(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キシリレンジアミンを含有するジアミン、ジカルボン酸、及び、該キシリレンジアミン100質量部に対して0.001〜0.04質量部のメチルベンジルアミンを反応系に導入し、重縮合反応を行う工程を有する、ポリアミド樹脂の製造方法。
前記ジカルボン酸が炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
前記ジアミン中のキシリレンジアミンの含有量が70モル%以上であり、前記ジカルボン酸中の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸の含有量が50モル%以上である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリアミド樹脂の製造方法]
本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、キシリレンジアミンを含有するジアミン、ジカルボン酸、及び、該キシリレンジアミン100質量部に対して0.001〜0.04質量部のメチルベンジルアミンを反応系に導入し、重縮合反応を行う工程を有することを特徴とする。なお、メチルベンジルアミンは下記式(1)で表される化合物であり、本発明においてメチルベンジルアミンの導入量とは、2−メチルベンジルアミン、3−メチルベンジルアミン、及び4−メチルベンジルアミンの合計導入量を意味する。
【0009】
<キシリレンジアミンを含有するジアミン>
本発明に用いられるジアミンは、キシリレンジアミンを含有するジアミン(以下、単に「ジアミン」ともいう。)である。キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であることが好ましく、得られるポリアミド樹脂のガスバリア性の観点からは、メタキシリレンジアミンであることがより好ましい。キシリレンジアミン含有ジアミンを用いることにより、得られるポリアミド樹脂は溶融成形性、機械的特性、及びガスバリア性に優れたものとなる。
【0010】
ジアミン中のキシリレンジアミンの含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。ジアミン中のキシリレンジアミンの含有量が上記範囲内であれば、得られるポリアミド樹脂は溶融成形性、機械的特性、及びガスバリア性に優れたものとなる。
【0011】
ジアミンに含有されるキシリレンジアミン以外のジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
<ジカルボン酸>
本発明に用いられるジカルボン酸は、特に制限されないが、成形加工性、ガスバリア性、及び機械的特性の観点から、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが更に好ましい。
炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらの中でも結晶性、高弾性の観点からアジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。これらのジカルボン酸は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ジカルボン酸として使用できるその他のジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸等の、テレフタル酸及びイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0014】
ジカルボン酸中の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸の含有量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは85〜100モル%である。ジカルボン酸中の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸の含有量が上記範囲内であれば、得られるポリアミド樹脂は成形加工性、ガスバリア性、及び機械的特性に優れたものとなる。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、上記キシリレンジアミンを含有するジアミン、ジカルボン酸、及び、所定量のメチルベンジルアミンを反応系に導入し、重縮合反応を行う工程を有する。このことにより、本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂は高い透明性を保持しつつ、結晶化速度が速いものとなる。ポリアミド樹脂の結晶化速度向上に伴い成形加工性が向上するので、成形時の結晶化工程時間を短縮することができ、すなわち成形サイクルが速くなり成形品の生産性を向上させることができる。さらに、ポリアミド樹脂の成形加工性を向上させるために結晶核剤を添加することによる、機械的物性や透明性の低下等の問題を回避することができる。
メチルベンジルアミンを反応系に所定量導入して重縮合反応を行うことで結晶化速度が向上する理由については定かではないが、メチルベンジルアミンがポリアミド樹脂中で結晶核生成を促進しているか、又はメチルベンジルアミンそのものが結晶核生成の起点になることによると考えられる。
【0016】
上記効果の観点から、反応系へのメチルベンジルアミンの導入量は、前記ジアミン中のキシリレンジアミン100質量部に対して0.001〜0.04質量部であり、好ましくは0.005〜0.04質量部、より好ましくは0.01〜0.035質量部、更に好ましくは0.015〜0.035質量部、より更に好ましくは0.015〜0.025質量部である。メチルベンジルアミンの導入量が、キシリレンジアミン100質量部に対して0.001質量部未満、あるいは0.04質量部を超えると、得られるポリアミド樹脂の結晶化速度が低下し、その結果、ポリアミド樹脂の成形加工性が低いものとなる。またメチルベンジルアミンの導入量がキシリレンジアミン100質量部に対して0.04質量部を超えると、透明性が低くなる傾向がある。
【0017】
ジアミンとジカルボン酸の重縮合反応は、特に限定されるものではなく、加圧法や常圧滴下法など、いずれの方法も利用可能である。その一例として、溶融重縮合(溶融重合)を行う方法が挙げられる。
具体的には、ジアミンとジカルボン酸とからなる塩を、水の存在下、常圧又は加圧状態で加熱し、添加した水及び重縮合により生成する水を除きながら溶融状態で重縮合させる方法が挙げられる。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧又は加圧下で重縮合する方法も挙げられる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
上記のうち、常圧又は加圧下で溶融させたジカルボン酸中にジアミンを滴下し、縮合水を除きながら溶融状態で重合させる溶融重合法を用いることが、得られるポリアミド樹脂の分子量分布を小さくできることから好ましい。
【0018】
メチルベンジルアミンを反応系に導入する方法については特に制限はない。例えば、重縮合反応系内にメチルベンジルアミンを直接導入する方法や、原料ジアミン又はジカルボン酸とメチルベンジルアミンとの混合物を反応系に導入する方法が挙げられる。
また、本発明で用いるキシリレンジアミンの製造において、使用する触媒や製造条件を特定の構成とし、メチルベンジルアミンを所定量生成するような反応を並行して行うことが可能であればそれを利用する等の方法が挙げられる。この場合には、キシリレンジアミン中のメチルベンジルアミンの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析等により求めることができる。例えば、メチルベンジルアミンを含有するキシリレンジアミンのGC測定を行い、検量線を作成して、キシリレンジアミン由来のピーク値とメチルベンジルアミン由来のピーク値の比から、メチルベンジルアミンの含有量を求める方法等が挙げられる。
【0019】
ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は、好ましくは0.9〜1.1の範囲、より好ましくは0.93〜1.07の範囲、更に好ましくは0.95〜1.05の範囲、より更に好ましくは0.97〜1.02の範囲である。モル比が上記範囲内であれば、高分子量化が進行しやすくなる。
【0020】
また、アミド化反応促進のため、重縮合反応系内にリン原子含有化合物を添加してもよい。リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも、特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する観点から好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0021】
重縮合反応系内に添加されるリン原子含有化合物の添加量は、アミド化反応の促進の観点から、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で0.1〜1,000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppm、更に好ましくは5〜400ppmである。
【0022】
また、重縮合反応速度の制御の観点から、重縮合反応系内に更にアルカリ金属化合物を共存させてもよい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が通常使用される。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム及び酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、上記アルカリ金属化合物は、重縮合反応系内に別途添加してもよく、ポリアミド樹脂の原料であるジカルボン酸由来であってもよい。
【0023】
アルカリ金属化合物の使用量は、ポリアミド樹脂中のアルカリ金属原子濃度換算で0.05〜1,000ppmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜600ppm、更に好ましくは0.25〜400ppmである。該使用量は、重縮合系内に添加したアルカリ金属化合物と、ポリアミド樹脂の原料であるジカルボン酸由来のアルカリ金属化合物の合計量である。
また、アルカリ金属化合物の使用量は、アルカリ金属化合物のモル数を前述のリン原子含有化合物のモル数で除した値が、通常0.5〜1.0の範囲となる量であり、好ましくは0.55〜0.95、より好ましくは0.6〜0.9の範囲となる量である。上記範囲内であると、アミド化反応が適度な速度で進行する。
【0024】
また、上記アルカリ金属化合物としてナトリウム化合物を用いた場合には、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度とナトリウム原子濃度の比率(Na/P)が0.4〜0.9となることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.8、更に好ましくは0.4〜0.7である。上記範囲内であると、アミド化反応が適度な速度で進行し、ポリアミド樹脂の分子量の制御が容易になる。
ポリアミド樹脂中のリン原子濃度、ナトリウム原子濃度は、ICP発光分光分析、ICP質量分析、X線光電子分光分析等の公知の方法により測定できる。
【0025】
重縮合反応の温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは160〜280℃、更に好ましくは170〜270℃である。重合温度が上記範囲内であれば、重合反応が速やかに進行する。また、モノマーや重合途中のオリゴマー、ポリマー等の熱分解が起こりにくいため、得られるポリアミド樹脂の性状が良好なものとなる。
【0026】
重縮合反応の時間は、ジアミンを滴下し始めてから通常1〜5時間である。重縮合反応時間を上記範囲内とすることにより、ポリアミド樹脂の分子量を十分に上げることができ、得られるポリアミド樹脂の着色も抑制することができる。
【0027】
上記のようにして得られたポリアミド樹脂は、重合槽より取り出され、ペレット化された後、必要に応じて乾燥・結晶化処理して使用される。
また、ポリアミド樹脂の重合度を高めるために、本発明の製造方法は、更に固相重合を行う工程を有していてもよい。固相重合は公知の方法により行うことができ、例えば、窒素雰囲気下、100℃以上でかつポリアミドの融点を下回る温度で1〜24時間加熱する方法が挙げられる。
乾燥ないし固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の装置を使用することができる。
【0028】
上記のようにして製造されるポリアミド樹脂の相対粘度は、成形性及び機械的特性の観点から、好ましくは1.0〜5.0の範囲、より好ましくは1.5〜4.0の範囲である。ポリアミド樹脂の相対粘度は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0029】
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)は、溶融成形性及び機械的特性の観点から、好ましくは10,000〜50,000、より好ましくは12,000〜40,000の範囲である。なお、ポリアミド樹脂の数平均分子量は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0030】
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂は、メチルベンジルアミンの反応系への導入量が本願規定の範囲外である場合と比較して、結晶化速度が速いものとなる。そのためポリアミド樹脂の成形加工性が向上するので、成形時の結晶化工程時間を短縮することができ、すなわち成形サイクルが速くなり成形品の生産性を向上させることができる。また、ポリアミド樹脂の成形加工性を向上させるために結晶核剤を添加することによる成形品の機械的物性の低下等の問題も回避できる。
ポリアミド樹脂の結晶化速度は、半結晶化時間を測定することにより評価できる。ここで、半結晶化時間とは、ある結晶性材料が融解状態から結晶化状態まで移行する場合に、結晶化が1/2進行するまでの時間を表し、半結晶化時間が短いほどその材料は結晶化速度が速いといえる。
本発明の製造方法では、得られるポリアミド樹脂の半結晶化時間を、好ましくは100秒以下、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは88秒以下、特に好ましくは85秒以下とすることができる。半結晶化時間は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0031】
また、本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂を用いると、高い透明性を保持した成形品を作製できる。さらに、ポリアミド樹脂に結晶核剤を添加することによる透明性の低下等の問題も回避できるため、当該ポリアミド樹脂を厚さ100μmのフィルムとした時のヘイズ値を、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下、より更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.2%以下とすることができる。ヘイズ値は、例えば曇価測定装置(日本電色工業(株)製、型式:COH−300A)を使用して測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0032】
また、本発明の製造方法で得られるポリアミド樹脂は、JIS K7373に準拠して測定したYI値が、好ましくは−20〜5、より好ましくは−20〜2、更に好ましくは−20〜0.5の範囲である。
【0033】
なお、ポリアミド樹脂には、その特性が阻害されない範囲で、艶消剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を、必要に応じて配合することができる。
【0034】
本発明の製造方法により得られたポリアミド樹脂は、従来公知の成形方法により各種形態に成形することができる。成形法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、プレス成形、ダイレクトブロー成形、回転成形、サンドイッチ成形及び二色成形等の成形法を例示することができる。
本発明の製造方法により得られたポリアミド樹脂は、結晶化速度が向上することから、成形時の結晶化工程時間を短縮することができ、すなわち成形サイクルが速くなり生産性を向上させることができる。また、本発明の製造方法で得られた結晶化速度を向上したポリアミド樹脂は、包装用フィルム、中空容器、各種成形材料、繊維等として好適であり、成形品の透明性を損なうことがないため、特に高い透明性が要求される包装用フィルム、中空容器等に好適である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0036】
<相対粘度>
ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96%硫酸20mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t
0)も同様に測定した。t及びt
0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0
【0037】
<数平均分子量(Mn)>
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、まず試料をフェノール/エタノール混合溶媒、及びベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2×1,000,000/([NH
2]+[COOH])
[NH
2]:アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
【0038】
<ヘイズ値>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂ペレットを乾燥させ、乾燥したペレットを単軸押出機にて融点+20℃の条件で押出し、厚さ100μmのフィルムを作製した。曇価測定装置(日本電色工業(株)製、型式:COH−300A)を使用して透過法によりヘイズ値を測定した。
【0039】
<半結晶化時間>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂ペレットを用いて、前記と同様に厚さ100μmのフィルムを作製し、カバーガラスに挟んだ後、ポリアミド樹脂の融点+30℃で3分間溶融保持した直後に、160℃のオイルバスで冷却した。結晶化速度測定装置((株)コタキ製作所製、型式:MK701)を用いて、脱偏光強度法により半結晶化時間を測定した。
【0040】
下記実施例では、東京化成工業(株)製のメタキシリレンジアミン(MXDA)と3−メチルベンジルアミンを用いた。
【0041】
実施例1
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、アジピン酸(ローディア社製)10kg(68.43mol)を仕込み、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。メタキシリレンジアミン100質量部に対して、3−メチルベンジルアミンが0.004質量部となるように調製した混合物9.273kg(メタキシリレンジアミン68.08mol)を溶融したアジピン酸に攪拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
前記混合物の滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂について、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
実施例2〜3、比較例1〜2
実施例1において、3−メチルベンジルアミンの量を各々表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂を製造し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
(固相重合)
また、実施例2のポリアミド樹脂500gを2Lのナス型フラスコに入れ、十分に窒素置換した後、減圧しながら、オイルバス中において190℃で4時間加熱し、固相重合を行った。固相重合後のポリアミド樹脂は、相対粘度;2.65、数平均分子量;25000、ヘイズ値;1.5%であった。
【0045】
実施例4、比較例3
実施例1において、3−メチルベンジルアミンの量を表2に記載のとおりに変更したこと、及び、アジピン酸の仕込みと同時に次亜リン酸ナトリウム・一水和物/酢酸ナトリウム(モル比=1.5/1)を0.438g添加して溶融重縮合反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂を製造し、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表の結果より、本発明の製造方法で得られたポリアミド樹脂は、反応系に導入するメチルベンジルアミン量を制御することによって比較例の方法で得られたポリアミド樹脂よりも結晶化速度が向上し、かつ当該ポリアミド樹脂を用いた成形品は高い透明性を維持できることがわかる。