(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材シートと、前記基材シートの一方の主面側に積層されたハードコート層と、前記基材シートの他方の主面側に積層されたカール抑制層とを備えたハードコート積層体であって、
前記ハードコート層は、硬化性成分および無機フィラーを含有する組成物を硬化させた材料からなり、
前記ハードコート層における前記無機フィラーの含有量は、前記ハードコート層に対して40〜85体積%であり、
前記カール抑制層は、硬化性成分および無機フィラーを含有する組成物を硬化させた材料からなり、
前記基材シートの厚さは、25〜100μmであり、
前記ハードコート層の厚さは、20〜50μmであり、
前記基材シートの厚さに対する前記ハードコート層の厚さの比は、0.2〜2であり、
前記ハードコート層の厚さに対する前記カール抑制層の厚さの比は、0.2〜2である
ことを特徴とするハードコート積層体。
前記ハードコート層用の組成物中の前記硬化性成分および前記カール抑制層用の組成物中の前記硬化性成分がエネルギー線硬化性成分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハードコート積層体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハードコート積層体の断面図である。本実施形態に係るハードコート積層体1は、基材シート2と、基材シートの一方の主面側(
図1における上側)に積層されたハードコート層3と、基材シート2の他方の主面側(
図1における下側)に積層されたカール抑制層4とを備えて構成される。
【0019】
本実施形態に係るハードコート積層体1は、ハードコート層3が、硬化性成分および無機フィラーを含有する組成物を硬化させた材料からなり、カール抑制層4が、硬化性成分を含有する組成物を硬化させた材料からなり、基材シート2の厚さが25〜100μmであり、ハードコート層4の厚さが20〜50μmであり、基材シート2の厚さに対するハードコート層3の厚さの比が0.2〜2であり、ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比が0.2〜2であるものである。
【0020】
本実施形態に係るハードコート積層体は、上記の構成を備えることにより、表面硬度が高く、かつカールが抑制されたものとなる。
【0021】
(1)基材シート
本実施形態に係るハードコート積層体1の基材シート2は、ハードコート積層体1の用途に応じて適宜選択すればよいが、ハードコート層3およびカール抑制層4との親和性の良好な樹脂フィルムを用いることが好ましい。基材シート2に樹脂フィルムを用いることで、本実施形態に係るハードコート積層体1は耐屈曲性に優れたものとなり、巻取体の状態での運搬・保管や、巻取体から繰り出されての加工(例えば、ロール・トゥ・ロールでの加工等)等、ハードコート積層体1の取扱いが容易になる。また、樹脂フィルムとして透明樹脂フィルムを用いた場合には、本実施形態に係るハードコート積層体1を光学用途に用いることができるため、特に好ましい。
【0022】
かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等の樹脂フィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、ハードコート積層体1としたときに高い硬度が得られ易く、また透明性に優れる等の理由から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が好ましい。
【0023】
また、上記基材シート2においては、その表面に設けられる層(ハードコート層3やカール抑制層4等)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材シート2の種類に応じて適宜選ばれる。一例として、プライマー処理により易接着層を形成した樹脂フィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0024】
基材シート2の厚さは、25〜100μmであり、好ましくは35〜100μmであり、特に好ましくは35〜75μmであり、さらに好ましくは50〜75μmである。基材シート2の厚さが25μm以上であることで、ハードコート積層体1としたときに高い硬度が得られる。また、基材シート2の厚さが25μm以上であると、各種ディスプレイ等の製造において本実施形態に係るハードコート積層体1を他の部材(被着体)に貼着したときに、被着体の凹凸を吸収し、ディスプレイの表面(本実施形態に係るハードコート積層体1の表面)を平坦なものとすることができる。一方、基材シート2の厚さが100μm以下であることで、本実施形態に係るハードコート積層体1が十分な耐屈曲性を有し取扱いが容易になる。
【0025】
(2)ハードコート層
本実施形態に係るハードコート積層体1のハードコート層3は、基材シート2の一方の主面側(
図1における上側)に積層され、ハードコート積層体1に高い表面硬度を付与する。
【0026】
本実施形態に係るハードコート積層体1のハードコート層3は、硬化性成分および無機フィラーを含有する組成物(以下、これを「ハードコート層用組成物」ということがある。)を硬化させた材料からなるものである。
【0027】
(2−1)硬化性成分
硬化性成分としては、エネルギー線硬化性成分、熱硬化性成分等を用いることができるが、エネルギー線硬化性成分であることが好ましい。
【0028】
エネルギー線硬化性成分としては、特に限定されるものではなく、高硬度化等のハードコート層3に付与すべき性能に応じたものを適宜選択すればよい。ここで、エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線等が挙げられる。エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0029】
具体的なエネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、エネルギー線硬化性を有するポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0030】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。
【0032】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0033】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0034】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0035】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0036】
以上のプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
エネルギー線硬化性成分としてエネルギー線硬化性を有するポリマーを使用する場合、当該ポリマーとしては、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下「エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)」という。)を使用することができる。エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものが好ましい。
【0038】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含有する。
【0039】
アクリル系共重合体(a1)が構成単位として含有する官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物またはカルボキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
【0040】
このような官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
アクリル系共重合体(a1)が構成単位として含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0042】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜90質量%の割合で含有してなる。
【0043】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0044】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはアジリジニル基、エポキシ基またはオキサゾリン基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。このような置換基は、不飽和基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
【0045】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線硬化性の不飽和基(炭素−炭素二重結合)が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0046】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常20〜100当量、好ましくは40〜100当量、特に好ましくは60〜100当量の割合で用いられる。
【0047】
エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、アクリル系共重合体(a1)と、不飽和基含有化合物(a2)とを、有機溶媒中にて常法で反応させることにより得られる。エネルギー線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜100,000であることが好ましく、特に20,000〜80,000であることが好ましく、さらには30,000〜60,000であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0048】
また、硬化性成分として熱硬化性成分を用いる場合、使用し得る熱硬化性成分としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、シアネート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(熱硬化性PPE)、ホルムアルデヒド系樹脂、不飽和ポリエステルまたはこれらの共重合体等が挙げられるが、中でも、エポキシ系樹脂が好ましい。
【0049】
本実施形態のハードコート層3を構成する硬化性成分は、硬化後のガラス転移点が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、ガラス転移点が観測されないものであることが特に好ましい。ここで、タッチパネルの製造においては、ハードコート積層体1が加熱される工程が含まれることがあり、この場合ハードコート積層体1の熱収縮が問題になるが、ガラス転移点が上記の条件を満たす硬化性成分を用いることにより、ハードコート層3が耐熱性においても優れたものとなり、ハードコート積層体1に優れた耐熱性を付与することができる。
【0050】
(2−2)無機フィラー
本実施形態のハードコート層3を構成するハードコート層用組成物は、前述した硬化性成分に加えて無機フィラーを含有する。無機フィラーを含有させることで、本実施形態のハードコート層3に高い表面硬度が付与される。
【0051】
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ベーマイト、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、ベーマイト、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましく、シリカ、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムがさらに好ましい。特に、シリカは光透過性を有するため、本実施形態に係るハードコート積層体1を光学用途に用いる場合に好適に使用することができる。
【0052】
また、無機フィラーは、表面修飾されていることが好ましい。このような特に好ましい無機フィラーとして、反応性シリカを例示することができる。
【0053】
本明細書において「反応性シリカ」とは、エネルギー線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子をいう。上記エネルギー線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(反応性シリカ)は、例えば、通常、平均粒径0.5〜500nm程度、好ましくは平均粒径1〜200nmのシリカ微粒子表面のシラノール基に、当該シラノール基と反応し得る官能基である(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。
【0054】
シラノール基と反応し得る官能基を有するエネルギー線硬化性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2はハロゲン原子、
【化2】
で示される基である。)
で表される化合物等が好ましく用いられる。
【0055】
このような化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−イミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸誘導体を用いることができる。これらの(メタ)アクリル酸誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
このような反応性シリカ(エネルギー線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子)と、前述した多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーとを含有する有機無機ハイブリッド材料としては、例えば商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」、「オプスターZ7537」(以上、JSR社製)等を使用することができる。
【0057】
本実施形態において用いる無機フィラーは、平均粒径が1〜200nmであることが好ましく、10〜200nmであることが特に好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。無機フィラーの平均粒径が1nm以上であることで、ハードコート層用組成物を硬化させたハードコート層3が、より高い表面硬度を有するものとなる。また、無機フィラーの平均粒径が200nm以下であると、得られるハードコート層3において光の散乱が発生しにくくなり、ハードコート層3の透明性が高くなる。そのため、このようなハードコート層3と、基材シート2として前述した透明樹脂フィルムとを併用することで、本実施形態に係るハードコート積層体1が透明性の高いものとなり、光学用途に特に好適に用いることができる。なお、無機フィラーの平均粒径は、ゼータ電位測定法によって測定したものとする。
【0058】
本実施形態のハードコート層3における無機フィラーの含有量は、ハードコート層3に対して10〜85体積%であることが好ましく、20〜80体積%であることが特に好ましく、40〜70体積%であることがさらに好ましく、45〜65体積%であることが最も好ましい。無機フィラーの含有量が10体積%以上であることで、ハードコート層3に付与される表面硬度がより高いものとなる。一方、無機フィラーの含有量が85体積%以下であることで、ハードコート層用組成物を用いた層形成が容易になる。
【0059】
なお、本明細書における無機フィラーの含有量は、次のようにして求めるものとする。JIS 7250−1に従い有機成分を燃焼し、得られる灰分から無機フィラーの質量%を求め、さらにJIS Z8807に従い無機フィラーの真密度を求める。その後、耐熱層3の密度をJIS Z8807から求め、無機フィラーの質量%、無機フィラーの真密度及び耐熱層3の密度の測定値から、無機フィラーの体積%を求める。
【0060】
(2−3)その他の成分
本実施形態のハードコート層3を構成するハードコート層用組成物は、前述した硬化性成分および無機フィラー以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、光重合開始剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0061】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ハードコート層用組成物中における光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化性成分100質量部に対して通常0.2〜20質量部の範囲で選ばれる。
【0062】
(2−4)ハードコート層の物性
ハードコート層3の厚さは、20〜50μmであり、好ましくは25〜50μmである。ハードコート層3の厚さが20μm以上であることで、本実施形態に係るハードコート積層体1に十分な表面硬度が付与される。一方、ハードコート層の厚さが50μm以下であることで、ハードコート積層体1が耐屈曲性に優れ取り扱いが容易になるほか、ハードコート積層体1が不要に厚くなったり、製造コストが増加したりするのを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態のハードコート積層体1においては、基材シート2の厚さに対するハードコート層3の厚さの比が0.2〜2であり、好ましくは0.25〜1.5であり、特に好ましくは0.25〜1であり、さらに好ましくは0.5〜1である。基材シート2の厚さに対するハードコート層3の厚さの比が0.2以上であることで、本実施形態に係るハードコート積層体1に十分な表面硬度が付与される。一方、上記厚さの比が2以下であることで、ハードコート積層体1が耐屈曲性に優れたものとなり、取り扱いが容易になる。
【0064】
ハードコート層3のJIS K5600−5−4に準拠して測定される鉛筆硬度は、5H以上であることが好ましく、6H以上であることが特に好ましく、8H以上であることがさらに好ましい。ハードコート層3がかかる条件を満たすハードコート積層体1は、非常に高い表面硬度を有し、耐擦傷性に優れたものとなる。
【0065】
(3)カール抑制層
本実施形態に係るハードコート積層体1のカール抑制層4は、基材シート2の他方の主面(ハードコート層3が積層された面とは反対側の面)の側(
図1における下側)に積層されることで、当該カール抑制層4の硬化収縮によりハードコート層3の硬化収縮を相殺し、ハードコート積層体1のカールを抑制する。
【0066】
本実施形態に係るハードコート積層体1のカール抑制層4は、硬化性成分を含有する組成物(以下、これを「カール抑制層用組成物」ということがある。)を硬化させた材料からなるものである。
【0067】
カール抑制層用組成物の硬化性成分としては、カール抑制層4に付与すべき性能に応じたものを適宜選択すればよいが、特にカールの抑制等の観点から、ハードコート層3と同程度の硬化収縮率を有する硬化性成分を選択することが好ましい。具体的な硬化性成分としては、前述したハードコート層用組成物で用いる成分と同様のものを使用することができる。
【0068】
また、カール抑制層用組成物は、硬化性成分以外に、無機フィラーを含有することが好ましい。ここで、カール抑制層用組成物に用いる無機フィラーとしては、ハードコート層用組成物で用いるものと同様のものとすることが好ましく、また、カール抑制層用組成物における無機フィラーの含有量は、ハードコート層用組成物と同程度にすることが好ましい。カール抑制層用組成物がこのように無機フィラーを含有することで、カール抑制層4の硬化収縮とハードコート層3の硬化収縮とが同程度になり、ハードコート積層体1のカールがより効果的に抑制される。
【0069】
さらに、カール抑制層用組成物は、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、前述したハードコート層用組成物で用いる添加剤と同様のものを使用することができる。
【0070】
カール抑制層用組成物は、前述したハードコート層用組成物と同一のものとすることが好ましい。カール抑制層用組成物とハードコート層用組成物とを同一にすることで、カール抑制層4の硬化収縮とハードコート層3の硬化収縮とが同程度になり、ハードコート積層体1のカールがより効果的に抑制される。
【0071】
本実施形態のハードコート積層体1において、ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比は、0.2〜2であり、好ましくは0.2〜1であり、特に好ましくは0.3〜0.8であり、さらに好ましくは0.5〜0.8である。ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比が0.2〜2であることで、ハードコート層3による硬化収縮とカール抑制層4による硬化収縮とが相殺され、本実施形態に係るハードコート積層体1のカールが抑制される。
【0072】
より具体的には、カール抑制層4の厚さは、4〜100μmであることが好ましく、5〜100μmであることが特に好ましく、20〜50μmであることがさらに好ましく、25〜50μmであることが最も好ましい。カール抑制層4の厚さが上記範囲にあることで、ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比が前述した条件を満たしやすくなり、本実施形態に係るハードコート積層体1のカールがより効果的に抑制される。
【0073】
(4)ハードコート積層体の物性
本実施形態に係るハードコート積層体1は、縦10cm、横10cmの寸法において、四隅の反りの高さの合計値が、5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることが特に好ましく、1cm以下であることが最も好ましい。かかる条件を満たすハードコート積層体1は、反り(カール)が抑制されたものとなる。なお、具体的な測定方法の詳細は、後述する試験例にて示す。
【0074】
また、本実施形態に係るハードコート積層体1は、JIS K5600−5−1に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、割れの起こらない最小のマンドレル直径が32mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。かかる条件を満たすハードコート積層体1は、巻取体への巻収や巻取体からの繰出し等においても割れや剥がれが発生しにくく、耐屈曲性に非常に優れたものとなり、取り扱いが容易になる。
【0075】
本実施形態に係るハードコート積層体1のヘーズ値は、3.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることが特に好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が3.0%以下であると、透明性が高く、本実施形態に係るハードコート積層体1が光学用途として好適なものとなる。なお、ヘーズ値は、日本電色工業社製のヘーズメーター「NDH5000」を使用し、JIS K7136−2000に準拠して測定した値とする。
【0076】
(5)ハードコート積層体1の製造方法
本実施形態に係るハードコート積層体1は、例えば、前述した基材シート2の一方の面にハードコート層用組成物を、また他方の面にカール抑制層用組成物を、それぞれ塗布または貼合し、これらを硬化させてハードコート層3およびカール抑制層4を形成することにより得られる。以下、ハードコート層用組成物およびカール抑制層用組成物が、硬化性成分としてエネルギー線硬化性成分を含有する場合について説明する。なお、硬化前のハードコート層用組成物およびカール抑制層用組成物の層は、基本的には塗膜によって構成されるため、以下主として「塗膜」という。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
本実施形態に係るハードコート積層体1の具体的な製造方法としては、以下に説明する2通りを挙げることができるが、これらの方法に限定されない。
【0078】
第1の方法は、基材シート2の一方の面に塗布または貼合したハードコート層用組成物の層の塗膜と、基材シート2の他方の面に塗布または貼合したカール抑制層用組成物の層の塗膜とを一度に硬化させ、それぞれハードコート層3およびカール抑制層4とする方法である。その一例として、まず、基材シート2の一方の面にハードコート層用組成物からなる第1の塗膜(硬化後にハードコート層3となる層)を形成し、当該第1の塗膜における基材シート2とは反対側の面に、さらにカバーシートを積層することにより、基材シート/第1の塗膜/カバーシートからなる積層体を作製する。このとき、カバーシートに第1の塗膜を形成し、そのカバーシート付きの第1の塗膜を基材シート2の一方の面に貼合してもよい。なお、カバーシートとしては、上記で樹脂フィルムとして例示したものを使用することができる。
【0079】
ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜は、エネルギー線硬化性成分、無機フィラーその他のハードコート層用組成物を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、これを基材シート2またはカバーシートに塗布し、乾燥させることにより形成される。塗布剤の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、マイヤーバー法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。乾燥は、例えば80〜150℃で30秒〜5分程度加熱することによって行うことができる。
【0080】
続いて、上記積層体における基材シート2の他方の面(基材シート2が露出している面)に、カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜(硬化後にカール抑制層4となる層)を形成し、当該第2の塗膜における基材シート2とは反対側の面(
図1では下側の面)に、さらにカバーシートを積層する。このとき、カバーシートに第2の塗膜を形成し、そのカバーシート付きの第2の塗膜を基材シート2の他方の面に貼合してもよい。
【0081】
カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜は、エネルギー線硬化性成分その他のカール抑制層用組成物を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、これを基材シート2またはカバーシートに塗布し、乾燥させることにより形成される。塗布や乾燥などの工程は、ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜を形成する場合と同様に行えばよい。
【0082】
得られたカバーシート/第1の塗膜/基材シート2/第2の塗膜/カバーシートからなる積層体に、一方または両方の主面側からエネルギー線を照射して、ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜と、カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜とを硬化させ、それぞれハードコート層3およびカール抑制層4とする。
【0083】
第1および第2の塗膜の硬化(ハードコート層3およびカール抑制層4の形成)は、これらの塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行う。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0084】
上記のようにして、ハードコート層3のさらに外側にカバーシートが積層され、かつカール抑制層4のさらに外側にカバーシートが積層された状態で、本実施形態に係るハードコート積層体1を得ることができる。
【0085】
なお、前述した方法において、ハードコート層用組成物とカール抑制層用組成物とを入れ替えてもよい。すなわち、先にカール抑制層用組成物からなる第1の塗膜を形成し、次にハードコート層用組成物からなる第2の塗膜を形成し、その後にこれらを硬化させてハードコート積層体1を作製してもよい。
【0086】
ここで、カバーシートは、製造工程における積層体の支持や、エネルギー線硬化反応を阻害する空気中の酸素をハードコート層用組成物の塗膜から遮断する等の目的で用いられるものであり、ハードコート積層体1の使用時には除去されるものである。なお、上記第2の塗膜側のカバーシートは省略が可能であり、その場合には、酸素濃度の低い雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)にて硬化処理を行うことが好ましい。
【0087】
第2の方法は、基材シート2の一方の面に塗布または貼合したハードコート層用組成物の塗膜と、基材シート2の他方の面に塗布または貼合したカール抑制層用組成物の塗膜とを、別々の工程により硬化させ、それぞれハードコート層3およびカール抑制層4を形成する方法である。
【0088】
その一例として、まず第1の工程として、基材シート2の一方の主面側に、ハードコート層3を形成する。具体的には、前述した第1の方法と同様にして、基材シート/ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜/カバーシートからなる積層体を作製する。得られた積層体に、一方または両方の主面側からエネルギー線を照射して、ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜を硬化させ、ハードコート層3とする。
【0089】
続いて、得られた積層体に対し、第2の工程として、基材シート2の他方の面(基材シート2が露出している面)に、カール抑制層4を形成する。具体的には、ハードコート層3を形成した上記積層体における基材シート2が露出している面に、カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜、およびカバーシートを積層する。第2の塗膜は、基材シート2に直接塗布して形成してもよいし、カバーシートに塗布して形成したものを基材シート2に貼合してもよい。
【0090】
得られた積層体に、一方または両方の主面側からエネルギー線を照射して、カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜を硬化させ、カール抑制層4とする。これにより、ハードコート層3のさらに外側にカバーシートが積層され、かつカール抑制層4のさらに外側にカバーシートが積層された状態で、本実施形態に係るハードコート積層体1を得ることができる。
【0091】
なお、第2の方法において、ハードコート層用組成物とカール抑制層用組成物とを入れ替えてもよい。すなわち、第1の工程において、基材シート2の一方の面にカール抑制層用組成物からなる第1の塗膜を形成し、当該第1の塗膜を硬化させてカール抑制層4とする。続けて、第2の工程において、基材シート2の他方の面(基材シート2が露出している面)に、ハードコート層用組成物からなる第2の塗膜を形成しこれを硬化させてハードコート層とする。このようにしてハードコート積層体1を作製してもよい。
【0092】
また、第2の方法において、上記2つのカバーシートの一方又は両方は省略が可能であり、その場合には、酸素濃度の低い雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)にて硬化処理を行うことが好ましい。
【0093】
以上述べた方法によれば、本実施形態に係るハードコート積層体1を製造することができるが、中でも第1の方法が好ましく、特に、第1の方法において、ハードコート層用組成物からなる第1の塗膜と、カール抑制層用組成物からなる第2の塗膜とを形成し、エネルギー線を照射してハードコート層3およびカール抑制層4を形成する方法が好ましい。
【0094】
(6)ハードコート積層体1の用途
本実施形態に係るハードコート積層体1の用途は、高い表面硬度とカール抑制との両立が要求される用途に好ましく使用できる。特に、ハードコート積層体1のヘーズ値が小さい等の透明性を有する場合には、光学部材、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OELD)、さらにはタッチパネル等の各種ディスプレイの表層として使用することができる。中でも、本実施形態に係るハードコート積層体1は高い表面硬度を有するため、タッチパネルの表層として特に好適である。
【0095】
なお、本実施形態に係るハードコート積層体1には、粘接着剤層、バリア層、導電層、低反射層、易印刷層、防汚層などが積層されてもよい。
【0096】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0097】
例えば、ハードコート積層体1における基材シート2とハードコート層3および/またはカール抑制層4との間には、他の層が介在してもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0099】
〔実施例1〕
ハードコート層用組成物(JSR社製,商品名「オプスターZ7530」,エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(密度:1.25g/cm
3)と無機フィラーとしての反応性シリカ(密度:2.1g/cm
3)とを質量比40:60で含有,無機フィラーの含有量:49体積%,光重合開始剤:3質量%,固形分濃度:73質量%,溶媒:メチルエチルケトン)を、基材シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET25A4300」,厚さ:25μm)の片面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにダイコーターにて塗布したのち、80℃で1分間処理してハードコート層用組成物の塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜にカバーシート(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET38A4100」)を貼り合せたのち、得られた積層体のカバーシート側から紫外線(UV)照射(照度:230mW/cm
2,光量:190mJ/cm
2)を行い、ハードコート層用組成物を硬化させてハードコート層(厚さ:25μm)を形成した。
【0100】
続けて、得られた積層体のうちカバーシートを貼り合わせていない面(基材シートが露出している面)に、カール抑制層用組成物(JSR社製,商品名「オプスターZ7530」,前述したハードコート層用組成物と同一)を、乾燥後の厚さが25μmになるようにダイコーターにて塗布したのち、80℃で1分間処理してカール抑制層用組成物の塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜にカバーシート(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET38A4300」)を貼り合せたのち、得られた積層体の当該カバーシート側からUV照射(照度:230mW/cm
2,光量:190mJ/cm
2)を行い、カール抑制層用組成物を硬化させてカール抑制層(厚さ:25μm)を形成した。このようにして、カバーシート/ハードコート層/基材シート/カール抑制層/カバーシートからなる積層体、すなわちハードコート層およびカール抑制層の外側にそれぞれカバーシートが積層された状態のハードコート積層体を得た。
【0101】
〔実施例2〜8,比較例1〜4〕
基材シートとして表1に示す厚さのPETフィルムを用い、ハードコート層の厚さおよびカール抑制層の厚さが、表1に示す値となるように変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0102】
〔実施例9〕
カール抑制層用組成物として、エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製)100質量部と、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,商品名「イルガキュア184」)2.5質量部との混合物を用い、基材シートとして厚さ50μmのPETフィルムを用い、かつ、カール抑制層の厚さが5μmとなるように変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0103】
〔実施例10,比較例5〕
カール抑制層の厚さが、表1に示す値となるように変更する以外は、実施例9と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0104】
〔比較例6〕
ハードコート層用組成物およびカール抑制層用組成物として、エネルギー線硬化性成分としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製)100質量部と、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,商品名「イルガキュア184」)2.5質量部との混合物を用い、基材シートとして厚さ100μmのPETフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0105】
〔試験例1〕(鉛筆硬度の測定)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体から2枚のカバーシートを剥離し、ハードコート層の面を露出させてガラス板上に固定した。露出したハードコート面について、JIS K 5600−5−4に準じ、鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553−M」)を用いて、鉛筆硬度を測定した。引っかき速度は、1mm/秒とした。結果を表1に示す。また、鉛筆硬度が5H以上のものを良好(○)、4H以下のものを不良(×)として評価した。結果を表1に示す。
【0106】
〔試験例2〕(カール量の測定)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体を、縦10cm、横10cmとなるように裁断し、カバーシートを除去して試験片とした。得られた試験片を、23℃、50%RHの雰囲気下で、四隅のテーブル面からの垂直距離(cm)を測定し、4箇所の各距離の合計値をカール量(cm)とした。結果を表1に示す。また、カール量が5cm以下のものを良好(○)、5cm超のものを不良(×)として評価した。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1から明らかなように、実施例で得られたハードコート積層体は、高い表面硬度を有しており、かつカールが抑制されていた。これに対し、比較例1〜3で得られたハードコート積層体は表面硬度に劣るものであり、比較例4〜5で得られたハードコート積層体はカールの程度が顕著であった。さらに、比較例6で得られたハードコート積層体は、表面硬度に劣り、かつカールの程度が顕著なものであった。