【実施例】
【0028】
図1は復水器内で冷却海水が環流する上部細管(真水・濃縮海水回収用)と下部細管(冷却に特化した海水還流用)の2組の冷却用細管系統概略図であ
る。
本願発明は、沸騰水型原子炉の燃料棒又は火力発電用ボイラーで発生した熱により得られた水蒸気、または加圧水型原子炉の水蒸気発生器から発生した水蒸気は、発電用タービンを回転後、水蒸気入り口1から復水器2に入り低温水出口3から出て、夫々の発熱源に戻る1次冷却水4のループと、海から汲みあげた海水(2次冷却水)5は上部細管6と下部細管7の2方向に分かれ、下部細管7
を環流した冷たい海水(2次冷却水)5は温排水8となり海に放水される。他方、真水と濃縮海水を回収するための海水(2次冷却水)5は上部細管6に入る前に、フラッシュ減圧蒸留缶9の中の凝縮用コイル10を通り、上部細管6に入り、1次冷却水4で加熱され50〜100℃の高温海水11に蓄熱されてフラッシュ減圧蒸留缶9に入る。このフラッシュ減圧蒸留缶9は、高温海水11の温度に応じた飽和水蒸気圧に対応し減圧され、50℃では100mmHg、80℃では350mmHg、90℃では510mmHg、100℃では760mmHg(1気圧)の気圧で発生した水蒸気(濃縮塩水からの水蒸気)12はコイル10で冷却され、凝縮して露結した蒸留水13は真水受け皿14で集められ真水回収容器15に回収される。一方減圧蒸留により脱水された高温海水11は約20〜30%の高濃度濃縮塩水16になり、電気分解工場17に送られる。この20〜30%濃縮塩水は脱Ca,脱Mg,イオン交換膜で硫酸分離後、30%塩水を水溶液電気分解し、苛性ソーダを製造し、この苛性ソーダを熔融塩電気分解してナトリウム22を製造する。これら復水器内の海水冷却用細管を上下細管に2分して金属ナトリウムを製造する施設は無人島または孤島、島嶼または船舶にも適用することができる。
【0029】
図2は原発の電力で、ナトリウムを製造し、火力発電所用燃料として備蓄する構想図であ
る。
本願発明は沸騰水型原子炉18の燃料棒19又は火力発電用ボイラーで発生した熱により得られた水蒸気1、または加圧水型原子炉の水蒸気発生器から発生した水蒸気1は、発電用タービン20を回転させて発電機21を回した後、水蒸気4を水に戻す役割を持つ復水器2に導入され、復水器2の中で冷却されて水に変換された後、復水器の出口3から出て、夫々の発熱源18に戻る。一方、復水器の中に冷却水として海水
を環流される冷却用細管系統が、冷却水の温度により復水器内の中央部上下で低温冷却水が移送される下部配管7と高温冷却水が移送される上部細管6に二分割させた位置に設備し、下部細管7
を環流する冷却海水は冷却のみの目的として復水器内で熱交換されて蓄熱された温排水8は海に放水する。 一方、上部細管6
を環流した温海水は、50℃-100℃に蓄熱された後、多段式フラッシュ蒸留缶で減圧蒸留して蒸留水と、濃縮海水に分離回収し、回収された濃縮塩水16は電気分解工場17に送られ、そこでCa分を分離する目的で、蓚酸ソーダ((COONa)
2)あるいは蓚酸((COOH)
2)を注ぎ、蓚酸カルシウム(CaC
2O
4)として沈殿除去する。Ca分が除去された濾液からマグネシウム(Mg)を遊離させるために苛性ソーダ(NaOH)を注ぎ、水酸化マグネシウム((Mg(OH)
2)を沈殿除去する。これに塩酸(HCl)を注ぎ塩化マグネシウム(MgCl
2)にした後、熔融塩電気分解を行い、マグネシウム(Mg)を製造する。一方、脱マグネシウムされた濾液の中から硫酸(H
2SO
4)を取り出すために、その濾液を塩酸(HCl)で中和し、イオン交換膜法(電気透析)により透過分離する。ここで30%まで濃縮された濃縮海水を水溶液電気分解を行い、苛性ソーダ(NaOH)を製造する。この苛性ソーダの大部分は、さらに熔融塩電気分解を行い、金属ナトリウム(Na)22を製造して備蓄し、火力発電所に送る。
【0030】
図3は、3%海水1リットル(1kg)から金属ナトリウムを製造する過程で得られる副産物も含めた製造工程であ
る。 海からくみ上げた原料の3%海水(1kg)は、減圧蒸留により海水を濃縮塩にする第1ステップにより、30%海水(濃縮塩水)は約93gと真水約907g生成される(
図1のフラッシュ減圧蒸留缶9の中のコイル10を通った後、復水器2の上部細管6
を環流し、蓄熱されて排出される。この50〜100℃の高温海水11は、フラッシュ減圧蒸留缶9を通過しながら脱水され、20〜30%の濃縮塩水16と成って電気分解工場17に送られる)。この30%海水(濃縮塩水)から、不純物のカルシウムを除去するために、第2ステップにおいて蓚酸ソーダを添加して蓚酸カルシウムとして沈殿させ分離回収する。次に濾液中に溶存する塩化マグネシウム(MgCl2)を分離回収するために、第3ステップにおいて苛性ソーダを添加して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)にして分離回収する。この水酸化マグネシウムに塩酸(HCl)を加えて塩化マグネシウムに戻した後、第4ステップにおいて加熱脱水された塩化マグネシウム(MgCl2)は溶融塩電気分解されて金属マグネシウムを約1.3g製造する。この溶融塩電解により副産物として塩素ガス(Cl2)が約3.7g得られる。さらに第5ステップにおいて、30%海水(濃縮塩水)に塩酸を注ぎ中和した後、第6ステップにおいてイオン交換膜法(電気透析)により硫酸を分離回収する。ここで得られた高純度の30%海水(濃縮食塩水)は第7ステップにおいて加熱下で水溶液電気分解を行い苛性ソーダを製造する。この過程で真水、塩素ガス及び水素ガスが副産物として得られる。この苛性ソーダを第8ステップにおいて溶融塩電気分解を行い、約10.75gの金属ナトリウムを製造する。ここで酸素ガスおよび水素ガスが副産物として得られる。最後に本工程中で得られた塩素ガスと水素ガスとを高温で反応させて塩化水素とした後真水に吸収させて塩酸を製造する。
【0031】
図4は、水素/ナトリウム燃料サイクル⇒苛性ソーダが作る“永遠の燃料”であ
る。図3の第8ステップで得られた金属ナトリウム(Na)を水素発生装置の中で加水分解して、生成した水素ガス(H2)は火力発電所(水素燃焼コンバインドサイクル発電施設)において発電用燃料に供され、副産物の苛性ソーダ(Na(OH))は再度余剰電力(深夜電力、風力や太陽光などの再生可能エネルギー)で溶融塩電気分解され金属ナトリウムを再生産する。これを反復させて使用すると、エンドレス・水素/ナトリウム・燃料サイクルが構築される。
【0032】
図5は、原子炉およびタービンを止め、水素燃焼タービンに交換して水蒸気の温度を6倍の1,700℃にして、現有原発発電効率を2倍以上の「水素燃焼コンバインドサイクル発電」として生まれ変わらせる構想概念図であ
る。原子力発電において原子炉の運転停止時、定期点検時及び/又は収束時に原子炉の代替可能となる電力量を得るために、原子炉建屋に隣接して耐熱温度が1,700℃以上のタービンを有する水素燃焼コンバインドサイクル発電施設38を建設し、水素発生施設39で備蓄金属ナトリウム22に真水40を滴下して発生した水素41を、水素燃焼コンバインドサイクル発電施設38に送り、酸素42と共に燃焼器43で燃焼させる。この水素発生施設39の中に石油(軽油又は灯油)は金属ナトリウム22の加水分解を制御するための触媒としての働きも有している。コンバインドサイクル発電の特徴は、同じ出力の蒸気タービンより始動時間が短く、かつガスタービンの排気からも熱を回収するため、熱効率が高い。燃焼器43で燃焼した水素41と酸素42の高温ガスはガスタービン44を回転させて発電機21を駆動させてガスタービン発電を行う。 同時にボイラー45で作られた水蒸気で、元原子力発電所で使用していた蒸気タービン20を回転させて発電機21を回転させて水蒸気タービン発電を行う。蒸気タービン20を回した後の水蒸気は復水器2において上部細管6及び下部細管7の中
を環流する海水で冷却され、水になってボイラー45に戻る。一方、上部細管6を出た高温海水11は電気分解工場17で減圧蒸留され、真水と濃縮海水が回収され、この濃縮海水を水溶液電気分解して、苛性ソーダ46が製造される。他方、水素発生装置で副産物として苛性ソーダ46が生成するが、これら苛性ソーダ46は苛性ソーダ貯蔵庫47に貯蔵される。この苛性ソーダ46は余剰電力で溶融塩電気分解して金属ナトリウムを製造するために使われる。
【0033】
図6は冷却水用配管のレーザー水中溶接と軽水中の耐水・耐熱性反射鏡の外略図である(請求項
1,2,3の説明図)。原子力発電又は火力発電用復水器内2に敷設された冷却水環流用の細管6,7若しくは加圧水型原発の水蒸気発
生器内の細管に亀裂が生じた際に、軽水4中または水中で、Nd・YAGレーザー23を用いて水中溶接を行い、亀裂部25の損傷を修復するもので、被修復細管が格納されている復水器2や水蒸気発
生器外壁にNd/YAGレーザー光23を導入する合成石英ガラス製入射窓24を装着し、復水器2や水蒸気発
生器の内部の軽水4又は水の中には、遠隔操作によりレーザー光を任意の場所に走査可能な反射鏡26又は被溶接部(亀裂部)25にレーザー光を集光できる凹面鏡26を配置して、複数の損傷箇所(亀裂部)25に万遍なくNd・YAGレーザー光23を走査・集光できるように煽り可能な複数個の水中溶接用反射鏡26を配備させ、その反射鏡26又は凹面鏡26の表面は、シリコーンオイル光酸化させた石英ガラス膜で被覆されて耐水・耐熱性を持つ保護膜を備えた復水器内又は加圧水型原子炉の水蒸気発生器に配備された光学系を有する損傷した細管の修復方法に関するものである。シリコーンオイルの代表であるジメチルシロキサンシリコーンオイルは天然石英と同じ無機質のシロキサン結合(Si-O-Si)と有機質のメチル基(-CH
3)とから成る。図の(A)に示すように、珪素(Si)原子に結合した原子が酸素(O)原子の場合は硬質な石英であり、メチル基の場合は粘性のある油である。このメチル基を紫外線の光化学反応により酸素に置き換えれば有機シリコーンオイルを無機石英ガラスに変質できる。シリコーンオイルを構成するSi-Oの結合エネルギーは802[kJ/mol]でありSi-Cは441[kJ/mol]である。さらにこの吸収スペクトルは300nm以下である。一方紫外線源としてのXe
2エキシマランプの波長は157nm(光子エネルギー:693kJ/mol)、あるいはArFエキシマレーザーの波長は193nm(光子エネルギー:617kJ/mol)である。このようにシリコーンオイルも紫外線を吸収し、かつ、Si-C結合を光解離するのに十分な光子エネルギーを持っている。他方 メチル基を構成するC-Hの結合エネルギーは340[kJ/mol]と低いため光解離される。しかしSi-O結合はXe
2エキシマランプの光子エネルギーよりも大きいため光解離されない。そこでジメチルシロキサンシリコーンオイルを鏡26に塗布し、空気中でXe
2エキシマランプ光を照射すると、表面に吸着した酸素が光照射によって励起され、 O
2+hν→O(
1D)+O(
3P) のように活性酸素O(
1D)を生成する。この活性酸素は光励起されたシリコーンオイルと [SiO(CH
3)
2]n+ nO(
1D) + hν→(SiO
2)n+CO
2+H
2O のように反応し、無機ガラスSiO
2を形成し、解離したメチル基は残りの酸素と反応してCO
2とH
2Oを系外に排出する。この光酸化の過程で石英ガラスは無機ガラス化する。 この保護膜は紫外から近赤外線域まで透明で、収縮応力に伴う歪も亀裂の発生もなく、耐熱性、不燃性、耐水性を満し、かつ光散乱も無く、真空紫外線から近赤外線までの全波長を透過するコーティング剤であるため、高温水の中で耐性があり、高温・高圧の水蒸気や熱水中での水中溶接が可能になる。とくにこの細管6,7の内部には高い水圧がかった海水が環流しているため、この亀裂が誘因する事故を未然に防止するためには、軽水4を抜き、溶接補修するのが従来の方法であるが、軽水4をその都度抜いて、溶接作業をやることは時間の浪費だと考える。そこ復水器2の外部からレーザー光23を入射して、細管6,7の亀裂部25を水中溶接すれば遠隔操作での水中溶接ができると考える。
【0034】
図7は風車頭部(ナセル)から発電機を外し、圧縮空気コンプレッサーに替えた風力エネルギー貯蔵システム概念図である(請求項
4の説明図)。一般に空気は圧縮すると体積が小さくなり大容量を貯蔵でき、圧搾空気を開放すると大出力放出する。正に風力電池(蓄圧)である。空気の取出し口は風車タワー27上部が望ましく、プロペラ型風車28の回転軸29に連動した空気コンプレッサー30を取り付けて、ナセル31内で圧搾空気を製造し、風車タワー27内部の圧搾空気貯蔵庫容器(タンク)32に貯蔵する。この圧縮空気を圧縮空気輸送配管33で圧力調整弁34を介して発電所35内の空気タービン36を回し、発電機37で発電する。
【0035】
図8は風力・圧縮空気発電所構想概念図である(請求項
4の説明図)。洋上若しくは沿岸又は陸上に設けられた複数基(100基以上が望ましい)のプロペラ型風車28の圧搾空気貯蔵庫32に蓄圧された圧搾空気は、圧縮空気輸送配管(高圧ホース)33により、原子力発電所や火力発電所の1基の大型空気タービン36に集められ、大型発電機(三相交流)37を回転させて電力を得ることができる。
【0036】
図9はゼーベック素子を用いた温度差発電構想概念図であ
る。復水器2内の下部細管7から排出される冷却海水を更に冷却し沖合で放水させるために復水器2の下部細管7の冷却海水出口部に延長管となる二重管構造体を有する熱電子半導体温度差発電管48を接続する。この二重管構造体からなる熱電子半導体温度差発電管48の内管となる外壁に複数枚の熱電子発電素子(ゼーベック素子)49を配列し、内管を貫流する温排水8と該二重管構造体外管外壁と接触する表層海水(冷却)50との間の温度差をゼーベック素子による熱電子半導体温度差発電を行なう。このゼーベック素子49の発電電力容量を増加させる手段として、熱電子半導体温度差発電管48の長さを長くし、かつゼーベック素子49の数を増やして温排水8の熱をゼーベック素子49に吸収させる。これにより、温排水8と表層海水50との温度差はゼーベック素子49の起電力に変換されて電力が発生する。このような手段により熱電子半導体温度差発電管排水出口51から放水される温排水8の温度は表層海水50に限りなく近づけることが可能である。これにより温度差を7℃以下に抑えることが可能となる。この二重管構造体からなる熱電子半導体温度差発電管は無人島または孤島、島嶼または船舶に付随して設備することができる。