【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の血圧測定用カフは、
被測定部位を周方向に沿って一方向に取り巻く血圧測定用カフであって、
上記被測定部位に接すべき内布とこの内布に対向する外布とで流体袋を内包してなる帯状体と、
上記外布の内周端側の領域に、リング取付部材を介して取り付けられたリングと、
上記内布の外周端側の領域に設けられ、上記外布に着脱可能に固定される面ファスナとを備え、
上記リングは、上記周方向に対して交差する方向に延在する第1の辺と、この第1の辺に沿って延在する第2の辺と、上記第1、第2の辺の端部同士をつなぐ一対の連結部とを含み、上記第1の辺の少なくとも一部が上記リング取付部材を介して上記外布の上記内周端側の領域に取り付けられており、
上記リングは、装着途中に、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記リングを通して上記被測定部位から遠ざかる向きに腕力で引き出されるのを許容する一方、上記腕力によって引き出された上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して引き戻されるのを抑制する仮止め構造を有することを特徴とする。
【0011】
本明細書で、「被測定部位」とは、被測定者の血圧を測定するために、上腕、手首等のカフで取り巻くことが可能な部位を指す。
【0012】
被測定部位を「周方向に沿って一方向に取り巻く」とは、カフ(帯状体)が、折り返されることなく、被測定部位を周方向に沿って重ねられて取り巻くことを意味する。言い換えれば、被測定部位の長手方向に沿って見た断面視で、カフ(帯状体)が被測定部位を渦巻き状に取り巻くことを意味する。
【0013】
帯状体が「流体袋を内包」するとは、流体袋の実体部分、すなわち流体室が、帯状体に内包されていることを意味する。必ずしも、流体袋全体が帯状体によって完全に取り囲まれていることを意味するものではない。例えば、流体袋のうち流体室以外の周縁に存在する部分が、帯状体の外部へ露出していてもよい。
【0014】
また、「内布」および外布」は、布だけではなく、一層あるいは複数層の樹脂からなっていても良い。
【0015】
「内周端」とは、カフ(帯状体)が被測定部位を周方向に沿って一方向(断面視で渦巻き状)に取り巻くときに、内周となる側の端部を指す。
【0016】
「外周端」とは、カフ(帯状体)が被測定部位を周方向に沿って一方向(断面視で渦巻き状)に取り巻くときに、外周となる側の端部を指す。
【0017】
この発明の血圧測定用カフは、例えば次のようにして被測定部位(説明の便宜のために左腕に巻く用のカフとする。)に装着される。まず、被測定者は、上記帯状体の外布を外側にして、上記外布の内周端側の領域に取り付けられた上記リングを通して上記帯状体の上記外周端を通過させて、上記帯状体を左腕よりも十分に太い筒状にする。なお、この段階で、上記帯状体の内布に上記面ファスナが設けられている領域は、上記リングを通過させておくものとする。次に、被測定者にとって上記筒状の帯状体が左巻きの渦巻き状(内周端から外周端へ向かって反時計回り)に見える側から、この筒状の帯状体の中に左腕を通す。そして、上記リングが上記被測定部位の下方にくるように調整する。次に、被測定者は、右手で上記帯状体の外周端を下方へ一旦引っ張り、上記帯状体の内布と左腕との間の隙間を実質的に無くす(この動作を適宜「仮止め」と呼ぶ。)。このとき、上記リングは、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記リングを通して下方(上記被測定部位から遠ざかる向き)へ右手の腕力で引き出されるのを許容する。一方、上記リングの仮止め構造は、上記腕力によって引き出された上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して引き戻されるのを抑制する。したがって、被測定者が右手の引っ張る力を緩めても、上記帯状体が緩むのが抑制される。この後、被測定者は、右手で(例えば、右手を左腕よりも胴体に近い側で上方へ動かして)、上記帯状体の上記外周端に連なる領域を、左腕の周方向に沿って、上記帯状体の上記リングを越えていない部分の向きと同じ向きに揃える。これにより、上記内布の上記外周端側の領域に設けられた面ファスナを上記外布の対向する部分に固定する(この動作を適宜「本固定」と呼ぶ。)。このようにして、このカフが被測定部位としての左腕に周方向に沿って一方向に装着される。すなわち、被測定者が被測定部位の長手方向に沿って見たとき、左巻きの渦巻き状に装着される。
【0018】
なお、被測定部位を右腕とする場合は、左右を反転させた構造のカフを作成し、上述の装着の仕方の説明において「左」を「右」と読み替えれば良い。また、被測定部位を手首等とする場合は、「上腕」を「手首」等と読み替えれば良い(以下の説明において同様。)。
【0019】
このように、この血圧測定用カフは、装着途中に、既述の折り返しタイプのカフの場合とは異なり、不自然な動作を強いられることがない。特に、上述の左腕への仮止め時に、被測定者は、右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ一旦引っ張れば足りる。この仮止めの動作は、手が体の側方からさらに側方へ遠ざかる向きの動作ではなく、また、本固定が完了するまで上記帯状体の張力を維持するように被測定者が腕力を出し続ける必要も無い。したがって、この血圧測定用カフは、被測定者が独りで容易に装着することができる。例えば、体が硬い高齢者や、あまり腕力を出せない病人でも、独りで容易に装着可能である。
【0020】
また、本固定完了後の装着状態では、この血圧測定用カフは、被測定部位を周方向に沿って一方向に取り巻く。つまり、被測定部位の周方向に沿った全域で、内布は隠れており、表側に見えるのは外布だけである。一般に、被測定部位を圧迫するために、内布は伸縮性が大きく、外布は内布に比して伸縮性が小さく(または非伸縮性に)設定される。その場合、血圧測定のために上記流体袋に空気がポンプで圧送されたとき、この血圧測定用カフでは、表側に見える布(外布)が無用に外側(被測定部位と反対の側)へ膨張することがない。したがって、上記流体袋への空気の供給量を抑えて加圧の効率を高めることができる。
【0021】
また、この血圧測定用カフでは、表側に見える布(外布)が無用に外側へ膨張することがないので、被測定者に不安感を与えることがない。
【0022】
さらに、この血圧測定用カフでは、表側に見える布(外布)が無用に外側へ膨らむことがないので、上記帯状体内で上記流体袋を周方向(長手方向)に関して大部分の領域にわたって延在させる配置が可能となる。そのような配置によれば、上記折り返しタイプのカフの場合の空気袋の周方向延在範囲の制約(後述)を受けなくなって、このカフの仕様として設定される被測定部位の周方向寸法の範囲(最小周長から最大周長までの範囲を指す。以下同様。)を広げることができる。
【0023】
また、知られているように、被測定部位の動脈を圧迫する圧迫力は、上記流体袋の周方向の寸法とそれに対して交差する幅方向の寸法とに依存する。上記流体袋の周方向寸法、幅方向寸法が大きい方が圧迫力は大きくなる。ここで、上記流体袋を周方向に関して大部分の領域にわたって延在させる配置によれば、必要な圧迫力を得るために、むしろ上記流体袋の幅方向寸法を小さくすることが可能となる。そのように上記流体袋の幅方向寸法を小さくし、それに伴って上記帯状体の幅方向寸法を小さくすれば、この血圧測定用カフは、被測定者がより容易に装着することができる。また、上記流体袋と上記帯状体の幅方向寸法を小さくすれば、材料費を低減できる。したがって、この血圧測定用カフは、低コストで作製可能となる。
【0024】
なお、上記折り返しタイプのカフでは、先端部近傍の折り返された領域では、表側に見えるのは内布であることから、仮に折り返された領域に空気袋が延在していると、血圧測定のために上記空気袋に空気がポンプで圧送されたとき、表側に見える布(内布)が無用に外側(被測定部位と反対の側)へ膨張する。このため、上記空気袋への空気の供給量が増えて加圧の効率が低下する。また、被測定者にその膨張が異常ではないかとの不安感を与える。したがって、上記折り返しタイプのカフでは、実際問題として、上記空気袋は周方向に関して折り返し用金具を超えて延在することができない。この空気袋の周方向延在範囲の制約のせいで、このカフの仕様として設定される被測定部位の周方向寸法の範囲が狭くなる。詳しくは、折り返された領域に空気袋が延在できないため、最小周長は、上記空気袋の周方向寸法を下回ることができない。また、上記帯状体の周方向寸法に比して上記空気袋の周方向寸法が小さく抑えられるため、最大周長は比較的小さい寸法に制限される(一般に、上記空気袋の周方向
寸法は、このカフが適用される最大周長の約2/3以上必要であるとされている。)。また、必要な圧迫力を得るために、上記空気袋の幅方向寸法を小さくできず、それに伴って上記帯状体の幅方向寸法も小さくできない。
【0025】
また、医療機関向けのカフとしては、被測定部位を周方向に沿って一方向に取り巻くタイプのカフであって、上述のリングや仮止め構造を有しないものが普及している。しかしながら、そのような医療機関向けカフは、患者(被測定者)の被測定部位に対して、医療従事者(医師や看護師など)が両手を使って装着することを想定しており、被測定者自らが装着するのは困難である。
【0026】
一実施形態の血圧測定用カフでは、
上記リングの上記第1、第2の辺はそれぞれ実質的に板状部分を有し、
上記リングの上記一対の連結部は、上記第1、第2の辺の板状部分を上記被測定部位の上記周方向に沿わせるように屈曲または湾曲していることを特徴とする。
【0027】
上述の左腕への仮止め時に、上記第1の辺は、リング取付部材によって上記外布の内周端側の領域に取り付けられているので、上記被測定部位に接近した位置にある。また、被測定者が右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ引っ張る動作によって、上記第2の辺が上記帯状体から左斜め下向きに力を受けて、上記被測定部位に接近した状態になる。ここで、この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リングの上記一対の連結部は、上記第1、第2の辺の板状部分を上記被測定部位の上記周方向に沿わせるように屈曲または湾曲している。したがって、上述の左腕への仮止め後、被測定者が右手で引っ張る力を緩めても、上記被測定部位の弾性力によって上記第2の辺が上記被測定部位に接近する向きに上記リングが上記第1の辺の周りに回転する余地が殆ど無い。したがって、上記帯状体が緩むのがさらに有効に抑制される。
【0028】
なお、仮に上記第1、第2の辺の板状部分が平坦な同一面に沿っていると、上述の左腕への仮止め時に、上記第1の辺に比して、上記第2の辺が上記被測定部位から離間した状態になる。この結果、上述の左腕への仮止め後、被測定者が右手で引っ張る力を緩めたとき、上記被測定部位の弾性力によって上記第2の辺が上記被測定部位に接近する向きに上記リングが上記第1の辺の周りに回転する余地がある。このため、上記帯状体が緩む可能性がある。
【0029】
一実施形態の血圧測定用カフでは、
上記リングの上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間は、上記第1、第2の辺の長手方向に関して中央に相当する中央部において、この中央部に連なる残りの両端部に比して狭く、かつ上記帯状体の上記外周端に連なる領域の厚さと実質的に等しく設定され、
上記仮止め構造は上記リングの上記中央部からなり、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して引き戻されるのを抑制するように、上記帯状体のうち上記リングを通る部分に対して摩擦力を与えることを特徴とする。
【0030】
本明細書で、上記帯状体の「厚さ」とは、面ファスナなどを除いた上記帯状体自体の厚さを指す。また、上記帯状体の領域によって厚さが異なる場合は、最大の厚さを指す。
【0031】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リングの上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間は、上記第1、第2の辺の長手方向に関して中央に相当する中央部において、この中央部に連なる残りの両端部に比して狭く、かつ上記帯状体の上記外周端に連なる領域の厚さと実質的に等しく設定されている。上述の左腕への仮止め時に、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記リングを通して引き出される。このとき、上記リングの上記第1の辺は上記外布の上記内周端側の領域に取り付けられて保持されるのに対して、上記第2の辺は上記帯状体から左斜め下向きの力を受けるので、左斜め下向きに撓む。この結果、上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間は、元の状態(自然状態)から、主に上記中央部において広がる。したがって、上記帯状体の上記外周端に連なる領域は、上記リングの上記中央部から摩擦力をあまり受けることなく、上記リングを通して容易に引き出される。
【0032】
一方、上述の左腕への仮止め後、被測定者が右手で引っ張る力を緩めると、上記リングの上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間は、上記中央部を含めて、元の状態に戻る。したがって、上記腕力によって引き出された上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して戻ろうとしても、上記リングの上記中央部は、上記帯状体のうち上記リングを通る部分に対して摩擦力を与える状態になる。この摩擦力によって、上記帯状体が緩むのが抑制される。
【0033】
なお、被測定者が左腕から上記カフを取り外すときは、まず、右手で上記内布の上記外周端側の領域に設けられた面ファスナを上記外布の対向する部分から引き剥がす(本固定解除)。次に、右手で上記リングの上記第2の辺を上記第1の辺から遠ざかる向きに引っ張る(仮止め解除)。すると、上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間は、主に上記中央部において広がる。したがって、上記帯状体の上記外周端に連なる領域(面ファスナが設けられている領域を含む。)は、上記リングの上記中央部から摩擦力をあまり受けることなく、上記リングを通して容易に引き戻される。これにより、上記帯状体が左腕よりも十分に太い筒状になる。この後、左腕から上記カフが取り外される。
【0034】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リングの上記第1の辺は上記中央部において上記第2の辺へ接近する向きに突出した突起を有し、この突起が上記隙間を設定していることを特徴とする。
【0035】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記仮止め構造が簡単に構成される。
【0036】
なお、上記リングの上記両端部が上記リング取付部材を介して上記外布の上記内周端側の領域に取り付けられるのが望ましい。
【0037】
一実施形態の血圧測定用カフでは、
上記第1の辺の上記突起の突出の向きは、上記第2の辺へ接近するとともに、上記被測定部位に対する装着状態で、上記突起の根元に対して上記突起の先端が上記被測定部位に近くなる向きであり、
上記第1または第2の辺の長手方向に沿って見た断面視で、
上記第2の辺のうち上記第1の辺に近い縁部は実質的に円弧状に形成され、
上記第1の辺の上記突起の先端は、上記被測定部位に対する装着状態で上記被測定部位から遠いコーナ部に角を有する一方、上記被測定部位に近いコーナ部にアールが施されていることを特徴とする。
【0038】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上述の左腕への仮止めのために被測定者が右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ引っ張るとき、上記帯状体の外布の上記外周端に連なる領域が上記第2の辺のうち上記第1の辺に近い縁部を取り巻くように接するとともに、上記帯状体の内布の上記外周端に連なる領域が上記突起の先端の上記被測定部位に近いコーナ部に接する。ここで、上記第1または第2の辺の長手方向に沿って見た断面視で、上記第2の辺のうち上記第1の辺に近い縁部は実質的に円弧状に形成されている。したがって、上記帯状体の上記外周端に連なる領域は、上記第2の辺のうち上記第1の辺に近い縁部に引っ掛かることなく、上記リングを通して容易に引き出される。このとき、上述のように上記リングの上記第1の辺と第2の辺との間の隙間が広がるので、上記突起の先端の上記被測定部位から遠いコーナ部(角)は、上記帯状体の外周端に連なる領域を引き出すための障害にはならない。
【0039】
一方、上述の左腕への仮止め後、被測定者が右手で引っ張る力を緩めると、上記第2の辺のうち上記第1の辺に近い縁部を取り巻いていた部分が曲がりを緩和しようとして、上記帯状体の内布の上記外周端に連なる領域が上記第1の辺の上記突起の先端の上記被測定部位から遠いコーナ部に強く接する。ここで、上記第1または第2の辺の長手方向に沿って見た断面視で、上記突起の先端の上記被測定部位から遠いコーナ部は角を有している。したがって、上記腕力によって引き出された上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して戻ろうとしても、上記帯状体の内布の上記外周端に連なる領域が上記突起の先端の上記被測定部位から遠いコーナ部の角に引っ掛かり、強い摩擦力を受ける。したがって、上記帯状体が緩むのがさらに有効に抑制される。
【0040】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記帯状体の厚さが実質的に均一であることを特徴とする。
【0041】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記帯状体の厚さが実質的に均一であるから、上述の左腕への仮止めために被測定者が右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ引っ張るとき、上記帯状体の上記外周端に連なる領域は、上記リングの上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間を円滑に通過して、容易に引き出される。
【0042】
なお、上記帯状体(上記内布)の上記面ファスナが設けられている領域(上記面ファスナの厚さの分だけ上記帯状体自体よりもカフ全体として厚くなっている領域)は、上記帯状体を左腕よりも十分に太い筒状にする段階で、上記リングを通過させておけばよい。その段階では、被測定者は両手を使えるので、例えば一方の手で上記リングを掴んで、他方の手で上記帯状体の上記外周端(上記面ファスナが設けられている領域を含む。)を上記リングを通して引き出すことができる。このようにした場合、上記リングから多少の摩擦力を受けても、上記帯状体の上記面ファスナが設けられている領域を引き出すことができる。また、実際の製品出荷時に面ファスナをリングに通しておいてもよい。このようにすれば、実際の使用状態でも、面ファスナがリングの抜け留めとなり、リングから外れにくくなる。
【0043】
一方、上述の左腕への仮止め後、被測定者が右手で引っ張る力を緩めたとき、上記リングのところに上記帯状体のうちどの部分が位置しているか否かにかかわらず、言い換えれば、上記被測定部位の周方向の寸法にかかわらず、上記リングの仮止め構造は、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記リングを通して引き戻されるのを確実に抑制できる。
【0044】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記帯状体の上記外布は起毛を有し、この起毛は、上記外周端に連なる領域が上記リングを通して引き出される向きに対して順目になっていることを特徴とする。
【0045】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記帯状体の上記外布は起毛を有し、この起毛は、上記外周端に連なる領域が上記リングを通して引き出される向きに対して順目になっている。したがって、上述の左腕への仮止めのために被測定者が右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ引っ張るとき、上記帯状体の外布の上記外周端に連なる領域が上記第2の辺の上記第1の辺に面する側を取り巻きながら円滑に滑る。したがって、上記帯状体の上記外周端に連なる領域は、上記リングを通して容易に引き出される。
【0046】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リングは、一体に成形されたプラスチック材料からなることを特徴とする。
【0047】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リングはプラスチック材料からなる。一般に、プラスチック材料は、金属に比して可撓性が大きい。したがって、上記リングに上記帯状体の上記外周端を通して腕よりも十分に太い筒状にするとき、および、上述の左腕への仮止めのために被測定者が右手で上記帯状体の上記外周端を下方へ引っ張るとき、上記リングが金属からなる場合に比して、上記リングの上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間が容易に広がる。したがって、この血圧測定用カフは、さらに容易に装着される。また、上記リングは一体に成形されたプラスチック材料からなるので、上記リングが金属からなる場合に比して、低コストで、かつ容易に作製される。
【0048】
なお、一般に、プラスチック材料は、金属に比して機械的強度が弱い。しかしながら、この血圧測定用カフ(被測定部位を一方向に取り巻くタイプ)では、上述の仮止め時に上記帯状体の上記外周端に連なる領域を介して上記リングに腕力がかかるけれども、本固定完了後の装着状態では、たとえ血圧測定のために上記流体袋に空気がポンプで圧送されても、上記リングには殆ど力(特に、上記第1の辺と上記第2の辺との間の隙間を広げる向きの力)が加わらない。したがって、上記リングの材質や形状に設計の自由度が生まれる。この結果、上記リングを様々なプラスチック材料で形成することが可能となる。これに対して、既述の折り返しタイプの血圧測定用カフでは、血圧測定のために上記空気袋に空気がポンプで圧送されると、上記リングの対向する2辺の間の隙間を広げる向きに力(通常は、上記腕力よりも大きい力)が加わる。このため、仮にリングをプラスチック材料で形成すると、破壊されるおそれがある。したがって、既述の折り返しタイプの血圧測定用カフでは、リングをプラスチック材料で形成することが困難である。
【0049】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リング取付部材は、上記リングの上記第1の辺のうち上記中央部以外の部分を取り囲む筒状部分を有することを特徴とする。
【0050】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リング取付部材は、上記リングの上記第1の辺のうち上記中央部以外の部分を取り囲む筒状部分を有する。したがって、上記リングが上記第1の辺の周りに回動できる。したがって、例えば上述の左腕への装着開始時に、上記リングの上記第2の辺が上記外布から遠くなるように上記外布に対して上記リングを起こすことができる。これにより、上記リングを通して上記帯状体の上記外周端を通過させ易くなる。
【0051】
一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リング取付部材の外周面に、上記面ファスナと係合可能な起毛が設けられていることを特徴とする。
【0052】
この一実施形態の血圧測定用カフでは、上記リング取付部材の外周面に、上記面ファスナと係合可能な起毛が設けられている。したがって、上述の本固定時に、上記内布の外周端側で上記面ファスナが設けられた領域が、上記外布の内周端側で上記リング取付部材が設けられた領域に対向して、上記面ファスナが上記リング取付部材の外周面の起毛に係合することが可能となる。この結果、このカフの仕様として設定される被測定部位の最大周長を大きくすることができる。
【0053】
この発明の血圧測定用カフ装着方法は、
被測定部位を周方向に沿って一方向に取り巻くように、請求項1から10までのいずれか一つに記載の血圧測定用カフを装着する血圧測定用カフ装着方法であって、
上記帯状体の外布を外側にして、上記外布の内周端側の領域に取り付けられた上記リングを通して上記帯状体の上記外周端を通過させて、上記帯状体を上記被測定部位よりも太い筒状にするとともに、上記被測定部位が被測定者の左半身に属するときは上記被測定者にとって上記筒状のカフが左巻きの渦巻き状に見える側から、または、上記被測定部位が被測定者の右半身に属するときは上記被測定者にとって上記筒状のカフが右巻きの渦巻き状に見える側から、上記筒状の帯状体の中に上記被測定部位を通す配置ステップを有し、この配置ステップでは、上記リングが上記被測定部位の下方に位置するように調整され、
上記被測定部位が属する半身とは反対側の半身に属する手で上記帯状体の外周端を下方へ引っ張り、上記帯状体の内布と上記被測定部位との間の隙間を実質的に無くす仮止めステップを有し、この仮止めステップでは、上記リングは、上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記リングを通して下方へ上記手の腕力で引き出されるのを許容する一方、上記リングの仮止め構造は、上記腕力によって引き出された上記帯状体の上記外周端に連なる領域が上記被測定部位の弾性力によって上記リングを通して引き戻されるのを抑制し、
上記手で、上記帯状体の上記外周端に連なる領域を、上記被測定部位の周方向に沿って、上記帯状体の上記リングを越えていない部分の向きと同じ向きに揃えて、上記内布の上記外周端側の領域に設けられた面ファスナを上記外布の対向する部分に固定する本固定ステップを有する。
【0054】
この発明の血圧測定用カフ装着方法によれば、装着途中に、既述の折り返しタイプのカフの場合とは異なり、不自然な動作を強いられることがない。特に、上述の仮止めステップでは、被測定者は、上記手で上記帯状体の上記外周端を下方へ一旦引っ張れば足りる。この仮止めの動作は、手が体の側方からさらに側方へ遠ざかる向きの動作ではなく、また、本固定ステップが完了するまで上記帯状体の張力を維持するように被測定者が腕力を出し続ける必要も無い。したがって、この血圧測定用カフ装着方法によれば、被測定者がカフを被測定部位に独りで容易に装着することができる。例えば、体が硬い高齢者や、あまり腕力を出せない病人でも、独りで容易に装着可能である。