(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピッチ数がnである場合に、前記車両装着内側におけるピッチ長比Pik−1/Pik(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)と、前記車両装着外側におけるピッチ長比Pok−1/Pok(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記車両装着内側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pi1と最小ピッチ長Pinとの比Pi1/Pinと、前記車両装着外側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Po1と最小ピッチ長Ponとの比Po1/Ponとの少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から4)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0010】
[基本形態]
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。
【0011】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。同図に示す空気入りタイヤ1は、車両装着方向が指定されており、同図においては、タイヤ赤道面CLよりも左側が車両装着内側TIであり、タイヤ赤道面CLよりも右側が車両装着外側TOである。また、空気入りタイヤ1は、トレッド部10を有している。トレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部10の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド表面12として形成されている。
【0013】
トレッド表面12には、
図1に示すように、タイヤ周方向に延在する溝14、16、18と、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝20、22、24、26、28と、サイプ30とがそれぞれ設けられ、同図に示すトレッドパターンが形成されている。溝14から28及びサイプ30の具体的構成は、以下のとおりである。
【0014】
即ち、トレッド表面12には、タイヤ周方向に延在する周方向主溝14(車両装着内側TIかつタイヤ幅方向内側の周方向主溝14a、車両装着内側TIかつタイヤ幅方向外側の周方向主溝14b、車両装着外側TOかつタイヤ幅方向内側の周方向主溝14c、車両装着外側TOかつタイヤ幅方向外側の周方向主溝14d)が設けられている。周方向主溝14bのタイヤ幅方向外側には、周方向主溝14bよりも幅狭の周方向副溝16aが設けられている。周方向主溝14dのタイヤ幅方向外側には、周方向主溝14dよりも幅狭の周方向副溝16bが設けられている。周方向副溝16bのさらにタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向で断続的に延在し、周方向副溝16bと同様に幅狭の周方向断続溝18が設けられている。
【0015】
また、トレッド表面12には、周方向副溝16aのさらにタイヤ幅方向外側に、タイヤ周方向に対して傾斜してタイヤ周方向で断続的に延在し、周方向副溝16aと同様に幅狭の傾斜断続溝20が設けられている。周方向主溝14bのタイヤ幅方向内側から延在して周方向主溝14bと隣接する陸部内で終端し、タイヤ周方向に対して傾斜する、複数の傾斜溝22が設けられている。周方向主溝14cのタイヤ幅方向外側から延在して周方向主溝14cと隣接する陸部内で終端し、タイヤ周方向に対して傾斜する、複数の傾斜溝24が設けられている。周方向細溝16aと交差するとともに、タイヤ幅方向内側端部は周方向副溝16aに隣接する陸部内で終端し、かつ、タイヤ幅方向外側端部は周方向断続溝20よりもタイヤ幅方向外側まで延在する、複数の傾斜溝26が設けられている。周方向副溝16bよりもタイヤ幅方向外側に、周方向断続溝18のタイヤ幅方向領域と交差して、タイヤ周方向に対して傾斜する、複数の傾斜溝28が設けられている。
【0016】
さらに、周方向主溝14bからタイヤ幅方向内側に延在して陸部内で終端するサイプ30aが、傾斜溝22とタイヤ周方向で交互に設けられている。タイヤ周方向に隣り合う傾斜溝24、24のタイヤ幅方向最外側部付近同士の間に延在し、タイヤ幅方向外側に凸状となる、複数のサイプ30bが設けられている。周方向副溝16aからタイヤ幅方向外側に延在して陸部内で終端するサイプ30cが、傾斜溝26とタイヤ周方向で交互に設けられている。周方向主溝14dから周方向副溝16bを超えてタイヤ幅方向外側に延在して陸部内で終端するサイプ30dと、傾斜溝28から周方向副溝16bを超えてタイヤ幅方向内側に延在して陸部内で終端するサイプ30eとが、タイヤ周方向で交互に設けられている。
【0017】
このような前提の下、
図1に示す例においては、車両装着内側TIでは、タイヤ幅方向最外側に位置する周方向主溝14bよりもタイヤ幅方向外側の領域において、傾斜溝26と、傾斜溝26にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有する。
【0018】
図2は、
図1に示すトレッド部の車両装着内側TIの一部を示す平面図である。なお、
図2に示す各溝の配列態様(特にタイヤ周方向長さ比)は、
図1においては正確には反映されておらず、車両装着内側TIにおける各溝の配列態様については、
図2に従うものとする。
図2に示す例において、車両装着内側TIにおけるタイヤ周方向ピッチ長とは、傾斜溝26(26a、26b、26c、....)のいずれか、例えば傾斜溝26aに着目した場合に、傾斜溝26aのタイヤ周方向の一方(例えば、
図2の紙面の下側)の端部から、当該傾斜溝26aとタイヤ周方向において隣り合う同一形状の分岐溝26bのタイヤ周方向の一方(例えば、
図2の紙面の下側)の端部までの、タイヤ周方向寸法をいう。
【0019】
ここで、タイヤ周方向ピッチ長を特定する上で基準とする傾斜溝は、
図2に示す傾斜溝26に限らず、同図に示す他の傾斜溝20やサイプ30cであってもよい。
【0020】
図2に示す例では、トレッドパターンが、車両装着内側TIにおいて、3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有する。例えば、基準となる傾斜溝を傾斜溝26(傾斜溝26a、傾斜溝26b、傾斜溝26c)とした場合に、ピッチ長Pi(基準:傾斜溝26a)、ピッチ長Pi´(基準:傾斜溝26b)、ピッチ長Pi´´(基準:傾斜溝26c)の3つのピッチ長を有する。
【0021】
そして、本実施の形態においては、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Piを大きいものから順にPi1、Pi2、Pi3、...、Pinとしたときに、Pi1/Pi2≦Pi2/Pi3≦、...、≦Pin−1/Pin(第1要件)、かつ、Pi1/Pi2<Pin−1/Pin(第2要件)の関係が成立する。
図2に示す例では、ピッチ長Pi、ピッチ長Pi´、ピッチ長Pi´´の順に大きいので、上記Piがピッチ長Pi1に、上記Pi´がピッチ長Pi2に、上記Pi´´がピッチ長Pi3にそれぞれ相当し、Pi/Pi´≦Pi´/Pi´´、かつ、Pi/Pi´<Pi´/Pi´´の関係、即ち単に、Pi/Pi´<Pi´/Pi´´の関係が成立する。
【0022】
また、
図1に示す例においては、車両装着外側TOでは、タイヤ幅方向最外側に位置する周方向主溝14dよりもタイヤ幅方向外側の領域において、傾斜溝28と、傾斜溝28にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有する。
【0023】
図3は、
図1に示すトレッド部の車両装着外側TOの一部を示す平面図である。なお、
図3に示す各溝の配列態様(特にタイヤ周方向長さ比)は、
図1においては正確には反映されておらず、車両装着外側TOにおける各溝の配列態様については、
図3に従うものとする。
図3に示す例において、車両装着外側TOにおけるタイヤ周方向ピッチ長とは、傾斜溝28(28a、28b、28c)のいずれか、例えば傾斜溝28aに着目した場合に、傾斜溝28aのタイヤ周方向の一方(例えば、
図3の紙面の下側)の端部から、当該傾斜溝28aとタイヤ周方向において隣り合う同一形状の傾斜溝28bのタイヤ周方向の一方(例えば、
図3の紙面の下側)の端部までの、タイヤ周方向寸法をいう。
【0024】
ここで、タイヤ周方向ピッチ長を特定する上で基準とする溝は、
図3に示す傾斜溝28限らず、同図に示す周方向断続溝18やサイプ30d、30eであってもよい。
【0025】
図3に示す例においては、車両装着外側TOにおいて、3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有する。例えば、基準となる溝を傾斜溝28(傾斜溝28a、28b、28c)とした場合に、ピッチ長Po(基準:傾斜溝28a)、ピッチ長Po´(基準:傾斜溝28b)、ピッチ長Po´´(基準:傾斜溝28c)の3つのピッチ長を有する。
【0026】
そして、本形態の形態においては、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Poを大きいものから順にPo1、Po2、Po3、...、Ponとしたときに、Po1/Po2≦Po2/Po3≦、...、≦Pon−1/Pon(第3要件)、かつ、Po1/Po2<Pon−1/Pon(第4要件)の関係を満たす。
図3に示す例では、ピッチ長Po、ピッチ長Po´、ピッチ長Po´´の順に大きいので、上記Poがピッチ長Po1に、上記Po´がピッチ長Po2に、上記Po´´がピッチ長Po3にそれぞれ相当し、Po/Po´≦Po´/Po´´、かつ、Po/Po´<Po´/Po´´の関係、即ち単に、Po/Po<Po´/Po´´の関係が成立する。
【0027】
さらに、
図1に示す例においては、車両装着内側TIにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Pi1と最小ピッチ長Pinとの比Pi1/Pinと、車両装着外側TOにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Po1と最小ピッチ長Ponとの比Po1/Ponと、が、Pi1/Pin<Po1/Pon(第5要件)の関係を満たす。
【0028】
具体的には、
図2、3示す各ピッチ長によれば、車両装着内側TIにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Piと最小ピッチ長Pi´´との比Pi/Pi´´と、車両装着外側TOにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Poと最小ピッチ長Po´´との比Po/Po´´とが、Pi/Pi´´<Po/Po´´の関係を満たす。
【0029】
(作用等)
上述のとおり、
図1に示す空気入りタイヤ1では、車両装着内側TI及び車両装着外側TOのいずれにおいても、複数の周方向ピッチ長が規定され、これに基づいて、これらのピッチ長のうち、値の近いもの同士の商(除算による結果)を複数算出し、これらの商の大小関係が規定されている。また、上記複数の周方向ピッチ長に基づいて、最大ピッチ長側での上記商と最小ピッチ長側での上記商との大小関係も規定されている。より具体的には、
図1に示す空気入りタイヤでは、車両装着内側TI及び車両装着外側TOのいずれにおいても、周方向ピッチ長の大きい側では、値の近い周方向ピッチ長同士の商を小さくなる傾向に、逆に、周方向ピッチ長の小さい側では、値の近い周方向ピッチ長同士の商を大きくなる傾向に規定している。また、車両装着内側TI及び車両装着外側TOのいずれにおいても、最大ピッチ長側での上記商が、最小ピッチ長側での上記商よりも小さく規定されている。
【0030】
即ち、上記第1要件及び第2要件により、車両装着内側TIにおいて、最大ピッチ長を小さくして、タイヤ周方向におけるピッチ長のばらつきを小さくしている。同様に、上記第3要件及び第4要件により、車両装着外側TOにおいても、最大ピッチ長を小さくして、タイヤ周方向におけるピッチ長のばらつきを小さくしている。
【0031】
これにより、加硫時に、各ピッチ長に対応する各タイヤ周方向領域に、同じ体積の金型凸部を用いて同じ体積の溝を形成する場合に、各タイヤ周方向領域において陸部のタイヤ径方向外側への盛り上がり程度が過度に異なることを抑制することができる。その結果、製品タイヤにおける溝下ゲージ(溝底からトレッドゴムのタイヤ径方向最内側までのタイヤ径方向寸法)をより均一にすることができ、ひいては、フォースバリエーションのうち、例えば上下力の変動(Radial Force Variation)を抑制し、ユニフォミティに関する性能を改善することができる。
【0032】
次に、
図1に示す空気入りタイヤ1では、上記第5要件により、最大ピッチ長と最小ピッチ長との比を、車両装着外側TOよりも車両装着内側TIで小さくしている。
【0033】
これにより、車両装着内側TIと車両装着外側TOとを比べた場合に、摩耗量の多い車両装着内側TIにおいては、最小ピッチ長を比較的大きくするとともに最大ピッチ長を比較的小さくしてタイヤ周方向全体としてピッチ長差を抑えて剛性差を小さくしている。その結果、耐偏摩耗性能を改善することができる。
【0034】
また、車両装着内側TIと車両装着外側TOとを比べた場合に、車室外で計測する通過音に影響を及ぼす可能性の高い車両装着外側TOにおいては、最小ピッチ長を比較的小さくするとともに最大ピッチ長を比較的大きくして複数のピッチ長を全体としてばらつかせている。その結果、ノイズ性能(通過音に関する)を改善することができる。
【0035】
以上により、本実施の形態に係る空気入りタイヤは、車両装着内側及び車両装着外側における複数の周方向ピッチ長を制御するだけで、煩雑な設計によらずに、ユニフォミティに関する性能、耐偏摩耗性能、及びノイズ性能(通過音に関する)をバランス良く改善することができる。
【0036】
なお、以上に示す、本実施形態の空気入りタイヤは、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面と垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。本実施の形態の空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0037】
また、本実施の形態の空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。本実施の形態の空気入りタイヤを製造する場合には、特に、加硫用金型の内壁に、所望のピッチバリエーションを有するトレッドパターンに対応する凹部及び凸部を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
【0038】
[付加的形態]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から4を説明する。
【0039】
(付加的形態1)
基本形態においては、車両装着内側TIにおいて、タイヤ周上でのピッチ長Pi1のピッチ数が、タイヤ周上でのPinのピッチ数よりも多いこと(付加的形態1)が好ましい。これにより、車両装着内側TIにおいて、上記第1要件、第2要件及び第5要件を満たす上で影響の大きいピッチ長の最も大きい部分を多く含ませることができる。その結果、特に、ユニフォミティに関する性能と耐偏摩耗性能とをさらに改善することができる。
【0040】
(付加的形態2)
基本形態又は基本形態と付加的形態1とを組み合わせた形態においては、車両装着外側TOにおいて、タイヤ周上でのピッチ長Po1のピッチ数が、タイヤ周上でのPonのピッチ数よりも多いこと(付加的形態2)が好ましい。これにより、車両装着外側TOにおいて、上記第3要件、第4要件及び第5要件を満たす上で影響の大きいピッチ長の最も大きい部分を多く含ませることができる。その結果、特に、ユニフォミティに関する性能とノイズ性能(通過音に関する)とをさらに改善することができる。
【0041】
(付加的形態3)
基本形態又は基本形態と付加的形態1、2の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、ピッチ数がnである場合に、車両装着内側TIにおけるピッチ長比Pik−1/Pik(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)と、車両装着外側TOにおけるピッチ長比Pok−1/Pok(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲であること(付加的形態3)が好ましい。
【0042】
ピッチ長比Pik−1/Pikと、ピッチ長比Pok−1/Pokとの少なくとも一方を、1.05以上とすることで、この値が適用された車両装着内側TI、車両装着外側TOにおいては、寸法の近いピッチ長間の寸法をある程度異ならせることができる。これにより、これらの側TI、TOにおいて発生する音の周波数を分散させ、同じ周波数帯の音の増幅作用を抑制することができる。その結果、車両装着内側TIでは、車室内で計測するパターンノイズを小さくすることができ、ノイズ性能(パターンノイズに関する)を改善することができる。また、車両装着外側TOでは、車室外で計測する通過音をさらに小さくすることができ、ノイズ性能(通過音に関する)をさらに改善することができる。
【0043】
また、ピッチ長比Pik−1/Pikと、ピッチ長比Pok−1/Pokとの少なくとも一方を、1.20以下とすることで、この値が適用された車両装着内側TI、車両装着外側TOにおいては、寸法の近いピッチ長間の寸法が必要以上に異なることがない。これにより、これらの側TI、TOにおいて剛性が局所的に小さくなることを抑制することができる。その結果、摩耗量の多い車両装着内側TIでは、耐偏摩耗性能をさらに改善することができる一方、タイヤ転動時に負荷荷重差の大きい車両装着外側TOでは、乾燥路面での操縦安定性能を改善することができる。
【0044】
(付加的形態4)
基本形態又は基本形態に付加的形態1から3の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、車両装着内側TIにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Pi1と最小ピッチ長Pinとの比Pi1/Pinと、車両装着外側TOにおける、タイヤ周上での最大ピッチ長Po1と最小ピッチ長Ponとの比Po1/Ponとの少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲であること(付加的形態4)が好ましい。
【0045】
比Pi1/Pinと、比Po1/Ponとの少なくとも一方を、1.20以上とすることで、この値が適用された車両装着内側TI、車両装着外側TOにおいては、複数のピッチ長間にばらつきを持たせることができる。これにより、これらの側TI、TOにおいて発生する音の周波数を分散させ、同じ周波数帯の音の増幅を抑制することができる。その結果、車両装着内側TIでは、車室内で計測するパターンノイズを小さくすることができ、ノイズ性能(パターンノイズに関する)を改善さらにすることができる。また、車両装着外側TOでは、車室外で計測する通過音を小さくすることができ、ノイズ性能(通過音に関する)をさらに改善することができる。
【0046】
また、比Pi1/Pinと、比Po1/Ponとの少なくとも一方を、2.00以下とすることで、この値が適用された車両装着内側TI、車両装着外側TOおいては、複数のピッチ長間のばらつきが必要以上に大きくなることはない。これにより、これらの側TI、TOにおいて剛性が局所的に小さくなることを抑制することができる。その結果、摩耗量の多い車両装着内側TIでは、耐偏摩耗性能をさらに改善することができる一方、タイヤ転動時に負荷荷重差の大きい車両装着外側TOでは、乾燥路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【実施例】
【0047】
タイヤサイズを215/45R17 87Wとし、
図1から
図3に示すトレッドパターンを有し、ピッチ数が5であって、車両装着内側ピッチ長比(ピッチ比I)、車両装着外側ピッチ長比(ピッチ比O)、車両装着内側最大最小ピッチ長比(大小ピッチ比I)、車両装着外側最大最小ピッチ長比(大小ピッチ比O)、車両装着内側での最大ピッチ長数と最小ピッチ長数との大小関係(ピッチ数の大小関係I)、及び車両装着外側での最大ピッチ長数と最小ピッチ長数との大小関係(ピッチ数の大小関係O)が表1に示す値の、従来例及び実施例1から6の空気入りタイヤ(試験タイヤ)をそれぞれ作製した。
【0048】
このように作製した、各試験タイヤを17x7Jのリムに組み付けて、以下のように、ユニフォミティに関する性能、耐偏摩耗性能及びノイズ性能(通過音に関する)を評価した。これらの結果を表1に併記する。
【0049】
(ユニフォミティに関する性能)
各試験タイヤの空気圧を200kPaとし、ユニフォミティ試験機を用いて、各試験タイヤのRFV(Radial Force Variation:荷重変動のうち、上下力の変動)を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、ユニフォミティに関する性能が高いことを示す。
【0050】
(耐偏摩耗性能)
各試験タイヤの空気圧を230kPaとし、各試験タイヤを排気量1800CCのセダン型車両(フロントエンジン・フロントドライブ方式)に装着し、上記車両を10000km走行させた後のヒールアンドトー摩耗を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、耐偏摩耗性能が高いことを示す。
【0051】
(ノイズ性能)
各試験タイヤの空気圧を250kPaとし、各試験タイヤを排気量1800CCのセダン型車両(フロントエンジン・フロントドライブ方式)に装着し、欧州通過音規制に対応したEEC/ECEタイヤ単体騒音規制に基づく測定方法に準拠して通過音(dB)を測定(車室外計測)して従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、ノイズ性能(通過音に関する)が優れていることを示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(上記ピッチ比I、車両装着内側TIにおける最大ピッチ長側でのピッチ長比と最小ピッチ長側でのピッチ長比との大小関係(Pi1/Pi2とPi4/Pi5との大小関係)、上記ピッチ比O、車両装着外側TOにおける最大ピッチ長側でのピッチ長比と最小ピッチ長側でのピッチ長比との大小関係(Po1/Po2とPo4/Po5との大小関係)、及び上記大小ピッチ比Iと上記大小ピッチ比Oとの関係、が所定範囲内である)実施例1から実施例6の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の空気入りタイヤに比べて、ユニフォミティに関する性能、耐偏摩耗性能、及びノイズ性能(通過音に関する)がバランス良く改善されていることが判る。
【0054】
本発明は以下の態様を包含する。
【0055】
(1)車両装着方向が指定され、
タイヤトレッド部において、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本の主溝を備えるとともに、上記主溝と交差する複数本の傾斜溝を備え、車両装着内側では、タイヤ幅方向最外側に位置する上記主溝よりもタイヤ幅方向外側の領域において、上記傾斜溝と、上記傾斜溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Piを大きいものから順にPi1、Pi2、Pi3、...、Pinとしたときに、Pi1/Pi2≦Pi2/Pi3≦、...、≦Pin−1/Pin、かつ、Pi1/Pi2<Pin−1/Pinの関係を満たし、車両装着外側では、タイヤ幅方向最外側に位置する上記主溝よりもタイヤ幅方向外側の領域において、上記傾斜溝と、上記傾斜溝にタイヤ周方向の一方で隣り合う陸部とからなる領域における、タイヤ周方向ピッチ長について、少なくとも3つのピッチ長からなるピッチバリエーションを有し、ピッチ数をnとした場合に、それぞれのピッチ長Poを大きいものから順にPo1、Po2、Po3、...、Ponとしたときに、Po1/Po2≦Po2/Po3≦、...、≦Pon−1/Pon、かつ、Po1/Po2<Pon−1/Ponの関係を満たし、上記車両装着内側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pi1と最小ピッチ長Pinとの比Pi1/Pinと、上記車両装着外側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Po1と最小ピッチ長Ponとの比Po1/Ponと、が、Pi1/Pin<Po1/Ponの関係を満たす、空気入りタイヤ。
【0056】
(2)上記車両装着内側において、タイヤ周上でのピッチ長Pi1のピッチ数が、タイヤ周上でのPinのピッチ数よりも多い、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0057】
(3)上記車両装着外側において、タイヤ周上でのピッチ長Po1のピッチ数が、タイヤ周上でのPonのピッチ数よりも多い、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0058】
(4)ピッチ数がnである場合に、上記車両装着内側におけるピッチ長比Pik−1/Pik(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)と、上記車両装着外側におけるピッチ長比Pok−1/Pok(kは2からnまでの自然数のうちの少なくともいずれか)との少なくとも一方が、1.05から1.20の範囲である、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0059】
(5)上記車両装着内側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Pi1と最小ピッチ長Pinとの比Pi1/Pinと、上記車両装着外側における、タイヤ周上での最大ピッチ長Po1と最小ピッチ長Ponとの比Po1/Ponとの少なくとも一方が、1.20から2.00の範囲である、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。