(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097967
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】積層型電気二重層キャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/28 20130101AFI20170313BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20170313BHJP
【FI】
H01G11/28
H01G11/86
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-235408(P2012-235408)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-86615(P2014-86615A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕之
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−044821(JP,A)
【文献】
特開2006−210883(JP,A)
【文献】
特開平07−201674(JP,A)
【文献】
特開2000−269095(JP,A)
【文献】
特開2007−123141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/28
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の分極性電極と、それを電気的に分離するセパレータと、金属電極に導電性塗料が塗布された集電極と、有機系電解液とからなる複数のセルを有し、該複数のセルにラミネートフィルムが外装体として使用された積層型電気二重層キャパシタであって、前記積層型電気二重層キャパシタの内部抵抗値の急激な上昇と、前記積層型電気二重層キャパシタ内部で発生するガスにより、前記ラミネートフィルムの体積膨張とが同期する特性を有し、前記導電性塗料の導電性フィラーとして、前記金属電極の表面粗さよりも微細な粒子径であるカーボンブラックを使用し、前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗膜の厚さが、前記金属電極の表面粗さと同等もしくは、前記金属電極の表面粗さよりも薄いことにより、ある経過時間から内部抵抗値が急激に上昇することを特徴とする積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記金属電極がアルミニウム板もしくはアルミニウム箔からなる集電極であることを特徴とする請求項1に記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗布膜の厚さが1〜3μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
対向する一対の分極性電極と、それを電気的に分離するセパレータと、金属電極に導電性塗料が塗布された集電極と、有機系電解液とからなる複数のセルを有し、該複数のセルにラミネートフィルムが外装体として使用された積層型電気二重層キャパシタを製造する方法であって、前記積層型電気二重層キャパシタの内部抵抗値の急激な上昇と、前記積層型電気二重層キャパシタ内部で発生するガスにより、前記ラミネートフィルムの体積膨張とが同期する特性を有するものを製造する方法において、前記導電性塗料の導電性フィラーとして、前記金属電極の表面粗さよりも微細な粒子径であるカーボンブラックを使用し、前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗膜の厚さが、前記金属電極の表面粗さと同等もしくは、前記金属電極の表面粗さよりも薄くなるように塗布することにより、ある経過時間から内部抵抗値が急激に上昇することを特徴とする積層型電気二重層キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電気二重層キャパシタおよびその製造方法に関する。詳しくは、電気二重層キャパシタ内のガスの発生による、キャパシタの外装体の体積膨張を、キャパシタの電気特性から検出可能となる電気二重層キャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウム電池などの二次電池と比較して、高出力時において安定した特性を有し、繰り返し使用しても劣化が少ない等の特長を有する。
電気二重層キャパシタは、主に活性炭等の炭素を使用した対向する一対の分極性電極である活性炭電極と、それを電気的に分離するセパレータ、集電極としてアルミ箔に導電性塗料を塗布したアルミ集電極、および容量発現を行う有機系電解液とからなる単セルを有し、セル間の電気的絶縁の確保と液漏れを防ぐためのパッキンなどの封止構造材料、電気を外に取り出すためのアルミ板からなる集電極とリード線から構成される。
【0003】
電気二重層キャパシタは、単セル当たりの電圧が2.3V〜2.7Vとなる範囲で使用されるが、電気二重層キャパシタを、単体で高電圧を得るために、いくつかの単セルを複数個積層した積層体として構成し、バイポーラ型電極で直列接続したキャパシタユニットとし、この積層型キャパシタユニットをバイポーラ型電気二重層キャパシタと称する。
図1は、積層型キャパシタユニット(バイポーラ型電気二重層キャパシタ)の断面図を示したもので、
図2は、積層型キャパシタユニット(バイポーラ型電気二重層キャパシタ)の電極構成の一例を示した図である。
【0004】
図1および
図2に示すように、積層型キャパシタユニット10は、エンドプレート11と、導電性塗料17を片面にのみ塗布したアルミ板からなる集電極板12と、分極性電極である活性炭電極13と、セパレータ15と、パッキン14と、前記導電性塗料17を両面(図には片面のみ図示)に塗布したアルミ箔基材16とにより構成されている。
ここで、パッキン14は、集電極板12とアルミ箔基材16とを絶縁し、集電極板12とアルミ箔基材16との間にセパレータ15とセパレータ15を介して対向する一対の活性炭電極13とを挟み込み、密封する機能を有している。このため、パッキン14は枠状の形状を有している。
【0005】
また、アルミ箔基材16は集電極板12と共に集電板としての役割を有する。
また、セパレータ15とセパレータ15を介して対向する一対の活性炭電極13と、これを更に両側から挟む前記集電板、すなわち集電極板12又はアルミ箔基材16とからなるユニットをセルと呼ぶ。
このセルは、所望の電圧に合わせて1つ又は複数個積層される。
図2では2つのセルが積層されたキャパシタを示している。
【0006】
図1は、
図2に示すように積層された各部材を締付け皿ネジ18及び絶縁スリーブ19で締め付けてできた積層型キャパシタユニット(バイポーラ型電気二重層キャパシタ)の断面図である。
図1には3つのセルからなるタイプのキャパシタを示した。なお、
図1では導電性塗料17を図示省略してある。各セルには有機系電解液が封入されている。
【0007】
ここで、パッキン14は
図1と
図2に示すように各セルを密封し、前記電解液の漏洩を防止するとともに、外部から水分が侵入しないようにしている。
図示省略した導電性塗料17は、活性炭電極13と集電極板12との間および、活性炭電極13とアルミ箔基材16との間に存在し、活性炭電極13上に発生した電気エネルギーを集電極板12及びアルミ箔基材16に集電する際の効率を向上させる役割をする。
【0008】
すなわち、導電性塗料17を集電極板12およびアルミ箔基材16に塗布することで、活性炭電極13と集電極板12及びアルミ箔基材16との間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
また、この積層型キャパシタユニットは、周囲からの水分侵入を遮断・防止する目的で、ラミネートフィルム20で覆われている。つまり、積層型キャパシタユニットの外装体としてラミネートフィルム20を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3921957号
【特許文献2】特開2001−217166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バイポーラ型電気二重層キャパシタは、長期間、充電状態で保持したり、充放電の繰り返しにより分極性電極の劣化や電解液中の不純物の分解等によって、電解液の分解生成物である二酸化炭素や一酸化炭素などのガスを発生する。
発生したガスによって分極性電極と集電極との間の接触状態が悪くなり、電気二重層キャパシタの内部抵抗が上昇してしまったり、単セルを直列接続した積層型キャパシタユニットと外装体であるラミネートフィルムの間にガスが溜まり、外装体内部の圧力が上昇して外装体が膨張し、最終的には外装体であるラミネートフィルムが破裂するという問題点があった。
【0011】
特に、外装体であるラミネートフィルムの破裂は、バイポーラ型電気二重層キャパシタが設置されている周囲にも悪影響を与える可能性があるので、外装体であるラミネートフィルムの破裂が起きる前に、ガスの発生や外装体の膨張を検出し、外装体であるラミネートフィルムの破裂を防止することが重要となる。
この外装体の膨張と破裂という問題点に対しては、特許文献1に、ガス抜き穴を設けた構造により、キャパシタ内部の圧力を自動放圧させることによってキャパシタ内部の圧力を均一化する技術が開示されている。
【0012】
しかし、この方法では、ガス抜き穴からの繰り返しの放圧時の外気の逆流や、ガス抜き弁の劣化によって、外気中の水分が電気二重層キャパシタ内に侵入する危険性がある。
このように水分を伴った外気が電気二重層キャパシタ内に侵入すると、キャパシタに長時間の電圧印加により、電解液と微量な水分等の分解によりフッ酸が発生し、このフッ酸の影響で次第にアルミ箔基材16の表面から導電性塗料17が脱落し接触抵抗の上昇を引き起こす。
【0013】
特に高温、高電圧印加の条件下では、水分等の分解反応が促進され接触抵抗の上昇が大きくなる問題があった。
また、他の先行技術としては、特許文献2に、電気二重層キャパシタ内部に圧力センサを挿入して外装体内に収納された積層体内の圧力をモニタすることにより、分極性電極の劣化による静電容量の低下の程度および破裂の危険性を推定する方法が開示されている。
【0014】
しかし、この方法では、電気二重層キャパシタの構造が複雑になり、製造コストの大幅上昇が考えられる。
また、いくつかの単セルを複数個積層した積層体として構成し、バイポーラ型電極で直列接続したバイポーラ型電気二重層キャパシタのような構造には適用しにくい方法である。
さらには、特許文献2では、電気二重層キャパシタに対して、寿命試験を行った結果が開示されており、時間の経過とともに圧力が徐々に上昇し、それに伴って静電容量が徐々に低下することが開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る積層型電気二重層キャパシタは、対向する一対の分極性電極と、それを電気的に分離するセパレータと、金属電極に導電性塗料
が塗布
された集電極と、有機系電解液とからなる複数のセルを有し、該複数のセルにラミネートフィルム
が外装体として使用
された積層型電気二重層キャパシタであって、
前記積層型電気二重層キャパシタの内部抵抗値の急激な上昇と、前記積層型電気二重層キャパシタ内部で発生するガスにより、前記ラミネートフィルムの体積膨張とが同期する特性を有し、前記導電性塗料の導電性フィラーとして、前記金属電極の表面粗さよりも微細な粒子径であるカーボンブラックを使用し、前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗膜の厚さが、前記金属電極の表面粗さと同等もしくは、前記金属電極の表面粗さよりも薄いこと
により、ある経過時間から内部抵抗値が急激に上昇することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る積層型電気二重層キャパシタは、請求項1において、前記金属電極がアルミニウム板もしくはアルミニウム箔からなる集電極であることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る積層型電気二重層キャパシタは、請求項1又は2において、前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗布膜の厚さが1〜3μmであることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する本発明の請求項
4に係る積層型電気二重層キャパシタの製造方法は、対向する一対の分極性電極と、それを電気的に分離するセパレータと、金属電極に導電性塗料
が塗布
された集電極と、有機系電解液とからなる複数のセルを有し、該複数のセルにラミネートフィルム
が外装体として使用
された積層型電気二重層キャパシタを製造する方法であって、
前記積層型電気二重層キャパシタの内部抵抗値の急激な上昇と、前記積層型電気二重層キャパシタ内部で発生するガスにより、前記ラミネートフィルムの体積膨張とが同期する特性を有するものを製造する方法において、前記導電性塗料の導電性フィラーとして、前記金属電極の表面粗さよりも微細な粒子径であるカーボンブラックを使用し、前記金属電極に塗布した前記導電性塗料の乾燥後の塗膜の厚さが、前記金属電極の表面粗さと同等もしくは、前記金属電極の表面粗さよりも薄くなるように塗布すること
により、ある経過時間から内部抵抗値が急激に上昇することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、アルミ板に導電性塗料を塗布したアルミ集電極と、アルミ箔基材に導電性塗料を塗布したアルミ集電極との2種類のアルミ集電極を採用した、電気二重層キャパシタにおいて、次のような効果を奏する。
【0021】
(1)電気二重層キャパシタを常時充電して使用した際に、電気二重層キャパシタ内部で発生するガスによる電気二重層キャパシタの外装体であるラミネートフィルムの体積膨張と、充電による劣化から生じる内部抵抗の急激な増加とが同期するので、電気二重層キャパシタの外装体の膨張とガスの発生を、電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定することにより、電気的に検出することが可能となる。
【0022】
(2)電気二重層キャパシタを、各種の電気二重層キャパシタを利用する装置類に実装した状態で、電気二重層キャパシタの外装体が膨張すると、周辺機器を壊したり、自ら破裂して周辺機器ともども故障したりする場合がある。この電気二重層キャパシタの外装体の膨張が顕著になる前に、電気二重層キャパシタの電気特性である内部抵抗から検出が可能となることにより、電気二重層キャパシタの運転を停止する等の安全策を早期に施すことができ、電気二重層キャパシタを利用する電気機器の破壊防止が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】積層型キャパシタユニット(バイポーラ型電気二重層キャパシタ)の断面図である。
【
図2】積層型キャパシタユニット(バイポーラ型電気二重層キャパシタ)の電極構成図である。
【
図3】グラビア印刷法による集電極への導電性塗料塗布工程図である。
【
図4】実施例における課電特性を示すグラフである。
【
図5】比較例における課電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、電気二重層キャパシタ内のガスの発生による、キャパシタの外装体の体積膨張を、キャパシタの電気特性から検出可能となる電気二重層キャパシタおよびその製造方法に関する。
キャパシタの電気特性の中で、特に内部抵抗を支配する要因のひとつに、
図1および
図2のアルミ板からなる集電極板12とアルミ箔基材16、すなわち2種類のアルミ集電極と、分極性電極である活性炭電極の接触抵抗がある。
【0025】
通常はこの接触抵抗を低減させるためアルミ集電極の表面に導電性塗料を塗布する方法が取られる。
本発明では、前記問題点を解決するため、
図1および
図2の集電極板12とアルミ箔基材16、すなわち2種類のアルミ集電極に塗布する導電性塗料に着目し、電気二重層キャパシタ内のガスの発生による、キャパシタの外装体の体積膨張が起きると、キャパシタの内部抵抗値が顕著に上昇する特性となるアルミ集電極を有する積層型電気二重層キャパシタ及びその製造方法を提供するものである。
【0026】
従って、本発明によれば、キャパシタの内部抵抗値が顕著に上昇することを検出することにより、電気的にキャパシタの外装体の体積膨張とガスの発生を検出可能となる。
以下、実施例と比較例をもとに説明する。
【実施例1】
【0027】
図3はグラビア印刷法によるアルミ箔基材(集電極)31への導電性塗料塗布工程を示した図である。
分極基材の材料であるアルミ箔基材(集電極)31に導電性塗料34を印刷・塗布する製造装置は、アルミ箔基材(集電極)31を設置する巻き出しロール30と、アルミ箔基材(集電極)31の一方の面に連続した帯状に導電性塗料34を、所定の形状で所定の塗布厚さとなるように塗布印刷するグラビア版を有する転写ロール32と、ガイドローラ33と、バックアップローラ38と、塗料槽35とからなる印刷手段と、アルミ箔基材(集電極)31に印刷した面を乾燥する乾燥炉36と、導電性塗料34が片面に塗布されたアルミ箔基材(集電極)37を巻き取り収納する巻き取りロール39とを有する。
【0028】
なお、グラビア版は、集電極の所定の形状に彫り込まれ、転写ロール32の曲面に貼り付けられることにより、アルミ箔基材(集電極)31に導電性塗料34を連続して印刷・塗布する。
図3では、アルミ箔基材(集電極)31の片面への導電性塗料塗布工程を示したが、アルミ箔基材(集電極)31の両面への塗布には、巻き取ったアルミ箔基材(集電極)31の導電性塗料を塗布した面の裏面に同一工程を施すことにより得られる。
【0029】
また、
図3のアルミ箔基材(集電極)31の片面への導電性塗料を塗布したアルミ箔基材(集電極)31を巻き取るための巻き取りロール39の代わりに、裏面に同一工程を施す工程を連続して行っても良い。
アルミ箔の表裏両面に導電性塗料塗布を塗布したアルミ箔基材(集電極)31は、所定の大きさに切断して、
図1、
図2で示した導電性塗料を両面に塗布したアルミ箔基材16となる。
【0030】
次に、
図1、
図2で示した集電極板12としての、アルミ板への導電性塗料の片面への塗布方法は、塗布手段として、スクリーン印刷法を用いている。
スクリーン印刷法は、最初に、所定の大きさにアルミ板を裁断し、その後、スクリーン印刷法によりこのアルミ板の一方の面に、所定の形状、所定の塗布厚さとなるように導電性塗料を印刷・塗布し、その後印刷面を乾燥するバッチ処理方法である。
【0031】
なお、アルミ箔基材(集電極)31への導電性塗料塗布工程として、あらかじめ所定の大きさに切断したアルミ箔基材へ前記スクリーン印刷法を用いても、作業は煩雑となるが、同様のアルミ箔基材(集電極)31を得ることができる。
ここで、本発明の最も重要な要素となるのは、第1に導電性塗料の導電性フィラーとして、アルミ板からなる集電極板12とアルミ箔基材16、すなわち2種類のアルミ集電極の表面粗さよりも微細な粒子径であるカーボンブラックを使用することである。
【0032】
第2に、アルミ集電極の表面に導電性塗料を印刷・塗布し、乾燥後の塗布膜の厚さが、アルミ集電極の表面粗さと同等もしくは、アルミ集電極の表面粗さよりも薄いことの2つの要素である。
また実施例では、アルミ集電極に塗布した導電性塗料の乾燥後の塗布膜の厚さが1〜3μmの範囲であるように、導電性塗料を印刷・塗布した。
【0033】
アルミ集電極と活性炭電極との間の接触抵抗と、導電性塗料の導電性塗料の塗布膜厚さとは単純な比例関係ではない。
すなわち、導電性塗料を塗布した後の乾燥後の導電性塗料の塗布膜厚さは、接触抵抗が最低となる範囲があるが一方、この範囲から外れる場合には接触抵抗が急激に上昇してしまう。
【0034】
導電性塗料の塗布膜厚さは厚いほうが、電極表面の凸凹を吸収できるが、塗膜厚がこの範囲より厚いときは、導電性塗料自体の抵抗が接触抵抗の値に大きく影響してしまう。
従って、本発明は、導電性塗料の導電性フィラーとして使用するカーボンブラックの粒子径を、アルミ集電極の表面粗さより前記条件で選定し、塗布・乾燥した導電性塗料がアルミ集電極の表面の凸凹を吸収する範囲で、塗布膜厚さを薄くすることが重要となる。
【0035】
より具体的には、金属電極の表面粗さよりも微細な粒子径のカーボンブラックを選定し、nメチルピロリドンを溶媒としたポリフッ化ビニリデン(PVdF)をバインダのベースとする導電性塗料を用いて、グラビア印刷もしくはスクリーン印刷を用いて、前記導電性塗料の塗布膜厚さを1〜5μmの厚みでアルミ箔上に塗布した後乾燥した。乾燥後の導電性塗料の塗布膜厚さは1〜3μmとなる。
【0036】
さらに、導電性塗料の塗布乾燥後のアルミ集電極の表面粗さは、測定の結果、最大高さ(Ry)で1〜3μmであった。これは使用するアルミ集電極の導電性塗料の塗布前の表面粗さ(Ry)が1.4〜2.3μmであることから、これとほぼ同等かそれを下回る表面粗さであり、塗布・乾燥した導電性塗料がアルミ集電極の表面の凸凹を吸収する効果がある。
【0037】
比較例として従来のアルミ集電極の表面への導電性塗料を塗布方法は、実施例とまったく同じ工程と手段を使用する。
但し、従来の製造方法である比較例では、アルミ集電極に塗布した導電性塗料の乾燥後の塗布膜の厚さは、接触抵抗が最適となる5〜15μmの範囲を採用した。
【0038】
次に前記実施例のアルミ集電極を用いてバイポーラ型電気二重層キャパシタを製作し、温度50℃の課電試験に供した。
課電試験の結果、キャパシタから発生したガスによって途中でアルミラミネートフィルムが膨張を開始する。
アルミラミネートフィルムの膨張が検出されたときのキャパシタの内部抵抗を定電流放電試験で取得したところ、通常の劣化傾向よりも大きく劣化することがわかった。
【0039】
これを従来の5〜15μmの厚さの塗料厚さを持つアルミ集電極の比較例と比較したところ、内部抵抗の劣化に
図4と
図5の大きな差が出ることが確認された。
すなわち、比較例である従来の
図5では、課電した経過時間と共に、徐々に内部抵抗の劣化がおき、内部抵抗値も徐々に上昇するが、その変化は僅かであり、40℃、50℃の何れも、約150時間から約5000時間の間では内部抵抗は約0.45Ωから0.48Ω程度である。
一方、本発明による実施例の
図4の結果では、ある経過時間から急激に内部抵抗値の上昇が発生する。即ち、60℃では、約700時間を経過すると、内部抵抗が急激に(約700時間から約1000時間の間に内部抵抗が約0.35Ωから約0.45Ωへ)増加し、50℃では、約2000時間を経過すると、内部抵抗が急激に(約2000時間から約5000時間の間に内部抵抗が約0.40Ωから約0.55Ωへ)増加し、40℃では、約6000時間を経過すると、内部抵抗が急激に(約6000時間から約10000時間の間に内部抵抗が約0.35Ωから約0.45Ωへ)増加している。
【0040】
またさらに、本発明の実施例では、電気二重層キャパシタを常時充電して使用した際に、電気二重層キャパシタ内部で発生するガスによる電気二重層キャパシタの外装体であるラミネートフィルムの体積膨張と、充電による劣化から生じる内部抵抗の急激な上昇とが同期していることが確認された。
したがって、電気二重層キャパシタの外装体の膨張を、電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定することにより、電気的に検出することが可能となることが確認された。
【0041】
すなわち、電気二重層キャパシタを常時充電して使用した際に、電気二重層キャパシタ内部で発生するガスによる電気二重層キャパシタの外装体であるラミネートフィルムの体積膨張と、充電による劣化から生じる内部抵抗の急激な増加とが同期でき、電気二重層キャパシタの外装体の膨張とガスの発生を、電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定することにより、電気的に検出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電気二重層キャパシタ内のガスの発生による、キャパシタの外装体の体積膨張を、キャパシタの電気特性から検出可能となる電気二重層キャパシタおよびその製造方法として広く産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0043】
10 積層型キャパシタユニット
11 エンドプレート
12 集電極板
13 活性炭電極
14 パッキン
15 セパレータ
16 アルミ箔基材
17 導電性塗料
18 締付け皿ネジ
19 絶縁スリーブ
20 ラミネートフィルム