(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路を備えた過給装置に用いられ、タービンハウジング又は前記タービンハウジングに接続した接続体に配設されかつ前記ガス流量可変通路を開閉するガス流量可変バルブであって、
前記タービンハウジング又は前記接続体に回転可能に設けられ、アクチュエータの駆動により正逆方向へ揺動するステムと、
前記ステムに設けられ、取付穴が形成された取付部材と、
前記取付部材に設けられ、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能な弁体と、
前記弁体を前記取付部材に取付けるための止め金と、を具備し、
前記弁体及び前記止め金のうちの一方の部材に前記取付部材の前記取付穴に挿通する挿通軸が形成され、前記弁体及び前記止め金のうちの他方の部材に固定穴が形成され、前記一方の部材の前記挿通軸が前記他方の部材の前記固定穴に圧入し、
前記挿通軸に前記止め金を係止する環状の係止突起が形成され、前記係止突起は、前記挿通軸を前記固定穴に圧入する際に、前記挿通軸の圧入代分の弾性変形によって生成されるようになっている、ガス可変流量バルブ。
タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路を備えた過給装置に用いられ、タービンハウジング又は前記タービンハウジングに接続した接続体に配設されかつ前記ガス流量可変通路を開閉するガス流量可変バルブであって、
前記タービンハウジング又は前記接続体に回転可能に設けられ、アクチュエータの駆動により正逆方向へ揺動するステムと、
前記ステムに設けられ、取付穴が形成された取付部材と、
前記取付部材に設けられ、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能な弁体と、
前記弁体を前記取付部材に取付けるための止め金と、を具備し、
前記弁体及び前記止め金のうちの一方の部材に前記取付部材の前記取付穴に挿通する挿通軸が形成され、前記弁体及び前記止め金のうちの他方の部材に固定穴が形成され、前記一方の部材の前記挿通軸が前記他方の部材の前記固定穴に圧入し、
前記挿通軸の先端面から、前記挿通軸の一部であって前記固定穴に圧入する圧入軸部の内部にかけて、前記挿通軸の長手方向へ延びた空洞が形成され、前記空洞は、前記挿通軸の先端面側にのみ開口されている、ガス可変流量バルブ。
【背景技術】
【0002】
低圧段過給機(第1過給機)と高圧段過給機(第2過給機)を装備した車両用多段過給システム(過給装置の1つ)は、通常、高圧段過給機のタービンインペラをバイパスして低圧段過給機のタービンインペラへ排気ガスを供給するためのガスバイパス通路(ガス流路可変通路の1つ)を備えている。また、高圧段過給機又は低圧段過給機のタービンハウジングには、ガスバイパス通路(ガスバイパス通路の開口部)を開閉するガスバイパスバルブ(ガス流量可変バルブの1つ)が配設されている。そして、一般的なガスバイパスバルブの構成等は、次のようになる。
【0003】
高圧段過給機又は低圧段過給機のタービンハウジングには、ステム(回転軸)が回転可能に設けられており、このステムは、アクチュエータの駆動によりステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するものである。また、ステムには、取付部材が一体的に設けられており、この取付部材には、取付穴が貫通形成されている。
【0004】
取付部材には、ガスバイパス通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能な弁体が設けられており、この弁体の中央部には、取付部材の取付穴に挿通(嵌合挿通)する挿通軸が一体形成されている。また、弁体の挿通軸の先端側には、弁体を取付部材に取付けるための止め金が隅肉溶接によって一体的に設けられており、弁体の挿通軸の先端側の外周面と止め金の頂面との間には、環状の溶接部が形成されている。
【0005】
従って、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、アクチュエータの駆動によりステムを正方向(一方向)へ回転させることにより、弁体を正方向(開方向)へ揺動させて、ガスバイパス通路の開口部側のバルブシートから離隔させる。これにより、ガスバイパスバルブによってガスバイパス通路を開いて、排気ガスの大部分を高圧段過給機のタービンインペラをバイパスして低圧段過給機のタービンインペラに供給することができる。
【0006】
一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、アクチュエータの駆動によりステムを逆方向(他方向)へ回転させることにより、弁体を逆方向(閉方向)へ揺動させて、ガスバイパス通路の開口部側のバルブシートに当接させる。これにより、ガスバイパスバルブによってガスバイパス通路を閉じて、排気ガスを高圧段過給機のタービンインペラに供給することができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ガスバイパスバルブの動作中に弁体と止め金の間に相対的な引き抜き荷重が発生しており、その引き抜き荷重を溶接部に負担させることによって、弁体に対する相対的な止め金の耐引き抜き性を確保している。一方、近年、ガスバイパスバルブだけでなく、広く過給装置に用いられるガス流量可変バルブにおいて、弁体に対する相対的な止め金の耐引き抜き性を高めて、ガス流量可変バルブの耐久性、換言すれば、過給装置の耐久性を向上させる要求が強まってきている。
【0010】
そこで、本発明は、前述の要求に応えることができる、新規な構成のガス流量可変バルブ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路を備えた過給装置に用いられ、タービンハウジング又は前記タービンハウジングに接続した接続体に配設されかつ前記ガス流量可変通路を開閉するガス流量可変バルブであって、前記タービンハウジング又は前記接続体に回転可能に設けられ、アクチュエータの駆動により正逆方向へ揺動するステムと、前記ステムに設けられ、取付穴が形成された取付部材と、前記取付部材に設けられ、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能な弁体と、前記弁体を前記取付部材に取付けるための止め金と、を具備し、前記弁体及び前記止め金のうちの一方の部材に前記取付部材の前記取付穴に挿通(嵌合挿通)する挿通軸が形成され、前記弁体及び前記止め金のうちの他方の部材に固定穴(圧入穴)が形成され、前記一方の部材の前記挿通軸が前記他方の部材の前記固定穴に圧入し、前記挿通軸に前記止め金を係止する環状の係止突起が形成され
、前記係止突起は、前記挿通軸を前記固定穴に圧入する際に、前記挿通軸の圧入代分の弾性変形によって生成されるようになっていることである。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「過給装置」とは、低圧段過給機と高圧段過給機を装備した多段過給システム、及び単一段の過給機を含む意である。また、「ガス流量可変通路」とは、高圧段過給機のタービンインペラをバイパスして低圧段過給機のタービンインペラへ排気ガスを供給するためガスバイパス通路、及び過給機のタービンインペラ(低圧段過給機のタービンインペラを含む)をバイパスするためのウェイストゲート通路を含む意である。そして、「ガス流量可変バルブ」とは、ガスバイパス通路を開閉するガスバイパスバルブ、及びウェイストゲート通路を開閉するウェイストゲートバルブを含む意である。更に、「タービンハウジングに接続した接続体」とは、タービンハウジングのガス導入口又はガス排出口に接続した配管、マニホールド、ケーシング等を含む意である。
【0013】
第1の
態様によると、前記過給装置の運転中に、前記アクチュエータの駆動により前記ステムを正方向(一方向)へ回転させることにより、前記弁体を正方向(開方向)へ揺動させて、前記ガス流量可変通路の開口部側の前記バルブシートから離隔させる。これにより、前記ガス流量可変バルブによって前記ガスバイパス通路を開くことができる。なお、前記ガス流量可変通路の開口部を開くことによって、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量が増加する場合と減少する場合がある。
【0014】
前記ガスバイパス通路を開いた後に、前記アクチュエータの駆動により前記ステムを逆方向(他方向)へ回転させることにより、前記弁体を逆方向へ揺動(閉方向)させて、前記ガスバイパス通路の開口部側の前記バルブシートに当接させる。これにより、前記ガス流量可変バルブによって前記ガスバイパス通路を閉じることができる。なお、前記ガス流量可変通路の開口部を開くことによって、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量が減少する場合と増加する場合がある。
【0015】
ここで、前記一方の部材の前記挿通軸が前記他方の部材の前記固定穴に圧入しているため、前記ガス流量可変バルブの動作中に、前記弁体と前記止め金の間に発生する相対的な引き抜き荷重を前記一方の部材の前記挿通軸の圧入面(外周面)と前記他方の部材の前記固定穴の圧入面(内周面)に負担させることができる。これにより、前記一方の部材の前記挿通軸の圧入面及び前記他方の部材の前記固定穴の圧入面の面積を十分に確保することによって、前記弁体に対する相対的な前記止め金の耐引き抜き性を十分に高めることができる。
【0016】
本発明の第2の
態様は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給装置
であって、第1の
態様からなる流量可変バルブを具備したこと
である。
【0017】
第2の
態様によると、第1の
態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記弁体に対する相対的な前記止め金の耐引き抜き性を十分に高めることができるため、前記ガス流量可変バルブの耐久性、換言すれば、前記過給装置の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1、
図2(a)、
図3、及び
図4を参照して説明する。
【0021】
図4に示すように、本発明の第1実施形態に係る車両用多段過給システム1は、エンジンEからの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンEに供給される空気を過給する過給装置の1つであって、低圧段過給機(第1過給機)3及びこの低圧段過給機3よりも小型(小容量)の高圧段過給機(第2過給機)5を装備している。そして、車両用多段過給システム1の具体的な構成は、次のようになる。
【0022】
低圧段過給機3は、空気を圧縮(低圧圧縮)する第1コンプレッサインペラ7と、この第1コンプレッサインペラ7を収容する第1コンプレッサハウジング9と、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させる第1タービンインペラ(タービンインペラの1つ)11と、この第1タービンインペラ11を収容する第1タービンハウジング(タービンハウジングの1つ)13とを備えている。また、低圧段過給機3は、第1コンプレッサハウジング9と第1タービンハウジング13の間に配設された第1センターハウジング15と、この第1センターハウジング15に回転可能に設けられかつ第1コンプレッサインペラ7と第1タービンインペラ11を同軸状に一体的に連結する第1ロータ軸17とを備えている。
【0023】
同様に、高圧段過給機5は、空気を圧縮(高圧圧縮)する第2コンプレッサインペラ19と、この第2コンプレッサインペラ19を収容する第2コンプレッサハウジング21と、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させる第2タービンインペラ(タービンインペラの1つ)23と、この第2タービンインペラ23を収容する第2タービンハウジング(タービンハウジングの1つ)25とを備えている。また、高圧段過給機5は、第2コンプレッサハウジング21と第2タービンハウジング25の間に配設された第2センターハウジング27と、この第2センターハウジング27に回転可能に設けられかつ第2コンプレッサインペラ19と第2タービンインペラ23を同軸状に一体的に連結する第2ロータ軸29とを備えている。
【0024】
エンジンEの吸気マニホールドEaには、空気をエンジンEに給気するための給気通路31の一端が接続されており、この給気通路31の他端側は、空気を浄化するエアクリーナ33に接続されている。また、給気通路31の途中には、前述の第2コンプレッサインペラ19及び第1コンプレッサインペラ7が空気の流れ方向から見て下流側(エンジンE側)から順次配設されている。
【0025】
給気通路31における第2コンプレッサインペラ19の入口側には、第2コンプレッサインペラ19をバイパス(迂回)してエンジンEに空気を給気するためのエアバイパス通路35の一端が接続されており、このエアバイパス通路35の他端は、給気通路31における第2コンプレッサインペラ19の出口側に接続されている。また、第2コンプレッサハウジング21の適宜位置には、エアバイパス通路35(エアバイパス通路35の開口部)を開閉するエアバイパスバルブ37が配設されている。
【0026】
エンジンEの排気マニホールドEbには、排気ガスを排気するための排気通路39の一端が接続されており、この排気通路39の他端側には、排気ガスを浄化する触媒41が接続されている。また、排気通路39の途中には、前述の第2タービンインペラ23及び第1タービンインペラ11が排気ガスの流れ方向から見て上流側(エンジンE側)から順次配設されている。
【0027】
排気通路39における第1タービンインペラ11の入口側には、第1タービンインペラ11をバイパスして排気ガスを排出するためのウェイストゲート通路43(ガス流量可変通路の1つ)の一端が接続がされており、このウェイストゲート通路43の他端は、排気通路39における第1タービンインペラ11の出口側に接続されている。また、第1タービンハウジング13の適宜位置には、ウェイストゲート通路43(ウェイストゲート通路43の開口部)を開閉するウェイストゲートバルブ45が配設されている。ここで、ウェイストゲートバルブ45(ガス流量可変バルブの1つ)は、第1コンプレッサインペラ7の出口側の圧力が設定圧に達するとウェイストゲート通路43を開くと共に、第1コンプレッサインペラ7の出口側の圧力が設定圧未満になるとウェイストゲート通路43を閉じるようになっている。
【0028】
排気通路39における第2タービンインペラ23の入口側には、第2タービンインペラ23をバイパスして第1タービンインペラ11に排気ガスを供給するためのガスバイパス通路47(ガス流量可変通路の1つ)の一端が接続されており、このガスバイパス通路47の他端は、排気通路39における第2タービンインペラ23の出口側に接続されている。また、第2タービンハウジング25の適宜位置には、ガスバイパス通路47(ガスバイパス通路47の開口部)を開閉するガスバイパスバルブ49(ガス流量可変バルブの1つ)が配設されている。そして、本発明の第1実施形態に係るガスバイパスバルブ49の具体的な構成は、次のようになる。
【0029】
図1(a)(b)及び
図3に示すように、第2タービンハウジング25の適宜位置には、ステム(回転軸)51がブッシュ(図示省略)を介して回転可能に設けられおり、このステム51は、電動モータ又は空気圧式アクチュエータ(ダイヤフラム)等のアクチュエータ53の駆動によりその軸心(ステム51の軸心)周りに正逆方向へ揺動するようになっている。また、ステム51には、取付部材(取付板)55が隅肉溶接等によって一体的に設けられており、この取付部材55は、第2タービンハウジング25内に位置してある。また、取付部材55は、ステム51に一体的に取付られた取付スリーブ57、及び取付スリーブ57に一体形成された取付タング59を備えており、取付タング59には、取付穴61が貫通形成されている。
【0030】
取付タング59(取付部材55)には、ガスバイパス通路47の開口部側のバルブシート63に当接離隔可能な弁体65が設けられており、この弁体65は、取付部材55に対するガタ(移動及び揺動)を許容されてあって、弁体65の中央部には、取付部材55の取付穴61に挿通(嵌合挿通)する挿通軸67が一体形成されている。また、弁体65の挿通軸67の先端部には、弁体65を取付部材55に取付けるための止め金(座金)69が設けられており、この止め金69には、固定穴(圧入穴)71が貫通形成されている。
【0031】
ここで、弁体65の挿通軸67は、基端側から、取付タング59の取付穴61に嵌合する嵌合軸部67a、及び嵌合軸部67aよりも小径であって止め金69の固定穴71に圧入する圧入軸部67bを有している。また、弁体65の挿通軸67と取付タング59の取付穴61を嵌合させた状態で、
図1(b)の白抜き矢印に示すように、止め金69を取付タング59側に押付けることによって、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bが止め金69の固定穴71に圧入するようになっている。なお、挿通軸67における嵌合軸部67aと圧入軸部67bの境界段差面67fは、止め金69の押付け時における受け面(座面)になっている。
【0032】
図2(a)に示すように、弁体65の挿通軸67の先端側には、止め金69を係止する環状の係止突起73が形成されており、この係止突起73は、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bを止め金69の固定穴71に圧入する際に、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代(締め代)分の弾性変形によって生成されるようになっている。なお、理解を容易にするため、係止突起73の外径は弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bに対して大きく示してある。
【0033】
図示は省略するが、弁体65の挿通軸67の先端側の外周面と止め金69の頂面69tとの間に、隅肉溶接によって環状の溶接部が形成されるようにしても構わない。また、弁体65の挿通軸67の先端側の外周面に環状の嵌合溝が形成され、挿通軸67の嵌合溝に止め金69の抜け止め防止のためのリング等が嵌合して設けられるようにしても構わない。更に、弁体65の挿通軸67の先端側にネジ部が形成され、弁体65の挿通軸67のネジ部に止め金69を固定するナットが螺合して設けられるようにしても構わない。
【0034】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、アクチュエータ53の駆動によりステム51を正方向(一方向)へ回転させることにより、弁体65を正方向(開方向)へ揺動させて、ガスバイパス通路47の開口部側のバルブシートから離隔させて、ガスバイパスバルブ49によってガスバイパス通路47を開くと共に、エアバイパスバルブ37によってエアバイパスバルブ37を開く。これにより、排気ガスの大部分を高圧段過給機5の第2タービンインペラ23をバイパスして低圧段過給機3の第1タービンインペラ11に供給することができ、低圧段過給機3の第1コンプレッサインペラ7を第1タービンインペラ11と一体的に回転させて、エンジンEに供給される空気を過給(低圧圧縮)することができる。
【0036】
一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、アクチュエータ53の駆動によりステム51を逆方向(他方向)へ回転させることにより、弁体65を逆方向(閉方向)へ揺動させて、ガスバイパス通路47の開口部側のバルブシート63に当接させ、ガスバイパスバルブ49によってガスバイパス通路47を閉じると共に、エアバイパスバルブ37によってエアバイパスバルブ37を閉じる。これにより、排気ガスを高圧段過給機5の第2タービンインペラ23に供給することができ、高圧段過給機5の第2コンプレッサインペラ19を第2タービンインペラ23と一体的に回転させて、エンジンEに供給される空気を過給(高圧圧縮)することができる。
【0037】
ここで、弁体65の挿通軸67が止め金69の固定穴71に圧入しているため、ガスバイパスバルブ49の動作中に、弁体65と止め金69の間に発生する相対的な引き抜き荷重を弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入面(外周面)と止め金69の固定穴71の圧入面(内周面)に負担させることができる。これにより、弁体65の挿通軸67の圧入面及び止め金69の固定穴71の圧
入面の面積を十分に確保することによって、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性を十分に高めることができる。
【0038】
特に、弁体65の挿通軸67の先端側に止め金69を係止する環状の係止突起73が弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代分の弾性変形によって形成されているため、ガスバイパスバルブ49の構成を複雑化することなく、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより十分に高めることができる。また、弁体65及び止め金69の材料を熱膨張率の差がない材料(例えばオーステナイト系ステンレス材料同士)に選定すると、エンジンEの稼働時に弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入面と止め金69の固定穴71の圧入面の圧入代が変動せず、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより安定させることができる。更に、弁体65及び止め金69の材料を熱膨張率の差がある材料に選定して、エンジンEの稼働時に弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入面と止め金69の固定穴71の圧入面の圧入代を大きくして、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性を高めるようにしても構わない。
【0039】
従って、本発明の実施形態によれば、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより十分に高めることができるため、ガスバイパスバルブ49の耐久性、換言すれば、車両用多段過給システム1の耐久性を向上させることができる。
【0040】
(本発明の第1実施形態の変形例)
本発明の第1実施形態の変形例について
図2(b)を参照して説明する。
【0041】
本発明の第1実施形態の変形例においては、前述のガスバイパスバルブ49(
図1(a)(b)参照)に代えて、
図2(b)に示すようなガスバイパスバルブ49A(ガス流量可変バルブの1つ)を用いており、本発明の第1実施形態の変形例に係るガスバイパスバルブ49Aは、ガスバイパスバルブ49と略同様の構成を有している。以下、ガスバイパスバルブ49Aの構成のうち、ガスバイパスバルブ49と異なる部分についてのみ説明する。なお、ガスバイパスバルブ49Aにおける複数の構成要素のうち、ガスバイパスバルブ49における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0042】
弁体65の挿通軸67の先端面から内部にかけて、軸方向(弁体65の挿通軸67の長手方向)へ延びた空洞75が機械加工によって形成されている。なお、空洞75は、挿通軸67の圧入軸部67bの内部に形成されていれば、挿通軸67の先端面から形成されてなくても構わない。
【0043】
そして、本発明の第1実施形態の変形例によると、挿通軸67の圧入軸部67bの内部に空洞75が形成されているため、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bが止め金69の固定穴71に圧入する際に、弁体65の挿通軸67の降伏を十分に防止することができる。よって、本発明の第1実施形態の変形例によれば、本発明の実施形態の効果をより高めることができる。
【0044】
(本発明の第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図5(a)(b)を参照して説明する。
【0045】
本発明の第2実施形態においては、前述のガスバイパスバルブ49(49A)(
図1(a)(b)及び
図2(b)参照)に代えて、
図5(a)(b)に示すようなガスバイパスバルブ77(ガス流量可変バルブの1つ)を用いており、本発明の第2実施形態に係るガスバイパスバルブ77は、ガスバイパスバルブ49(49A)と略同様の構成を有している。以下、ガスバイパスバルブ77の構成のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)と異なる部分についてのみ説明する。なお、ガスバイパスバルブ77における複数の構成要素のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0046】
弁体65の挿通軸67における嵌合軸部67aと圧入軸部67bは、同径で連続してあって、止め金69の頂面と挿通軸67の先端面は、同一面上に位置している。また、止め金69の固定穴71と取付タング59の取付穴61を整合させた状態で、
図5(a)の白抜き矢印に示すように、弁体65を取付タング59側に押付けることによって、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bが止め金69の固定穴71に圧入するようになっている。
【0047】
止め金69の頂面69tにおける固定穴71の周縁には、環状の面取部79が形成されている。また、弁体65の挿通軸67の先端側には、止め金69の面取部79を係止する環状の係止突起81が形成されており、この係止突起81は、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bを止め金69の固定穴71に圧入する際に、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代分の弾性変形によって生成されるようになっている。
【0048】
なお、本発明の第1実施形態の変形例と同様に、弁体65の挿通軸67の内部に空洞75が挿通軸67の先端側から機械加工によって形成されているが、弁体65の挿通軸67から空洞75を省略しても構わない。
【0049】
そして、本発明の第2実施形態によると、弁体65の挿通軸67の先端側に止め金69の面取部79を係止する環状の係止突起81が弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代分の弾性変形によって形成されているため、ガスバイパスバルブ77の構成を複雑化することなく、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより十分に高めることができる。よって、本発明の第2実施形態によれば、前述の本発明の第1実施形態(変形例を含む)と同様の効果を奏するものである。
【0050】
(本発明の第3実施形態)
本発明の第3実施形態について
図6(a)(b)を参照して説明する。
【0051】
本発明の第3実施形態においては、前述のガスバイパスバルブ49(49A)(
図1(a)(b)及び
図2(b)参照)に代えて、
図6(a)(b)に示すようなガスバイパスバルブ83(ガス流量可変バルブの1つ)を用いており、本発明の第3実施形態に係るガスバイパスバルブ83は、ガスバイパスバルブ49(49A)と略同様の構成を有している。以下、ガスバイパスバルブ83の構成のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)と異なる部分についてのみ説明する。なお、ガスバイパスバルブ83における複数の構成要素のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0052】
止め金69の固定穴71は、頂面69t側(取付部材55の反対側)から、小径穴部71a、及び小径穴部71aよりも大径の大径穴部71bを有している。また、弁体65の挿通軸67は、基端側から、嵌合軸部67a、嵌合軸部67aと同径であってかつ止め金69の固定穴71の大径穴部71bに圧入する圧入軸部67b、及び圧入軸部67bよりも小径であってかつ止め金69の固定穴71の小径穴部71aに嵌合する小径嵌合軸部67cを有している。更に、弁体65の挿通軸67の嵌合軸部67aと取付タング59の取付穴61を嵌合させた状態で、
図6(a)の白抜き矢印に示すように、止め金69を取付タング59側に押付けることによって、挿通軸67の圧入軸部67bが止め金69の固定穴71の大径穴部71bに圧入するようになっている。なお、挿通軸67における圧入軸部67bと小径嵌合軸部67cの境界段差面67sは、止め金69の押し込み時の受け面(座面)になっている。
【0053】
止め金69の固定穴71の大径穴部71bの内周面における小径穴部71a側(奥側)には、周溝85が形成されている。また、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの先端側には、止め金69の周溝85を係止する環状の係止突起87が形成されており、この係止突起87は、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bを止め金69の固定穴71の大径穴部71bに圧入する際に、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代(図示省略)分の弾性変形によって生成されるようになっている。
【0054】
なお、本発明の第1実施形態の変形例と同様に、弁体65の挿通軸67の内部に空洞(図示省略)が挿通軸67の先端側から機械加工によって形成されるようにしても構わない。
【0055】
そして、本発明の第3実施形態によれば、弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの先端側に止め金69の周溝85を係止する環状の係止突起87が弁体65の挿通軸67の圧入軸部67bの圧入代分の弾性変形によって形成されているため、ガスバイパスバルブ83の構成を複雑化することなく、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより十分に高めることができる。よって、本発明の第3実施形態によれば、前述の本発明の第1実施形態(変形例を含む)と同様の効果を奏するものである。
【0056】
(本発明の第4実施形態)
本発明の第4実施形態について
図7(a)(b)を参照して説明する。
【0057】
本発明の第4実施形態においては、前述のガスバイパスバルブ49(49A)(
図1(a)(b)及び
図2(b)参照)に代えて、
図7(a)(b)に示すようなガスバイパスバルブ89(ガス流量可変バルブの1つ)を用いており、本発明の第4実施形態に係るガスバイパスバルブ89は、ガスバイパスバルブ49(49A)と略同様の構成を有している。以下、ガスバイパスバルブ89の構成のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)と異なる部分についてのみ説明する。なお、ガスバイパスバルブ89における複数の構成要素のうち、ガスバイパスバルブ49(49A)における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0058】
弁体65の中央部に挿通軸67が一体形成され、弁体65の挿通軸67の先端部に弁体65を止め金69が設けられ、止め金69に固定穴(圧入穴)71が貫通形成される代わりに(
図1参照)、止め金69の中央部には、取付タング59の取付穴61に挿通(嵌合挿通)する挿通軸91が一体形成されると共に、弁体65の中央部に固定穴93が貫通形成されている。
【0059】
ここで、止め金69の挿通軸91は、基端側から、取付タング59の取付穴61に嵌合する嵌合軸部91a、及び嵌合軸部91aと同径であって弁体65の固定穴93に圧入する圧入軸部91bを有している。また、弁体65の固定穴93と取付タング59の取付穴61を整合させた状態で、
図7(a)の白抜き矢印に示すように、止め金69を取付タング59側に押付けることによって、止め金69の挿通軸91が弁体65の固定穴93に圧入するようになっている。
【0060】
弁体65の底面65b(取付部材55の反対側の面)における固定穴93の周縁には、環状の面取部95が形成されている。また、止め金69の挿通軸91の先端側には、弁体65の面取部95を係止する環状の係止突起97が形成されており、この係止突起97は、止め金69の挿通軸91を弁体65の固定穴93に圧入する際に、止め金69の挿通軸91の圧入代(図示省略)分の弾性変形によって生成されるようになっている。
【0061】
なお、止め金69の挿通軸91の先端面から圧入軸部91bの内部にかけて軸方向(止め金69の挿通軸91の長手方向)へ延びた空洞99が機械加工によって形成されているが、止め金69の挿通軸91から空洞99を省略しても構わない。
【0062】
そして、本発明の第4実施形態によれば、止め金69の挿通軸91が弁体65の固定穴93に圧入しているため、ガスバイパスバルブ89の動作中に、弁体65と止め金69の間に発生する相対的な引き抜き荷重を止め金69の挿通軸91の圧入軸部91bの圧入面(外周面)と弁体65の固定穴93の圧入面(内周面)に負担させることができる。これにより、止め金69の挿通軸91の圧入面及び弁体65の固定穴93の圧入面の面積を十分に確保することによって、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性を十分に高めることができる。特に、止め金69の挿通軸91の先端側に弁体65の面取部95を係止する環状の係止突起97が止め金69の挿通軸91の圧入代分の弾性変形によって形成されているため、ガスバイパスバルブ89の構成を複雑化することなく、弁体65に対する相対的な止め金69の耐引き抜き性をより十分に高めることができる。よって、本発明の第4実施形態によれば、前述の本発明の第1実施形態(変形例を含む)と同様の効果を奏するものである。
【0063】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、ガスバイパスバルブ47(47A,77,83,89)に適用した構成をウェイストゲートバルブ45に適用する等、その他、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。