特許第6098376号(P6098376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6098376プリント基板と組付部材からなる構造体及びプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098376
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】プリント基板と組付部材からなる構造体及びプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20170313BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20170313BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H05K1/02 C
   H05K3/00 K
   H05K1/14 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-116168(P2013-116168)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-236091(P2014-236091A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】荒城 浩義
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−253835(JP,A)
【文献】 実開昭54−184454(JP,U)
【文献】 実開昭57−117678(JP,U)
【文献】 特開2005−228770(JP,A)
【文献】 特開平05−198911(JP,A)
【文献】 特開2000−340919(JP,A)
【文献】 実開平04−087675(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と前記プリント基板に組み付けられる組付部材とからなる構造体であって、
前記プリント基板は、板状形状を有する前記組付部材を挿入することによって前記組付部材を組み付ける挿入孔を有し、
前記挿入孔は、
前記組付部材の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔と、
前記第1挿入孔の両端に前記第1挿入孔と連続してそれぞれ形成され、前記第1挿入孔の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔と、
複数の前記第2挿入孔の間であって、前記第2挿入孔と重複しない範囲に前記第1挿入孔と連続して形成され、前記第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔と、を備え、
前記組付部材は、
挿入方向に向かって先細り形状を有し、
前記第3挿入孔は前記組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有することを特徴とするプリント基板と組付部材からなる構造体
【請求項2】
前記挿入孔はドリル加工により形成することを特徴とする請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体
【請求項3】
前記第2挿入孔の長さは、少なくとも前記組付部材の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とすることを特徴とする請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体
【請求項4】
プリント基板と前記プリント基板に組み付けられる組付部材とからなる構造体の組立方法であって、
前記プリント基板は、板状形状を有する前記組付部材を挿入することによって前記組付部材を組み付ける挿入孔を有し、
前記挿入孔は、
前記組付部材の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔と、
前記第1挿入孔の両端に前記第1挿入孔と連続してそれぞれ形成され、前記第1挿入孔の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔と、
複数の前記第2挿入孔の間であって、前記第2挿入孔と重複しない範囲に前記第1挿入孔と連続して形成され、前記第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔と、を備え、
前記組付部材は、
挿入方向に向かって先細り形状を有し、
前記第3挿入孔は前記組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有し、
前記組付部材の先端部分を前記第3挿入孔から挿入することによって前記プリント基板に対して前記組付部材を組み付けることを特徴とするプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法
【請求項5】
前記挿入孔はドリル加工により形成することを特徴とする請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法
【請求項6】
前記第2挿入孔の長さは、少なくとも前記組付部材の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とすることを特徴とする請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられるプリント基板とプリント基板に組み付ける組付部材からなる構造体及びプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に用いられるプリント基板は、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の多数の電子部品を表面に固定し、その部品間を配線で接続するものである。また、プリント基板には、上記電子部品以外にも様々な部材が組み付けられる。例えば、CPUを冷却する為のファンやヒートシンク、プリント基板を製品筐体に対して固定する為の固定具等(以下、それらのものを総称して組付部材という)がある。
【0003】
ここで、上記組付部材をプリント基板に組み付ける為には、プリント基板に組み付け用の孔を形成し、その孔に対して組付部材を挿入することによって組み付けを行うのが一般的である。ここで、プリント基板に対して組み付け用の孔を形成する際には、例えば特許第3843497号公報に記載されているように、ドリル等の工具によってプリント基板を加工することにより行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3843497号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、プリント基板に孔を形成する為の方法としては、ドリル加工以外に打ち抜き加工等もあるが、打ち抜き加工では孔の周辺にバリが多く生じたり、プリント基板に変形が生じる等の問題がある。その結果、加工の精度が低下することとなる。一方、ドリル加工ではこのような問題が生じ難いが、加工の特性上、直線形状の角を形成することができない問題があった。例えば、図8に示す例は、プリント基板101に対してドリル加工によって形成された長尺状の孔102を示した図である。図8に示すように孔102は、使用するドリルのドリル径によって大きさは異なるものの、角に必ずRが生じる為に四角形状とすることができない。また、ドリル径を小さくすればRを小さくして、四角形状に近づけることは可能であるが、ドリル径を小さくすれば加工量や加工時間が飛躍的に増加することとなる。一方で、組み付け対象となる組付部材は、プレス加工や打ち抜き加工により成形されるので、直線形状の角を有する。
【0006】
その結果、図9に示すように、孔102に組付部材103が挿入されると、組付部材103の角部が孔102の曲面を有する内側縁部に接触することとなり、削れや干渉の問題が生じる。一方で、上記削れや干渉の問題を防止する為に、組付部材103に対して孔102を大きめに形成すると、図10に示すようにガタツキが生じ、組付部材103をプリント基板101に対して適切に位置決めすることができない問題があった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、プリント基板に組付部材を組み付ける際に、削れや干渉の問題を解消し、且つ加工時間や加工量を大きく増加させることなく組付部材をプリント基板に正確に位置決めさせることを可能にしたプリント基板と組付部材からなる構造体及びプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係るプリント基板と組付部材からなる構造体は、プリント基板(1)と前記プリント基板に組み付けられる組付部材(15)とからなる構造体であって、前記プリント基板は、板状形状を有する前記組付部材を挿入することによって前記組付部材を組み付ける挿入孔(2)を有し、前記挿入孔は、前記組付部材の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔(11)と、前記第1挿入孔の両端に前記第1挿入孔と連続してそれぞれ形成され、前記第1挿入孔の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔(12、13)と、複数の前記第2挿入孔の間であって、前記第2挿入孔と重複しない範囲に前記第1挿入孔と連続して形成され、前記第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔(14)と、を備え、前記組付部材は、挿入方向に向かって先細り形状を有し、前記第3挿入孔は前記組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体は、請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体において、前記挿入孔(2)はドリル加工により形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体は、請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体において、前記第2挿入孔(12、13)の長さは、少なくとも前記組付部材(15)の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とすることを特徴とする。
【0013】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法は、プリント基板(1)と前記プリント基板に組み付けられる組付部材(15)とからなる構造体の組立方法であって、前記プリント基板は、板状形状を有する前記組付部材を挿入することによって前記組付部材を組み付ける挿入孔(2)を有し、前記挿入孔は、前記組付部材の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔(11)と、前記第1挿入孔の両端に前記第1挿入孔と連続してそれぞれ形成され、前記第1挿入孔の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔(12、13)と、複数の前記第2挿入孔の間であって、前記第2挿入孔と重複しない範囲に前記第1挿入孔と連続して形成され、前記第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔(14)と、を備え、前記組付部材は、挿入方向に向かって先細り形状を有し、前記第3挿入孔は前記組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有し、前記組付部材の先端部分を前記第3挿入孔から挿入することによって前記プリント基板に対して前記組付部材を組み付けることを特徴とする。
【0016】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法は、請求項乃至請求項8のいずれかに記載のプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法において、前記挿入孔(2)はドリル加工により形成することを特徴とする。
【0017】
更に、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法は、請求項に記載のプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法において、前記第2挿入孔(12、13)の長さは、少なくとも前記組付部材(15)の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
前記構成を有する請求項1に係るプリント基板と組付部材からなる構造体では、プリント基板に組付部材を組み付ける際に、組付部材の角が挿入孔の角に位置しないので、従来技術のような組付部材の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、加工時間や加工量を大きく増加させることなく組付部材をプリント基板に正確に位置決めさせることが可能となる。
【0019】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体では、複数の第2挿入孔の間であって、第2挿入孔と重複しない範囲に第1挿入孔と連続して形成され、第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔を備えるので、挿入孔の幅が狭い場合であっても、挿入孔へと組付部材を導き易くすることが可能であり、組付部材を組み付ける際の作業性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体では、組付部材は挿入方向に向かって先細り形状を有し、第3挿入孔は組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有するので、第3挿入孔に導かれた組付部材を挿入方向に移動させることによって、組付部材を挿入孔に対して容易に挿入することが可能となる。
【0021】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体では、挿入孔はドリル加工により形成するので、孔の周辺にバリが多く生じたり、プリント基板に変形が生じる等の問題を解消できる。従って、打ち抜き加工等と比較して加工の精度を向上させることが可能となる。また、挿入孔の角にRが生じたとしても組付部材の角が挿入孔の角に位置しないので、従来技術のような組付部材の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、挿入孔の角のRを小さくする為にドリル径を小さくする必要が無いので、加工作業を簡易化することが可能となる。
【0022】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体では、第2挿入孔の長さは、少なくとも組付部材の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とするので、第1挿入孔の角を第2挿入孔によって除去することが可能となり、挿入孔に挿入された組付部材の角が挿入孔の角に位置することを防止できる。
【0023】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法では、加工後のプリント基板に組付部材を組み付ける際に、組付部材の角が挿入孔の角に位置しないので、従来技術のような組付部材の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、加工時間や加工量を大きく増加させることなく組付部材をプリント基板に正確に位置決めさせることが可能となる。
【0024】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法では、複数の第2挿入孔の間であって、第2挿入孔と重複しない範囲に第1挿入孔と連続して、第1挿入孔の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔を形成するので、挿入孔の幅が狭い場合であっても、挿入孔へと組付部材を導き易くすることが可能であり、組付部材を組み付ける際の作業性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法では、組付部材は挿入方向に向かって先細り形状を有し、第3挿入孔は組付部材の挿入方向の先端形状よりも大きい形状に形成するので、第3挿入孔に導かれた組付部材を挿入方向に移動させることによって、組付部材を挿入孔に対して容易に挿入することが可能となる。
【0026】
また、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法では、挿入孔はドリル加工により形成するので、孔の周辺にバリが多く生じたり、プリント基板に変形が生じる等の問題を解消できる。従って、打ち抜き加工等と比較して加工の精度を向上させることが可能となる。また、挿入孔の角にRが生じたとしても組付部材の角が挿入孔の角に位置しないので、従来技術のような組付部材の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、挿入孔の角のRを小さくする為にドリル径を小さくする必要が無いので、加工作業を簡易化することが可能となる。
【0027】
更に、請求項に係るプリント基板と組付部材からなる構造体の組立方法では、第2挿入孔の長さは、少なくとも組付部材の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とするので、第1挿入孔の角を第2挿入孔によって除去することが可能となり、挿入孔に挿入された組付部材の角が挿入孔の角に位置することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るプリント基板の特に挿入孔付近を示した図である。
図2】挿入孔を示した上面図である。
図3】組付部材の一例を示した図である。
図4】プリント基板に対する組付部材の組み付け工程を示した図である。
図5】組付部材の挿入後におけるプリント基板の特に挿入孔付近を示した図である。
図6】組付部材の挿入後における挿入孔を示した上面図である。
図7】プリント基板に対して挿入孔を形成する際の加工工程を示した図である。
図8】従来技術の問題点について説明した図である。
図9】従来技術の問題点について説明した図である。
図10】従来技術の問題点について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るプリント基板及びプリント基板の加工方法について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
先ず、本実施形態に係るプリント基板1及びプリント基板1に形成される挿入孔2の構成について図1を用いて説明する。図1はプリント基板1の特に挿入孔2付近を示した図である。図2は、挿入孔2を示した上面図である。
【0031】
ここで、プリント基板1は、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の図示しない多数の電子部を表面に備える。また、プリント基板1には後述する組付部材を挿入することによって、該組付部材をプリント基板1に組み付ける挿入孔2が形成されている。尚、組付部材としては、CPUを冷却する為のファンやヒートシンク、プリント基板を製品筐体に対して固定する為の固定具等が該当する。また、一のプリント基板1に対して挿入孔2の形成される数は、1個のみでも良いし、複数でも良い。
【0032】
ここで、図2に示すように、挿入孔2は、組付部材の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔11と、第1挿入孔11の両端に第1挿入孔11と連続してそれぞれ形成され、第1挿入孔11の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔12、13と、第2挿入孔12、13の間であって、第2挿入孔12、13と重複しない範囲に第1挿入孔11と連続して形成され、第1挿入孔11の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔14とから基本的に構成される。尚、本実施形態では後述のようにドリル加工により挿入孔2を形成するので、挿入孔2の角にはRが生じることとなる。Rの大きさは用いるドリルのドリル径に依存する。
【0033】
ここで、第1挿入孔11は、長さL1及び幅D1を備えた長尺状の孔である。第1挿入孔11の長さL1及び幅D1は、挿入孔2に挿入対象となる組付部材の形状によって決定される。ここで、図3は組付部材15の一例を示した図である。組付部材15は、長さT1で厚みT2からなる板状形状であって挿入方向(図3のX方向)に向かって先細り形状を有する。そして、第1挿入孔11の長さL1は、組付部材15の長さT1に対して寸法誤差を考慮した一定の間隔(例えば0.5mm)を追加した値とする。同じく、第1挿入孔11の幅D1は、組付部材15の厚さT2に対して寸法誤差を考慮した一定の間隔(例えば0.2mm)を追加した値とする。尚、ドリル径をD1とすれば第1挿入孔11を形成する為の加工工数を減らすことが可能となる。
【0034】
また、第2挿入孔12、13は、第1挿入孔11の両端にあって長さL2及び幅D2を備えた長尺状の孔である。そして、第1挿入孔11とともに略H形状を構成する。従って、第2挿入孔12の左縁部から第2挿入孔13の右縁部までの距離は、第1挿入孔11の長さL1に相当する。尚、第1挿入孔11は図2に示すように第2挿入孔12、13の中央に接続させる必要はないが、第1挿入孔11の角のRを除去する為に、第2挿入孔12、13の端部から第1挿入孔11との接続地点までの距離Nは、少なくともドリル径の1/2以上とする必要がある。
【0035】
また、第1挿入孔11の長さ方向と、第2挿入孔12、13の長さ方向とは直角に交差させることが望ましい。また、第2挿入孔12、13の長さL2は、少なくとも組付部材15の厚さT2にドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とする。また、第2挿入孔12、13の幅D2は適宜設定可能であるが、第1挿入孔11の内、第2挿入孔12、13や第3挿入孔14と重複しない部分の長さWが、プリント基板1の厚さZ以上となるように設定するのが望ましい。更に、D2をD1と同じ値(即ちドリル径)とすれば第2挿入孔12、13を形成する為の加工工数を減らすことが可能となる。
【0036】
また、図2に示す例では第2挿入孔12と第2挿入孔13は、同一の長さL2と幅D2を有する左右対称の形状としているが、異なる形状としても良い。例えば、第2挿入孔12と第2挿入孔13とで長さL2や幅D2を異なる値としても良い。
【0037】
また、第3挿入孔14は、第1挿入孔11の中央付近にあって直径L3からなる円形状の孔である。尚、第3挿入孔14の形状は円形状に限られることなく、多角形形状としても良い。但し、第3挿入孔14は、第1挿入孔11の幅D1及び組付部材15の挿入方向の先端形状よりも大きい形状とする。例えば、第3挿入孔14を円形状とする場合には、直径L3が図3に示す組付部材15の先端形状の幅T3やD1よりも大きくなるように設定する。その結果、組付部材15を挿入孔2に挿入する際に、第1挿入孔11の幅D1が狭かったとしても組付部材15を挿入孔2に容易に導くことが可能となり、組み付けに関する作業性が向上する。尚、第3挿入孔14の直径L3は、より大きいサイズとする程、作業性を向上させることが可能であるが、第1挿入孔11の内、第2挿入孔12、13や第3挿入孔14と重複しない部分の長さWが、プリント基板1の厚さZ以上となるように設定するのが望ましい。
【0038】
そして、上述した挿入孔2を有するプリント基板1に対して組付部材15を組み付ける際には、図4に示すように組付部材15の先端部分を先ず第3挿入孔14へと導く。その後に、挿入方向に沿って組付部材15を移動させることによって、組付部材15の先端部の傾斜形状にそって徐々に組付部材15が挿入孔2へと挿入される。更に、挿入方向に沿って組付部材15を移動させることによって、組付部材15の全体が挿入孔2へと挿入される。図5は組付部材15の挿入後におけるプリント基板1の特に挿入孔2付近を示した図である。図6は、組付部材15の挿入後における挿入孔2を示した上面図である。
【0039】
図5及び図6に示すように、挿入孔2に挿入された組付部材15はX軸方向及びY軸方向が共に第1挿入孔11及び第2挿入孔12、13の縁部に支持され、ガタツキが生じることなく、適切に位置決めされる。また、組付部材15の角部が、挿入孔2の角に位置しないので、従来技術のような組付部材15の角部による削れや干渉の問題(図9参照)が生じことが無い。
【0040】
続いて、図7を用いてプリント基板1に対して挿入孔2を形成する際の加工工程について説明する。図7はプリント基板1に対して挿入孔2を形成する際の加工工程を示した図である。
【0041】
図7に示すように、プリント基板1にドリル加工によって先ず第1挿入孔11を形成する。尚、第1挿入孔11の長さと幅は前述したように組付部材15の形状によって設定される。
【0042】
次に、形成された第1挿入孔11の両端に第1挿入孔11と連続して、同じくドリル加工によって第2挿入孔12、13を形成する。その結果、第1挿入孔11の角のRは除去される。
【0043】
その後、第1挿入孔11の中央付近に、同じくドリル加工によって第3挿入孔14を形成する。その結果、挿入孔2がプリント基板1に形成される。尚、第3挿入孔14の位置は第2挿入孔12、13と重複しない位置であれば、第1挿入孔11の中央以外の位置でも良い。また、第1挿入孔11、第2挿入孔12、13及び第3挿入孔14を形成する順序は、上記順序以外としても良く、例えば、第3挿入孔14を形成した後に第2挿入孔12、13を形成しても良い。また、第2挿入孔12、第1挿入孔11、第2挿入孔13の順で形成しても良い。更に、第1挿入孔11、第2挿入孔12、13及び第3挿入孔14の形成は、孔毎に工程を分けても良いし、一の工程で全ての孔を連続して形成することとしても良い。
【0044】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るプリント基板1では、板状形状を有する組付部材15を挿入することによって組付部材15を組み付ける挿入孔2を有し、挿入孔2は、組付部材15の形状に対応する長さと幅を備えた長尺状の第1挿入孔11と、第1挿入孔11の両端に第1挿入孔11と連続してそれぞれ形成され、第1挿入孔11の長さ方向と交差する方向を長さ方向とする長尺状の第2挿入孔12、13とを備えるので、プリント基板1に組付部材15を組み付ける際に、組付部材15の角が挿入孔の角に位置せず、従来技術のような組付部材15の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、加工時間や加工量を大きく増加させることなく組付部材15をプリント基板1に正確に位置決めさせることが可能となる。
また、複数の第2挿入孔12、13の間であって、第2挿入孔12、13と重複しない範囲に第1挿入孔11と連続して形成され、第1挿入孔11の幅よりも大きい形状を有する第3挿入孔14を備えるので、挿入孔2の幅が狭い場合であっても、挿入孔2へと組付部材15を導き易くすることが可能であり、組付部材15を組み付ける際の作業性を向上させることが可能となる。
また、組付部材15は挿入方向に向かって先細り形状を有し、第3挿入孔14は組付部材15の挿入方向の先端形状よりも大きい形状を有するので、第3挿入孔14に導かれた組付部材15を挿入方向に移動させることによって、組付部材15を挿入孔2に対して容易に挿入することが可能となる。
また、挿入孔2はドリル加工により形成するので、孔の周辺にバリが多く生じたり、プリント基板1に変形が生じる等の問題を解消できる。また、挿入孔2の角にRが生じたとしても組付部材15の角が挿入孔2の角に位置しないので、従来技術のような組付部材15の角部による削れや干渉が生じることが無い。また、挿入孔2の角のRを小さくする為にドリル径を小さくする必要が無いので、加工作業を簡易化することが可能となる。
また、第2挿入孔12、13の長さは、少なくとも組付部材15の厚さにドリル加工に用いるドリルのドリル径を加算した値とするので、第1挿入孔11の角を第2挿入孔12、13によって除去することが可能となり、挿入孔2に挿入された組付部材15の角が挿入孔2の角に位置することを防止できる。
【0045】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、挿入孔2を構成する第1挿入孔11、第2挿入孔12、13及び第3挿入孔14の各形状や寸法は組付部材15の形状によって適宜変更することが可能である。また、本実施形態では組付部材15の形状を図3に示す楔型形状としたが、挿入方向に向かって先細りの形状であれば、他の形状であっても良い。
【0046】
また、本実施形態では挿入孔2をドリル加工により形成することとしているが、孔を形成した際に角にRを生じる加工方法であればドリル加工以外の加工方法にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 プリント基板
2 挿入孔
11 第1挿入孔
12、13 第2挿入孔
14 第3挿入孔
15 組付部材
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10