特許第6098263号(P6098263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098263
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】電極の製造方法、及び電極の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20170313BHJP
   H01G 11/22 20130101ALI20170313BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20170313BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20170313BHJP
   H01M 4/02 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   H01M4/04 A
   H01G11/22
   H01G11/86
   H01G13/00 381
   !H01M4/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-58141(P2013-58141)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182992(P2014-182992A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山内 一輝
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−216722(JP,A)
【文献】 特開2010−102926(JP,A)
【文献】 特開平10−214616(JP,A)
【文献】 特開2011−119216(JP,A)
【文献】 特開平10−012221(JP,A)
【文献】 特開2012−115789(JP,A)
【文献】 特開2012−130907(JP,A)
【文献】 特開2011−165663(JP,A)
【文献】 特開2010−186739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01G 11/22
H01G 11/86
H01G 13/00
H01M 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状金属箔の少なくとも一方の面に、前記帯状金属箔の長手方向に沿って活物質を塗布し前記活物質を含む活物質層で覆われた形成部と前記活物質層で覆われていない非形成部とを交互に設ける塗布工程と、
前記塗布工程後に、前記非形成部にマスキング材を配置し、前記非形成部をマスキングするマスキング工程と、
前記形成部及び前記マスキング材に対して、絶縁性のセラミック粒子を含むセラミック合剤を吐出装置の吐出部から吐出させつつ、前記帯状金属箔及び前記吐出部の少なくとも一方を前記長手方向に沿って移動させることで前記形成部を覆うように絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記マスキング材を除去する除去工程と、を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層形成工程では、前記セラミック合剤を連続的に吐出する請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記マスキング材は、マスキングテープである請求項1または2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記マスキング材を除去した後に前記帯状金属箔を打ち抜いて前記非形成部を集電タブに成形する成形工程をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
物質を含む活物質層で覆われた形成部と前記活物質層で覆われていない非形成部とが少なくとも一方の面の長手方向に沿って交互に設けられた帯状金属箔のうちの前記非形成部にマスキング材を配置し、前記非形成部をマスキングするマスキング部と、
前記形成部及び前記マスキング材に対して、絶縁性のセラミック粒子を含むセラミック合剤を吐出装置の吐出部から吐出させつつ、前記帯状金属箔及び前記吐出部の少なくとも一方を前記長手方向に沿って移動させることで前記形成部を覆うように絶縁層を形成する絶縁層形成部と、
前記マスキング材を除去する除去部と、を含むことを特徴とする電極の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法、及び電極の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばEV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがよく知られている。このような蓄電装置としては、セパレータの表面に形成された電極に対して、絶縁材料をノズルから吐出するスプレー法により、絶縁層を形成することが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−52753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、活物質層で覆われた形成部と活物質層で覆われていない非形成部とを帯状金属箔の長手方向に沿って交互に設けた電極では、特許文献1のように絶縁材料を吐出して活物質層を覆う絶縁層を形成する場合、長手方向に搬送される帯状金属箔上の活物質層がノズルを通過するタイミングで絶縁材料の吐出を開始、及び終了させる必要がある。
【0005】
即ち、非形成部に絶縁層を形成しないようにするためには、活物質層がノズルに差し掛かるタイミングより遅く絶縁材料の吐出を開始するとともに、活物質層がノズルを通過し終えるタイミングより早く絶縁材料の吐出を終了する必要がある。
【0006】
しかしながら、このようなタイミングで絶縁材料の吐出の開始、及び終了をする場合には、絶縁層のうち、帯状金属箔の長手方向(搬送方向)における活物質層の両端部での厚さが薄くなり、全体として絶縁層の厚さが不均一となる。
【0007】
また、絶縁材料を塗布する方法としては、帯状金属箔からの離間距離を固定したヘッドから絶縁材料を吐出するダイコート法により、絶縁層を形成することも考えられる。しかしながら、一般に活物質層の縁部には他の部分よりも盛り上がった端高部が形成されている場合があり、ダイコート法により絶縁層を形成する場合には、端高部における絶縁層の厚さが薄くなる可能性がある。
【0008】
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、活物質層を覆う絶縁層の厚さが不均一となることを抑制できる電極の製造方法、及び電極の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電極の製造方法は、帯状金属箔の少なくとも一方の面に、前記帯状金属箔の長手方向に沿って活物質を塗布し前記活物質を含む活物質層で覆われた形成部と前記活物質層で覆われていない非形成部とを交互に設ける塗布工程と、前記塗布工程後に、前記非形成部にマスキング材を配置し、前記非形成部をマスキングするマスキング工程と、前記形成部及び前記マスキング材に対して、絶縁性のセラミック粒子を含むセラミック合剤を吐出装置の吐出部から吐出させつつ、前記帯状金属箔及び前記吐出部の少なくとも一方を前記長手方向に沿って移動させることで前記形成部を覆うように絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記マスキング材を除去する除去工程と、を含むことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、非形成部に絶縁層を形成しないようにすることを目的として、活物質層が吐出装置の吐出部に差し掛かるタイミングより遅くセラミック合剤の吐出を開始したり、活物質層が吐出部を通過し終えるタイミングより早くセラミック合剤の吐出を終了したりする必要がなくなる。このため、絶縁層のうち、帯状金属箔の長手方向における活物質層の両端部での厚さが薄くなり、活物質層を覆う絶縁層の厚さが不均一となることを抑制できる。
【0011】
上記電極の製造方法について、前記絶縁層形成工程では、前記セラミック合剤を連続的に吐出することが好ましい。この構成によれば、吐出部を活物質層が通過中であるか否かに応じて、セラミック合剤の吐出を開始したり終了したりする必要がなく、厚さが均一な絶縁層を簡便に活物質層に形成することができる。
【0012】
上記電極の製造方法について、前記マスキング材は、マスキングテープであることが好ましい。この構成によれば、マスキング工程において非形成部を簡便にマスキングできるとともに、除去工程において簡便に除去できる。
【0013】
上記電極の製造方法について、前記マスキング材を除去した後に前記帯状金属箔を打ち抜いて前記非形成部を集電タブに成形する成形工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、マスキング材により非形成部をマスキングすることから、絶縁層の厚さが不均一となることを抑制しつつも、集電タブとなる非形成部にまで絶縁層が形成されることを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決する電極の製造装置は、活物質を含む活物質層で覆われた形成部と前記活物質層で覆われていない非形成部とが少なくとも一方の面の長手方向に沿って交互に設けられた帯状金属箔のうちの前記非形成部にマスキング材を配置し、前記非形成部をマスキングするマスキング部と、前記形成部及び前記マスキング材に対して、絶縁性のセラミック粒子を含むセラミック合剤を吐出装置の吐出部から吐出させつつ、前記帯状金属箔及び前記吐出部の少なくとも一方を前記長手方向に沿って移動させることで前記形成部を覆うように絶縁層を形成する絶縁層形成部と、前記マスキング材を除去する除去部と、を含むことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、絶縁層形成部において、活物質層が吐出装置の吐出部に差し掛かるタイミングより遅くセラミック合剤の吐出を開始したり、活物質層が吐出部を通過し終えるタイミングより早くセラミック合剤の吐出を終了したりする必要がなくなる。このため、絶縁層のうち、帯状金属箔の長手方向における活物質層の両端部での厚さが薄くなり、活物質層を覆う絶縁層の厚さが不均一となることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活物質層を覆う絶縁層の厚さが不均一となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、電極の製造装置を模式的に示す正面図、(b)は、スプレー機構部を部分的に拡大して示す正面図。
図2】電極の製造方法を示すフローチャート。
図3】(a)〜(d)は、帯状金属箔の塗布面を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電極の製造方法、及び電極の製造装置の一実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、電極の製造装置10は、帯状金属箔11の一方の面である塗布面11aに活物質ペースト12を塗布(転写)し、活物質層13を形成するための装置である。
【0019】
即ち、製造装置10は、正極電極を製造する場合には、正極用の帯状金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)11に、正極用の活物質ペースト12を塗布し、塗布面11aに正極用の活物質層13を設けるための装置となる。正極用の活物質ペースト12には、正極活物質、導電剤、バインダ、及び溶媒を混練したものが用いられる。
【0020】
また、製造装置10は、負極電極を製造する場合には、負極用の帯状金属箔(本実施形態では銅箔)11に、負極用の活物質ペースト12を塗布し、塗布面11aに負極用の活物質層13を設けるための装置となる。負極用の活物質ペースト12には、負極活物質、導電剤、バインダ、及び溶媒を混練したものが用いられる。
【0021】
製造装置10は、供給ロール14aにロール状に捲回された帯状金属箔11をセットし、装置に供給するための供給機構部14を備えている。また、帯状金属箔11の搬送方向Y1における供給機構部14の下流側には、供給される帯状金属箔11に、活物質ペースト12を転写して活物質層13を形成する転写装置20が設けられている。なお、以下の説明では、帯状金属箔11のうち活物質層13で覆われた領域を形成部13aと示し、活物質層13で覆われていない領域を非形成部13bと示す。
【0022】
転写装置20は、活物質ペースト12を貯留するタンク21、円柱状のコーティングロール22、及びタンク21から供給される活物質ペースト12をコーティングロール22の表面に付着させるとともに、活物質ペースト12の厚さ(量)を調節する略円柱状のコンマロール23を有する。また、転写装置20は、帯状金属箔11の搬送方向Y1に回転して、帯状金属箔11を搬送する円柱状のバッキングロール25を備える。各ロール22,23,25は平行に配置されている。
【0023】
コーティングロール22は、バッキングロール25とは反対方向である回転方向Y2に回転することにより、その表面に付着した活物質ペースト12を帯状金属箔11の塗布面11aに転写する。コーティングロール22は、該コーティングロール22を回転させる図示しないモータ等の駆動装置を有している。
【0024】
コンマロール23は、コーティングロール22と離間して配置され、コーティングロール22との間の隙間におけるコーティングロール22からの離間距離に応じて、コーティングロール22に付着させる活物質ペースト12の厚さを規制する。
【0025】
バッキングロール25は、帯状金属箔11をコーティングロール22に対して近接させることにより、活物質ペースト12と帯状金属箔11とを接触させ、帯状金属箔11の塗布面11aに活物質ペースト12を転写させる接触位置に位置可能である。
【0026】
また、バッキングロール25は、接触位置から離れた位置であり、帯状金属箔11をコーティングロール22に近接させず、帯状金属箔11の塗布面11aに活物質ペースト12を転写させない離間位置に位置可能である。
【0027】
バッキングロール25は、該バッキングロール25を回転、及び移動させる図示しないモータ等の駆動装置を有しており、軸心まわりで回転可能であるとともに、接触位置と離間位置との間を移動可能である。
【0028】
また、搬送方向Y1における転写装置20の下流側には、帯状金属箔11の塗布面11aにそれぞれ形成された活物質層13を乾燥させる第1乾燥炉30が設けられている。第1乾燥炉30の内部には、高温の熱媒体(例えば空気や窒素ガスなどの気体)が外部から供給され、活物質層13を加熱するとともに、活物質層13から蒸発した溶媒蒸気を第1乾燥炉30内から除去する。
【0029】
搬送方向Y1における第1乾燥炉30の下流側には、乾燥済みの活物質層13を一対のプレスロール32aにより加熱しながらロールプレス(圧縮)するプレス機構部32が設けられている。プレス機構部32により乾燥済みの活物質層13を圧縮することで、活物質層13が完成される。
【0030】
搬送方向Y1におけるプレス機構部32の下流側には、非形成部13bにマスキング材としてのマスキングテープ35を配置(貼付)し、非形成部13bをマスキングするマスキング部としてのマスキング機構部36が設けられている。
【0031】
搬送方向Y1におけるマスキング機構部36の下流側には、活物質層13(形成部13a)を覆う絶縁層37を形成するための絶縁層形成部、及び吐出装置としてのスプレー機構部38が設けられている。
【0032】
図1(b)に示すように、スプレー機構部38は、活物質層13が形成され、搬送方向Y1に搬送される帯状金属箔11に対して、絶縁性のセラミック粒子、バインダ、及び溶媒を混練したセラミック合剤40を噴霧(吐出)する吐出部としてのスプレーヘッド38aを有する。スプレーヘッド38aには、帯状金属箔11の幅方向に沿って複数のノズル(図示しない)が並設されており、これらノズルからセラミック合剤40を噴霧することにより、帯状金属箔11の全幅にわたってセラミック合剤40を塗布可能である。
【0033】
図1(a)に示すように、搬送方向Y1におけるスプレー機構部38の下流側には、帯状金属箔11に塗布されたセラミック合剤40を乾燥させる第2乾燥炉41が設けられている。第2乾燥炉41は、前述した第1乾燥炉30と同一構成である。
【0034】
搬送方向Y1における第2乾燥炉41の下流側には、帯状金属箔11に貼付されたマスキングテープ35を除去する除去部としての除去機構部43が設けられている。除去機構部43は、非形成部13bに貼付されたマスキングテープ35を非形成部13bから剥離することにより、該マスキングテープ35の表面に形成された絶縁層37とともにマスキングテープ35を除去する。
【0035】
また、搬送方向Y1における除去機構部43の下流側には、帯状金属箔11を巻取る巻取ロール45aを有する巻取機構部45を備える。巻取機構部45は、帯状金属箔11をロール状に成形する成形部となる。
【0036】
そして、製造装置10は、該製造装置10の動作を制御する図示しない制御装置を有している。制御装置は、制御プログラムを実行して各種演算を行う演算装置や、前記制御プログラムや演算装置による演算結果を記憶する記憶装置を備える。
【0037】
制御装置には、バッキングロール25の駆動装置が接続されており、バッキングロール25の位置や回転を制御可能である。また、制御装置には、コーティングロール22の駆動装置が接続されており、コーティングロール22の回転を制御可能である。
【0038】
また、制御装置には、マスキング機構部36が接続されており、該マスキング機構部36によるマスキングテープ35の配置(貼付)動作を制御可能である。また、制御装置には、スプレー機構部38が接続されており、単位時間当たりのセラミック合剤40の吐出量(吹き付け量)や、吐出の開始及び停止を制御可能である。また、制御装置には、除去機構部43が接続されており、該除去機構部43によるマスキングテープ35の除去(剥離)動作を制御可能である。
【0039】
次に、製造装置10を用いた電極の製造方法について、その作用とともに説明する。
図2に示すように、転写装置20において、供給機構部14から供給される帯状金属箔11の塗布面11aに対して活物質ペースト12を間欠的に塗布して活物質層13を形成する塗布工程を行う(ステップS1)。この塗布工程では、制御装置の制御により、バッキングロール25で帯状金属箔11を搬送方向Y1に搬送しつつ、バッキングロール25を前述した接触位置と、離間位置との間を所定の時間間隔で往復させる。
【0040】
これにより、図3(a)に示すように、塗布工程では、帯状金属箔11の長手方向に沿って、活物質層13で覆われた形成部13aと、活物質層13で覆われていない非形成部13bとが交互に設けられる。
【0041】
次に、図2に示すように、第1乾燥炉30において、塗布面11aに形成された活物質層13を乾燥させる第1乾燥工程を行う(ステップS2)。
次に、プレス機構部32において、第1乾燥工程にて乾燥させた活物質層13をプレスするプレス工程を行う(ステップS3)。このプレス工程では、一対のプレスロール32aで帯状金属箔11(活物質層13)を挟持し、乾燥済みの活物質層13を所定密度まで圧縮することにより、活物質層13として完成させる。
【0042】
次に、非形成部13bにマスキングテープ35を配置し、非形成部13bをマスキングするマスキング工程を行う(ステップS4)。
図1(b)、及び図3(b)に示すように、マスキング工程では、活物質層13の塗工始端13cと、マスキングテープ35の縁部とを接触(又は近接)させた状態で、帯状金属箔11の幅方向における一方の端部から他方の端部までの全幅にわたって、非形成部13bにマスキングテープ35を貼付する。
【0043】
ここで、図3(b)において一点鎖線で示すように、マスキングテープ35の幅は、帯状金属箔11を打ち抜き加工して略矩形状の電極シート47に成形する際に、蓄電装置(二次電池)の外部端子と電気的に接続される集電タブ47aとなる領域を覆う幅に設定されている。
【0044】
次に、図2に示すように、形成部13aに対して、絶縁性のセラミック粒子、バインダ、及び溶媒を含むセラミック合剤40を吐出させつつ、帯状金属箔11を該帯状金属箔11の長手方向(搬送方向Y1)に移動させることで形成部13aを覆うように絶縁層37を形成する絶縁層形成工程を行う(ステップS5)。絶縁性のセラミック粒子としては、例えば酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、及び窒化アルミニウムなどの微粒子を用いることができる。
【0045】
図3(c)に示すように、絶縁層形成工程では、スプレー機構部38により帯状金属箔11の全幅にわたってセラミック合剤40を吐出(噴霧)し、活物質層13、及びマスキングテープ35を含む塗布面11aの全面にセラミック合剤40を塗布する。
【0046】
絶縁層形成工程では、単位時間当りのセラミック合剤40の吐出量、及び帯状金属箔11の搬送速度を一定に設定した状態で、セラミック合剤40を間断なく連続的に吐出する。これにより、帯状金属箔11の全面には、絶縁層37が一定(又は略一定)の厚さで形成される。即ち、絶縁層37は、活物質層13(形成部13a)に加えて、非形成部13bやマスキングテープ35を覆うように形成される。そして、絶縁層37の厚さは、活物質層13の塗工始端13cから塗工終端13dまでの範囲にわたって一定(又は略一定)となる。
【0047】
特に、図1(b)に示すように、活物質層13の塗工始端13cには、他の部分より盛り上がった端高部13eが形成される場合がある。ここで、仮に、帯状金属箔11からの離間距離を固定したヘッドからセラミック合剤40を吐出するダイコート法により、絶縁層37を形成する場合には、端高部13eにおける絶縁層37が薄くなる可能性がある。
【0048】
また、仮にマスキングテープ35を用いないで、活物質層13(形成部13a)にのみ絶縁層37を形成するには、スプレーヘッド38aの直下を活物質層13が通過するときにだけ、セラミック合剤40を吐出するように制御することも考えられる。しかしながら、この場合には、活物質層13(形成部13a)がスプレーヘッド38aに差し掛かるタイミングより僅かに遅くセラミック合剤40の吐出を開始するとともに、活物質層13がスプレーヘッド38aを通過し終えるタイミングより僅かに早くセラミック合剤40の吐出を終了する必要がある。このようなタイミングでセラミック合剤40の吐出の開始、及び終了をする場合には、絶縁層37のうち、帯状金属箔11の長手方向における活物質層13の各端部13c,13dでの厚さが薄くなり、全体として絶縁層37の厚さが不均一となる。
【0049】
これに対して、本実施形態の製造装置10では、マスキングテープ35で非形成部13bをマスキングした状態でセラミック合剤40を連続的に吹き付けることから、端高部13eが形成されているか否かに関係なく、絶縁層37を一定の厚さで形成できる。
【0050】
次に、図2に示すように、第2乾燥炉41において、帯状金属箔11に形成した絶縁層37(セラミック合剤40)を乾燥させる第2乾燥工程を行う(ステップS6)。
次に、マスキングテープ35を除去する除去工程を行う(ステップS7)。
【0051】
図3(d)に示すように、除去工程では、マスキングテープ35を、該マスキングテープ35の表面に形成された絶縁層37とともに除去することから、前述の集電タブ47aとなる領域を含む非形成部13bにおいて、帯状金属箔11が露出する。
【0052】
次に、図2に示すように、巻取機構部45により帯状金属箔11を巻取り、帯状金属箔11をロール状に成形する成形工程をおこなう(ステップS8)。
その後、巻き取った帯状金属箔11は、再び製造装置10の供給ロール14aにセットし、上述と同様にして活物質層13が形成されていない側の面を新たな塗布面11aとして活物質層13を形成する。なお、活物質層13は、帯状金属箔11の両面において重なる位置に形成する。その後、両面に活物質層13を形成した帯状金属箔11を打ち抜き加工し、電極シート47が完成される(成形工程)。
【0053】
次に、正極電極である電極シート47を、別の工程で準備した袋状の電極収納セパレータに収納するとともに、正極電極である電極シート47を収納した電極収納セパレータと、負極電極である電極シート47とを交互に積層して電極組立体を形成する。
【0054】
次に、絶縁性の樹脂シートで覆った電極組立体を金属製のケースに収容するとともに、正極電極である電極シート47の集電タブ47a、及び負極電極である電極シート47の集電タブ47aをそれぞれ対応する極性の外部端子に対して、溶接などにより接続する。ここで、集電タブ47aには、絶縁層37が形成されていないことから、集電タブ47aと外部端子との接続を容易にできる。そして、ケースに非水電解液を注液(充填)して二次電池(蓄電装置)が完成される。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)マスキングテープ35で非形成部13bをマスキングした状態にてセラミック合剤40を吹き付けることにより絶縁層37を形成している。このため、非形成部13bに絶縁層37を形成しないように、スプレー機構部38に対する活物質層13の位置に応じてセラミック合剤40の吹き付けを開始及び停止させる場合と比較して、活物質層13を覆う絶縁層37の厚さが不均一となることを抑制できる。
【0056】
(2)絶縁層形成工程では、セラミック合剤40を連続的に吐出する。このため、スプレー機構部38を活物質層13が通過中であるか否かに応じて、セラミック合剤40の吐出を開始したり終了したりする必要がなく、簡便に絶縁層37を活物質層13に形成できる。
【0057】
(3)特に、本実施形態では、単位時間当りのセラミック合剤40の吐出量、及び帯状金属箔11の搬送速度を一定にした状態で、セラミック合剤40を間断なく連続的に吐出している。このため、絶縁層37の厚さをより均一にできる。
【0058】
(4)マスキング材として、マスキングテープ35を用いている。このため、マスキング工程において非形成部13bを簡便にマスキングできるとともに、除去工程において簡便に除去できる。
【0059】
(5)マスキングテープ35により非形成部13bをマスキングすることから、絶縁層37の厚さが不均一となることを抑制しつつも、集電タブ47aとなる非形成部13bにまで絶縁層37が形成されることを抑制できる。
【0060】
(6)製造装置10は、マスキング機構部36、スプレー機構部38、及び除去機構部43を有する。このため、非形成部13bに絶縁層37を形成しないように、スプレー機構部38に対する活物質層13の位置に応じてセラミック合剤40の吹き付けを開始及び停止させる場合と比較して、活物質層13を覆う絶縁層37の厚さが不均一となることを抑制できる。
【0061】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 塗布工程では、ダイコート法により活物質ペースト12を帯状金属箔11に塗布してもよい。即ち、製造装置10は、帯状金属箔11からの離間距離を固定したヘッドからセラミック合剤40を吐出するダイコート装置を有していてもよい。この場合、製造装置10は、ダイコート用のヘッドを帯状金属箔11の両面にそれぞれ対応させて配設することで、帯状金属箔11の両面に活物質層13を形成する装置としてもよい。
【0062】
○ マスキング工程では、非形成部13bの全体をマスキングテープ35で覆ってもよい。また、マスキング工程では、打ち抜き加工により集電タブ47aとなる部分のうち、少なくとも外部端子と接続(溶接)される領域をマスキングすればよい。また、マスキング工程では、活物質層13の塗工始端13cと、マスキングテープ35の縁部とを接触(又は近接)させず離間させてもよい。
【0063】
○ マスキング工程では、マスキングテープ35に代えて平板状のマスキング材を非形成部13bに配置してもよく、非形成部13bにコート剤を塗布してコート層を形成し、該コート層でマスキングしてもよい。
【0064】
○ 絶縁層形成工程では、スプレーヘッド38aを帯状金属箔11に対して移動させることにより、活物質層13を覆う絶縁層37を形成してもよい。また、帯状金属箔11を搬送方向Y1に搬送しつつ、スプレーヘッド38aを搬送方向Y1に沿って移動させて絶縁層37を形成してもよい。
【0065】
○ 帯状金属箔11の幅方向における両端部に活物質層13が形成されていない非形成部を設けるとともに、集電タブ47aが活物質層13から前記幅方向に突出するように、帯状金属箔11を打ち抜き加工して電極シート47に成形してもよい。
【0066】
○ 製造装置10は、巻取機構部45に代えて、帯状金属箔11を打ち抜き加工して電極シート47(集電タブ47a)に成形する機構部を有していてもよい。この場合には、帯状金属箔11をロール状に成形する成形工程を省略できる。
【0067】
○ 製造装置10は、転写装置20、第1乾燥炉30、及びプレス機構部32を省略してもよい。この場合、製造装置10は、活物質層13を形成した帯状金属箔11を供給機構部14にセットすることで、活物質層13に絶縁層37を形成するための装置として機能する。
【0068】
○ 製造装置10は、帯状金属箔11の両面に活物質ペースト12を塗布して活物質層13を形成可能な装置としてもよい。この場合には、帯状金属箔11の両面にそれぞれ対応させて、マスキング機構部36、スプレー機構部38、及び除去機構部43を設け、帯状金属箔11の両面に形成された活物質層13を覆うように、それぞれ絶縁層37を形成してもよい。
【0069】
○ ニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に用いる電極の製造方法、及び電極の製造装置に具体化してもよい。
○ 車両以外に用いられる蓄電装置に用いる電極の製造方法、及び電極の製造装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0070】
S4…ステップ(マスキング工程)、S5…ステップ(絶縁層形成工程)、S7…ステップ(除去工程)、10…製造装置、11…帯状金属箔、12…活物質ペースト(活物質合剤)、13…活物質層、13a…形成部、13b…非形成部、35…マスキングテープ(マスキング材)、36…マスキング機構部(マスキング部)、37…絶縁層、38…スプレー機構部(絶縁層形成部、吐出装置)、38a…スプレーヘッド(吐出部)、40…セラミック合剤、43…除去機構部(除去部)、47a…集電タブ。
図1
図2
図3