特許第6098100号(P6098100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098100
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】膜ユニット、膜ユニット複合体
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B01D63/00
   B01D63/00 500
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-225589(P2012-225589)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-76427(P2014-76427A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 孝行
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−113882(JP,A)
【文献】 実開昭53−163350(JP,U)
【文献】 特開平10−057775(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/118785(WO,A1)
【文献】 特開平07−096149(JP,A)
【文献】 特表2008−507392(JP,A)
【文献】 特表2003−533344(JP,A)
【文献】 特開2007−167794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長板状の濾過部材とこの濾過部材から導入した固液分離水を両端から排出させる筒体状の濾過水集合部材とを備えた複数の膜モジュールを並列に備えた膜ユニットであって、
前記濾過水集合部材には、前記濾過部材の一端が挿入される挿入溝が当該濾過水集合部材の軸方向と平行に形成され、
当該ユニットの両端の前記濾過水集合部材の群は共に個々の濾過水集合部材において前記濾過部材の一端が挿入された前記挿入溝と当該濾過部材との接続部分を含めて硬質ウレタン樹脂によって直方体形状に被覆成型されたことを特徴とする膜ユニット。
【請求項2】
前記濾過部材と前記集合部材とは接着剤によって接続された
を特徴とする請求項1に記載の膜ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜ユニットを積層させた膜ユニット複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川水、湖水、各種廃水等の被処理水を濾過処理する膜モジュールを備えた膜ユニット及びその複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
膜モジュールは濾過部材の一端側または両端側に濾過水集合部材が接続されているのが一般的な構成である(特許文献1〜5等)。濾過部材と濾過水集合部材とは融着剤、接着剤により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−57775号公報
【特許文献2】特開平11−76764号公報
【特許文献3】特開2005−125198号公報
【特許文献4】特開2006−15233号公報
【特許文献5】国際公開第2010/015374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4の膜モジュールは濾過水の取り出し口が濾過部材の端部側の濾過水集合部材に配置されており、当該膜モジュールを多段積みした場合、各取り出し口に配管接続用のコネクタが必要となり、膜ユニットの構造が煩雑且つ製造コストが高価なものとなる。
【0005】
また、特許文献5の膜ユニットは、板状の濾過部材を複数並列に配置させ当該各濾過部材の端部から濾過水を導入する濾過水集合部材を備える。この濾過水集合部材は箱状に形成され、その上下端面には濾過水を系外に排出させるための開口部が形成されている。この態様は濾過水の集合室が簡素な構造であるため、多段積みした場合に当該濾過水集合部材の強度不安定が懸念されることから、前記開口部を閉鎖する密閉部材を堅牢にする必要がある。また、前記濾過水集合部材内は各濾過部材を隔離させる仕切り板によって仕切られているので、濾過部材の逆洗時には各濾過部材内部の濾過水流路への圧力伝達が均一に作用しないことから、充分な洗浄効果が得られない。
【0006】
さらに、前記濾過部材及び濾過水集合部材が高分子材料からなる場合、融着剤や接着剤により当該両者の部材の接着強度を確保させた膜モジュールが得られる。
【0007】
しかしながら、濾過部材が無機材料(例えばセラミックス)からなる一方で濾過水集合部材が高分子材料からなる場合、当該両者の部材の接合に高分子樹脂からなる接着剤を適用すると高分子材料同士の接合よりも耐久性のある接合強度を得ることが困難となる。
【0008】
しかも、従来の膜モジュールにおける前記両者の接続部分は被処理水(例えば下水、廃水等)に直接接触する態様となっており被処理水に含まれる各種の物質、温度の影響を直接受けることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の膜ユニットは、長板状の濾過部材とこの濾過部材から導入した固液分離水を両端から排出させる筒体状の濾過水集合部材とを備えた複数の膜モジュールを並列に備えた膜ユニットであって、前記濾過水集合部材には、前記濾過部材の一端が挿入される挿入溝が当該濾過水集合部材の軸方向と平行に形成され、当該ユニットの両端の前記濾過水集合部材の群は共に個々の濾過水集合部材において前記濾過部材の一端が挿入された前記挿入溝と当該濾過部材との接続部分を含めて硬質ウレタン樹脂によって直方体形状に被覆成型されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば濾過水集合部材が纏められた状態で被覆材によって被覆成型されているので当該膜ユニットを積層させた場合でも濾過水集合部材の強度を維持できる。また、前記濾過部材と前記集合部材との接続部分が被覆されるので当該接続部分が被処理水に曝されなくなる。さらに、前記積層の場合、濾過水は最端の膜ユニットにおける濾過水集合部材の一端から直接引き出せるので膜ユニット複合体の部品数が低減する。そして、濾過部材の逆洗の際には個々の濾過水集合部材の一端側から逆洗水を濾過部材に対して直接供給できるので各濾過部材内部の濾過水流路への圧力伝達を均等化できる。
【0011】
尚、前記濾過部材と前記集合部材は接着剤によって接続させると、当該部材間の液密性がより一層確保される。
【発明の効果】
【0012】
以上の発明によれば膜ユニットとその複合体の構成が簡素化すると共に濾過水集合部材の強度性及び濾過部材と濾過水集合部材との接続部分の耐久性、耐薬品性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は発明の実施形態における膜ユニットの一端側を示した上面図,(b)は同膜ユニットの側面図,(c)は濾過部材の両端に濾過水集合部材が具備された状態を示す縦断面図,(d)は同状態を示す上面図。
図2】発明の実施形態における膜ユニットを二段に積層させた複合体の縦断面図。
図3】(a)は挿入溝が形成された濾過水集合部材の側面図,(b)は濾過部材が挿入固定された濾過水集合部材の縦断面図。
図4】(a)は挿入溝が一端まで形成された濾過水集合部材の側面図,(b)は同集合部材の挿入溝に挿入された濾過部材をその両端から固定部材によって固定される態様を示した側面図,(c)はキャップ状,溝が形成されたキャップ状の固定部材の側断面、解放スリットが形成された筒状の固定部材の縦断面、筒体状の固定部材の側面、溝が形成されたキャップ状筒体状の固定部材の側面を示した図。
図5】(a)は製造架台上の膜モジュールの縦断面図,(b)は濾過部材が挿入固定された濾過水集合部材の端部側を示した側面図,(c)は同集合部材の片側側面。
図6】(a)は製造架台上にて円管状の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材が挿入された濾過水集合部材の端部を示した縦断面図,(b)は同濾過部材を示した斜視図,(c)は製造架台上にて極細の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材が挿入された濾過水集合部材の端部を示した縦断面図,(d)は同濾過部材を示した斜視図。
図7】前記膜ユニットの被覆材成型部の形成過程(a)〜(c)の概略説明図。
図8】(a)は前記膜ユニットの製造に用いられる上金型,正面金型,側面金型の下面図,(b)は同製造に用いられる上金型,下金型,正面金型,側面金型の側面図。
図9】前記膜ユニットの被覆材成型部の金型部が撤去される過程を説明した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
[膜ユニットの態様]
図1(a)(b)に例示された膜ユニット1は、濾過部材2とこの濾過部材2から導入した濾過水(固液分離水)を上下端から排出させる濾過水集合部材3とを備えた複数の膜モジュール4を並列に備える。この膜ユニット1の両端の濾過水集合部材3の群は共に個々の濾過水集合部材3と濾過部材2との接続部分を含めて被覆材5によって被覆成型されている。
【0016】
濾過部材2は有機膜,セラミック膜,セラミック膜以外の無機膜に例示される分離膜を備えた板状のセルから成る。例えば、有機膜中空糸膜,有機平膜,無機平膜,無機単管膜等を備えたものが挙げられる。有機膜の材料としては、セルロース,ポリオレフィン,ポリスルホン,PVDF(ポリビニリデンフロライド),PTFE(ポリ四フッ化エチレン)などが例示される。濾過部材2に設けられる濾過膜の孔径は固液分離の対象となる物質の粒径に応じて選択される。例えば、活性汚泥の固液分離に用いるのであれば、0.5μm以下の孔径を有する濾過膜が適用され、また、浄水の濾過のように除菌が必要な場合は0.1μm以下の孔径を有する濾過膜が適用される。
【0017】
濾過水集合部材3は、図1(a)(b)に示したように金属,セラミックに例示される無機材料,樹脂等の有機材料が円筒状または角柱状の筒体から成る。図3(a)(b)に示したように濾過水集合部材3には濾過部材2の一端が挿入される挿入溝31が当該部材2の軸方向と平行に形成されている。前記樹脂としては、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,二液硬化型樹脂,紫外線硬化型樹脂等から選択される。濾過水集合部材3は濾過水と接触するが被処理水に直接曝されることがなく濾過水排出口以外の部位が被覆材4によって被覆されることで補強される。また、濾過水集合部材3の材質は濾過水や膜モジュールの洗浄薬剤のpH等の使用環境を考慮すると共に部材本体の製作の容易さ並びに濾過部材3,被覆材5との接着の作業性から選択される。さらに、濾過水集合部材3の表面は被覆される前に薬剤(プライマー)処理,粗面処理等の表面処理を施すとよい。
【0018】
また、図4(a)に示したように挿入溝31は濾過水集合部材3の一端まで形成してもよい。この態様によれば濾過水集合部材3への濾過部材2の挿入作業が容易となる。尚、この場合、同図(b)に示されたように、挿入溝31に挿入された濾過部材2は挿入溝31の両端から固定部材33によって固定される。
【0019】
固定部材33は濾過水集合部材3と同様の構成材料によって形成される。固定部材33の態様としては図4(c)に例示された固定部材33a〜33eが挙げられる。固定部材33a,33bは同図(b)に示された挿入溝31の解放端に装着される。固定部材33aは濾過水集合部材3の一端側開口部を閉塞させる筒状のキャップタイプのものである。固定部材33bは前記キャップタイプのものにおいて濾過部材2が挿入される挿入溝331が部材33bの軸方向と平行に形成されている。固定部材33c〜33eは挿入溝31の非開放端に装着される。固定部材33cは解放スリット332が形成された筒体からなる。固定部材33dは筒体からなる。固定部材33eは筒体から成り、濾過部材2が挿入される挿入溝331が当該筒体の軸方向と平行に形成されている。
【0020】
上記の濾過水集合部材3の群は図1(a)(b)に示したように纏めて被覆材5の成型部51によって被覆されている。この成型部51の上端面,下端面には濾過水集合部材3の上端の群を囲むように止水部材52を配置させる囲繞溝53が形成されている。
【0021】
被覆材5の材料としては、金属,セラミック等に例示される無機材料や、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,二液硬化型樹脂,紫外線硬化型樹脂等に例示される有機材料が挙げられる。これらの材料から作業性や耐久性を含めた被処理液の性状に対して適するものが選定される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂等が例示される。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂,ABS樹脂,フッ素樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン等が例示される。二液硬化型樹脂としてはウレタン系樹脂等がある。ウレタン系樹脂としては、硬質ウレタン樹脂を用いると常温での作業が可能であるので作業性が高く、耐久性及び耐薬品性を有する被覆材5を構成できる。硬質ウレタン樹脂としては水和アルミナ含有ポリエステルポリオール型ウレタン樹脂等が例示される。
【0022】
濾過部材2と濾過水集合部材3とは図3(b)に示したように接着剤6によって接続される。接着剤6は接着機能と液密機能とを兼ねる。接着機能は一時的な仮止めとしても機能する。前記液密機能は膜モジュール4の製造過程での被覆材5成分の濾過水集合部材3内や濾過部材2内への浸入を防止させる。液密機能は被覆材5による濾過水集合部材3の被覆が形成されるまで機能すればよく過度の耐圧は必要としない。これらの機能は最低限、被覆材5による一体成型の作業終了までその機能を果たしていればよく、その作業終了後(モールド成型、固化後)には当該機能は被覆材5で代替できる。
【0023】
接着剤6としては無機系接着剤,有機系接着剤が挙げられる。無機系接着剤はシリカ系接着剤,セラミック系接着剤が例示される。有機系接着剤はアクリル樹脂系接着剤,ウレタン樹脂系接着剤,エポキシ樹脂系接着剤,塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤,シリコーン系接着剤,ニトロセルロース系接着剤,フェノール樹脂系接着剤,ポリビニルアルコール系接着剤,メラミン樹脂系接着剤,ユリア樹脂系接着剤が例示される。また、接着剤6の特徴、機能面から瞬間系接着剤,弾性系接着剤,二液常温硬化樹脂系接着剤,熱硬化性樹脂系接着剤,ホットメルト接着剤等に分類でき、適宜、選択できる。
【0024】
[膜ユニットの態様]
膜ユニット1を具備した膜ユニット複合体の態様について説明する。
【0025】
図2に例示された膜ユニット複合体7は2つの膜ユニット1を積層させている。下段側膜ユニット1aは基礎架台8上に固定されている。下段側膜ユニット1aの一方の各濾過水集合部材3は上段側膜ユニット1bの一方の各濾過水集合部材3と連通している。下段側膜ユニット1aの他方の各濾過水集合部材3は上段側膜ユニット1bの他方の各濾過水集合部材3と連通している。上段側の成型部51下端の止水部材52が下段側の成型部51上端の止水部材52と接触することにより上下段の濾過水集合部材3間の液密性が確保されている。上段側膜ユニット1bには上蓋9が設置されている。上蓋9からは上段側膜ユニット1bの両端の各濾過水集合部材3に接続された排出管90が露出している。個々の配管部90は濾過水を系外に搬出させる濾過水導出管91に接続されている。
【0026】
膜ユニット複合体7においては上端側膜ユニット1bの上端側の成型部41から露出した濾過水集合部材3の一端側が負圧状態となることにより被処理水が下段側膜ユニット1a,上端側膜ユニット1bの個々の濾過部材2によって固液分離される。そして、濾過水は前記個々の濾過部材2の排出管90を経由しさらに濾過水導出管91を介して系外に移送される。
【0027】
尚、膜ユニット複合体7において膜ユニット1は二台に限定することなく被処理水の負荷に応じて適宜複数積層される。また、膜ユニット複合体7は、上記の態様に限定することなく、下段側膜ユニット1b両端の各濾過水集合部材3下端から濾過水を引き出す態様を採用してもよい。
【0028】
[膜ユニットの製造方法の一例]
本実施形態の膜ユニット1の製造方法の一例について説明する。
【0029】
先ず、図5(a)に示したように濾過部材2の一端が濾過水集合部材3の挿入溝31に挿入される一方で当該部材2の他端がもう一方の濾過水集合部材3の挿入溝31に挿入された状態で濾過水集合部材3が製造架台10上の窪み部11a,11bにそれぞれ鉛直に載置される。
【0030】
次いで、濾過部材2の全長と同等の間隔で配置される支持棒13a,13bが、各々の濾過水集合部材3に挿通された状態で、窪み部11a,11bにて着脱自在に鉛直支持される。この支持棒13a,13bは製造架台10上での濾過水集合部材3の支持と膜モジュール4の全長規制の機能を果たす。
【0031】
図6(a)に例示された態様は同図(b)に例示した円管状の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材2が挿入された濾過水集合部材3を製造架台10の窪み部11aにて支持棒13aによって支持した形態となっている。同図(c)に例示された態様は同図(d)に例示された極細の中空糸膜を板状に収束させて成る濾過部材2の端部側樹脂層21が挿入された濾過水集合部材3を製造架台10の窪み部11aにて支持棒13aによって支持した形態となっている。
【0032】
そして、図5(a)(b)(c)に示したように濾過水集合部材3の挿入溝31と濾過部材2とが接着剤6によって接着される。
【0033】
次いで、図8(b)に示した成型部51用の上金型部14aと当該下金型部14bの間に複数の濾過部材2が並列に配置される。同図(a)(b)に示したように、上金型部14aは、前記配置の際に濾過水集合部材3の上端開口部に挿入される挿入凸部141aと、成型部51上端面の囲繞溝53を形成させる囲繞凸部142aとを備える。下金型部14bは、前記配置の際に濾過水集合部材3の下端開口部に挿入される挿入凸部141bと、成型部51下端面の囲繞溝53を形成させる囲繞凸部142bとを備える。そして、上金型部14a,下金型部14bの各挿入凸部141a,141bが各濾過部材2両端の濾過水集合部材3の上端開口部,下端開口部に挿入されることで当該金型部14a,14b間に複数の濾過部材2が並列に配置される。そして、この並列に配置された濾過部材2の一端側の濾過水集合部材3の群を囲むように正面金型部15a,側面金型部16aが組まれる。同様に当該配置された濾過部材2の他端側の濾過水集合部材3の群を囲むように正面金型部15b,側面金型部16bが組まれる。
【0034】
次いで、上記金型部が組まれた濾過部材2を図7(a)の状態から同図(b)の状態に反転させる。この状態での下方の上金型部14a,下金型部14b,正面金型部15a,側面金型部16aから成る空間部Aに被覆材5が注入される。
【0035】
空間部Aに注入された被覆材5が硬化した後、同金型部が組まれた濾過部材2を図7(b)の状態から同図(c)の状態に反転させる。この状態での下方の上金型部14a,下金型部14b,正面金型部15b,側面金型部16bから成る空間部Bに被覆材5が注入される。
【0036】
そして、空間部Bに注入された被覆材4が硬化した後、図9に示したように被覆材5の成型部51から上金型部14a,14b、正面金型15a,15b及び図示省略の側面金型16a,16bが撤去されると、両端に被覆材5の成型部51が形成された膜ユニット1が出来上がる。成型部51の上端面,下端面には上金型部14a,下金型部14bの囲繞凸部142a,142bによって囲繞溝53が形成された状態となっている。
【0037】
[本実施形態の効果]
以上の膜ユニット1及び膜ユニット複合体7によれば、濾過水集合部材3が纏められた状態で被覆材5によって被覆成型されているので例えば図2に示したように膜ユニット1を積層させた場合でも濾過水集合部材3の強度を維持できる。
【0038】
また、濾過部材2と濾過水集合部材3との接続部分が被覆されるので当該接続部分が被処理水に曝されなくなる。これにより、濾過部材2が有機材料(若しくは無機材料)からなる一方で濾過水集合部材3が無機材料(若しくは有機材料)からなる場合であっても、両者の接続部分は、被処理水に含まれる各種の物質、温度の影響を直接受なくなり、耐久性、耐薬品性が向上する。
【0039】
さらに、前記積層の場合、最上端側の濾過水集合部材3と最下端側の濾過水集合部材3が連通する状態となり、最上端(若しくは最下端)の膜ユニット1における個々の濾過水集合部材3の上端(若しくは下端)から濾過水を直接引き出せばよいので、膜ユニット複合体7の部品数が低減する。そして、濾過部材2の逆洗の際には個々の濾過水集合部材3の一端側から逆洗水を濾過部材2に対して直接供給できるので各濾過部材2内部の濾過水流路への圧力伝達の均等化が実現する。
【0040】
そして、濾過水集合部材3が被覆材5によって被覆される前に濾過部材2と当該濾過水集合部材3とが接着剤によって接着されることで当該部材2,3間の液密性がより一層確保される。したがって、膜ユニット1の製造過程での被覆材4成分の濾過水集合部材3内への浸入を防止できる。尚、濾過水集合部材3の挿入溝31に濾過部材2を挿入させて接着させる態様は、当該部材2が平板状の濾過膜に限定することなく、パイプ状の濾過膜、軟質のシート状若しくはパイプ状の濾過膜、または極細の中空糸膜でも適用できる。
【0041】
また、挿入溝31は図4に示したように濾過水集合部材3の一端まで形成されることにより、膜ユニット1の製造過程において当該濾過水集合部材3への濾過部材2の挿入作業が容易となる。例えば図5(a)の態様では、濾過水集合部材3の挿入準備過程においては、製造架台10の溝部11a,11bにそれぞれ支持棒13a,13bが装着され、当該濾過水集合部材3は挿入溝31の解放端が上端となるように溝部11a,11bに載置される。濾過部材2を濾過水集合部材3の挿入溝31に挿入させる際には、濾過部材2の幅方向側両端をそれぞれ濾過水集合部材3の挿入溝31に合わせて当該濾過部材2を下方に移動させればよい。
【0042】
さらに、濾過水集合部材3において濾過水の排出口を任意に確保することで多様な膜モジュール及び膜ユニットの態様が実現する。
【符号の説明】
【0043】
1…膜ユニット
2…濾過部材
3…濾過水集合部材、31…挿入溝
4…膜モジュール
5…被覆材
6…接着剤
7…膜ユニット複合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9