(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解繊工程では、円筒容器内にその周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、該旋回流中に、強化繊維からなる繊維集束体を切断したチョップドファイバーを供給し、攪拌して解繊して解繊チョップドファイバーを得る、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート>
本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート(以下、「プレシート」と略す。)は、解繊チョップドファイバーと熱融着性樹脂とを含有するエアレイドウェブが加熱処理されたシートである。
ここで、エアレイドウェブとは、エアレイド法によって形成された不織布のことである。加熱処理は、解繊チョップドファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる加熱処理であり、後述するプレシートの製造方法の結着工程にて詳述する。
【0009】
(解繊チョップドファイバー)
本発明における解繊チョップドファイバーは、チョップドファイバーが空気流によって解繊された多数本のファイバーである。
ここで、繊維集束体とは、数百本から数千本の強化繊維が、水または樹脂等の結束剤によって集束したものであり、その幅は1mm以上である。チョップドファイバーとは、繊維集束体が切断された短繊維のことである。
強化繊維としては、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系異方性炭素繊維等)、無機繊維(ガラス繊維、バサルト繊維、チタン酸カリウムウィスカ等)、有機繊維(アラミド繊維等)が挙げられる。
上記強化繊維のなかでも、該プレシートから得られる成形品の機械的物性がより高くなることから、炭素繊維またはガラス繊維が好ましい。
チョップ状の炭素繊維としては、例えば、平均繊維径が4〜10μm、平均繊維長が3〜13mmの東邦テナックス社製のものが知られている。チョップ状のガラス繊維としては、例えば、平均繊維径が3〜18μm、平均繊維長が1〜20mmのオーウエンス・コーニング社製のものが挙げられる。
解繊チョップドファイバーの幅は1mm未満である。空気流による解繊方法については、後述する。
【0010】
(熱融着性樹脂)
本発明における熱融着性樹脂は、解繊チョップドファイバー同士を結着させるバインダー樹脂である。また、熱融着性樹脂は、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂にもなる。
熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよいが、該プレシートから得られる成形品の強度がより高くなる点からは、繊維状であることが好ましい。
熱融着性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。熱融着樹脂は2種類以上を併用しても構わない。
【0011】
熱融着性樹脂が繊維状である場合、熱融着性繊維の繊度は1〜30dtexであることが好ましい。また、熱融着性繊維の平均繊維長は1〜10mmであることが好ましく、2〜6mmであることがより好ましい。熱融着性繊維の繊度及び平均繊維長が前記範囲であれば、エアレイドウェブを形成しやすく、均一な結着力や分散状態を得やすい。
【0012】
(熱可塑性樹脂)
エアレイドウェブには、熱融着性樹脂よりも融点が高い熱可塑性樹脂が、熱融着性樹脂とは別に含まれてもよい。該熱可塑性樹脂は、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂となる。
熱可塑性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよいが、強度の点からは、繊維状であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ乳酸等が挙げられる。熱可塑性樹脂は2種以上を併用しても構わない。
【0013】
熱可塑性樹脂が繊維状である場合、熱可塑性繊維の繊度は1〜30dtexであることが好ましい。また、熱可塑性繊維の平均繊維長は1〜10mmであることが好ましく、2〜6mmであることがより好ましい。熱可塑性繊維の繊度及び平均繊維長が前記範囲であれば、エアレイドウェブを形成しやすく、均一な結着力や分散状態を得やすい。
【0014】
(熱融着性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体)
上記熱融着性樹脂と上記熱可塑性樹脂とは複合化されて複合体を形成してもよい。熱融着性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体としては、熱可塑性樹脂からなる芯部分と熱融着性樹脂からなる鞘部分とを有する芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面において片側の半分が熱融着性樹脂からなり、もう一方の片側の半分が熱可塑性樹脂からなるサイドバイサイド繊維、熱可塑性樹脂からなるコアと熱融着性樹脂からなるシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。これらのなかでも、異種の樹脂を容易に複合化できることから、芯鞘繊維が好ましい。
芯鞘繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維(融点160℃)からなる芯部分と、該芯部分の外周に形成された、ポリエチレン(融点130℃)からなる鞘部分とを備えたPP/PE複合芯鞘繊維が挙げられる。
また、他の芯鞘繊維としては、例えば、PET/低融点PET複合芯鞘繊維、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン複合芯鞘繊維、ポリエチレン/低融点PET複合芯鞘繊維、ポリアミド/低融点ポリアミド複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/低融点ポリ乳酸複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート複合芯鞘繊維等が挙げられる。
【0015】
(各成分の含有比率)
プレシートが熱可塑性樹脂を含まない場合、プレシートにおける解繊チョップドファイバーの含有質量Aと熱融着性樹脂の含有質量Bとの比率(A/B)は、10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20であることがより好ましい。A/Bが前記範囲にあれば、プレシートから得られる繊維強化熱可塑性プラスチックの機械的物性を充分に高めることができる。
プレシートが熱可塑性樹脂を含有する場合、プレシートにおける、解繊チョップドファイバーの含有質量Aと、熱融着性樹脂の含有質量B及び熱可塑性樹脂の含有質量Cの合計との比率{A/(B+C)}は、10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20であることがより好ましい。A/Bが前記範囲にあれば、プレシートから得られる繊維強化熱可塑性プラスチックの機械的物性を充分に高めることができる。
【0016】
(未解繊のチョップドファイバーの数)
プレシートにおいては、5cm角の領域における未解繊のチョップドファイバーの数が20個以下であることが好ましく、10個以下であることが好ましい。ここで、未解繊のチョップドファイバーとは、最小幅が1mm以上の繊維束のことである。未解繊のチョップドファイバーの数の計測は目視でもよいし、画像解析装置を用いてもよい。
未解繊のチョップドファイバーの数が20個以下であれば、充分に解繊されており、繊維強化熱可塑性プラスチックの機械的物性をより向上させることができる。
【0017】
(坪量)
プレシートの坪量は40〜3000g/m
2であることが好ましく、100〜3000g/m
2であることがより好ましく、200〜3000g/m
2であることがさらに好ましい。プレシートの坪量が前記下限値以上であれば、成形品を製造する際の熱プレス工程において、プレシートの積層枚数を減らすことができ、作業を簡略化できる。一方、プレシートの坪量が前記上限値以下であれば、プレシートを容易に得ることができる。
【0018】
(作用効果)
上記プレシートでは、空気流によって充分に解繊された解繊チョップドファイバーが含まれ、また、エアレイドウェブが加熱処理されたシートであるため、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂(熱融着性樹脂及び必要に応じて熱可塑性樹脂)が、解繊チョップドファイバーと均一に混ざり合っている。そのため、このプレシートから得た繊維強化熱可塑性プラスチックにおいては、マトリクス樹脂中での解繊チョップドファイバーの分散性が高くなり、機械的物性を向上させることができる。
また、マトリクス樹脂と解繊チョップドファイバーとがあらかじめ均一に混ざり合ったプレシートを成形することで、溶融させたマトリクス樹脂をあまり流動させず、空気を抜く程度で、繊維強化熱可塑性プラスチック製成形品を得ることができる。したがって、成形時間を短縮できる。
【0019】
なお、空気流以外の解繊方法では強化繊維が破断しやすいため、空気流以外の解繊方法で解繊した解繊チョップドファイバーを用いて得たプレシートでは、熱可塑性プラスチックの機械的物性が高くなりにくい。
また、特許文献2に記載のプレシートでは、解繊チョップドファイバーを抄紙した後に、マトリクス樹脂を供給するため、解繊チョップドファイバーとマトリクス樹脂とは均一に混ざり合っていない。そのため、このプレシートから得た繊維強化熱可塑性プラスチックにおいては、マトリクス樹脂中での解繊チョップドファイバーの分散性が低くなるため、機械的物性も低い。また、後からマトリクス樹脂を供給した場合には、プレシートの表面付近にマトリクス樹脂が偏在しており、成形の際には、溶融させたマトリクス樹脂をシート内部に押し込んで繊維強化熱可塑性プラスチック製成形品を成形する必要がある。この場合、成形の際にマトリクス樹脂を流動させる距離が長くなるため、成形時間が長くなる時間を要する。
【0020】
<プレシートの製造方法>
本実施形態のプレシートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを有する。
【0021】
(解繊工程)
解繊工程は、チョップドファイバーを、空気流によって解繊して解繊チョップドファイバーを得る工程である。
チョップドファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にチョップドファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
空気流による解繊によれば、強化繊維が破断して短くなることを防止できる。特に、炭素繊維及びガラス繊維は脆く、機械的な剪断力によって破断しやすいが、空気流によって解繊することにより、破断を防止できる。
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、チョップドファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊チョップドファイバーの分散性をより高めることができる。
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にチョップドファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にチョップドファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
空気流の流速は、チョップドファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10〜150m/秒の範囲内である。
【0022】
(混合工程)
混合工程は、解繊チョップドファイバーと熱融着性樹脂と、必要に応じて熱可塑性樹脂とを混合してウェブ原料を得る工程である。
混合に際しては、解繊チョップドファイバーの分散性を向上させるために、解繊チョップドファイバーと熱融着性樹脂とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊チョップドファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊チョップドファイバーと熱融着性樹脂と、必要に応じて熱可塑性樹脂とを混合する。
【0023】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
【0024】
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、
図1に示すウェブ形成装置1を用いる。このウェブ形成装置1は、コンベア10と透気性無端ベルト20と繊維混合物供給手段30と第1のキャリアシート供給手段40と第2のキャリアシート供給手段50とサクションボックス60と備える。
ここで、コンベア10は、複数のローラー11によって構成されている。透気性無端ベルト20は、コンベア10に装着されて回転するようになっている。繊維混合物供給手段30は、透気性無端ベルト20に繊維混合物を空気流と共に供給するものである。第1のキャリアシート供給手段40は、透気性無端ベルト20に向けて第1のキャリアシート41を供給するものである。第2のキャリアシート供給手段50は、透気性無端ベルト20を通過した第1のキャリアシート41に向けて第2のキャリアシート51を供給するものである。サクションボックス60は、透気性無端ベルト20をその内側から吸引するものである。
ウェブ形成装置1においては、繊維混合物供給手段30は透気性無端ベルト20の上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段40は透気性無端ベルト20よりも上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段50は透気性無端ベルト20よりも下流に設置されている。
【0025】
上記ウェブ形成装置1を用いたウェブ形成工程では、各ローラー11を同方向に回転させることによりコンベア10を駆動させて透気性無端ベルト20を回転させる。また、透気性無端ベルト20の上に接触するように、第1のキャリアシート41を第1のキャリアシート供給手段40から繰り出す。
次いで、サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、繊維混合物供給手段30から空気流と共に繊維混合物を下降させ、透気性無端ベルト20上の第1のキャリアシート41上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブAを形成する。
次いで、エアレイドウェブAの上に、第2のキャリアシート51を第2のキャリアシート供給手段50より供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
【0026】
(結着工程)
結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊チョップドファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理してもよい。第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離すればよい。
【0027】
エアレイドウェブが熱可塑性樹脂を含有する場合には、加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融するが、熱可塑性樹脂は溶融しない温度とすることが好ましい。このような温度とすれば、解繊チョップドファイバー同士を確実に結着しつつ、プレシートを成形する前に熱可塑性樹脂が溶融することを抑制できる。
エアレイドウェブが熱可塑性樹脂を含有しない場合には、加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融する温度とすればよい。
【0028】
結着工程の後には、プレシートの厚み及び密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
【0029】
(作用効果)
上記製造方法では、空気流によってチョップドファイバーを充分に解繊し、エアレイド法によって、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂と解繊チョップドファイバーと均一に混ぜることができる。したがって、繊維強化熱可塑性プラスチックの機械的物性を高くでき、また、成形時間を短縮できるプレシートを容易に製造できる。
さらに、上記製造方法によれば、坪量が大きい(具体的には100g/m
2以上の)プレシートを容易に製造することができる。
【0030】
(他の実施形態)
なお、本発明のプレシートの製造方法は、上記製造方法に限定されない。上記の製造方法では、第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートを用いたが、これらを用いなくても構わない。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0032】
[実施例1]
<プレシートの製造>
チョップ状のPAN系炭素繊維(繊維径7μm、繊維長6mm 東邦テナックス(株)製 「HTC110 6MM」)を、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊チョップドファイバーを得た。解繊機での処理風速は45m/分であり、装置内に設けたバッフルにより乱流とした。
次いで、解繊チョップドファイバーと芯鞘型の熱融着性複合繊維(PP/PE複合芯鞘繊維)とを、解繊チョップドファイバーの割合が35質量%になるように配合し、空気流により均一に混合して繊維混合物を得た。
次いで、
図1に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成した。具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、PETスパンボンド不織布からなる第1のキャリアシート41を繰り出した。サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、その第1のキャリアシート41の上に、繊維混合物供給手段30から空気流と共に上記繊維混合物を落下堆積させた。その際、エアレイドウェブ単位面積あたりの炭素繊維の量が175g/m
2、熱融着性繊維の量が325g/m
2となるように、繊維混合物を供給した。
次いで、第2のキャリアシート供給手段50によって、第1のキャリアシート41上の繊維混合物堆積物の上に、PETスパンボンド不織布からなる第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブ含有積層シートを得た。
得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理した後、第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートを剥離して、坪量500g/m
2のプレシートを得た。
【0033】
<炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品の作製>
上記プレシートを20cm×20cmに裁断し、これにより得た裁断片を4枚積層し、20cm×20cm、深さ2mmの開口部を有するステンレス製の金型内に配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力2MPaで3分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して10分間プレス処理した。その後、5MPaで冷却して、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を得た。
【0034】
[実施例2]
エアレイドウェブ単位面積あたりの炭素繊維の量が350g/m
2、熱融着性繊維の量が650g/m
2になるように繊維混合物の供給量を調整した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートの坪量は1000g/m
2であった。
また、得られたプレシートを2枚積層して成形した以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
【0035】
[比較例1]
チョップ状のPAN系炭素繊維を解繊処理せずにそのまま熱融着性複合繊維に混ぜて繊維混合物を調製した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートの坪量は500g/m
2であった。
また、得られたプレシートを用いた以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
【0036】
<評価>
得られたプレシートについて、下記の方法により炭素繊維の繊維束数を測定した。また、得られた成形品について、下記の方法により曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
(プレシートの炭素繊維束の測定)
得られたプレシートを5cm×5cmに裁断、得られた裁断片において、目視により最小幅が1mm以上の繊維束の数を数えた。繊維束の数が少ない程、炭素繊維の分散性が高く、成形品の機械的物性が向上する。具体的には、概ね下記の傾向を有する。
繊維束数が10個未満:炭素繊維の分散性が良好である。
繊維束数が10〜20個:炭素繊維の分散性は若干低いものの、成形品の機械的強度を充分に向上させることができる。
繊維束数が21個以上:炭素繊維の分散性が低く、成形品の機械的物性が低くなる。
【0038】
(成形品の曲げ弾性率及び曲げ強度の測定)
ダイヤモンドカッターを用いて、得られた成形品を幅15mm、長さ100mmに裁断して、試験片を作製した。その試験片の厚みを測定した後、JIS K7074に記載の「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に従い、3点曲げ試験を、速度5mm/分、支点間距離80mmの条件で行って、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
空気流によって解繊した解繊チョップ状炭素繊維とPP/PE芯鞘樹脂とを含有するエアレイドウェブを加熱処理した実施例1,2のプレシートは、繊維束数が少なく、炭素繊維の分散性に優れていた。また、実施例1,2のプレシートから得た成形品は、曲げ物性に優れていた。
解繊していないチョップ状炭素繊維とPP/PE芯鞘樹脂とを含有するエアレイドウェブを加熱処理した比較例1のプレシートは、繊維束数が多く、炭素繊維の分散性が低かった。また、比較例1のプレシートから得た成形品は、曲げ物性が低かった。