特許第6098276号(P6098276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098276
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B60N2/07
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-64129(P2013-64129)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189056(P2014-189056A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 定夫
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065419(JP,A)
【文献】 実開平03−121125(JP,U)
【文献】 実開平02−076532(JP,U)
【文献】 実開昭63−147331(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに対しシートをスライドさせるシートスライド装置であって、
シートを車両のフロアに対し一方向にスライド移動可能に支持するスライド支持手段と、
前記シートを前記フロアに対して前記一方向に移動させ、位置決めする移動位置決め手段と、
回転駆動手段と、
該回転駆動手段からの回転動力を伝達する回転シャフトと、
前記回転シャフトの回転軸が前記シートの移動方向と平行な状態で該回転シャフトと接続し、前記回転動力を前記移動位置決め手段に伝達する動力伝達手段と、
を有し、
前記スライド支持手段は、車両の前記フロアに固定されたロアレールと、該ロアレールに対しスライド可能に支持され前記シートが固定されたアッパレールと、を有し、
前記移動位置決め手段は、前記ロアレールに固定されたリードスクリュと、該リードスクリュに螺合し回転可能に前記アッパレールに支持されたナット部材と、を有し、
前記回転駆動手段は前記アッパレールに対し固定されたモータであり、
前記回転シャフトはフレキシブルワイヤであり、
前記動力伝達手段は、前記リードスクリュの軸と平行な回転軸を有する1以上のギアで構成され、前記ギアの1つは前記フレキシブルワイヤと同軸で接続し、前記ギアの1つは前記ナット部材の外周に形成されたギアと係合する、
ことを特徴とする、シートスライド装置。
【請求項2】
前記ロアレールと前記アッパレールとからなるレールユニットを2つ有し、
前記2つのアッパレールは、前記シートの前側においてブラケットにより相互に接続され、前記モータは該ブラケットに固定される、
ことを特徴とする請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記動力伝達手段は、減速機構を含むことを特徴とする請求項又はに記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記モータと前記フレキシブルワイヤの間に減速機構を有することを特徴とする請求項又はに記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記モータは二重シャフトモータであり、該二重シャフトモータと前記フレキシブルワイヤは同軸で接続される、ことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
前記モータは、ウォームギア及びウォームホイールギアを介して前記フレキシブルワイヤと接続されることを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項7】
前記モータは、回転軸が前記フレキシブルワイヤの軸と平行となるように配置され、前記モータの回転軸及び前記フレキシブルワイヤの軸と平行な回転軸を有する複数のギアを介して、前記モータは前記フレキシブルワイヤと接続する、ことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートスライド装置に関し、特に、車両に対してシートをスライドさせるスライド機構を備えた車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシートには、着座する運転者の安全な運転姿勢の確保や、搭乗者の安全や快適性等の確保のため、シートを前後方向にスライドさせる機構が供えられている。また、シートを前後方向にスライドさせる動力源としてモータを使用し、シートの前後方向の移動と位置の調整をするパワースライド装置がある。パワースライド装置においては、ナットを固定してボルトを回転させてボルトに対してナットを軸方向に移動、あるいは、ボルトを固定してナットを回転させてナットに対してボルトを軸方向に移動させる方法がある。ボルト及びナットの一方を車両側で支持し、他方をシート側で支持することにより、ボルト及びナットの少なくとも一方を回転させることにより、軸方向の相対位置は変化し、シートをボルトの軸方向に対してスライドさせることができる。
【0003】
特許文献1は、車両用電動パワーシートのトランスミッション構造を開示している。車両フロア側のロワーレールにナットが固設され、該ナットと螺合したリードスクリュがシートクッション側のアッパレールに回転可能に取付けられている。トランスミッション部がリードスクリュの先端位置に設けられ、駆動モータの動力はトランスミッションを介してリードスクリュに伝達される。このような機構により、リードスクリュを回転させてシートを前後にスライドさせる構成が開示されている。
【0004】
特許文献2が開示する自動車シート軌道システムは、下方軌道(ロアレール)にパワースクリュー(ボルト)を固設し、上方軌道(アッパレール)にナットが回転可能に支持されている。電動機の動力は運動伝達装置を介してナットに伝達され、ナットの回転によってシートを前後に移動させる。電動機と運動伝達装置(ギアボックス)は上方軌道の長手方向の中間位置の開口部に配置されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−49903号公報
【特許文献2】特許第5080277号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている車両用電動パワーシートにおいては、トランスミッション部分がアッパレールの先端付近で、シートクッションの斜め前方に突出して配置される。このため、搭乗者が車両への乗降時に足が引掛かるなど乗降性を阻害するとともに、シート回りのデザインの自由度を狭め、デザイン性を悪化させるなどの課題を有している。
【0007】
特許文献2の自動車シート軌道システムにおいては、ギアボックスと電動機及び左右の上方軌道(アッパレール)を連結するケーブルが2つの上方軌道の間の前後方向の中間付近の空間に配置される。この位置は搭乗者がシートに着座したときの臀部位置でありシートクッションが最も低くなる位置である。そのため、特に、搭乗者の着座時のシートクッションが最も低くなる場合に、左右の2組の上方下方軌道の内側に配置されるモータやケーブルと干渉しないようにシートクッションを配置する必要がある。このためシートクッションの位置を高くする必要がありシート位置の低い車両への搭載に制約があり、シート回りの、ひいては自動車のデザインの自由度を阻害するという課題を有している。
本発明は、車両のシートスライド装置に関する上記の課題を回避し、搭乗者の乗降性の悪化を招くことなく、シートデザインの自由度を低下させることがない、シート内の空間を有効に活用したシートスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシートスライド装置は、車両のフロアに対しシートをスライドさせるシートスライド装置であって、シートを車両のフロアに対し一方向にスライド移動可能に支持するスライド支持手段と、前記シートを前記フロアに対して前記一方向に移動させ、位置決めする移動位置決め手段と、回転駆動手段と、該回転駆動手段からの回転動力を伝達する回転シャフトと、前記回転シャフトの回転軸が前記シートの移動方向と平行な状態で該回転シャフトと接続し、前記回転動力を前記移動位置決め手段に伝達する動力伝達手段と、を有し、前記スライド支持手段は、車両の前記フロアに固定されたロアレールと、該ロアレールに対しスライド可能に支持され前記シートが固定されたアッパレールと、を有し、前記移動位置決め手段は、前記ロアレールに固定されたリードスクリュと、該リードスクリュに螺合し回転可能に前記アッパレールに支持されたナット部材と、を有し、前記回転駆動手段は前記アッパレールに対し固定されたモータであり、前記回転シャフトはフレキシブルワイヤであり、前記動力伝達手段は、前記リードスクリュの軸と平行な回転軸を有する1以上のギアで構成され、前記ギアの1つは前記フレキシブルワイヤと同軸で接続し、前記ギアの1つは前記ナット部材の外周に形成されたギアと係合する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の特徴を有する本発明のシートスライド装置は、搭乗者の着座時においてシートクッションが最も下がった状態でもシートスライド装置と干渉することがないため、シートクッションの位置が低い車両への適用も可能である。また、搭乗者の乗降性の悪化を招くようなシートクッションからの突出部も有さない。これにより、本発明のシートスライド装置は、デザインの自由度を低下させることがない、シート内の空間を有効に活用したシートスライド装置を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシートスライド装置を適用する車両シートを側面から見た概略図
図2】第1の実施例のシートスライド装置の全体斜視図
図3】第1の実施例のシートスライド装置を側方から見た図
図4】第1の実施例のシートスライド装置を前方から見た図
図5】第1の実施例のシートスライド装置のギアボックスの断面図
図6】第1の実施例のシートスライド装置の分解斜視図
図7】第1の実施例のシートスライド装置のギアボックスの分解斜視図
図8】第2の実施例のシートスライド装置の全体斜視図
図9】第2の実施例のシートスライド装置の要部の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明のシートスライド装置の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に、本発明の第1の実施例に係るシートスライド装置1を含む車両用のシート2を側面から見た概略図を示す。
【0013】
車両のシート2は、搭乗者の臀部が乗る座部であるシートクッション2aと、背部であるシートバック2bとを含む。シートクッション2aは、本発明のシートスライド装置1を介して車両のフロア3に支持されている。シートスライド装置1は、車両の前後方向にその長手軸方向を有するように配置された、ロアレール4とアッパレール5の対からなる2つのレールユニット1a、1b(スライド支持手段)を含む。ロアレール4は車両のフロア3に固定され、アッパレール5はシートクッション2aの左右両側に固定されている。ロアレール4とアッパレール5は相対的にスライド可能であり、それにより、シートの前後方向のスライド機能を実現している。
【0014】
図2に本発明の第1の実施例に係るシートスライド装置の全体斜視図を示す。また、図3に第1の実施例のシートスライド装置を側方から見た図、図4に前方から見た図を示す。本発明のシードスライド装置は、その左右の構成はモータ10を除いてほぼ鏡像関係で構成されている。以後、特に説明のない限り、左側のレールユニット1a側を中心に説明する。
【0015】
スライド支持手段であるロアレール4とアッパレール5は、組み合された状態で形成される空間内(図5中のS1、S2)に摺動材としての複数のボール4aを挟持することにより、車両の前後方向に相対的に移動可能に組み合わされる。この組み合わされた状態で、ロアレール4は車両フロア3に固設され、アッパレール5にはシート2のシートクッション2aが固設されるため、シート2は、車両フロア3に対する前後方向にスライドすることが可能となる。
【0016】
ロアレール4には、外周に雄ネジ部が形成されているリードスクリュ6が固定される。アッパレール5はナット部材7を回転可能に支持し、ナット部材7の内径部に形成された雌ネジ部88はリードスクリュ6の外周の雄ネジ部と螺合する。リードスクリュ6とナット部材7は、シートをフロアに対して一方向に移動させ、位置決めする手段としての、移動位置決め手段を構成する。
【0017】
ロアレール4とアッパレール5の対で構成されるレールユニット1a、1bを2つ有し、シート2の左右に、その長手方向が車両の略前後方向と一致するように配置されている。右側のレールユニット1a、左側のレールユニット1bの2つのアッパレール4は、前側においてブラケット11により相互に接続される。
【0018】
回転駆動手段であるモータ10がブラケット11に固定される。従って、モータ10のアッパレール5に対する位置は固定され、すなわち、アッパレール5に固定されたシートクッション2aに対するモータ10の位置も固定される。モータ10の動力はフレキシブルワイヤ9(回転シャフト)を介してアッパレール5に固定された動力伝達手段であるギアボックス8内のギアに伝達される。
【0019】
ギアボックス8の構成を、図5のギアボックス8の断面図、図6のシートスライド装置の分解斜視図、図7のギアボックスの分解斜視図を参照しながら説明する。
【0020】
ギアボックス8は、リードスクリュ6の軸及びフレキシブルワイヤ9の軸と平行な回転軸を有する第1ヘリカルギア82a、第2ヘリカルギア82bを含み、ナット部材7の外周に形成されたヘリカルギア82cと係合する。
【0021】
ギアボックス8は、第1ヘリカルギア82a、第2ヘリカルギア82b、第3ヘリカルギア82c、軸受ブッシュ85、ワッシャー84等を、第1のハウジング81aと第2のハウジング81bで形成する空間内に収容して形成される。フレキシブルケーブル9はインナケーブル92がアウタチューブ91の中を回転可能な2層構造をなしている。フレキシブルワイヤ9は、インナケーブル92によってモータ10から動力を伝達する。インナケーブル92の先端部92aの断面形状は、第1ヘリカルギア82aに形成された四角穴87に嵌合する形状(本実施例では四角形)に形成されている。インナケーブル92の先端部92aが第1ヘリカルギア82aの四角穴87に挿入されることにより、インナケーブル92の回転は第1ヘリカルギア82aに伝達される。第1ヘリカルギア82aは歯数が極端に少ない(歯数は2)ヘリカルギアである。
【0022】
第3ヘリカルギア82cは、ナット部材7の外周に形成されたヘリカルギアである。すなわち、第3ヘリカルギア82cの軸方向はスクリュナット6の軸方向と平行である。第2のヘリカルギア82bは第1のヘリカルギア82aと第3のヘリカルギア82cに噛み合う。本実施例では第2ヘリカルギア82bの歯数は12であり、第3ヘリカルギア82cの歯数は12である。
【0023】
ワッシャー84は第3ヘリカルギア82cの両側面に配置されてハウジング内に収容される。第1のハウジング81aと第2のハウジング81bはひとつに組み合わされた後、締結リング83で締結することによって、ギアボックス8として一体化された構成となる。
【0024】
アッパレール5は、前後方向のほぼ中間に開口部5aを有する。一体に組み上げられ、上部保持ブラケット80aと下部保持ブラケット80bで上下を保持されたギアボックス8は、開口部5aに挿入される。
【0025】
アッパレール5とロアレール4とが組み合わされて形成される空間内において、アッパレール5の開口部5aから挿入されたギアボックス8の第3ヘリカルギア82c(ナット部材7)のナット部88に、リードスクリュ6が螺合する。リードスクリュ6の後端部にスクリュ保持ブラケット6bが溶接で固定され、リードスクリュ6の前端部にスクリュ保持ブラケット6aがナット6cによって固定される。スクリュ保持ブラケット6aはボルト6dによってロアレール4に固定される。
【0026】
左右のアッパレール5は、その前部がナット5dよってブラケット11の長手方向端部と締結される。これにより、左右のレールユニット1a,1bのアッパレール5及びブラケット11は一体となって前後方向にスライド移動する。ブラケット11の中央付近にモータ軸がアッパレール5の長手方向(前後方向)と略垂直(ブラケット11の長手方向に略平行)になるようにモータ10が固定される。本実施例で例示するモータ10は、両側に出力軸を有するタイプのモータ(二重シャフトモータ)で、両側から突出する駆動軸にはフレキシブルワイヤ9のインナケーブル92の先端部92aが挿入される四角穴が設けられている。モータの駆動軸とフレキシブルワイヤ9のインナケーブル92とは同軸で接続される。
【0027】
以上の構成(レールユニット1a,1bおよびギアボックス8等)が左右対称に配置されて、シートスライド装置が構成される。
【0028】
〈シートスライド装置の動作〉
モータ10の動力は、フレキシブルケーブル9を介してアッパレール5に保持されたギアボックス8に内包された第1ヘリカルギア82aに伝達される。第1ヘリカルギア82aの回転は、第2ヘリカルギア82a、第3ヘリカルギア82cに伝達される。本実施例において、第1ヘリカルギア82a、第2ヘリカルギア82a、第3ヘリカルギア82c、それぞれの歯数は、2、12、12であるので、減速比は6となり、第3ヘリカルギア82cはモータ10の1/6の回転数で回転する。第3ヘリカルギア82c(ナット部材7)の雌ネジ部88はロアレール4に固定されたリードスクリュ6と螺合しているため、伝達された動力によりアッパレール4はロアレール4に対して前後方向にスライドして移動する。
【0029】
モータ10の出力軸は両側にあるため、他方側(右側)のレールユニット1bに対しても回転が伝達され、左右のアッパレール5は一体となって前後方向にスライドして移動する。
【0030】
なお、左右の第1ヘリカルギア82aに伝達される回転の方向は互いに反対になるため、第1、第2、第3ヘリカルギア82a、82b、82c、ナット部材7の雌ネジ部88、リードスクリュ6は、互いに逆ネジの関係で構成する必要がある。
【0031】
本実施例のシートスライド装置により、アッパレールに前後方向において固定されたナット部分にモータの動力を伝達する手段(本実施例におけるギアボックス8及びフレキシブルワイヤ9)は、2つのレールユニットの間の方向には突出しない。すなわち、ギアボックス8は、リードスクリュ6(アッパレール5)の長手方向(前後方向)と平行な軸を有するギアから構成され、フレキシブルワイヤ9は、アッパレール5に沿った前方からギアボックス8内のギア(第1ヘリカルギア82a)と同軸で嵌合する構成をとる。従って、シートに搭乗者が着座したときのシートクッション2aが最も下降する臀部位置の下の空間で、フレキシブルワイヤ9が取り回されることなく、あるいはその空間にフレキシブルワイヤ9を突出させることなくシートスライド機構を構成することができる。このため、シート2の座席高さを低くする等のデザインが必要な場合にも、デザインの自由度を阻害することがない。
【0032】
また、本実施例のシートスライド装置1では、左右のアッパレール5の前部を互いに連結するブラケット11の中央付近にモータ10が固定されている。すなわち、シートクッション2aの前部に固定されたブラケット上にモータ10は固定される。シートクッション2aの前部は、搭乗者がシート2に着座した状態において、両足の膝下中央に対応する位置であり、シートクッション2bの下において、自由に活用できるスペースを有する場所である。このため、搭乗者が乗降する際に足が当たる等の乗降性を阻害することもない。
【0033】
上述したように、本発明のシートスライド装置は次の特徴的な構成を有する。左右のアッパレール5の前部を連結するブラケット11の中央付近にモータ軸がブラケット11の長手方向と略平行となるようにモータ10が固定される。アッパレール5の長手方向中央付近にアッパレール5の長手方向と平行となる軸のギアボックス8を有する。フレキシブルワイヤ9の両端部92aがモータ10の出力軸及びギアボックス8内の第1ヘリカルギア82aの軸部に挿入される。これらの特徴的な構成を有することにより、本発明のシートスライド装置1では、ブラケット11に沿うようにフレキシブルワイヤ9の一端はモータ10と接続され、フレキシブルワイヤ9の他端はアッパレール5に沿うように配置されてギアボックス8と接続される。したがって、シートクッション2aの搭乗者の臀部が乗る位置の下であって、左右のレールユニットの間に、シートスライド装置の構成要素が突出して配置されることはない。
【実施例2】
【0034】
本発明の第2の実施例に係るシートスライド装置を添付の図面を参照しながら説明する。
第1の実施例と同様である構成については説明を省略し、第1の実施例とは異なる部分について、添付の図を参照しながら説明する。
【0035】
図8に第2の実施例に係るシートスライド装置の全体の斜視図を示す。
ロアレール4とアッパレール5の対で構成されるレールユニット1a、1bを2つ有し、シート2の左右に、その長手方向が車両の略前後方向と一致するように配置されている。右側のレールユニット1a、左側のレールユニット1bの2つのアッパレール4は、前側においてブラケット11により相互に接続される。
【0036】
モータ100がブラケット11に固定される。従って、モータ100のアッパレール5に対する位置は固定され、すなわち、アッパレール5に固定されたシートクッション2aに対するモータ100の位置も固定される。モータ100の動力はフレキシブルワイヤ9を介してアッパレール5に固定された第1のギアボックス800内のギアに伝達される。本実施例のシートスライド装置では、モータ100とフレキシブルワイヤ9との間の動力伝達手段の構成、及び、フレキシブルワイヤ9とナット部材7との間の動力伝達手段の構成が第1の実施例とは異なる。詳細は後述する。
【0037】
第1のギアボックス800の構成を、図9のシートスライド装置の要部の分解斜視図を参照しながら説明する。
【0038】
第1のギアボックス800は、リードスクリュ6の軸及びフレキシブルワイヤ9の軸と平行な回転軸を有する第1歯車802a、第2歯車802bを含む。第2歯車802bは、ナット部材7の外周にギア歯が形成されて構成される。
【0039】
第1のギアボックス800は、第1歯車802a、第2歯車802b、ワッシャー805等を第1のハウジング801aと第2のハウジング801bで形成する空間部に収容して形成される。フレキシブルワイヤ9は、アウタチューブ91に回転可能に収容されたインナケーブル92によってモータ100から動力を伝達する。インナケーブル92の先端部92aの断面形状は、第1歯車802aに形成された四角穴806に嵌合する形状に形成されている。インナケーブル92の先端部92aが第1歯車802aの四角穴806に嵌合し、インナケーブル92の回転は第1歯車802aに伝達される。第1歯車802aは、その軸方向がアッパレール5とほぼ平行となるように配置される。
【0040】
第2歯車802bは、ナット部材7の外周にギア歯が形成された歯車なので、第2歯車802bの軸方向はスクリュナット6の軸方向と平行である。本実施例においては、第1歯車802aの歯数は14、第2歯車802bの歯数は16であるので、第1のギアボックスでの減速比は1.14(=16/14)である。
【0041】
第2歯車802bはその両側面にワッシャー805を配置して、第1のハウジング801aと第2のハウジング801bで構成されるハウジング内に収容される。第1のハウジング801aと第2のハウジング801bは組み合わされた後、ボルト803とナット804で前後方向から締結されて、ギアボックス800として一体化された構成となる。アッパレール5の前後方向のほぼ中間に形成された開口部5aに、一体に組み上げられたギアボックス800は挿入される。アッパレール5とロアレール4とが組み合わされて形成される空間内において、アッパレール5の開口部5aから挿入されたギアボックス800内の第2歯車802b(ナット部材7)のナット部807に、リードスクリュ6が螺合する。リードスクリュ6は第1の実施例と同様にロアフレーム4に固定される。
【0042】
左右のアッパレール5は、その前部がナット5dによってブラケット11の長手方向端部と締結される。これにより、左右のレールユニット1a,1bのアッパレール5及びブラケット11は一体となって前後方向にスライド移動する。ブラケット11の中央付近にモータ軸がアッパレール5と略平行(ブラケット11の長手方向に略垂直)になるようにモータ100が固定される。
【0043】
本実施例においては、モータ100の動力は第2のギアボックス850を介してフレキシブルケーブル9に伝達される。第2のギアボックス850は、モータ100の出力軸と嵌合するウォームギア852aと、フレキシブルケーブル9のインナケーブル92の先端部が軸部に嵌合するウォームホイールギア852bとを有する。ウォームギア852aとウォームホイールギア852bは、回転軸が互いに直交して配置され、本実施例におけるシートスライド装置において減速機構を構成する。本実施例の構成では、ウォームギア852aは2条、ウォームホイールギア852bは16歯、であるので、第2のギアボックス850の減速比は8(=16/2)である。
【0044】
ウォームギア852aは軸受ブッシュ856で支持された状態で、ウォームホイールギア852bはワッシャー853を介した状態で、第1のハウジング851a及び第2のハウジング851b内に収容され、第2のギアボックス850が構成される。
【0045】
モータ100の出力軸には不図示の四角穴が設けられ、四角形の断面形状を有する軸855の一端が嵌合する。軸855の他端はウォームギア852aの四角穴に嵌合し、モータ100の動力は軸855を介してウォームギア852aに伝達される。
【0046】
ウォームホイールギア852bの軸の両側面には四角穴が設けられ、フレキシブルワイヤ9のインナケーブル92の四角軸が嵌合する。従って、フレキシブルワイヤ9は、モータ保持ブラケット11に沿うように配置されて、フレキシブルワイヤ9の一端は第2のギアボックス850と接続する。
【0047】
以上の構成(レールユニット1a,1bおよびギアボックス8等)が左右対称に配置されて、シートスライド装置が構成される。
【0048】
〈シートスライド装置の動作〉
モータ100の回転は、軸855を介してウォームギア852aに伝達される。ウォームギア852aの回転は、ウォームホイールギア852bに伝達され、回転軸が90度変換されるとともに減速され、ウォームホイールギア852bからフレキシブルケーブル9に伝達される。フレキシブルケーブル9によって第1歯車802aが回転し、第1歯車と螺合する第2歯車802b(ナット部材7)が回転する。第1のギアボックス800の減速比8と第2のギアボックス850の減速比1.14により、ナット部材7はモータ100の1/9.12の回転数で回転する。第2歯車802b(ナット部材7)の雌ネジ部はロアレール4に固定されたリードスクリュ6と螺合しているため、アッパレール4はロアレール4に対して前後方向にスライドして移動する。
【0049】
ウォームホイールギア852bはその両側において、フレキシブルワイヤ9と嵌合し、左右両側のレールユニット1a、1bに対してモータ100の動力が伝達され、左右のアッパレール5は前後方向にスライドして移動する。
【0050】
なお、本実施例においても、左右の第1歯車802aに伝達される回転の方向は互いに反対になるため、ナット部材7の雌ネジ部88,リードスクリュ6のネジ方向は互いに鏡像関係となるよう逆ネジの関係で構成する必要がある。
【0051】
本実施例のシートスライド装置においても、アッパレールに前後方向において固定されたナット部分にモータの動力を伝達する手段(本実施例におけるギアボックス800及びフレキシブルワイヤ9)は、2つのレールユニットの間の方向に突出しない。すなわち、ギアボックス800は、リードスクリュ6(アッパレール5)の長手方向(前後方向)と平行な軸のギアから構成され、フレキシブルワイヤ9は、アッパレール5に沿った前方からギアボックス8内のギア(第1歯車802a)と同軸で嵌合する構成をとる。従って、シートに搭乗者が着座したときのシートクッション2aが最も下降する臀部位置の下の空間で、フレキシブルワイヤ9が取り回されることなく、あるいはその空間にフレキシブルワイヤ9を突出させることなくシートスライド機構を構成することができる。このため、シート2の座席高さを低くする等のデザインが必要な場合にも、デザインの自由度を阻害することがない。
【0052】
また、本実施例のシートスライド装置1では、左右のアッパレール5の前部を互いに連結するモータ保持ブラケット11の中央付近にモータ100が固定されている。すなわち、シートクッション2aの前部に固定されたブラケット上にモータ100は固定される。シートクッション2aの前部は、搭乗者がシート2に着座した状態において、両足の膝下中央に対応する位置であり、シートクッション2bの下において、最もフリースペースを有する場所である。このため、搭乗者が乗降する際に足が当たる等の乗降性を阻害することもない。
【0053】
上述したように、本発明のシートスライド装置は次の特徴的な構成を有する。左右のアッパレール5の前部を連結するブラケット11の中央付近にモータ100が固定される。モータ100の出力は、ブラケット11上に固定された第2のギアボックス850を介して、ブラケット11の長手方向に回転軸方向を有するウォームホイールギア852bの回転に変換される。アッパレール5の前後方向中央付近にアッパレール5の長手方向と平行軸の第1のギアボックス800を有する。フレキシブルワイヤ9の端部92aは、第1のギアボックス800内の第1歯車及びウォームホイールギア852bの軸部と、同軸で接続される。この特徴的な構成を有することにより、本発明のシートスライド装置1では、モータ保持ブラケット11に沿うようにフレキシブルワイヤ9の一端は第2のギアボックス850と接続し、フレキシブルワイヤ9の他端はアッパレール5に沿うように配置されて第1のギアボックス800と接続する。したがって、シートクッション2aの搭乗者の臀部が乗る位置の下で、左右のレールユニットの間に、シートスライド装置の構成要素が突出して配置されることはない。
【0054】
第2の実施例において、モータ100とフレキシブルワイヤ9は、ウォームギア852aとウォームホイールギア852bとにより動力伝達手段を構成したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、第1の実施例のギアボックス8と同様に、入力軸と出力軸が平行なギアボックスを使用し、ブラケット11の長手方向(左右方向、レールユニットの長手方向に垂直な方向)と回転軸が平行となるようにモータを設置するようにしてもよい。
【0055】
また、第1の実施例及び第2の実施例において、減速機構を介してモータの動力をナット部材7に伝達する構成を例示したが、本発明はこれに限定されることはない。
【0056】
なお、この明細書内での記載における「前」「後」「右」「左」「上」「下」に関する言及は、発明の説明において位置関係を明確に記載するための便宜的な表現であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0057】
1:シートスライド装置
1a、1b:レールユニット
2:シート
3:フロア
4:ロアレール(スライド支持手段)
5:アッパレール(スライド支持手段)
6:リードスクリュ(移動位置決め手段)
7:ナット部材(移動位置決め手段)
8:ギアボックス(動力伝達手段)
9:フレキシブルワイヤ(回転シャフト)
10:モータ(回転駆動手段)
図1
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