(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098762
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】車両走行風の風向制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
B60H1/34 651Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-529699(P2016-529699)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公表番号】特表2016-539044(P2016-539044A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】KR2014005870
(87)【国際公開番号】WO2015199268
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0076252
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515271571
【氏名又は名称】インダストリー−アカデミック コーオペレーション ファウンデーション オブ スンチョン ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウ−ヨン
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−174014(JP,U)
【文献】
実開昭48−110843(JP,U)
【文献】
実開昭55−161610(JP,U)
【文献】
実開平1−150113(JP,U)
【文献】
実開昭51−36820(JP,U)
【文献】
特開平9−11748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
B60J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面または曲面をなす板材からなり、前記板材の一角に形成された回動軸と、前記回動軸上に具備された球面体とを含む風向調節板と、
一側に、前記球面体が自由に回動するように固定される球面支持部が具備され、他側には、車両ドアの窓枠やガラス窓またはサンバイザーを含むサイドウィンドウ周辺の構造物に着脱可能に固定されるようにする固定部を含む着脱手段と、
を含む車両走行風の風向制御装置。
【請求項2】
前記回動軸は、前記板材の一角をなし、前記球面体周辺の板材の一部分が切開されて前記球面体の回動による前記板材と着脱手段との間の干渉が防止されることを特徴とする請求項1に記載の車両走行風の風向制御装置。
【請求項3】
前記固定部は、弾性体の弾力による固定力が提供されるニッパー手段であることを特徴とする請求項1に記載の車両走行風の風向制御装置。
【請求項4】
前記固定部は、車両ドアの窓枠に挟まれて自体の弾性力によって固定されるクリップ手段であることを特徴とする請求項1に記載の車両走行風の風向制御装置。
【請求項5】
前記球面体は、前記球面支持部に対して3次元上の全ての方向に回動可能に固定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両走行風の風向制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行風の風向制御装置に関し、さらに詳しくは、車両の走行時に車両側面に位置したサイドウィンドウを開放した時に室内に流入される走行風の風向を運転者または搭乗者が望むとおりに適切に調節できるようにすることで、新鮮な外風を積極的に車両室内の空気調和に活用することができる車両走行風の風向制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内空気は、空気調和装置によって搭乗者に快適感が与えられる適正温度で維持される。車両の空気調和装置は、エンジン冷却水の熱または電気ヒーターによって供給される熱を利用して、空調空気の温度を上げるか、これとは反対に、エアコンを作動させて温度を下げることで、空調空気の温度を適切に調節する。特に、最近では、自動化されたHAVC(Heating、Ventilation and Air Conditioning)システムが広く適用されながら、設定された温度や日射光線の影響などを総合的に反映した精密な温度制御が可能となった。
【0003】
多くの場合、上記のような車空気調和装置は、充分に満足できるような水準で車両室内の全体的な空調状態を制御することができるが、身体の特定部位、例えば、襟首や肩に集中的な風の供給を望む搭乗者の欲求を満し難く、他方では、車両が走行する時に生じる凉しい走行風を室内空調に積極的に活用することはほぼ考慮されていないという限界がある。特に、高油価時代を生きる運転者として、走行燃費に非常に悪影響を及ぼすエアコンの稼動を減らすために凉しい走行風を利用しようとするが、走行風は、風向が制御された風ではないため、快適感とは距離があり、換気のための用途として活用する程度に留まっている。
【0004】
このため、特定部位に風を供給するためか、走行風に方向性を与えるための幾つかの補助的な装置が紹介されたことがあり、これは、下記の特許文献1、特許文献2を一例として挙げられる。
【0005】
特許文献1は、「運転者の襟首に風を与えるための装置」であり、自動車両のシガージャックから供給された電源によって作動するファンがヘッドレストに脱着可能に装着され、運転者の襟首に集中的に風を与えることで、運転中にシーツの背もたれによって背中部分に感じる暑さを冷やすようにしたものである。
【0006】
そして特許文献2は、「車用風誘導機構」であり、サイドウィンドウの開放時に車内に流入される風を風案内部を通じて前の席に誘導することで、フロントガラスの湿気発生を予防するようにした車両用風誘導機構に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】公開実用新案第2010−0000756号(2010.01.25公開)
【特許文献2】公開実用新案第2013−0006066号(2013.10.21公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、特許文献2から分かるように、従来も、車両用空気調和装置の限界を解決するための多様な試みがあってきた。
【0009】
しかし、自動車の電源を利用する補助装置(例えば、特許文献1)は、ある程度車両の燃費に悪影響を及ぼすだけでなく、価格が高価であり、装着が多少不便であるという短所があり、特許文献2のような車両用風誘導機構は、走行風をフロントガラスの湿気発生の予防に活用するという点では利点があるが、車両室内の空調環境自体を改善する効果が不十分であり、風の誘導方向が固定されているので、特定方向のみに走行風が供給されるという限界がある。
【0010】
そこで、本発明は、車両に簡単に装着できる安価な装置を通じて運転者や搭乗者が凉しい走行風を望む方向に自由に調整できるようにすることにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車両走行風の風向制御装置は、平面または曲面をなす板材からなり、前記板材の一角に形成された回動軸と、前記回動軸上に具備された球面体とを含む風向調節板と、一側に、前記球面体が自由に回動するように固定される球面支持部が具備され、他側には、車両ドアの窓枠やガラス窓またはサンバイザーを含むサイドウィンドウ周辺の構造物に着脱可能に固定されるようにする固定部を含む着脱手段とを含む。
【0012】
本発明の実施例において、前記回動軸は、前記板材の一角をなし、前記球面体周辺の板材の一部分が切開されて前記球面体の回動による前記板材と着脱手段との間の干渉が防止されるように構成する。
【0013】
そして、本発明の実施例において、前記固定部は、弾性体の弾力による固定力が提供されるニッパー手段からなる。
【0014】
または、本発明の実施例において、前記固定部は、車両ドアの窓枠に挟まれて自体の弾性力によって固定されるクリップ手段からなる。
【0015】
そして、本発明の実施例において、前記球面体は、前記球面支持部に対して3次元上の全ての方向に回動可能に固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記のような構造を有する本発明の風向制御装置は、簡単な構造を有しており、安価な費用で普及可能であり、簡単な着脱構造によって使用が便利であり、走行風を効果的に車両空調に活用することができ、搭乗者の快適感とエネルギー節減を図ることができるなど多様な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係る車両走行風の風向制御装置に対する分解斜視図である。
【
図2】
図1の風向制御装置に対する組立て斜視図である。
【
図3】
図2の風向制御装置のうち固定部のまた他の構成に対する斜視図である。
【
図4】本発明の風向制御装置の使用状態を例示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両走行風の風向制御装置10の好ましい実施例を添付の図面を参照として詳しく説明する。本発明は、以下で開示する実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態で具現することができ、但し、本実施例は、本発明の開示を完全にして、通常の知識を持った者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る車両走行風の風向制御装置の構造を説明するための分解斜視図であり、
図2は、
図1の風向制御装置が組立てられた状態を示す斜視図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本発明に係る車両走行風の風向制御装置10は、大きく分けて、走行風の風向を変更させる役割をする風向調節板100と、前記風向調節板100を車両ドアの窓枠やガラス窓またはサンバイザーを含むサイドウィンドウ周辺の構造物に着脱可能に固定させる一方、風向調節板100の姿勢が自由に調整可能に固定する機能を担当する着脱手段200とを含む。
【0021】
風向調節板100は、平面または曲面をなす板材110からなり、この板材110が走行風の流れに対するガイド板の役割をすることで、走行風の方向を調節する。
【0022】
そして、風向調節板100の板材110には、その一角に回動軸120が形成され、また前記回動軸120上には、球面体130が具備されるが、この球面体130は、後述する着脱手段200の球面支持部210中に固定される。
【0023】
着脱手段200は、その一側には、回動軸120上に具備された球面体130が自由に回動するように固定される球面支持部210が設けられ、その他側には、サイドウィンドウ周辺の構造物に着脱可能に固定される固定部220が具備されている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、回動軸120上の球面体130は、通常の力では分離されないように着脱手段200の球面支持部210中に固定されるが、球面体130は、球面支持部210と接触面をなしながら自由に回動、特に好ましくは、3次元上の全ての方向に自由自在に回動可能に固定される。従って、球面体130と連結された回動軸120も自由に回動し、結局、回動軸120を含んでいる風向調節板100の板材110もその姿勢が自由に調整されることができる。
【0025】
一方、板材110の一角に形成された回動軸120は、球面体130が具備された部分(例えば、中間部分)が「∩」字状に折れ曲がることで、板材110が回動する時に着脱手段200と干渉が発生しないように一定距離離隔して構成される。但し、このような場合、風向制御装置10の全体大きさが大きくなり、回動軸120の折れ曲がった部分に設けられた球面体130が回動中心となることで、走行風の風圧によるモーメントが大きく作用して、風向調節板100が不意に作動する状況が発生し得る。
【0026】
従って、本発明の実施例は、一直線の回動軸120が板材110の一角をなすようにする一方、球面体130周辺の板材110の一部分に切開部115を形成することで、球面体130の回動による板材110と着脱手段200との間の干渉が防止される構造を設けた。
【0027】
そして、本発明の風向制御装置10に具備された着脱手段200の固定部220は、固定される位置の構造と形状に適合するように多様に変形されてもよく、その例が
図2及び
図3に示されている。
【0028】
図2に示した固定部220は、弾性体の弾力による固定力が提供される通常見られるニッパー手段220−1からなる例を示す。ニッパー手段220−1の大きさや幅などは、適切に設計されてもよく、ニッパー手段220−1は、固定機構として汎用性を有しているため、車両ドアの窓枠やガラス窓またはサンバイザーなどに固定されてもよい。
【0029】
図3は、特に、車両ドアの窓枠に簡便に挟まれる固定部220の一例として、その自体の弾性力が固定力として作用するクリップ手段220−2を示している。クリップ手段220−2は、その断面形状が概して「コ」字状を有しているが、その入口は狭くても、その内側はクリップ手段220−2が挟まれる構造物が入られる程度の空間が形成されており、クリップ手段220−2が挟まれる時に弾性的に開かれる入口構造が固定力を発生させる。
【0030】
このようなクリップ手段220−2も多様な形状で設計されてもよいが、
図3のクリップ手段220−2は、入口の外側端が若干折り曲げられてドア窓枠と車体外部面との間の隙間に挟まれ、入口の内側が開かれてドア窓枠の内側面を圧迫して固定される例を示した。
【0031】
上記のような構成を持った本発明の風向制御装置10は、
図4に示すように使用されることができるが、ドア窓枠の上部側に着脱手段200が固定され、風向調節板100を望む角度と方向に回動させることで、車両走行時に涼しい風を望む方向に流入させることができる。
【0032】
従って、本発明の風向制御装置10は、簡単な構造を有しており、安価な費用で普及することが可能であり,簡単な着脱構造により使用が便利であり、走行風を効果的に車両空調に活用することができ、搭乗者の快適感とエネルギー節減の側面でも利点を有するなど多様な長所を有する。
【0033】
以上、本発明に係る車両走行風の風向制御装置10について例示した図面を参照として説明したが、本明細書に開示された実施例と図面によって本発明が限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者によって多様な変形がなされることができることは勿論である。