(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって構成され、土砂の掘削作業を行うものである。
【0003】
ところで、市街地等の狭い作業現場での掘削作業に好適に用いられる油圧ショベルとして、ミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルが知られている。このミニショベルは、上部旋回体の旋回半径が下部走行体の車幅内にほぼ収まる後方小旋回型油圧ショベルとして形成され、運転席を内部に収容するキャブを備えキャブ仕様の油圧ショベルと、運転席を上方から覆うキャノピを備えたキャノピ仕様の油圧ショベルとに大別される。
【0004】
ここで、キャノピ仕様の油圧ショベルの上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられた運転席と、該運転席の前側に位置して旋回フレーム上に設けられ、運転席に着席したオペレータの足場を形成する足場部材と、運転席を上方から覆うルーフおよび該ルーフを支持する複数の支柱からなるキャノピと、足場部材の前端側に左,右方向に延びて設けられた前手摺り部材と、該前手摺り部材に沿って左,右方向に延び運転席に着席したオペレータの足元を前方から覆う前カバーとを備えている。
【0005】
そして、足場部材の前部側には、例えば油圧ショベルの走行を制御する走行レバー・ペダル、ブレーカ等の予備の油圧機器の駆動を制御する予備ペダル、油圧ショベルの走行速度を低速と高速とに切換える速度切換ペダル等の各種の操作ペダルが配置されている(特許文献1参照)。
【0006】
ここで、前手摺り部材は、L字状に屈曲したパイプ材により構成され、左,右方向の一端側がキャノピの支柱に固定され、左,右方向の他端側が足場部材に固定されている。一方、前カバーは、左,右方向の一端側がキャノピの支柱に固定され、左,右方向の他端側が前手摺り部材に固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルでは、前手摺り部材をL字状に屈曲したパイプ材により形成し、前手摺り部材の左,右方向の一端側はキャノピの右前支柱に固定され、前手摺り部材の左,右方向の他端側は足場部材のうち運転席の左前側に固定されている。
【0009】
一方、前カバーの左,右方向の一端側は、キャノピの右前支柱に固定され、前カバーの左,右方向の他端側は、前手摺り部材に固定されている。これにより、前カバーは、前手摺り部材の長さ方向(左,右方向)の全域に亘って左,右方向に延在している。
【0010】
しかし、小型の油圧ショベルにおいては、前手摺り部材および前カバーと運転席との間の距離が小さく、運転席に着席したオペレータの足元に広い空間を確保することができない。このため、オペレータが足場部材の前部側に配置された各種の操作ペダルを足踏み操作するときに、オペレータの足が前手摺り部材あるいは前カバーに接触してしまい、操作ペダルに対する操作性が損なわれるという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、運転席に着席したオペレータの足元に作業空間を確保した状態で、足場部材の前端側に前手摺り部材と前カバーとを設けることができる
小型の油圧ショベルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、
前記作業装置のスイングポストを左,右方向に回動可能に支持するために該旋回フレームの前端側に設けられた支持ポストと、前記旋回フレームの後端側に設けられたカウンタウエイトと、前記旋回フレームに搭載されたエンジンを覆う状態で前記旋回フレーム上に設けられた運転席台座と、前記運転席台座の上面側に設けられた運転席と、該運転席の前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記運転席に着席したオペレータの足場を形成する足場部材と、
該足場部材に設けられた走行方向制御用の走行用レバー・ペダル、予備の油圧機器を操作する予備ペダル、走行速度切換用の速度切換ペダルおよび前記スイングポストを回動させるスイングペダルと、前記運転席を上方から覆うルーフおよび該ルーフを支持する複数の支柱からなるキャノピと、前記足場部材の前端側に左,右方向に延びて配置された前手摺り部材と、該前手摺り部材に沿って左,右方向に延び前記運転席に着席したオペレータの足元を前方から覆う前カバーとを備えてなる
小型の油圧ショベルに適用される。
【0013】
請求項1の発明の特徴は、前記前手摺り部材は、左,右方向の一端側が前記足場部材よりも高い位置で前記キャノピの支柱に上,下方向に間隔をもって固定された固定部位となり該固定部位から左,右方向の他側に向けて延びる上,下の横棒と、これら上,下の横棒の左,右方向の他端側を連結し
て上,下方向に延びる連結棒とによりコ字状ないし横U字状に形成し
ており、前記前カバーは、前記前手摺り部材の前記下横棒と前記足場部材との間の空間に配置され前記オペレータの足元を覆うカバー本体と、該カバー本体の上端側に位置し
て前記前手摺り部材の前記下横棒に
溶接により一体に固定される手摺り側固定部と、前記カバー本体の下端側に位置し
てボルト挿通孔が設けられこのボルト挿通孔に挿通されたボルトを用いて前記足場部材に固定される足場側固定部とにより構成し
、前記カバー本体の左,右方向の長さ寸法は、前記前手摺り部材の左,右方向の長さ寸法よりも小さく設定されており、かつ前記前カバーは、前記手摺り側固定部と前記足場側固定部に対して前記カバー本体が前方に張出す屈曲形状を有し、前記連結棒の周囲と前記足場部材との間に作業空間が形成されていることにある。
【0015】
請求項
2の発明は、前記前手摺り部材を構成する前記上,下の横棒の固定部位は、前記キャノピの支柱に沿って上,下方向に延びる取付枠によって連結し、前記取付枠を前記キャノピの支柱に取付ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、前カバーの手摺り側固定部を前手摺り部材の下横棒に固定することにより、前手摺り部材と前カバーとを一体化することができる。この状態で、前手摺り部材の各横棒の固定部位をキャノピの支柱に固定すると共に、前カバーの足場側固定部を足場部材に固定することにより、前手摺り部材と前カバーとを、キャノピの支柱と足場部材との間に取付けることができる。
【0017】
これにより、足場部材の前端側に前手摺り部材と前カバーとを配置したとしても、前手摺り部材の連結棒の周囲と足場部材との間に作業空間が形成されるので、運転席に着席したオペレータは、この作業空間内に足元を配置することにより、例えば各種のペダルに対する踏込み操作を円滑に行うことができる。
【0018】
さらに、前カバーは、前手摺り部材の左,右方向の他端側を足場部材に固定するための固定部を兼ねるので、前手摺り部材の左,右方向の他端側に固定部を設ける必要がなく、この分、前手摺り部材の部品点数を削減することにより、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0019】
さらに、前カバーを、手摺り側固定部と足場側固定部に対してカバー本体が前方に張出すような屈曲形状に形成することにより、飛石等の衝突に対する前カバーの強度を高めることができる。しかも、運転席に着席したオペレータの足元のスペースを、カバー本体が前方に張出した分だけ前方に拡張することができる。
【0020】
請求項
2の発明によれば、前手摺り部材を構成する上横棒の固定部位と下横棒の固定部位とを、取付枠によって一体化することができ、前手摺り部材の強度を高めることができる。この結果、キャノピの支柱に対する前手摺り部材および前カバーの取付強度を一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る
小型の油圧ショベルとして、クローラ式の小型の油圧ショベル、所謂ミニショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0023】
図1ないし
図8は本発明の第1の実施の形態を示し、1はキャノピ仕様の小型の油圧ショベル(
以下、油圧ショベル1という)を示している。この油圧ショベル1は、左,右のクローラ2A,2Aを有する自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に設けられた作業装置5とにより構成されている。ここで、油圧ショベル1は、上部旋回体4の旋回半径が、下部走行体2の車幅(左,右のクローラ2A間の距離)内にほぼ収まる後方小旋回型油圧ショベルとして形成されている。
【0024】
作業装置5は、後述する旋回フレーム6の支持ポスト6Aに左,右方向に回動可能に取付けられたスイングポスト5Aと、該スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、ブーム5Bに回動可能に取付けられたアーム5Cと、アーム5Cに回動可能に取付けられたバケット5Dと、スイングポスト5Aを回動させるスイングシリンダ5E(
図3参照)と、ブームシリンダ5Fと、アームシリンダ5Gと、バケットシリンダ5Hとにより構成されている。
【0025】
一方、上部旋回体4は、支持構造体を形成する旋回フレーム6と、該旋回フレーム6の後端部に設けられ作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト7と、旋回フレーム6上に搭載されたエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器(図示せず)と、これら搭載機器を覆って旋回フレーム6上に設けられた外装カバー8と、後述の運転席10、足場部材14、キャノピ19、前手摺り部材20、前カバー28等により構成されている。
【0026】
ここで、旋回フレーム6の前端側には、作業装置5のスイングポスト5Aを回動可能に支持する支持ポスト6Aが設けられている。また、上部旋回体4の後端部の旋回半径は、カウンタウエイト7の外側面によって規定されており、カウンタウエイト7は、上部旋回体4の後端部の旋回半径を小さくするため、前側(作業装置5側)に寄せて配置されている。
【0027】
9は旋回フレーム6上に設けられた運転席台座を示している。この運転席台座9は、後述する足場部材14から上方に立上がり、エンジン等を上方から覆う状態に配置されている。そして、運転席台座9の上面側には、後述の運転席10、左,右のコンソール装置11,12、後手摺り部材13等が配置されている。
【0028】
10は旋回フレーム6上となる運転席台座9の上面側に設けられた運転席を示し、該運転席10は、油圧ショベル1を操縦するオペレータMが着席するものである。運転席10の左,右両側には、運転席台座9の上面側に位置して左,右のコンソール装置11,12が設けられ、これら各コンソール装置11,12には、運転席10に着席したオペレータMが旋回装置3、作業装置5を操作するための作業用操作レバー11A,12Aがそれぞれ設けられている。
【0029】
13は左側のコンソール装置11の左側に位置して運転席台座9の上面側に設けられた後手摺り部材を示している。この後手摺り部材13は、ほぼ四角形状に折曲げられた棒材からなり、両端部が運転席台座9の上面に固定された状態で運転席台座9から上方に立上っている。後手摺り部材13は、オペレータMが後述する足場部材14に乗降するときに把持するものである。
【0030】
14は運転席10の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられた足場部材を示し、該足場部材14は、旋回フレーム6上の所定の高さ位置に、運転席10に着席したオペレータMの足場を形成するものである。ここで、足場部材14のうち運転席10の左前側に位置する部位は、オペレータMが地面と足場部材14との間で乗り降りするときの乗降口14Aとなっている。
【0031】
15は運転席10の前側に位置して足場部材14の左,右方向の中央部に設けられた左,右の走行用レバー・ペダルを示している。この走行用レバー・ペダル15は、運転席10に着席したオペレータMによって手動操作、または足踏み操作されることにより、油圧ショベル1の走行方向を制御するものである。
【0032】
16は走行用レバー・ペダル15の左側に位置して足場部材14に設けられた予備ペダルを示している。この予備ペダル16は、油圧ショベル1にブレーカ等の予備の油圧機器(図示せず)を追加装備したときに、この予備の油圧機器を操作するために足踏み操作されるものである。
【0033】
17は予備ペダル16の左側に位置して足場部材14に設けられた速度切換ペダルを示している。この速度切換ペダル17は、油圧ショベル1の走行速度を、例えば低速走行と高速走行との2段階に切換えるために足踏み操作されるものである。
【0034】
18は走行用レバー・ペダル15の右側に位置して足場部材14に設けられたスイングペダルを示している。このスイングペダル18は、作業装置5のスイングシリンダ5Eを伸縮させ、スイングポスト5Aを左,右方向に回動(スイング)させるために足踏み操作されるものである。
【0035】
19は旋回フレーム6上に設けられた3柱式のキャノピを示し、該キャノピ19は、運転席10を上方から覆うものである。ここで、キャノピ19は、運転席10の左後側から上方に延びるパイプ状の左後支柱19Aと、運転席10の右後側から上方に延びるパイプ状の右後支柱19Bと、運転席10の右前側に配置され足場部材14から上方に延びるパイプ状の右前支柱19Cと、これら3本の支柱19A,19B,19Cの上端側に設けられた平板状のルーフ19Dとにより大略構成されている。
【0036】
この場合、キャノピ19を構成する右前支柱19Cは、足場部材14の右前角隅部に配置され、この右前支柱19Cの下部側には、後述する取付枠25を介して前手摺り部材20が取付けられる構成となっている。
【0037】
次に、本実施の形態に用いられる前手摺り部材20と前カバー28について説明する。
【0038】
20は足場部材14よりも高い位置に左,右方向に延びて配置された前手摺り部材を示している。この前手摺り部材20は、例えばオペレータMが地面と足場部材14との間で乗降するときに把持したり、オペレータMが足場部材14上から掘削した穴を覗込むときに把持するものである。
【0039】
前手摺り部材20は、
図4ないし
図6に示すように、例えばパイプ材等の1本の棒材に折曲加工を施すことにより、上横棒21と、下横棒22と、連結棒23とを有するコ字状ないし横U字状の枠状に形成されている。
【0040】
ここで、上横棒21の左,右方向の一端側(右端側)は、足場部材14よりも高い位置で、後述する取付枠25に溶接等の手段を用いて固定される固定部位21Aとなっている。そして、上横棒21は、固定部位21Aから左,右方向の他側に向けて延び、上横棒21の左,右方向の他端側(左端側)21Bには、後述の連結棒23が連結される構成となっている。
【0041】
一方、下横棒22の左,右方向の一端側(右端側)は、足場部材14よりも高く、かつ上横棒21の固定部位21Aから下方に離間した位置で、取付枠25に溶接等の手段を用いて固定される固定部位22Aとなっている。そして、下横棒22は、固定部位22Aから左,右方向の他側に向けて延び、下横棒22の左,右方向の他端側(左端側)22Bには、後述の連結棒23が連結される構成となっている。
【0042】
連結棒23は、上横棒21の他端側21Bと下横棒22の他端側22Bとの間を連結し、上,下方向に延びている。これにより、上横棒21と下横棒22とは、上,下方向にほぼ一定の間隔をもって左,右方向に延びている。また、上横棒21の長さ方向の中間部位と下横棒22の長さ方向の中間部位との間は、上,下方向に延びる2本の補強棒24を介して連結され、これら各補強棒24によって前手摺り部材20が補強されている。
【0043】
25は上横棒21の固定部位21Aと下横棒22の固定部位22Aとに固定された取付枠を示し、該取付枠25は、上,下の横棒21,22の固定部位21A,22Aを連結した状態で、キャノピ19の右前支柱19Cに取付けられるものである。ここで、取付枠25は、例えばみぞ形鋼のような断面コ字状をなす鋼材を用いて上,下方向に延びる直線状に形成され、上,下方向の両端側にはボルト挿通孔25Aがそれぞれ設けられている。上横棒21の固定部位21Aと下横棒22の固定部位22Aは、溶接等の手段を用いてそれぞれ取付枠25に固着されている。
【0044】
そして、取付枠25のボルト挿通孔25Aに挿通したボルト26を、キャノピ19の右前支柱19Cに設けたねじ座(図示せず)に螺着することにより、前手摺り部材20を構成する上,下の横棒21,22の固定部位21A,22Aが、取付枠25を介してキャノピ19の右前支柱19Cに固定される構成となっている。この状態で、前手摺り部材20を構成する下横棒22と足場部材14との間には空間27が形成され、この空間27内に後述の前カバー28が配置される構成となっている。
【0045】
28は前手摺り部材20に沿って配置された前カバーを示している。この前カバー28は、前手摺り部材20に沿って左,右方向に延び、運転席10に着席したオペレータMの足元を前方から覆うものである。
図4ないし
図6に示すように、前カバー28は、鋼板材等を用いて左,右方向に延びる長方形の板状体として形成されている。ここで、前カバー28は、前手摺り部材20の下横棒22と足場部材14との間の空間27に配置され、オペレータMの足元を前方から覆うカバー本体29と、カバー本体29の上端側に位置する手摺り側固定部30と、カバー本体29の下端側に位置する複数(例えば2個)の足場側固定部31とにより構成されている。
【0046】
前カバー28の手摺り側固定部30は、カバー本体29と等しい左,右方向の長さ寸法を有し、カバー本体29の上端側から後方に向けて水平に折曲げることにより形成されている。一方、前カバー28の足場側固定部31は、カバー本体29の下端側に左,右方向に離間して設けられ、カバー本体29の下端側から後方に向けて水平に折曲げることにより形成されている。従って、前カバー28は、手摺り側固定部30と足場側固定部31とに対し、カバー本体29が前方に張出す断面コ字状の屈曲形状を有している。
【0047】
そして、前カバー28の手摺り側固定部30は、前手摺り部材20を構成する下横棒22の下面に対し、溶接等の手段を用いて強固に固着されている。これにより、前手摺り部材20と前カバー28とは一体化されている。
【0048】
一方、前カバー28の各足場側固定部31には、ボルト挿通孔31Aが設けられ、このボルト挿通孔31Aに挿通したボルト32を足場部材14に締結することにより、前カバー28が足場部材14に固定される構成となっている(
図4参照)。
【0049】
このように、前手摺り部材20を構成する上,下の横棒21,22の固定部位21A,22Aが固定された取付枠25は、キャノピ19の右前支柱19Cにボルト26を用いて固定され、前手摺り部材20に一体化された前カバー28の足場側固定部31は、ボルト32を用いて足場部材14に固定される。即ち、前カバー28は、前手摺り部材20の左,右方向の他端側(左端側)を足場部材14に固定する固定部を兼ねるので、前手摺り部材20には足場部材14に対する固定部を設ける必要がなく、この分、前手摺り部材20の部品点数を削減することができる構成となっている。
【0050】
ここで、前カバー28を構成するカバー本体29の左,右方向の長さ寸法は、前手摺り部材20の左,右方向の長さ寸法よりも小さく設定されている。これにより、カバー本体29は、前手摺り部材20の連結棒23よりも取付枠25側に寄った位置で、前手摺り部材20の下横棒22と足場部材14との間に配置されている。このため、前手摺り部材20を構成する連結棒23の周囲と足場部材14との間には、前カバー28が存在しない作業空間27Aが形成されている。
【0051】
従って、足場部材14の前端側に前手摺り部材20と前カバー28とを設けたとしても、前手摺り部材20を構成する連結棒23の周囲と足場部材14との間には作業空間27Aが形成される。これにより、
図1および
図7に示すように、運転席10に着席したオペレータMが、例えば予備ペダル16、速度切換ペダル17等を足踏み操作するために、前手摺り部材20を構成する連結棒23の近傍まで左足を延ばしたとしても、連結棒23の周囲と足場部材14との間には作業空間27Aが形成されているので、前手摺り部材20等に当接することがない。この結果、オペレータMは、予備ペダル16、速度切換ペダル17等に対する足踏み操作を、大きな作業空間27A内で円滑に行うことができる構成となっている。
【0052】
一方、前カバー28は、手摺り側固定部30と足場側固定部31とに対し、カバー本体29が前方に張出す断面コ字状の屈曲形状を有しているので、飛石等の衝突に対する前カバー28の強度を高めることができる。また、運転席10に着席したオペレータMの足元のスペースを、カバー本体29が前方に張出した分だけ前方に拡張することができる。
【0053】
この場合、
図8中に二点鎖線で示すように、作業装置5のスイングポスト5Aは、旋回フレーム6の支持ポスト6Aに対して左,右方向に回動するので、カバー本体29は、その前面29Aが回動変位するスイングポスト5Aの最後部から距離L1だけ離間する位置まで、手摺り側固定部30と足場側固定部31とに対して前方に張出す構成となっている。
【0054】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0055】
まず、オペレータMは、足場部材14の乗降口14Aから足場部材14上に乗込み、足場部材14を足場として運転席10に着席する。ここで、オペレータMは、足場部材14上に乗込むときに、前手摺り部材20あるいは後手摺り部材13を把持することにより、乗降時の安全性を確保することができる。
【0056】
運転席10に着席したオペレータMは、例えば左,右の走行用レバー・ペダル15に対する手動操作あるいは足踏み操作、速度切換ペダル17に対する足踏み操作を行うことにより、油圧ショベル1を所望の作業場所まで走行させる。そして、油圧ショベル1が作業場所に到着した後には、オペレータMは、例えばスイングペダル18に対する足踏み操作、左,右の作業用操作レバー11A,12Aに対する手動操作を行うことにより、上部旋回体4を旋回させつつ、作業装置5を用いて土砂の掘削作業を行う。また、例えばブレーカ等の予備の油圧機器(図示せず)を用いるときには、オペレータMは、予備ペダル16に対する足踏み操作を行う。
【0057】
このとき、オペレータMの足元は、前カバー28によって前方から覆われているので、作業装置5のバケット5Dから離脱した岩石等が、飛石となってオペレータMの足元に飛散するのを前カバー28によって阻止することができる。
【0058】
ここで、本実施の形態による油圧ショベル1は、前手摺り部材20の下横棒22に、前カバー28の手摺り側固定部30を固定することにより、前手摺り部材20と前カバー28とを一体化している。従って、前手摺り部材20を構成する上,下の横棒21,22の固定部位21A,22Aを取付枠25に固着し、この取付枠25をキャノピ19の右前支柱19Cにボルト26を用いて固定し、前手摺り部材20の下横棒22に固着した前カバー28の足場側固定部31を、足場部材14にボルト32を用いて固定することにより、前手摺り部材20と前カバー28とを、キャノピ19の右前支柱19Cと足場部材14との間に強固に固定することができる。
【0059】
このように、本実施の形態による前カバー28は、前手摺り部材20の左,右方向の他端側(左端側)を足場部材14に固定するための固定部を兼ねるので、前手摺り部材20の左,右方向の他端側に固定部を設ける必要がなく、この分、前手摺り部材20の部品点数を削減することができ、製造コストを低減することができる。
【0060】
しかも、前カバー28は、前手摺り部材20の連結棒23の周囲と足場部材14との間に作業空間27Aを形成した状態で、前手摺り部材20の下横棒22に固着されている。
【0061】
このように、足場部材14の前端側に前手摺り部材20と前カバー28とを配置したとしても、前手摺り部材20の連結棒23の周囲と足場部材14との間に大きな作業空間27Aを形成することができる。この結果、
図1および
図7に示すように、運転席10に着席したオペレータMは、作業空間27A内に足元を配置することにより、例えば予備ペダル16、速度切換ペダル17等の各種のペダルに対する踏込み操作を円滑に行うことができる。
【0062】
また、前カバー28は、手摺り側固定部30と足場側固定部31に対し、カバー本体29が前方に張出すような屈曲形状に形成されているので、前カバー28全体の強度を高めることができる。この結果、掘削作業時において前カバー28に飛石等が衝突したとしても、前カバー28が変形、破損するのを抑えることができ、運転席10に着席したオペレータMの足元を、前カバー28によって確実に保護することができる。
【0063】
さらに、カバー本体29が、手摺り側固定部30と足場側固定部31に対して前方に張出した分、オペレータMの足元のスペースを前方に拡張することができ、オペレータMが、予備ペダル16等に対する足踏み操作を行うときの操作性をさらに高めることができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、前手摺り部材20を構成する上,下の横棒21,22の固定部位21A,22Aに、キャノピ19の右前支柱19Cに沿って上,下方向に延びる取付枠25を固定している。これにより、上横棒21の固定部位21Aと下横棒22の固定部位22Aとを、取付枠25によって一体化することができ、前手摺り部材20の強度を高めることができる。この結果、キャノピ19の右前支柱19Cに対する前手摺り部材20および前カバー28の取付強度を一層高めることができる。
【0065】
この場合、
図8中に二点鎖線で示すように、作業装置5のスイングポスト5Aは、旋回フレーム6の支持ポスト6Aに対して左,右方向に回動するので、カバー本体29は、その前面29Aが回動変位するスイングポスト5Aの最後部から距離L1だけ離間する位置まで、手摺り側固定部30と足場側固定部31とに対して前方に張出す構成となっている。
【0066】
次に、
図9および
図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、前手摺り部材を構成する上,下の横棒の固定部位を、キャノピの支柱に直接的に固定したことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図中、41は第1の実施の形態による前手摺り部材20に代えて本実施の形態に用いた前手摺り部材を示している。この前手摺り部材41は、第1の実施の形態によるものとほぼ同様に、1本の棒材をコ字状ないし横U字状に折曲げることにより形成され、左,右方向に延びる上横棒42、下横棒43と、上横棒42と下横棒43との間を連結し上,下方向に延びる連結棒44とにより構成されている。
【0068】
ここで、上横棒42の左,右方向の一端側は、四角形の平板からなる固定部位42Aとなり、該固定部位42Aには複数のボルト挿通孔42Bが穿設されている。下横棒43の左,右方向の一端側も、四角形の平板からなる固定部位43Aとなり、該固定部位43Aには複数のボルト挿通孔43Bが穿設されている。また、上横棒42の左,右方向の他端側42Cと下横棒43の左,右方向の他端側43Cとは、それぞれ連結棒44に連結されている。さらに、上横棒42の長さ方向の中間部位と下横棒43の長さ方向の中間部位との間は、上,下方向に延びる2本の補強棒45を介して連結されている。
【0069】
前手摺り部材41を構成する下横棒43の下面には、前カバー28の手摺り側固定部30が溶接等の手段を用いて強固に固着されている。これにより、前手摺り部材41と前カバー28とは一体化されている。
【0070】
一方、
図10に示すように、キャノピ19を構成する右前支柱19Cの下端側には、上,下の横棒42,43の固定部位42A,43Aに対応する2個のねじ座19Eが、上,下に離間して設けられている。そして、前手摺り部材41を構成する上,下の横棒42,43の固定部位42A,43Aは、ボルト46を用いて右前支柱19Cの各ねじ座19Eに固定され、前手摺り部材41に一体化された前カバー28の足場側固定部31は、ボルト32を用いて足場部材14に固定される。
【0071】
第2の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如き前手摺り部材41を用いたもので、本実施の形態においても、前手摺り部材41の左,右方向の一端側(右端側)は、キャノピ19の右前支柱19Cに固定され、前手摺り部材41の左,右方向の他端側(左端側)は、前カバー28を介して足場部材14に固定される。このため、前手摺り部材41には足場部材14に対する固定部を設ける必要がなく、この分、前手摺り部材41の部品点数を削減することができる。
【0072】
また、前カバー28は、前手摺り部材41の連結棒44よりも各横棒42,43の固定部位42A,43A側に寄った位置で、前手摺り部材41の下横棒43と足場部材14との間に配置されている。このため、前手摺り部材41の連結棒44の周囲と足場部材14との間には、前カバー28が存在しない作業空間27Aが形成される。この結果、運転席10に着席したオペレータMは、この作業空間27A内に足先を配置することにより、予備ペダル16、速度切換ペダル17等に対する足踏み操作を円滑に行うことができる。
【0073】
なお、上述した第1の実施の形態では、前カバー28を構成するカバー本体29の前面29Aが、回動変位するスイングポスト5Aの最後部から距離L1だけ離間する位置まで前方に張出した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば
図11および
図12に示す変形例の前カバー51のように、カバー本体52の前面52Aが、回動変位するスイングポスト5Aと干渉しない範囲で可能な限り前方まで張出す構成としてもよい。
【0074】
この場合、前カバー51は、前手摺り部材20に沿って左,右方向に延びるカバー本体52と、カバー本体52の上端側に位置し、前手摺り部材20の下横棒22に固定される手摺り側固定部53と、カバー本体52の下端側に位置し、足場部材14に固定される足場側固定部54とにより構成されている。ここで、カバー本体52の前面52Aは、回動変位するスイングポスト5Aの最後部から僅かな距離L2だけ離間し、この距離L2は、第1の実施の形態による前カバー28を構成するカバー本体29の前面29Aとスイングポスト5Aの最後部との間の距離L1よりも小さく設定されている(L2<L1)。これにより、カバー本体52の前面52Aをさらに前方まで張出させた分、運転席10に着席したオペレータMの足元のスペースを拡張することができ、走行用レバー・ペダル15、スイングペダル18等を足踏み操作するときの操作性を高めることができる。
【0075】
また、上述した第1の実施の形態では、3柱式キャノピ19を構成する右前支柱19Cに、前手摺り部材20を取付ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば右前支柱を有する2柱式キャノピ、4柱式キャノピの右前支柱に前手摺り部材20を取付ける構成としてもよい。