(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097989
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20170313BHJP
C30B 15/34 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B15/34
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-98402(P2012-98402)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-227160(P2013-227160A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】会田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】西口 健吾
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】池尻 憲次朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 元一
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−103863(JP,A)
【文献】
特開2013−103864(JP,A)
【文献】
特開2013−082587(JP,A)
【文献】
特開2011−190134(JP,A)
【文献】
特開2004−262684(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/157512(WO,A1)
【文献】
特開2004−056098(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0007708(US,A1)
【文献】
特開2006−312571(JP,A)
【文献】
Thomas Vosegaard,Crystal Structure Studies by Single-Crystal NMR Spectroscopy. 71Ga and 69Ga Single-Crystal NMR of β-Ga2O3 Twins,J.Am.Chem.Soc.,米国,1998年,vol.120,p.8184-8188
【文献】
Aida, H., et al.,"Growth of β-Ga2O3 single crystals by the edge-defined, film fed growth method",Japanese Journal of Applied Physics,2008年11月14日,Vol. 47, No. 11,pp. 8506-8509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双晶を1〜70%含む酸化ガリウム単結晶からなり、その表面にCMP加工が施され、結晶面ごとの研磨加工レート差によって、凹凸がストライプ状に形成されている、ことを特徴とする酸化ガリウム単結晶基板。
【請求項2】
凹凸の幅が3〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶基板。
【請求項3】
少なくとも2インチサイズである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ガリウム単結晶基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶からなるGa2O3基板は、例えば、GaN系の薄膜デバイスを成膜し発光素子などを作ることに用いられている。このようなGa2O3単結晶は、種々の方法により製造することが提案されているが、EFG(Edge Defined Film Fed Growth)法を用いた製造方法が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Ga2O3融液を受容するルツボに立設されたスリットを有するダイを備え、ダイの断面内に設けられたスリットを上昇したGa2O3融液に種結晶を接触させた後に種結晶を引き上げることにより、所定のサイズ、形状のGa2O3単結晶を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−56098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、デバイス薄膜をエピタキシャル成長する場合、デバイス成長を行うための基板主面の結晶方位の選択は極めて重要である。基板面方位によって薄膜と基板との格子ミスマッチの割合が変化し、薄膜の成長様式に対して影響を与えるためであり、これらは得られる薄膜の結晶品質に影響を及ぼし結果的にデバイス特性に影響を及ぼす。このため、デバイスごとに最適な結晶基板の素材を選択し、さらに使用するその結晶のどの結晶面を利用するかを決定する必要性がある。従って、デバイス形成に用いられる基板の表面には単一の結晶面のみが存在することが最も望ましい。
【0006】
しかし、β型酸化ガリウムは単斜晶系の結晶であり、(100)面の間隔が長く、この面を境界にした双晶を生じやすい。双晶は境界面を境にして、原子の配列が鏡像対称になっているため、酸化ガリウム単結晶基板上にデバイスを形成する際には、どの結晶面方位を用いてデバイス薄膜を成膜するのかによって、基板結晶に双晶が含まれることによる影響が異なる。
【0007】
例えば、(101)面を主面として用いるように双晶を含んだ結晶を基板加工した場合、基板表面に目的とする(101)面以外に(−201)面が露出する。この場合、(101)面基板であるにも関わらず(−201)面が主面上に存在する形となる。このように、基板の結晶面方位が異なる場合、デバイス薄膜成長そのものに影響を及ぼすため、(−201)面部分に成長したデバイス薄膜は実際のデバイスとして使用できなくなってしまう。従って、デバイス薄膜形成のため、(101)面、(−201)面などを用いる場合には、双晶の無い基板を用いることが必要になる。
【0008】
一般に、バルク結晶成長の分野では、結晶育成速度を管理し成長速度を遅くする、すなわち長時間かけて結晶成長を行うことで双晶を排除し完全な単結晶基板を得やすいことが知られている。しかしながら、Ga2O3は蒸気圧が高いため、高温においても蒸発しにくい他の素材の結晶に比べ、成長速度を遅くすると、大量の原料を蒸発させ失うことになってしまう。
【0009】
このような原料蒸発を抑える方法として、結晶成長環境を加圧雰囲気にすることや、蒸発分解を抑える方向に化学平衡を移行させることができるガス、例えば、酸素や炭酸ガスを雰囲気ガスに用いる、あるいは混入させることが一般に知られている。
【0010】
しかし、Ga2O3結晶育成の場合、結晶成長環境を加圧雰囲気にすると雰囲気ガスの熱伝導による熱損失が大きくなり、結晶成長に必要な温度(常圧で2000℃)に維持できなくなる。このため、加圧環境で育成を行うにはより強力なヒータの導入や断熱構造とすることが必要であり、現実的ではない。
【0011】
また、後者の場合、育成環境内にあるパーツ類は2000℃の高温にさらされており、雰囲気ガスによる劣化の問題があるため、雰囲気ガスの選択は容易ではない。特に、ルツボ素材への影響は無視できない。Ga2O3ではイリジウムルツボを用いているケースが多く、イリジウムは酸素や炭酸ガスなどと反応しやすいことから、蒸発分解を抑えるためにこれらの雰囲気ガスを、基板結晶の大量生産に最適と考えられるイリジウムルツボを用いたEFG法に適用することは出来ない。
【0012】
このように、酸化ガリウム単結晶基板を形成するには、大量の原料を蒸発させながら単結晶育成を行い、僅かな基板を得ることになっている。このため、原料の無駄が改善された工程で作られた酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板が求められている。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、原料の無駄が大幅に改善された工程で作られた酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の酸化ガリウム単結晶基板は、双晶を1〜70%含む酸化ガリウム単結晶からな
り、その表面にCMP加工が施され、結晶面ごとの研磨加工レート差によって、双晶に対応した凹凸をもったストライプ状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
例えば、凹凸の幅が3〜10μmである。
例えば、少なくとも2インチサイズである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料の無駄を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)EFG法による酸化ガリウム単結晶の製造方法の一例の育成炉を説明する模式断面図である。(b)
図1(a)の種結晶と酸化ガリウム単結晶、及びダイトップ上の酸化ガリウム融液部分を示す、部分拡大図である。
【
図3】双晶を含む酸化ガリウム単結晶の概略図である。
【
図4】スプレッド方向の成長速度と双晶発生率及び廃棄割合との関係を示す図である。
【
図5】酸化ガリウム単結晶基板の一例を示す図である。
【
図6】酸化ガリウム単結晶基板の他の例を示す図である。
【
図7】EFG法による、酸化ガリウム単結晶の一例の製造方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板について図面を参照して説明する。本実施の形態では、酸化ガリウム単結晶をEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法で(101)面の結晶育成により製造する場合を例に本発明を説明する。
【0021】
EFG法とは、スリットを有するダイが収容されたルツボに酸化ガリウム原料を投入して加熱し、スリットを介してその上部に溢出した酸化ガリウム原料の融液と種結晶とを接触させて酸化ガリウム単結晶を製造(育成)する方法である。
図1(a)は、EFG法による酸化ガリウム単結晶の製造方法の一例の育成炉を説明する模式断面図であり、同図(b)は
図1(a)の種結晶と酸化ガリウム単結晶、及びダイトップ上の酸化ガリウム融液部分を示す、部分拡大図である。まず、酸化ガリウム単結晶の製造装置を用いた酸化ガリウム単結晶の製造方法について簡単に説明する。
【0022】
図1(a)に示すように、酸化ガリウム単結晶の製造装置1の内部には、酸化ガリウム単結晶の原料としての酸化ガリウム融液2を受容するルツボ3が配置されている。ルツボ3は、有底円筒状に形成され、支持台4上に載置されており、その底面の温度が熱電対7によって測定されている。ルツボ3は、酸化ガリウム融液2を受容できるように、耐熱性を有する金属材料、例えば、イリジウム(Ir)により形成され、図示しない原料投入部によりルツボ3内に必量な量の原料が投入される。
【0023】
ルツボ3内には、ダイ5が配置されている。ダイ5は、例えば、略直方体状に形成され、その下端から上端(開口5B)に延びる1つまたは複数のスリット5Aが設けられている。例えば、
図1(a)では、ダイ5は、その厚さ方向の中央に1つのスリット5Aが設けられている。このダイ5は、製造する酸化ガリウム単結晶の形状、枚数等に応じて所望のものが用いられる。
【0024】
1つのスリット5Aは、ダイ5のほぼ全幅にわたって設けられ、且つ、ダイ5の厚さ方向に所定の間隔で設けられている。このスリット5Aは、酸化ガリウム融液2を毛細管現象によってダイ5の下端からスリット5Aの開口5Bに上昇させる役割を有する。
【0025】
ルツボ3の上面には、蓋6が配置されている。蓋6は、ダイ5を除くルツボ3の上面が閉塞される形状に形成されている。このため、ルツボ3の上面に蓋6が配置された状態で、スリット5Aの開口5Bを除くルツボ3の上面が閉塞される。このように、蓋6は、ルツボ3から高温の酸化ガリウム融液2が蒸発することを防止し、さらにスリット5Aの上面以外に酸化ガリウム融液2の蒸気が付着することを抑制する。
【0026】
また、ルツボ3を包囲するように設けられた断熱材8の周囲には、例えば、高周波コイルからなるヒータ部9が配置されている。このヒータ部9によりルツボ3が所定の温度に加熱され、ルツボ3内の原料が融解して酸化ガリウム融液2になる。原料の融解温度は、例えば、ダイ5の開口5B上に置いた酸化ガリウム粒子の溶ける温度として確認される(チップメルト)。断熱材8は、ルツボ3と所定の間隔を有するように配置されており、ヒータ部9により加熱されるルツボ3の急激な温度変化を抑制する保温性を有する。
【0027】
また、スリット5Aの上部には、種結晶10を保持する種結晶保持具11が配置されている。種結晶保持具11は、種結晶保持具11(種結晶10)を昇降可能に支持するシャフト12に接続されている。
【0028】
そして、シャフト12により種結晶保持具11を降下して、毛細管現象で上昇し、開口5Bから露出したダイトップ上の融液2A(
図1(b)参照)と種結晶10とを接触させて(シードタッチ)、さらに、シャフト12により種結晶保持具11を上昇させて、細いネック部13aを形成(ネッキング工程)した後に、単結晶13をダイ5の幅方向に拡張するように結晶成長させてスプレッド部13bを育成(スプレディング工程)し、ダイ5の幅まで拡幅した(フルスプレッド)後は、ダイ5と同じ幅の直胴部13cが育成される(直胴工程)。
【0029】
このような酸化ガリウム単結晶の製造装置により製造(育成)された酸化ガリウム単結晶13の概略図を
図2に示す。
図2に示すように、酸化ガリウム単結晶13は、略シート状に形成されている。酸化ガリウム単結晶13は、育成過程に対応した結晶形状に形成されており、ネッキング工程で形成されるネック部13aと、スプレディング工程で形成されるスプレッド部13bと、直胴工程で形成される直胴部13cとを備えている。なお、酸化ガリウム単結晶基板21として利用するのは、通常、直胴部13cの結晶である。
【0030】
図3に(101)面における双晶を含んだ酸化ガリウム単結晶の概略図を示す。
図3に示すように、酸化ガリウム単結晶13は、帯状に発生する双晶14を含んでいる。これは、スプレッド方向の成長速度が(101)面を拡げるのに適切な速度を超えると、双晶14が生じる確率が増大して酸化ガリウム単結晶13中のX1に双晶14が生じ、適切な速度となるX2まで(101)面に現れるためである。このように、一旦、生じた双晶14は引上げ方向に沿って成長し続ける。この結果、酸化ガリウム単結晶13に含まれる双晶14は、帯状に存在する。
【0031】
本発明の酸化ガリウム単結晶13は、双晶14を1〜70%含んでいる。双晶14が1〜70%含んでいることにより、原料の無駄を大幅に改善することができるためである。酸化ガリウム単結晶13は、双晶14を1〜50%含んでいることが好ましく、3〜18%含んでいることが最も好ましい。かかる範囲とすることにより、原料の無駄をさらに大幅に改善することができるためである。
【0032】
以下、酸化ガリウム単結晶13に含まれる双晶14と原料の無駄との関係について説明する。
【0033】
まず、育成速度と双晶発生との関係について説明する。結晶の引上げ速度をVpullとし、スプレッド方向の成長速度をVspread とすると、結晶のスプレッド角度θはθ=arctan(Vspread/Vpull)となる。結晶のスプレッド方向の成長速度は、スプレディング工程において温度を徐々に下げることによって制御することができる。通常、スプレッド開始時が最も高温である。結晶の引き上げ速度は、単純に、結晶をシードクランプしている引き上げ軸の引き上げ速度によって制御される。引き上げ速度を一定に保ち、スプレッド方向の成長速度を変化させた場合の双晶混入比、スプレディング工程の所要時間、原料の蒸発量との関係を表1に示す。
【0035】
表1に示すように、スプレッド方向の成長速度(ダイ5の幅方向の成長速度)が小さいほど、双晶の発生が抑えられていることが分かる。双晶を全く含まずに成長するには、スプレッド方向の成長速度を「1mm/hour」とすることが好ましい。しかしながら、スプレッド方向の成長速度が遅く、スプレディング工程に時間を要することは、基板結晶に使用できる直胴部の結晶成長までに多くの時間を費やしてしまう。原料は、スリットの開口部5Bのうち、育成された結晶によって蓋がされていないオープンスリット5C(
図7(b)を参照)から、スプレッド完了まで蒸発し続ける。また、スプレッドは育成工程の中でも最も高温で行っている(スプレッド完了に向け徐々に温度を下げる)工程のため、原料蒸発への影響が最も高い工程である。従って、原料蒸発の観点からは、いち早くスプレディング工程を終了することが望ましいといえる。
【0036】
スプレディング工程中の蒸発量は、以下の式に基づいて計算することができる。
スプレッド中の蒸発量[g] = 0.12×W×t
ここで、Wはスリット5Aの幅(ダイ5の幅方向(
図7(a)参照))[mm]、tはスプレディング工程の所要時間[hour]である。例えば、2インチ基板を製造するためのルツボ3では、W=50.8[mm]となっている。この式からスプレディング工程の所要時間に基づき蒸発量を求めることができる。表2にスプレッド方向の成長速度、スプレッド角度θ、スプレディング工程の所要時間、蒸発量、スプレッド中の原料蒸発ロス(2インチ基板の製造に用いる直胴部分の結晶重量46グラムに対する蒸発量の割合)の関係を示す。
【0038】
表2に示すように、スプレッド方向の成長速度を「1mm/hour」とすることにより、双晶14を含まない酸化ガリウム単結晶13を成長させることができるが、その場合、スプレッド完了までに25時間を要し、結果的に150グラムの原料を蒸発させて失うことになる。一方、2インチ基板の製造に用いる直胴部分の結晶体積は(50.8×50.8×3mm3)であり、その重量は僅か46グラムである。このため、双晶14を含まずに結晶成長しようとした場合、46グラムを得るのにその300%以上に相当する原料を蒸発させて失うことになることが分かった。
【0039】
しかし双晶上に形成されたチップは使用できないことから、素子工程で排除するチップがあることも考慮する必要がある。スプレッド中の蒸発量をAグラム、双晶発生率をB%とした場合、実際にデバイスに使用される重量(双晶部分を除いた結晶重量)に対する廃棄される重量(蒸発分と双晶分の重量)の割合は、次のように計算できる。
廃棄割合=(A+46×B%)÷(46×(100−B%))
それぞれのスプレッド方向の成長速度に対する廃棄割合を計算した結果を表3に示す。
【0041】
表3に示すように、スプレッド方向の成長速度が「1mm/hour」では廃棄割合は331%であるのに対し、スプレッド方向の成長速度が「10mm/hour」では廃棄割合40%にまで低減することができる。スプレッド方向の成長速度と双晶発生率及び廃棄割合との関係を
図4に示す。
【0042】
図4に示すように、スプレッド方向の成長速度を3〜18mm/hourの範囲にする、すなわち、双晶14が1〜70%含まれていることにより、廃棄され無駄になる原料を大幅に低減できることが分かる。さらにスプレッド方向の成長速度を3〜16mm/hourの範囲とする(双晶14が1〜50%含まれている)ことにより原料の無駄をさらに改善でき、スプレッド方向の成長速度を7〜14mm/hourの範囲とする(双晶14が3〜18%含まれている)ことにより原料の無駄をより改善できる。
【0043】
酸化ガリウム単結晶基板21は、
図2に示すように、このような双晶14を含む酸化ガリウム単結晶13を、少なくとも2インチサイズ(2インチ角)、例えば、2インチサイズに切り出した基板である。例えば、酸化ガリウム単結晶基板を半導体デバイス基板に用いる場合、その表面を原子レベルで平坦にする必要がある。そのための仕上げ加工にCMP(Chemical Mechanical Polish)加工が適応される。CMP加工は化学的なエッチング効果と機械加工とを組み合わせた加工である。この双晶を含む基板にCMP加工を用いて仕上げ研磨を行ったところ、(101)面と(201)とでは化学的性質が異なり研磨加工レートが異なっていることが分かり、結果的に段差が生じることが分かった。すなわち、帯状に生じた(−201)面部分が(101)面より20〜30ミクロン高くなる。これにより目視によって簡単に(101)面と(−201)面とを判別することが可能である。
【0044】
このため、帯状に双晶を含み、かつ、その境界を簡単に見分けることのできる双晶を含む酸化ガリウム単結晶基板を積極的に用いてデバイス形成を行うことにより、半導体装置でハンドリングが可能なうえに、素子工程の最終工程であるチップ分割時に簡単に(−201)面上に形成された不良素子を排除することができる。また、完全な単結晶を得るために300%以上もの原料を蒸発させる工程に比べ、原料蒸発を抑えることが可能になる。
【0045】
さらに、双晶を含む酸化ガリウム単結晶基板の中でも、50%前後の双晶を含み、双晶の幅と間隔が3〜10μmの範囲で揃った基板は、以下のような用途で利用することができる。
【0046】
双晶の幅と間隔が3〜10μmの範囲で揃った基板にCMP加工を施すと、上述したように結晶面ごとの研磨加工レート差によって、
図5のように3〜10μm程度の幅の凹凸を持った基板をマスク無しで作製することができる。通常、このような凹凸を持ったパターン基板を作製する際は、基板を研磨加工した後にフォトレジスト等によるマスクを基板表面に形成し、マスクの開口部をエッチングすることで凹面を形成する。しかし、この方法によれば、マスク形成に要する工程がまったく不要となり、大幅なコスト削減が期待できる。
【0047】
このようなパターン基板上にGaN系の薄膜デバイスを成膜すると、
図6のような、デバイス形成面上に成長した転位密度の小さいGaNで、双晶面上に成長した転位密度の大きいGaNを覆い隠すように、LEPS(Lateral Epitaxy on the Patterned Substrate)法により成長させることができ、双晶を含んだ基板からであっても高品質のGaN基板を作製することが可能になる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、酸化ガリウム単結晶13が双晶14を1〜70%含んでいるので、原料の無駄を大幅に改善することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。例えば、上記実施の形態では、EFG法での(101)面の結晶育成により酸化ガリウム単結晶を製造する場合を例に本発明を説明したが、酸化ガリウム単結晶の製造方法はEFG法に限定されるものではなく、双晶14を1〜70%含む酸化ガリウム単結晶13が形成可能な各種の方法を用いることができる。また、育成する結晶面も(101)面に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、本発明の酸化ガリウム単結晶、及び、酸化ガリウム単結晶基板に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 酸化ガリウム単結晶の製造装置
2 酸化ガリウム融液
3 ルツボ
4 支持台
5 ダイ
5A スリット
5B 開口部
6 蓋
7 熱電対
8 断熱材
9 ヒータ部
10 種結晶
11 種結晶保持具
12 シャフト
13 酸化ガリウム単結晶
13a ネック部
14 双晶
21 酸化ガリウム単結晶基板