特許第6098787号(P6098787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098787
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】タッチパネル付き表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170313BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   G06F3/041 460
   G06F3/041 495
   G06F3/044 127
   G06F3/044 128
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-211442(P2012-211442)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-67187(P2014-67187A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】榁木 幸信
(72)【発明者】
【氏名】飯田 将司
(72)【発明者】
【氏名】森川 遥
(72)【発明者】
【氏名】奥野 二郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 範明
(72)【発明者】
【氏名】高山 大介
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−133580(JP,A)
【文献】 特開2011−073446(JP,A)
【文献】 特開2012−008422(JP,A)
【文献】 特開2012−035537(JP,A)
【文献】 特開2010−170515(JP,A)
【文献】 特開平03−063812(JP,A)
【文献】 特開2005−254470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のディスプレイ表面との間に実質的にギャップを設けることなく前記ディスプレイ表面に粘着層を介してタッチパネル部が配置されるタッチパネル付き表示装置において、
前記タッチパネル部は、前記表示装置側から順に配置される面状体、粘着層及び樹脂カバーを備えており、
前記面状体は、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの少なくとも一方面にパターニングされたタッチ位置検出用の導電層とを備えており、
前記樹脂カバーは、ポリカーボネート製フィルムの両面にPMMA製(ポリメタクリル酸メチル製)のフィルムを配設した積層フィルム、或いは、PMMA製(ポリメタクリル酸メチル製)のフィルムの片面にポリカーボネート製フィルムを配設した積層フィルムであり、
前記タッチパネル部におけるタッチ面の鉛筆硬度が6H以上、前記タッチパネル部の厚みが、330μm以上913μm以下、前記タッチパネル部の単位面積当たりの重量が、0.04g/cm以上0.119g/cm以下であるタッチパネル付き表示装置。
【請求項2】
前記樹脂カバーの厚みが200μm以上500μm以下である請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項3】
表示装置のディスプレイ表面との間に実質的にギャップを設けることなく前記ディスプレイ表面に粘着層を介してタッチパネル部が配置されるタッチパネル付き表示装置において、
前記タッチパネル部は、前記表示装置側から順に配置される面状体、粘着層及び樹脂カバーを備えており、
前記面状体は、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの少なくとも一方面にパターニングされたタッチ位置検出用の導電層とを備えており、
前記樹脂カバーは、ポリエチレンテレフタレートの可撓性フィルムであり、その厚みが250μm以上500μm以下であり、
前記タッチパネル部におけるタッチ面の鉛筆硬度が3H以上であるタッチパネル付き表示装置。
【請求項4】
前記樹脂カバーの表面に形成されるハードコート層を更に備える請求項1又は3のいずれかに記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項5】
前記ハードコート層は、フッ素系成分またはシリコン系成分またはその両方を含むハードコート材から形成される請求項4に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項6】
前記ハードコート層は、その表面の摩擦係数が0.03〜0.2である請求項4又は5に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項7】
前記樹脂フィルムが、光学フィルムにより形成されている請求項1又は3に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項8】
前記面状体は、
第1樹脂フィルムの一方面に第1導電層がパターニングされ、厚みが50μm以上250μmの第1電極フィルムと、
第2樹脂フィルムの一方面に第2導電層がパターニングされ、厚みが50μm以上250μmの第2電極フィルムと
前記第1電極フィルム及び前記第2電極フィルムの間に介在される粘着層とを備える積層体である請求項1又は3に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項9】
前記第1樹脂フィルム及び前記第2樹脂フィルムの少なくとも一方は、光学フィルムにより形成されている請求項に記載のタッチパネル付き表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル付き表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パソコン、携帯端末、電子手帳、OA機器、ゲーム機、PDA、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機等における表示装置のディスプレイ表面に、入力位置を検出するためのタッチパネルを取り付けたタッチパネル付き表示装置が知られている。このようなタッチパネル付き表示装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、ガラスにより構成される基板の一方面にタッチ位置検出用の電極パターンが形成されるタッチパネルが表示装置のディスプレイ表面に配置されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−054199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタッチパネル付き表示装置においては、タッチパネルの構成部材としてガラス基板を有しているため割れる恐れがある。またタッチパネルの割れを防止するためには、ガラス基板の厚みを大きくすることにより対応可能ではあるが、重量が増大する。特に画面サイズの大きな機器に取り付ける場合に、軽量化の妨げとなる。
また、ガラスを構成部材として含み、可撓性が乏しいため、タッチパネルをディスプレイ表面に配設する際の作業性が悪いという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、薄くて、軽く、割れにくいタッチパネルを備えるタッチパネル表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、表示装置のディスプレイ表面との間に実質的にギャップを設けることなくタッチパネル部が配置されるタッチパネル付き表示装置において、前記タッチパネル部は、前記表示装置側から順に配置される面状体及び樹脂カバーを備えており、前記面状体は、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの少なくとも一方面にパターニングされたタッチ位置検出用の導電層とを備えており、前記樹脂カバーは、厚みが150μm以上500μm以下であり、前記タッチパネル部におけるタッチ面の鉛筆硬度がH以上であるタッチパネル付き表示装置により達成される。
【0007】
タッチパネル部を構成する面状部材(樹脂カバーや面状体)を樹脂材料により形成することにより、タッチパネル部を薄くて軽い構造とすることが可能となる。また、タッチパネル部におけるタッチ面の鉛筆硬度がH以上であることから、タッチ面の傷つきを効果的に抑制することが可能となる。また、本発明に係るタッチパネル部は、薄く、可撓性に富む構造を有するため、粘着層を介して表示装置のディスプレイ表面に張り付ける際に、タッチパネル部を折り曲げて、端から順に貼り合せることができ、エアがみを引き起こさずに綺麗に設置することが可能となる。この結果、表示装置のディスプレイ表面にタッチパネルを配設する際の作業性が向上し、作業コストを低減できる。
【0008】
また、このタッチパネル付き表示装置において、前記タッチパネル部の厚みが、300μm以上1200μm以下であることが好ましい。
【0009】
また、前記タッチパネル部の単位面積当たりの重量が、0.03g/cm以上0.14g/cm以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記面状体は、第1樹脂フィルムの一方面に第1導電層がパターニングされ、厚みが50μm以上250μmの第1電極フィルムと、第2樹脂フィルムの一方面に第2導電層がパターニングされ、厚みが50μm以上250μmの第2電極フィルムとを備える積層体であることが好ましい。
【0011】
また、前記第1樹脂フィルム及び前記第2樹脂フィルムは、それぞれ、光学フィルムにより形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄くて、軽く、割れにくいタッチパネルを備えるタッチパネル表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るタッチパネル付き表示装置の概略構成断面図である。
図2図1に示すタッチパネル部が備える第1電極フィルム及び第2電極フィルムの平面図である。
図3図1に示すタッチパネル部が備える第1電極フィルム及び第2電極フィルムの変形例を示す平面図である。
図4図1に示すタッチパネル付き表示装置の変形例を示す概略構成断面図である。
図5】鉛筆硬度測定試験時のタッチパネル部の配置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実態形態にかかるタッチパネル付き表示装置100について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。本発明の一実施形態に係るタッチパネル付き表示装置100は、例えば、パソコン、スマートフォン、電子書籍端末、携帯電話、電子手帳、OA機器、ゲーム機、PDA、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機等の操作用表示装置として使用されるものであり、図1の概略構成断面図に示すように、表示装置10とタッチパネル部1とを備えている。
【0015】
タッチパネル部1は、静電容量式のタッチパネルであり、表示装置10のディスプレイ表面10aとの間に実質的にギャップ(エアギャップ)を設けることなく、粘着層6aを介してディスプレイ表面10a上に配置されている。また、タッチパネル部1は、図1に示すように、表示装置10側から順に配置される面状体2及び樹脂カバー5を備えている。面状体2及び樹脂カバー5は、粘着層6cにより貼着されている。このタッチパネル部1の厚みは、300μm以上1200μm以下となるように構成することが好ましく、500μm以上1000μm以下となるように構成することがさらに好ましい。また、タッチパネル部1の単位面積当たりの重量が、0.03g/cm以上0.14g/cm以下となるように構成することが好ましく、0.07g/cm以上0.13g/cm以下となるように構成することがさらに好ましい。ここで、タッチパネル部1の単位面積当たりの重量とは、(タッチパネル部1全体の重量)/(タッチパネル部1のパネル面積)により表されるパラメータをいう。また、タッチパネル部1におけるタッチ面の鉛筆硬度がH以上となるように構成されている。
【0016】
面状体2は、図1の構成においては、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを備える積層体として形成されている。第1電極フィルム3及び第2電極フィルム4は、粘着層6bを介して互いに貼着されている。第1電極フィルム3は、第1樹脂フィルム31と、当該第1樹脂フィルム31の一方面にパターニングされて形成される第1導電層32とを備えている。同様に、第2電極フィルム4は、第2樹脂フィルム41と、当該第2樹脂フィルム41の一方面にパターニングされて形成される第2導電層42とを備えている。これら、第1電極フィルム3及び第2電極フィルム4は、それぞれ、その厚みが、50μm以上250μm以下の範囲となるように構成することが好ましい。
【0017】
また、第1樹脂フィルム31上には、図2(a)の平面図に示すように、第1導電層32を構成する各導電部32aに電気的に接続する第1引き出し配線33を備えている。同様に、第2樹脂フィルム41上には、図2(b)の平面図に示すように、第2導電層42を構成する各導電部42aに電気的に接続する第2引き出し配線43を備えている。
【0018】
第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とは、図1に示すように、第1樹脂フィルム31の他方面側(第1導電層32が形成されていない面側)と、第2樹脂フィルム41の一方面側(第2導電層42が形成される面側)が互いに離間して対向するようにして、粘着層6bを介して貼着されている。なお、図1の構成においては、第1樹脂フィルム31上に形成される第1導電層32が、タッチ面(樹脂カバー5側)を向くように配置されている。また、第1導電層32及び第2導電層42が互いに離間して対向するようにして、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを粘着層6bを介して貼着してもよい。また、第1導電層32が表示装置10側を向くように配置すると共に、この第1導電層32と、第2樹脂フィルム41の他方面側(第2導電層42が形成されていない面側)とが互いに離間して対向するようにして、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを粘着層6bを介して粘着してもよい。また、第1導電層32の他方面側及び第2導電層42の他方面側が互いに離間して対向するようにして、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを粘着層6bを介して貼着してもよい。
【0019】
第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41は、絶縁層を構成する誘電体基板であり、透明性が高い材料からなることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル、非晶性ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂、シクロオレフィン重合体(COP)又はシクロオレフィン共重合体(COC)からなるシクロオレフィン系樹脂などの合成樹脂製の可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体により形成される。第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41の厚みは、50μm〜250μmの範囲に形成されることが好ましい。なお、第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41の表面に、濡れ性向上の為にプラズマ処理を行ったり、表面保護のためのハードコート層や、第1導電層32や第2導電層42との密着性改善や光学特性改善の為にアンダーコート層を設けるなど、必要な機能性膜を追加してもよい。
【0020】
また、第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41を光等方性材料により形成した光等方性フィルム(光学フィルム)により構成してもよい。光等方性材料は、入射する全ての光に対して偏光性を有しない材料で、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアクリル(PAC)、非晶質ポリオリフィン系樹脂、環状ポリオリフィン系樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂、シクロオレフィン共重合体(COC)からなるシクロオレフィン系樹脂などを例示することができる。これらの材料を用いて第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41を形成する方法としては、キャストや押し出しという手法を用いることができる。
【0021】
第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41の一方の主面上にそれぞれ形成されるパターニングされた第1導電層32及び第2導電層42は、図2(a)(b)に示すように、それぞれ所定間隔をあけて互いに平行に延びるように形成されている帯状導電部32a,42aの集合体として形成されている。第1導電層32及び第2導電層42を構成する帯状導電部32a,42aは、複数の菱形状導電部が直線状に連結された構成であり、第1導電層32及び第2導電層42における菱形状導電部の連結方向が互いに直交し、且つ、平面視において上下の菱形状導電部が重なり合わないように配置されている。なお、第1導電層32及び第2導電層42のパターン形状は、本実施形態のものに限定されず、指などの接触ポイントを検出可能である限り任意の形状とすることが可能である。例えば、帯状導電部32a,42aの形状として、図3(a)(b)の平面図に示すように、矩形状とすることも可能である。ただし、タッチパネル部1の分解能などの動作性能については、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを重ね合わせた場合に、導電部32a,42aが存在しない領域を少なくする構成を採用する方が優れている。このような観点から、第1導電層32及び第2導電層42のパターン形状として、矩形状の構成よりも、複数の菱形状導電部が直線状に連結された構成の方が望ましい。但し、本実施形態のものに限定されず、適切なパターン形状が選択されうる。
【0022】
第1導電層32及び第2導電層42の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系、酸化亜鉛、スズ酸化膜等の透明導電材料、或いは、スズ、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属材料、金属酸化物材料を例示することができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。また、酸やアルカリに弱い金属単体でも導電材料として使用できる。
【0023】
また、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維や銀素材等からなる極細導電繊維をバインダーとして機能するポリマー材料に分散させた複合材を第1導電層32及び第2導電層42の材料として用いることもできる。ここでポリマー材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレン、ポリ複素環ビニレン、PEDOT:poly(3,4-ethylenedioxythiophene)などの導電性ポリマーを採用することができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの非導電性ポリマーを採用することができる。
【0024】
第1導電層32及び第2導電層42の材料として、特にカーボンナノチューブを非導電性ポリマー材料に分散させたカーボンナノチューブ複合材を採用した場合、カーボンナノチューブは、直径が一般的には0.8nm〜1.4nm(1nm前後)と極めて細いので、1本或いは1束ずつ非導電性ポリマー材料中に分散することでカーボンナノチューブが光透過を阻害することが少なくなり面状体2の透明性を確保する上で好ましい。
【0025】
第1導電層32及び第2導電層42の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法、塗工法、印刷法などを例示することができる。また、第1導電層32及び第2導電層42の厚みは、例えばスパッタリング法でITO膜を成膜する場合は、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。なお、膜厚が5nm以下では連続した膜になり難く、安定な導電層を形成することは困難である。
【0026】
第1導電層32及び第2導電層42のパターニングは、第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41上に形成されたITO膜等の表面に、所望のパターン形状を有するマスク部を形成して露出部分を酸液などでエッチング除去した後、アルカリ液などによりマスク部を溶解させて行うことができる。
【0027】
第1導電層32における各帯状導電部32aに電気的に接続する第1引き出し配線33や、第2導電層42における各帯状導電部42aに電気的に接続する第2引き出し配線43は、第1導電層32及び第2導電層42が検出したタッチ信号を、外部に配置されるタッチ位置判別用回路(図示せず)に導くためのものである。図2(a)(b)に示すように、各第1引き出し配線33の一方の端部は、各帯状導電部32aに接続し、他方の端部は、第1樹脂フィルム31の側縁部に配置されている。同様に、各第2引き出し配線43の一方の端部は、各帯状導電部42aに接続し、他方の端部は、第2樹脂フィルム41の側縁部に配置されている。また、第1樹脂フィルム31及び第2樹脂フィルム41の側縁部にそれぞれ配置される第1引き出し配線33及び第2引き出し配線43の一端部分は、所定間隔をあけて一纏まりとなるように配置されている。この一纏まりとなるように配置される第1引き出し配線33及び第2引き出し配線43の一端部分は、接続端子を構成しており、当該接続端子にフレキシブル配線板(図示せず)が接続され、第1導電層32及び第2導電層42が検出したタッチ信号は、外部に配置されるタッチ位置判別用回路(図示せず)に導かれることとなる。
【0028】
第1引き出し配線33及び第2引き出し配線43の形成方法は、(A)銀などの金属の導電性粒子を含む導電性ペーストを第1及び第2樹脂フィルム31,41上にスクリーン印刷する方法、(B)銅などの金属箔を第1及び第2樹脂フィルム31,41上に積層し、金属箔の上にレジストパターンを形成し、金属箔をエッチングする方法(特開2008−32884等参照)が挙げられる。また、第1及び第2引き出し配線33,43を上述の第1導電層32及び第2導電層42と同様の材料(インジウム錫酸化物(ITO)や導電性ポリマー等)により形成してもよい。第1及び第2引き出し配線33,43を第1導電層32及び第2導電層42と同じ材料で形成する場合、第1導電層32及び第2導電層42のパターニング手法と同手法や、上記(B)の形成方法、レーザー照射により不要な領域を除去する方法等を採用することができる。
【0029】
上記(A)の形成方法における導電性粒子としては、銀を主成分とする微粒子を挙げることができる。また、例えば、金、MAM、銅、金と銀の合金、金と銅の合金、銀と銅の合金、金と銀と銅の合金のいずれかを主成分とする微粒子でもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウムに酸化亜鉛を混合した導電性酸化物(IZO[indium
zinc oxide])、または酸化インジウムに酸化珪素を混合した導電性酸化物(ITSO)を主成分とする微粒子でもよい。また、他の導電性ペーストとして、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子や、カーボンナノワイヤーや金属ナノワイヤーなどの極細導電繊維を導電体とする導電性材料を使用することができる。なお、引き出し配線の形成方法は、上記(A)(B)の形成方法に限定されることはなく、上記(A)以外のグラビア印刷などの印刷方法や上記(B)以外のフォトリソグラフィを使用してもよい。
【0030】
樹脂カバー5は、面状体2を保護する機能を有する透明なシート部材であり、平面視矩形状に形成されている。この樹脂カバー5は、平面視において、実質的に面状体2の全領域を被覆するように第1樹脂フィルム31の露出面上に粘着層6cを介して積層されており、樹脂カバー5の露出面がタッチ操作用のタッチ面を構成する。樹脂カバー5としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル(ポリメタクリル酸メチル;PMMA)等の合成樹脂製の可撓性フィルムにより形成される。これらのフィルムの表面に、ハードコート層等の設けてもよい。また、これら2種以上の積層体により樹脂カバー5を構成してもよい。積層体構造を有する樹脂カバー5としては、ポリカーボネート(PC)製フィルムの両面にアクリル製フィルムを配設した積層フィルム(PMMA/PC/PMMAフィルム)や、アクリル製フィルムの片面にポリカーボネート(PC)フィルムを配設した積層フィルム(PMMA/PCフィルム)が好ましく使用される。ここで、樹脂カバー5の厚みは、150μm以上500μm以下となるように構成することが好ましく、240μm以上500μm以下となるように構成することがさらに好ましい。樹脂カバー5の厚みを150μm以上とすることで、タッチ面の鉛筆硬度がH以上であるタッチパネル付き表示装置を達成できる。また、樹脂カバー5の厚みを500μm以下とすることで、タッチパネル部1をディスプレイ表面10aに効率的に貼り付けることができる。
【0031】
粘着層6a,6b,6cは、エポキシ系やアクリル系、シリコン系、ウレタン系など、一般的な透明接着剤を用いることができ、ポリエステル系樹脂の透明性フィルムからなる芯材を含むものであってもよい。また、シート状粘着材を複数枚重ね合わせることにより粘着層6a,6b,6cを形成してもよく、更に、複数種類のシート状粘着材を重ね合わせて形成してもよい。また、アクリル系UV硬化樹脂やシリコン系UV硬化樹脂等の紫外線硬化性樹脂を使用してもよい。粘着層6a,6b,6cのそれぞれの厚みは、特に指定はないが、実用上では15μmから175μmであることが好ましい。貼り合せ面に、引き出し配線の印刷パターンや加飾印刷層などの凹凸がある場合は、段差の影響を受けにくい適切な厚みを選択する。
【0032】
以上の構成を備えるタッチパネル付き表示装置100において、タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチパネルと同様であり、タッチパネル部1の表面側における任意の位置を指などで触れると、面状体2における第1導電層32及び第2導電層42は接触位置において人体の静電容量を介して接地され、第1導電層32及び第2導電層42を流れる電流値を検出すること(人体との間の静電容量の変化を検出すること)により、接触位置の座標が演算される。
【0033】
本実施形態のタッチパネル付き表示装置100は、タッチパネル部1を構成する面状部材(樹脂カバー5や面状体2)が樹脂材料により形成されているため、タッチパネル部1を薄くて軽い構造とすることが可能となる。この結果、表示装置10のディスプレイ表面10aにタッチパネルを配設する際の作業性が向上し、効率よくタッチパネル付き表示パネルを製造することが可能となる。また、タッチパネル部1が割れてしまう可能性を低減できるため、歩留まりが向上し、低コストでタッチパネル付き表示装置100を製造することが可能となる。また、タッチパネル部1におけるタッチ面の鉛筆硬度がH以上であることから、タッチ面の傷つきを効果的に抑制することが可能となる。また、本発明に係るタッチパネル部1は、薄くて軽く、可撓性に富む構造となるため、タッチパネル部を折り曲げて、端から順に貼り合せることができ、粘着層6aを介して表示装置10のディスプレイ表面10aに張り付ける際に、エアがみを引き起こさずに綺麗に設置することが可能となる。
【0034】
以上、本発明に係るタッチパネル付き表示装置100の一実施形態について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態において、面状体2は、第1電極フィルム3及び第2電極フィルム4を備えるように構成しているが、第1電極フィルム3及び第2電極フィルム4のいずれか一方を省略するような形態でタッチパネル付き表示装置100を構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、面状体2の構成として、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを備えるように構成し、それぞれに第1導電層32及び第2導電層42を形成するようにして構成しているが、例えば、図4に示すように、第2電極フィルム4を省略し、第1電極フィルム3における第1樹脂フィルム31の両面に、第1導電層32及び第2導電層42をそれぞれ形成するようにして面状体2を構成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、面状体2の構成として、第1電極フィルム3と第2電極フィルム4とを備えるように構成し、両者を重ね合わせた場合に、互いに直交する帯状導電部32a,42aを有する第1導電層32及び第2導電層42を備えるように構成しているが、例えば、第2電極フィルム4を省略すると共に、第1電極フィルム3における第1樹脂フィルム31の一方面(第1導電層32が形成されている面)に、第2導電層42を形成して面状体2を構成してもよい。このようにして面状体2を構成する場合、第1導電層32における帯状導電部32aと、第2導電層42の帯状導電部42aとが互いに重なる部分が形成されることとなるが、当該重なり部分において、絶縁部を介在させることにより、第1導電層32と第2導電層42とが導通することを防止でき、タッチパネルとしての機能を維持することができる。或いは、第1導電層32上にハードコート等の誘電体層を全面形成し、当該誘電体層上に第2導電層42を形成することにより面状体2を構成してもよい。
【0037】
また、本発明者は、図1及び図4に示すタッチパネル部1のサンプルを作成し、タッチパネル部1全体における単位面積当たりの重量、及び、タッチパネル部1のタッチ面における鉛筆硬度を測定したので、これらの結果を以下に示す。サンプル1〜サンプル9は、図1に示すタッチパネル部1の構成を有しており、サンプル10〜サンプル12は、図4に示すタッチパネル部1の構成を有している。サンプル1〜サンプル9における各構成部材の材質、単位面積当たりの重量(g/cm2)及び厚み(μm)、並びに、鉛筆硬度、サンプル全体の厚み(μm)、サンプル全体における単位面積当たりの重量(g/cm)を表1に示す。また、サンプル10〜サンプル12における各構成部材の材質、単位面積当たりの重量(g/cm2)及び厚み(μm)、並びに、鉛筆硬度、サンプル全体の厚み(μm)、サンプル全体における単位面積当たりの重量(g/cm)を表2に示す。なお、サンプル12においては、図4の樹脂カバー5の代わりにガラスカバーを備える従来構成としている。ここで、鉛筆硬度は、JIS5600に基づいて、試験荷重を750gとして試験を行った結果である。粘着層6a、6b、6cは、東洋インキ株式会社製アクリル系粘着剤(オリバインBPS5296)を使用した。粘着層6a(厚み100μm)は、第2電極フィルム4と貼り合わせた面の反対側にラミフィルム7をつけた状態(図5に示す状態)で、サンプルをガラス板8上に置いて試験を行った。なお、サンプル10〜12に関しては、第1電極フィルム3と貼り合わせた面の反対側にラミフィルム8をつけた状態で、サンプルをガラス板9上に置いて試験を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1より、樹脂カバー5の厚みが150μmよりも大きい場合には、鉛筆硬度がH以上(サンプル2及びサンプル4)となった。また、樹脂カバー5の厚みが200μm以上の場合には、鉛筆硬度が3H以上となることが分かる。特に、樹脂カバー5として、高硬度のアクリル系樹脂(PMMA)及びその積層体を用いた場合は、200μm以上500μm以下で、鉛筆硬度が6H以上となることが分かる(サンプル5〜サンプル9、サンプル11)。また、表2より、第1電極フィルム3上に配置されるカバー(樹脂カバー5に相当)としてガラスを用いたサンプル12は、樹脂カバー5を用いる構成(サンプル10及びサンプル11)よりも、サンプル全体の単位面積当たりの重量が大幅に大きくなることが分かる。つまり、タッチパネル部1を構成する面状部材(樹脂カバー5、第1電極フィルム3(第2電極フィルム4))の一部にガラスを用いる構成に対して、本発明のように、タッチパネル部1を構成する面状部材の全てを樹脂材料により形成することにより、極めて軽いタッチパネル部1を構成できることが分かる。
【0041】
また、発明者は、樹脂カバー5の厚みと面状体2との間に配置される粘着層6cの厚みが、タッチパネル部1のタッチ面における鉛筆硬度に対してどのような影響を及ぼすかについても試験を行った。具体的には、図1に示すタッチパネル部1に関し、粘着層6cの厚みを変化させたサンプルを作成し、各サンプルに対して鉛筆硬度を測定した。測定方法は、サンプル構成以外は表1および2と同様とした。各サンプルについて具体的に説明すると、第1電極フィルム3及び第2電極フィルム4を厚みが125μmのPET素材によりそれぞれ構成すると共に、粘着層6a、6bの厚みをそれぞれの100μm、50μmとなるように構成した。樹脂カバー5に関しては、厚みが125μm〜250μmのPET素材により形成したものの3種類を準備した。試験結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、PET素材の樹脂カバー5の厚みが125μmであるサンプルA及びBに関しては、粘着層6cを設けないサンプルAの鉛筆硬度がHであるのに対し、粘着層6cを有するサンプルBは、その鉛筆硬度がFとなり、粘着層6cを設けることによって鉛筆硬度が低下していることが分かる。また、樹脂カバー5の厚みが188μmであるサンプルC〜Fに関しては、粘着層6cを設けないサンプルCの鉛筆硬度が2Hであるのに対し、粘着層6cを有するサンプルD〜サンプルFは、その鉛筆硬度がHとなり、粘着層6cを設けることによって鉛筆硬度が低下していることが分かる。一方、樹脂カバー5の厚みが250μmであるサンプルG〜サンプルJに関しては、粘着層6cの有無、或いはその種類や厚みに関わらず、鉛筆硬度が3Hのままであり、厚みが250μmの樹脂カバー5は、粘着層6cの影響を受けずに鉛筆硬度が低下していないことが分かる。つまり、樹脂カバー5の厚みに関し、230μmから240μm程度の範囲において、粘着層6cの影響を受けて鉛筆硬度が低下してしまう厚み条件と、粘着層6cの影響を受けずに鉛筆硬度を維持できる厚み条件との境界(変化点)が存在すると考えられる。このことより、樹脂カバー5の厚みを240μm以上に設定することにより、粘着層6cの影響を受けずに、鉛筆硬度にばらつきが発生しにくいタッチパネル部1を効果的に構成することが可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
100 タッチパネル付き表示装置
1 タッチパネル部
2 面状体
3 第1電極フィルム
31 第1樹脂フィルム
32 第1導電層
33 第1引き出し配線
4 第2電極フィルム
41 第2樹脂フィルム
42 第2導電層
43 第2引き出し配線
5 樹脂カバー
6a、6b、6c、6d、6e 粘着層
7 ラミフィルム
8 ガラス板
10 表示装置
10a ディスプレイ表面
図1
図2
図3
図4
図5