特許第6097945号(P6097945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6097945-ボール盤式ドレッサー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097945
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ボール盤式ドレッサー装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B23K11/30 350
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-23229(P2013-23229)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-151344(P2014-151344A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−114099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/10 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッター刃を内蔵し回転自在で、かつ昇降自在なドレッサーヘッドと、このドレッサーヘッドの下方に設置されるドレッサーベースからなり、被切削物である電極を装着する電極ホルダーをドレッサーベースに対し着脱自在な構造とし、また前記カッター刃及び電極ホルダーを電極の種類や形状に対応して選択した特定形状のものとしたボール盤式のドレッサー装置であって、前記ドレッサーヘッドの内部にはカッター刃を弾発支持するスプリングが取付けられており、また、前記ドレッサーベースはボール盤に取付けられるベース本体と、その上部にあるベース板とからなるとともに、このベース板とベース本体との間には、カッター刃の被加工物への衝撃を緩衝するようにベース板を弾発支持するスプリングが取付けられていることを特徴とするボール盤式ドレッサー装置。
【請求項2】
電極ホルダーは、ドレッサーベースの孔部に挿入可能な軸部と、電極を装着可能な受け部から構成されている請求項1に記載のボール盤式ドレッサー装置。
【請求項3】
ドレッサーヘッドの下端部内周にはボールベアリングが装着されている請求項1または2に記載のボール盤式ドレッサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気抵抗スポット溶接機に使用されるキャップチップと下部電極のいずれも切削加工することができるボール盤式ドレッサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車の組立工場等においては、ロボットアームの先端に取付けた溶接ガンによりワークの電気抵抗スポット溶接が行われている。この電気抵抗スポット溶接に使用されるキャップチップや下部電極は、溶接を繰り返していると摩耗や変形、あるいは表面に溶接屑が付着する等の現象を生じて良好な溶接ができなくなる。
このため、一定数以上の打点を超えた場合は旋盤やフライス盤によって表面を切削し、所定の形状に戻してやる必要があった。しかし、旋盤等による切削加工は熟練を要するため、素人や女性には難しいという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に示すように、カッター刃を内蔵するドレッサーヘッドを回転自在、かつ上下動自在としたボール盤式のドレッサー装置が提案されている。このタイプのドレッサー装置によれば、旋盤等による切削加工と異なり、熟練した技術者でなくても誰もが一定の表面形状に切削処理が可能なため、広く実用に供されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すようなドレッサー装置の場合、1種類のキャップチップのみを対象に切削処理を行うものであり、キャップチップの種類が変わった場合は、カッター刃、ドレッサーヘッド、キャップチップのホルダー等、全ての部品を交換する必要があり、交換作業が煩雑であるうえに、部品点数も膨大になるという問題があった。また、キャップチップと大きく形状が異なる下部電極の場合は切削の対象になっておらず、従来の旋盤等による切削加工に頼るしかないという問題があった。また、ドレッサーヘッドが回転中に芯振れを生じて正確な切削処理ができない場合があるという問題や、ドレッサーヘッドを下降させたときにキャップチップに当たる衝撃が大きくカッター刃が刃毀れすることがあるという問題もあった。更には、キャップチップの種類毎に専用の工具を製作する必要があり、コスト的に高くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−287046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、加工技術の熟練者でなくても何人も電気抵抗スポット溶接機用のキャップチップと下部電極のいずれも容易かつ正確に切削加工することができ、しかも部品に汎用性があって様々な形状のキャップチップや下部電極に対応して切削加工することができ、またドレッサーヘッドの回転中における芯振れの発生や、カッター刃の破損の発生も確実に防止することができ、更には加工器具として一般的なボール盤の利用が可能なため安価な装置とすることができるボール盤式ドレッサー装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のボール盤式ドレッサー装置は、カッター刃を内蔵し回転自在で、かつ昇降自在なドレッサーヘッドと、このドレッサーヘッドの下方に設置されるドレッサーベースからなり、被切削物である電極を装着する電極ホルダーをドレッサーベースに対し着脱自在な構造とし、また前記カッター刃及び電極ホルダーを電極の種類や形状に対応して選択した特定形状のものとしたボール盤式のドレッサー装置であって、前記ドレッサーヘッドの内部にはカッター刃を弾発支持するスプリングが取付けられており、また、前記ドレッサーベースはボール盤に取付けられるベース本体と、その上部にあるベース板とからなるとともに、このベース板とベース本体との間には、カッター刃の被加工物への衝撃を緩衝するようにベース板を弾発支持するスプリングが取付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
前記電極ホルダーは、ドレッサーベースの孔部に挿入可能な軸部と、電極を装着可能な受け部から構成されているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
【0010】
前記ドレッサーヘッドの下端部内周には、ボールベアリングが装着されていることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、カッター刃を内蔵し回転自在で、かつ昇降自在なドレッサーヘッドと、このドレッサーヘッドの下方に設置されるドレッサーベースからなるボール盤式のドレッサー装置であって、被切削物である電極を装着する電極ホルダーをドレッサーベースに対し着脱自在な構造とし、また前記カッター刃及び電極ホルダーを電極の種類や形状に対応して選択した特定形状のものとしたので、カッター刃と電極ホルダーを交換するのみで、種々の電極に対応して所望の形状に切削加工することができる。従って、従来はできなかった電気抵抗スポット溶接機用のキャップチップと下部電極のいずれも容易かつ正確に切削加工することが可能となる。しかも、技術の熟練を要しないので、素人や女性であっても正確に切削加工することができる。
また、前記ドレッサーヘッドの内部にはカッター刃を弾発支持するスプリングが取付けられており、ドレッサーベースにはベース板を弾発支持するスプリングが取付けられているものとしたので、カッター刃を弾発支持するスプリングにより刃毀れを防止することができる。一方、ベース板を支持するスプリングによりカッター刃の電極への衝撃を緩衝することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、前記電極ホルダーは、ドレッサーベースの孔部に挿入可能な軸部と、電極を装着可能な受け部から構成されているものとしたので、簡単な構造でありながら種々の電極を確実に保持することができ、また、交換作業も簡単に行うことができる。
【0013】
【0014】
請求項3に係る発明では、前記ドレッサーヘッドの下端部内周には、ボールベアリングが装着されているので、ドレッサーヘッドの回転を円滑に行うことができ、ドレッサーヘッドと電極ホルダーの芯振れを防止することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態を示す正面図である。
図2】本発明の使用例を示す説明図である。
図3】ドレッサーベースにキャップチップを取付けた例を示す正面図である。
図4】ドレッサーベースに下部電極を取付けた例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の実施の形態を示す正面図である。図において、1はカッター刃3を内蔵し回転自在で、かつ昇降自在な筒状のドレッサーヘッドである。また、2はこのドレッサーヘッド1の下方に設置されるドレッサーベースである。
このドレッサーヘッド1とドレッサーベース2は、一般の工場にあるボール盤に簡単に取付けられて使用に供されるものであり、通常のボール盤の操作を行うのみで切削加工が可能であり、熟練した技術がない素人や女性であっても正確に切削加工を行うことができるものとなっている。
【0017】
前記ドレッサーヘッド1は、下部を開口部とした筒状のヘッド本体1aと上部に立設した軸部1bとからなり、この軸部1bをボール盤のドリル装着部に取り付けることによってドレッサーヘッド1が回転自在で、かつ昇降自在な構造となっている。また、カッター刃3は係止爪3aの操作により簡単に交換可能な構造となっており、被切削物である電極の外径に対応して任意のものを選択し、装着することが可能となっている。
【0018】
前記ドレッサーヘッド1の内部には、カッター刃3を弾発支持するスプリング4が取付けられており、ドレッサーヘッド1が下降して被加工物に接触した場合の衝撃を緩和して刃毀れが生じるのを防止するように構成されている。
また、ドレッサーヘッド1の下端部内周にはボールベアリング5が装着されており、後述する電極ホルダーを装着した状態で回転した場合に、ドレッサーヘッドの回転を円滑に行うことを確保して、ドレッサーヘッド1と電極ホルダーの芯振れを防止するように構成されている。このボールベアリング5は、ベアリングガイド5aと止め輪5bにより固定されている。
【0019】
前記ドレッサーベース2は、ボール盤に取付けられるベース本体2aと、その上部にあるベース板2bとからなる。このベース板2bとベース本体2aとの間には、ベース板2bを弾発支持するスプリング6が取付けられており、切削処理中におけるカッター刃3の被加工物への衝撃を緩衝するように構成されている。
また、ベース板2bの上面には前記ドレッサーヘッド1の下端部内周に装着されたボールベアリング5の内径に等しい外径を有する突出部2cが設けられており、ボールベアリング5がこの突出部2cに係合することで、ドレッサーヘッド1の円滑な回転を確保するように構成されている。更に、ドレッサーベース2の中央部には、後述する電極ホルダーを挿入するための筒状孔2dが設けられているとともに、この筒状孔2dに挿入された電極ホルダーを固定するための固定ネジ2eが取付けられている。
【0020】
図2は、本発明の使用例を示す説明図である。本発明では、被切削物である電極30を装着する電極ホルダー7はドレッサーベース2に対し着脱自在な構造となっている。
即ち、この電極ホルダー7はドレッサーベース2の孔部2d(図1を参照)に挿入可能な軸部7aと、電極30を装着可能な受け部7bから構成されており、受け部7bに設けたピン7cに電極30を装着したうえで、軸部7aを前記ドレッサーベース2の筒状孔2d内に挿入して固定するように構成されている。また、軸部7aの一部には切り欠き平面7dが形成されているので、この切り欠き平面7dに前記固定ネジ2eを締め付けることで廻り止めを防止する構造となっている。
なお、8は電極が下部電極の場合であって、その高さが異なる場合に、高さを調整するのに用いるアジャストリングである。
【0021】
本発明では、前記カッター刃3及び電極ホルダー7を電極30の種類や形状に対応して選択した特定形状のものとしてある。即ち、ドレッサーヘッド1とドレッサーベース2は共通部品とし、両者間に電極ホルダー7を介在させることによって、カッター刃3と電極ホルダー7の交換のみで種々の形状のキャップチップから下部電極までを切削処理できるよう構成されている。
【0022】
具体的には、図2に示すように、電極30の種類や形状に対応してカッター刃3が選択される。このカッター刃3は係止爪3aの操作により簡単に交換することができる。
例えば、電極30がキャップチップの場合は、先端部形状に対応させてカッター刃3が選択される。また、キャップチップは電極ホルダー7の受け部7bに設けたピン7cに装着されたうえで、この電極ホルダー7の軸部7aをドレッサーベース2の筒状孔2d内に挿入して固定される。
また、前記カッター刃3として超硬刃を用いることができ、この場合はカッター刃の寿命が長いため長期間使用することができて、ランニングコストを大幅に低減させることができ好ましい。
【0023】
図3は、キャップチップをドレッサーベース2に電極ホルダー7を介して取付けた場合を示すものであるが、電極ホルダー7はキャップチップを所定の位置にセットするよう設計された形状であるので、キャップチップを所定の位置にセットすることができる。このため、予め定められたボール盤の規定の操作を行えば所定量の切削処理が行われて、所定形状に復元されたキャップチップが得られることとなる。
【0024】
また図4は、下部電極をドレッサーベース2に電極ホルダー7を介して取付けた場合を示すものであるが、電極ホルダー7は下部電極を所定の位置にセットするよう設計された形状であるので、下部電極を所定の位置にセットすることができる。この時、アジャストリング8を用いて微妙な高さ調整を行うこともできる。その後は予め定められたボール盤の規定の操作を行えば所定量の切削処理が行われて、所定形状に復元された下部電極が得られることとなる。
この下部電極は前記のキャップチップとは全く形状を異にするため、従来は熟練者の旋盤等による切削加工に頼っていたが、本発明の電極ホルダー7を利用することにより本発明の装置で同様に切削処理を行うことができるようになった。
【0025】
このように電極30の種類や形状に対応してカッター刃3及び電極ホルダー7を選択した後は、カッター刃3を係止爪3aの操作により簡単にドレッサーヘッド1に装着することができる。一方、電極ホルダー7は軸部7aをドレッサーベース2の筒状孔2d内に挿入して固定ネジ2eを締め付ければ簡単に固定することができる。
【0026】
また、ドレッサーヘッド1の内部には、カッター刃3を弾発支持するスプリング4が取付けられているので、ドレッサーヘッド1が下降して被加工物に接触した場合に衝撃を緩和して刃毀れが生じるのを防止することができる。更に、ドレッサーベース2のベース板2bとベース本体2aとの間には、ベース板2bを弾発支持するスプリング6が取付けられているので、切削処理中におけるカッター刃3の被加工物への衝撃を緩衝することができる。
また、ベース板2bの上面にはドレッサーヘッド1の下端部内周に装着されたボールベアリング5の内径に等しい外径を有する突出部2cが設けられており、ボールベアリング5がこの突出部2cに係合することで、切削処理中におけるドレッサーヘッド1の円滑な回転の確保と、ドレッサーヘッド1のセンターズレを防止することができる。
【0027】
以上のように、本発明では、熟練者でなくても何人も電気抵抗スポット溶接機用のキャップチップと下部電極のいずれも容易かつ正確に切削加工することができ、しかもキャップチップや下部電極の形状が1種類だけでなく様々な形状に対応して切削加工することができることとなる。また、ドレッサーヘッドの回転中における芯振れの発生や、カッター刃の破損の発生も確実に防止することができる。更には、加工器具として一般的なボール盤を利用するため安価な装置とすることができるという利点もある。
【符号の説明】
【0028】
1 ドレッサーヘッド
1a ヘッド本体
1b 軸部
2 ドレッサーベース
2a ベース本体
2b ベース板
2c 突出部
2d 筒状孔
2e 固定ネジ
3 カッター刃
3a 係止爪
4 スプリング
5 ボールベアリング
5a ベアリングガイド
5b 止め輪
6 スプリング
7 電極ホルダー
7a 軸部
7b 受け部
7c ピン
7d 切り欠き平面
8 アジャストリング
30 電極
図3
図4
図1
図2