特許第6098186号(P6098186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098186
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20170313BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20170313BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20170313BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   G01N35/04 E
   G01N35/00 B
   C12M1/00 A
   !C12N15/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-11516(P2013-11516)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-142286(P2014-142286A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 満洋
(72)【発明者】
【氏名】末竹 寿紀
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−003349(JP,A)
【文献】 特開2005−204592(JP,A)
【文献】 特開平03−122567(JP,A)
【文献】 特表2008−504538(JP,A)
【文献】 特開2004−347611(JP,A)
【文献】 特開2008−256643(JP,A)
【文献】 特開2008−298516(JP,A)
【文献】 特開2008−309669(JP,A)
【文献】 特開2003−057245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
C12M 1/00
C12N 15/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊形状の試験片を収容して当該試験片を浸す容量の液体を貯留可能な細長な反応槽が、当該反応槽の長手方向に沿った第1方向と直交する第2方向へ複数が並列された反応部と、
上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽へ試薬を分注する試薬ノズルを有する試薬部と、
上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽へ洗浄液を分注する洗浄ノズルを有する洗浄部と、
上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽に貯留された液体を吸引する廃液ノズルを有する廃液部と、を具備し、
上記反応槽は、上記第1方向の一端側に近接した位置に設けられており、上記第2方向に沿った反応槽の幅を狭めるように突出された突片を有しており、
上記廃液ノズルは、上記突片より上記第1方向の一端側において上記反応槽に貯留された液体を吸引するものである反応装置。
【請求項2】
上記反応部は、上記複数の反応槽が設けられたトレイと、当該トレイが載置される基台と、を有するものである請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
上記基台は、上記第1方向に沿った傾斜角度が変化するように姿勢変化可能であり、当該基台を姿勢変化させるための駆動源を更に具備する請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
上記基台は、熱源を有しており、当該熱源の発熱温度を制御する制御部を更に具備する請求項2又は3に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸などの生理活性物質が固定された試験片を検体と反応させるために用いられる反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲノムシークエンシングの進展によって各生物のゲノムの全ての塩基配列が明らかにされてきている。明らかにされた塩基配列を利用して、遺伝子のタイプを解析する手法として、核酸マイクロアレイを用いた検査方法が知られている。例えば、菌類の遺伝子を解析して薬剤耐性のタイプを特定することにより、診断や治療に寄与することが期待されている。
【0003】
核酸マイクロアレイは、特定の塩基配列が定性的に検出できればよいことから、ニトロセルロースやナイロンのような紙片を基材とした安価のものが望まれている(特許文献1)。また、核酸マイクロアレイを被検査物質と反応させる作業を簡略化するために、試薬の分注や洗浄などを機械に行わせる装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平7−503143号公報
【特許文献2】特開2003−57245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示される処理装置は、形状などが専用の核酸マイクロアレイが必要であることから、汎用性が無いという問題がある。また、試薬のノズルを2方向へ移動させたり、各処理槽に廃液のための流路を設けたりする必要があるなど、装置の構造が複雑であり、コストダウンが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、汎用性があり、簡易な構造の反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る反応装置は、短冊形状の試験片を収容して当該試験片を浸す容量の液体を貯留可能な細長な反応槽が、当該反応槽の長手方向に沿った第1方向と直交する第2方向へ複数が並列された反応部と、上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽へ試薬を分注する試薬ノズルを有する試薬部と、上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽へ洗浄液を分注する洗浄ノズルを有する洗浄部と、上記反応槽に対して上記第2方向へ相対的に移動可能であり、上記反応槽に貯留された液体を吸引する廃液ノズルを有する廃液部と、を具備するものである。
【0008】
例えば、核酸マイクロアレイである試験片が各反応槽にそれぞれ投入されて収容される。その各反応槽に、被検物質及び試薬が注入される。被検物質は、例えば、PCRにより増幅されたDNAであり、ユーザによって各反応槽へ注入される。試薬は、被検物質と核酸マイクロアレイとをハイブリダイズするための反応液であり、試薬部から試薬ノズルを通じて各反応槽へ分注される。ハイブリダイズのための時間が経過した後、廃液部により廃液ノズルを通じて各反応槽から試薬が吸引されて排出される。その後、洗浄部から洗浄ノズルを通じて各反応槽へ洗浄液が分注される。洗浄液によって試験片が洗浄された後、同様にして、例えば酵素によって標識されたコンジュゲート液が各反応槽へ分注されて反応され、再び洗浄が行われた後に、その酵素によって発色する基質液が各反応槽へ分注されて反応される。そして、最終的に洗浄された試験片が各反応槽に残るので、その試験片の発色状態を目視にて観察することによって、被検物質のタイプの同定が行われる。
【0009】
(2) 上記反応部は、上記複数の反応槽が設けられたトレイと、当該トレイが載置される基台と、を有するものであってもよい。
【0010】
基台に対してトレイが着脱できるので、トレイをディスポーザブルとすることができる。
【0011】
(3) 上記基台は、上記第1方向に沿った傾斜角度が変化するように姿勢変化可能であり、当該基台を姿勢変化させるための駆動源を更に具備するものであってもよい。
【0012】
基台の傾斜によってトレイの各反応槽も傾くので、試験片が収容された各反応槽において試薬又は洗浄液が撹拌される。
【0013】
(4) 上記基台は、熱源を有しており、当該熱源の発熱温度を制御する制御部を更に具備するものであってもよい。
【0014】
例えば、被検物質と試験片との反応において、各反応槽をハイブリダイズに適した温度に保持することができる。
【0015】
(5) 上記反応槽は、上記第1方向の一端側に近接した位置に設けられており、上記第2方向に沿った反応槽の幅を狭めるように突出された突片を有しており、上記廃液ノズルは、上記突片より上記第1方向の一端側において上記反応槽に貯留された液体を吸引するものであってもよい。
【0016】
各反応槽において、試験片が収容されている空間と、廃液ノズルが進入する空間との間に突片が存在するので、試薬又は洗浄液の吸引に伴って、試験片が廃液ノズルまで移動して、廃液ノズルに試験片が詰まることが防止される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る反応装置によれば、複数の細長な反応槽が、その長手方向と直交する方向へ並列されているので、反応部の小型化が実現される。また、試験片をそれぞれ収容する各反応槽に対して、試薬ノズル、洗浄ノズル及び廃液ノズルが一定の方向へ相対的に移動するので、装置の構造が簡略化される。これにより、汎用性があり、簡易な構造の反応装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る反応装置10の外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、反応ユニット20の左右方向に沿った中央縦断面図である。
図3図3は、トレイ22の平面図である。
図4図4は、図3におけるIV−IV断面の断面図である。
図5図5は、反応槽25の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0020】
[反応装置10の構造]
図1に示されるように、反応装置10は、卓上に設置可能な大きさの概ね直方体形状の外形を呈している。反応装置10は、装置の前側及び上側より通常のアクセスが可能である。反応装置10の前側及び上側の一部分は、装置筐体の上壁に回動可能に取り付けられたカバー11によって開閉可能である。図1に示されるように、カバー11が上側へ回動されて開姿勢にされることによって、反応装置10の内部にアクセス可能となる。各図には示されていないが、カバー11が閉姿勢にされることによって、反応ユニット20などがカバー11によって覆われる。これによって、反応装置10が稼働しているときに、反応ユニット20などへ塵埃が進入することが防止されたり、反応ユニット20の保温がなされたりするという利点がある。
【0021】
反応装置10の装置筐体の前壁の右側には操作パネル12が設けられている。操作パネル12は、ディスプレイ及びボタンを備えている。操作パネル12を通じて、ユーザは、反応装置10に所望の入力を行い、入力結果や動作状態などを確認することができる。各図には示されていないが、操作パネル12は、反応装置10の内部に設けられた制御基板と電気的に接続されている。制御基板は演算装置を構成しており、CPU、ROM、RAMなどを有している。制御基板によって制御部が構成されている。
【0022】
反応装置10の装置筐体の前壁の下部は開口されている。開口と連続する内部空間13には、試薬や洗浄液が充填された複数のボトルが載置される。各図には示されていないが、内部空間13には、分注廃液ユニット30の各ノズルとそれぞれ連続する複数のチューブの一端が突出されている。内部空間13に載置された各ボトルに各チューブがそれぞれ挿入されることによって、各ボトルから試薬や洗浄液が分注廃液ユニット30の各ノズルへ供給される。
【0023】
図1に示されるように、反応装置10の内部には反応ユニット20が設けられている。図1,2に示されるように、反応ユニット20は、基台21及びトレイ22を有している。基台21は、左右方向に細長な平板形状の外形である。基台21の上面を覆うようにして、トレイ22が基台21の上側に設置される。基台21の内部には、熱源23が設けられている。熱源23は、前述された制御基板と接続されており、所定のタイミングで制御基板から電力が供給されることによって発熱する。熱源23の発熱が基台21を通じてトレイ22に伝達される。反応ユニット20が、反応部に相当する。
【0024】
基台21の後ろ側には、左右方向へそれぞれ突出する軸24が設けられている。軸24が装置筐体に回転可能に固定されている。各図には示されていないが、装置内部に設けられており、制御基板によって駆動が制御される駆動源から軸24へ回転駆動が伝達されることによって、基台21は軸24を中心として、軸24とは前後方向において反対側となる前側が先端として振り子運動する。この振り子運動によって、基台21は、トレイ22が載置される上面が水平方向に対して傾斜角度が変化するように姿勢変化する。これによって、基台21に載置されたトレイ22の反応槽25内の液体が撹拌される。
【0025】
図3,4に示されるように、トレイ22は、左右方向に細長な平板形状の外形である。トレイ22の縁26は、基台21の上面の縁より若干大きい。縁26が基台21の外側に嵌り込むようにして、トレイ22が基台21の上面側において位置決めされる。トレイ22は、樹脂製の成型品であり、上面27から下側へ窪んだ反応槽25が形成されている。
【0026】
反応槽25は、短冊形状の試験片を収容して、試験片を浸す容量の液体を貯留可能な細長な溝形状である。トレイ22が基台21に載置された状態において、反応槽25の長手方向が前後方向に沿う。この反応槽25が、左右方向に複数が並列して形成されている。複数の反応槽25は、配置が異なる他は、形状が同一である。前後方向が第1方向に相当し、左右方向が第2方向に相当する。
【0027】
反応槽25は、長手方向(前後方向)の両端が、トレイ22の縁26に近接している。長手方向の両端のうち、基台21にトレイ22が載置された状態において、前後方向において後ろ側となる一端側に近接して、左右方向に沿った反応槽25の幅を狭めるように突出された突片28が形成されている。突片28は、反応槽25における左右方向の一方の壁(図3における右側の壁)から他方の壁(図3における左側の壁)へ向かって突出しており、その突出端が他方の壁に近接している。突片28によって狭められた箇所の幅は、短冊形状の試験片の幅より狭い。したがって、反応槽25の前側となる他端側に収容された試験片は、その幅方向が概ね水平方向に沿った姿勢では、突片28によって後ろ側の端へ移動しない。一方、突片28は、反応槽25を完全に分割していないので、突片28の突出端と反応槽25の壁との隙間を液体が流通可能である。
【0028】
図1に示されるように、トレイ22の上側には、分注廃液ユニット30が設けられている。分注廃液ユニット30は、前端側がトレイ22の直上に位置しており、後端側がトレイ22より後ろ側へ延びている。分注廃液ユニット30は、その後端側がガイドレール37に支持されており、また、ベルト駆動機構38に連結されている。各図には詳細に現れていないが、ベルト駆動機構38は、ステッピングモータにより回転される駆動プーリと従動プーリとが左右方向に離間されて配置されており、駆動プーリと従動プーリとの間に無端ベルトが架け渡されたものである。ベルト駆動機構38の無端ベルトに分注廃液ユニット30が連結されており、駆動プーリが回転されることによって、分注廃液ユニット30が左右方向へ移動する。ベルト駆動機構38は、その駆動が制御基板によって制御される。
【0029】
分注廃液ユニット30は、第1試薬ノズル31、第2試薬ノズル32、第3試薬ノズル33、洗浄ノズル34、精製水ノズル35、及び廃液ノズル36を有する。図4に示されるように、各ノズルは、トレイ22の1つの反応槽25の直上に配置されている。各ノズルのうち、第1試薬ノズル31、第2試薬ノズル32、第3試薬ノズル33、洗浄ノズル34、及び精製水ノズル35は、反応槽25の突片28より前側に配置されており、廃液ノズル36は、反応槽25の突片28より後ろ側に配置されている。廃液ノズル36のみが、トレイ22に対して上下方向に移動可能に構成されている。廃液ノズル36が上側へ移動した姿勢では、廃液ノズル36の先端はトレイ22の上面27より上側に位置しており(図4に示された状態)、廃液ノズル36が下側へ移動した姿勢では、廃液ノズル36の先端は反応槽25の底付近に位置する。
【0030】
なお、各ノズルは必ずしも1つの反応槽25の直上に配置されている必要はなく、例えば、第1試薬ノズル31、第2試薬ノズル32、及び第3試薬ノズル33の一群と、洗浄ノズル34、精製水ノズル35、及び廃液ノズル36の一群とが、隣り合う2つの反応槽25の直上にそれぞれ分かれて配置されていてもよい。また、例えば、廃液ノズル36が複数の反応槽25の直上に位置するように複数個が設けられていてもよい。
【0031】
また、各図には現れていないが、各ノズルはそれぞれチューブを介して内部空間13に載置された各ボトル或いは廃液タンクと連結されている。各チューブにおいてチューブポンプが設けられており、チューブポンプの駆動によって、各ノズルから液体を分注したり吸引したりできる構造となっている。これら各ポンプ、各チューブ、各ノズルの一群によって、試薬部、洗浄部、廃液部が構成されている。
【0032】
[反応装置10の動作]
反応装置10は、例えば、核酸マイクロアレイである試験片40(図5参照)を用いた定性試験に用いられる。核酸マイクロアレイは、例えば、結核菌やHCVなどを同定するために用いられる。核酸マイクロアレイを用いた定性試験は、例えば、特開2011−177186号公報に開示されている。以下、結核菌の同定を行うための核酸マイクロアレイ(試験片40)を用いた定性試験を例として、反応装置10の動作が説明される。試験片40には、結核菌の特定の塩基配列とハイブリダイズ可能な複数種のDNAプローブが固定されている。試験片40としては、代表的にはニトロセルロースなどの有機材料が用いられる。試験片40は、細長な短冊形状であり、反応槽25に収容される得る大きさである。
【0033】
試験片40を用いた定性試験に先立って、被検物質であるDNAが調製される。DNAは、例えば、人の体液、培養菌株などから公知の手法により抽出される。抽出されたDNAは、公知の手法、例えばPCRにより増幅される。PCRに用いられるプライマーの末端は、例えばビオチンにより修飾されている。
【0034】
また、試験片40を用いた定性試験に先立って、反応装置10の操作パネル12に反応条件が入力される。反応条件は、ハイブリダイズや酵素修飾、基質反応における時間及び温度、各試薬の注入量、トレイ22の撹拌時間、洗浄回数などである。
【0035】
先ず、反応に供されていない新しいトレイ22が基台21に載置される。詳細な説明は省略されるが、固定具が用いられて、トレイ22が基台21に固定される。トレイ22の反応槽25に試験片40が投入される。試験片40は、被検物質の数だけ複数の反応槽25にそれぞれ投入される。また、被検物質であるDNAも、各反応槽25にそれぞれ注入される。
【0036】
反応装置10の動作が開始されると、ハイブリダイズ、洗浄、酵素修飾、洗浄、基質反応、洗浄、乾燥の順序で自動的に動作が行われる。ハイブリダイズにおいては、基台21の熱源23が62℃へ昇温される。そして、ハイブリダイズ液が第1試薬ノズル31から反応槽25に分注される。試験片40が複数あるときには、ベルト駆動機構38が駆動され、第1試薬ノズル31が各反応槽25に対応する位置へ左右方向に移動されて、各反応槽25へハイブリダイズ液が分注される。そして、基台21の振り子運動によってトレイ22が振とうされながらハイブリダイズに必要な時間だけ、例えば30分間放置されて反応が行われる。
【0037】
ハイブリダイズに必要な時間が経過した後、熱源23が停止されて室温に戻される。また、各反応槽25における試験片40が洗浄される。洗浄は、先ず、廃液ノズル36が所定の反応槽25へ向かって下側へ移動される。そして、その反応槽25に貯留されているハイブリダイズ液(被検物質であるDNAを含む。)が吸引される。廃液ノズル36の先端が反応槽25において突片28より後ろ側に位置しており、試験片40が反応槽25において突片28より前側に位置しているので、突片28によって隔てられることによって、反応槽25からハイブリダイズ液が吸引されるときに、ハイブリダイズ液の流れによって試験片40が廃液ノズル36の先端付近まで移動することが抑制され、ハイブリダイズ液のみが反応槽25から排出される。
【0038】
反応槽25からハイブリダイズ液が排出された後、廃液ノズル36が上側へ移動され、洗浄ノズル34から洗浄液が反応槽25へ分注される。そして、所定の時間だけ、例えば1分間だけトレイ22が振とうされた後に、廃液ノズル36が下側へ移動されて、反応槽25から洗浄液が吸引されて排出される。このような洗浄が数回繰り返される。試験片40が複数あるときには、ベルト駆動機構38が駆動され、廃液ノズル36及び洗浄ノズル34が各反応槽25に対応する位置へ左右方向に移動されて、同様の洗浄が行われる。なお、洗浄液は、例えば界面活性剤を含む緩衝液である。
【0039】
洗浄液によって試験片40が洗浄された後、コンジュゲート液が第2試薬ノズル32から反応槽25へ分注される。試験片40が複数あるときには、ベルト駆動機構38が駆動され、第2試薬ノズル32が各反応槽25に対応する位置へ左右方向に移動されて、各反応槽25へコンジュゲート液が分注される。そして、基台21の振り子運動によってトレイ22が振とうされながらビオチン修飾されたプライマーとコンジュゲートとが反応するのに必要な時間だけ、例えば30分間放置されて反応が行われる。なお、コンジュゲートは、例えばストレプトアビジン修飾アルカリホスファターゼであり、アビジン−ビオチン結合によって、ビオチン修飾されたプライマーとコンジュゲートとが反応する。
【0040】
コンジュゲートの反応に必要な時間が経過した後、各反応槽25における試験片40が洗浄される。洗浄は、前述と同様の動作によって行われる。洗浄後に、精製水ノズル35から各反応槽25へ精製水が注入されて数分間の振とうが行われた後に、廃液ノズル36によって反応槽25から精製水が排出される。
【0041】
精製水によって試験片40が洗浄された後、基質液が第3試薬ノズル33から反応槽25へ分注される。試験片40が複数あるときには、ベルト駆動機構38が駆動され、第3試薬ノズル33が各反応槽25に対応する位置へ左右方向に移動されて、各反応槽25へ基質液が分注される。そして、基台21の振り子運動によってトレイ22が振とうされながら酵素反応に必要な時間だけ、例えば30分間放置されて反応が行われる。なお、基質液は、例えばp−ニトロブルーテトラゾリウム及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸p−トルイジン塩である。
【0042】
酵素反応に必要な時間が経過した後、各反応槽25における試験片40が精製水によって洗浄される。精製水による洗浄は、前述と同様の動作によって行われる。洗浄後に、基台21の熱源23が昇温されて反応槽25内の試験片40が乾燥される。
【0043】
乾燥が終了すると、反応装置10の動作が停止する。ユーザは、トレイ22を基台21から取り外して、各反応槽25に収容された試験片40を取り出して発色状態を目視にて確認する。被検物質であるDNAに、試験片40に固定された複数種のDNAプローブに対応する塩基配列が存在すると、そのDNAプローブに対応する位置が発色する。例えば被検物質に存在する結核菌が変異していれば、DNAプローブに対応する塩基配列が変異して、そのDNAプローブに対応する位置が発色しない。このような試験片40の発色状態を確認することによって、被検物質であるDNAの変異を定性的に判定することができる。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る反応装置10によれば、複数の細長な反応槽25が、その長手方向(前後方向)と直交する方向(左右方向)へ並列されているので、反応ユニット20の小型化が実現される。また、試験片40をそれぞれ収容する各反応槽25に対して、各ノズルが一定の方向(左右方向)へ移動するので、装置の構造が簡略化される。これにより、汎用性があり、簡易な構造の反応装置10が実現される。
【0045】
また、反応ユニット20が、複数の反応槽25が設けられたトレイ22と、トレイ22が載置される基台21と、を有しており、基台21に対してトレイ22が着脱できるので、トレイ22をディスポーザブルとすることができる。
【0046】
また、基台21が、水平方向に対して傾斜角度が変化するように姿勢変化可能であり、基台21の傾斜によってトレイ22の各反応槽25も傾くので、試験片40が収容された各反応槽25において試薬又は洗浄液が撹拌される。
【0047】
また、基台21が熱源23を有しているので、被検物質と試験片40との反応において、各反応槽25をハイブリダイズに適した温度に保持することができる。
【0048】
また、反応槽25は、前後方向の後ろ側に近接した位置に設けられており、左右方向に沿った反応槽25の幅を狭めるように突出された突片28を有しており、廃液ノズル36は、突片28より前後方向の後ろ側において反応槽25に貯留された液体を吸引するので、
各反応槽25において、試験片40が収容されている空間と、廃液ノズル36が進入する空間との間に突片28が存在する。これにより、試薬又は洗浄液の吸引に伴って、反応槽25内において試験片40が廃液ノズル36の先端まで移動して、廃液ノズル36に試験片40が詰まることが防止される。
【符号の説明】
【0049】
10・・・反応装置
20・・・反応ユニット(反応部)
21・・・基台
22・・・トレイ
23・・・熱源
25・・・反応槽
28・・・突片
31,32,33・・・試薬ノズル
34・・・洗浄ノズル
36・・・廃液ノズル
40・・・試験片
図1
図2
図3
図4
図5