(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097841
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】駐車ブレーキを有するディスク・ブレーキ及びその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20170306BHJP
F16D 55/28 20060101ALI20170306BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20170306BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20170306BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20170306BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20170306BHJP
F16D 125/48 20120101ALN20170306BHJP
【FI】
F16D65/18
F16D55/28 Z
B60T13/74 G
F16D121:04
F16D121:24
F16D125:40
F16D125:48
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-546052(P2015-546052)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2015-537175(P2015-537175A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013076010
(87)【国際公開番号】WO2014090763
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】1261935
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513084458
【氏名又は名称】シャシー・ブレークス・インターナショナル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キアン、ナン
(72)【発明者】
【氏名】ブルロン、フィリップ
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0278107(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102008062180(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010039441(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
B60T 13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に配向された前方横断壁、及び、後方部に向かって軸線方向に延在する側方の円柱形の管壁を含む、少なくとも1つのディスク・ブレーキ・パッドを動作させるように構成されたブレーキ・ピストンと、
後方部から前方部へ、前記ブレーキ・ピストンに軸線方向のスラストを与えるためのナット−スクリュー・ユニットと、を含む装置であって、前記ナット−スクリュー・ユニットは、
前記ブレーキ・ピストンの内部に配置されるナットであって、前記ナットは、前記ブレーキ・ピストンに対して回転しないようにするために固定され、前記ナットは、前記ブレーキ・ピストン内で軸線方向に摺動するように取り付けられ、前記ナットの前方軸線方向端面は、前記ブレーキ・ピストンの前記前方壁と相対する内側セクションと相互に作用し、前記ナット−スクリュー・ユニットのスクリューが取り外し方向に回転するように駆動されるとき、前方部に向けて軸線方向に前記ブレーキ・ピストンを押し動かす、ナットと、
前記ナットの中へねじ込まれて取り付けられる前方セクション、後方横断面によって境界が定められる中間径方向フランジ、及び、後方セクションを含むスクリューと、
を含む、装置において、
前記ブレーキ・ピストン及び前記スクリューは、2つの芯合わせ部分を含む芯合わせ手段を含み、前記スクリューが、前記ナット及び前記ブレーキ・ピストンに対して、所定の前方軸線方向取り付け位置にあるときに、前記2つの芯合わせ部分が互いに相互作用し、前記ブレーキ・ピストンに対して径方向に前記スクリューの前記後方セクションを芯合わせするようになっており、前記2つの芯合わせ部分は、前記中間径方向フランジの前方の前向きに突き出た補助的部分と、前記ブレーキ・ピストンの後方の内向きに突き出た補助的部分とを含み、前記ブレーキ・ピストンの後方の内向きに突き出た補助的部分は、前記ブレーキ・ピストンの前記側方壁の後方軸線方向の横断先端面において配置されている、装置。
【請求項2】
前記補助的部分は切頭円錐である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記補助的部分は切頭球である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記補助的部分は切頭円柱である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、前記ナットに対して前記スクリューの前記軸線方向の取り付け位置を決定するように構成された当接手段をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記当接手段は、前記ナットに対して前記スクリューのねじ込みの最大角度位置を決定する角度方向当接手段である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記角度方向当接手段は、前記中間径方向フランジのフィンガーと、前記ナットの前記後方軸線方向先端部において形成された補助的なノッチとを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキであって、前記ディスク・ブレーキは、少なくとも1つの後方ハウジングを含み、前記後方ハウジング内に、円柱形のキャビティーが形成されており、前記キャビティーは、前方部に向かって軸線方向に開口しており、径方向に配向された横断底部壁によって、後方部に向けて軸線方向に境界が定められている、ディスク・ブレーキにおいて、
前記キャビティーは、請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置を収容しており、前記装置の前記ブレーキ・ピストンは、前記キャビティーの孔の中で密封状態で摺動するように取り付けられており、前記ハウジングの前記底部壁は、前記スクリューの後方セクションを回転可能にガイドするように構成された横貫開口部を含む、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキ。
【請求項9】
前記ディスク・ブレーキは、軸線方向ガイドリングをさらに含み、前記軸線方向ガイドリングは、横貫開口部と、前記スクリューの前記後方セクションとの間で径方向に介在させられ、低摩擦係数を有する材料から作製される、請求項8に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項10】
前記ディスク・ブレーキは、環状シールをさらに含み、前記環状シールは、前記横貫開口部と、前記スクリューの前記後方セクションとの間で径方向に介在させられる、請求項8又は9に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項11】
前記ディスク・ブレーキは、軸受をさらに含み、前記軸受は、前記スクリューの前記中間径方向フランジの後方横断面と、前記キャビティーの前記底部壁と相対する内側セクションとの間で軸線方向に介在させられる、請求項8から10までのいずれか一項に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項12】
電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキを取り付ける方法であって、前記方法は、
前記ディスク・ブレーキを提供するステップであって、前記ディスク・ブレーキは、後方ハウジングを含み、前記後方ハウジング内に、円柱形のキャビティーが形成されており、前記キャビティーは、前方部に向かって軸線方向に開口しており、前記キャビティーは、前記キャビティーの孔の中で密封状態で摺動するように取り付けられたブレーキ・ピストンを含む装置を収容し、また、後方部から前方部へ前記ブレーキ・ピストンに軸線方向のスラストを与えるように構成されたナット−スクリュー・ユニットを収容し、前記ブレーキ・ピストン及び前記スクリューは、2つの芯合わせ部分を含む芯合わせ手段を含み、前記ナット及び前記ブレーキ・ピストンに対して、所定の前方軸線方向取り付け位置に前記スクリューがあるとき、前記2つの芯合わせ部分が互いに相互作用し、前記ブレーキ・ピストンに対して径方向に前記スクリューの前記後方セクションを芯合わせするようになっており、前記2つの芯合わせ部分は、前記中間径方向フランジの前方の前向きに突き出た補助的部分と、前記ブレーキ・ピストンの後方の内向きに突き出た補助的部分とを含み、前記ピストンの後方の内向きに突き出た補助的部分は、前記ブレーキ・ピストンの前記側方壁の後方軸線方向の横断先端面において配置されている、ステップと、
前記装置を形成するために、前記ブレーキ・ピストン、前記ナット及び前記スクリューを組み立てるステップと、
前記ブレーキ・ピストンに対して径方向に前記スクリューの前記後方セクションを芯合わせするために、前記軸方向取り付け位置において、前記ナット及び前記ブレーキ・ピストンに対して前記スクリューの軸線方向位置を調節するステップと、
前記ハウジングの前記キャビティー内へ、前方部から後方部へ、先に調節した装置を軸線方向に導入するステップと、
前記ハウジングに対して前記スクリューの前記後方セクションを軸線方向に固定するステップと、
前記ナットに対して前記スクリューを取り外される方向に回すステップと、
を含む、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキを取り付ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を対象とし、電気機械的に動作する駐車ブレーキ又は「駐車」用ブレーキを含む、油圧動作式ディスク・ブレーキに関する。
【0002】
本発明は、特に、少なくとも1つのディスク・ブレーキ・パッドを動作させるための油圧ブレーキ・ピストンと、このピストンに機械的に軸線方向にスラストを与えるためのナット−スクリュー・ユニットとを含む装置に関する。
【0003】
本発明は、さらに、ディスク・ブレーキ・キャリパーにその装置を取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電気機械的な駐車ブレーキを含む、油圧制御式のディスク・ブレーキの一般的な構造は、特に、欧州特許第2174037号又は米国特許第7721853号から既によく知られている。
【0005】
知られている方法では、ブレーキは、キャリパーを含み、キャリパーは、2つの対向する摺動摩擦パッドを支持及びガイドすることができ、摺動摩擦パッドは、回転ディスクと相互に作用することができる。
【0006】
キャリパーは、後方ハウジングを含み、後方ハウジング内には、油圧ピストンが、軸線方向に摺動するように取り付けられており、油圧ピストンは、関連付けられるディスク・ブレーキ・パッドと相互に作用可能であり、圧力下の流体が油圧チャンバ(ピストンが、キャビティーとともに油圧チャンバの境界を定めており、ピストンは、キャビティーの中に、密封された摺動運動を伴って受け入れられる)に供給されるときに、後方部から前方部へディスク・ブレーキ・パッドに軸線方向スラストを加えるようになっている。
【0007】
ディスク・ブレーキの主要な油圧動作に関わらず、ディスク・ブレーキは、駐車ブレーキとしての動作及び機能のための電気機械的手段も含む。
【0008】
このために、ブレーキは、ナット−スクリューの組み合わせ又はユニットを含み、ナット−スクリューの組み合わせ又はユニットは、ブレーキ・ピストンの中に、また、ピストンを受け入れるためのキャビティーの中に配置されており、ブレーキは、一方では、ナット−スクリュー・ユニットのスクリューを両方向に回転するように駆動させるための電気ギヤード・モータ組立体を含む。
【0009】
ナットは、ピストンの内部に収容され、ピストンに対して回転しないようにするために固定され、ピストンの内側において軸線方向に摺動するように取り付けられる。
【0010】
ナットの前方軸線方向端面は、ピストンの前方径方向壁と相対する内側セクションと相互に作用し、内側セクションを前方部に向けて軸線方向に押し動かすようになっている。
【0011】
このために、スクリューは、ナットの中へねじ込むことによって取り付けられる前方セクションと、中間径方向フランジと、特に、スクリューを回転するように駆動させるためのヘッドを構成する自由先端部を有する後方セクションとを含む。
【0012】
知られている方法で、スクリューは、キャリパー用のハウジングの中に形成されるキャビティーの横断底部壁に対して軸線方向に固定され、スクリューは、この壁に対して回転するようにガイドされる。
【0013】
このために、スクリューの後方セクションは、底部壁における横貫開口部を通り、その中で、密封状態で回転可能にガイドされる。
【0014】
中間フランジの横断後方面は、軸受を介在させて、キャビティーの底部壁の内面に形成された径方向当接シート部に対して軸線方向に当接し、底部壁を越えて軸線方向に突出する後方セクションの後方自由先端部は、例えば、スクリューの補助的な径方向溝に適合させた弾性分割リングによって軸線方向に固定される。
【0015】
よって、中間フランジの横断後方面は、負荷を受けているスクリューの軸線方向当接面を構成する機能的な平面機械加工面である。
【0016】
駐車機能におけるブレーキの動作は、ナット及びピストンに対して回転するように、例えば、取り外し方向に、スクリューを駆動させることによって得られ、ナット及びピストンは、キャリパーに対する回転に対して固定され、ナットの前方部に向かって軸線方向の運動がもたらされるようになっており、その結果、ナットは、関連付けられる前方ピストンに向かって押し進む。
【0017】
スクリューの後方セクションの回転時の密封状態のガイドと、そのために、ブレーキ・ピストンを制御するための、油圧チャンバ後方部に向けての油圧的な気密性とを確実にもたらすために、スクリューの後方セクションのガイド穴とスクリューとの間に径方向に介在させられた環状シールが設けられる。
【0018】
ブレーキ・ピストン及びナット−スクリュー・ユニットによって構成された装置の組み立ては、特に工業生産において自動化されるように、キャリパーの後方ハウジングの中のキャビティー内へ、前方部から後方部へ、この装置を軸線方向に導入することによって行われる。
【0019】
この装置は、特に、ピストンに対して後方部に向かって軸線方向に突出するスクリューの後方端セクションを含み、キャビティーの底部壁におけるガイド穴内に、特に環状シールを通して導入されなければならない。
【0020】
知られている種々の設計によると、ピストンに対する、したがってキャビティーに対するスクリューの後方セクションの径方向における横断位置は、設計の結果として、及び、特に、機械的なスラスト付与手段の機能のために必要なクリアランスの結果として、不確定となる。
【0021】
スクリューの後方セクションの後方先端部の横断面が、キャビティーの底部と相対する部分に対して当接するとき、また、例えば、底部壁の機械加工された内面に対して当接し、又は、さらに場合により、環状シールに対して当接するとき、取り付け困難が結果として生じるか、又は、さらには取り付け不可能となる。
【0022】
この取り付け不可能な状態に加えて、そのように接触することになることは、スクリューの後方セクション、壁と相対する部分、接合部、又は、場合により、さらには、ガイド穴とスクリューの後方セクションとの間で径方向に介在させられた、スクリューをガイドするための軸線方向リングを損傷させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】欧州特許第2174037号
【特許文献2】米国特許第7721853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、この問題に対する解決策を提供すること、及び、先述した欠点に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的を達成するために、本発明は、
−径方向に配向された前方横断壁、及び、後方部に向かって軸線方向に延在する側方の円柱形の管壁を含む少なくとも1つのディスク・ブレーキ・パッドを動作させるためのブレーキ・ピストンと、
−後方部から前方部へ、ピストンに軸線方向のスラストを与えるためのナット−スクリュー・ユニットと、を含む装置であって、ナット−スクリュー・ユニットは、
−ピストンの内部に配置されるナットであって、ナットは、ピストンに対して回転しないようにするために固定され、ナットは、ピストン内で軸線方向に摺動するように取り付けられ、ナットの前方軸線方向端面は、ピストンの前方壁と相対する内側セクションと相互に作用し、スクリューが取り外し方向に回転するように駆動されるとき、前方部に向けて軸線方向にピストンを押し動かす、ナットと、
−ナットの中へねじ込まれて取り付けられる前方セクション、後方横断面によって境界が定められる中間径方向軸線方向当接フランジ、及び、後方セクションを含むスクリューと、
を含む、装置において、
ピストン及びスクリューは、芯合わせ手段を含み、ナット及びピストンに対してスクリューが所定の前方軸線方向位置(取り付け位置と称される)にあるときに、芯合わせ手段が互いに相互作用し、ピストンに対して径方向にスクリューの後方セクションを芯合わせするようになっていることを特徴とする装置を提案する。
【0026】
装置の他の特性によると、
−芯合わせ手段は、中間フランジの前方凸状部分と、ピストンの補助的な後方凹状部分とを含み、
−補助的部分は切頭円錐であり、
−補助的部分は切頭球であり、
−補助的部分は切頭円柱であり、
−ピストンの後方凹状部分は、ピストンの側方壁の後方軸線方向先端部において形成され、
−装置は、ナットに対してスクリューの軸線方向の取り付け位置を決定する当接手段を含み、
−当接手段は、ナットに対してスクリューのねじ込みの最大角度位置を決定する角度方向当接手段であり、
−角度方向当接手段は、中間フランジのフィンガーと、ナットの後方軸線方向先端部において形成された補助的なノッチとを含む。
【0027】
本発明は、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキであって、ディスク・ブレーキは、少なくとも1つの後方ハウジングを含み、後方ハウジング内に、円柱形のキャビティーが形成されており、キャビティーは、前方部に向かって軸線方向に開口しており、径方向に配向された横断底部壁によって、後方部に向けて軸線方向に境界が定められている、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキにおいて、キャビティーは、本発明による装置を収容しており、この装置のブレーキ・ピストンは、キャビティーの孔の中で密封状態で摺動するように取り付けられており、ハウジングの底部壁は、スクリューの後方セクションを回転可能にガイドするための横貫開口部を含むことを特徴とする、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキも提案する。
【0028】
ディスク・ブレーキの他の特性によると、
−ディスク・ブレーキは、軸線方向ガイドリングを含み、軸線方向ガイドリングは、ガイド穴と、スクリューの後方セクションとの間で径方向に介在させられ、低摩擦係数を有する材料から実現され、
−ディスク・ブレーキは、環状シールを含み、環状シールは、ガイド穴と、スクリューの後方セクションとの間で径方向に介在させられ、
−ディスク・ブレーキは、軸受を含み、軸受はスクリューの中間フランジの後方横断面と、キャビティーの底部壁と相対する内側セクションとの間で軸方向に介在させられる。
【0029】
最後に、本発明は、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキを取り付ける方法であって、ディスク・ブレーキは、後方ハウジングを含み、後方ハウジング内に、円柱形のキャビティーが形成されており、キャビティーは、前方部に向かって軸線方向に開口しており、キャビティーは、キャビティーの孔の中で密封状態で摺動するように取り付けられたブレーキ・ピストンを含む装置を収容し、また、後方部から前方部へブレーキ・ピストンに軸線方向のスラストを与えるためのナット−スクリュー・ユニットを収容し、ピストン及びスクリューは、芯合わせ手段を含み、ナット及びピストンに対して、取り付け位置として知られる所定の前方軸線方向位置にスクリューがあるとき、芯合わせ手段が互いに相互作用し、ピストンに対して径方向にスクリューの後方セクションを芯合わせするようになっている、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキを取り付ける方法において、この方法は、
−前記装置を実現するために、ブレーキ・ピストン、ナット及びスクリューを組み立てるステップと、
−ピストンに対して径方向にスクリューの後方セクションを芯合わせするように、前記軸方向取り付け位置において、ナット及びピストンに対してスクリューの軸線方向位置を調節するステップと、
−ハウジングのキャビティー内へ、前方部から後方部へ、先に調節した装置を軸線方向に導入するステップと、
−ハウジングに対してスクリューの後方セクションを軸線方向に固定するステップと、
−ナットに対してスクリューを取り外される方向に回すステップと、
を含むことを特徴とする、電気機械的駐車ブレーキ用油圧ディスク・ブレーキを取り付ける方法を提案する。
【0030】
本発明の他の特性及び利点は、本発明の例示の実施例の以下の詳細な説明を読むことによって明らかとなるであろうが、そのために、以下の添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による駐車ブレーキ用ディスク・ブレーキの全体斜視図である。
【
図2】
図1と同様の図であって、ディスク・ブレーキの一部が軸平面による断面で図示されている図である。
【
図3】
図1と同様の図であって、分解図においてディスク・ブレーキの主要要素及び構成部品を表す図である。
【
図5】分解斜視図において、装置の3つの主要構成部品が、
図1〜4におけるディスク・ブレーキのピストン及びナット−スクリュー・ユニットを含むことを表す拡大詳細図である。
【
図6】
図5において図示された要素の軸平面を通る、部分的に切り取られた斜視図である。
【
図7】
図5の3つの構成部品の拡大した軸線方向断面の図であり、組み立て位置における図である。
【
図8】
図7と同様の図であって、3つの構成部品が、本発明による取り付け位置として知られる位置において図示されている図である。
【
図9】
図3において図示されたディスク・ブレーキのキャリパーの前方部からの軸線方向端面図である。
【
図10】
図2と同様の軸線方向断面図であって、取り付け位置として知られる位置においてブレーキ・ピストン及びナット−スクリュー・ユニットを含み、ディスク・ブレーキのキャリパーに取り付けられる装置を拡大して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、同一の、類似の、又は、同様の要素及び構成部品は同じ参照符号で表記される。
【0033】
図にはディスク・ブレーキ10が図示されている。ディスク・ブレーキ10は、ここでは、そのブレーキ・パッドなしで図示されており、また、軸線方向変位においてこれらのパッドをガイド及び戻すための関連手段もなしで図示されている。
【0034】
ディスク・ブレーキ10は、基本的に、後方ハウジング14を含むキャリパー12で構成されている。後方ハウジング14の中には、油圧ブレーキ・ピストン16が、後方部から前方部へ、すなわち、軸線Aにしたがって、
図1に示されるように、左から右に向かって軸線方向に摺動するように取り付けられている。
【0035】
例として、このケースのディスク・ブレーキ10は、後方部において、電気モータを有するギヤード・モータ・ユニット18と、減速ギヤとを含み、減速ギヤは、付加的なものであり、このケースでは、軸線方向スクリュー22によってキャリパー12の後方横断面20に据え付けられる。
【0036】
特に
図2及び
図10から認識できるように、後方ハウジング14は、鋳物類、例えば軽合金の鋳造物であり、それは、機械加工された孔25の中の軸線方向の油圧キャビティー24の境界を定める。後方ハウジング14のピストン16は、軸線Aにしたがって軸線方向に両方向に摺動するように取り付けられる。
【0037】
油圧キャビティー24は、横断底部壁26によって、後方部に向けて軸線方向に境界が定められており、横断底部壁26は、径方向に配向され、それは、軸線方向の横貫開口部28によって中央が貫通されている。
【0038】
知られている方法で、(ここでは図示されない)関連付けられるブレーキ・パッドと相互に作用するために、ピストン16がハウジング14から軸線方向に突き出ることができるように、キャビティー24は、前方部に向かって軸線方向に開口する。
【0039】
このために、ブレーキ・ピストン16は、前方横断壁30を含む円柱形カップの概略形態を有する構成要素である。前方横断壁30は、径方向に配向され、それは、側方の円柱形の管壁32によって後方部に向かって軸線方向に延在する。
【0040】
ピストン16の前方壁30の外側横断面34は、(ここでは図示されない)関連付けられるディスク・ブレーキ・パッドと相互に作用することができる。
【0041】
側方の円柱形の管壁32は、後方横断環状面36によって、後方部に向けて境界が定められる。
【0042】
よって、ピストン16は、後方部に向かって軸線方向に開口する内側キャビティー33の境界を定める。
【0043】
ピストン16の側方径方向の外側凸状円柱壁38は、キャビティー24の孔25の中で軸線方向変位にガイドされ、その気密性は、孔25の中の径方向溝40に受け入れられる環状シール(ここでは図示されない)によって確実なものにされ、環状シールは、例えば、四角又は矩形セクションを有する。
【0044】
このケースでは、キャリパー12に対する回転に対してピストン16を固定する手段は、(ここでは図示されない)補助的な手段と相互に作用するピストン16の外面34に形成されるノッチ42を含む。
【0045】
知られている方法で、圧力下の油圧流体をチャンバ24に供給することは、キャリパー12の後方ハウジング14に対してピストン16の前方部に向けて軸線方向のスラストを与えることによって、ブレーキの油圧動作を生じさせる。
【0046】
駐車と称される機能又は「駐車」におけるピストン16の機械的動作のために、ピストン16及びチャンバ24は、軸線方向のスラストを与えるために、後方駆動スクリュー44及び前方ナット46を含むナット−スクリュー・ユニットを収容する。
【0047】
ナット46は、概して管形状を有し、それは、ねじ切り穴48によって、軸線方向におよび中央に横断されている。
【0048】
ナットは、後方横断環状端面51によって、後方部に向けて軸線方向に境界が定められている。
【0049】
ナット46は、その前方先端部付近に、前方部分50を含み、前方部分50は、前方スラスト面52によって境界が定められる、より大きい外径を有し、前方スラスト面52は、切頭球の形態の凸状の回転体プロファイルを呈する。
【0050】
ナット46の前方面52は、このケースでは、ピストン16の相対する内側セクション54と相互に作用することができ、内側セクション54は、軸線Aを中心とした切頭円錐の形の回転体部分である。
【0051】
ピストン16の内部における回転に対してナット46を固定させるために、ナット46は、多角形の輪郭を有する径方向フランジ56を含み、ピストン16の内側キャビティー33は、補助的な凹状の多角形壁58によって境界が定められる。
【0052】
よって、フランジ56は、ピストン16の内部における回転に対して固定されるが、ナット46とともに、キャビティー33内のクリアランスを伴って軸線方向に摺動可能である。
【0053】
ナット46の後方環状端面51は、当接ノッチ60を含み、その機能は下記で説明される。
【0054】
軸線方向にスラストを与えるスクリュー44は、前方部から後方部へ軸線方向に延び、前方セクション62を含み、前方セクション62は、外部にねじ山が付され、軸線方向にスラストを与えるナット46のタッピング48の中へねじ込まれるように取り付けられる。
【0055】
スクリューは、中間当接フランジ64をさらに含み、中間当接フランジ64は、外側に向かって径方向に延在し、径方向に配向された横断当接面65によって後方部に向けて軸線方向に境界が定められる。横断当接面65の面は、機械加工される。
【0056】
最後に、スクリューは、横断面65から後方部に向かって軸線方向に延在する後方セクション66を含み、スクリューの側方の円柱形凸状に機械加工された面68によって境界が定められる。
【0057】
後方セクション66は、その後方先端部付近に、径方向溝70を含む。
【0058】
スクリュー44を2方向に回転可能に駆動させるために、後方セクション66は、駆動ヘッドとしても構成され、そのために、このケースでは、後方セクション66が、内部中空形態72を含み、内部中空形態72は、回転可能に駆動するための補助的な形態の軸を受け入れることができる。
【0059】
スクリュー44の後方セクション66は、キャリパー12のハウジング14に対して回転可能にスクリュー44をガイドするためのセクションであり、そのために、それは、キャリパーの中の軸線方向の穴28の中に回転可能に受けら入れられ、ガイドされる。キャリパーの中で、後方セクション66は、このケースでは、回転可能な様式でガイドするためのリング74を介在させて軸線方向に横断しており、リング74は、低摩擦係数の材料、例えば青銅で実現されている。
【0060】
リング74の機能は、特に、ピストン26のスクリュー44と孔25とを確実に同軸にすることによって、精確な様式で回転可能にスクリュー44の後方セクション66をガイドすること、及び、後方セクション66とハウジング14の底部壁26との間の摩擦を減らすことである。
【0061】
ガイドリング74は、L字形のプロファイルを示しており、それは、横断面76によって、前方部に向けて軸線方向に境界が定められており、環状シール80が、横断面76に対抗して当接しており、環状シール80は、より大きい直径82の横貫開口部28の補完的な前方セクションの中に収容されている。
【0062】
知られている方法で、軸受84(このケースでは、径方向のころ軸受)が、スクリュー44の径方向フランジ64の後方横断面65と、機械加工された内部セクション86との間で軸線方向に介在しており、機械加工された内部セクション86は、ハウジング14の後方底部壁26の内面と相対しており、後方底部壁26は、油圧チャンバ24の境界を軸線方向に定めている。
【0063】
特に
図2及び
図10において認識できるように、ピストン16及びナット−スクリュー・ユニット44、46が取り付け及び組み立てられた位置において、スクリュー44は、弾性分割リング又は「止め輪」88によって、底部壁26に対してクリアランスなしで軸線方向に固定されており、弾性分割リング又は「止め輪」88は、スクリュー44の後方セクション66の溝70の中に受け入れられる。
【0064】
序文で既に説明したように、ナット46を収容するピストン16とスクリュー44とを軸線方向に導入することによって組立て及び取り付けが実現されると、スクリュー44の後方部分が、ピストン16からその後方横断端面36を超えて軸線方向に突出し、セクション66の後方横断端面67は、従来技術によると、孔28及びリング74と軸線方向に完全に整列する可能性が低く、それは、機械加工された内部の面86に対して当接するリスクを冒し、(組立体を詰まらせ、この面86を損傷させるリスクを冒し、)並びに/又は、シール80及び/若しくはリング74に対して当接するリスクを冒し、組立体の動作を詰まらせ、及び/又は、これらの構成要素を損傷させるリスクを冒す。
【0065】
本発明によると、ピストン16に対してスクリュー44を径方向に芯合わせし、したがって、ディスク・ブレーキの取り付け及び組み立て動作中に一時的にピストン16に対するこのセクション66と、スクリュー44とを確実に同軸にするために、ピストンに対してスクリュー44の後方セクション66を芯合わせするための手段が提案される。
【0066】
このために、及び、非限定的な実例として、芯合わせ手段は、補助的な形状の相互作用による芯合わせ手段であり、スクリュー44が、ピストン16に対して所定の前方軸線方向位置(取り付け位置として知られる)を占有するとき、補助的な形状が、互いの間で、スクリューとピストンとの間で相互作用する。
【0067】
図に示される実施例によると、このケースの芯合わせ手段は、スクリュー44の径方向フランジ64の前方凸状部分によって、及び、ピストン16の補助的な後方凹状部分によって構成される。
【0068】
より具体的には、フランジ64の前方横断面は、凸状切頭円錐の形で構成されており、それは、軸線方向にスクリュー44の軸線を中心にした、遠隔の前方部の凸状円錐台状の表面90の境界を定める。
【0069】
補完するように、ピストン16の側方の管壁32の後方環状端面36は、凹状切頭円錐を介して内部に向かって径方向に延在し、凹状切頭円錐は、円錐台状のシート部90の補助的な後方凹状円錐台状の表面92の境界を定める。
【0070】
特に
図8において認識できるように、スクリュー44が、ピストン16に対してその所定の軸線方向取り付け位置にあるとき、凸状90及び凹状92の補助的シート面は、互いに対して軸線方向に当接しており、それらは、ピストン16に対して、フランジ64の径方向の芯合わせ、及び、したがってスクリュー44の径方向の芯合わせを確実に行う。
【0071】
よって、ピストン16のキャビティー33の中に収容されたナット−スクリュー・ユニット44、46とともに、ピストン16を孔25の中へ前方部から後方部へ軸線方向に導入することによって、孔25内で軸線方向変位にピストン16をガイドすることが、同時に、セクション66をリング74と確実に軸線方向に整列させ、リング74は、横貫開口部28に存在しており、したがって、偏心の欠陥がない状態で、底部壁26を通したセクション66の軸線方向の導入を可能にし、特に
図10に示される取り付け及び組み立て位置に到達するようになっている。
【0072】
図8に示される軸線方向取り付け位置を決定するために、及び、特に、ナット46の表面52及びピストン16の表面54を軸線方向に当接させないようにして、その結果、シート面90と92との間で接触するのを阻止するために、ナット46とスクリュー44との間に当接手段を設ける。
【0073】
このケースの当接手段は、当接フィンガー94を含む角度方向当接手段であり、当接フィンガー94は、フランジ64の前方面67の中央部分から前方部に向かって軸線方向に突出する。
【0074】
角度方向当接手段は、ナット46の後方軸線方向先端部において形成された補助的なノッチ60も含む。
【0075】
このケースでは、当接フィンガー94の側方面95がノッチ60に対して角度方向に当接するまで、スクリュー44をナット46の中へねじ込むとによって所定の取り付け位置における位置付けが実行される。
【0076】
取り付け及び組み立て後、ナット46に対してスクリュー44を取り外される方向に回すことは、補助的に円錐台状に芯合わせするシート部の間隔を軸線方向にあけることによって、分離を引き起こし、また、そのために及び知られている方法で、ギヤード・モータ・ユニット18、及び、スクリュー44の後方セクション66のハウジング72において受け入れられた(ここでは図示されない)その出力軸によって、スクリュー44を取り外す方向に回転するように駆動することによって、例えば、ピストン16の機械的動作のためのスラスト面52と54との間の相互作用の開始によって、分離を引き起こす。
【0077】
ねじ切りされたナット46とスクリュー44のねじ切りされた前方セクション62との間のねじ山は、スクリューの回転方向がそれを解除するために逆転しない限り、ブレーキをその締め付け状態で、又は、ブレーキをかけられた状態で維持するために、逆にできない。
【0078】
前記電気機械的に動作した駐車ブレーキを、非常ブレーキとして有利に利用することもできる。
【0079】
特に、ピストン16に対してスクリュー44の後方セクション66を径方向に芯合わせするための手段の設計に対する本発明による解決法に関して、本発明は、先述した実施例に制限されない。
【0080】
(ここでは図示されない)代替手段として、特に、切頭球、又は、さらには補助的な切頭円柱、若しくは、非常に短い軸線方向の長さを有する円柱のセクションの形で芯合わせするための補助的セクションを提案することができる。
【0081】
よって、ピストン16に対するスクリュー44の後方セクション66の芯合わせのために、取り付け位置として知られる位置を一時的に占有しやすい回転体プロファイルを有する全ての関連する補助的な形を、本発明の範囲から逸脱することなく利用することができる。
【0082】
本発明は、電気モータ及び減速ギヤを有するギヤード・モータ・ユニットによって、回転可能にスクリューを駆動することに制限されない。(ここでは図示されない)代替手段として、スクリューの後方セクションを、ベルトによって、有利には歯付きベルトによって、又は、レバー(複数可)による伝動機構、ケーブル若しくは同様の伝達機構によって、回転可能に駆動することができる。