(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロース系熱可塑性樹脂は、比率Aで存在し、前記不飽和熱可塑性エラストマーは、比率Bで存在し、B/A比は、0.1〜1であり、A及びBは、質量基準で表される、請求項1記載のタイヤ。
前記セルロース系熱可塑性樹脂が、アセテート、ブチレート、アセテートブチレート、プロピオネート及びアセテートプロピオネートから成る群から選択された少なくとも1つのセルロースエステルをベースとする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
前記不飽和熱可塑性エラストマーが、不飽和熱可塑性スチレンエラストマーであり、かつスチレンブロック及びジエンブロックを含むコポリマーである、請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ。
前記不飽和熱可塑性スチレンエラストマーが、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)及びスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロックコポリマー及びこれらコポリマーの混合物から成る群から選択される、請求項7記載のタイヤ。
前記不飽和熱可塑性スチレンエラストマーが、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及び酸エステル基から選択された官能基を備えている、請求項7〜9のいずれかに記載のタイヤ。
前記キャビティが、前記トレッドの使用可能な部分に対して半径方向内方に配置されており、かつ前記キャビティが、円周方向溝を形成している、請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤ。
セルロース系熱可塑性樹脂と不飽和熱可塑性スチレンエラストマーとの混合物を含む、タイヤのトレッドキャビティに用いられる熱可塑性組成物であって、前記セルロース系熱可塑性樹脂が、セルロースアセテートをベースとし、前記不飽和熱可塑性スチレンエラストマーが、エポキシ化されている、前記熱可塑性組成物。
【発明の概要】
【0008】
本発明の要旨は、キャビティ内に配置された分解性充填材(degradable filler)を含むトレッドを備えたタイヤにおいて、充填材は、分解性セルロース系熱可塑性樹脂(degradable cellulose-based thermoplastic)と不飽和熱可塑性エラストマーとの混合物を含むことを特徴とするタイヤにある。
【0009】
かかる混合物を含む充填材は、充填材とトレッドの隣接の壁との間のグリップに起因して新品の状態から部分的に摩耗した状態のタイヤの走行中、安定性を増強するという利点を有する。
【0010】
好ましくは、熱可塑性樹脂は、比率Aで存在し、不飽和熱可塑性エラストマーは、比率Bで存在し、B/A比は、0.1〜1であり、A及びBは、質量基準で表される。極めて好ましくは、B/A比は、0.25〜0.75である。
【0011】
有利には、不飽和熱可塑性エラストマーは、熱可塑性スチレンエラストマーである。
【0012】
有利には、分解性熱可塑性樹脂は、セルロースアセテート
で構成される。
【0013】
好ましくは、分解性熱可塑性樹脂は、セルロースアセテートとグリセロールアセテートとの混合物で構成されている。
【0014】
有利には、不飽和熱可塑性スチレンエラストマーは、スチレンブロック及びジエンブロックを含むコポリマーである。
【0015】
好ましい実施形態によれば、充填材が収納されたキャビティは、トレッドの使用可能な部分に対して半径方向内方に配置されている。
【0016】
この実施形態では、充填材が収納されたキャビティは、トレッドに対して内側に位置し、所与の摩耗しきい値を超えて摩耗が生じた場合にのみ露出状態になる。この場合、本発明の要旨のうちの1つによる充填材は、次第にばらばらになり、かくして、トレッドのキャビティから放出されることが分かっている。これにより、タイヤのトレッドパターン、特にこのトレッドパターンの排水チャネルをキャビティにより強化することができる。これにより、タイヤは、特に排水性能、グリップ性能及び濡れた路面上における挙動性能に関して特に性能を維持することができる。
【0017】
一実施形態によれば、キャビティは、円周方向溝を形成し、円周方向溝は、例えば、真っ直ぐな溝であってもよい。
【0018】
有利には、キャビティは、トレッドの摩耗度が50%を超えた場合、好ましくは80%と95%の間にある場合、露出する。これは、タイヤの性能の著しい低下が観察されるのが、トレッドの摩耗が極めて高く、80%を超えるようになった場合にのみであるからである。
【0019】
本発明の別の要旨は、分解性セルロース系熱可塑性樹脂と不飽和熱可塑性スチレンエラストマーとの混合物を含む熱可塑性組成物にある。
【0020】
好ましくは、分解性熱可塑性樹脂は、セルロースアセテートを
ベースとし、不飽和熱可塑性スチレンエラストマーは、エポキシ化される。
【0021】
本発明は、特に、乗用車型の自動車両、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、二輪車(特にモーターサイクル)、航空機及び更にバン、「ヘビィーデューティ」車両[即ち、坑内車両、バス、重量物運搬車両(ローリ、牽引車、トレーラ)又はオフロード車、例えば農業車両又は土木車両]又は他の輸送車両又は取扱い車両から選択された産業車両への装着が意図されたタイヤに関する。
【0022】
本明細書において、別段の規定がなければ、表示された全ての百分率(%)は、質量%である。
【0023】
さらに、「aとbの間」という表現によって示される数値範囲は、aよりも大きく且つbよりも小さい数値範囲を表し(即ち、極値a及びbは含まれない)、これに対して、「a〜b」という表現によって示される数値範囲は、aからbまでの数値範囲を意味している(即ち、極値a及びbを含む)。
【0024】
分解性充填材
本発明のタイヤは、キャビティ内に配置された分解性充填材を含むトレッドを有するという特徴を有し、充填材が分解性セルロース系熱可塑性樹脂と不飽和熱可塑性エラストマーとの混合物を含むようなものである。
【0025】
かかる混合物を含む充填材は、充填材とタイヤのトレッドの隣接の壁との密着の結果として新品の状態から部分的に摩耗した状態のタイヤの走行中、安定性を増強させるという利点を有する。
【0026】
好ましくは、熱可塑性樹脂は、比率Aで存在し、熱可塑性スチレンエラストマーは、比率Bで存在し、B/A比は、0.1〜1であり、A及びBは、質量基準で表される。極めて好ましくは、B/A比は、0.25〜0.75である。
【0027】
分解性セルロース系熱可塑性樹脂
「分解性セルロース系熱可塑性樹脂」という用語は、セルロースエステル、例えばセルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート又はセルロースアセテートプロピオネートを
ベースとする配合物を意味しているものと理解される。
【0028】
分解性セルロース系熱可塑性樹脂は、有利には、セルロースアセテートを
ベースとする。
【0029】
分解性セルロース系熱可塑性樹脂は、セルロースアセテートとグリセロールアセテートとの混合物で構成してもよい。
【0030】
かかる材料の一例は、エフケーユーアール(FKUR)社によって販売されている“Biograde C9550”である。
【0031】
不飽和熱可塑性エラストマー
公知のように、熱可塑性エラストマー(略してTPE)がブロックコポリマーの形態で提供される。熱可塑性エラストマーは、構造的に熱可塑性ポリマーとエラストマーとの中間物であり、ポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリ(エチレン/ブチレン)等の軟質エラストマーシーケンスで結合された硬質熱可塑性シーケンスで構成される。
【0032】
これは、知られているように、TPEコポリマーが一般に、2つのガラス転移ピークの存在を特徴としており、第1のピーク(低い温度、負)は、TPEコポリマーのエラストマーシーケンスに関連し、第2のピーク(高い温度、正、典型的には約80℃以上)は、TPEコポリマーの熱可塑性部分(スチレンブロックその他)に関連している。
【0033】
TPEは、全ての熱可塑性樹脂と同様、これらの融点又は軟化点よりも高い温度になったときに押出し装置で使用できる。半結晶性熱可塑性物質の融点は、ISO11357規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。
【0034】
軟化点は、例えば粉末形態の物質が互いにくっつく温度であることが思い起こされるべきである。熱可塑性物質の軟化点は、ISO4625規格(「リング・アンド・ボール(ring and ball)」方法)に従って測定される。
【0035】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性スチレンエラストマー(略して“TPS”)である。かくして、TPSの硬質シーケンスは、スチレンポリマーを
ベースとする。
【0036】
「スチレン」という用語は、本明細書においては、スチレンを
ベースとするモノマー(非置換又は置換)を意味するものとして理解されるべきであり、置換スチレンとしては、例えば、メチルスチレン(例えば、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン又はt‐ブチルスチレン)又はクロロスチレン(例えば、モノクロロスチレン又はジクロロスチレン)を挙げることができる。
【0037】
これらTPSエラストマーは、2つの硬質セグメントが軟質セグメントによって結合されたトリブロックエラストマーである場合が多い。硬質セグメント及び軟質セグメントは、直鎖状、星状又は分岐状に配置してもよい。これらTPSエラストマーは、1つの硬質セグメントが軟質セグメントに結合されたジブロックエラストマーであってもよい。代表的には、これらセグメント又はブロックの各々は、最低6以上、一般的には11以上の基本単位(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーについてはスチレン単位及びイソプレン単位)を有する。
【0038】
これを再び述べると、充填材を製造するために用いられるTPSエラストマーの第1の本質的な特徴は、これが不飽和であるということである。「不飽和TPSエラストマー」という用語は、定義上、周知のように、エチレン性不飽和度(ethylenic unsaturation)、即ち、炭素‐炭素二重結合(共役又は非共役)を有するTPSエラストマーであることを意味するものと理解され、これとは逆に、「飽和」TPSエラストマーは、当然のことながら、かかる二重結合のないTPSエラストマーである。
【0039】
好ましくは、不飽和エラストマーは、スチレンブロック(即ち、ポリスチレン)及びジエンブロック(即ち、ポリジエン)、特にイソプレンブロック(ポリイソプレン)又はブタジエンブロック(ポリブタジエン)を含むコポリマーであり、かかるエラストマーは、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)及びスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロックコポリマー及びこれらコポリマーの混合物から成る群から選択される。不飽和熱可塑性エラストマーもまた、有利には、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及び酸エステル基から選択された官能基を備えることができる。
【0040】
より好ましくは、この不飽和エラストマーは、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)及びスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロックコポリマー並びにこれらコポリマーの混合物から成る群から選択されたトリブロック型のコポリマーである。
【0041】
スチレンブロック及びジエンブロックを含む不飽和TPSエラストマーは、例えば、特にタイヤ向きの気密又はセルフシール組成物に関連した国際公開第2008/080557号パンフレット、同第2008/145276号パンフレット及び同第2008/145277号パンフレットに記載されている。
【0042】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、不飽和TPSエラストマーのスチレン含有量は、5%と50%の間にある。この範囲外においては、標的とする技術的効果、即ち接着性(又は付着性)の妥協点を見出す恐れが存在し、この接着性の妥協点は、一方においては充填材に関し、他方においては、キャビティの壁を形成し、かくして充填材に隣接するジエンゴム材料に関して最適ではない。これらの理由で、スチレン含有量は、より好ましくは、10%と40%の間にある。
【0043】
TPSエラストマーの数平均分子量(Mnによって示される)は、好ましくは、50,000g/molと500,000g/molの間、より好ましくは7,000g/molと450,000g/molの間にある。TPSエラストマーの数平均分子量(Mn)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって既知の方法で求められる。サンプルを、あらかじめテトラヒドロフラン中に約1g/lの濃度で溶解させ、次に、その溶液を、注入前に多孔度が0.45μmのフィルタで濾過する。使用する装置は、“Waters alliance”クロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフランであり、その流量は、0.7ml/分であり、系の温度は、35°Cであり、分析時間は、90分である。商標名“Styragel”(“HMW7”、“HMW6E”及び2つの“HT6E”)を有する4つで1組の直列に配置された“Waters”カラムが用いられる。ポリマーサンプル溶液の注入量は、100μlである。検出器は、“Waters 2410 ”示差屈折計であり、クロマトグラフィーデータを利用する関連ソフトウェアは、“Waters Millennium ”システムである。算出平均モル質量は、ポリスチレン規格で得られる較正曲線に準拠する。
【0044】
例えばSBSのような不飽和且つエポキシ化TPSエラストマーが知られており、例えばダイセル(Daicel)社から“Epofriend”という名称で市販されている。
【0045】
上述の熱可塑性ポリマーのTgは、知られているように、例えばDSC(示差走査熱量測定)によって且つ本明細書において別段の指定がなければ、1999年の規格ASTM・D3418に従って測定される。
【0046】
種々の添加剤
セルロースエステルを
ベースとする配合物は、種々の性状の可塑剤を含んでいてもよく、非限定的な例を挙げると、トリエチルシトレート、トリエチルアセチルシトレート、ジエチルシトレート、ジエチルフタレート、トリアセチン、エチルラクテート、メチルラクテート又はヒマシ油を挙げることができる。
【0047】
これら配合物は、種々の充填剤、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ、チョーク等を含んでいてもよいが、以下の種類の他の添加剤、即ち、難燃剤、UV吸収剤、安定化剤等を含んでいてもよい。
【0048】
タイヤ中への分解性充填材の使用
上述の充填材は、自動車、例えば二輪車、乗用車又は産業型車両のためのタイヤのトレッドキャビティ内に配置されるように使用できる。
【0049】
添付の図は、充填材を組み込んだトレッドを製造する機械及びかかるトレッドを示している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】充填剤を含むトレッドを製造する機械のノーズの斜視図である。
【
図2】充填剤を含むトレッドを製造する機械のノーズの縦断面図である。
【
図5】
図3のブレードの下の通過によって得られたトレッドの断面図である。
【
図6】
図1に類似した図であり、機械上における
図3のブレードの位置決め状態を示す図である。
【
図7】
図5に類似した図であり、1本のタイヤのトレッドストリップに設けられた溝内に導入されたストリングを示す図である。
【
図8】
図5に類似した図であり、
図7とは別のタイヤのトレッドストリップ上の溝内に導入されたストリングを示す図である。
【
図9】
図6に類似した図であり、機械に設けられていて、ストリングを溝内に案内する装置を示す図である。
【
図10】
図9に示された機械の一部の正面図である。
【
図11】
図7に類似した図であり、溝が閉じられたときのトレッドストリップの断面を示す図である。
【
図12】
図8に類似した図であり、溝が閉じられたときのトレッドストリップの断面を示す図である。
【
図13】
図9に類似した図であり、
図1の機械の充填装置を示す図である。
【
図15】機械によって製造されたタイヤのトレッドの断面図である。
【0051】
分解性充填材の製造
分解性充填材の製造は、有利には、押出し装置、好ましくは二軸スクリュー押出し機を用いて実施される。かかる押出し機により、組成物の熱可塑性成分の溶融とその緊密な混練の両方を達成することができる。
【0052】
T
M1は、不飽和熱可塑性スチレンエラストマーの所与の融点又は軟化点であると考えられ、T
M2は、熱可塑性物質の所与の融点又は軟化点であると考えられる。
【0053】
製造方法は、次のステップ、即ち、
‐熱可塑性エラストマー及びセルロース系熱可塑性物質を二軸スクリュー押出し機の供給部中に導入するステップ、
‐二軸スクリュー押出し機の本体への移送中、組み合わせ混合物を2つの所与の融点又軟化点(T
M1,T
M2)の両方よりも高い混練温度(T
M)に至らせることによって成分を溶融混練するステップ、及び
‐結果的に得られた組成物を適当な断面のダイ付きの二軸スクリュー押出し機の出口に分配するステップを有する。
【0054】
二軸スクリュー押出し機の本体を、組成物の熱可塑性成分の2つの融点又は軟化点よりも高い温度T
Mに至らせる。これにより、押出し機の本体への成分の移送中、2つの熱可塑性成分の溶融と混練の両方を実施することができる。温度の差は、溶融が完了するためには5℃を超えなければならず、好ましくは、10℃を超える。
【0055】
二軸スクリュー押出し機の出口には、充填材の意図した使用に適した断面を有するダイ、例えばタイヤのトレッドの真っ直ぐな円周方向キャビティ中に導入されるべきストリングの直径に対応した円筒形断面のダイを取り付けることが可能である。
【0056】
ダイの出口において、当業者には周知のように、ストリングは、冷却ジグを通過でき、それにより例えばトレッド延伸装置によって延伸される幾何学的形状に対する良好な制御が可能になる。次に、ストリングを例えばスプールの形態で貯蔵することができる。
【0057】
また、ダイの出口において、例えば液体中への押出しによって出口ストリングを冷却し、次に、ストリングを顆粒の状態に切断することが可能である。顆粒は、タイヤに組み込まれる前に最終的に成形するため第2の押出し装置内に取り込まれる前に貯蔵してもよい。
【0058】
不飽和熱可塑性スチレンエラストマー及び熱可塑性樹脂は、同一供給手段によって押出し機の本体内に同時に導入することができる。
【0059】
充填材の他の任意の添加剤もまた、同時に又はその次に導入することができる。
【0060】
充填材を含むトレッドの製造
それ自体知られている第1の実施形態によれば、1つ又は2つ以上のキャビティ内に組み込まれた充填材を含むトレッドを同時押出しによって製造する。かくして、充填材のストリングとこれらが埋め込まれるトレッドを一緒に押し出す。
【0061】
第2の実施形態によれば、
‐ゴムトレッドを押し出し、
‐少なくとも1つの溝をトレッドに形成し、
‐少なくとも1本のストリングをスプールから提供し、
‐ストリングを各溝中に挿入する。
【0062】
ストリングは、ゴムトレッドの形成に先立って且つゴムトレッドとは別個に上述したように作られる。この場合、ストリングを溝内に配置し、そして溝を閉じるだけでよい。かくして、ストリングは、これが形成された後、ゴム中に埋め込まれる。この方法により、製造上の欠陥に起因した廃棄物の量が制限される。というのは、この方法により、各生産操業の開始時にこの方法の安定化のステップをなしで済ますことができるからである。
【0063】
好ましくは、トレッドの各区分に関し、この区分を押し出し、溝をこの区分に同時に形成する。
【0064】
次に、
図1〜
図14を参照して、機械の実施形態について説明するが、特定の場合、この機械は、生車両タイヤの製造に用いられるトレッドを作るために用いられる押出し機である。
【0065】
図15には、生タイヤの加硫後にこの製造方法の結果として得られたタイヤの断面の一部が示されており、この断面は、タイヤの軸線3に対して半径方向平面で取られている。トレッド4は、タイヤの周囲に沿ってタイヤのサイドウォール相互間に延びそしてそのカーカス5の周囲上に延びている。トレッド4は、表面を形成する外側周辺面6を備え、タイヤはこの表面を介して地面と接触する。この面は、円形断面の全体として円筒形の形をしている。
【0066】
トレッド4は、ゴムで形成された本体を有し、このゴムは、従来通り、天然エラストマーと合成エラストマーとの混合物並びに種々の生成物及び添加剤から成っている。
【0067】
トレッド4は、複数本のストリング又はレース8を更に有し、特定の場合、数が5本であるが、この本数に限定されない。ストリングの各々は、
図7、
図11及び
図15に示されている場合のように円形断面のワイヤの形態をしており、又は
図8及び
図12に示されている場合のように正方形断面のワイヤの形態をしている。ストリングは、本体中に埋め込まれ、これらストリングは、トレッドの2つの主要な外側面及び内側面からある距離で延びている。各ストリングは、タイヤと同軸の円を形成し、軸線3に垂直な平面内に延びている。ストリングは、同一又は異なる横方向輪郭形状を有していてもよく、これらストリングは、同一又は異なる材料で構成してもよい。ストリングは、個々に、前もって且つ本体とは別個に作られ、次に、スプール9に巻かれ(
図2参照)、次に、機械に運ばれる。
【0068】
押出し機のノーズ10は、フレーム12を有し、フレーム12は、互いに平行に且つ互いに向かい合っており、しかも互いに距離を置いて配置された平板状の2つの垂直部14を有している。ノーズの装置の大抵のものは、2つの垂直部14の間に設けられた空間内に延びている。
【0069】
ノーズは、特に
図2の右側に示されていて、本体を形成するよう押し出されるようになったゴムを導入するために用いられる導管16を有している。ノーズ10は、導管16の下流側の口に配置されていて、円形断面の円筒形周辺面23を備えた円筒体又はロール18を有している。ノーズは、弓形部(又はアーチ)22を形成する部品20の組立体を更に有し、アーチ22は、面23と一緒になって、押し出されるべき材料の加圧を行うチャンバ25を画定し、導管16は、このチャンバ内に現れる。部品20は、フレーム12に剛結され、ロール18は、
図2で見て反時計回りの方向にその水平軸線24回りに垂直部14に対して回転可能に設けられている。ノーズ10は、チャンバ25の下流側に延びると共にロールの面23の方へ向いた異形ブレード26を有している。ノーズは、ブレードの下流側に、ストリングを前もって作られた溝内に導入するために用いられる取付けホイール32の組立体30を有すると共にこのようにして位置決めされたストリング上で溝を閉じるために用いられるステッチング組立体34を更に有している。
【0070】
図3及び
図4を参照すると、異形ブレード26は、垂直部14の一方から他方に延びると共にこれら垂直部に剛結された細長い形態の本体28を有している。本体28は、キャビティ及び突出部を備えた下側面36を有し、下側面36は、この面36とロールの面23との間におけるゴムの通過の作用効果によってトレッドの上側面6にその形態を与えるようになっている。かくして、これら2つの要素は、材料の通過時に、その形態をトレッド4の断面に与える押出しオリフィスを形成する。
【0071】
ブレード26は、プローシェア(すき先状部)40を支持した支持体38を更に有し、これらの数は、トレッドが受け入れるようになったストリング8の数と同一であり、この数は、特定の場合、5つである。特に
図2に示されているように、プローシェア40の各々は、全体として“L”字形をしており、“L”の長い方の部分は、垂直方向に近く且つ軸線4に対して半径方向に近い方向に延び、支持体38に設けられた専用オリフィス内に挿入され、プローシェアは、この方向に摺動することができるようこの専用オリフィス内に設けられている。
【0072】
ブレード26は、各プローシェア40に関し、本体28へのその剛性取り付けのための手段を有し、かかる手段は、特定の場合、各プローシェアに関し、支持体の一部を貫通して延びると共にプローシェアを支持体の内側面に対して締め付ける2本の取り付けねじ42によって形成されている。この構成により、上述の方向における本体28に対するプローシェアの位置の調節が可能であり、かくして、例えば、製造中のタイヤのモデルに応じて、トレッド4内における対応のプローシェアにより形成される溝44の深さの調節が可能である。
【0073】
溝44はこれら自体、ゴムトレッドを形成する押出し材料中に各プローシェア40の“L”のベース又は短い方の部分を入り込ませることによって作られる。溝は、各プローシェアのベースが
図4に示されているように本体28の面36から、より具体的には、この面の或る特定の領域から突き出ることによって作られる。“L”の短い方の部分は、プローシェアが押出しブレードの異形部分の下に入り込むように差し向けられる。この特定の組立体により、プローシェアの上流側部分をトレッド内の圧力がまだゼロではない領域内に位置決めすることができ、それにより、トレッドの材料中へのプローシェアの入り込み具合及び更に成形品の品質を向上させることができる。
【0074】
面36は、各プローシェアと直角をなしてプローシェアの各側を越えて延びるキャビティ45を備えている。これらキャビティの各々により、面6の主要部分から延びるゴムの余剰分を形成するそれぞれの突出ビード46を溝の各側に形成することができる。かくして、各溝は、これに隣接して位置する2つの関連したビード46の間に延びる。
【0075】
特定の場合、溝の本数が5に等しいとすると、10本のビードが存在する。溝44は、ストリングを受け入れ、次に、以下に更に説明するようにこれで満たされるようになっている。トレッド36はまた、溝50を形成するよう形作られ、溝は、特定の場合、本数が3であり、溝44とは対照的に、トレッド上及び最終のタイヤ上に見えるままの状態であることが意図されている。上述の溝は全て、互いに平行に且つトレッド4の長手方向に延びている。
【0076】
図6に示されているように、ブレード26は、特定の場合、トレッドの2つの互いに反対側の側縁を画定するために材料をばり取りするナイフを形成する2つの装置52を更に備えている。これら装置は、互いに向かい合った状態で支持体38の各側に配置されている。
【0077】
押出し機は、ストリングがそれぞれ巻き付けられるスプール9の受け入れ手段54を有している。これら手段は、製造プロセスが進むにつれてスプールが巻き出ることができるよう構成されている。
【0078】
ステッチング組立体30(
図6、
図9及び
図10参照)は、数が等しく、特定の場合、ストリングの本数に等しく、即ち数が5つであるホイール32を含む。ホイールは、互いに同一であり、水平軸線56回りに互いに同軸に設けられている。これらホイールは、スプール9から来るストリングの経路57がトレッド中へのこれらの挿入に先立って、組立体30とブレード26との間を通るようブレード26の方に向いた状態で延びている。ストリングは、この経路に沿う移動中、それぞれのホイール32の円周方向周縁部に当たった状態で支持される。かくして、各ホイールは、対応のストリングを溝の底まで案内するのに役立ち、その目的は、ストリングを溝の底に定着させることにあり、ホイールは、この目的のために対応の溝の内部に入り込む。
【0079】
ホイール32は、フレームに取り付けられた共通ガントリに取り付けられ、この共通ガントリの垂直位置は、ホイールが溝の中に幾分深く入り込み、かくして、対応のストリングを溝の中に幾分深く挿入するために調節可能である。特定の場合、ホイール32のために非電動式駆動装置が提案され、ホイールは、トレッドの前進運動及びトレッドと同一の周速度でトレッド中に挿入されるストリングによって回転可能に駆動される。ストリングをスプール9から組立体30まで案内する目的で軸線に沿ってストリングと交差する中間案内部品、例えば管を提供することが可能である。
【0080】
図7は、開いた溝44を備えたトレッド4を示しており、溝の底には、充填材のストリング8が定着している。この図は、直径が約4ミリメートルの円形断面のストリングを示している。
図8は、同様に、溝44内に配置されたトレッド4の場合を示しており、かかる溝の中には、断面が平行六面体、例えば一辺の長さが4ミリメートルの正方形断面をした充填材のストリング8が納められている。
【0081】
図2及び
図11〜
図14を参照すると、ステッチング組立体34は、ステッチング装置を含み、これらステッチング装置の数は、ストリングの本数に等しく、特定の場合、5である。これら装置60のうちの1つが
図14に示されている。組立体34は、垂直部14に剛結された状態で垂直部の一方から他方に延びる支持体62を含む。装置60の各々は、異形の形態のストラット64を有し、このストラットは、支持体62の対応の雌型オリフィス内に受け入れられると共に軸線24に対して半径方向に近いその長手方向に摺動することができる。組立体34は、各装置について、ストラット64を支持体の内側面に当てて締め付け、それにより装置60を選択された調節位置で支持体62に対してしっかりと不動化する目的で支持体62の壁を貫通して延びる締め付け要素66を含む。
【0082】
各装置60は、ストラットの下端部に、2つの小径歯付きホイール70を支持したアーム68を有し、これら歯付きホイールは、それぞれの回転軸線72を介してアームに回転可能に取り付けられ、回転軸線72は、同一平面内に位置するが互いに交差しており且つ小径ホイールがトレッドの前進方向に関して上流側に向かって開放形態を有するよう配置されている。小径ホイールは、これら突出部を形成する材料を溝44の充填を目的としてストリング8上で溝中に折り込むように対象の溝と関連したそれぞれのビード46上に支持されるよう配置されている。かくして、ストリングは、
図7及び
図8にそれぞれ対応した2つの場合において、
図11及び
図12に示されているようにトレッド中に納められ、覆われ、そして埋め込まれる。
【0083】
トレッドの製造方法は、この機械によって以下のように実施される。ゴムを形成する材料を矢印71で示すように導管16を介してノーズ中に導入し、次に、かかる材料は、チャンバ25内に入り、ここで、加圧され、その後ブレード26及びロール18により形成された押出しオリフィスを通って押し出される。特にトレッドの上側面6に所与の形態を与えるこの作業中、プローシェア40は、面6に長手方向溝44並びに各溝の各側に位置する2本のビード46を生じさせる。プローシェアは、圧力がチャンバ25内に生じている圧力に対して低い機械の領域内の後側部分に存在している。
【0084】
スプール9がストリングを巻き出し状態で支持し、小径ホイール32によって支持された状態で案内されるストリングは、トレッドの厚み中でそれぞれの溝44の底に挿入される目的で、これらストリングがホイール32とブレード26との間を通過する。ストリングは、駆動されているトレッドの影響を受けてスプールから巻き出され、それによりホイール32もまた駆動される。スプールは、その運動中、どのようなアクチュエータによっても減速されることはない。
【0085】
トレッドを形成する材料は、この段階では依然として高温であり且つ軟らかい。トレッドがステッチング組立体34の下を通過するとき、ホイール70は、ビード46の材料を対応の溝中に折り込み、かくして関連のストリングをトレッドの厚み中に埋め込む。かくして、溝は、塞がれると共に充填される。
【0086】
これら作業は、対象のトレッドの各区分について連続的に行われる。これら作業は、トレッドの全体について同時に行われ、トレッドは、連続して製造される。
【0087】
試験
充填材とこれに隣接したゴム組成物の接着性(又は付着性)は、以下に示すように特徴付けられる。
【0088】
A
充填材/ジエン層接着試験
充填材が硬化後、SBRゴム及びシリカ(ローディア(Rhodia)社製の“Zeosil”)を
ベースとし、更に通常の添加剤(硫黄、促進剤、ZnO、ステアリン酸、老化防止剤)を含むジエンエラストマー層、具体的に言えば、タイヤトレッド用の通常のゴム組成物に接着する性能を試験するために接着試験(剥離試験)を実施した。
【0089】
試験材料の薄層、生トレッド用の通常の組成物を有する2mm層及び最後に剥離中先の層の変形を制限することができる生の補強プライを積み重ねることによって剥離試験用試験体(90°剥離型のもの)を作製した。初期亀裂を試験材料の薄層とトレッド型の層との間に入れる。
【0090】
組み立て後、試験体を加圧下で15分間180℃で加硫した。幅30mmのトレッドを切断機械の使用により切断した。次に、これらトレッドをセットアップに適した金属支持体上で試験材料の側に接着し、他方の部分を引張試験装置のジョー内に配置した。試験は、周囲温度及び100mm/分の引張速度で実施した。引張強度を記録し、かかる記録を試験体の幅によって標準化した。引張試験装置の可動クロスレール変位(0mmと200mmの間)の関数としての単位幅当たりの強度(N/mmで表される)の曲線を得た。選択した接着力の値は、この曲線の最大値に一致している。
【0091】
試験
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
これら試験は、エポキシ化熱可塑性スチレンエラストマーの存在において、充填材とトレッド材料の隣接の壁との間の接着力を増強するという利点を示している。この接着力は、0.1のB/A比から判断して相当大きい。好ましくは、この比は、0.25以上である。
【0095】
しかしながら、充填材の分解速度は、B/A比が1を超えると、即ち、充填材の組成が主として不飽和熱可塑性エラストマーを含む場合、実質的に減少することが判明した。かくして、好ましい組成範囲は、B/A比に関し、0.25と0.75の間にある。
【0096】
タイヤトレッドのキャビティ内に組成物C‐4に対応した充填材の円筒形ストリングを有するタイヤを製造した。キャビティをトレッドに形成し、円筒形ストリングを上述の方法に従ってこれら生のキャビティ内に導入した。ストリングを、約4mmの摩耗後にタイヤの寿命の半分で現れ始めるよう位置決めした。
【0097】
これらタイヤをこれらインサートが現れるまで通常走行させた。ストリングが大気と接触し、走行の舗装道路と接触した時点から、充填材のストリングは、数百キロメートル走っただけで迅速に分解し、キャビティの容積部を顕在化し、かくして、タイヤの性能、特に濡れた路面上における性能を回復した。