特許第6098663号(P6098663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098663
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】インプラント用紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20170313BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61C19/00 J
   A61C8/00 Z
   A61L2/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-94996(P2015-94996)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2016-209244(P2016-209244A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正裕
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000118(JP,A)
【文献】 特開2008−264294(JP,A)
【文献】 特開平06−154300(JP,A)
【文献】 特開2009−006143(JP,A)
【文献】 特開2003−116969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 8/00
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内の紫外線ランプと対向配置される搬送可能なインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、
前記インプラント保持体は、インプラント・スタンドを有し、該インプラント・スタンドは、前記インプラント保持体に立設されて、上方に開口する二股状の挟持体を有し、前記インプラントに着脱自在に取り付けられたインプラントマウントの一端を支持して前記インプラントを水平方向の姿勢で、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域内に維持するものであることを特徴とするインプラント用紫外線照射装置。
【請求項2】
前記挟持体は、前記インプラントマウントの太さに対応した複数の挟持部を有することを特徴とする請求項に記載のインプラント用紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インプラントに紫外線を照射してその有機汚染物除去を行うインプラント用紫外線照射装置に関するものであり、特に、紫外線ランプを利用してデンタルインプラントの有機汚染物除去を行うインプラント用紫外線照射装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
インプラント、特にデンタルインプラントは失われた歯の機能を代用させることを目的として顎骨に埋め込まれるものであり、そのデンタルインプラント手術においては、デンタルインプラントが十分に骨と結合(オッセオインテグレーション)することが肝要である。そのために、例えば、特開2012−157413号公報(特許文献1)には、デンタルインプラントに紫外線を照射することによって、当該デンタルインプラントに付着した有機汚染物を除去する装置が提案されている。
【0003】
図6図7に、上記引用文献1に開示された従来のインプラント用紫外線照射装置が示されている。
このインプラント用紫外線照射装置は、開閉扉2を有する筐体1と、該筐体1内に配設された一対の紫外線ランプ3,3とを有し、前記筐体1内には開閉扉2と一体化された引き出し可能なキャリッジ4が配設され、このキャリッジ4上にはインプラント保持体5が載置されている。
そして、このインプラント保持体5は、前記キャリッジ4に着脱自在に載置される載置台6と、この載置台6に着脱自在に載置されるインプラント支持台7とからなる。
【0004】
前記載置台6には、把手8が設けられており、インプラント支持台7上には処理対象の複数本のインプラント10、10が立設されており、前記紫外線ランプ3の長手方向に沿うように直線状にセットされている。このような構成とすることで、前記把手8が設けられた載置台6を不潔域とし、インプラント10がセットされたインプラント支持台7を清潔域として区分している。
このように、インプラント保持体5を清潔域と不潔域とに分割して、インプラント保持体5の出し入れには、載置台6側(不潔域)を取扱うことで、清潔域にあるインプラント支持台7上のインプラント10には手が触れることがなく清潔状態が保たれ、照射処理後の再汚染のおそれがない構造とされている。
【0005】
このインプラント用紫外線照射装置では、インプラント10がセットされたインプラント保持体5がキャリッジ4上に載置された状態で、開閉扉2が閉じられてキャリッジ4が筐体1内に収容されたとき、インプラント保持体5上に直線状に配設されたインプラント10は一対の紫外線ランプ3,3間に位置して、これと対向配置されるものである。
インプラント10は、紫外線ランプ3からの、例えば、172nmや、254nmの紫外線が所定の時間、照射される。照射処理後は、ファン11が回転し、筐体1内のガスが循環して、オゾン除去手段12によってオゾンの除去処理が行われるものである。
【0006】
ところで、このようなインプラント用紫外線照射装置に用いられる紫外線ランプには一定の照度分布があり、また、筐体内には、紫外線ランプの破損時の破片飛散防止するための保護カバーが設けられている場合もあり、それぞれの装置において、インプラントの有機物除去を効果的に行うために、必要な紫外線照射強度を得ることができる領域、即ち、有効照射領域は、処理室の中でも限られた範囲になる。
一方で、インプラントには様々な形状のものがあり、規格によって統一されていないため、この紫外線照射装置が用いられる使用現場(医療機関)においては、様々な形状・寸法のインプラントを同時的に使用することが日常的に行われている。
【0007】
このような状況にあっては、図8に示すように、例えば、長さの異なるインプラントをインプラント支持台7上に立設してセットした場合、長いインプラントではその一部(上部)が有効照射領域Xからはみ出し、短いものでは、有効照射領域Xに届かないものがでてくる。
また、複数本のインプラントを直線状に配列してセットしたとき、両端部に位置するインプラントが有効照射領域Xからはみ出す恐れもある。
特に、図6、7に示すような、U字状の紫外線ランプ3の管軸方向(長手方向)が水平に配置されている装置や、長尺の紫外線ランプの長手方向が水平に配置されている装置においては、有効照射領域Xが必然的に水平方向に長く、垂直方向に短い横長の四辺形状になり、その場合、有効照射領域Xの垂直方向で調整できる長さ(高さ)方向の余裕が少なく、垂直に支持されたインプラントの長さにうまく適合し難いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−157413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内の紫外線ランプと対向配置される搬送可能なインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、インプラント保持体に保持されたインプラントが紫外線ランプからの照射紫外線の的確に有効照射領域内に位置するようにして、様々な形状のインプラントにおいても完全に有機汚染物の除去が行われるようにした構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係るインプラント用紫外線照射装置は、前記インプラント保持体が、インプラント・スタンドを有し、該インプラント・スタンドは、前記インプラントに着脱自在に取り付けられたインプラントマウントの一端を支持して前記インプラントを水平方向の姿勢で、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域内に維持するものであることを特徴とする。
また、前記インプラント・スタンドが、前記インプラント保持体に立設されて、上方に開口する二股状の挟持体を有することを特徴とする。
また、前記挟持体が、前記インプラントマウントの太さに対応した複数の挟持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインプラント用紫外線照射装置によれば、インプラント・スタンドに水平状態で支持されるインプラントは、紫外線ランプによって形成される有効照射領域内に的確に維持されるので、様々な形状のインプラントに対応することができ、紫外線照射洩れを引き起こすことがないという効果を奏するものである。
また、インプラント・スタンドは上方に開口する二股状の挟持体を有するので、インプラントマウントを単に挟持体に差し込むだけで簡単にインプラントを水平状態に支持できる。
更には、挟持体は複数の挟持部を有するので、太さの異なる種類のインプラントマウントに適合できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のインプラント用紫外線照射装置における要部の正面図。
図2図1のインプラント・スタンドの正面図。
図3】インプラント・スタンドの他の実施例の正面図。
図4】インプラントとインプラントマウントの説明図。
図5】インプラントの装着説明図。
図6】従来のインプラント用紫外線照射装置の側断面図。
図7図6の横断面図。
図8】従来例の不具合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、本発明のインプラント用紫外線照射装置では、基本的には紫外線ランプによって有効照射領域Xが決定される。
図5に示されるように、紫外線ランプ3が、その長手方向(管軸方向)が水平となるように配置されている装置においては、前記有効照射領域Xは、図1に示すように、水平方向に長い横長形状となる。
そして、この実施例では、当該有効照射領域Xを目視で確認できるように、載置台6上に載置されたインプラント支持台7の全体長さが有効照射領域Xの水平方向の幅Xaと等しくされており、また、載置台に設けられた把手8の握り部8aの全長が、有効照射領域Xの垂直方向の幅Xbと等しくされている。
つまり、インプラント保持体5のインプラント支持台7および把手8の握り部8aによって有効照射領域Xの水平方向および垂直方向の範囲を確認できるようにされていて、紫外線照射処理に当たって、インプラント支持台7上に支持されたインプラント10がこの有効照射領域X内に存在することを目視により確認できるようにされている。
【0014】
図1に示されるように、インプラント支持台7上にはインプラント・スタンド15が基台17によって固定されている。図2に示されるように、このインプラント・スタンド15は、上方に開口するように二股状の挟持体16が設けられている。この二股状の挟持体16には、幅の異なる複数の、この実施例では2つの、挟持部16a,16bが形成されている。
このインプラント・スタンド15には、図1に示されるように、インプラント10が挟持されて水平状態に支持される。
【0015】
ここで、インプラントの標準的な施術手順を図4、5に基づいて説明すると以下のようである。
図4(A)(B)に示すように、インプラント10には、インプラントマウント20と呼ばれる固定手段が着脱可能に取り付けられる。このインプラントマウント20は、その表面に刻設された雄ネジを、インプラント10に形成された雌ネジ内にねじ込んで固定する。
次いで、図5に示すように、インプラントマウント20が装着されたインプラント10を、顎骨30に予め形成された埋入孔内に挿入する(A)。このインプラント10に取り付けられたインプラントマウント20に、インプラント10を回動するための歯科用ハンドピース21を係合する。歯科用ハンドピース21によってインプラントマウント20を回動してインプラント10を顎骨30内にねじ込み固定する(B)。
【0016】
その後、歯科用ハンドピース21を取り外し、次いで、インプラントマウント20を逆回転してインプラント10から取り外す(C)。
その後に、クラウン(歯科用補綴物)が装着された歯科用アバットメントをインプラント10に取り付けるものである。
【0017】
しかして、本発明のインプラント用紫外線照射装置によって紫外線処理される対象物は、図4に示されたインプラント10にインプラントマウント20が取り付けられたものである。図1および図2に示すように、インプラント10を水平状態として、このインプラントマウント20を、インプラント・スタンド15の挟持体16に、開放された上方から挿入して支持するものである。これによって、図1に示すように、インプラント10は有効照射領域X内において紫外線ランプの管軸方向(長手方向)に沿うように水平状態で支持されることになる。
なお、挟持体16には複数の幅の異なる挟持部16a,16bが形成されているので、太さ(D1,D2)の異なるインプラントマウント20に対応できる。
【0018】
上記において、インプラント・スタンド15に支持されるインプラントマウント20は、挟持される部分を含めて、必ずしも全体が有効照射領域X内において紫外線照射処理されるわけではないが、前述したように、インプラント10が骨内に埋め込まれた後に取り外されるので、特に問題となることはなく、骨内に埋め込まれるインプラント10が、全領域(全長)において有効照射領域X内に配置されて紫外線処理されることが重要である。
【0019】
図3(A)(B)にはインプラント・スタンド15の挟持体16の他の実施例が示されていて、この場合、二股状の挟持体15には上方に向けて漸次広がる挟持部16a,16bが形成されていて、太さの異なる複数のインプラントマウント20に対応できるようにされている。
【0020】
なお、上記説明において、インプラント保持体は、開閉扉と一体のキャリッジによって筐体内に搬送する構造の従来例に則して説明したが、インプラント保持体の筐体への搬送はこれに限られず、手動によって直接筐体内に搬入して紫外線ランプに対向配置させる構造であってもよい。その場合、筐体の前面あるいは上面に開閉扉を設け、該開閉扉を開閉してインプラント保持体を搬入・搬出すればよい。また、筐体内にインプラント支持体のための位置決め手段を設けておくことが好ましい。
このような構造は装置が小型の場合などに特に有効である。
【0021】
以上説明したように、本発明のインプラント用紫外線照射装置においては、インプラント保持体が、インプラント・スタンドを有し、該インプラント・スタンドは、前記インプラントに着脱自在に取り付けられたインプラントマウントの一端を支持して、前記インプラントを紫外線ランプの管軸方向(長手方向)に沿うように水平方向の姿勢で、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域内に維持するので、インプラントマウントによってインプラント・スタンドに支持されたインプラントは、その全領域が有効に紫外線照射処理される。
また、紫外線ランプに対応して横長に形成される有効照射領域に対して、インプラントが水平状態で支持されるので、当該インプラントを有効照射領域内に位置付けるための調整代にゆとりがあり、インプラントの全領域を的確に有効照射領域内に位置付けることができる。
また、インプラント・スタンドに二股状の挟持体を設けて、インプラントマウントをその開放上部から挿入するという簡単な操作で水平状態に支持することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 筐体
2 開閉扉
3 紫外線ランプ
4 キャリッジ
5 インプラント保持体
6 載置台
7 インプラント支持台
8 把手
8a 握り部
10 インプラント
15 インプラント・スタンド
16 挟持体
16a,16b 挟持部
17 基台
20 インプラントマウント
21 歯科用ハンドピース
30 顎骨
X 有効照射領域
Xa 有効照射領域の水平方向の範囲(長さ)
Xb 有効照射領域の垂直方向の範囲(長さ)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8