【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。各例における各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
【0032】
<ヨウ素価>
JIS K0070のヨウ素価試験方法に準じる。
<沸点範囲>
JIS K2254の蒸留試験方法に準じる。
<引火点>
JIS K2265の密閉式引火点測定法に準じる。
【0033】
<数平均分子量>
島津製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定装置を用いて数平均分子量(ポリスチレン換算)を測定した。
【0034】
<イソドデカン含有量分析方法>
標品としてイソドデカンを用いて島津製GC−14Bガスクロマトグラフィー分析により溶出位置を確認し、その溶出位置に相当する化合物の含有量を測定した。
・ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:無極性キャピラリカラム、0.55mm、30m、5μm
温度:80℃〜250℃、10℃/minにて昇温分析
【0035】
<鉄分含量分析>
所定量の試料を白金皿中で緩やかに燃焼させた後に、電気炉で完全に燃焼した灰分を濃塩酸で溶解し、測定試料とした。次にICP発光分析装置を使用し、所定操作により分析した。なお、分析は工程3の終了後に行なったが、工程3を行なわない比較例3については工程2の終了後に分析を行なった。
【0036】
<臭気評価試験>
・官能試験(表1中に臭気1と表記)
官能試験は、臭気センサーでは評価が困難な臭いの質(不快感および刺激感)を評価するために行なった。
・臭気総量(表1中に臭気2と表記)
新コスモス電機(株)製の臭気センサーを用い、測定条件下で臭気成分(揮発成分)を吸入し、相対的な臭いの強弱をガス吸着により抵抗値変化として測定した。
【0037】
具体的には、25gの測定試料を2本の50ccガラススクリュー瓶(内ブタをつけてシールテープで密封)に入れ初期値をブランクとし、1本のガラススクリュー瓶は40℃の恒温槽中に1か月間静置し、もう1本のガラススクリュー瓶は屋外暴露1週間静置し、その後、官能試験による臭気テスト(臭気1)および臭気センサー(新コスモス電気(株)製の臭気センサー)による臭気テスト(臭気2)を行なって、初期値からの変化を調べた。
【0038】
〔実施例1〕
下記の工程1〜4を経て、パラフィン混合物を製造した。
イソブチレン30質量%、1−ブテン18質量%および2−ブテン25質量%を含む炭素数4のオレフィン混合ガスと、残り27質量%のブタンガスとからなる混合ガス360gをオートクレーブに仕込み、塩化アルミニウム触媒の存在下に重合反応を行なって、イソブチレンとノルマルブテンとの重合反応系を得た。
【0039】
(工程1)
反応終了後のオートクレーブ中の未反応ガスを窒素ガス置換により除去した後に、重合反応混合物であるポリブテン混合物を抜き出した。そして触媒を苛性アルカリ水溶液処理および水洗工程によって除去した。次に、水洗後のポリブテン混合物を1L容の四つ口フラスコに仕込み、オイルバスによって加熱し、内温40℃で窒素バブリングによりポリブテン混合物中に溶解している未反応ガス成分を除去した後、内温140℃、減圧度5kPaで単蒸留した。これにより、炭素数20以上の重合物を蒸留残渣としてフラスコ中に残して、炭素数16以下のポリブテン混合物が得られた。このポリブテン混合物は、数平均分子量が約185であった。
【0040】
(工程2)
このポリブテン混合物をオートクレーブ中で、水素化触媒(0.5%Pd担持アルミナ触媒)10質量%により水素圧3MPa、220℃で水素添加して、160gのパラフィン混合物を得た。パラフィン混合物は、ヨウ素価が0.1であり、数平均分子量が約180であった。
【0041】
(工程3)
外径4cm、長さ30cmのガラス筒に、アタパルガスクレーと活性白土を50:50の体積比で、アタパルガスクレーを先に充填し、ついで活性白土を充填して吸着カラムとした。工程2で得られたパラフィン混合物を吸着カラム下部より毎分1mlの流速、25℃で連続的に送液して、触媒由来および装置材質由来の微量金属化合物の吸着処理を行なった。吸着処理後のパラフィン混合物の鉄分を表1に示す。
【0042】
(工程4)
15段のオールダーショー棚段精留塔のボトム容器に、工程3で得られた吸着処理後のパラフィン混合物を150g仕込み、オイルバスにつけ容器内の液温度が110℃になるまで乾燥窒素ガスによりバブリングを行い空気との接触を避けて加熱した。容器内の液温度が110℃に達したら、減圧下(10kPa)で還流比を10、蒸留の流出温度を95℃として減圧蒸留を8時間行い、仕込み全量の25質量%を留去した。その後、再び乾燥窒素ガスを減圧下バブリングしてボトム容器内の液状物を冷却して、112.5gのパラフィン混合物を得た。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1記載の工程3において、吸着剤の種類をアタパルガスクレーとシリカゲル(体積割合が70:30)に変更し、工程4において、仕込み量の20質量%を留去したこと以外はすべて実施例1と同様の操作をした。なお、アタパルガスクレーを先に充填し、ついでシリカゲルを充填して吸着カラムとした。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0044】
〔実施例3〕
実施例1記載の工程3において、吸着剤の種類を粒子径が異なる2種のアタパルガスクレーに変更したこと以外はすべて実施例1と同様の操作をした。異なる粒子径のアタパルガスクレーのうち一方は粒子径840μmから1000μmのものであり、他方は粒子径200μmから480μmのものである。まず、粒子径840μmから1000μmのものを吸着カラムの容積割合で20%充填して仕込み、次に残り80%の割合を粒子径200μm〜480μmのもので充填して吸着カラムとした。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0045】
〔比較例1〕
実施例1記載の工程4において、蒸留の流出温度を70℃までとし、仕込み量の2質量%を留去したこと以外はすべて実施例1と同様の操作をした。その結果、イソドデカンよりも低沸点の化合物を有するパラフィン混合物が得られた。得られたパラフィン混合物のイソドデカンの含有率は15質量%であった。強い不快臭を有し、引火点も低い結果となった。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0046】
〔比較例2〕
実施例3記載の工程4において、蒸留の流出温度を85℃までとし、仕込み量の10質量%を留去したこと以外はすべて実施例3と同様の操作をした。得られたパラフィン混合物のイソドデカンの含有率は10質量%であった。強い特異臭を有し、引火点も低い結果となった。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0047】
〔実施例4〜8〕
実施例3記載の工程4において、蒸留条件を表1に示す条件に変更したこと以外はすべて実施例3と同様の操作をした。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0048】
〔比較例3〕
実施例1記載の工程3において、吸着剤による金属化合物の吸着処理を行わなかったことと、工程4において、蒸留の流出温度を90℃までとし、仕込み量の14質量%を留去したこと以外はすべて実施例1と同様の操作をした。その結果、強い特異臭を有し、引火点も低いパラフィン混合物が得られた。得られたパラフィン混合物の各種物性値の結果を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
(注1)製造工程の有無、工程あり:○、工程なし:×
(注2)含有量:イソドデカンの混合物全量に対する割合(質量%)
(注3)乾燥性:10cmの5Aろ紙(アドバンテック(株)製)に各試料0.1gを塗布して乾燥速度を測定した。ブランクとして環状シリコーンのデカメチルペンタシロキサンの半分の時間で乾燥した場合に「○」と表記し、それ以外は「×」と表記した。
(注4)臭気1:官能試験により不快及び刺激臭の有無を判定、有り:×、無し:○
(注5)臭気2:臭気センサーによる臭気総量(相対比較値)
【0051】
実施例1で得られたパラフィン混合物の沸点、揮発性、毛髪に塗布した際の使用感、皮膚表面に塗布した際の使用感、皮膚表面の油残り感を、従来の高揮発性のものを含む各種化粧用オイルと比較して、表2にまとめた。
【0052】
なお、表2中の揮発性の順序は、直径110mmのろ紙に試料をそれぞれ0.1g展延させ、2時間で乾燥する質量を測定した。完全に乾燥し質量が0gになる速さが早い順から順位を付けた。
【0053】
毛髪および皮膚に対する塗布使用感は10人のパネラーにより官能評価した。毛髪塗布使用感では、健康な中国人の毛髪の毛束1gを使用し、各試料の適量をとり、それぞれ手で塗布した。皮膚塗布使用感では、手の甲に0.1gスポイトで各試料を落とし、手のひらで広げ延ばした。
【0054】
【表2】
【0055】
(注1)丸善石油化学(株)製「マルカゾールR」
[炭素数12、引火点48℃、イソドデカン含量95質量%以上]
(注2)東レダウコーニング(株)製「SH-245」[引火点77℃]
(注3)日油(株)製、水添ポリブテン:パールリーム4
[炭素数16、沸点範囲220〜252. 5℃、引火点88℃、イソドデカン含量0質量%]
【0056】
表2に示すとおり、実施例1に係る本発明のパラフィン混合物は、環状シリコーンよりも揮発性に優れるだけでなく、オイル単独の使用感において優れ、そのほかの揮発性に優れる各種化粧用オイルと比較しても、化粧用途に使用された場合、毛髪、皮膚に塗布した際に大変良好な感触を与えるものであることが確認された。
【0057】
〔毛髪および皮膚化粧料〕
本発明のパラフィン混合物を用いて、以下に示す毛髪および皮膚化粧料を調製し、それぞれの調製品に対する評価を行なった。評価は10人のパネラーによりその使用感について行なった。すべての毛髪および皮膚化粧料において、環状シリコーンの代替として良好であり、またイソドデカンを用いた場合よりも高い評価が得られた。
【0058】
(ヘアオイル)
表3に示されるヘアオイルを、イソドデカンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用したヘアオイルは、イソドデカンを使用したものよりも、毛髪のまとまりがあり、使用感において優れていた。
【0059】
【表3】
【0060】
(注1)丸善石油化学(株)製「マルカゾールR」
[炭素数12、引火点48℃、イソドデカン含量95質量%以上]
【0061】
(サンオイル)
表4に示されるサンオイルを、環状シリコ−ンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用したサンオイルは、環状シリコ−ンを使用したものよりも、延びと使用感において優れていた。
【0062】
【表4】
【0063】
(注1)東レ・ダウコーニング(株)製「SH−245」
(注2)東レ・ダウコーニング(株)製「MQレジン」
【0064】
(日焼け止め化粧料)
表5に示される日焼け止め化粧料を、イソドデカンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用したサンオイルは、イソドデカンを使用したものよりも、延びと使用感において優れていた。
【0065】
【表5】
【0066】
(注1)丸善石油化学(株)製「マルカゾールR」
(注2)日油(株)製「パールリームEX」
(注3)東レ・ダウコーニング(株)製「MQレジン」
(注4)堺化学工業(株)製「SPP−M」
(注5)テイカ(株)製「MZ−500」
【0067】
(ウォータープルーフマスカラ)
表6に示されるウォータープルーフマスカラを、環状シリコ−ンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用したウォータープルーフマスカラは、環状シリコーンを使用したものよりも、乾きが早く使用感において優れていた。
【0068】
【表6】
【0069】
(注1)東レ・ダウコーニング(株)製「SH−245」
(注2)アクゾノーベル(株)製「BALANCE CR」
【0070】
(口紅)
表7に示される口紅を、イソドデカンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用した口紅は、イソドデカンを使用したものよりも、皮膚馴染みと装用感において優れていた。
【0071】
【表7】
【0072】
(注1)丸善石油化学(株)製「マルカゾールR」
(注2)日油(株)製「パールリームEX」
(注3)東レ・ダウコーニング(株)製「MQレジン」
(注4)堺化学工業(株)製「SPP−M」
【0073】
(薬用リップクリーム)
表8に示される薬用リップクリームを、イソドデカンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用した薬用リップクリームは、イソドデカンを使用したものよりも、皮膚馴染みと装用感において優れていた。
【0074】
【表8】
【0075】
(注1)東レ・ダウコーニング(株)製「SH−245」
【0076】
(ネイルトリートメント)
表9に示されるネイルケア用のネイルトリートメントを、イソドデカンを用いたものと比較して、評価を行なった。その結果、本発明のパラフィン混合物を使用したネイルトリートメントは、イソドデカンを使用したものよりも、装用感において優れていた。
【0077】
【表9】
【0078】
(注1)丸善石油化学(株)製「マルカゾールR」