(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。また、「〜」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0012】
本発明の半導体装置100について
図1を用いつつ説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態の半導体装置100を模式的に示した断面図である。
本発明の半導体装置100は、半導体素子101と、少なくとも一方の面に半導体素子101を搭載する樹脂基板102と、半導体素子101に設けられた電極パッド103と、樹脂基板102に設けられた接続端子105と電極パッド103とを接続する銅ワイヤ107と、半導体素子101および銅ワイヤ107を封止するエポキシ樹脂組成物の硬化体109と、を備える。
【0013】
本発明の半導体装置100は、樹脂基板102に含まれる窒素含量が、樹脂基板102に含まれる有機成分100質量%に対し、0.2質量%以上3.0質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上2.2質量%以下である。
ここで、樹脂基板102に含まれる有機成分とは、後述する熱硬化性樹脂(A)、カップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、有機充填材などの有機化合物である。
無機充填材(B)、接続端子などの金属回路、ガラスクロス等の無機繊維基材、銅箔、メッキ部分などの無機成分は除かれる。
【0014】
「樹脂基板102に含まれる窒素含量」は、具体的には以下の方法により測定する。はじめに、樹脂基板102の4か所以上を偏りのないように切り出す。次いで、切り出した試料からソルダーレジスト層、封止したエポキシ樹脂組成物の硬化体、銅箔等の付着物を除去して凍結粉砕をおこなう。得られた粉砕試料をよく混合し、300mg以上の粉砕試料を得る。次いで、JISK6910に示されるケルダール法により粉砕試料中の窒素の量(W
1)を定量する。また、別途、熱分析により粉砕試料中の灰分の量(W
2)を定量する。
ここで、灰分の量(W
2)は、上記粉砕試料を熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)にて室温から30分で700℃まで昇温し、700℃4時間ホールドして残渣の重量を測定することにより得る。
測定試料には、有機成分だけでなく、ガラスクロスなどの無機成分も含まれている。そのため、上記灰分の重量(W
2)を測定し、測定試料の重量(W
0)から無機成分の重量に相当する灰分の重量(W
2)を排除して、樹脂基板102に含まれる有機成分の重量(W
0−W
2)を計算する。
以下の(1)式より樹脂基板102に含まれる有機成分100質量%に対する窒素含量(A)を算出できる。
A(質量%)=100×W
1/(W
0−W
2) (1)
【0015】
本発明の樹脂基板102中に含まれる窒素含量は、例えば、樹脂基板102に使用される樹脂組成物中の窒素含有化合物の量を調整することにより、上記範囲内とすることができる。窒素含有化合物としては、含窒素有機化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ジアミン、アニリン樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂、ジシアンジアミド等の窒素含有硬化剤、イミダゾール化合物等の硬化促進剤、アミノプロピルトリアルコキシシラン等の含窒素シランカップリング剤、等が挙げられる。
【0016】
半導体素子101としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、固体撮像素子等が挙げられる。
【0017】
樹脂基板102としては窒素含量が上記範囲内であれば特に限定されないが、例えば、回路基板である。具体的には、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、モールド・アレイ・パッケージタイプのBGA(MAP−BGA)などの従来公知の半導体装置に用いられる回路基板を用いることができる。
【0018】
半導体素子101は、複数の半導体素子が積層されたものであってもよい。この場合、1段目の半導体素子はフィルム接着剤、熱硬化性接着剤等のダイボンド材硬化体104を介して樹脂基板102に接着される。2段目以降の半導体素子は絶縁性のフィルム接着剤により順次積層させることができる。そして、各層の適切な場所に、予め前工程で電極パッド103が形成されている。
【0019】
電極パッド103は、アルミニウム(Al)を主成分とするものからなることが好ましい。電極パッド103中のAlの含有量は、電極パッド103全体に対して98質量%以上が好ましい。電極パッド103中に含まれるAl以外の成分としては、銅(Cu)、シリコン(Si)等が挙げられる。電極パッド103は、下層の銅回路端子の表面に一般的なチタン系バリア層を形成し、さらにAlを蒸着、スパッタリング、無電解メッキなど、一般的な半導体素子の電極パッドの形成方法を適用することにより作製することができる。
【0020】
銅ワイヤ107は、樹脂基板102と、樹脂基板102に搭載された半導体素子101とを電気的に接続するために使用される。銅ワイヤ107の表面には、自然に又はプロセス上不可避的に酸化膜が形成されていてもよい。本実施形態において、銅ワイヤ107とは、このようにワイヤ表面に形成された酸化膜を具備するものも含まれる。
【0021】
銅ワイヤ107のワイヤ径は、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下でありかつ15μm以上であることが好ましい。この範囲であれば銅ワイヤ先端のボール形状が安定し、ボンディング部の接続信頼性を向上させることができる。また、銅ワイヤ自身の硬さによりワイヤ流れを低減することが可能となる。
【0022】
銅ワイヤ107中の銅の含有量は、銅ワイヤ107全体に対して、99.9〜100質量%であることが好ましく、99.99〜99.999質量%であることがより好ましい。銅の含有量が銅ワイヤ全体に対して99.99質量%以上の銅ワイヤ107であれば、ボール部分が充分な柔軟性を有しているため、ボンディング時にパッド側にダメージを与えるおそれがなく、特に好ましい。銅ワイヤ107は銅のみからなることが理想であるが、銅ワイヤ107中、銅の含有量は、99.99999質量%以下であることが現実的である。尚、本実施形態の半導体装置で用いることができる銅ワイヤ107は、芯線である銅にBa、Ca、Sr、Be、Al又は希土類金属を0.001〜0.1質量%ドープすることでさらにボール形状と接合強度を改善させることができる。
【0023】
銅ワイヤ107と電極パッド103との接合部において、銅ワイヤ107の先端には、ボール111が形成されていてもよい。
【0024】
また、銅ワイヤ107は、その表面にパラジウムを含む金属材料で構成された被覆層を有していてもよい。これにより、銅ワイヤ先端のボール形状が安定し、ボンディング部の接続信頼性を向上させることができる。また、芯線である銅の酸化劣化を防止する効果も得られ、ボンディング部の耐熱性を向上させることができる。
【0025】
銅ワイヤ107におけるパラジウムを含む金属材料から構成された被覆層の厚みとしては、0.001〜0.02μmであることが好ましく、0.005〜0.015μmであることがより好ましい。上記上限値以下であると、ワイヤボンド時に芯線である銅と被覆材のパラジウムを含む金属材料とが十分に溶けて安定なボール形状を形成させることができ、ボンディング部の耐熱性をよりいっそう向上させることができる。また、上記下限値以上であると、芯線の銅の酸化劣化を防止でき、同様にボンディング部の耐熱性を更に向上させることができる。
【0026】
銅ワイヤ107は、銅合金を溶解炉で鋳造し、その鋳塊をロール圧延し、さらにダイスを用いて伸線加工を行い、連続的にワイヤを掃引しながら加熱する後熱処理を施して得ることができる。また、半導体装置100で用いることができる銅ワイヤ107におけるパラジウムを含む金属材料から構成された被覆層は、予め狙いのワイヤ径の線を準備し、これを、パラジウムを含む電解溶液又は無電解溶液に浸漬し、連続的に掃引してメッキすることで被覆層を形成することができる。この場合、被覆の厚さは掃引速度で調整することができる。また、狙いよりも太い線を準備して、これを電解溶液又は無電解溶液に浸漬し連続的に掃引して被覆層を形成し、さらに所定の径になるまで伸線する手法も取れる。
【0027】
つづいて、半導体装置100の製造方法の一例について説明する。
まず、公知の半導体製造プロセスによって半導体素子101(
図1の例示はバッファーコート(保護膜)を形成したものを示している)の最上層の保護膜115の一部を開口して電極パッド103を露出させる。次いで、更に公知の後工程プロセスにより電極パッド103を備えた半導体素子101を樹脂基板102上に設置し、銅ワイヤ107により電極パッド103と樹脂基板102上に設けた接続端子105とをワイヤボンディングする。
【0028】
ボンディングは、たとえば以下の手順で行う。まず、銅ワイヤ107の先端に所定の径のボール111を形成する。ついで、ボール111を電極パッド103上面に対して実質的に垂直に降下させ、ボール111と電極パッド103とを接触させながら、超音波振動を与える。これにより、ボール111の底部が電極パッド103に接触して接合面が形成される。
【0029】
なお、樹脂基板102の接続端子105と半導体素子101とは、ワイヤのリバースボンドで接合されていてもよい。リバースボンドでは、まず半導体素子101上の電極パッド103に銅ワイヤ107の先端に形成されたボールを接合し、銅ワイヤ107を切断してステッチ接合用のバンプを形成する。次に樹脂基板102上の金属メッキされた接続端子105に対してワイヤの先端に形成されたボールを接合し、半導体素子のバンプにステッチ接合する。リバースボンドでは正ボンディングより半導体素子101上のワイヤ高さを低くすることができるため、半導体素子101の接合高さを低くすることができる。
【0030】
次いで、後述する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子101等の電子部品を封止し、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形して得られる。トランスファーモールドなどの成形方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0031】
このように製造された半導体装置100では、製造プロセスや使用時にボンディング部に熱がかかると、銅ワイヤ107から金属が電極パッド103に拡散してワイヤとパッドとの接合部に合金層が形成されるが、エポキシ樹脂から発生する酸性成分や酸化物成分は、合金層に到達する前に、樹脂基板102中に含まれる窒素と何らかの相互作用をするため、ボンディング部の腐食(酸化)による断線を防止することができる。したがって、本発明によれば、ボンディング後に高温プロセスを採用する場合や、使用環境が高温下である場合(例えば、自動車などのエンジン周辺に設置される場合)においても、高い接続信頼性を維持することが可能である。
【0032】
つぎに、本実施形態に係る樹脂基板102の製造方法について説明する。
樹脂基板102は、例えば、熱硬化性樹脂、充填材および繊維基材を含むプリプレグの硬化体を回路加工して得ることができる。
【0033】
ここで、プリプレグの製造方法を説明する。
プリプレグは、繊維基材に一または二以上の樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる、繊維基材と樹脂層を備えるシート状の材料である。ここで用いるプリプレグはシート状材料であり、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、樹脂基板102の製造に適しており好ましい。
樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法、支持基材付き樹脂層をラミネートする方法などが挙げられる。これらの中でも、繊維基材の両面からフィルム状の樹脂層でラミネートする方法が好ましい。これにより、繊維基材に対する樹脂組成物の含浸量を自在に調節でき、プリプレグの成形性をさらに向上できる。なお、フィルム状の樹脂層をラミネートする場合、真空のラミネート装置などを用いることがより好ましい。
【0034】
ラミネート方法を用いた製造工程について、
図2を用いて説明する。
図2は、プリプレグを製造する工程の一例を示す工程断面図である。
【0035】
まず、材料として、キャリア材料5a、キャリア材料5b、シート状基材4を用意する。また、装置として、真空ラミネート装置1、および熱風乾燥装置2を用意する。キャリア材料5aは、第1樹脂組成物から得られた樹脂層Aで構成される。キャリア材料5bは、第2樹脂組成物から得られた樹脂層Bで構成される。キャリア材料5a、5bは、例えばキャリアフィルムに第1樹脂組成物、第2樹脂組成物の樹脂ワニスを塗工する方法などにより得ることができる。シート状基材4としては、例えば、単層または複数枚重ね合わせた繊維基材を用いることができる。
【0036】
樹脂ワニスに用いられる溶剤は、樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが好ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系などが挙げられる。なお、第1樹脂組成物、および第2樹脂組成物の詳細は後述する。
【0037】
次いで、真空ラミネート装置1を用いてキャリア材料5a、シート状基材4およびキャリア材料5bをこの順で接合した接合体を形成する。真空ラミネート装置1は、キャリア材料5aを巻き取ったロール、キャリア材料5bを巻き取ったロール、シート状基材4を巻き取ったロールおよび、ラミネートロール7を備える。減圧下で、各ロールから送り出されたキャリア材料5a、およびキャリア材料5bを、シート状基材4の両面に重ね合わせる。重ね合わせた積層体をラミネートロール7で接合する。これにより、キャリア材料5a、シート状基材4およびキャリア材料5bから構成される接合体が得られる。
【0038】
減圧下で接合することにより、シート状基材4の内部または各キャリア材料5a、5bとシート状基材4との接合部位に非充填部分が存在しても、これを減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができる。ゆえに、最終的に得られるプリプレグ3はボイドなどの発生がなく、良好な成形状態にすることができる。なぜなら、減圧ボイドまたは真空ボイドは、後述する加熱処理で消し去ることができるからである。このような接合工程には、例えば真空ボックス装置などの他の装置を用いることができる。
【0039】
次いで、熱風乾燥装置2を用いて、接合体を構成する各キャリア材料5a、5bを構成する樹脂組成物の溶融温度以上の温度で加熱処理する。これにより、減圧下での接合工程で発生していた減圧ボイドなどを消し去ることができる。熱処理する他の方法は、例えば赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。
【0040】
以上によりプリプレグ3が得られる。プリプレグ3は、繊維基材が樹脂層の厚さの中心位置から、厚さ方向に偏在していてもよい。このようなプリプレグ3は、樹脂層Aおよび樹脂層Bの厚みを変えることにより作製することができる。
【0041】
次いで、プリプレグの製造に用いられる第1樹脂組成物、第2樹脂組成物(これらは異種でも同種でもよいが、同種であることが好ましい。これらを総称して、以下樹脂組成物Pと称する)を詳述する。樹脂組成物Pは、例えば、熱硬化性樹脂(A)および無機充填材(B)を含有する。以下、各成分について説明する。
【0042】
熱硬化性樹脂(A)としては、特に限定されないが、低線膨張率および高弾性率を有し、熱衝撃性の信頼性に優れたものであることが好ましい。
具体的な熱硬化性樹脂(A)として、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビスマレイミド化合物などのマレイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;シリコーン樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;シアネートエステル樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用してもよい。
【0043】
熱硬化性樹脂(A)として、エポキシ樹脂を含むのが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0044】
エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上とそれらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0045】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記下限値以上であると、エポキシ樹脂の反応性が向上し、得られる樹脂基板102の耐湿性を向上させることができる。また、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。含有量が上記上限値以下であると、樹脂基板102の耐熱性をより向上させることができる。
【0046】
樹脂組成物Pは、熱硬化性樹脂(A)としてエポキシ樹脂を用いる以外に、フェノール樹脂、アミン硬化剤、およびジシアンジアミド等の硬化剤を用いてもよい。特にトリアジン骨格含有フェノール樹脂のような窒素を含有するフェノール樹脂、アミン硬化剤、およびジシアンジアミドが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂などが挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール樹脂の場合、特に窒素を含有するため、樹脂基板102中の窒素の含有量を増加させることができる。フェノール樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0047】
フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。フェノール樹脂の含有量が上記下限値以上であると、樹脂基板102の耐熱性をより一層向上させることができる。また、フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。フェノール樹脂の含有量が上記上限値以下であると、樹脂基板102の低熱膨張の特性を向上させることができる。
【0048】
樹脂組成物Pは、熱硬化性樹脂(A)としてシアネートエステル樹脂を含むのが好ましい。シアネートエステル樹脂を用いることにより、樹脂基板102の線膨張係数を小さくすることができる。さらに、シアネートエステル樹脂を含むと、樹脂基板102の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機械強度なども向上させることができる。
【0049】
シアネートエステル樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させたものや、必要に応じて加熱などの方法でプレポリマー化したものなどを用いることができる。具体的には、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂などのビスフェノール型シアネートエステル樹脂;ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネートエステル樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂;ビフェニルアルキル型シアネートエステル樹脂などを挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネートエステル樹脂が好ましい。ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることにより、架橋密度が増加し、樹脂基板102の耐熱性が向上する。
本実施形態に係る樹脂基板は、窒素を含有する熱硬化性樹脂(A)または硬化剤に含まれる窒素分により所定の量の窒素を含むことが好ましい。特にトリアジン骨格含有エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、窒素を含有するフェノール樹脂、アミン硬化剤、およびジシアンジアミドなどにより窒素を含むものとすることで本発明の効果をより一層高めることができるものである。
【0050】
樹脂組成物P中に含まれる熱硬化性樹脂(A)の含有量は、その目的に応じて適宜調整されれば良く特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が特に好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、プリプレグを形成するのが容易となる。熱硬化性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、樹脂基板102の強度、難燃性および低熱膨張性を向上させることができる。
【0051】
プリプレグに用いられる樹脂組成物Pは、熱硬化性樹脂(A)に加えて、無機充填材(B)を含むのが好ましい。これにより、樹脂基板102を薄型化しても、より一層優れた機械的強度を付与することができる。また、樹脂基板102の低熱膨張化をより一層向上させることができる。
【0052】
無機充填材(B)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩;などを挙げることができる。
【0053】
無機充填材(B)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、特にシリカが好ましい。シリカの形状には破砕状および球状がある。無機充填材(B)の高充填化を確保するためには、樹脂組成物Pの溶融粘度を下げるため球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法を採用することができる。
【0054】
無機充填材(B)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上75質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、樹脂基板102を特に低熱膨張、低吸水とすることができる。
【0055】
このほか、必要に応じて、樹脂組成物Pにはカップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、有機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。本実施形態で用いられる樹脂組成物Pは、上記成分を有機溶剤などにより溶解および/または分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0056】
カップリング剤の使用により、熱硬化性樹脂(A)と無機充填材(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、樹脂基板102の耐熱性を改良することができる。
【0057】
カップリング剤としては、カップリング剤として通常用いられるものであれば使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、無機充填材(B)の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることができる。
【0058】
カップリング剤の添加量は、無機充填材(B)の比表面積に依存するので特に限定されないが、無機充填材(B)100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上が好ましい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材(B)を十分に被覆することができ、樹脂基板102の耐熱性を向上させることができる。また、カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、樹脂基板102の曲げ強度などの低下を抑制することができる。
【0059】
硬化促進剤としては公知のものを用いることができる。例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸;オニウム塩化合物;などが挙げられる。硬化促進剤として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いてもよいし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用してもよい。
【0060】
硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物P全体に対し、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限値以上であると、硬化を促進する効果が十分に発揮することができる。硬化促進剤の含有量が上記上限値以下であると、樹脂基板102の保存性をより向上させることができる。
【0061】
本実施形態における樹脂組成物Pは、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエンなどのジエン系エラストマー;をさらに併用してもよい。
【0062】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂(ビフェニル型フェノキシ樹脂とも呼ぶ。)などが挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0063】
樹脂組成物Pには、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤などの上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0064】
本実施形態に用いられる繊維基材としては、特に限定されないが、ガラスクロスなどのガラス繊維基材、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維などから選択されるポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維などから選択されるポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維の少なくともいずれか1種から構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙などのいずれか1種以上を主成分とする紙基材などの有機繊維基材などが挙げられる。これらの中でも、強度、吸水率の点からガラス繊維基材が特に好ましい。また、ガラス繊維基材を用いることにより、樹脂基板102の熱膨張係数をさらに小さくすることができる。
【0065】
つづいて、得られたプリプレグの片面または両面に、金属箔層を配置した構成で加熱加圧して積層する。これにより金属張積層板を得る。金属箔層の表面にはキャリア箔が付与されていてもよい。
【0066】
次いで、金属張積層板に層間接続用のスルーホールを形成し、サブトラクティブ工法、セミアディティブ工法などにより配線層を作製する。その後、必要に応じてビルドアップ層を積層して、アディティブ工法により層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じてソルダーレジスト層を積層して、上記に準じた方法で回路形成し、樹脂基板102が得られる。ここで、一部あるいは全てのビルドアップ層およびソルダーレジスト層は繊維基材を含んでも構わないし、含まなくても構わない。
また、樹脂基板102に接続端子119を設け、接続端子119上に半田バンプ117を搭載してもよい。
【0067】
つぎに、本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤とを含み、銅ワイヤ107及び銅ワイヤ107が接続された半導体素子101を封止する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0068】
(A)エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
なお、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂は結晶性を有するものが好ましい。
【0069】
好ましくは、(A)エポキシ樹脂として、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂、及び、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることができる。
【0071】
式(1)中、Ar
1はフェニレン基又はナフチレン基を表し、Ar
1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよく、Ar
2はフェニレン基、ビフェニレン基及びナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表し、R
5及びR
6はそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表し、gは0〜5の整数であり、hは0〜8の整数であり、n
3は重合度を表し、その平均値は1〜3である。
【0073】
式(2)中、複数存在するR
9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、n
5は重合度を表し、その平均値は0〜4である。
【0075】
式(3)中、複数存在するR
10及びR
11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、n
6は重合度を表し、その平均値は0〜4である。
【0076】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。こうすることで、粘度上昇によるワイヤ切れを引き起こす恐れを少なくすることができる。また、エポキシ樹脂(A)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、18質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、11質量%以下がさらに好ましい。こうすることで、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れを少なくすることができる。
【0077】
(B)硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。
【0078】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0079】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF
3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0080】
縮合型の硬化剤としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0081】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0082】
好ましくは、(B)硬化剤として、下記式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤を用いることができる。
【0084】
式(4)中、Ar
3はフェニレン基又はナフチレン基を表し、Ar
3がナフチレン基の場合、水酸基はα位、β位のいずれに結合していてもよく、Ar
4はフェニレン基、ビフェニレン基及びナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表し、R
7及びR
8はそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表し、iは0〜5の整数であり、jは0〜8の整数であり、n
4は重合度を表し、その平均値は1〜3である。
【0085】
(B)硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。こうすることで、充分な流動性を得ることができる。また、(B)硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に、15質量%以下であることが好ましく、11質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。こうすることで、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れを少なくすることができる。
【0086】
また、(B)硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合におけるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8〜1.3であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、又は樹脂硬化物の物性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0087】
また、エポキシ樹脂組成物には、(C)充填材、及び(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0088】
(C)充填材としては、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、チタンホワイト、窒化珪素等の無機充填材、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等の有機充填材が挙げられ、中でも、溶融球状シリカが特に好ましい。これらの充填材は、1種を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。また、(C)充填材の形状としては、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑え、更に充填材の含有量を高めるためには、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。また、充填材がカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。さらに、必要に応じて充填材をエポキシ樹脂又はフェノール樹脂等で予め処理して用いてもよく、処理の方法としては、溶媒を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接充填材に添加し、混合機を用いて混合処理する方法等がある。
【0089】
(C)充填材の含有量は、エポキシ樹脂組成物の充填性、半導体装置の信頼性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体に対して、65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。こうすることで、低吸湿性、低熱膨張性が得られるため耐湿信頼性が不十分となる恐れを少なくすることができる。また、(C)充填材の含有量は、成形性を考慮すると、エポキシ樹脂組成物全体に対して、93質量%以下であることが好ましく、91質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。こうすることで、流動性が低下し成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内のワイヤ流れ等の不都合が生じたりする恐れを少なくすることができる。
【0090】
(D)硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤(たとえば、フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基)との架橋反応を促進させるものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用するものを用いることができる。例えば、1、8−ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7等の双環式アミジン及びその誘導体、2−メチルイミダゾール等の単環式アミジン;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の4級ホスホニウム塩;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0091】
(D)硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。こうすることで、硬化性の低下を引き起こす恐れを少なくすることができる。また、(E)硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。こうすることで、流動性の低下を引き起こす恐れを少なくすることができる。
【0092】
エポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて、炭酸カルシウム、硼酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト等の中和剤;ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの腐食防止剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;エポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;シリコーンゴム等の低応力成分;カルナバワックス等の天然ワックス、合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン等の難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0093】
エポキシ樹脂組成物は、前述の各成分を、例えば、ミキサー等を用いて15℃〜28℃で混合したもの、さらにその後、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
【0094】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体は、上記のエポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で成形硬化して得ることができる。トランスファーモールドなどの成形方法で成形硬化されたエポキシ樹脂組成物の硬化体は、必要に応じて80℃〜200℃程度の温度で、10分〜24時間程度の時間をかけて完全硬化させることで得ることもできる。
【0095】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部はとくに特定しない限り質量部を表す。
【0097】
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
エポキシ樹脂BA:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
エポキシ樹脂C:ナフタレンジオールジグリシジルエーテル(DIC社製、エピクロンHP−4032D)
エポキシ樹脂D:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロンHP−6000)
【0098】
シアネートエステル樹脂A:ノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)
シアネートエステル樹脂B:下記一般式(II)で表されるp−キシレン変性ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂(ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成社製、「SN−485誘導体」)と塩化シアンの反応物)
【0099】
【化5】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0100】
フェノール樹脂A:ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(日本化薬社製、GPH−103)
アミン化合物:4,4'−ジアミノジフェニルメタン
ビスマレイミド化合物(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)
【0101】
フェノキシ樹脂A:ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂(三菱化学社製、YX−6954BH30)
【0102】
充填材A:球状シリカ(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒径0.5μm)
充填材B:球状シリカ(アドマテックス社製、SO−31R、平均粒径1.0μm)
充填材C:球状シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)
充填材D:ベーマイト(ナバルテック社製、AOH−30)
充填材E:シリコーン粒子(信越化学工業社製、KMP−600、平均粒径5μm)
【0103】
カップリング剤A:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A−187)
硬化促進剤A:下記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、#C)
【0104】
【化6】
【0105】
(式中、Pはリン原子、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A
−は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す。)
【0106】
硬化促進剤B:オクチル酸亜鉛
【0107】
(実施例1)
樹脂ワニス1の調製
エポキシ樹脂BAとしてビフェニレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)11.0質量部、アミン化合物として4,4'−ジアミノジフェニルメタン3.5質量部、ビスマレイミド化合物としてビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)20.0質量部、をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状シリカ(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒径0.5μm)20.0質量部、充填材Dとしてベーマイト(ナバルテック社製、AOH−30)45.0質量部とカップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A−187)0.5質量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分65質量%となるように調整し、樹脂ワニス1を調製した。
【0108】
キャリア材料の製造
樹脂ワニス1を、支持基材であるキャリア箔付き極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンEx、1.5μm)上に、ダイコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが30μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、第一樹脂層用の銅箔付き樹脂シート1A(キャリア材料1A)を得た。
また、樹脂ワニス1をキャリア箔付き極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンEx、1.5μm)上に同様に塗工し、乾燥後の樹脂層の厚さが30μmになるように、160℃の乾燥機で5分間乾燥して、第二樹脂層用の銅箔付き樹脂シート1B(キャリア材料1B)を得た。
【0109】
プリプレグの製造
(プリプレグ1)
第一樹脂層用のキャリア材料1A、および第二樹脂層用のキャリア材料1Bをガラス繊維基材(日東紡社製Tガラス織布、WTX−116E、IPC規格2116T)の両面に樹脂層が繊維基材と向き合うように配し、
図2に示す真空ラミネート装置および熱風乾燥装置により樹脂組成物を含浸させ、銅箔が積層されたプリプレグ1を得た。
具体的には、ガラス繊維基材の両面にキャリア材料Aおよびキャリア材料Bがガラス繊維基材の幅方向の中心に位置するように、それぞれ重ね合わせ、常圧より9.999×10
4Pa(約750Torr)以上減圧した条件下で、ラミネート速度2m/分、ガラス繊維基材にかかる張力は140N/mに設定し、100℃のラミネートロールを用いて接合した。
ここで、ガラス繊維基材の幅方向寸法の内側領域においては、キャリア材料1Aおよびキャリア材料1Bの樹脂層をガラス繊維基材の両面側にそれぞれ接合するとともに、ガラス繊維基材の幅方向寸法の外側領域においては、キャリア材料1Aおよびキャリア材料1Bの樹脂層同士を接合した。
つぎに、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理してプリプレグ1を得た。
【0110】
金属張積層板の製造
銅箔が積層されたプリプレグ1を平滑な金属板に挟み、220℃、1.5MPaで2時間加熱加圧成形することにより、金属張積層板を得た。
【0111】
回路基板の製造
上記で得られた金属張積層板をコア基板として用い、その両面にセミアディティブ法でパターン形成した内層回路基板を作成した。その両面に、銅箔付き樹脂シート(キャリア材料1A)を真空ラミネートで積層した後、熱風乾燥装置にて220℃で60分間加熱硬化をおこなった。次いで、キャリア箔を剥離後、炭酸レーザーによりブラインドビアホール(非貫通孔)を形成した。つぎにビア内を、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に10分浸漬後、中和して粗化処理をおこなった。
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、めっきレジストを形成し、無電解銅めっき皮膜を給電層として回路加工を施した。つぎに、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。
つぎに、ソルダーレジスト層を積層し、次いで半導体素子搭載ダイパッドなどが露出するように炭酸レーザーによりブラインドビアホール(非貫通孔)を形成した。
最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層と、無電解金めっき層とからなるめっき層を形成し、得られた基板を187mm×50mmサイズに切断し、回路基板を得た。
【0112】
<回路基板に含まれる窒素含量>
得られた回路基板の4か所以上を偏りのないように切り出した。次いで、切り出した試料からソルダーレジスト層、めっき層等の付着物を除去して凍結粉砕をおこなった。得られた粉砕試料をよく混合し、300mg以上の粉砕試料を得た。次いで、JISK6910に示されるケルダール法により粉砕試料中の窒素の量(W
1)を定量した。また、粉砕試料中の灰分の量(W
2)は、上記粉砕試料を熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)にて室温から30分で700℃まで昇温し、700℃4時間ホールドして残渣の重量を測定することにより得た。
測定試料には、有機成分だけでなく、ガラスクロスなどの無機成分も含まれている。そのため、上記灰分の重量(W
2)を測定し、測定試料の重量(W
0)から無機成分の重量に相当する灰分の重量(W
2)を排除して、回路基板に含まれる有機成分の重量(W
0−W
2)を計算する。
以下の(1)式より回路基板に含まれる有機成分100質量%に対する窒素の含有量(A)を算出した。
A(質量%)=100×W
1/(W
0−W
2) (1)
得られた値を表1に示す。
【0113】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造
ミキサーを用いて表2に示す各成分を15〜28℃で混合し、次いで70℃〜100℃でロール混練した。冷却後、粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。なお、表2中、各成分の詳細は下記のとおりである。また、表2中の単位は、質量%である。
【0114】
<(A)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂BA:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
【0115】
<(B)硬化剤>
硬化剤BA:MEH−7851SS、明和化成社製、水酸基当量203
【0116】
<(C)充填材>
シリカ:FB−820、電気化学工業社製、溶融球状シリカ、平均粒径26.5μm、105μm以上の粒子1%以下
【0117】
<(D)硬化促進剤>
トリフェニルホスフィン(TPP)、北興化学工業社製
【0118】
<その他の成分>
カップリング剤:3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
着色剤:カーボンブラック
離型剤:カルナバワックス
腐食防止剤:ハイドロタルサイト(DHT−4A、協和化学工業社製)
【0119】
エポキシ樹脂組成物の物性を以下の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0120】
<スパイラルフロー(SF)>
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS−15」)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入し、流動長(単位:cm)を測定した。
【0121】
<ゲルタイム(GT)>
175℃に加熱した熱板上でエポキシ樹脂組成物を溶融後、へらで練りながら硬化するまでの時間(単位:秒)を測定した。
【0122】
半導体装置の製造
アルミニウム製電極パッド(アルミニウム純度99.9質量%、厚み1μm)を備えるTEG(TEST ELEMENT GROUP)チップ(3.5mm×3.5mm)を上記回路基板のダイパッド部に接着し、TEGチップの電極パッドと基板の電極パッドとをデイジーチェーン接続となるように、銅ワイヤ(銅純度99.99質量%、径25μm)を用いてワイヤピッチ80μmでワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機(TOWA製「Yシリーズ」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分の条件で、上記エポキシ樹脂組成物を用いて封止成形して、半導体パッケージを作製した。このパッケージを175℃、4時間の条件で後硬化した後、半導体装置を得た。
【0123】
<半導体装置中の回路基板に含まれる窒素含量>
得られた半導体装置中の回路基板4か所以上を偏りのないように切り出した。次いで、切り出した試料からソルダーレジスト層、封止したエポキシ樹脂組成物の硬化体、めっき層等の付着物を除去して凍結粉砕を行った。得られた粉砕試料をよく混合し、300mg以上の粉砕試料を得た。次いで、JISK6910に示されるケルダール法により粉砕試料中の窒素の量(W
1)を定量した。また、粉砕試料中の灰分の量(W
2)は、上記粉砕試料を熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)にて室温から30分で700℃まで昇温し、700℃4時間ホールドして残渣の重量を測定することにより得た。
測定試料には、有機成分だけでなく、ガラスクロスなどの無機成分も含まれている。そのため、上記灰分の重量(W
2)を測定し、測定試料の重量(W
0)から無機成分の重量に相当する灰分の重量(W
2)を排除して、回路基板に含まれる有機成分の重量(W
0−W
2)を計算する。
以下の(1)式より回路基板に含まれる有機成分100質量%に対する窒素の含有量(A)を算出した。
A(質量%)=100×W
1/(W
0−W
2) (1)
得られた半導体装置中の回路基板の窒素含量は、前述の回路基板に含まれる窒素含量とほぼ同じ値であることを確認した。
【0124】
<高温保管特性>
得られた半導体装置について半導体装置のHTSL(高温保存試験)を行った。具体的には、200℃で処理し、不良が発生する時間を調べた。不良の判定は、作製したパッケージ10個を用いて評価し、初期抵抗に対する処理後の抵抗値が1.2倍を超えたパッケージが発生した時間を不良時間とした。その結果を表2に示す。表2中単位は、時間(hour)である。
【0125】
(実施例2〜4、比較例1および2)
樹脂ワニスの組成を表1に示す組成に変え、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の組成を表2に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製し、各評価をおこなった。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】