(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に収容空間を形成しつつ互いに固定される複数のハウジング部材と、回転軸の回転によって容積が変化して吸入室内の冷媒を圧縮して吐出室内に吐出する圧縮室を有する圧縮機構とを備え、
前記圧縮機構は、前記収容空間内に収納されて固定されることにより、前記収容空間内に前記吸入室及び前記吐出室を形成し、
前記各ハウジング部材のいずれかには、前記吸入室と外部とを連通する吸入口と、前記吐出室と前記外部とを連通する吐出口とが形成された圧縮機であって、
前記各ハウジング部材の少なくとも二つは、前記ハウジング部材同士を螺合することによって固定され、
前記ハウジング部材は、一端に第1開口を有するカップ形状をなし、前記一端側に第1ねじ部が形成された第1ハウジングと、
他端に第2開口を有するカップ形状をなし、前記他端側に前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とを螺合することにより前記第1開口及び前記第2開口を閉鎖可能な第2ハウジングとからなり、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの対向面には、前記第1ねじ部及び前記第2ねじ部より外域に位置し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とを螺合することにより圧縮されて前記圧縮機の内部を密閉するシール材が設けられていることを特徴とする圧縮機。
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの一方には前記吸入口が形成され、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの他方には前記吐出口が形成されている請求項2記載の圧縮機。
前記シール材は、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とを螺合することにより、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの径方向に圧縮されるように設けられている請求項4記載の圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の圧縮機は、第1ハウジングと第2ハウジングとを固定するに当たって、複数のボルトを個々に締結する必要がある。このため、この圧縮機では組み付け作業が煩雑である。
【0006】
また、この圧縮機では、複数のボルトが必要となることから、部品点数が多くなる。このため、この圧縮機では製造コストの削減が難しい。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、組み付け作業を簡素化するとともに、製造コストの削減を実現可能な圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧縮機は、内部に収容空間を形成しつつ互いに固定される複数のハウジング部材と、回転軸の回転によって容積が変化して吸入室内の冷媒を圧縮して吐出室内に吐出する圧縮室を有する圧縮機構とを備え、
前記圧縮機構は、前記収容空間内に収納されて固定されることにより、前記収容空間内に前記吸入室及び前記吐出室を形成し、
前記各ハウジング部材のいずれかには、前記吸入室と外部とを連通する吸入口と、前記吐出室と前記外部とを連通する吐出口とが形成された圧縮機であって、
前記各ハウジング部材の少なくとも二つは、前記ハウジング部材同士を螺合することによって固定され
、
前記ハウジング部材は、一端に第1開口を有するカップ形状をなし、前記一端側に第1ねじ部が形成された第1ハウジングと、
他端に第2開口を有するカップ形状をなし、前記他端側に前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とを螺合することにより前記第1開口及び前記第2開口を閉鎖可能な第2ハウジングとからなり、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの対向面には、前記第1ねじ部及び前記第2ねじ部より外域に位置し、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とを螺合することにより圧縮されて前記圧縮機の内部を密閉するシール材が設けられていることを特徴とす
る。
【0009】
本発明の圧縮機では、複数のハウジング部材のうち、少なくとも二つについては、ハウジング部材同士を螺合することによって固定することができる。このため、この圧縮機では、これら二つのハウジング部材を容易に固定することが可能となる。
【0010】
また、この圧縮機では、これら二つのハウジング部材を固定するに当たり、ボルト等の部材が不要となる。このため、この圧縮機では部品点数の削減も可能となる。
【0011】
したがって、本発明の圧縮機によれば、組み付け作業を簡素化できるとともに、製造コストの削減を実現できる。
【0012】
本発明の圧縮機において、ハウジング部材は二個以上であれば、その個数は任意に設計することができる。ここで、ハウジング部材が三個以上である場合、それらのうちの二つのハウジング部材同士を螺合することによって固定すれば、残り一つのハウジング部材は、例えばボルト等によって固定しても良い。また、ハウジング部材が三個以上である場合、全てのハウジング部材を各々螺合することによって固定しても良い。
【0013】
また、本発明の圧縮機において、ハウジング部材は、一端に第1開口を有するカップ形状をなし、一端側に第1ねじ部が形成された第1ハウジングと、他端に第2開口を有するカップ形状をなし、他端側に第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合することにより第1開口及び第2開口を閉鎖可能な第2ハウジングとからなり得る。そして、第1ハウジング又は第2ハウジングには、
ボスが形成され、回転軸は、ボスより圧縮機構側で軸受に軸支されつつ軸封装置に封止され、ボスより反圧縮機構側でボスから露出されていることが好ましい。
【0014】
この場合には、ハウジング部材が第1ハウジングと第2ハウジングとによって構成される。そして、この圧縮機では、第1ハウジングと第2ハウジングとが共にカップ形状をなしていることで、これらの第1ハウジングと第2ハウジングとにより収容空間が形成される。これにより、この圧縮機では、収容空間に圧縮機構を収納しつつ、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合すれば、第1ハウジングと第2ハウジングと固定することができるとともに、収容空間に圧縮機構を固定することができる。このため、この圧縮機では、第1ハウジングと第2ハウジングと圧縮機構との組み付け作業をより簡素化することができる。また、この圧縮機では、第1ハウジングと第2ハウジングとを固定するに当たってボルト等が不要となるため、部品点数を削減できる。
【0015】
このように、ハウジング部材が第1ハウジングと第2ハウジングとによって構成される場合、例えば、第1ハウジング又は第2ハウジングの一方に吸入口及び吐出口を形成することができる。
【0016】
特に、第1ハウジング及び第2ハウジングの一方には吸入口が形成され、第1ハウジング及び第2ハウジングの他方には吐出口が形成されていることが好まし
い。この場合には、圧縮機の設計の自由度を高くすることが可能となる。
【0017】
また、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合させることのみにより、吸入口と吐出口との相対角度が決定されることが好まし
い。ここで、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合させるとは、第1ねじ部と第2ねじ部との螺合により、第1ハウジングと第2ハウジングとが固定された状態となることを指す。つまり、この圧縮機では、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合し、第1ハウジングと第2ハウジングとを固定すれば、別途の作業を要することなく吸入口と吐出口との相対角度が決定されることとなる。このため、この圧縮機では、組み付け作業をより簡素化することが可能となる。
【0018】
本発明の圧縮機において、吸入口と吐出口との相対角度の決定は、例えば、第1ねじ部の開始位置や第2ねじ部の開始位置を調整することによって行うことが可能である。そして、このように第1ねじ部等を調整することによって、この圧縮機では、吸入口と吐出口との相対角度を任意に決定することが可能となる。このため、この圧縮機では、設計の自由度をより高くすることも可能となる。
【0019】
本発明の圧縮機において、第1ねじ部及び第2ねじ部を螺合することで、微細な螺旋状の空間が第1ねじ部と第2ねじ部との間に形成され、ラビリンス効果によってハウジング部材から冷媒ガスが漏れ難くなる。このように、この圧縮機では、第1ねじ部及び第2ねじ部を螺合することで、これらがシール面として機能し得ることから、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を確保することが可能となる。ここで、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性をより確実性高く確保するに当たり、第1ハウジングと第2ハウジングとが対向する対向面にシール材を設けることができる。このシール材は、例えば、第1ハウジング及び第2ハウジングにおいて、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも内域に設けることができる。
【0020】
特に、本発明の圧縮機において、第1ハウジングと第2ハウジングとの対向面には、第1ねじ部及び第2ねじ部より外域に位置し、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合することにより圧縮されて圧縮機の内部を密閉するシール材が設けられていることが好まし
い。
【0021】
ここで、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも外域とは、第1ハウジング及び第2ハウジングにおいて、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも圧縮機の外部に近い側を指す。このため、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも外域にシール材が設けられた圧縮機では、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも圧縮機の外部に近い位置でシール材による気密性の確保が行われる。反対に、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも内域とは、第1ハウジング及び第2ハウジングにおいて、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも圧縮機の内部に近い側を指す。
【0022】
このため、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも外域にシール材を設けることで、第1ねじ部及び第2ねじ部よりも内域に設ける場合と比較して、容易にシール材を設けることが可能となる。
【0023】
また、この圧縮機では、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合することによりシール材が圧縮される。このため、この圧縮機では、組み付け作業を簡素化しつつ、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を好適に確保することが可能となる。
【0024】
また、シール材は、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合することにより、第1ハウジング及び第2ハウジングの径方向に圧縮されるように設けられていることが好まし
い。この場合には、作動時の振動等によって、仮に第1ねじ部と第2ねじ部とにおける螺合に緩みが生じ、第1ハウジングと第2ハウジングとの間で軸方向に緩みが生じた場合であっても、シール材が径方向に圧縮されていることにより、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を好適に維持することが可能となる。
【0025】
本発明の圧縮機における圧縮機構としては、斜板式圧縮機構やスクロール式圧縮機構の他、種々の構成を採用することができる。特に、圧縮機構はベーン式圧縮機構であることが好まし
い。
【0026】
また、この場合、ハウジング部材は、一端に第1開口を有するカップ形状をなし、一端側に第1ねじ部が形成された第1ハウジングと、他端に第2開口を有するカップ形状をなし、他端側に第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合することにより第1開口及び第2開口を閉鎖可能な第2ハウジングとからなり得る。さらに、第2ハウジングに吸入口が形成され、第1ハウジングに吐出口が形成され得る。また、第2ハウジングには、前記回転軸を回転可能に軸支しつつ
、前記ボスより圧縮機構側の前記回転軸を封止するとともに
前記ボスより反圧縮機構側の前記回転軸を露出させるボスが形成され得る。そして、圧縮機構は、シリンダブロックと、フロントサイドプレートと、リヤサイドプレートと、ロータと、複数のベーンとを有していることが好ましい。シリンダブロックは、収容空間内に固定され、内部にシリンダ室を形成する。フロントサイドプレートは、シリンダ室の前端を閉鎖するとともに吸入室を形成する。リヤサイドプレートは、シリンダ室の後端を閉鎖するとともに吐出室を形成する。ロータは、シリンダ室内で回転軸と同期回転可能に設けられ、複数個のベーン溝が形成されている。各ベーンは、各ベーン溝にそれぞれ出没可能に設けられ、シリンダ室の内面、ロータの外面、フロントサイドプレートの後面及びリヤサイドプレートの前面とともに各圧縮室を形成す
る。
【0027】
この場合には、第1ハウジングと第2ハウジングとにより収容空間が形成される。そして、この圧縮機では、収容空間にベーン式圧縮機構を収納しつつ、第1ねじ部と第2ねじ部とを螺合すれば、第1ハウジングと第2ハウジングと固定することができるとともに、収容空間にベーン式圧縮機構を固定することができる。これにより、この圧縮機では、第1ハウジングと第2ハウジングとベーン式圧縮機構とを容易に組み付けることが可能となる。また、この圧縮機では、第1ハウジングと第2ハウジングとを固定するに当たってボルト等が不要となるため、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の圧縮機によれば、組み付け作業を簡素化できるとともに、製造コストの削減を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具現化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。実施例1〜3の圧縮機は、いずれも車両に搭載されており、車両用空調装置の冷凍回路を構成している。
【0031】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、第1ハウジング1と、第2ハウジング3と、ベーン型圧縮機構Cとを備えている。
【0032】
第1ハウジング1は圧縮機の後方に配置されている。この第1ハウジング1は、上下方向に延びる第1壁1aと、第1壁1aから前方に向かって水平に延びる第1外周壁1bとを有している。第1ハウジング1の前端、すなわち、第1外周壁1bの前端には、第1開口1cが形成されている。なお、第1ハウジング1の前端が本発明における一端に相当する。
【0033】
第1ハウジング1の内部には、第1開口1cと連通する第1収容空間5aが形成されている。これらにより、第1ハウジング1は、後方から前方に向かって延びるカップ形状を呈している。さらに、第1ハウジング1には、吐出口1dが形成されている。この吐出口1dは第1ハウジング1の上方に形成されており、圧縮機の外部に向かって開いている。
【0034】
図2に示すように、第1外周壁1bの前端側には、軸心O周りで雌ねじ部7が形成されている。この雌ねじ部7が本発明における第1ねじ部に相当する。また、第1外周壁1bにおいて、第1開口1cの近傍となる部分、すなわち、第1外周壁1bにおいて、雌ねじ部7よりも前端側は、第1対向面4aとされている。
【0035】
図1に示すように、第2ハウジング3は圧縮機の前方に配置されている。この第2ハウジング3は、上下方向に延びる第2壁3aと、第2壁3aから後方に向かって水平に延びる第2外周壁3bとを有している。第2ハウジング3の後端、すなわち、第2外周壁3bの後端には、第2開口3cが形成されている。なお、第2ハウジング3の後端が本発明における他端に相当する。
【0036】
第2ハウジング3の内部には、第2開口3cと連通する第2収容空間5bが形成されている。これらにより、第2ハウジング3は、前方から後方に向かって延びるカップ形状を呈している。また、第1収容空間5aと第2収容空間5bとにより、収容空間5が形成されている。
【0037】
さらに、第2ハウジング3には、吸入口3dとボス3eとが形成されている。吸入口3dは第2ハウジング3の上方に形成されており、圧縮機の外部に向かって開いている。ボス3eは、第2壁3aに形成されており、第2壁3aから前方に向かって突出している。ボス3e内には、第2収容空間5bと連通する軸孔3fが貫設されている。
【0038】
図2に示すように、第2外周壁3bの後端側には、軸心O周りで雄ねじ9部が形成されている。雄ねじ9部は雌ねじ部7と螺合可能となっている。この雄ねじ部9が本発明における第2ねじ部に相当する。また、この第2外周壁3bにおいて、雄ねじ部9よりも前端側には、第2対向面4bが形成されている。この第2外周壁3bでは、雄ねじ部9を含む第2外周壁3bの全ての箇所よりも第2対向面4bが大径となるように形成されている。そして、この第2対向面4bにはOリング溝3gが凹設されている。このOリング溝3gには、ゴム製のOリング11が収納されている。このOリング11が本発明におけるシール材に相当する。
【0039】
ここで、第1外周壁1bにおいて、第1対向面4aが雌ねじ部7よりも前端側に形成されているとともに、第2外周壁3bにおいて、第2対向面4bが雄ねじ部9よりも前端側に形成されている。これにより、この圧縮機では、Oリング11が雌ねじ部7及び雌ねじ部9よりも外域に位置している。また、雌ねじ部7及び雌ねじ部9とが螺合することにより、第1対向面4aと第2対向面4bとは、Oリング11を介して対向する。
【0040】
図3に示すように、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合させた際、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度が所定の角度となるように雌ねじ部7の開始位置が調整されている。この吸入口3dと吐出口1dとの相対角度についての詳細は後述する。なお、
図3では、第2ハウジング3等の形状を一部簡略して図示している。後述の
図7も同様である。
【0041】
図1に示すように、ベーン型圧縮機構Cは収容空間5内に配置されている。このベーン型圧縮機構Cは、シリンダブロック13と、フロントサイドプレート15と、リヤサイドプレート17と、回転軸19と、ロータ21と、
図4に示す五個のベーン23とを有している。
【0042】
シリンダブロック13は収容空間5内に設けられている。このシリンダブロック13には、軸直角方向で楕円状のシリンダ室13aが形成されている。また、シリンダブロック13には二つの吸入空間13bと、複数の吸入ポート13cとが形成されている。吸入空間13bと吸入ポート13cとは連通している。
【0043】
さらに、シリンダブロック13の外周面には、二つの凹部13dが形成されている。これらの各凹部13dにより、シリンダブロック13と収容空間5との間に二つの吐出空間13eが形成されている。また、シリンダブロック13には、吐出空間13eと連通する複数の吐出ポート13fが設けられている。
【0044】
各吐出空間13e内には、各吐出ポート13fを閉鎖する複数の吐出弁25と、各吐出弁25のリフト量を規制する複数のリテーナ27とが設けられている。
【0045】
図1に示すように、フロントサイドプレート15は、収容空間5、より詳細には、第2収容空間5b内に設けられており、シリンダブロック13の前方に位置している。このフロントサイドプレート15により、シリンダ室13aの前端が閉鎖されている。このように、第2収容空間5b内にフロントサイドプレート15が設けられることにより、第2収容空間5b内に吸入室29が形成されている。この吸入室29は吸入口3dと連通している。
【0046】
また、フロントサイドプレート15には、軸孔15aと二つの吸入孔15bとが貫設されている。軸孔15a内には、滑り軸受31aが設けられている。各吸入孔15bは吸入室29と各吸入空間13bとに連通している。これにより、各吸入空間13bはそれぞれ吸入室29と連通している。なお、
図1では、一方の吸入孔15bのみ図示している。
【0047】
さらに、フロントサイドプレート15の前方には軸封装置33が設けられている。この軸封装置33も第2収容空間5b内に位置している。さらに、フロントサイドプレート15の外周面と第2外周壁3bの内周面との間には、Oリング35aが設けられている。
【0048】
リヤサイドプレート17は、収容空間5、より詳細には、第1収容空間5a内に設けられており、シリンダブロック13の後方に位置している。このリヤサイドプレート17により、シリンダ室13aの後端が閉鎖されている。このように、第1収容空間5a内にリヤサイドプレート17が設けられることにより、第1収容空間5a内に吐出室37が形成されている。この吐出室37は吐出口1dと連通している。
【0049】
また、リヤサイドプレート17の後端面の中央には、一定の厚みを持って後側に膨出するセパレータ39が形成されている。このセパレータ39は吐出室37内に位置している。また、セパレータ39の下方には連通孔41が形成されている。セパレータ39内には、後述する圧縮室47から吐出された冷媒ガスを周回させる円筒状の案内面39aが形成されている。案内面39aは上下に円柱状に延びる油分離室39bと連通している。油分離室39bは連通孔41によって吐出室37と連通している。案内面39aの内側には、自己の外周面で冷媒ガスを周回させるとともに、潤滑油を分離した冷媒ガスを自己の内部に導く円筒状の分離筒43が圧入されている。この分離筒43は、案内面39aと同軸に形成されている。また、分離筒43の上端には、吐出室37に向かって開く開口43aが形成されている。
【0050】
さらに、リヤサイドプレート17には、吐出孔17a及び軸孔17bが形成されている他、背圧流路(図示略)が形成されている。吐出孔17aは、吐出空間13eとセパレータ39内とに連通している。軸孔17b内には、滑り軸受31bが設けられている。背圧流路は吐出室37と連通している。また、リヤサイドプレート17の外周面と第1外周壁1bの内周面との間には、Oリング35bが設けられている。
【0051】
回転軸19は、圧縮機の前方から後方に向かって、軸孔3f、15a、17bに挿通されている。そして、回転軸19は、第2収容空間5b内において軸封装置33に
封止されるとともに、軸孔15a、17bにおいて滑り軸受31a、31bにそれぞれ軸支されている。これにより、回転軸19は、軸心O周りで回転可能となっている。
【0052】
また、回転軸19の前端側はボス3eから圧縮機の外部に露出した状態となっている。これにより、回転軸19の前端には図示しない電磁クラッチ又はプーリを固定可能となっている。電磁クラッチやプーリには車両のエンジンやモータ等によって駆動力が伝達されるようになっている。
【0053】
ロータ21は回転軸19に圧入されており、シリンダ室13a内に配置されている。これにより、シリンダ室13a内において、ロータ21は回転軸19と同期回転可能となっている。
【0054】
図4に示すように、ロータ21は断面が円形となる円筒状に形成されている。また、ロータ21の外周面には、五つのベーン溝21aが凹設されている。各ベーン溝21aは
回転軸19の軸心O周りで等角度隔てられている。また、各ベーン溝21aには、それぞれベーン23が収納されている。なお、ベーン溝21a及びベーン23における個数や大きさ等は適宜設定することが可能である。
【0055】
各ベーン溝21aに収納された各ベーン23の底面と、各ベーン溝21aの底面との間は背圧室45とされている。各背圧室45は背圧流路と連通している。つまり、背圧流路を通じて各背圧室45と吐出室37とが連通している。これにより、高圧の冷媒ガスと共に潤滑油を各背圧室45に供給可能となっている。各ベーン23は、各背圧室45内の圧力変化により、各ベーン溝21aに対して出没可能となっている。
【0056】
フロントサイドプレート15及びリヤサイドプレート17により前後が閉鎖されたシリンダ室13aと、五個のベーン23と、ロータ21の外周面とにより、五個の圧縮室47が形成されている。各圧縮室47のうち、吸入行程にある圧縮室47は、吸入ポート13cと連通するようになっている。一方、吐出行程にある圧縮室47は、吐出ポート13fと連通するようになっている。
【0057】
図1に示す吐出口1dは配管によって凝縮器に接続されている。また、凝縮器は配管によって膨張弁に接続されている。さらに、膨張弁は配管によって蒸発器に接続されている。そして、蒸発器は配管によって吸入口3dに接続されている。各配管によって、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が接続されることにより、車両用空調装置の冷凍回路が構成されている。なお、各配管、凝縮器、膨張弁及び蒸発器は、いずれも図示を省略する。
【0058】
以上のように構成された圧縮機では、エンジン等によって回転軸19が回転されると、ロータ21が駆動軸9と同期回転する。このため、各圧縮室47に容積変化が生じる。また、蒸発器を経た低圧の冷媒ガスが吸入口3dから吸入室29に吸入される。この吸入室29内の冷媒ガスは、各吸入孔15b、各吸入空間13b及び各吸入ポート13cを経て吸入行程にある圧縮室47に吸入され、圧縮される。圧縮室47で圧縮されて高圧となった冷媒ガスは、吐出ポート13fを経て各吐出空間13eに吐出される。各吐出空間13eに吐出された冷媒ガスは、吐出孔17aを経て、セパレータ39の分離筒43の外周面と案内面39aとの間に至る。そして、セパレータ39において、冷媒ガスから潤滑油が遠心分離される。潤滑油を分離した冷媒ガスは、分離筒43の開口43aから吐出室37内に流入する。一方、冷媒ガスから分離された潤滑油は、油分離室39bから連通孔41を経て吐出室37の下方に貯留される。吐出室37内の冷媒ガスは吐出口1dから凝縮器に向けて吐出される他、一部の冷媒ガスは、潤滑油と共に各背圧室45内に供給される。
【0059】
この圧縮機では、収容空間5内にベーン式圧縮機構Cを収容した状態で、第1ハウジング1の第1外周壁1bに形成された雌ねじ部7と、第2ハウジング3の第2外周壁3bに形成された雄ねじ部9とを螺合することにより、第1ハウジング1と第2ハウジング3とを固定することが可能となっている。そして、雌ねじ部7の全部と雄ねじ部9の全部とが螺合され、第1対向面4aと第2対向面4bとがOリング11を介して対向し、第1ハウジング1と第2ハウジング3とが固定されることにより、リヤサイドプレート17が収容空間5、より詳細には、第1収容空間5aに固定された状態となる。同様に、フロントサイドプレート15が第2収容空間5bに固定された状態となる。これにより、シリンダブロック13が収容空間5に固定された状態となる。こうして、この圧縮機では、第1ハウジング1と第2ハウジング3とベーン式圧縮機構Cとを組み付けることが可能となり、収容空間5内にベーン式圧縮機構Cを固定することが可能となっている。
【0060】
このように、この圧縮機では、第1ハウジング1と第2ハウジング3とベーン式圧縮機構Cとを容易に固定することが可能となっている。
【0061】
また、この圧縮機では、第1ハウジング1と第2ハウジング3とを固定するに当たって、ボルト等の部材が不要となっている。このため、この圧縮機では部品点数の削減を実現している。
【0062】
さらに、この圧縮機では、
図2に示すように、第2外周壁3bの第2対向面4bにOリング11が設けられている。これにより、Oリング11は、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合した際、互いに近接する第1対向面4aと第2対向面4bとによって、圧縮されることとなる。
【0063】
このため、この圧縮機では、第1ハウジング1と第2ハウジング3とベーン式圧縮機構Cとを固定すれば、別途に作業を行うことなくOリング11によって、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を好適に確保することが可能となっている。
【0064】
また、この圧縮機では、第2外周壁3bの第2対向面4bにOリング11を設けることで、例えば、第2外周壁3bにおいて雄ねじ部9よりも後端側にOリング11を設ける場合と比較して、第2ハウジング3に対してOリング11を容易に設けることが可能となっている。
【0065】
そして、この圧縮機では、Oリング11が第1ハウジング1と第2ハウジング3との間であって、かつ、雌ねじ部7及び雄ねじ部9よりも外域で、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を確保することが可能となっている。
【0066】
したがって、実施例1の圧縮機によれば、組み付け作業を簡素化できるとともに、製造コストの削減を実現できる。
【0067】
特に、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とが螺合した際、互いに近接する第1対向面4aと第2対向面4bとによって、Oリング11が第2ハウジング3の径方向に圧縮される。このため、この圧縮機では、作動時の振動等によって、仮に雌ねじ部7と雄ねじ部9とにおける螺合に緩みが生じ、第1ハウジング1と第2ハウジング3との間で軸方向に緩みが生じた場合であっても、第2ハウジング3の径方向に圧縮され
たOリング11により、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を好適に維持することが可能となっている。
【0068】
また、この圧縮機では、第1ハウジング1に吐出口1dが形成されており、第2ハウジング3に吸入口3dが形成されている。そして、この圧縮機では、雌ねじ部7の開始位置の調整により、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合することにより、第1ハウジング1と第2ハウジング3とは、それぞれ
図3に示す位置で固定される。すなわち、第2ハウジング3は、回転軸19の軸心Oを通り、圧縮機の上下方向に垂直に延びる垂直線VL上に吸入口3dの中心が位置する箇所で固定される。換言すれば、第2ハウジング3は、回転軸19の軸心Oを通り、圧縮機の左右方向に水平に延びる水平線HLと直交し、かつ、回転軸19の軸心Oの上方となる位置に吸入口3dの中心が配置される箇所で固定される。一方、第1ハウジング1は、吐出口1dの中心が垂直線VLから左方向にθ1度傾斜した位置となる箇所で固定される。
【0069】
このように、この圧縮機では、雌ねじ部7の開始位置を調整することによって、第1ハウジング1と第2ハウジング3とが互いに固定される角度、ひいては、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を決定することが可能となっている。つまり、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合することのみによって、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を決定することが可能となっている。
【0070】
これらのため、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合し、第1ハウジング1と第2ハウジング3とを固定すれば、別途の作業を要することなく吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を決めることが可能となっている。
【0071】
さらに、この圧縮機では、搭載される車両に応じて、雌ねじ部7の開始位置を調整すれば、吸入口3dと吐出口1dとの相対位置を容易かつ低コストで変更することが可能であることから設計の自由度が高くなっている。これにより、この圧縮機では、車両への搭載性が高くなっている。
【0072】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、実施例1の圧縮機における第1ハウジング1に換えて、
図5に示す第1ハウジング10を備えている。
【0073】
第1ハウジング10は圧縮機の後方に配置されている。この第1ハウジング10は、上下方向に延びる第1壁10aと、第1壁10aから前方に向かって水平に延びる第1外周壁10bとを有している。第1外周壁10bの前端には、第1開口10cが形成されている。ここで、この第1外周壁10bは、前端側に向かって二段階で外径が大きくなるように形成されている。このため、第1開口10cは、実施例1における第1開口1cよりも大きく形成されている。
【0074】
第1ハウジング10の内部には、第1開口10cと連通する第1収容空間5aが形成されている。これらにより、実施例1の第1ハウジング1と同様に、第1ハウジング10も後方から前方に向かって延びるカップ形状を呈している。さらに、第1ハウジング10には、圧縮機の外部に向かって開く吐出口10dが形成されている。この吐出口10dは吐出室37と連通している。
【0075】
図6に示すように、第1外周壁10bの前端側には、雌ねじ部7が形成されている。また、この第1外周壁10bでは、前端面に第1対向面4aが形成されている。そして、この第1外周壁10bでは、第1対向面4aに対してOリング溝10eが凹設されている。このOリング溝10e内にOリング12が収納されている。このOリング12も本発明におけるシール材に相当する。
【0076】
一方、実施例1の圧縮機と異なり、第2対向面4bは、第2ハウジング3の第2
壁3aの後端側に形成されている。より詳細には、第2対向面4bは、第2
壁3a
の後端側であって、第1外周壁1bの前端面と対向する位置に形成されている。また、この圧縮機では、第2外周壁3bにOリング溝3gが設けられておらず、第2外周壁3bにOリング11は設けられていない。
【0077】
この圧縮機では、第1対向面4aが第1外周壁1bの前端面に形成されていることにより、Oリング12が雌ねじ部7及び雌ねじ部9よりも圧縮機の外側、すなわち外域に位置している。また、雌ねじ部7及び雌ねじ部9とが螺合することにより、第1対向面4aと第2対向面4bとは、Oリング12を介して対向する。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0078】
この圧縮機では、収容空間5内にベーン式圧縮機構Cを収容した状態で、雌ねじ部7と、雄ねじ部9とを螺合することにより、第1ハウジング10と第2ハウジング3とを固定することが可能となっている。これにより、実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機においても、第1ハウジング10と第2ハウジング3とベーン式圧縮機構Cとを組み付けることが可能となっている。
【0079】
また、この圧縮機では、第1外周壁10bの前端面に形成された第1対向面4aにOリング12を設けている。このため、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とが螺合した際、互いに近接する第1対向面4aと第2対向面4bとによって、Oリング12が第1ハウジング1の軸方向に圧縮されることとなる。
【0080】
このため、この圧縮機においても、第1ハウジング1と第2ハウジング3とベーン式圧縮機構Cとを固定すれば、別途に作業を行うことなくOリング12によって、同時に圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を好適に確保することが可能となっている。
【0081】
また、この圧縮機では、第1対向面4aにOリング
溝10eを設けることで、第1ハウジング1
0に対して容易にOリング12を設けることが可能となっている。さらに、この圧縮機においても、Oリング12が雌ねじ部7及び雄ねじ部9よりも外域で、圧縮機の外部に対する圧縮機の内部の気密性を確保することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0082】
(実施例3)
実施例3の圧縮機は、実施例1の圧縮機と同様の構成であるものの、雌ねじ部7の開始位置について、実施例1の圧縮機における雌ねじ部7の開始位置とは異なる位置に設定している。
【0083】
これにより、この圧縮機では、雌ねじ部7の全部と雄ねじ部9の全部とが螺合した際、第1ハウジング1と第2ハウジング3とが
図7に示す位置で固定される。すなわち、第2ハウジング3は、吸入口3dの中心が垂直線VLから左方向にθ2度傾斜した位置となる箇所で固定される。一方、第1ハウジング1は、実施例1の圧縮機と同様、吐出口1dの中心が垂直線VLから左方向にθ1度傾斜した位置となる箇所で固定される。つまり、この圧縮機では、雌ねじ部7と雄ねじ部9とを螺合することのみにより、実施例1の圧縮機とは異なる位置で吸入口3aと吐出口1aとの相対角度が決定されている。この圧縮機における作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0084】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0085】
例えば、実施例1、3の圧縮機においては、垂直線VLに対する吸入口3dの中心の位置を変更することによって、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を変更している。これに換えて、垂直線VLや水平線HLに対する吐出口1dの中心の位置を変更することによって、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を変更しても良い。
【0086】
また、吸入口3dの中心や吐出口1dの中心が垂直線VLに対して右側に傾斜する位置において、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を決定可能なように雌ねじ部7の開始位置を調整しても良い。
【0087】
さらに、雌ねじ部7に換えて、雄ねじ部9の開始位置によって、吸入口3dと吐出口1dとの相対角度を決定しても良い。
【0088】
また、ベーン式圧縮機構Cに換えて、斜板式圧縮機構やスクロール式圧縮機構を採用して圧縮機を構成しても良い。