【文献】
白井 寛人,輝度画像に基づく夜間住宅街路の不安感の表現,[online],日本,2010年,[平成28年3月8日検索]、インターネット<URL:http://www.enveng.titech.ac.jp/nakamura/members/H22/08M30193.pdf>
【文献】
松本 亜美,対人不安感から見た夜間街路照明の評価,[online],日本,2012年,[平成28年3月8日検索]、インターネット<URL:http://www.enveng.titech.ac.jp/nakamura/members/H24/10M30359.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の理解を容易にするために、人が感じる不安について説明する。
防犯灯や街路灯で街路が照明された照明環境の中に暗い領域があると、街路を歩行する歩行者は、「対向歩行者の顔の詳細が判別不能」や「暗い領域に誰かが隠れているかもしれない」などの印象を受けることにより、不安を感じる。
発明者は、歩行者が感じる不安の要因について研究したところ、この不安の要因は、周囲の明るさ、他人の気配、及び街路の見通しの3つの要素から成るとの知見を得た。照明環境における他人の存在は偶然に左右されるものであり静的な要因ではないから、照明環境が人に不安を与える要素は、明るさと見通しとの2つの要素であると言える。
【0016】
明るさは、歩行者が照明環境を視認した際に実際に感じる明暗を示し、歩行者は暗く感じる箇所ほど不安を感じる傾向がある。これは、上述の通り、歩行者が「対向歩行者の顔の詳細が判別不能」や「暗い領域に誰かが隠れているかもしれない」などの印象を受けるためである。
見通しは、歩行者が照明環境を視認したときの実際の視認のし易さである視認性に関係するものであり、歩行者は視認性が悪い箇所ほど不安を感じる傾向がある。
以上のことから、歩行者が照明環境において不安を感じる箇所とは、明るさが低く(暗く)感じ、かつ視認性が低いと感じる箇所と言える。
したがって、歩行者が視認する照明環境を写した画像について、明るさの分布、及び視認性の分布をそれぞれ求め、明るさが低く、かつ視認性が低い箇所を特定することで、歩行者が不安を感じる箇所が特定できるのである。
このようにして不安を感じる箇所を特定した不安感評価画像を生成する画像処理装置について、以下に図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1のブロック図である。
この図に示すように、画像処理装置1は、評価対象画像入力部2と、輝度画像生成部3と、明るさ画像生成部4と、視認性評価画像生成部6と、不安感評価画像生成部8と、不安感評価画像出力部10とを備えている。この画像処理装置1は、CPU等のプログラム実行手段や、画像データの入出力手段、データの記憶手段等を備えたコンピュータに、本発明に係る画像処理プログラムを実行させて、上記の各部の機能を実現させることで実施される。
【0018】
評価対象画像入力部2は、評価対象画像12の入力を受け付け、明るさ画像生成部4、及び視認性評価画像生成部6に出力する。
評価対象画像12は、不安感を評価する対象の照明環境を写した画像のデジタルデータであり、画像を構成する各画素の輝度値を含んでいる。評価対象画像12は、カラー画像であってもモノクロ画像であっても、いずれでも良い。
輝度画像生成部3は、評価対象画像12の各画素の輝度値に基づいて、評価対象画像12の輝度分布を示す輝度画像50(
図5)を生成し、明るさ画像生成部4、及び視認性評価画像生成部6のそれぞれに出力する。
【0019】
明るさ画像生成部4は、評価対象画像12の輝度画像50において、各画素の輝度値を明るさ値に変換した明るさ画像14を生成することで、評価対象画像12の明るさ分布を求める。この明るさ値には、輝度値に単純に比例した明るさを表す値ではなく、人が感じる明るさの感覚(「明るさ知覚」とも呼ばれる)を定量化した値である。
詳述すると、明るさの感覚は、対象領域の輝度の値とは直接対応しておらず、対象領域と周辺領域との主要な輝度の対比に基づくことが知られている。例えば、対象領域より周辺領域の方が低輝度の場合と、逆に周辺領域の方が高輝度の場合を比較すると、対象領域の輝度は同じであっても、前者の方が明るいと感じられる。
このような明るさ感覚に基づいて評価対象画像12の明るさ分布を求めることで、この明るさ分布には、実際に人が感じる明るさ感が反映されることとなり、照明環境において人が感覚的に暗いと感じる箇所を正確に抽出できる。
【0020】
明るさ画像14の生成には、例えば特開2004−061150号公報や国際公開2006/132014号パンフレットなどに開示の技術を用いることができる。
すなわち、明るさ画像生成部4は、評価対象画像12の輝度画像50のウェーブレット分解を行い、J個(Jは2以上の整数)のサブバンド画像を生成し、予め定めた輝度と明るさ感との関係に基づいて、サブバンド画像の画素ごとに輝度値を明るさ値に変換し、輝度値が明るさ値に変換されたK個(Kは2以上の整数;K≦J)のサブバンド画像のウェーブレット合成を行い、明るさ値の分布を示す明るさ画像14を生成する。
【0021】
視認性評価画像生成部6は、評価対象画像12の輝度画像50の輝度値に基づき、視認性評価値の分布を示す視認性評価画像16を求める。
詳述すると、視認性の評価基準には、一般に、輝度の空間的な変化(画像の中のエッジに相当)に対する人が持つ感度(いわゆるコントラスト感度)が採用されている。また、輝度画像50における各箇所の視認性を評価する手法としては、ウェーブレット変換を用いて輝度画像50における局所的な輝度変化特性を抽出し、それを人の視覚特性を組み込むことにより人の視認性を評価する手法が知られている。また、近年では、例えば特開2009−181324号公報に開示されているように、輝度画像50の中のぼやけた構造に対しても視認性評価を正確に行う技術が提案されており、視認性評価画像生成部6は、この技術を用いて視認性評価画像16を生成する。
【0022】
すなわち、視認性評価画像生成部6は、評価対象画像12の輝度画像50に含まれる複数の空間周波数成分を抽出するウェーブレット分解を行い、抽出した複数の空間周波数成分の各々の各画素における空間周波数成分の変化率を示す1次微分量を算出し、これら複数の空間周波数成の各々の1次微分量を用いてウェーブレット合成を行うことにより人の目による見え方の評価を示す視認性評価画像16を生成する。
このようにして生成された視認性評価画像16は、評価対象画像12の輝度画像50の各画素の輝度値を、視認性の優劣を定量化した視認性評価値に変換した画像となる。
【0023】
不安感評価画像生成部8は、評価対象画像12の中で人が不安に感じる箇所を示した不安感評価画像18(
図9)を生成するものであり、不安感予測値算出部9と、画像生成部11とを備えている。
不安感予測値算出部9は、明るさ画像14、及び視認性評価画像16に基づいて、評価対象画像12を区画して成る小領域52(
図5)ごとに不安感予測値を算出する。不安感予測値は、小領域52について人が感じる不安を定量化したものであり、人が不安を感じる可能性、及びその不安の強度を予測する値である。この不安感予測値の算出の詳細については後述する。
画像生成部11は、小領域52を、その不安感予測値の大きさに応じた色及び/又は模様で示す不安感評価画像18を生成する。本実施形態では、不安感予測値が小さい方から順に、(1)不安である可能性が低い、(2)不安である可能性がやや高い、(3)不安である可能性が高い、及び(4)不安である可能性が非常に高い、の4段階に区分され、各段階に対応した色及び/又は模様で各小領域52が示される。この表示により、不安感評価画像18の中で人が不安を感じる箇所を、その不安感の程度とともに簡単、かつ正確に把握できる。
不安感評価画像出力部10は、不安感評価画像18を表示デバイスや記憶デバイス、通信ネットワークを通じた他の装置に出力するものである。
【0024】
次いで、不安感評価画像18の生成について詳述する。
上述の通り、発明者は、次に説明する提示実験を通じて、照明環境において人が不安に感じる箇所、及びその箇所について不安を感じる程度は、輝度や目立ちよりも、人が感じる明るさ、及び視認性に依存する、との知見を得た。なお、目立ちとは、人が感じる目立ちの程度を定量化したものであり、目立ちの定量化技術については、例えば特開2009−295081号公報に開示されている。
【0025】
上記提示実験の概要は次の通りである。
すなわち、10名の女性の被験者に対し、刺激画像40(
図3)を提示し、被験者32(
図2)が刺激画像40の中で不安を感じる箇所に、その程度に応じた色で着色するというものである。
図2は、刺激画像40の提示実験の実験環境を示す模式図である。
この図に示すように、提示実験は、前後の幅A1が900mm、床から天井までの高さA2が1800mm、奥行きが500mmの箱型に区画され、所定の暗さに維持された暗室30の中に被験者32を座らせて行われた。またスクリーン34にプロジェクタ装置36(表示装置)を用いて刺激画像40を投影することで、被験者32に刺激画像40の像を提示した。このとき、プロジェクタ装置36は被験者32の正面上方に設置され、被験者の背面上方に設置された鏡38に向けて投影光39を照射し、鏡38で反射した投影光39を被験者32の背後から当該被験者32の正面に設置したスクリーン34に投射するようにした。スクリーン34は、刺激画像40の画角と被験者32の視野角とが等しくなるように配置され、この提示実験では、高さA3が450mm、奥行きが600mmの矩形状であり、被験者32の目とスクリーン34までの距離A4を430mmとした。
【0026】
図3は刺激画像40の一例を示す図であり、
図4は評価用画像41の一例を示す図である。
刺激画像40は、不安感を評価する評価対象の照明環境の一例として、防犯灯で照明された夜間の街路を歩行者の視点から写した写真画像であり、評価対象画像12に相当する。この刺激画像40の各画素の明るさは、刺激画像40をスクリーン34に投影したとき各画素の輝度値が、実際の夜間の街路の輝度分布と同程度となるように設定され、また刺激画像40の輝度のダイナミックレンジは、実際の夜間の街路の輝度分布と同程度のダイナミックレンジを有している。この提示実験では、
図3に示すように、グレースケールの写真画像が用いられている。ただし、路面形状や他人の気配が与える不安感への影響を排除すべく、刺激画像40には、(1)街路に傾斜が無く平坦であること、(2)直線の街路であること、(3)T字路がないこと、(4)人や車両が写っていないこと、(5)住宅以外の建物が写っていないことの5つの条件を満たす写真が刺激画像40に用いられている。
提示実験では、被験者32に、写真の内容が異なる45パターンの刺激画像40を提示し、被験者32が、それぞれの刺激画像40について全体から受ける不安感と、細部の箇所から受ける不安感とを評価するようにした。
刺激画像40の全体から受ける不安感は、非常に安心から非常に不安までの7段階で評価した。
また細部から受ける不安感は、
図4に示すように、刺激画像40の線画である評価用画像41を予め作成し、これを被験者32に渡し、被験者32が刺激画像40の中で不安を感じる箇所(領域)である不安箇所42に、その不安を感じる程度に応じた色(例えば、やや不安を水色、不安を紫色、非常に不安をピンク)で評価用画像41に着色することで評価した。
【0027】
ここで、刺激画像40の輝度分布を示す輝度画像50(
図5)は、輝度値、上記明るさ値、及び上記視認性評価値を物理量として含ことから、これらの物理量と、刺激画像40の不安箇所42との相関を解析した。
具体的には、
図5に示すように、刺激画像40に基づき輝度画像50を生成し、この輝度画像50に基づいて、明るさ値の分布を示す上記明るさ画像14、及び、視認性評価値の分布を示す上記視認性評価画像16を生成する。これらの画像の生成には、本実施形態の画像処理装置1を用いることができる。
【0028】
次いで、輝度画像50、明るさ画像14、及び、視認性評価画像16を、縦横128×128[pixel]の正方形の小領域52に分割し、それら小領域52ごとに、各画素の輝度値である平均輝度、明るさ値の平均値である平均明るさ、及び、視認性評価値の平均値である平均視認性を集計した。
また被験者32が着色した評価用画像41も同様に、小領域52に分割し、小領域52ごとに、その小領域52に不安を感じた程度の評価値(不安感評価値)を集計した。
そして、小領域52の平均輝度、平均明るさ、及び平均視認性と、不安感評価値との相関係数を求めた。
図6は、小領域52の平均輝度、平均明るさ、及び平均視認性と、不安感評価値との相関係数の結果を示す図である。
この図に示すように、明るさ値、及び視認性評価値は、輝度値に比べて不安感評価値と高い負の相関関係があることが分かる。これは、明るさ値、及び視認性評価値が低いほど不安感評価が上がることを示唆する。このことから、明るさ値、及び、視認性評価値を用いることで、夜間街路の不安感を定量的に評価できることが分かる。
【0029】
そして発明者は、更なる研究の結果、小領域52の不安感評価値は、その小領域52の平均明るさX
1(n)、小領域52の明るさ値の歪度X
2、小領域52の明るさ値の不偏分散X
3、及び小領域52の平均視認性X
4(n)の4つの数値を説明変数とした重回帰分析により精度良く説明できるとの知見を得た。
この重回帰分析の結果から得られた不安感予測式は、次式(1)の通りである。
しかしがって、刺激画像40の各小領域52の不安感を定量化した不安感予測値Yは、明るさ画像14、及び視認性評価画像16と、この式(1)とに基づいて定量的に求められる。
【0030】
ただし、nは刺激画像40の各小領域52を区別するための識別番号、N(n)は、識別番号nの小領域52の刺激画像40の中での位置に応じた重み係数である。
【0031】
上記(1)式において、歪度とは、平均値を中心とする分布の非対称性の方向とその程度を示す値である。歪度が正の値であれば分布が正規分布よりも左に偏っている状態、負の値であれば分布が右に偏っている状態、ゼロならば正規分布を示す。
すなわち、上記(1)式によれば、明るさ画像14の明るさ値の歪度X
2が大きいほど不安感を感じることが示されており、これは、小領域52の平均明るさX
1が明るさ画像14の明るさ値の平均値よりも低い方に偏っているほど、不安が強くなるということを意味する。
また不偏分散とは、標本が平均よりもどれだけ散らばっているかを示す値である。
すなわち、上記(1)式によれば、明るさ画像14の明るさ値の不偏分散X
3が大きいほど不安感を感じることが示されており、これは、明るさ画像14において明るさ値のムラが大きいほど不安が強くなるということを意味する。
【0032】
また発明者は、上述の提示実験を通じて、刺激画像40の中での小領域52の位置によって不安を感じる程度が異なるとの知見を得ており、上記重み係数Nは、この知見に基づき、小領域52の位置によって不安感の重み付けをするものである。
詳述すると、提示実験において、被験者32が着色した評価用画像41の小領域52ごとに、その小領域52に不安を感じると指摘された回数(不安感指摘回数)を45パターンの評価用画像41を対象に集計した。
【0033】
図7は評価用画像41の小領域52に対する不安感指摘回数の分布図である。
この図に示すように、被験者32が不安感を指摘する箇所は、評価用画像41の中央、すなわち歩行者の目線位置に集中し、評価用画像41の上部中央、及び下部全体は指摘が少ないことが分かる。つまり、人は視野内での箇所に応じて不安を感じる程度が違い、視野内の上部中央、及び下部全体よりも、視野内中央箇所で不安を感じる可能性が高い。
この不安感指摘回数の分布に基づいて、刺激画像40における小領域52の位置に応じて上記重み係数Nによって不安感の重み付けをすることで、人が不安を感じる箇所をより正確に特定することができる。
【0034】
なお、不安感指摘回数の集計結果により、空や路面が指摘されることは少ない、及び、不安感は街路の奥よりも手前側の方が強くなる、といった知見も得られた。
また小領域52の位置に応じた重み付けをしない場合には、式(1)において上記重み係数Nを省略した次式(1)’を用いて、小領域52の不安感予測値Yを簡易的に求めて定量評価できる。
【0035】
次いで発明者は、刺激画像40の全体から受ける不安感は、小領域52の不安感予測値Y(n)を説明変数とした重回帰分析により精度良く説明できるとの知見を得た。
この重回帰分析により得られた不安感予測式は、次式(2)の通りである。
すなわち、刺激画像40の全体の不安感予測値Y
wholeは、上記式(1)により求められた小領域52の不安感予測値Y(n)と、この式(2)とに基づいて定量的に求められる。
【0036】
ただし、mは、刺激画像40における小領域52の総数
【0037】
ところで、刺激画像40の提示実験では、前掲
図2に示すように、表示装置の一例たるプロジェクタ装置36により刺激画像40をスクリーン34に投影することで被験者32に提示される。
すなわち、被験者32が実際に視認している刺激画像40の輝度分布は、刺激画像40の画像データの各画素の輝度値の分布ではなく、プロジェクタ装置36によってスクリーン34に画像を投影する際の輝度分布の圧縮特性に応じて圧縮を受けた輝度分布となる。
【0038】
図8は、上記提示試験におけるスクリーン輝度Lsの圧縮特性を示す図である。
刺激画像40は、その輝度分布が評価対象の照明環境の現地の空間(実空間)と同じ輝度分布となるように撮影されている。すなわち、この刺激画像40の輝度を実空間の輝度Lfと見なすことができる。一方、スクリーン34に投影された像の輝度分布を測定し、スクリーン輝度Lsのダイナミックレンジを求めると、
図8に示すように、スクリーン輝度Lsのダイナミックレンジは、最低輝度Kmin(=0.04cd/m
2)から最大輝度Kmax(=20cd/m
2)であった。
したがって、実空間に相当する刺激画像40の輝度Lfとスクリーン輝度Lsとはダイナミックレンジが大きく異なり、実空間の輝度Lfにおける最低輝度Kmin以下の輝度と、最大輝度Kmax以上の輝度が全てスクリーン輝度Lsのダイナミックレンジの範囲に圧縮される。
【0039】
このため、刺激画像40を被験者32に提示したとしても、実際には、被験者32は、実空間と異なる輝度分布で評価対象の照明環境を視認し、不安感を評価することになる。 したがって、スクリーン34の像を視認して評価した被験者32の不安感評価値と、明るさ値、及び視認性評価値との相関を正確に求めるために、通常、明るさ画像14、及び視認性評価画像16を、実空間(=刺激画像40)の輝度Lfではなく、スクリーン輝度Lsに基づいて生成する。
【0040】
しかしながら、発明者は、鋭意研究の結果、被験者32が視認した像のスクリーン輝度Lsよりも、実空間の輝度である刺激画像40の輝度Lfを用いて明るさ画像14、及び視認性評価画像16を求めた方が、上記(1)式、及び(2)式の不安感予測式を重回帰分析により求めたときに相関係数が高くなり、より正確に不安感を予測できるとの知見を得た。
そして、この知見に基づいて求めた不安感予測式が上記(1)式、及び(2)式である。
なお、スクリーン輝度Lsを用いて明るさ画像14、及び視認性評価画像16を求めた場合には、刺激画像40の輝度Lfを用いたときよりも、上記(1)式の不安感予測式が含む平均明るさX
1、明るさ値の歪度X
2、明るさ値の不偏分散X
3、及び小領域52の平均視認性X
4の4つの説明変数のうち、特に平均明るさX
1の重みが小さくなる、ことが確認されている。
【0041】
図9は、画像処理装置1の動作説明図である。
同図に示すように、画像処理装置1は、入力された評価対象画像12を受け取り、この評価対象画像12を輝度画像50に変換し、この輝度画像50から明るさ画像14、及び視認性評価画像16を生成する。
次いで、画像処理装置1は、上記(1)式で示した不安予測式に基づいて、これら明るさ画像14、及び視認性評価画像16の小領域52ごとに不安感予測値Y(n)を求める。
そして、画像処理装置1は、不安感予測値Y(n)の値の大きさに応じて4段階に分け、小領域52ごとに、その不安感予測値Y(n)に応じた色及び/又は模様で小領域52を表示する不安感評価画像18を生成する。
これにより、評価対象画像12の中で人が不安を感じる箇所を、その不安の程度(すなわち、不安と指摘される可能性の大きさ)とともに示した不安感評価画像18が得られることとなる。
なお、画像処理装置1が小領域52ごとの不安感予測値Y(n)と、上記(2)式とに基づいて、評価対象画像12の全体から受ける不安感の不安感予測値Y
wholeを求め、不安感評価画像18とともに出力しても良い。
【0042】
このように、本実施形態によれば、評価対象画像12の中で人が不安を感じる箇所を示した不安感評価画像18が得られる。さらに不安感評価画像18が、不安を感じる箇所について、その不安感を定量的に示すようにしたため、評価対象の中で人が不安を感じる箇所と、その不安感の程度を正確、かつ簡単に把握できる。
これにより、例えば夜間に防犯灯によって照明された街路において、歩行者がどのような箇所に不安を感じるかを定量的に予測でき、防犯灯の配置や当該防犯灯の配光設計に役立てることができる。
【0043】
また本実施形態によれば、評価対象画像12の中央に近いほど不安感予測値Yを大きくするようにしたため、不安感評価画像18には、人の視野内での箇所に応じた不安を感じる程度の違いが反映されることとなり、評価対象の中で人が不安を感じる箇所をより正確に特定できる。
【0044】
また本実施形態によれば、評価対象画像12が表示されるスクリーン輝度Lsではなく、評価対象の輝度分布と同じダイナミックレンジを有する輝度画像50に基づいて生成された明るさ画像14、及び視認性評価画像16を用いて不安感予測値Yを算出する構成としたため、人が評価対象を実際に視認したときの不安感を、より正確に予測できる。
【0045】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、刺激画像40を被験者32に提示する手法として、プロジェクタ装置36がスクリーン34に刺激画像40を投射する手法を用いたが、これに限らず、ディスプレイ装置等の他の表示装置に刺激画像40を表示して被験者32に提示しても良い。
また例えば、コンピュータを、上述した画像処理装置1として機能させるための画像処理プログラムを、例えばCDやDVDなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して実施しても良く、またインターネット等の電気通信回線を介して送信することも可能である。