(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係るタッチ入力装置1の構成を示すブロック図である。タッチ入力装置1は、タッチパネル2と、タッチパネル2の出力信号を処理する信号処理部3とを有しており、携帯電話(例、スマートフォン)、携帯情報端末(PDA)、タブレットPC、デジタイザ、タッチパッド、ATM、自動券売機、及びカーナビゲーションシステムなどの電子機器に組み込まれている。
【0025】
タッチパネル2は、タッチ位置およびタッチ操作時の押圧力を検出可能に構成されている。信号処理部3は、タッチパネル2におけるタッチ位置を検出する位置検出部4と、タッチパネル2に対する押圧力を検出する圧力検出部5とを備える。タッチパネル2のX座標を示す信号SX及びY座標を示す信号SYが位置検出部4に入力される。また、タッチパネル2は、焦電体を備えており、焦電体が発生する電圧信号SVが信号処理部3に入力されているようになっている。圧力検出部5は、電圧信号SVに基づきタッチパネル2に対する押圧力を検出する。これにより、タッチパネル2へのタッチの有無だけでなく、例えば指又はタッチペンの筆圧(writing pressure)などを検知することができる。
【0026】
図2は、タッチパネル2の断面図である。
図2に示すように、タッチパネル2は、タッチパネル構造体2Aおよび圧電素子構造体2Bを備える。タッチパネル構造体2Aは、タッチパネル2におけるタッチ位置を示す信号を出力するものであり、圧電素子構造体2Bは、タッチパネル2への押圧力を示す信号を出力するものである。
【0027】
タッチパネル構造体2Aは、例えば、2つの透明電極E1・E2、保護膜21、シール材22、スペーサ23および保護膜24を備えている。透明電極E1と透明電極E2とは、スペーサ23を介して互いに向い合っている。また、透明電極E1は保護膜21によって覆われ、透明電極E2は保護膜24によって覆われている。透明電極E1およびE2は、例えば、ITO(酸化インジウム・スズ)電極又は酸化スズ電極であることができる。なお、タッチパネル構造体2Aは、タッチ位置を検出するように構成されていればよく、抵抗膜方式、静電容量方式等、あらゆる方式のものを用いることができる。
【0028】
透明電極E1、E2には、図示しない駆動回路から電圧が印加されており、タッチパネル2に対してタッチ操作が行われた場合、透明電極E1と透明電極E2とが部分的に接触する。これにより、タッチパネル構造体2Aは、タッチ位置を示す位置信号SX、SYを信号処理部3に出力する。
図1に示す位置検出部4は、位置信号SX、SYに基づいて、タッチパネル2におけるタッチ位置を検出することができる。
【0029】
圧電素子構造体2Bは、上部導電層25、第1の焦電体26、第2の焦電体27および下部導電層28を備える。第1の焦電体26および第2の焦電体27は、圧電性および焦電性を有する透明圧電体である。第1の焦電体26および第2の焦電体27が圧電性を有していることにより、圧電素子構造体2Bを備えるタッチパネル2は、第1の焦電体26及び/又は第2の焦電体27への押圧力を検出可能である。第1の焦電体26および第2の焦電体27は、無機圧電膜又は有機圧電フィルムであることができる。無機圧電膜の例としては、LiNbO
3圧電膜、LiTaO
3圧電膜、KNbO
3圧電膜、ZnO圧電膜、AlN圧電膜、PZT(PbZrO
3−PbTiO
3系固溶体系材料)圧電膜等が挙げられる。
【0030】
前記「有機圧電フィルム」は、有機物である重合体から形成されるフィルム(重合体フィルム)である。当該「有機圧電フィルム」は、当該重合体以外の成分を含有してもよい。当該「有機圧電フィルム」は、当該重合体からなるフィルム、及び当該重合体中に無機物が分散されているフィルムを包含する。いうまでもないが、有機圧電フィルムは分極処理されたものが用いられる。
【0031】
本発明の圧電フィルムにおける当該重合体の含有量は、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%である。当該含有量の上限は特に制限されず、例えば、100質量%であってもよいし、99質量%であってもよい。
【0032】
前記「有機圧電フィルム」としては、例えば、奇数鎖ナイロン圧電フィルム、及びフッ化ビニリデン系重合体等が挙げられる。
【0033】
当該重合体は、好ましくは、フッ化ビニリデン系重合体である。
【0034】
本発明の圧電フィルムは、好ましくは分極化フッ化ビニリデン系重合体フィルムからなる。
【0035】
本明細書中、「フッ化ビニリデン系重合体フィルム」の例としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、フッ化ビニリデン/トリフロオロエチレン共重合体フィルム、及びポリフッ化ビニリデンフィルムが挙げられる。
【0036】
前記フッ化ビニリデン系重合体フィルムは、好ましくはフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムである。
【0037】
当該「フッ化ビニリデン系重合体フィルム」は、樹脂フィルムに通常用いられる添加剤を含有してもよい。
【0038】
当該「フッ化ビニリデン系重合体フィルム」は、フッ化ビニリデン系重合体から構成されるフィルムであり、フッ化ビニリデン系重合体を含有する。
【0039】
当該「フッ化ビニリデン系重合体」の例としては、
(1)フッ化ビニリデンと、これと共重合可能な1種以上のモノマーと、の共重合体;及び
(2)ポリフッ化ビニリデン
が挙げられる 当該「(1)フッ化ビニリデンと、これと共重合可能な1種以上のモノマーと、の共重合体」における「これと共重合可能なモノマー」の例としては、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、及びフッ化ビニルが挙げられる。
【0040】
当該「これと共重合可能な1種以上のモノマー」又はそのうちの1種は、好ましくはテトラフルオロエチレンである。
【0041】
当該「フッ化ビニリデン系重合体」の好ましい例としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体が挙げられる。
【0042】
当該「フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体」は、本発明に関する性質が著しく損なわれない限りにおいて、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含有してもよい。
【0043】
前記「(1)フッ化ビニリデンと、これと共重合可能な1種以上のモノマーと、の共重合体」は、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を50モル%以上(好ましくは60モル%以上)含有する。
【0044】
前記「フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体」における(テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位)/(フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位)のモル比は、好ましくは5/95〜36/64の範囲内、より好ましくは15/85〜25/75の範囲内、更に好ましくは18/82〜22/78の範囲内である。
【0045】
前記「フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体」は、本発明に関する性質が著しく損なわれない限りにおいて、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含有してもよい。通常、このような繰り返し単位の含有率は、10モル%以下である。このようなモノマーは、フッ化ビニリデンモノマー、テトラフルオロエチレンモノマーと共重合可能なものである限り限定されないが、その例としては、(1)フルオロモノマー(例、ビニルフルオリド(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、1−クロロ−1−フルオロ−エチレン(1,1−CFE)、1−クロロ−2−フルオロ−エチレン(1,2−CFE)、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン(CDFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロビニルモノマー、1,1,2−トリフルオロブテン−4−ブロモ−1−ブテン、1,1,2−トリフルオロブテン−4−シラン−1−ブテン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロアクリラート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート);並びに
(2)炭化水素系モノマー(例、エチレン、プロピレン、無水マレイン酸、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、酢酸ビニルが挙げられる。
【0046】
本発明の有機圧電フィルムは、全光線透過率が90%以上である。
【0047】
本発明の有機圧電フィルムの全光線透過率は、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上である。当該全光線透過率の上限は限定されないが、本発明の有機圧電フィルムの全光線透過率は、通常99%以下である。
【0048】
本明細書中、「全光線透過率」は、ASTM D1003に基づき、ヘイズガードII(製品名)(東洋精機製作所)又はその同等品を使用した光透過性試験によって得られる。
【0049】
本発明の有機圧電フィルムの全ヘイズ値は、3.0%以下であることが好ましい。
【0050】
本発明の有機圧電フィルムの全ヘイズ値は、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。当該全ヘイズ値は低いほど好ましく、その下限は限定されないが、本発明の有機圧電フィルムの全ヘイズ値は、通常0.2%以上である。
【0051】
本明細書中、「全ヘイズ値」(total haze)は、ASTM D1003に準拠し、ヘイズガードII(製品名)(東洋精機製作所)又はその同等品を使用したヘイズ(HAZE、濁度)試験によって得られる。
【0052】
本発明の有機圧電フィルムの内部ヘイズ値は、1.2%以下であることが好ましい。
【0053】
本発明の有機圧電フィルムの内部ヘイズ値は、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.9%以下、特に好ましくは0.8%以下である。当該内部ヘイズ値は低いほど好ましく、その下限は限定されないが、本発明の有機圧電フィルムの内部ヘイズ値は、通常0.1%以上である。
【0054】
本明細書中、「内部ヘイズ値」(inner haze)は、前記全ヘイズ値の測定方法において、ガラス製セルの中に水を入れて、その中にフィルムを挿入し、ヘイズ値を測定することにより、得られる。
【0055】
本発明の有機圧電フィルムの外部ヘイズ値は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下、更に好ましくは1.0%以下である。当該外部ヘイズ値は低いほど好ましく、その下限は限定されないが、本発明の有機圧電フィルムの外部ヘイズ値は、通常0.1%以上である。
【0056】
本明細書中、「外部ヘイズ値」(outer haze)は、フィルムの全ヘイズ値から内部へイズ値を差し引くことで算出される。
【0057】
本発明の有機圧電フィルムの厚さは、通常3〜100μmの範囲内、好ましくは6〜50μmの範囲内、より好ましくは9〜40μmの範囲内、更に好ましくは10〜30μmの範囲内である。
【0058】
上部導電層25および下部導電層28は、透明電極E1、E2と同様、例えば、ITO電極又は酸化スズ電極であることができる。上部導電層25および下部導電層28は、
図1に示す圧力検出部5に接続されている。
【0059】
第1の焦電体26および第2の焦電体27は、上部導電層25と下部導電層28との間で並列に配置されており、第1の焦電体26と第2の焦電体27との間に、若干の隙間が設けられている。これにより、
図3に示すように、第1の焦電体26の上面26a(一方面)に配置される電極Ea1と第2の焦電体27の上面27a(一方面)に配置される電極Ea2とが電気的に接続され、第1の焦電体26の下面26b(他方面)に配置される電極Eb1と第2の焦電体27の下面27b(他方面)に配置される電極Eb2とが電気的に接続される。なお、電極Ea1は、
図2に示す上部導電層25の第1の焦電体26上の部分に対応し、電極Ea2は、上部導電層25の第2の焦電体27上の部分に対応する。また、電極Eb1は、下部導電層28の第1の焦電体26上の部分対応し、電極Eb2は、下部導電層28の第2の焦電体27上の部分に対応する。第1の焦電体26の上面26aおよび第2の焦電体27の上面27aの電位をVa、第1の焦電体26の下面26bおよび第2の焦電体27の下面27bの電位をVbとすると、圧電素子構造体2Bは、これらの電位差Va−Vbを電圧信号として圧力検出部5に出力する。圧力検出部5は、この電圧信号に基づいて、タッチパネル2への押圧力を検出する。なお、圧電素子構造体2Bは、電流信号を出力する構成としてもよい。
【0060】
図4に示すように、第1の焦電体26および第2の焦電体27は、互いに同一の平面視形状を有している。第1の焦電体26および第2の焦電体27の平面視形状は特に限定されないが、平面視矩形のシート状に形成されていることが好ましい。第1の焦電体26および第2の焦電体27の面積は、上部導電層25および下部導電層28の面積の約1/2である。また、第1の焦電体26と第2の焦電体27とは、焦電性が近似するほど、同一の温度変化によって生じる分極電荷量も近似する。本実施形態では、第1の焦電体26と第2の焦電体27とは、同一の温度変化によって生じる分極電荷量がほぼ等しい。
【0061】
さらに、圧電素子構造体2Bは、環境温度が変化した場合に、焦電効果によって第1の焦電体26および第2の焦電体27に発生する焦電ノイズをキャンセル可能に構成されている。具体的には、
図5(a)および(b)に示すように、第1の焦電体26の上面26a(一方面)および第2の焦電体27の下面27b(他方面)は、温度上昇時に正電荷(第1の極性の電荷)が生じ、温度低下時に負電荷(第2の極性の電荷)が生じる面であり、第1の焦電体26の下面26b(他方面)および第2の焦電体27の上面27a(一方面)は、温度上昇時に負電荷が生じ、温度低下時に正電荷が生じる面となるように、第1の焦電体26および第2の焦電体27が配置されている。
【0062】
温度上昇時においては、
図5(a)に示すように、第1の焦電体26の上面26aおよび第2の焦電体27の下面27bに正電荷が生じ、第1の焦電体26の下面26bおよび第2の焦電体27の上面27aに負電荷が生じる。上述のように、第1の焦電体26と第2の焦電体27とは、同一の温度変化によって生じる分極電荷量がほぼ等しいため、電極Ea1の電荷と電極Ea2の電荷とが相殺されるとともに、電極Eb1の電荷と電極Eb2の電荷とが相殺される。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0063】
また、温度低下時においては、
図5(b)に示すように、第1の焦電体26の上面26aおよび第2の焦電体27の下面27bに負電荷が生じ、第1の焦電体26の下面26bおよび第2の焦電体27の上面27aに正電荷が生じる。そのため、温度上昇時と同様、第1の焦電体26の上面26aの電荷と第2の焦電体27の上面27aの電荷とが相殺されるとともに、第1の焦電体26の下面26bの電荷と第2の焦電体27の下面27bの電荷とが相殺される。
【0064】
このように、本実施形態に係るタッチパネル2は、温度変化による焦電ノイズの影響を低減できる。
【0065】
なお、タッチパネル2に対するタッチ操作を行った場合には、
図6に示すように、タッチ位置に対応する第1の焦電体26又は第2の焦電体27(
図6では第2の焦電体27)に圧電効果による起電力が生じる。これにより、電位差Va−Vbが圧力検出部5に電圧信号として入力され、圧力検出部5は、この電圧信号に基づいてタッチパネル2への押圧力を検出することができる。ここで、温度変化による第1の焦電体26及び第2の焦電体27の焦電ノイズは、上述のように低減されるため、電位差Va−Vbによって、第1の焦電体26又は第2の焦電体27への押圧力がほぼ正確に検出される。このように、タッチパネル2は、環境温度が変化した場合であっても焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体26又は第2の焦電体27への押圧力を正確に検出することができる。
【0066】
なお、上記の実施形態では、1つのタッチパネル2に第1の焦電体26と第2の焦電体27を1つずつ配置していたが、
図7に示すように、1つのタッチパネル2が、互いに隣り合う1対の第1の焦電体26と第2の焦電体27とからなる焦電体対30を複数備える構成としてもよい。各焦電体対30において、第1の焦電体26と第2の焦電体27とは、
図3に示すように接続されている。焦電体対30の個数及び大きさは特に限定されないが、焦電体対30の大きさは、人指の大きさと同等又はそれより小さいことが好ましい。なお
図7では、便宜上、第2の焦電体27をグレーで示している。また、各第1の焦電体26と各第2の焦電体27との間には、若干の隙間が設けられている。
【0067】
上記の構成では、例えばタッチパネル2に人指等の発熱体が近づくこと又は触れることにより、タッチパネル2の一部に温度変化が生じても、各焦電体対30ごとに、温度変化による焦電ノイズの影響をキャンセルすることができる。よって、焦電ノイズへの耐性をさらに高めることができる。
【0068】
上記の実施形態では、2つの焦電体を並列に配置していたが、2つの焦電体を積層してもよい。以下では、2つの焦電体を積層した形態について説明する。なお、以下では、既に説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0069】
図8は、
図2に示す圧電素子構造体2Bの変形例に係る圧電素子構造体2Baの構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Baは、上部導電層25、下部導電層28、中間導電層29、第1の焦電体36および第2の焦電体37を備えており、上部導電層25、第1の焦電体36、中間導電層29、第2の焦電体37、下部導電層28の順に積層されている。第1の焦電体36および第2の焦電体37は、圧電性および焦電性を有する透明圧電体であり、
図2に示す第1の焦電体26および第2の焦電体27と同一の材料で形成することができる。第1の焦電体36および第2の焦電体37が圧電性を有していることにより、圧電素子構造体2Baを備えるタッチパネル2は、第1の焦電体36及び第2の焦電体37への押圧力を検出可能である。また、中間導電層29は、上部導電層25および下部導電層28と同様、ITO電極又は酸化スズ電極であることができる。上部導電層25および下部導電層28の電位をVc、中間導電層29の電位をVdとすると、圧電素子構造体2Baは、これらの電位差Vc−Vdを電圧信号として、
図1に示す圧力検出部5に出力する。なお、圧電素子構造体2Baは、電流信号を出力する構成としてもよい。
【0070】
図2に示す圧電素子構造体2Bと異なり、圧電素子構造体2Baでは、第1の焦電体36および第2の焦電体37が中間導電層29を介して積層されたバイモルフ構造となっており、第1の焦電体36および第2の焦電体37の面積は、上部導電層25、下部導電層28および中間導電層29の面積と等しい。なお、
図2に示す圧電素子構造体2Bと同様、第1の焦電体36と第2の焦電体37とは、焦電性がほぼ同一であり、同一の温度変化によって生じる分極電荷量がほぼ等しい。
【0071】
上部導電層25、下部導電層28および中間導電層29によって、
図9に示すように、第1の焦電体36の上面36a(一方面)に配置される電極Ec1と第2の焦電体37の下面37b(一方面)に配置される電極Ec2とが電気的に接続され、第1の焦電体36の下面36b(他方面)に配置される電極Ed1と第2の焦電体37の上面37a(他方面)に配置される電極Ed2とが電気的に接続される。なお、電極Ec1および電極Ec2はそれぞれ、
図8に示す上部導電層25および下部導電層28に対応する。また、電極Ed1は、中間導電層29の第1の焦電体36側の部分に対応し、電極Ed2は、中間導電層29の第2の焦電体37側の部分に対応する。さらに、
図9および
図10に示すように、第1の焦電体36の上面36a(一方面)および第2の焦電体37の上面37a(他方面)は、温度上昇時に正電荷(第1の極性の電荷)が生じ、温度低下時に負電荷(第2の極性の電荷)が生じる面であり、第1の焦電体36の下面36b(他方面)および第2の焦電体37の下面37b(一方面)は、温度上昇時に負電荷が生じ、温度低下時に正電荷が生じる面となるように、第1の焦電体36および第2の焦電体37が配置されている。
【0072】
温度上昇時においては、
図9に示すように、第1の焦電体36の上面36aおよび第2の焦電体37の上面37aに正電荷が生じ、第1の焦電体36の下面36bおよび第2の焦電体37の下面37bに負電荷が生じる。上述のように、第1の焦電体36と第2の焦電体37とは、同一の温度変化によって生じる分極電荷量がほぼ等しいため、第1の焦電体36の上面36aの電荷(すなわち電極Ec1の電荷)と第2の焦電体37の下面37bの電荷(すなわち電極Ec2の電荷)とが相殺されるとともに、第1の焦電体36の下面36bの電荷(すなわち電極Ed1の電荷)と第2の焦電体37の上面37aの電荷(すなわち電極Ed2の電荷)とが相殺される。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0073】
また、温度低下時においては、
図10に示すように、第1の焦電体36の上面36aおよび第2の焦電体37の上面37aに負電荷が生じ、第1の焦電体36の下面36bおよび第2の焦電体37の下面37bに正電荷が生じる。そのため、温度上昇時と同様、第1の焦電体36の上面36aの電荷と第2の焦電体37の下面37bの電荷とが相殺されるとともに、第1の焦電体36の下面36bの電荷と第2の焦電体37の上面37aの電荷とが相殺される。
【0074】
以上のように、圧電素子構造体2Baは、環境温度が変化した場合に、焦電効果によって第1の焦電体36および第2の焦電体37が発生する焦電ノイズをキャンセル可能に構成されている。よって、圧電素子構造体2Baを備えたタッチパネル2は、温度変化による焦電ノイズの影響を低減することができる。
【0075】
なお、タッチパネル2に対するタッチ操作を行った場合には、
図11に示すように、第1の焦電体36に圧縮力が作用し、第2の焦電体37に引張力が作用する。そのため、第1の焦電体36の上面36aおよび第2の焦電体37の下面27bに正電荷が生じ、第1の焦電体36の下面36bおよび第2の焦電体37の上面37aに負電荷が生じる。これにより、電位Vcと電位Vdとの間に電位差が生じ、電位差Vc−Vdが圧力検出部5に電圧信号として入力される。圧力検出部5は、この電圧信号に基づいてタッチパネル2への押圧力を検出することができる。
【0076】
ここで、温度変化による第1の焦電体36及び第2の焦電体37の焦電ノイズは、上述のように低減されるため、電位差Vc−Vdによって、第1の焦電体36及び第2の焦電体37への押圧力がほぼ正確に検出される。このように、タッチパネル2は、環境温度が変化した場合であっても焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体36及び第2の焦電体37への押圧力を正確に検出することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態に係るタッチパネルは、第1の焦電体および第2の焦電体が発生する焦電ノイズをキャンセル可能に構成されているので、温度変化による焦電ノイズの影響を低減できる。
【0078】
なお、
図2に示す圧電素子構造体2Bでは、
図3、
図5および
図6に示す電極Ea1と電極Ea2とが1つの導電層(上部導電層25)で構成され、電極Eb1と電極Eb2とが1つの導電層(下部導電層28)で構成されているが、電極Ea1、Ea2、Eb1、Eb2のそれぞれを1つの導電層で構成してもよい。同様に、
図8に示す圧電素子構造体2Baでは、
図9および
図10に示す電極Ed1と電極Ed2とが1つの導電層(中間導電層29)で構成されているが、電極Ed1、Ed2のそれぞれを1つの導電層で構成してもよい。
【0079】
なお、本実施形態では、第1の焦電体と第2の焦電体とは、同一の温度変化によって生じる分極電荷量が等しいことが望ましい。これにより、温度が変化したときに、第1の焦電体の一方面に生じた電荷と第2の焦電体の一方面に生じた電荷とがほぼ完全に相殺されるとともに、第1の焦電体の他方面に生じた電荷と第2の焦電体の他方面に生じた電荷とがほぼ完全に相殺されるため、第1の焦電体の一方面および第2の焦電体の一方面と、第1の焦電体の他方面および第2の焦電体の他方面との間の電位差を殆どなくすことができる。よって、焦電ノイズをほぼ完全にキャンセルすることができる。
【0080】
なお、実用上は、第1の焦電体と第2の焦電体とは、同一の温度変化によって生じる分極電荷量が多少異なってもよい。この場合、温度変化時に、第1の焦電体の一方面に生じた正電荷と第2の焦電体の一方面に生じた負電荷とが一部相殺されるとともに、第1の焦電体の他方面に生じた負電荷と第2の焦電体の他方面に生じた正電荷とが一部相殺されるため、第1の焦電体の一方面および第2の焦電体の一方面と、第1の焦電体の他方面および第2の焦電体の他方面との間の電位差(Va−Vb又はVc−Vd)が、第1および第2の焦電体の両面の電位差に比べ小さくなる。よって、焦電ノイズは完全にはキャンセルされないが、従来構成に比べ、焦電ノイズの影響を抑えることは可能である。また、第1の焦電体と第2の焦電体とは、形状が異なってもよい。
【0081】
また、第1の焦電体、及び第2の焦電体は、同等レベルの圧電定数d33を有することが好ましい。更に、当該第1及第2の焦電体が有する同等レベルの圧電定数d33は、より低いほうが、より高度に焦電性による電気信号を低減できるので、好ましい。具体的には、当該第1及第2の焦電体が有する圧電定数d33は、ともに、好ましくは25pC/N以下、より好ましくは20pC/N以下、更に好ましくは8pC/N以下である。
【0082】
また、焦電ノイズをキャンセルしながら、十分に圧電性による電気信号(すなわち、圧電信号)を得るためには(言い換えれば、圧電性をキャンセルしないためには)、第1の焦電体、及び第2の焦電体の膜厚に差をつけることが好ましい。具体的には第1の焦電体、及び第2の焦電体の膜厚の比を好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上にすることで、圧電信号を高くできる。
【0083】
本発明のタッチパネル2において、圧力検出部5による押圧力の検出は検出回路を通した電圧値又は電流値の読み取りによって行われ、これは検出電気回路が電圧モードかチャージモードかによって異なる。当該検出においては、
(1)フィルムから発生した電圧又はチャージをそのまま読み取ること、或いは
(2)検出回路でチャージ又は電圧を増幅して読み取ること、
のいずれかを採用できる。
【0084】
当該検出においてノイズが問題になる場合は、
(1)ノイズの原因となる電磁波をシールドしノイズを除去すること、及び/又は
(2)一般的にノイズは信号より小さいので、一定値以下のチャージ又は電圧をカットオフすること、
等の手法を採用できる。
【0085】
本発明のタッチパネル2の場合、ノイズ源に焦電信号が加わる場合があるが、そのカット方法として前記(2)のカットオフの設定を行うことができる。更に積極的に焦電信号をキャンセルするためには、
(1)第1の焦電体、及び第2の焦電体として、ポーリングの向きが互いに逆の2枚のフィルムを対向させたバイモルフ構造を採用すること、
(2)第1の焦電体、及び第2の焦電体として、圧電定数d33が低いフィルムを用いることにより、焦電信号を小さくすること、及び/又は
(3)第1の焦電体、及び第2の焦電体の焦電信号と同等の焦電信号を出す焦電素子を組み込んで焦電信号をキャンセルすること
等の手法を採用できる。
【0086】
前記検出においては、微分信号を読み取ってもよいし、積分信号を読み取ってもよい。本発明のタッチパネル2では、圧電信号、及び焦電信号は、圧力、又は熱に対する微分信号として発生するが、正確に圧力に対する階調をとるためには積分信号として読み取ることが好ましい。積分信号として読み取る場合、積分の時間は任意に設定できるが、1μs〜10min、好ましくは1ms〜1minの間に設定することが望ましい。
【0087】
〔実施形態2〕
上記の実施形態では、2つの焦電体の、温度上昇時に異なる極性の電荷が生じる面に配置される電極同士を電気的に接続する構成について説明した。以下では、2つの焦電体の、温度上昇時に同一極性の電荷が生じる面に配置される電極から電圧信号を出力するように構成することにより、焦電ノイズをキャンセルする構成について説明する。なお、実施形態1において既に説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0088】
図12は、実施形態2に係る圧電素子構造体2Bbの構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Bbは、
図2に示すタッチパネル2の圧電素子構造体2Bの一変形例である。圧電素子構造体2Baは、2つの上部導電層25a・25b、下部導電層28、第1の焦電体46および第2の焦電体47を備えている。第1の焦電体46および第2の焦電体47は、下部導電層28上に並列に積層されている。上部導電層25aは、第1の焦電体46の上面46a(一方面)上に積層されており、上部導電層25bは、第2の焦電体47の上面47a(一方面)上に積層されている。第1の焦電体46および第2の焦電体47は、圧電性および焦電性を有する透明圧電体であり、
図2に示す第1の焦電体26および第2の焦電体27と同一の材料で形成することができる。第1の焦電体46および第2の焦電体47が圧電性を有していることにより、圧電素子構造体2Bbを備えるタッチパネル2は、第1の焦電体46又は第2の焦電体47への押圧力を検出可能である。上部導電層25aの電位、すなわち第1の焦電体46の上面46aの電位をVe、上部導電層25bの電位、すなわち第2の焦電体47の上面47aの電位をVfとすると、圧電素子構造体2Bbは、これらの電位差Ve−Vfを電圧信号として、
図1に示す圧力検出部5に出力する。
【0089】
言い換えると、
図13(a)および(b)に示すように、タッチパネル2は、第1の焦電体46の上面46a(一方面)に配置される電極Ee1、および第2の焦電体47の上面47a(一方面)に配置される電極Ef1から電圧信号を出力する。なお、電極Ee1,Ef1はそれぞれ、
図12に示す上部導電層25a,25bに対応する。また、圧電素子構造体2Bbは、電流信号を出力する構成としてもよい。
【0090】
また、下部導電層28によって、第1の焦電体46の下面46b(他方面)に配置される電極Ee2と第2の焦電体47の下面47b(他方面)に配置される電極Ef2とが電気的に接続されている。なお、電極Ee2は、下部導電層28の第1の焦電体46上の部分に対応し、電極Ef2は、下部導電層28の第2の焦電体47上の部分に対応する。
【0091】
さらに、
図13(a)および(b)に示すように、第1の焦電体46の上面46a(一方面)および第2の焦電体47の上面47a(一方面)は、温度上昇時に正電荷(第1の極性の電荷)が生じ、温度低下時に負電荷(第2の極性の電荷)が生じる面であり、第1の焦電体46の下面46b(他方面)および第2の焦電体47の下面47b(他方面)は、温度上昇時に負電荷が生じ、温度低下時に正電荷が生じる面となるように、第1の焦電体46および第2の焦電体47が配置されている。また、第1の焦電体46の下面46bと第2の焦電体47の下面47bとが電気的に接続されている。
【0092】
温度上昇時においては、
図13(a)に示すように、第1の焦電体46の上面46aおよび第2の焦電体47の上面47aに正電荷が生じ、第1の焦電体46の下面46bおよび第2の焦電体47の下面47bに負電荷が生じる。ここで、第1の焦電体46と第2の焦電体47とは、同一の温度変化によって生じる焦電電圧(焦電体の一方面と他方面との電位差)がほぼ等しい。そのため、第1の焦電体46の上面46aの電位(すなわち電極Ee1の電位Ve)と第2の焦電体47の下面47bの電位(すなわち電極Ef1の電位Vf)とがほぼ等しくなる。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0093】
また、温度低下時においては、
図13(b)に示すように、第1の焦電体46の上面46aおよび第2の焦電体47の上面47aに負電荷が生じ、第1の焦電体46の下面46bおよび第2の焦電体47の下面47bに正電荷が生じる。この場合も、温度上昇時と同様、電極Ee1の電位Veと電極Ef1の電位Vfとがほぼ等しくなる。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0094】
なお、タッチパネル2に対するタッチ操作を行った場合には、
図14に示すように、タッチ位置に対応する第1の焦電体46又は第2の焦電体47(
図14では第2の焦電体47)に圧電効果による起電力が生じる。これにより、電位差Ve−Vfが圧力検出部5に電圧信号として入力され、圧力検出部5は、この電圧信号に基づいてタッチパネル2への押圧力を検出することができる。ここで、温度変化による第1の焦電体46及び第2の焦電体47の焦電ノイズは、上述のように低減されるため、電位差Ve−Vfによって、第1の焦電体46又は第2の焦電体47への押圧力がほぼ正確に検出される。このように、タッチパネル2は、環境温度が変化した場合であっても焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体46又は第2の焦電体47への押圧力を正確に検出することができる。
【0095】
圧電素子構造体2Bbでは、2つの焦電体を並列に配置していたが、2つの焦電体を積層してもよい。
【0096】
図15は、実施形態2の変形例に係る圧電素子構造体2Bcの構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Bcは、
図2に示すタッチパネル2の圧電素子構造体2Bの一変形例である。圧電素子構造体2Bcは、上部導電層25、下部導電層28、中間導電層29、第1の焦電体56および第2の焦電体57を備えており、上部導電層25、第1の焦電体56、中間導電層29、第2の焦電体57、下部導電層28の順に積層されている。第1の焦電体56および第2の焦電体57は、圧電性および焦電性を有する透明圧電体であり、
図2に示す第1の焦電体26および第2の焦電体27と同一の材料で形成することができる。第1の焦電体56および第2の焦電体57が圧電性を有していることにより、圧電素子構造体2Bcを備えるタッチパネル2は、第1の焦電体56及び/又は第2の焦電体57への押圧力を検出可能である。上部導電層25の電位、すなわち第1の焦電体56の上面56a(一方面)の電位をVg、下部導電層28の電位、すなわち第2の焦電体57の下面57b(一方面)の電位をVhとすると、圧電素子構造体2Bcは、これらの電位差Vg−Vhを電圧信号として、
図1に示す圧力検出部5に出力する。言い換えると、
図16に示すように、タッチパネル2は、第1の焦電体56の上面56a(一方面)に配置される電極Eg1、および第2の焦電体57の下面57b(一方面)に配置される電極Eh1から電圧信号を出力する。なお、電極Eg1および電極Eh1はそれぞれ、
図15に示す上部導電層25および下部導電層28に対応する。また、圧電素子構造体2Bcは、電流信号を出力する構成としてもよい。
【0097】
また、中間導電層29によって、第1の焦電体56の下面56b(他方面)に配置される電極Eg2と第2の焦電体57の上面57a(他方面)に配置される電極Eh2とが電気的に接続されている。なお、電極Eg2は、中間導電層29の第1の焦電体56側の部分に対応し、電極Eh2は、中間導電層29の第2の焦電体57側の部分に対応する。
【0098】
さらに、
図16および
図17に示すように、第1の焦電体56の上面56a(一方面)および第2の焦電体57の下面57b(一方面)は、温度上昇時に正電荷(第1の極性の電荷)が生じ、温度低下時に負電荷(第2の極性の電荷)が生じる面であり、第1の焦電体56の下面56b(他方面)および第2の焦電体57の上面57a(他方面)は、温度上昇時に負電荷(第2の極性の電荷)が生じ、温度低下時に正電荷が生じる面となるように、第1の焦電体56および第2の焦電体57が配置されている。また、第1の焦電体56の下面56bに配置される電極と第2の焦電体57の上面57aに配置される電極とが電気的に接続されている。
【0099】
温度低下時においては、
図16に示すように、第1の焦電体56の上面56aおよび第2の焦電体57の下面57bに正電荷が生じ、第1の焦電体56の下面56bおよび第2の焦電体57の上面57aに負電荷が生じる。ここで、第1の焦電体56と第2の焦電体57とは、同一の温度変化によって生じる焦電電圧がほぼ等しい。そのため、第1の焦電体56の上面56aと下面56bとの電位差は、第2の焦電体57の上面57aと下面57bとの電位差とほぼ等しくなる。また、電極Eg2と電極Eh2とが電気的に接続されていることにより、第1の焦電体56の下面56bと第2の焦電体57の上面57aとが等電位であるため、第1の焦電体56の上面56aの電位(すなわち電極Eg1の電位Vg)と第2の焦電体57の下面57bの電位(すなわち電極Eh1の電位Vh)とがほぼ等しくなる。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0100】
また、温度低下時においては、
図17に示すように、第1の焦電体56の上面56aおよび第2の焦電体57の下面57bに負電荷が生じ、第1の焦電体56の下面56bおよび第2の焦電体57の上面57aに正電荷が生じる。この場合も、温度上昇時と同様、電極Eg1の電位Vgと電極Eh1の電位Vhとがほぼ等しくなる。よって、圧力検出部5が検出する焦電ノイズを低減できる。
【0101】
なお、タッチパネル2に対するタッチ操作を行った場合には、
図18に示すように、第1の焦電体56と第2の焦電体57とは、同一方向に分極して、電極Eg1と電極Eh1との間に電位差が生じる。これにより、電位差Vg−Vhが圧力検出部5に電圧信号として入力され、圧力検出部5は、この電圧信号に基づいてタッチパネル2への押圧力を検出することができる。ここで、温度変化による第1の焦電体56及び第2の焦電体57の焦電ノイズは、上述のように低減されるため、電位差Vg−Vhは、第1の焦電体56及び第2の焦電体57への主に押圧力に対応する。このように、タッチパネル2は、環境温度が変化した場合であっても焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体56及び第2の焦電体57への押圧力を正確に検出することができる。
【0102】
また、本実施形態では、第1の焦電体と第2の焦電体とは、同一の温度変化によって生じる焦電電圧が等しいことが望ましい。これにより、温度変化時に、第1の焦電体の焦電電圧と第2の焦電体の焦電電圧とがほぼ完全に相殺されるため、第1の焦電体の一方面と第2の焦電体の一方面との間の電位差を殆どなくすことができる。よって、焦電ノイズをほぼ完全にキャンセルすることができる。
【0103】
なお、実用上は、第1の焦電体と第2の焦電体とは、同一の温度変化によって生じる焦電電圧が多少異なってもよい。この場合、温度変化時に、第1の焦電体の焦電電圧と第2の焦電体の焦電電圧とが一部相殺されるため、第1の焦電体の一方面と第2の焦電体の一方面との間の電位差(Ve−Vf又はVg−Vh)が、第1および第2の焦電体の両面の電位差に比べ小さくなる。よって、焦電ノイズは完全にはキャンセルされないが、従来構成に比べ、焦電ノイズの影響を抑えることは可能である。また、第1の焦電体と第2の焦電体とは、形状が異なってもよい。
【0104】
また、第1の焦電体、及び第2の焦電体は、同等レベルの圧電定数d33を有することが好ましい。更に、当該第1及第2の焦電体が有する同等レベルの圧電定数d33は、より低いほうが、より高度に焦電性による電気信号を低減できるので、好ましい。具体的には、当該第1及第2の焦電体が有する圧電定数d33は、ともに、好ましくは25pC/N以下、より好ましくは20pC/N以下、更に好ましくは8pC/N以下である。
【0105】
また、焦電ノイズをキャンセルしながら、十分に圧電信号を得るためには、第1の焦電体、及び第2の焦電体の膜厚に差をつけることが好ましい。具体的には第1の焦電体、及び第2の焦電体の膜厚の比を好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上にすることで、圧電信号を高くできる。
【0106】
〔実施形態3〕
上記の実施形態1および2では、焦電体と電極(導電層)とが直接積層されていたが、本実施形態では、焦電体と電極との間に粘着剤又は接着剤層を設けた構成について説明する。なお、実施形態1および2において既に説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0107】
図19は、実施形態3に係る圧電素子構造体2B’の構成を示す断面図である。圧電素子構造体2B’は、
図2に示すタッチパネル2の圧電素子構造体2Bの他の変形例である。圧電素子構造体2B’は、圧電素子構造体2Baと同様、上部導電層25、第1の焦電体26、第2の焦電体27および下部導電層28を備えている。さらに、圧電素子構造体2B’は、4つの粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2および2つの保護層31,32を備えている。粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2はそれぞれ、上部導電層25と第1の焦電体26との間、下部導電層28と第1の焦電体26との間、上部導電層25と第2の焦電体27との間、および下部導電層28と第2の焦電体27との間に設けられている。言い換えると、粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2はそれぞれ、第1の焦電体26の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間、第1の焦電体26の他方面(下面)と当該他方面(下面)に配置された電極との間、第2の焦電体27の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間、および、第2の焦電体27の他方面(下面)と当該他方面(下面)に配置された電極との間に設けられている。
【0108】
粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2としては、透明であり焦電体と導電層とを接着できるものであれば特に限定されず、均一な層であっても、不均一な層であってもよい。粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2は、好ましくは例えば、アクリル系両面粘着シートがよく、基材層を有していてもよい。すなわち、当該粘着剤又は接着剤層は、例えば、(1)粘着剤又は接着剤から構成される層、(2)基材層、及び(3)粘着剤又は接着剤から構成される層からなる複層構造を有することができる。当該基材層は、透明なフィルムであればよく、好ましくは、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリパラフェニレンスルフィド、又はポリアミドイミドのフィルムであることができる。
【0109】
保護層31は、上部導電層25の第1の焦電体26および第2の焦電体27と反対側の面に設けられ、保護層32は、下部導電層28の第1の焦電体26および第2の焦電体27と反対側の面に設けられている。保護層31,32の例としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド等の可撓性を有する樹脂シート等が挙げられる。
【0110】
粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2は、絶縁性を有していてもよい。このような場合であっても、焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体26又は第2の焦電体27への押圧力を正確に検出可能である。
【0111】
なお、粘着剤又は接着剤層の数はこれに限定されず、上部導電層25と第1の焦電体26との間、下部導電層28と第1の焦電体26との間、上部導電層25と第2の焦電体27との間、および下部導電層28と第2の焦電体27との間の少なくともいずれかの箇所に粘着剤又は接着剤層を設けた構成であってもよい。すなわち、粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0112】
図20は、
図8に示す圧電素子構造体2Baの変形例に係る圧電素子構造体2Ba’の構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Ba’は、圧電素子構造体2Baと同様、上部導電層25、下部導電層28、中間導電層29、第1の焦電体36および第2の焦電体37を備えている。さらに、圧電素子構造体2Ba’は、4つの粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2および2つの保護層31,32を備えている。粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2はそれぞれ、上部導電層25と第1の焦電体36との間、第2の焦電体37と下部導電層28との間、第1の焦電体36と中間導電層29との間、および中間導電層29と第2の焦電体37との間に設けられている。言い換えると、粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2はそれぞれ、第1の焦電体36の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間、第2の焦電体37の一方面(下面)と当該一方面(下面)に配置された電極との間、第1の焦電体36の他方面(下面)と当該他方面(下面)に配置された電極との間、および、第2の焦電体37の他方面(上面)と当該他方面(上面)に配置された電極との間に設けられている。
【0113】
粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2は、上述の粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2と同じ材料で形成することができる。また、保護層31,32は、
図19に示す保護層31,32と同じ材料で形成することができる。
【0114】
粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2は、絶縁性を有していてもよい。このような場合であっても、焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体36及び第2の焦電体37への押圧力を正確に検出可能である。
【0115】
なお、粘着剤又は接着剤層の数はこれに限定されず、粘着剤又は接着剤層Fc1,Fc2,Fd1,Fd2の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0116】
図21は、
図12に示す圧電素子構造体2Bbの変形例に係る圧電素子構造体2Bb’の構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Bb’は、圧電素子構造体2Bbと同様、2つの上部導電層25a・25b、第1の焦電体46および第2の焦電体47を備え、さらに、圧電素子構造体2Bb’は、3つの粘着剤又は接着剤層Fe1,Fe2,Ff1を備えている。粘着剤又は接着剤層Fe1,Ff1はそれぞれ、上部導電層25aと第1の焦電体46との間、および上部導電層25aと第2の焦電体47との間に設けられている。言い換えると、粘着剤又は接着剤層Fe1,Ff1はそれぞれ、第1の焦電体46の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間、および第2の焦電体の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間に設けられている。また、粘着剤又は接着剤層Fe2は、第1の焦電体46および第2の焦電体47の下部に設けられている。すなわち、圧電素子構造体2Bb’は、
図12に示す圧電素子構造体2Bbにおいて、粘着剤又は接着剤層Fe1,Ff1を更に備え、下部導電層28に代わりに粘着剤又は接着剤層Fe2を備えた構成である。粘着剤又は接着剤層Fe1,Fe2,Ff1は、上述の粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2と同じ材料で形成することができる。
【0117】
また、上部導電層25a,25bの上に上部導電層25a,25bを保護する保護層を設けてもよい。当該保護層は、
図19に示す保護層31,32と同じ材料で形成することができる。
【0118】
粘着剤又は接着剤層Fe1,Fe2,Ff1は、絶縁性を有していてもよい。このような場合であっても、焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体46又は第2の焦電体47への押圧力を正確に検出可能である。
【0119】
なお、粘着剤又は接着剤層の数はこれに限定されず、粘着剤又は接着剤層Fe1,Fe2,Ff1の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0120】
図22は、
図15に示す圧電素子構造体2Bcの変形例に係る圧電素子構造体2Bc’の構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Bc’は、圧電素子構造体2Bcと同様、上部導電層25、下部導電層28、中間導電層29、第1の焦電体56および第2の焦電体57を備えている。さらに、圧電素子構造体2Bc’は、4つの粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2および2つの保護層31,32を備えている。粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2はそれぞれ、上部導電層25と第1の焦電体56との間、第1の焦電体56と中間導電層29との間、中間導電層29と第2の焦電体57との間、および第2の焦電体57と下部導電層28との間に設けられている。言い換えると、粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2はそれぞれ、第1の焦電体56の一方面(上面)と当該一方面(上面)に配置された電極との間、第1の焦電体56の他方面(下面)と当該他方面(下面)に配置された電極との間、第2の焦電体の一方面(下面)と当該一方面(下面)に配置された電極との間、および第2の焦電体の他方面(上面)と当該他方面(上面)に配置された電極との間に設けられている。
【0121】
粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2は、上述の粘着剤又は接着剤層Fa1,Fa2,Fb1,Fb2と同じ材料で形成することができる。また、保護層31,32は、
図19に示す保護層31,32と同じ材料で形成することができる。
【0122】
粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2は、絶縁性を有していてもよい。このような場合であっても、焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体56及び第2の焦電体57への押圧力を正確に検出可能である。
【0123】
なお、粘着剤又は接着剤層の数はこれに限定されず、粘着剤又は接着剤層Fg1,Fg2,Fh1,Fh2の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0124】
図23は、圧電素子構造体2Bc’の更なる変形例である圧電素子構造体2Bc”の構成を示す断面図である。圧電素子構造体2Bc”は、圧電素子構造体2Bc’において、中間導電層29および粘着剤又は接着剤層Fg2,Fh2の代わりに粘着剤又は接着剤層Fiを設けたものである。すなわち、圧電素子構造体2Bc”は、第1の焦電体56の他方面(下面)および第2の焦電体57の他方面(上面)が対向するように第1の焦電体56と第2の焦電体57とが積層されており、第1の焦電体56の他方面(下面)と第2の焦電体57の他方面(上面)との間に粘着剤又は接着剤層Fiが設けられている構成である。この場合、第1の焦電体56の他方面と第2の焦電体57の他方面とが絶縁される。このような構成であっても、焦電ノイズの影響を低減できるので、第1の焦電体56及び第2の焦電体57への押圧力を正確に検出可能である。
【0125】
なお、粘着剤又は接着剤層の数はこれに限定されず、粘着剤又は接着剤層Fg1,Fh1,Fiの少なくともいずれかを省略してもよい。
【0126】
〔付記事項〕
本発明におけるタッチパネルは、焦電体を有するものであれば、抵抗膜方式、静電容量方式等、あらゆる方式のタッチパネルを用いることができる。
【0127】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記の実施形態では、タッチパネルにおけるタッチ位置を検出可能なタッチ入力装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。タッチパネルへの押圧力は検出するが、タッチ位置は検出しないタッチセンサ等も、本発明の技術的範囲に含まれる。当該タッチセンサは、電子機器(例、衝突センサー、ロボット掃除機)に用いることができる。
【0128】
また、上記の実施形態では、第1の焦電体および第2の焦電体がそれぞれ1つずつ設けられていたが、第1の焦電体および第2の焦電体の少なくとも一方を、複数の焦電体によって構成してもよい。
【0129】
また、上記の実施形態では、タッチ位置と押圧力とを異なる構造体(タッチパネル構造体、圧電素子構造体)によって検出していたが、それらを1つの構造体によって検出してもよい。例えば、X方向に延びる複数の電極とY方向に延びる複数の電極との間に、焦電ノイズが低減可能に構成された第1の焦電体と第2の焦電体との積層体(例えば
図8、
図15)を挟み込んでもよい。具体的には、特開2010−026938号公報に開示されたタッチパネル100において、圧電体層3を、本願の実施形態における第1の焦電体と第2の焦電体との積層体に置き換えてもよい。
【0130】
本発明のタッチパネルを指等で押圧すると、シート状の第1および第2の焦電体のひずみの時間的変化に応じた電気信号を得ることができるので、当該タッチパネルを用いれば、押圧の有無、速度、大きさ(強弱)、又はこれらの変化、或いはこれらの組み合わせを決定できる。ここで、押圧の大きさ(すなわち、静圧)は、前記電気信号の積分値を用いて決定できる。
【0131】
本発明のタッチパネルによれば、焦電性による電気信号が低減されて、圧電性による電気信号を選択的に得ることが可能である。
【0132】
本発明のタッチパネルは、電子機器(例、携帯電話(例、スマートフォン)、携帯情報端末(PDA)、タブレットPC、ATM、自動券売機、及びデジタイザ、タッチパッド、カーナビゲーションシステム、FA(ファクトリー・オートメーション)機器等のタッチパネルディスプレイ(タッチパネルモニター))に用いることができる。当該電子機器は、タッチ位置、タッチ圧又はその両方に基づく操作及び動作(例、ペイントソフトにおいて、筆圧に応じてスクリーンに表示される線の太さを変える等の操作)が可能である。