下10の部位(以下、「周胴編地部50」)が、少なくともその一部に、表糸および裏糸と、弾性糸とで編成される編成コースを含み、編成コースは、表糸および裏糸で編成される複数のコース間に、弾性糸が2コース以上編成されていることを特徴としている。
【0028】
そこで、この周胴編地部50の編成方法について、たとえば
図13を参照しながら、以下、詳細に説明する。
図13において、左側枠外の英文字Bは、横編機の後側針床を示し、英文字Fは、前側針床を示し、右側枠外の英文字S1〜S6は、工程番号を示し、英文字NKは、選針しない無編成の空コースを示し、図中の黒点・は、前側針床Fおよび後側針床Bに配設される編針を示し、図中の上下方向の矢印は、矢印の方向に目移しが行われることを示し、図中の黒色の背景の白抜きの数字1は、裏糸を、白抜きの数字2は、表糸を、白抜きの数字5は、ゴム糸等の弾性糸を示している。また、表糸2および裏糸1は、編針位置が同じで、弾性糸5とは別の編針位置となっている。
【0029】
以下に、
図13を参照しながら、ステップS1〜ステップS6に係る編成工程ついて、順次、説明する。ステップS1〜ステップS6に係る編成工程では、表糸の一例として、綿、ポリエステル、指定外繊維(例えば、ウーリーナイロン:WN)等の混合糸が用いられ得る。また、裏糸の一例としては、ポリウレタン弾性糸等を芯糸に用いて、ナイロン糸およびポリエステル糸等で巻いたFTY(カバードヤーン/カバーリングヤーン)が用いられ得る。さらに、弾性糸の一例としては、ポリウレタン、ポリエステル等のゴム糸が用いられ得る。
【0030】
(1)ステップS1
弾性糸5が後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、弾性糸5のループがコース方向(
図13の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
(2)ステップS2
弾性糸5が前側針床Fの編針に給糸され、それぞれ、弾性糸5のループがコース方向(
図13の紙面で見て右側から左側方向)に形成される。
(3)ステップS3
弾性糸5が後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、弾性糸5のループがコース方向(
図13の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
(4)ステップS4
弾性糸5が前側針床Fの編針に給糸され、それぞれ、弾性糸5のループがコース方向(
図13の紙面で見て右側から左側方向)に形成される。
(5)ステップS5
表糸2および裏糸1が後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸2および裏糸1のループがコース方向(
図13の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
(6)ステップS6
表糸2および裏糸1が前側針床Fの編針に給糸され、それぞれ、表糸2および裏糸1のループがコース方向(
図13の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。
このステップ6が終了すると、再度、ステップ1に戻り、ステップ1〜ステップ6の編成工程が繰り返されることによって、ウエール方向に所定量の周胴編地部50が編成される。
上記した編成工程ステップ1〜ステップ6では、弾性糸5を例えば天竺ジャガードの柄糸に使うことで従来には無い粘りのある横伸びのある編地となっている。この編成工程ステップ1〜ステップ6では、
図13に示すように、表糸2および裏糸1のループが1コースに対して弾性糸5のループを2コース以上、つまり、複数コース以上で編成することにより構成されていることを特徴としている。
【0031】
また、この靴下10は、たとえば
図3、
図4、
図5、
図9に示すように、当該靴下10を着用したときに、拇指球部24および踵部26と対向する靴下10の部位(以下では、「拇指球部の編地部24」および「踵部の編地部26」と言う。)が、糸量を多くとり編み目を斜めにクロスさせることで強度を付与し、見かけ上、立体的に膨出した編み目構造に編成されていることを特徴としている。この靴下10では、拇指球部の編地部24および踵部の編地部26は、同じ編み目構造(以下、単に、「クロス編み構造24,26」と言う。)を有するものである。
【0032】
そこで、このクロス編み構造24,26の編成方法について、たとえば
図14を参照しながら、以下、詳細に説明する。
図14において、左側枠外の英文字Bは、横編機の後側針床を示し、英文字Fは、前側針床を示し、右側枠外の英文字S1〜S6は、工程番号を示し、英文字NKは、選針しない無編成の空コースを示し、図中の黒点・は、前側針床Fおよび後側針床Bに配設される編針を示し、図中の上下方向の矢印は、矢印の方向に目移しが行われることを示している。
【0033】
以下に、
図14を参照しながら、ステップS1〜ステップS6に係る編成工程ついて、順次、説明する。ステップS1〜ステップS6に係る編成工程では、表糸の一例として、綿、ポリエステル、指定外繊維(例えば、ウーリーナイロン:WN)等の混合糸が用いられ得る。また、裏糸の一例としては、ポリウレタン弾性糸等を芯糸に用いて、ナイロン糸およびポリエステル糸等で巻いたFTY(カバードヤーン/カバーリングヤーン)が用いられ得る。
【0034】
(1)ステップ1
表糸と裏糸が前側針床Fおよび後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸と裏糸のループがコース方向(
図14の紙面で見て右側から左側方向)に形成される。前側針床Fの編針でニット編み目、後側針床Bの編針でタック編み目を形成している。すなわち、前側針床Fの編針と後側針床Bの編針とに、交互に給糸して、ニット編み目およびタック編み目を形成している。
この場合、後側針床Bの給糸針位置は、空針位置となっている。この空針位置とは、針抜き編成時での本来編まない、つまり、編み目(ループ)を形成しない針目移し用の針のことを意味する。
(2)ステップ2
表糸と裏糸が前側針床Fおよび後側針床Bの編針に給糸され、それぞれ、表糸と裏糸のループがコース方向(
図14の紙面で見て左側から右側方向)に形成される。前側針床Fの編針でニット編み目、後側針床Bの編針でニット編み目を形成している。すなわち、前側針床Fの編針と後側針床Bの編針とに、交互に給糸して、それぞれ、ニット編み目を形成している。この前側針床Fの編針および後側針床Bの編針でそれぞれニット編み目を形成する工程がたとえば4回繰り返される。
(3)ステップ3
後側針床Bのループ位置において、目移し針が横編機上で選別され、目移しの準備がなされる。この場合、後側針床Bは、
図14の紙面で見て左側に2ピッチ分(針2本分)、ラッキング動作が行われる。
(4)ステップ4
ステップ3で選別された編針を後側針床Bから前側針床Fに対して、矢印の方向に目移しが行われる。その後、後側針床Bは、
図14の紙面で見て右側に2ピッチ分、ラッキングされ、元の位置に戻る。
(5)ステップ5
後側針床Bのループ位置において、目移し針が横編機上で選別され、目移しの準備がなされる。この場合、後側針床Bは、
図14の紙面で見て右側に2ピッチ分、ラッキング動作が行われる。
(6)ステップ6
ステップ5で選別された編針を後側針床Bから前側針床Fに対して、ステップ6の矢印の方向に目移が行われる。その後、後側針床Bは、
図14の紙面で見て左側に2ピッチ分、ラッキングされ、元の位置に戻る。
【0035】
さらに、この靴下10は、上記した特徴以外にも、たとえば
図1、
図2、
図6、
図7および
図8に示すように、足甲部16および足首側部14間の部位62(以下、「足首−足甲ライン部60」と言う。)、当該足首側部14から親指用指袋部32の根元側に至る部位62(以下、「足首−親指ライン部62」と言う。)、および、当該足首側部14から小指用指袋部40の根元側に至る部位64(以下、「足首−小指ライン部64」と言う。)に、1コース毎に表糸と裏糸とが交互に出る編み目構造の一例として、たとえばリンクス編み部が編成されていることを特徴としている。リンクス編み部は、ウエール方向の伸縮性が、コース方向の伸縮性よりも大きいものとなっている。
そのため、靴下10の足首−足甲ライン部60にリンクス編み部を編成することによって、足の長さ方向で見たときの足首側部14のタテ方向での伸縮性により着用者の足首側にフィットし、当該靴下10の着用時の足首側のズレを防止することができる。
また、靴下10の足首−親指ライン部62および足首−小指ライン部64にリンクス編み部を編成することによって、
図8に示すように、靴下10の足首−親指ライン部62および足首−小指ライン部64を介して、足側面部18,18の足裏側部10C側から足表側部10B側への伸縮力を作用させることができるので、足側面部18,18でのフィット感を向上させることができる。
【0036】
さらに、この靴下10は、上記した特徴以外にも、特に、
図5の(C)に示すように、たとえば小指用指袋部40の一部に、メッシュ編み部で編成されたメッシュ部68が配設されている。メッシュ部68は、対向する2つの側面編地部46,46と、上面編地部42および下面編地部44との境界部にそれぞれ配設されている。
この場合、上面編地部42の幅方向の両側と、対向する2つの側面編地部46,46の高さ方向の上側との間の境界部には、それぞれ、指用指袋部40の長さ方向に延びる1本のメッシュ部68が、所定の長さをもって編成されている。また、下面編地部44の幅方向の両側と、対向する2つの側面編地部46,46の高さ方向の下側との間の境界部には、それぞれ、指用指袋部40の長さ方向に延びる他の1本のメッシュ部68が、所定の長さをもって配設されている。
【0037】
同様にして、上記したメッシュ部68は、
図5の(C)に示す小指用袋部40以外に、親指用指袋部32、人差し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38にも、適宜、配設され得るものである。
また、このメッシュ部68は、たとえば各指袋32〜40の先端面編地部46と隣り合う、上面編地部42、下面編地部44および対向する2つの側面編地部46,46との境界部に配設するようにしてもよい。
この靴下10では、上記した部位にメッシュ部68を編成することによって、各指袋32〜40における通気性が向上するため、たとえば従来の指袋付き靴下と比べて、より一層、汗をかいたりしたときの各足指間の蒸れや異臭および水虫等を防止して足指間の快適性を確保することができる。
【0038】
さらに、この靴下10では、
図1、
図2、
図6、
図7および
図8に示すように、たとえば足表側部10Aの人差し指用指袋部34、中指用指袋部36および薬指用指袋部38の根元側に編成されたガーター編み部54、56および58と、足甲部16との間に、メッシュ部66が配設されている。そのため、人差し指用指袋部34、中指用指袋部36および薬指用指袋部38の根元側の足指挿入口部(図示せず)近傍の通気性も確保することができる。
【0039】
また、この靴下10は、
図1、
図2、
図3、
図4、
図7および
図8等に示すように、周胴部22の一部に、インターシャー部52が配設されている。この靴下10では、インターシャー部52が、足表側部10Bの右側の足側面部18に跨るようにして、周胴部22の一部に配設されている。このインターシャー部52は、例えば、
図13に示す編成工程図で示される弾性糸のニット編成を基本にして、インターシャー編み部で編成されている。すなわち、同種類または異種類の2本のFTY糸を引き返し編みで部分的に色糸を切り替えることにより、つまり、部分的に色糸を編み込むことにより、所謂、インターシャー編み部が編成されている。このインターシャー編み部では、裏目等の目移し柄を適宜組み合わせることも可能であり、また、部分的に表糸裏糸を入れ替えて編成することも適宜可能となっている。
このインターシャー部52は、足表側部10Bの左側の足側面部18に跨るようにして、周胴部22の一部に配設するようにしてもよく、さらに、左右両側の足側面部18に跨るようにして、周胴部22の一部に配設するようにしてもよい。
この靴下10では、上記したように、周胴部22にインターシャー部52を編成することによって、足側面部18の外側に逃げる力をその内側に力が作用するようになるため、当該靴下10の履き心地が良くなり、足の疲労を軽減することができると共に、当該靴下10の通気性および軽量化にも寄与するものとなっている。さらに、この靴下10では、足の内側縦アーチおよび足の外側縦アーチへの押し上げ力も高まって、足甲部16への当該靴下10のフィット感が向上するものとなっている。
【0040】
さらに、この靴下10は、
図10および
図11に示すように、親指用指袋部32、人指し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38、小指用指袋部40の各指袋部の裏面(下面編地部44の面)と、拇指球部24の面と、踵部26の面とに、それぞれ、足裏側部10C側から見ると、たとえば「く」の字状(L字状)の複数の滑り止め部70が配設されている。これらの滑り止め部70は、上記した各部の面に、たとえば樹脂材料を印刷、塗布、含浸等の方法により形成され得る。この靴下10では、滑り止め部70を足裏側部10Cの前記各部位の面に配設することにより、滑り止め作用を有するものとなっている。
【0041】
上述した本発明を実施するための形態に係る靴下10では、特に、上述したように、親指用指袋部32、人指し指用指袋部34、中指用指袋部36、薬指用指袋部38、小指用指袋部40の5つの指袋部自体を立体的に編成することができる特徴を有しているため、着用者の5本の足指を各指袋部32〜40に通し易くて、従来の5本指付きの靴下に比べて、極めて、履き易い靴下となっている。
【0042】
上述した本発明を実施するための形態に係る靴下10では、当該靴下10のつま先側部分に、着用者の5本の足指をそれぞれ別個に収容する5つの指袋部を有する靴下10について説明したが、本発明に係る靴下は、5つの指袋部を有する靴下10のみ限定されるものではなく、5本の足指の内の少なくとも1本以上を収容する、たとえば2つ、3つ、および5つの内のいずれかの数の指袋部を有する靴下であってもよい。この場合、2つの指袋部を有する靴下は、所謂、足袋タイプの靴下のことである。
また、本発明に係る靴下は、5本の足指の内の少なくとも1本以上を収容する指袋部を有するものであれば、5本の足指が1つの指袋部に収容される、所謂、通常の「靴下」に適用され得るものである。さらに、上述した靴下10では、足指の厚み方向に対向する上面編地部42および下面編地部44と、足指の幅方向に対向する2つの側面編地部46,46と、上面編地部42,下面編地部44,側面部46,46で囲繞された足指のつま先部12側の開口部を閉鎖する先端面編地部48とにより、指袋部が形成されたが、本発明に係る靴下は、たとえば先端面編地部48を有していない靴下にも適用され得るものとなっている。