(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098156
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】故障診断機能を備えた負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20170313BHJP
G01R 31/319 20060101ALI20170313BHJP
H02H 7/20 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
B60R16/02 650S
G01R31/28 R
H02H7/20 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-278319(P2012-278319)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121913(P2014-121913A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久須美 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】正木 貴浩
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−136150(JP,A)
【文献】
特開2003−224983(JP,A)
【文献】
特開2008−177879(JP,A)
【文献】
特開2008−263763(JP,A)
【文献】
特開2011−120418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G01R 31/319
H02H 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障診断時に、第1制御スイッチ(8)をオンすることで、コンデンサ(7)と負荷(3)とを直列接続させ、電源電圧に基づく電流が前記コンデンサ(7)と前記負荷(3)および抵抗(12)を通じる経路で流れるように構成された回路を有する負荷駆動装置(1)において、
前記故障診断時ではなく前記負荷(3)を駆動する通常動作時には、前記負荷(3)が前記コンデンサ(7)を介在させない電源ライン(2)を通じて電圧源からの電力供給を受けて駆動されると共に、前記電源ライン(2)には前記負荷(3)への電力供給のオンオフを制御する前記負荷(3)の上流に配置された第2制御スイッチ(4)と前記負荷(3)の下流に配置された第3制御スイッチ(5)が備えられ、前記故障診断時には、前記第2制御スイッチ(4)および前記第3制御スイッチ(5)がオフされることで前記コンデンサ(7)を介在させない前記電源ライン(2)を通じての電力供給がオフされ、前記負荷(3)を駆動する通常動作時には、前記第1制御スイッチ(8)がオンされ、
前記故障診断時に、前記第1制御スイッチ(8)をオンさせるスイッチ制御手段(100)と、
前記第1制御スイッチ(8)をオンしたときからの経過時間を計測する計測手段(110)と、
前記経路内において上流から前記コンデンサ(7)、前記負荷(3)、前記抵抗(12)の順に配置されており、前記コンデンサ(7)と前記抵抗(12)の間の電圧をモニタ電圧として、所定の制御周期毎に前記モニタ電位が異常判定閾値を超えたか否かを繰り返し判定する第1判定手段(130)と、
前記第1判定手段(130)にて前記モニタ電圧が前記異常判定閾値を超えたと判定された回数をカウントするカウント手段(140)と、
前記カウント手段(140)でのカウント値が正常閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段(150)と、
前記第2判定手段(150)にて前記カウント値が前記正常閾値以上であると判定されると、前記経過時間にかかわらず正常であると診断する正常診断手段(160)と、を備えていることを特徴とする故障診断機能を備えた負荷駆動装置。
【請求項2】
前記第2判定手段(150)にて前記カウント値が前記正常閾値以上であると判定されていないときには、前記経過時間が異常判定時間に達しているか否かを判定し、前記経過時間が前記異常判定時間に達するまで前記制御周期毎に前記第1判定手段(130)による判定や前記カウント手段(140)によるカウントおよび前記第2判定手段(150)による判定を繰り返し実行させる時間判定手段(170)と、
前記時間判定手段(170)にて前記経過時間が前記異常判定時間に達したと判定されると、前記カウント値が異常閾値以下であるか否かを判定する第3判定手段(180)と、
前記第3判定手段(180)にて前記カウント値が前記異常閾値以下であると判定されると、異常であると診断する異常診断手段(190)と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の故障診断機能を備えた負荷駆動装置。
【請求項3】
前記第3判定手段(180)は、前記カウント値が前記正常閾値よりも小さな値に設定された前記異常閾値以下であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の故障診断機能を備えた負荷駆動装置。
【請求項4】
前記第2判定手段(150)によって正常であると診断されておらず、かつ、前記第3判定手段(180)にて異常であると判定されていないときには、前記正常判定手段(160)にて、正常であると診断することを特徴とする請求項3に記載の故障診断機能を備えた負荷駆動装置。
【請求項5】
前記第2判定手段(150)によって正常であると診断されておらず、かつ、前記第3判定手段(180)にて異常であると判定されていないときには、保留状態として再度故障診断を試行する保留診断手段(200)を有していることを特徴とする請求項3に記載の故障診断機能を備えた負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサが備えられる回路の故障を診断する故障診断機能を備えた負荷駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の電気系の故障を診断する装置として、特許文献1に示される故障診断装置がある。この故障診断装置では、電源電圧を分圧抵抗などで降圧した出力電圧を電源電圧に対応する電圧として用い、出力電圧のレベルを異常判定閾値と比較することで正常であるか異常であるかの診断を行っている。具体的には、自動車の電気系ではバッテリや定電圧源からの異なる電圧が電源電圧として利用されることから、公称電圧(例えばバッテリ電圧なら12V、定電圧源の電圧なら5Vなど)ごとに対応する異常判定閾値を定めている。そして、各出力電圧を電源電圧ごとに定められた対応する異常判定閾値と比較し、出力電圧が異常判定閾値に満たない期間が所定期間に達すると、異常であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−231838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、故障診断は、出力電圧が安定した定常状態で行われる。これにより、判定精度を高めている。
【0005】
しかしながら、コンデンサが使われている回路の故障診断を行う場合において、電源電圧が印加されるコンデンサと負荷とが直列接続された経路内の所定の場所の電位を出力電圧として用いて異常判定閾値と比較する場合、出力電圧が時間の経過に伴って低下する現象が生じる。このため、定常状態になるまで待って出力電圧と異常判定閾値とを比較しようとしても、出力電圧が異常判定閾値未満まで低下してしまって判定タイミングを逃してしまい、精度の良い故障診断を行うことができなくなって、誤って異常と判定してしまって不良率が高まるおそれがあった。また、故障診断に時間を掛け過ぎるのは検査効率の観点から望ましくない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、精度の良い故障診断が行えるようにしつつ、検査効率の向上を図ることができる故障診断機能を備えた負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、故障診断時に、スイッチ制御手段(100)によって
第1制御スイッチ(8)をオンさせ、計測手段(110)により
第1制御スイッチ(8)をオンしたときからの経過時間を計測すると共に、第1判定手段(130)により、経路内
において上流から順に配置されたコンデンサ(7)、負荷(3)、抵抗(12)におけるコンデンサ(7)と抵抗(12)の間の電圧をモニタ電圧として、所定の制御周期毎にモニタ電位が異常判定閾値を超えたか否かを繰り返し判定する。そして、第1判定手段(130)にてモニタ電圧が異常判定閾値を超えたと判定された回数をカウント手段(140)によりカウントし、さらに第2判定手段(150)によってカウント手段(140)でのカウント値が正常閾値以上であるか否かを判定し、第2判定手段(150)にてカウント値が正常閾値以上であると判定されると、正常診断手段(160)によって、経過時間にかかわらず正常であると診断することを特徴としている。
【0008】
故障診断時に、
第1制御スイッチ(8)を介してコンデンサ(7)と負荷(3)とが直列接続されるようにして、電源電圧に基づく電流がコンデンサ(7)および負荷(3)を通じる経路で流れる構成においては、負荷駆動装置が正常であれば、モニタ電圧が
第1制御スイッチ(8)をオンして直ぐのときに定常状態よりも大きな値となり、異常であれば、モニタ電圧が上昇しない。
【0009】
これに基づいて、異常判定閾値とモニタ電圧とを比較することで、故障診断を行い、モニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数が正常閾値を超えれば、超えたときに正常と診断するようにしている。このため、経過時間にかかわらず、早急に正常であることを診断することができる。したがって、精度の良い故障診断が行えるようにしつつ、検査効率の向上を図ることができる故障診断機能を備えた負荷駆動装置とすることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第2判定手段(150)によりカウント値が正常閾値以上であると判定されていないときには、時間判定手段(170)によって経過時間が異常判定時間に達しているか否かを判定し、経過時間が異常判定時間に達するまで制御周期毎に第1判定手段(130)による判定やカウント手段(140)によるカウントおよび第2判定手段(150)による判定を繰り返し実行させ、時間判定手段(170)にて経過時間が異常判定時間に達したと判定されると、第3判定手段(180)によってカウント値が異常閾値以下であるか否かを判定し、さらに第3判定手段(180)にてカウント値が異常閾値以下であると判定されると、異常診断手段(190)によって異常であると診断することを特徴としている。
【0011】
このように、モニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数が正常閾値を超えない場合にのみ異常判定時間の間、異常であるか否かを判定するようにしている。このため、精度の良い故障診断が行えるようにしつつ、正常の判定を異常判定時間と同じ期間、診断し続ける場合と比較して、検査効率の向上を図ることができる故障診断機能を備えた負荷駆動装置とすることが可能となる。
【0012】
この場合、請求項3に記載したように、第3判定手段(180)では、異常閾値を正常閾値よりも小さな値に設定することができる。
【0013】
このようにする場合、請求項4に記載したように、第2判定手段(150)によって正常であると診断されておらず、かつ、第3判定手段(180)にて異常であると判定されていないときには、正常判定手段(160)にて、正常であると診断することができる。また、請求項5に記載したように、第2判定手段(150)によって正常であると診断されておらず、かつ、第3判定手段(180)にて異常であると判定されていないときには、保留診断手段(200)により、保留状態として再度故障診断を試行することもできる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる故障診断機能を備えた負荷駆動装置1の構成を示した図である。
【
図2】第3スイッチ8をオンしてから定常状態になるまでのモニタ電圧波形などを示したタイムチャートである。
【
図3】第1実施形態において制御部14が実行する故障診断処理の詳細を示したフローチャートである。
【
図4】第2実施形態において制御部14が実行する故障診断処理の詳細を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる故障診断機能を備えた負荷駆動装置1の構成を示した図である。例えば、負荷駆動装置1は、車両におけるブレーキ液圧制御用の電子制御装置(ブレーキECU)に備えられる。
【0019】
図1に示すように、負荷駆動装置1は、電源としてバッテリ電圧BATを発生させるバッテリや、バッテリ電圧BATに基づいて定電圧Vccを生成している定電圧源を用いて動作させられる。
【0020】
バッテリ電圧BATは、電源供給ライン2を通じて負荷となるモータ3に対して印加される。電源供給ライン2におけるモータ3のハイサイド側およびローサイド側には、モータ3と直列接続されるように第1スイッチ4および第2スイッチ5が備えられており、これら第1、第2スイッチ4、5が両方共にオンされているときに、モータ3への電力供給が行われるようになっている。
【0021】
また、電源供給ライン2には、第1スイッチ4およびモータ3と並列接続されるように平滑ライン6が接続されており、この平滑ライン6内にコンデンサ7と第3スイッチ8とが直列接続された状態で備えられている。さらに、コンデンサ7に対して並列接続されるようにプルアップ抵抗9が備えられている。
【0022】
また、バッテリ、コンデンサ7、モータ3が直列接続された回路のうちモータ3のローサイド側である、第1スイッチ4とモータ3との間には電圧モニタを行うモニタライン10が接続されている。このモニタライン10には、電流制限抵抗11が備えられ、かつ、電流制限抵抗11よりも第1スイッチ4とモータ3との接続点側とGNDとの間を接続するようにプルダウン抵抗12が備えられている。モニタライン10には、プルアップ抵抗13を介して定電圧Vccが印加されている。
【0023】
さらに、負荷駆動装置1には、CPUなどで構成される制御部14が備えられている。制御部14は、各種制御要求に基づいて第1〜第3スイッチ4、5、8のオンオフを制御し、コンデンサ7が備えられた回路の故障診断やモータ3などの負荷駆動を行う。具体的には、制御部14は、モニタライン10の電圧を出力電圧としてモニタし、このモニタした出力電圧(以下、モニタ電圧という)に基づいて、所定のタイミングで故障診断処理を実行することで故障診断機能を実現している。また、制御部14は、例えばブレーキ操作状態を示す踏力センサやストロークセンサなどの信号や車輪速度信号などの各種信号を入力しており、各種信号に基づいてブレーキ液圧制御を実行し、その制御中にモータ3などの負荷駆動を行っている。
【0024】
続いて、このように構成される負荷駆動装置1の作動について説明する。
【0025】
負荷駆動装置1は、例えば車両に搭載されたのち、車両の作動スイッチ、例えばイグニッションスイッチをオンしたときに作動させられ、イニシャルチェックとして故障診断を行う。そして、故障診断において正常と診断された場合には、モータ3などの負荷の通常動作を許可し、必要時に負荷駆動を行う。例えば、負荷駆動装置1がブレーキECUに適用される場合、ブレーキ時にアンチロックブレーキ(ABS)制御などの各種ブレーキ液圧制御が実行されたときに、モータ3の駆動を行っている。また、故障診断において異常と診断された場合には、異常である旨の報知、例えば警告ランプを点灯させるなどの処置を行うようにしている。
【0026】
まず、車両の作動スイッチがオンされると、制御部14は電圧が印加されて起動し、故障診断を行う。故障診断時には、制御部14は、第3スイッチ8をオンし、第1、第2スイッチ4、5についてはオフする。これにより、第3スイッチ8を介してコンデンサ7とモータ3とが直列接続された状態となり、バッテリ電圧BATに基づく電流は、コンデンサ7、第3スイッチ8、モータ3、プルダウン抵抗12を通じる経路で流れることになる。
【0027】
このとき、第3スイッチ8をオンして直ぐの時には未だコンデンサ7が充電される前の状態であるため、上記経路で電流が流れ、モニタライン10を通じて制御部14に入力されるモニタ電圧が定常状態よりも大きな値となる。そして、コンデンサ7への充電が完了すると、上記経路を通じて電流が流れなくなり、モニタ電位が定電圧源が生成する定電圧Vccをプルアップ抵抗13および電流制限抵抗11やプルダウン抵抗12にて分圧した値となる。このときのモニタ電圧が定常状態のときの電圧値となる。
【0028】
図2は、第3スイッチ8をオンしてから定常状態になるまでのモニタ電圧波形などを示したタイムチャートである。この図に示されるように、第3スイッチ8をオンして直ぐはモニタ電圧が定常状態より高い値となり、しばらくするとモニタ電圧が、第3スイッチ8のハイサイド電位すなわち時間とともに
低下しているコンデンサ電位に一致し、その後共に低下する。そして、上記経路において何らかの故障(短絡や断線など)が発生していなければ、第3スイッチ8をオンしたときのモニタ電圧波形が
図2のようになり、故障が発生していると第3スイッチ8をオンしてもモニタ電圧が上昇しない。このため、正常時に第3スイッチ8をオンしたときに上昇すると想定されるモニタ電圧と、定常状態のときのモニタ電圧との間に電圧を異常判定閾値に設定し、この異常判定閾値とモニタ電圧とを比較することで、故障診断を行う。
【0029】
図3は、制御部14が実行する故障診断処理の詳細を示したフローチャートである。この処理は、車両の作動スイッチがオフからオンに切り替わったタイミングで所定の制御周期毎に実行される。
【0030】
まず、ステップ100で第3スイッチ8をオンしたのち、ステップ110に進み、判定用タイマのカウントアップを行う。この判定用タイマにより、第3スイッチ8をオンしてからの経過時間を計測している。
【0031】
次に、ステップ120に進んで電圧モニタ、つまりモニタ電圧の電圧値を入力したのち、ステップ130に進んでモニタ電圧が異常判定閾値を超えているか否かを判定する。そして、ステップ130で肯定判定されればステップ140に進んでモニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数をカウントする判定用カウンタをカウントアップし、その後、ステップ150に進む。また、ステップ130で否定判定されれば、ステップ140を飛ばしてステップ150に進む。
【0032】
ステップ150では、判定用カウンタのカウント値が正常閾値以上であるか否かを判定する。ここでいう正常閾値とは、モニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数が所定回数に達したときに故障が発生しておらず正常であると診断しても良いと想定される値である。例えば、正常閾値は2回に設定される。ここでも肯定判定されると、ステップ160に進んで正常であると診断し、正常であることを示すフラグをセットすることなどにより、負荷駆動装置1が正常であることを示す。これにより、後述する異常判定時間やモニタ電圧が定常状態に低下するまでに必要な時間を待つことなく、早急に正常であると診断することができる。
【0033】
一方、ステップ150で否定判定された場合には、ステップ170に進み、判定用タイマが異常判定時間を越えたか否かを判定する。異常判定時間とは、故障が発生していて異常である場合に異常と診断するまでに必要になると予想される時間であり、この時間中は正常であるとの診断結果が出ていなくても異常と診断してしまわず、上記各処理を繰り返すようにしている。したがって、ここで否定判定された場合にはステップ110に戻って上記各処理を繰り返し、肯定判定された場合にはステップ180に進む。
【0034】
そして、ステップ180において、判定用カウンタのカウント値が異常閾値以下であるか否かを判定する。ここでいう異常閾値とは、モニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数が正常閾値を規定した所定回数よりも少ないとき、もしくは、一度も超えていないときに故障が発生して異常であると診断する値である。例えば、異常閾値は、1回もしくは0回に設定され、要求される仕様に応じて設定される。そして、ステップ180で否定判定されればステップ160に進んで負荷駆動装置1が正常であることを示し、肯定判定されればステップ190に進んで異常であると診断し、異常であることを示すフラグをセットすることなどにより、負荷駆動装置1が異常であることを示す。これにより、異常判定時間中に正常であるとの診断が行われなかった場合でも、異常判定時間が経過したタイミングで最終的に正常であるか異常であるかの診断を確定することができる。
【0035】
このようにして、負荷駆動装置1が正常であるか異常であるかの診断を終え、正常と診断された場合にはモータ3などの負荷の通常動作を許可すると共に必要時に負荷駆動を行い、異常と診断された場合には異常である旨の報知、例えば警告ランプを点灯させるなどの処置を行う。そして、正常と診断された場合において、必要時にモータ3などの負荷駆動を行う際には、第1〜第3スイッチ4、5、8をすべてオンにすることでモータ3への通電を行い、モータ3を駆動する。これにより、例えばモータ3がブレーキ液圧制御用のポンプを駆動に用いられるものであった場合には、アンチロックブレーキ(ABS)制御などにおいて、ポンプ駆動に基づいて、ホイールシリンダから排出されたブレーキ液が貯留されたリザーバからブレーキ液を吸入吐出し、ホイールシリンダの増圧を行うなどのブレーキ液圧制御を行うことになる。
【0036】
そして、モータ3の回転数制御等を行う際に、第1スイッチ4のオンオフを高周波で変動させることでデューティ制御したりするが、その際には第1スイッチ4やモータ3に対してコンデンサ7が並列接続された状態となることから、コンデンサ7の充電電圧を用いて第1スイッチ4のハイサイド側電位の変動を抑制して安定化させられる。このため、例えば第1スイッチ4などのオンオフをインテリジェントMOSFETで制御する場合に、第1スイッチ4のハイサイド側電位に基づいてインテリジェントMOSFETがオンオフ制御していたとしても、当該ハイサイド側電位の変動によってインテリジェントMOSFETが第1スイッチ4を自動的にオフしてしまうことを防止できる。さらに、コンデンサ7を備えていることから、スイッチングノイズなどのノイズ除去も行え、より好適な回路動作が行えるようにすることも可能となる。
【0037】
なお、故障診断後には、第3スイッチ8がオンされていることによって、バッテリ電圧BATに基づく電流が、プルアップ抵抗9、第3スイッチ8、モータ3、プルダウン抵抗12を通じる経路で流れることになる。しかしながら、プルアップ抵抗9の抵抗値の設定により、モータ3が作動しない程度の電流値に抑えるようにしているため、通常動作時に第3スイッチ8がオンし続けていても問題ない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態にかかる負荷駆動装置1では、故障診断時には、第3スイッチ8を介してコンデンサ7とモータ3とが直列接続されるようにし、バッテリ電圧BATに基づく電流がコンデンサ7およびモータ3を通じる経路で流れるようにしている。このため、負荷駆動装置1が正常であれば、モニタライン10の出力電圧であるモニタ電圧が第3スイッチ8をオンして直ぐのときに定常状態よりも大きな値となり、異常であれば、モニタ電圧が上昇しない。これに基づいて、故障が発生していない正常時に第3スイッチ8をオンしたときに上昇すると想定されるモニタ電圧と、定常状態のときのモニタ電圧との間に電圧を異常判定閾値に設定し、この異常判定閾値とモニタ電圧とを比較することで、故障診断を行っている。そして、モニタ電圧が異常判定閾値を超えた回数が正常閾値を超えれば、超えたときに正常と診断し、超えない場合にのみ異常判定時間の間、異常であるか否かを判定するようにしている。
【0039】
このため、第3スイッチ8をオンしてからの経過時間にかかわらず、つまり異常判定時間やモニタ電圧が定常状態に低下するまでに必要な時間を待つことなく、早急に正常であることを診断することができる。したがって、精度の良い故障診断が行えるようにしつつ、正常と判定された場合にまで毎回異常判定時間の間、故障診断を続ける場合と比較して、検査効率の向上を図ることができる故障診断機能を備えた負荷駆動装置1とすることが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、制御部14が実行する故障診断処理を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図4は、本実施形態において制御部14が実行する故障診断処理の詳細を示したフローチャートである。
【0042】
まず、ステップ100〜180では、上記第1実施形態において説明した
図4のステップ100〜180と同様の処理を実行する。そして、ステップ180で否定判定されたときには、ステップ160に進むのではなく、ステップ200に進んで正常か異常かの診断を保留する。つまり、第1実施形態では、異常判定時間中に正常であるとの診断が行われなかった場合でも、異常であると診断されなければ異常判定時間が経過したタイミングで最終的に正常であると診断していたが、本実施形態では、そのような場合に保留状態となる。この場合、第3スイッチ8をオフし、コンデンサ7が放電されてから、故障診断処理を再度実施する。これにより、より精度良く故障診断を行うことができる。また、故障診断処理を再度実施せずに、保留中であることを示すだけでも良い。
【0043】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0044】
例えば、負荷駆動装置1にて駆動される負荷としてモータ3を例に挙げたが、モータ3以外の負荷であっても良いし、負荷駆動装置1がブレーキECUに備えられる場合について説明したが、他のECUなどであっても構わない。
【0045】
また、上記各実施形態では、故障診断時に、第3スイッチ8を介してコンデンサ7とモータ3とが直列接続されるようにすることで、電源電圧となるバッテリ電圧BATに基づく電流がコンデンサ7およびモータ3を通じる経路で流れるようにする回路構成の一例を示したが、他の回路構成であってもよい。また、モニタラインを第1スイッチ4とモータ3との間に接続する形態を例に挙げたが、これに限るものではない。
【0046】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。例えば、ステップ100の処理を実行する部分がスイッチ制御手段、ステップ110の処理を実行する部分が計測手段、ステップ130の処理を実行する部分が第1判定手段、ステップ140の処理を実行する部分がカウント手段、ステップ150の処理を実行する部分が第2判定手段、ステップ160の処理を実行する部分が正常診断手段、ステップ170の処理を実行する部分が時間判定手段、ステップ190の処理を実行する部分が異常診断手段、ステップ200の処理を実行する部分が保留診断手段に相当する。
【符号の説明】
【0047】
1…負荷駆動装置、2…電源ライン、3…モータ、4、5…第1、第2スイッチ、6…平滑ライン、7…コンデンサ、8…第3スイッチ、9…プルアップ抵抗、10…モニタライン、11…電流制限抵抗、12…プルダウン抵抗、13…プルアップ抵抗、14…制御部