特許第6097877号(P6097877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6097877
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】衝撃実験装置及び衝撃実験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/08 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   G01M7/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-240243(P2016-240243)
(22)【出願日】2016年12月12日
【審査請求日】2016年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596183125
【氏名又は名称】株式会社シビル
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】窪田 潤平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智裕
(72)【発明者】
【氏名】折笠 裕
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−296165(JP,A)
【文献】 特許第4178018(JP,B2)
【文献】 特開平08−145839(JP,A)
【文献】 佐藤昌志 他,”重錘落下衝突実験による落石防護擁壁の挙動特性”,土木学会第53回年次学術講演会講演概要集第1部(B),1998年 8月 1日,364〜365頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/08
G01N 3/303
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配のある加速区間と水平停止区間とが連続して形成された傾斜路を有し、該傾斜路の水平停止区間の延長上に設置した落石対策構造物に重錘を水平に衝突させる衝撃実験装置であって、
前記傾斜路の走行面と平行な載置面を有し、傾斜路の走行面に沿って走行可能な走行パレットと、
底部に係止棒が設けられ、該底部を前記走行パレットの載置面に接面させて搭載される単数又は重量の異なる複数の重錘と、
前記走行パレットに設けられ、前記重錘を切り離し可能に保持する重錘保持解放機構と、
水平停止区間の終端部に設けられた走行パレットの急制動手段と、を具備し、
前記重錘保持解放機構は重錘の係止棒に対して保持または保持解除が可能であり、
前記加速区間の走行中、走行パレットに搭載した重錘が前記重錘保持解放機構により保持され、
走行パレットが水平停止区間の終端部に到達したときに、前記急制動手段により走行パレットが急制動されると共に、前記重錘保持解放機構により重錘の係止棒との保持が解除されることを特徴とする、
衝撃実験装置。
【請求項2】
前記重錘保持解放機構を介して走行パレットの載置面には重量の異なる複数の重錘が搭載可能であることを特徴とする、請求項1に記載の衝撃実験装置。
【請求項3】
前記重錘保持解放機構が走行パレットに回動自在に枢支した係脱レバーを有し、該係脱レバーがメカニカル式、電磁式、電動式、又は流体シリンダ式の何れか一つにより回動可能に構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の衝撃実験装置。
【請求項4】
前記走行パレットの急制動手段が、緩衝機能を具備した緩衝体と、該緩衝体と当接可能な受撃突起とにより構成され、前記緩衝体が水平停止区間又は走行パレットの何れか一方に取付けられ、前記受撃突起が水平停止区間又は走行パレットの何れか他方に取付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の衝撃実験装置。
【請求項5】
前記重錘が多面体、球体、又は弾丸体であることを特徴とする、請求項1に記載の衝撃実験装置。
【請求項6】
前記重錘の底部に凹部が形成され、凹部の内部に水平に向けて係止棒が取り付けられていることを特徴とする、請求項1,2又は5に記載の衝撃実験装置。
【請求項7】
前記落石対策構造物が捕捉機能、衝撃吸収機能を有する防護柵、防護ネット、又は防護壁であることを特徴とする、請求項1に記載の衝撃実験装置。
【請求項8】
勾配のある加速区間と水平停止区間とが連続して形成された傾斜路と、該傾斜路の走行面と平行な載置面を有し、傾斜路の走行面に沿って走行可能な走行パレットと、底部に係止棒が設けられ、該底部を前記走行パレットの載置面に接面させて搭載される単数又は重量の異なる複数の重錘と、該傾斜路の水平停止区間の延長上に設置した落石対策構造物とを具備し、落石対策構造物に重錘を水平に衝突させて行う落石対策構造物の衝撃実験方法であって、
走行パレットは前記重錘の係止棒を保持又は保持解除が可能な重錘保持解放機構と、
水平停止区間の終端部に設けられた走行パレットの急制動手段と、を具備し、
前記加速区間の走行中、走行パレットに搭載した重錘が前記重錘保持解放機構により保持され、
前記走行パレットが水平停止区間の終端部に到達したときに、走行パレットが急制動されると共に、重錘保持解放機構による重錘の係止棒との保持が解除されて、重錘が落石対策構造物の受撃面へ向けて水平に飛び出すことを特徴とする、
落石対策構造物の衝撃実験方法。
【請求項9】
前記重錘保持解放機構を介して走行パレットの載置面に重量の異なる複数の重錘を搭載して衝撃力が変更可能であることを特徴とする、請求項8に記載の落石対策構造物の衝撃実験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防護柵、防護ネット、防護壁等の落石対策構造物の耐衝撃性能を評価するための衝撃実験装置及び衝撃実験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
落石対策構造物は種々提案されているが、何れも製品化にあたっては落石対策便覧の設計手法を指針に各構成部材を設計している。
落石対策構造物の耐衝撃性能は、計算により求める手法と、落石対策構造物の現物に重錘等を衝突させる実証実験により求める手法と、これらの両手法を併用する手法が知られている。
【0003】
実証実験を行う場合、重錘の衝突方法としてつぎの複数の方法が知られている。
<1>落下式
地上の高い位置から真下へ自由落下させた重錘を、地上に水平に位置させた落石対策構造物に衝突させる。
<2>振子式
吊りロープを介して吊り下げた重錘に振子運動をさせて地上に立設した落石対策構造物に衝突させる。
<3>転落式
傾斜路の中央に均一幅で連続して形成したガイド溝に沿わせて球状の重錘を傾斜路の高所から転落させ、傾斜路の最下位に立設した落石対策構造物に衝突させる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−296165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の実験方法にはつぎのような問題点を有している。
<1>落下式にあっては、落石対策構造物の設置方向が横向きに制限される。
そのため、落石対策構造物が例えば落石防護柵のように本来は縦向きで使用する場合は、支柱を除いた防護ネットのみを実験対象としており、支柱を含めた落石対策構造物全体での実証実験を行うことが困難である。
<2>振子式は、発生可能な衝撃力に一定の制約があるために、大規模衝撃用の落石対策構造物の実験には不向きである。
更に、落石対策構造物の衝突直前に重錘を吊りロープから切り離さなければならないが、切り離しのタイミングにバラツキが生じ易い。切り離しのタイミングがずれると衝突方向や衝撃力が変動して衝撃実験の再現性が低くなる。
<3>傾斜路のガイド溝に沿わせて重錘を落下させる転落式では、重錘に高い真球度が求められ重錘コストが高くつく。
<4>更に転落式では、傾斜路の全長には制約があるため、衝撃力を増大させるには重錘を大径化して重量を増す必要がある。
傾斜路の溝幅が一定寸法であるガイド溝に対し、異径の重錘に交換すると溝幅との対応性が悪くなるために、異径の重錘を用いて衝撃力を変更することが難しい。
<5>転落式において、衝撃力を変更する方法として、大きさの異なる複数の重錘本体に走行用車輪を直接組み付ければ、ガイド溝の溝幅の制約を受けずに重錘を走行させることが可能である。
その反面、球形を呈する重錘に対して、大重量を支えつつ、走行姿勢の安定性及び直進性を満足させた車輪の設計が難しいうえに、重錘コストが非常に高いものとなる。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは傾斜路の勾配と全長を変えずに、簡易に衝撃力を変更できると共に、落石対策構造物の現物の受撃面に対して直角方向へ向けて重錘を衝突できる、衝撃実験装置及び衝撃実験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、勾配のある加速区間と水平停止区間とが連続して形成された傾斜路を有し、該傾斜路の水平停止区間の延長上に設置した落石対策構造物に重錘を水平に衝突させる衝撃実験装置であって、前記傾斜路の走行面と平行な載置面を有し、傾斜路の走行面に沿って走行可能な走行パレットと、底部に係止棒が設けられ、該底部を前記走行パレットの載置面に接面させて搭載される重錘と、前記走行パレットに設けられ、前記重錘を切り離し可能に保持する重錘保持解放機構と、水平停止区間の終端部に設けられた走行パレットの急制動手段と、を具備し、前記重錘保持解放機構は重錘の係止棒に対して保持または保持解除が可能であり、前記加速区間の走行中、走行パレットに搭載した重錘が前記重錘保持解放機構により保持され、走行パレットが水平停止区間の終端部に到達したときに、前記急制動手段により走行パレットが急制動されると共に、前記重錘保持解放機構により重錘の係止棒との保持が解除されることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記重錘保持解放機構を介して走行パレットの載置面には重量の異なる複数の重錘が搭載可能である。
本発明の他の形態において、前記重錘保持解放機構が走行パレットに回動自在に枢支した係脱レバーを有し、該係脱レバーがメカニカル式、電磁式、電動式、又は流体シリンダ式の何れか一つにより回動可能に構成されている。
本発明の他の形態において、前記走行パレットの急制動手段が、緩衝機能を具備した緩衝体と、該緩衝体と当接可能な受撃突起とにより構成され、前記緩衝体が水平停止区間又は走行パレットの何れか一方に取付けられ、前記受撃突起が水平停止区間又は走行パレットの何れか他方に取付けられている。
本発明の他の形態において、前記重錘が多面体、球体、又は弾丸体である。
本発明の他の形態において、前記重錘の底部に凹部が形成され、凹部の内部に水平に向けて係止棒が取り付けられている。
本発明の他の形態において、前記落石対策構造物が捕捉機能、衝撃吸収機能を有する防護柵、防護ネット、又は防護壁である。
さらに本発明は、勾配のある加速区間と水平停止区間とが連続して形成された傾斜路と、該傾斜路の走行面と平行な載置面を有し、傾斜路の走行面に沿って走行可能な走行パレットと、底部に係止棒が設けられ、該底部を前記走行パレットの載置面に接面させて搭載される重錘と、該傾斜路の水平停止区間の延長上に設置した落石対策構造物とを具備し、落石対策構造物に重錘を水平に衝突させて行う落石対策構造物の衝撃実験方法であって、走行パレットは前記重錘の係止棒を保持又は保持解除が可能な重錘保持解放機構と、水平停止区間の終端部に設けられた走行パレットの急制動手段と、を具備し、前記加速区間の走行中、走行パレットに搭載した重錘が前記重錘保持解放機構により保持され、前記走行パレットが水平停止区間の終端部に到達したときに重錘保持解放機構による重錘の係止棒との保持が解除され、前記水平停止区間の終端部から水平に飛び出した重錘が落石対策構造物の受撃面に衝突することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記重錘保持解放機構を介して走行パレットの載置面に重量の異なる複数の重錘を搭載して衝撃力が変更可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>傾斜路の勾配と全長を変えることなく、重量の異なる重錘を走行パレットに載せ替えることで簡易に衝撃力を変更できると共に、落石対策構造物の受撃面に対して直角方向へ向けて所望の衝撃力で以て重錘を衝突させることができる。
<2>落石対策構造物の現物に対して所望の衝撃力を与えて実験できるので、従来の実験方法と比べて落石対策構造物の性能や挙動を正確に求めることができる。
<3>走行パレットの載置面が傾斜路の走行面と平行であるため、傾斜路の水平停止区間の終端部から重錘を水平方向に向けて放出することができる。
<4>重錘の底部の平面が走行パレットの載置面の平面と接面すると共に、重錘保持解放機構が重錘の底部の係止棒を保持するので、重錘の安定姿勢を維持しながら走行パレットを高速で走行させることができる。
<5>重錘の底部に係止棒を設置するだけの簡単な構造であるので、重錘のコストを低廉に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】衝撃実験装置のモデル図
図2】走行パレットと重錘の全体斜視図
図3】走行パレットを底部側から見た斜視図
図4】重錘底部と走行体レットの係止部における縦断面図
図5図4におけるV−Vの断面図
図6】係止解除時における重錘底部と走行体レットの係止部における縦断面図
図7】重錘の衝突時における衝撃実験装置のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0011】
<1>衝撃実験装置の概要
図1を参照して説明すると、衝撃実験装置は、落石対策構造物50に重錘30を水平に衝突させて落石対策構造物50の性能や挙動を試験する装置であり、勾配のある加速区間11と水平停止区間12とが連続して形成した傾斜路10と、傾斜路10に沿って走行可能な走行パレット20と、走行パレット20の載置面25に搭載される重錘30と、走行パレット20に設けられ、重錘30を切り離し可能に保持する重錘保持解放機構と、傾斜路の水平停止区間に設けられた走行パレット20の急制動手段と、を具備する。
【0012】
走行パレット20の載置面25は傾斜路10の走行面と平行である。
重錘保持解放機構は加速区間の走行中においては走行パレット20に載置した重錘30を保持し、水平停止区間12の終端部に到達したときに走行パレット20に載置した重錘30を解放して水平に放出し得るように構成されている。
【0013】
走行パレット20は、例えば傾斜路10の頂部に配備した公知の巻上げ機16等により傾斜路10の上位に引き上げ可能になっている。
以降に衝撃実験装置の主要な構成要素について詳しく説明する。
【0014】
<2>傾斜路
傾斜路10は所定の勾配θが付与された加速区間11と、加速区間11の延長上に連続して形成された水平停止区間12とを有していて、自然斜面又は支持構台の上に形成されている。
加速区間11の終端部と水平停止区間12の始端部との接続部は、走行パレット20が円滑に移行できるように、なだらかな曲線形を呈している。
又、図示を省略するが、加速区間11の最上位に水平な待機区間を延設する場合もある。
本例では傾斜路10の全長に亘り所定の間隔を隔てて並設した複数のレール13に沿わせて走行パレット20を走行させる形態について説明するが、レール13は必須ではなく、走行パレット20が傾斜路10の走行面の直進走行が可能な構造であればよい。
【0015】
<2.1>加速区間
加速区間11は走行パレット20の加速区間であり、その全長は適宜選択する。
加速区間11の勾配θは加速区間11の全長等を考慮して適宜選択する。
本例では加速区間11が直線的に形成してあるが、なだらかな円弧状に湾曲していてもよい。
衝撃実験装置では傾斜路10を構成する加速区間11の勾配θと加速区間11の全長を不変(一定)とし、この前提の下で大きさと重量の異なる重錘30を走行パレット20に搭載することで、衝撃力を変更するようにした。
【0016】
<2.2>水平停止区間
水平停止区間12は走行パレット20を急制動して重錘30を走行パレット20から切り離す区間である。
水平停止区間12の終端部には、走行パレット20の急制動手段と、走行パレット20に搭載した重錘30の切り離しをメカニカルに行うための操作カム15が配備してある。
【0017】
<2.2.1>走行パレットの急制動手段
本例では走行パレット20の急制動手段が緩衝機能を具備した緩衝体14である場合について説明する。
緩衝体14としては、例えば収縮変形が可能な流体式のダンパー、ゴムやバネ等の弾性変形材、塑性変形材等が適用可能である。
緩衝体14が流体式のダンパーである場合は、水平停止区間12に単数または複数のダンパーをレール方向に沿って配置し、走行パレット20の底部に下向きに突設した受撃突起23と組合せて使用する。流体式のダンパーはその先端に受撃突起23を衝突させて収縮変形する際の流体抵抗により走行パレット20を急制動することができる。
【0018】
<2.2.2>他の急制動手段
本例では走行パレット20側に受撃突起23を突設し、水平停止区間12側に緩衝体14を設けた形態を示すが、走行パレット20側に緩衝体14を設け、水平停止区間12側に受撃突起23を設けてもよい。
又、走行パレット20の他の制動手段としては、例えば走行パレット20の車輪22に制動装置(ブレーキ装置)を具備させたり、水平停止区間12に水や粘性の高いオイル等の流体を貯留しておき、流体の変形抵抗を利用して走行パレット20を急制動したりすることも可能である。
走行パレット20の制動手段は水平停止区間12において走行パレット20を急停止し得る手段であればよい。
【0019】
<3>走行パレット
図2,3を参照して説明すると、走行パレット20は、傾斜路10と平行な載置面25を有するパレット本体21と、パレット本体21に装備した複数の車輪22と、パレット本体21の一部に下向きに突設した受撃突起23と、パレット本体21の中央部に回動自在に枢支した配備した係脱レバー40とを具備する。
【0020】
<3.1>パレット本体
パレット本体21は鋼材を方形状に組み立てた剛性枠体の上面に鋼板等を張り付けた走行機能を有する台車であり、大重量の重錘30を搭載しても安定した姿勢での直進走行が可能である。
【0021】
<3.2>車輪
パレット本体21にはレール13を走行可能な複数の車輪22が配備してある。
複数の車輪22は空転式でもよいが、走行速度を制御可能な駆動式でもよい。
【0022】
<3.3>受撃突起
パレット本体21の前部又は底部には下向きに受撃突起23が突設してある。
受撃突起23は水平停止区間12に配置した緩衝体14と衝突可能な位置と高さに設けられている。
【0023】
<3.4>重錘保持解放機構
重錘保持解放機構は走行パレット20の載置面25に搭載した重錘30の保持と解放(保持解除)が可能な機構であり、パレット本体21の一部に組み付けられている。
【0024】
図4〜6を参照して本例の重錘保持解放機構について説明する。
本例の重錘保持解放機構は、パレット本体21に枢支した係脱レバー40と、傾斜路10の水平停止区間12に突設した操作カム15とにより構成され、係脱レバー40で以て重錘30の底部33に付設した係止具31の保持及び解放をメカニカルに行う場合について説明する。
【0025】
<3.4.1>係脱レバー
パレット本体21の中央部には走行パレット20の走行方向に対し直交方向へ向けて支軸41が取り付けてあり、この支軸41に単数又は複数の係脱レバー40の中間部が回動自在に軸支されている。係脱レバー40は支軸41を中心にパレット本体21の走行方向(又は傾斜路10の傾斜方向)に沿って回動可能である。
パレット本体21の載置面25から上方へ突出した係脱レバー40の上部には、重錘30の係止棒31に係止可能な横向きの開口42を有するフック部43が形成されている。
パレット本体21の下面から下方へ向けて突出した係脱レバー40の下半部には、操作カム15と衝突可能な衝当部44が形成されている。
係脱レバー40は上部のフック部43が載置面25から上方へ突出した状態で重錘30の係止棒31との係止が可能である。
係脱レバー40はフック部43がパレット本体21の内部へ格納する方向へ向けて回動することで係止棒31との係止解除が可能である。
複数の係脱レバー40を同一の支軸41に取付けた場合、複数の係脱レバー40による係止棒31との係止動作と係止解除動作が同期するように構成してある。
【0026】
<3.4.2>操作カム
水平停止区間12の一部には係脱レバー40の回動操作が可能な操作カム15が突設してある。
操作カム15は水平停止区間12の床面に突設したコンクリート、金属等の硬質突起体等からなり、受撃突起23と干渉しない位置に設けられている。
【0027】
<4>重錘
本発明では衝撃力の変更に対応するため、重錘30の係止構造を共通にすることで、大きさと重量の異なる重錘30を一台の走行パレット20に搭載し得るように構成した。
重錘30は多面体、球体、弾丸体を呈する立体形をした重量物であり、例えばコンクリート塊の外周全面を鋼板等の硬質板が被覆してある。重錘30はコンクリート塊や金属塊のみでもよく、或いは金属製の外殻体の内部に土砂等の充填材を封入した構造体でもよい。
本例では重錘30が複数の多角面32を有する多面体である場合について説明する。
重錘30の底部33には、係脱レバー40の上部を収容して回動を許容する凹部34が形成され、凹部34の内部には水平に向けて係止棒31が取り付けられている。
本例では係止棒31を載置面25に当接する底部33(多角面)に設けた場合について説明するが、係止棒31を底部33に隣接した多角面32に設けてもよい。
重錘30の底部33に係止棒31を設置するだけの簡単な構造であるので、重錘30のコストを低廉に抑えられる。
【0028】
<5>落石対策構造物
水平停止区間12の延長線上には実験予定の落石対策構造物50が立設してある。
落石対策構造物50は、捕捉機能、衝撃吸収機能を有する防護柵、防護ネット、又は防護壁等を含む。
【0029】
[実験方法]
つぎに衝撃実験装置を用いた実験方法について説明する。
【0030】
<1>重錘の搭載
クレーン等を用いて重錘30の底部33を走行パレット20の載置面25に当接させて搭載する。
このとき、重錘30の係止棒31を走行パレット20の走行方向に対して直交方向に向け、係脱レバー40のフック部43を凹部34内に収容させた後、係脱レバー40を図4の時計回り方向へ回動操作してフック部43の開口42を係止棒31に係止させる。
【0031】
<1.1>重錘の搭載位置
重錘30の走行パレット20への搭載位置は、図1に示した傾斜路10の水平停止区間12で行い、重錘30を搭載した走行パレット20を、例えば傾斜路10の頂部に配備した公知の巻取機等で所定の高さまで引き上げる。
重錘30の搭載位置は平停止区間12に限らず、加速区間11の途上、又は加速区間11の最上位の水平な待機区間で行ってもよい。
【0032】
<1.2>重錘の保持
図4を参照して説明すると、走行パレット20を勾配のある加速区間11に位置させると、載置面25の傾斜により重錘30が滑り落ちようとするが、重錘30の底部33の平面が走行パレット20の載置面25の平面と接面するとともに、係脱レバー40のフック部43が重錘30の底部33の係止棒31を保持しているので、重錘30の安定姿勢を維持できる。
【0033】
<2>走行パレットの加速走行
加速区間11の所定の高さから走行パレット20を走行させると、走行パレット20が加速区間11に沿って直進する。
前記したように重錘30の底部33と走行パレット20の載置面25とが接面され、かつ係脱レバー40が重錘30の底部33を保持し続けるので、走行パレット20の前傾姿勢に伴い載置面25が傾いていても、重錘30の転落を防止しながら高速走行が可能である。
【0034】
<3>重錘の切り離し
加速された走行パレット20は加速区間11を経て水平停止区間12に到達すると、前傾姿勢から水平姿勢に移行する。走行パレット20の水平姿勢に伴い載置面25も水平となる。
走行パレット20が水平停止区間12の終端部に達すると、走行パレット20の下面に突出した係脱レバー40の衝当部44が操作カム15と衝突すると、係脱レバー40が重錘30の係止棒31との係止解除方向に回動されて、重錘30が走行パレット20から切り離される。
【0035】
<4>走行パレットの急制動
重錘30の切り離しと同時に、又は切り離し直後に走行パレット20の受撃突起23が水平停止区間12に設けた緩衝体14と衝突して走行パレット20が急制動される。
【0036】
<5>重錘の水平飛び出し
走行パレット20が急制動されることで、慣性により重錘30のみが高速で水平に飛び出す。
水平に飛び出した重錘30は所定の速度と衝撃力を有している。
傾斜路10の終端から飛び出した重錘30は落石対策構造物50の受撃面に対して直角方向へ向けて衝突する。
図7は重錘30が落石対策構造物50の受撃面に対して直角方向へ向けて衝突した状態を示している。
このように、落石対策構造物50の受撃面に対して、所定の衝撃力を受撃面の直角方向に向けて付与できるので、落石対策構造物50の性能や挙動を正確に試験することができる。
【0037】
ここで、走行パレット20を加速区間11に位置させたときに載置面25が水平となるように、パレット本体21に対して載置面25を勾配θだけ傾斜させて構成した対比例が考えられる。
この対比例の場合、走行パレット20が傾斜した加速区間11を走行中は載置面25が水平となるが、走行速度に比例して重錘30の落下の危険性が高まる問題がある。
更にこの対比例では、走行パレット20が水平な水平停止区間12に至ると載置面25が後傾姿勢となって重錘30を水平に放出できない等の問題がある。
本発明ではこのような対比例が内包する問題点を解消するために、走行パレット20の載置面25を傾斜路10の走行面と平行に形成したものである。
【0038】
<6>衝撃力の変更
落石対策構造物50に対する衝撃力を変更したいときは、大きさと重量の異なる重錘30を使用する。
重錘30は大きさと重量が異なっても、底部33の係止構造が共通するので、同一の走行パレット20の載置面25に大きさと重量の異なる重錘30を載せ替えるだけで衝撃力を変更できる。
このように、走行パレット20や傾斜路10をまったく変更することなく、衝撃力を自由に変更することができる。
【0039】
[他の実施例]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0040】
<1>係脱レバーによる係止解除方向
先の実施例では、係脱レバー40を反時計回りに回動させることでフック部43と係止棒31との係止を解除できる形態について説明したが、係脱レバー40を時計回りに回動させることでフック部43と係止棒31との係止を解除するようにしてもよい。
【0041】
<2>他の重錘保持解放機構
重錘保持解放機構は前記した係脱レバー40と係脱レバー40によるメカニカル式に限定されるものではない。
係脱レバー40の他の回動手段としては、例えば電磁力を利用する電磁式、モータと連動させた電動式、又はストローク運動を行う流体シリンダと組合せたシリンダ式等が適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・・傾斜路
11・・・・傾斜路の加速区間
12・・・・傾斜路の水平停止区間
13・・・・レール
14・・・・緩衝体
15・・・・操作カム
20・・・・走行パレット
21・・・・パレット本体
22・・・・車輪
23・・・・受撃突起
25・・・・載置面
30・・・・重錘
31・・・・係止棒
32・・・・多角面
33・・・・底部
34・・・・凹部
40・・・・係脱レバー
41・・・・支軸
42・・・・開口
43・・・・フック部
44・・・・衝当部
50・・・・落石対策構造物
【要約】
【課題】傾斜路の勾配と全長を変えずに、簡易に衝撃力を変更できると共に、落石対策構造物の現物の受撃面に対して直角方向へ向けて重錘を衝突できる、衝撃実験装置及び衝撃実験方法を提供すること。
【解決手段】傾斜路10の走行面と平行な載置面25を有する走行パレット20と、底部33に係止棒31が設けられた重錘30と、重錘30を切り離し可能に保持する重錘保持解放機構と、水平停止区間12の終端部に設けられた走行パレット20の急制動手段と、を具備し、走行パレット20が加速区間11を走行中においては、重錘30が重錘保持解放機構により走行パレット20に保持され、走行パレットが水平停止区間の終端部に到達したときには、急制動手段により走行パレット20が急制動されると共に、重錘保持解放機構により重錘30の係止棒31との保持が解除される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7