特許第6097897号(P6097897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6097897
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】バイナリ発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20170306BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   F01K25/10 R
   F01K25/10 C
   F02G5/04 H
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-1636(P2017-1636)
(22)【出願日】2017年1月10日
【審査請求日】2017年1月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】IHIプラント建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】頼 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】三好 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 成康
(72)【発明者】
【氏名】日高 友樹
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/017539(WO,A1)
【文献】 特開2012−57923(JP,A)
【文献】 特開2012−127534(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2660433(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/00−25/14
F02G 5/00−5/04
F24H 1/00−1/52
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水タンク内の水を加熱するための水加熱用熱媒体ラインであって、熱媒体が通る第1流路と、前記第1流路の下流側に接続されて前記熱媒体が通る第2流路と、前記第1流路の上流側で分岐すると共に前記第1流路の下流側に合流して、前記温水タンク内に配置された前記第1流路の熱交換部をバイパスするバイパス流路と、を含む水加熱用熱媒体ラインと、
前記第1流路および前記第2流路が設けられると共に前記水を貯留し、前記熱媒体と前記水との熱交換により前記水を加熱するための前記温水タンクと、
前記第2流路よりも下流側に接続されて前記熱媒体が通り、バイナリ発電を行うための発電用熱媒体ラインと、
前記発電用熱媒体ラインが設けられると共に、前記熱媒体と内部の作動媒体との熱交換により前記作動媒体を蒸発させ、蒸発した前記作動媒体により発電を行うバイナリ発電装置と、
前記第1流路および前記第2流路、または、前記バイパス流路および前記第2流路を前記熱媒体が通るように、前記水加熱用熱媒体ラインにおける前記熱媒体の流路を切替え可能な切替手段と、
前記第2流路と前記発電用熱媒体ラインとの間、または、前記第1流路に設けられ、前記切替手段によって前記第1流路および前記第2流路を前記熱媒体が通るように前記熱媒体の流路が切り替えられた際に、前記発電用熱媒体ラインを通じて前記バイナリ発電装置に流入する前記熱媒体の温度の低下を抑制する温度低下抑制手段と、
を備える、バイナリ発電システム。
【請求項2】
前記温度低下抑制手段は、前記熱媒体が有する熱を利用して前記熱媒体の温度の低下を抑制する、請求項1に記載のバイナリ発電システム。
【請求項3】
前記温度低下抑制手段は、前記第2流路と前記発電用熱媒体ラインとの間に設けられて、一定量の前記熱媒体を貯留するバッファタンクを含む、請求項2に記載のバイナリ発電システム。
【請求項4】
前記温度低下抑制手段は、前記第2流路と前記発電用熱媒体ラインとの間を接続する中間熱媒体ラインの周囲に配置され、前記熱媒体との間で熱交換を行う蓄熱体を含む、請求項2に記載のバイナリ発電システム。
【請求項5】
前記温度低下抑制手段は、前記第2流路と前記発電用熱媒体ラインとの間を接続する中間熱媒体ラインのうち複数の部分が通り、前記熱媒体同士の間で熱交換を行う熱交換器を含む、請求項2に記載のバイナリ発電システム。
【請求項6】
前記温度低下抑制手段は、前記切替手段をバイパスするように設けられ、前記切替手段による前記熱媒体の流路の切替状態に関わらず前記熱媒体を前記第1流路に流通可能なバイパスラインを含む、請求項2に記載のバイナリ発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイナリ発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、地熱流体を用いてバイナリサイクル発電を行うシステムが知られている。このシステムでは、発電システムから排出される低温の地熱流体の一部を地熱採取システムから得られる高温の地熱流体と混合することにより、発電システムに供給される地熱流体の温度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−147653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温水を供給するために用いられた熱媒体を、さらにバイナリ発電に用いるシステムが知られている。たとえば、図5に示されるように、従来のシステム100では、温水タンク2の温度制御のために、水加熱用の二系統の熱媒体ライン(流路L1と流路L2)が設けられ得る。上流側の流路L1および下流側の流路L2の両方に熱媒体が流されてもよいが、流路が切り替えられてバイパス流路(図中において破線で示される流路)に熱媒体が流されてもよい。その場合、流路L1および流路L2の一方のみに熱媒体が流され、流路L1および流路L2の他方に熱媒体が流されない状態が発生し得る。
【0005】
このシステム100において、たとえば、流路L2のみにしばらく熱媒体が流された後に、流路L1にも熱媒体が流されると、流路L1内に滞留していた冷たい熱媒体は、まず流路L2を通り、その後バイナリ発電装置3に流入する。流路L1内に滞留していた冷たい熱媒体は、流路L2の熱交換部L2aを通る際に温水タンク2内の温水によって加温され得る。しかし、熱媒体の温度上昇が不十分であったり、温水タンク2内の温水の温度が熱媒体の温度よりも低いために熱媒体が温められなかったりした場合には、比較的冷たい熱媒体がバイナリ発電装置3に流入し得る。比較的冷たい熱媒体がバイナリ発電装置3に流入した場合、バイナリ発電装置3に対して悪影響が及ぼされる可能性がある。たとえば、バイナリ発電装置3にタービンが設けられている場合であれば、タービン(軸受等)の故障を招く可能性がある。
【0006】
本発明は、水を加熱するための複数の熱媒体ラインが設けられている場合において、流路の切替え時にバイナリ発電装置に対して悪影響が及ぼされるのを十分に抑制できるバイナリ発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るバイナリ発電システムは、温水タンク内の水を加熱するための水加熱用熱媒体ラインであって、熱媒体が通る第1流路と、第1流路の下流側に接続されて熱媒体が通る第2流路と、第1流路の上流側で分岐すると共に第1流路の下流側に合流して、温水タンク内に配置された第1流路の熱交換部をバイパスするバイパス流路と、を含む水加熱用熱媒体ラインと、第1流路および第2流路が設けられると共に水を貯留し、熱媒体と水との熱交換により水を加熱するための温水タンクと、第2流路よりも下流側に接続されて熱媒体が通り、バイナリ発電を行うための発電用熱媒体ラインと、発電用熱媒体ラインが設けられると共に、熱媒体と内部の作動媒体との熱交換により作動媒体を蒸発させ、蒸発した作動媒体により発電を行うバイナリ発電装置と、第1流路および第2流路、または、バイパス流路および第2流路を熱媒体が通るように、水加熱用熱媒体ラインにおける熱媒体の流路を切替え可能な切替手段と、第2流路と発電用熱媒体ラインとの間、または、第1流路に設けられ、切替手段によって第1流路および第2流路を熱媒体が通るように熱媒体の流路が切り替えられた際に、発電用熱媒体ラインを通じてバイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する温度低下抑制手段と、を備える。
【0008】
このバイナリ発電システムによれば、温水タンクには、熱媒体が通る第1流路および第2流路が設けられる。バイパス流路は、温水タンク内に配置された第1流路の熱交換部をバイパスし、第2流路に接続される。切替手段によって、第1流路および第2流路、または、バイパス流路および第2流路を熱媒体が通るように、水加熱用熱媒体ラインにおける熱媒体の流路が切り替えられるので、温水タンクにおいて求められる熱量に応じた加熱が可能である。すなわち、第1流路およびバイパス流路は、加熱量制御用の流路である。温水タンクにおいて求められる熱量が比較的小さい場合には、切替手段によって流路が切り替えられ、バイパス流路および第2流路に熱媒体が流れ得る。そして、温水タンクにおいて求められる熱量が増大したとき、切替手段によって流路が切り替えられ、第1流路および第2流路に熱媒体が流れ得る。このとき、第1流路内に滞留していた熱媒体は、第2流路および発電用熱媒体ラインを通り、バイナリ発電装置に流入する。熱媒体は、温水タンク内の温水の温度が高い場合には、第2流路内で予熱され得る。さらに、温度低下抑制手段によって、バイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下が抑制される。したがって、流路の切替え時にバイナリ発電装置に対して悪影響が及ぼされるのを十分に抑制できる。
【0009】
いくつかの態様において、温度低下抑制手段は、熱媒体が有する熱を利用して熱媒体の温度の低下を抑制する。この場合、別途の熱源などを用いる必要がなく、システム全体としてのエネルギ効率に優れる。
【0010】
いくつかの態様において、温度低下抑制手段は、第2流路と発電用熱媒体ラインとの間に設けられて、一定量の熱媒体を貯留するバッファタンクを含む。この場合、第1流路に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、バッファタンクに貯留された熱媒体によって、温度の緩衝作用が得られる。その結果として、発電用熱媒体ラインを通じてバイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下は抑制される。
【0011】
いくつかの態様において、温度低下抑制手段は、第2流路と発電用熱媒体ラインとの間を接続する中間熱媒体ラインの周囲に配置され、熱媒体との間で熱交換を行う蓄熱体を含む。この場合、第1流路に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、蓄熱体と熱媒体との熱交換によって、第1流路から流れてきた熱媒体は加熱される。その結果として、発電用熱媒体ラインを通じてバイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下は抑制される。
【0012】
いくつかの態様において、温度低下抑制手段は、第2流路と発電用熱媒体ラインとの間を接続する中間熱媒体ラインのうち複数の部分が通り、熱媒体同士の間で熱交換を行う熱交換器を含む。この場合、第1流路に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、熱交換器における熱媒体同士の間の熱交換によって、第1流路から流れてきた熱媒体は加熱される。その結果として、発電用熱媒体ラインを通じてバイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下は抑制される。
【0013】
いくつかの態様において、温度低下抑制手段は、切替手段をバイパスするように設けられ、切替手段による熱媒体の流路の切替状態に関わらず熱媒体を第1流路に流通可能なバイパスラインを含む。切替手段によって熱媒体の流路が第2流路のみになっているときでも、バイパスラインを通じて、第1流路に少量の熱媒体を流すことができる。よって、第1流路が水の加熱に用いられていない間でも、第1流路内の熱媒体の温度が低下し過ぎることが防止される。これにより、流路の切替え時に、発電用熱媒体ラインを通じてバイナリ発電装置に流入する熱媒体の温度の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいくつかの態様によれば、水を加熱するための複数の熱媒体ラインが設けられている場合において、流路の切替え時にバイナリ発電装置に対して悪影響が及ぼされるのを十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るバイナリ発電システムの概略構成を示す図である。
図2】他の実施形態に係るバイナリ発電システムの概略構成を示す図である。
図3】更に他の実施形態に係るバイナリ発電システムの概略構成を示す図である。
図4】更に他の実施形態に係るバイナリ発電システムの概略構成を示す図である。
図5】本発明の参考形態に係るバイナリ発電システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1を参照して、一実施形態に係るバイナリ発電システム1について説明する。図1に示されるように、バイナリ発電システム1は、たとえば排ガスボイラ等で加熱された熱媒体を用いて、水を加熱し、更に発電を行うシステムである。バイナリ発電システム1は、水の加熱により得られる温水を貯留する温水タンク2と、温水タンク2の後段に配置されて、熱媒体との熱交換によりバイナリ発電を行うバイナリ発電装置3とを備える。ここで言う「後段」とは、熱媒体の熱が利用される順番を基準としている。
【0018】
熱媒体としては、たとえば温水または水蒸気が用いられ得る。この場合、排ガスボイラは、温水または水蒸気を生成する。なお、バイナリ発電システム1の熱源は排ガスボイラに限られない。熱媒体として、水以外の流体が用いられてもよい。その場合、温水は温熱媒体と呼び換えられ、水蒸気は熱媒体蒸気と呼び換えられる。
【0019】
バイナリ発電システム1は、温水タンク2内の水を加熱するための水加熱用熱媒体ラインを備える。この水加熱用熱媒体ラインには、排ガスボイラ等の熱源から送られる熱媒体が通る。バイナリ発電システム1は、水加熱用熱媒体ラインの下流側に配置されて、バイナリ発電を行うための発電用熱媒体ラインL4を備える。発電用熱媒体ラインL4には、温水タンク2において水の加熱に用いられた後の熱媒体が通る。なお、「ライン」は、内部を流体が流れる配管を意味する。
【0020】
水加熱用熱媒体ラインは、第1流路L1と、第1流路L1の下流側に接続された第2流路L2とを含む。第2流路L2の直径は、第1流路L1の直径と同じであってもよい。これらの第1流路L1の一部および第2流路L2の一部は、温水タンク2に設けられている。すなわち、第1流路L1の一部は温水タンク2内を通っており、温水タンク2内に配置された熱交換部L1aを含む。第2流路L2の一部は温水タンク2内を通っており、温水タンク2内に配置された熱交換部L2aを含む。熱交換部L1aおよび熱交換部L2aを介して、水が加熱される。
【0021】
温水タンク2内における熱交換部L1aおよび熱交換部L2aの配置は、任意に設定され得る。たとえば、縦長の温水タンク2において、上部に熱交換部L1aが配置され、下部に熱交換部L2aが配置されてもよいし、その逆であってもよい。熱交換部L1aと熱交換部L2aとが同じ高さに配置されてもよい。
【0022】
水加熱用熱媒体ラインは、さらに、第1流路L1の熱交換部L1aをバイパスするバイパス流路L5を含む。バイパス流路L5は、第1流路L1の上流側で第1流路L1から分岐し、第1流路L1の下流側で第1流路L1に合流する。より詳しくは、バイパス流路L5は、熱交換部L1aよりも上流側であって、たとえば温水タンク2の外部に位置する分岐点7において、第1流路L1から分岐している。さらに、バイパス流路L5は、分岐点7よりも下流側であって、たとえば温水タンク2の外部に位置する合流点8において、第1流路L1に合流している。このように、分岐点7から合流点8に至るバイパス流路L5は、熱交換部L1aをバイパスしている。バイパス流路L5の下流側には、第2流路L2が接続されている。バイパス流路L5の直径は、第1流路L1または第2流路L2の直径と同じであってもよく、第1流路L1または第2流路L2の直径より小さくてもよい。
【0023】
第1流路L1には、分岐点7と熱交換部L1aとの間において、バルブ11が設けられている。バイパス流路L5には、バルブ12が設けられている。これらのバルブ11およびバルブ12は、たとえば、アクチュエータ等を含む自動弁である。バルブ11およびバルブ12が開閉されることにより、第1流路L1および第2流路L2、または、バイパス流路L5および第2流路L2を熱媒体が通るように、水加熱用熱媒体ラインにおける熱媒体の流路が切替えられる。バルブ11およびバルブ12は、熱媒体の流路を切替え可能な切替手段に相当する。
【0024】
より詳細には、バルブ11が閉じられ、バルブ12が開けられた場合には、熱媒体は、バイパス流路L5および第2流路L2に流れる。この場合、熱媒体から温水タンク2内の温水への熱交換量(すなわち加熱量)は、熱交換部L2aにおける熱交換量に相当する。一方、バルブ11が開けられ、バルブ12が閉じられた場合には、熱媒体は、第1流路L1および第2流路L2の両方に流れる。熱媒体から温水タンク2内の温水への熱交換量(すなわち加熱量)は、熱交換部L1aおよび熱交換部L2aにおける熱交換量に相当する。第1流路L1は、必要に応じて用いられる加熱量制御用の流路である。第2流路L2は、常時用いられる加熱用の流路である。
【0025】
バイナリ発電システム1は、バルブ11およびバルブ12等を制御するコントローラ10を備える。コントローラ10は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアと、から構成されたコンピュータである。コントローラ10は、たとえば温水タンク2に設けられた温水の温度計から出力される温度を取得し、その温度に基づいて、バルブ11およびバルブ12の開閉を制御する。
【0026】
なお、コントローラ10は、第1流路L1に設けられた熱媒体の流入温度計から出力される温度を取得し、その温度に基づいて、バイナリ発電装置3における作動媒体の流路を切替制御してもよい。コントローラ10は、たとえば、熱媒体の流入温度が所定値以上である場合に、バイナリ発電装置3における発電を行わせる制御を実施してもよい。また、コントローラ10は、たとえば温水タンク2に設けられた水位計から出力される水位を取得し、その水位に基づいて、温水タンク2に対する補給水の流入や温水の排出(利用先への送水)を制御してもよい。温水タンク2に対する補給水の流入は、たとえばボールタップ等を用いて行われてもよい。
【0027】
コントローラ10は、たとえば、温水タンク2内における温水の温度が略一定となるように、バルブ11およびバルブ12の開閉を制御する。コントローラ10は、たとえば、温水の温度が所定の第1閾値以下である場合に、バルブ11を開け、バルブ12を閉じる制御を行う。これにより、熱媒体が第1流路L1および第2流路L2の両方に流れ、水加熱用熱媒体ラインにおける熱交換量が増大する。コントローラ10は、たとえば、温水の温度が所定の第2閾値以上である場合に、バルブ11を閉じ、バルブ12を開ける制御を行う。これにより、熱媒体がバイパス流路L5および第2流路L2に流れ、水加熱用熱媒体ラインにおける熱交換量が減少する。第2閾値は、第1閾値と同じ値であってもよいし、第1閾値より高い値であってもよい。
【0028】
第2流路L2と発電用熱媒体ラインL4との間には、これらを接続する中間熱媒体ラインL3が設けられている。
【0029】
バイナリ発電装置3は、熱媒体を熱源として発電を行うことができるように構成されている。バイナリ発電装置3は、たとえば100kW程度の出力で発電可能な発電装置である。バイナリ発電装置3は、たとえばオーガニックランキンサイクル(Organic Rankine Cycle;ORC)が採用された装置である。バイナリ発電装置3には、発電用熱媒体ラインL4の一部が設けられる。バイナリ発電装置3は、蒸発器および凝縮器(いずれも図示せず)を含む。発電用熱媒体ラインL4の熱交換部L4aは、蒸発器を通る。バイナリ発電装置3は、蒸発器とタービンと凝縮器とを通る作動媒体の循環流路を含む。蒸発器において、熱媒体と作動媒体との熱交換が行われる。バイナリ発電装置3は、蒸発器において加熱され蒸発した作動媒体により回転させられるタービンと発電機とを含んでおり、タービンの回転により発電を行う。バイナリ発電装置3には、冷却塔等(図示せず)が接続されている。冷却塔で冷却された冷却水は、上記の凝縮器において作動媒体を凝縮させる。バイナリ発電装置3に用いられる作動媒体は、たとえば不活性ガスである。
【0030】
本実施形態のバイナリ発電システム1は、バルブ11,12によって第1流路L1および第2流路L2を熱媒体が通るように熱媒体の流路が切り替えられた際に、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する温度低下抑制手段を備えている。
【0031】
より詳細には、バイナリ発電システム1は、中間熱媒体ラインL3と発電用熱媒体ラインL4との間、すなわち第2流路L2と発電用熱媒体ラインL4との間に設けられたバッファタンク(温度低下抑制手段)6を備えている。バッファタンク6は、一定量の熱媒体を貯留可能なタンクである。バッファタンク6は、第1流路L1および第2流路L2を流れてきた熱媒体を受け入れて一時的に貯留し、発電用熱媒体ラインL4へと排出する。バッファタンク6の容量は、第1流路L1のサイズ等に応じて適宜設定され得る。
【0032】
中間熱媒体ラインL3と発電用熱媒体ラインL4との間に設けられたバッファタンク6によれば、一時的に冷たい熱媒体が流入した場合でも、その熱媒体がバッファタンク6内の熱媒体と混合されることにより、温度の緩衝作用が得られる。バッファタンク6は、本来熱媒体が持っている熱を一定量保持することができる。バッファタンク6は、別途の熱源等を要することなく、熱媒体が有する熱を利用して、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する。
【0033】
本実施形態のバイナリ発電システム1によれば、温水タンク2には、熱媒体が通る第1流路L1および第2流路L2が設けられる。バイパス流路L5は、温水タンク2内に配置された第1流路L1の熱交換部L1aをバイパスし、第2流路L2に接続される。切替手段によって、第1流路L1および第2流路L2、または、バイパス流路L5および第2流路L2を熱媒体が通るように、水加熱用熱媒体ラインにおける熱媒体の流路が切り替えられるので、温水タンク2において求められる熱量に応じた加熱が可能である。温水タンク2において求められる熱量が比較的小さい場合には、切替手段によって流路が切り替えられ、バイパス流路L5および第2流路L2に熱媒体が流れる。温水タンク2において求められる熱量が増大したとき、切替手段によって流路が切り替えられ、第1流路L1にも熱媒体が流れる。このとき、第1流路L1内に滞留していた熱媒体は、第2流路L2および発電用熱媒体ラインL4を通り、バイナリ発電装置3に流入する。熱媒体は、温水タンク2内の温水の温度が高い場合には、第2流路L2内で予熱され得る。さらに、バッファタンク6によって、バイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下が抑制される。したがって、流路の切替え時にバイナリ発電装置3に対して悪影響が及ぼされるのを十分に抑制できる。
【0034】
より具体的には、第1流路L1に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、バッファタンク6に貯留された熱媒体によって、温度の緩衝作用が得られる。その結果として、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下が抑制される。これにより、バイナリ発電装置3の内部の機器類が保護される。たとえば、バイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の急減により、タービン(軸受等)の故障を招くといった事態が回避される。
【0035】
特に、温水タンク2内の温水の温度が高く、熱媒体が第2流路L2内で予熱される場合には、熱媒体に対して2段階の加温が行われる。これにより、バイナリ発電装置3に冷たい熱媒体が流入するリスクは一層低減されている。また、バッファタンク6のみで熱媒体の加温が行われる態様に比して、バッファタンク6の小型化を図ることができる。
【0036】
バッファタンク6のように、熱媒体が有する熱を利用して熱媒体の温度の低下を抑制する構成によれば、別途の熱源などを用いる必要がなく、システム全体としてのエネルギ効率に優れる。
【0037】
以上説明したバイナリ発電システム1以外にも、各種の実施態様が採用され得る。図2に示されるように、他の実施態様は、中間熱媒体ラインL3に設けられた蓄熱体(温度低下抑制手段)13を備えるバイナリ発電システム1Aであってもよい。バイナリ発電システム1Aでは、中間熱媒体ラインL3の一部である熱交換部13aが、蓄熱体13の内部に配置される。熱交換部13aの周囲に蓄熱体13が配置されることにより、熱媒体と蓄熱体13との間で熱交換が行われる。蓄熱体13は、容器と、容器の内部に充填された蓄熱材を含む。蓄熱材としては、比熱の大きい材料が用いられ得る。一定以上の熱伝導率をもった蓄熱材が望ましい。蓄熱材は、たとえば有機媒体系の材料であってもよく、溶融塩系の材料であってもよい。
【0038】
蓄熱体13は、本来熱媒体が持っている熱を一定量保持することができる。蓄熱体13は、別途の熱源等を要することなく、熱媒体が有する熱を利用して、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する。
【0039】
バイナリ発電システム1Aによれば、蓄熱体13には、予め熱が蓄えられる。第1流路L1に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、蓄熱体13と熱媒体との熱交換によって、第1流路L1から流れてきた熱媒体は加熱される。その結果として、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下は抑制される。
【0040】
特に、温水タンク2内の温水の温度が高く、熱媒体が第2流路L2内で予熱される場合には、熱媒体に対して2段階の加温が行われる。これにより、バイナリ発電装置3に冷たい熱媒体が流入するリスクは一層低減されている。また、蓄熱体13のみで熱媒体の加温が行われる態様に比して、蓄熱体13の小型化を図ることができる。
【0041】
図3に示されるように、他の実施態様は、中間熱媒体ラインL3のうち複数の部分が通る熱交換器(温度低下抑制手段)14を備えるバイナリ発電システム1Bであってもよい。バイナリ発電システム1Bでは、中間熱媒体ラインL3の一部である上流側熱交換部14aおよび下流側熱交換部14bが、熱交換器14を通っている。上流側熱交換部14aおよび下流側熱交換部14bは、熱媒体同士の間で熱交換を行う。熱交換器14は、向流式であってもよいし、並流式であってもよい。
【0042】
熱交換器14は、別途の熱源等を要することなく、熱媒体が有する熱を利用して、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する。バイナリ発電システム1Bによれば、第1流路L1に冷たい熱媒体が滞留していた場合でも、熱交換器14における熱媒体同士の間の熱交換によって、第1流路L1から流れてきた熱媒体は加熱される。その結果として、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下は抑制される。
【0043】
特に、温水タンク2内の温水の温度が高く、熱媒体が第2流路L2内で予熱される場合には、熱媒体に対して2段階の加温が行われる。これにより、バイナリ発電装置3に冷たい熱媒体が流入するリスクは一層低減されている。また、熱交換器14のみで熱媒体の加温が行われる態様に比して、熱交換器14の小型化を図ることができる。
【0044】
図4に示されるように、他の実施態様は、第1流路L1に設けられたバイパスラインL9を備えるバイナリ発電システム1Cであってもよい。バイナリ発電システム1Cでは、バイパスラインL9は、バルブ11をバイパスするように接続されている。バイパスラインL9の上流端は、第1流路L1におけるバルブ11よりも上流側に接続され、バイパスラインL9の下流端は、第1流路L1におけるバルブ11と熱交換部L1aとの間に接続されている。バイパスラインL9は、バルブ11およびバルブ12による熱媒体の流路の切替状態に関わらず、熱媒体を第1流路L1に流通可能である。
【0045】
バイパスラインL9の配管径は、第1流路L1の配管径よりも小さく、第2流路L2の配管径よりも小さい。バイパスラインL9は、第1流路L1や第2流路L2に比して、微細な流路である。バイパスラインL9における抵抗は、第1流路L1における抵抗よりも大きく、第2流路L2における抵抗よりも大きい。したがって、バイパスラインL9における熱媒体の流量は、第1流路L1における熱媒体の流量よりも小さく、かつ、第2流路L2における熱媒体の流量よりも小さくなっている。バイパスラインL9には、自動または手動のバルブ16が設けられてもよい。バルブ16が自動である場合、バルブ16は、コントローラ10によって制御されて、所定の開度をもって開けられる。バルブ16が手動である場合、バルブ16は、常時、所定の開度をもって開けられる。
【0046】
バイパスラインL9は、別途の熱源等を要することなく、熱媒体が有する熱を利用して、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する。バイナリ発電システム1Cによれば、バルブ11およびバルブ12によって熱媒体の流路が第2流路L2のみになっているときでも、バイパスラインL9を通じて、第1流路L1に少量の熱媒体が流される。すなわち、バルブ11が閉じている間も、第1流路L1内の熱媒体は静止することがない。よって、第1流路L1が温水タンク2における加熱に用いられていない間でも、第1流路L1内の熱媒体の温度が低下し過ぎることが防止されている。これにより、流路の切替え時に、発電用熱媒体ラインL4を通じてバイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下が抑制される。
【0047】
なお、バイパスラインL9の配管径を小さくする構成に限られず、バイパスラインL9に何らかの抵抗を設けてもよい。たとえば、上記したバルブ16を僅かに開けることで抵抗を設けてもよい。バルブ16に代えて、バイパスラインL9にオリフィスプレートまたはキャピラリーチューブ等を設けてもよい。
【0048】
バイパスラインL9およびバルブ16が設けられず、バルブ11の開度を小さく調整することにより、第1流路L1に微小流量の熱媒体が流れるように構成してもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。たとえば、切替手段は、バルブ11およびバルブ12を含む構成に限られない。三方弁が用いられてもよい。流路を切り替えることのできる他の公知の切替手段が用いられてもよい。
【0050】
温度低下抑制手段は、熱媒体が有する熱のみを利用する場合に限られない。温度低下抑制手段として、ヒータ等の加熱手段が別途設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 バイナリ発電システム
1A、1B、1C バイナリ発電システム
2 温水タンク
3 バイナリ発電装置
6 バッファタンク(温度低下抑制手段)
10 コントローラ
11 バルブ(切替手段)
12 バルブ(切替手段)
13 蓄熱体(温度低下抑制手段)
14 熱交換器(温度低下抑制手段)
L1 第1流路
L2 第2流路
L3 中間熱媒体ライン
L4 発電用熱媒体ライン
L5 バイパス流路
L9 バイパスライン
【要約】
【課題】水を加熱するための複数の熱媒体ラインが設けられている場合において、流路の切替え時にバイナリ発電装置に対して悪影響が及ぼされるのを十分に抑制できるバイナリ発電システムを提供する。
【解決手段】バイナリ発電システム1は、第1流路L1と第2流路L2とバイパス流路L5とを含む水加熱用熱媒体ラインと、第1流路L1および第2流路L2が設けられ、熱媒体と水との熱交換により水を加熱するための温水タンク2と、第2流路L2よりも下流側に接続される発電用熱媒体ラインL4が設けられたバイナリ発電装置3と、水加熱用熱媒体ラインにおける熱媒体の流路を切替え可能な切替手段11,12と、切替手段11,12によって第1流路L1および第2流路L2を熱媒体が通るように熱媒体の流路が切り替えられた際に、バイナリ発電装置3に流入する熱媒体の温度の低下を抑制する温度低下抑制手段6と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5