(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物を、品温85℃以上で30分以上加熱処理することにより味噌調味材を調製する工程と、
調製された味噌調味材を、小麦粉及び/又は澱粉と、食用油脂とを含む原料を加熱処理して得られたルウと共に加熱混合する工程とを有する調味ソースの製造方法。
前記混合物が、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁を固形分換算で0.04質量%以上40質量%以下、味噌をタンパク質量換算で0.05質量%以上6質量%以下、糖類を5質量%以上60質量%以下、及び水を5質量%以上60質量%以下含む、請求項1又は2に記載の調味ソースの製造方法。
前記混合物が、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁に加え、更に、ペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を含む、請求項1から3のいずれかに記載の調味ソースの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカレー風味食品の製造方法により調製されるカレー風味食品には、製造条件により味噌の醗酵臭が残る場合もあり、カレー風味食品において調和の取れた味を付与できない場合があった。
特許文献2に記載の製造方法により調製される流動性調味材を使用してレトルトカレー等の調味ソースを調製した場合、調味ソースにまとまり感のある優れた風味を付与することができる。
一方、デミグラスソースを単に添加して工業的に調味ソースを調製する場合、調味ソースにデミグラスソースによるコク味のある風味を十分に付与することはできない。つまり、デミグラスソースを製造することは極めて煩雑であるため、これを添加して工業的に調味ソースを調製する場合、デミグラスソースは多くない添加量で加配することが要求され、デミグラスソースを単に添加するような態様では、家庭で調理される調味ソースのような、デミグラスソースのコク味のある風味が付与された調味ソースを提供することは困難であった。
このため、調味ソースに効率的にデミグラスソースのコク味、旨み、まろやかさのある風味を付与することできる調味材を提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物に、所定の条件で加熱処理を施した調味材を使用して調味ソースを調製することにより、デミグラスソースの優れた煮込み感、コク味、旨み、まろやかさを有しつつ、芯のある調和の取れた旨みを有する調味ソースを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明は、上記調味ソースと共に、調味ソースにデミグラスソースのコク味のある風味を付与可能な味噌調味材も併せて提供する。
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物を、品温85℃以上で30分以上加熱処理することにより味噌調味材を調製する工程と、調製された味噌調味材を、ルウと共に加熱混合する工程とを有する調味ソースの製造方法。
(2)肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁が、デミグラスソース又はエスパニョールソースである、(1)に記載の調味ソースの製造方法。
(3)前記混合物が、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁を固形分換算で0.04質量%以上40質量%以下、味噌をタンパク質量換算で1質量%以上30質量%以下、糖類を5質量%以上60質量%以下、及び水を5質量%以上60質量%以下含む、(1)又は(2)に記載の調味ソースの製造方法。
(4)前記混合物が、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁に加え、更に、ペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の調味ソースの製造方法。
(5)前記味噌調味材中の野菜原料の含有量が固形分換算で0.03質量%以上20質量%以下である(1)から(4)のいずれかに記載の調味ソースの製造方法。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の調味ソースの製造方法により調製され、容器に充填された、容器入り調味ソース。
(7)レトルト殺菌されている、(6)に記載の容器入り調味ソース。
(8)カレーである、(6)又は(7)に記載の容器入り調味ソース。
(9)肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物を、品温85℃以上で30分以上加熱処理する工程を有する味噌調味材の製造方法。
(10)前記混合物が、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁を固形分換算で0.04質量%以上40質量%以下、味噌をタンパク質量換算で1質量%以上30質量%以下、糖類を5質量%以上60質量%以下、及び水を5質量%以上60質量%以下含む、(9)に記載の味噌調味材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の調味ソースの製造方法においては、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物に、所定の条件で加熱処理を施した味噌調味材を使用するので、デミグラスソースの優れた煮込み感、コク味、旨み、まろやかさを有しつつ、芯のある調和の取れた旨みを有する調味ソースを提供することができる。
なお、本発明でいうデミグラスソースの煮込み感、コク味、旨み、まろやかさ(これらは旨味や甘味のコク、煮込み感、まとまりと表すこともできる)等の食味品質は、デミグラスソース、エスパニョールソース等の肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁の食味を活かすための素材が有する食味品質を指す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
<調味ソースの製造方法>
本発明の調味ソースの製造方法は、味噌調味材を調製する工程と、調製された味噌調味材を、ルウと共に加熱混合する工程と、を有する。
[味噌調味材を調製する工程]
味噌調味材は、肉類及び野菜類を煮詰めることにより得られた出汁;味噌;糖類;及び水を混合して得られる混合物を、品温85℃以上で30分以上加熱処理することにより調製される。なお、本発明においては、上記混合物にペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を含んでいることが好ましい。また、上記混合物に各種野菜エキス等の液状の野菜原料及び/又は各種肉エキス等の液状の肉原料を含んでいてもよい。
(肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁)
味噌調味材の調製にあたっては、肉類及び野菜類を合わせて煮詰めることによって得られた出汁を使用する。この肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られる出汁には、肉類及び野菜類を合わせて煮詰めることにより得られたもののエキスや濃縮物も含む。出汁の調製に使用できる肉類としては、牛肉、豚肉、羊肉、及び鶏肉が挙げることができ、これらの肉類に加えて、牛、豚、羊、及び鶏の骨を併用してもよい。野菜類としては、トマト、タマネギ、ニンジン、及びセロリを用いることができ、これら以外の野菜類を用いてもよい。野菜類としてはトマトを用いることが好ましい。
本発明において、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られる出汁を調製するに当たっては、肉類及び野菜類と共に、これらの材料以外の材料を合わせて煮詰めてもよい。肉類及び野菜類以外の材料としては、具体的には、ワイン、コニャック等の酒類;小麦粉ルウ、デキストリン類、ガム類等の粘性材;油脂類等を挙げることができる。
肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られる出汁の調製にあたっては、出汁の調製に用いる材料の総質量に対して、肉類を20質量%以上85質量%以下、野菜類を5質量%以上40質量%以下用いることが好ましい。
肉類及び野菜類を含む以上の材料を煮詰めて出汁を調製する場合、上記材料を合せて煮詰め、好ましくはアクをとりながら加熱する。そして、水分が蒸発して、材料を含む煮汁の体積が加熱を開始する前の体積の半量程度(55体積%以下、好ましくは45体積%以下)になるまで煮詰めればよい。ここで、上記の出汁に粘性を付与する場合は、上記の粘性材を材料中に混合するか、出汁の体積がより減少するまで煮詰めればよい。また、出汁を調製する際の材料に、上述した酒類を含めた場合、出汁に対して、酒類に由来する良好な風味を付与することができる。肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁の具体例としては、デミグラスソースやエスパニョールソースと呼ばれるものを好適に挙げることができる。出汁は、煮詰めると共に濃縮されたものであることが好ましい。なお、「デミグラスソース」には、農林水産省の「平成15年度表示推進事業 加工食品の原材料表示に関する問題点の整理及び検討結果についての報告」にしたがってデミグラスソースと表示されるものが含まれる。
肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られる出汁としては、出汁から水分を除いた固形分が40質量%以上80質量%以下のものを用いることが好ましい。
なお、本発明においては、出汁及び味噌を含む混合物を加熱して味噌調味材を調製するが、上記混合物に固形分換算で上記の出汁100質量部に対して、後述する味噌をタンパク質量換算で0.003質量部以上15000質量部以下含むように上記の出汁の使用量を調製することが好ましい。
また、味噌調味材の調製に当たっては、味噌調味材の調製に供される混合物中、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁を、固形分換算で0.04質量%以上40質量%以下用いることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下用いることが更に好ましい。この場合、特に出汁を、野菜類が固形分換算で0.03質量%以上20質量%以下含まれるように用いることが好ましい。
また、味噌調味材中の野菜原料の含有量を、固形分換算で0.03質量%以上20質量%以下、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。味噌調味材中の肉類の含有量を、固形分換算で0.01質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
各構成成分の含有量等を上記の範囲内のものとすることにより、調味ソースに、デミグラスソースの優れた煮込み感、コク味、旨み、まろやかさと、芯のある調和の取れた旨みを付与することができる味噌調味材が得られる。また、出汁を比較的少ない添加量で加配して上記の効果を達成することができる。
【0009】
(味噌)
味噌調味材の調製に用いられる味噌としては、特に限定されるものではなく、液状、ペースト状、粉末状、顆粒状の味噌を挙げることができる。本発明において使用可能な味噌には、消費者庁から告示されている『みそ品質表示基準』に従って「みそ」と表示されるものが含まれる。本発明においては、味噌特有の香りが弱い粉末状又は顆粒状の味噌に限られず、液状又はペースト状の生味噌を使用することによって、調味ソースの風味改善の効果がさらに良好に得られる。生味噌を使用することが好ましい。ここでいう生味噌は、加熱殺菌処理を施したものと、施していないもののいずれもが使用でき、乾燥、顆粒化等の2次加工を施していない、水分5.0質量%以上を含有しているものを好適に使用できる。
なお、味噌自体、比較的粒子が大きく、喫食時にざらつき等の好ましくない食感を与える可能性がある。このため、味噌自体を予めコミトロール等によって処理し、微粒子化しておくか、味噌を添加した味噌調味材や、味噌調味材を添加した調味ソースを、コミトロール等によって処理して微粒子化することが好ましい。
味噌調味材中の味噌の使用量は、味噌調味材の調製に供される混合物に対し、味噌中のタンパク質量に換算して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上6質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることが最も好ましい。味噌調味材中の味噌の含有量を、上記の範囲内のものとすることにより、調味ソースが、より煮込み感があって、より芯のある調和の取れた旨味を有し、且つ、味噌特有の醗酵臭をより有さないものとなる。つまり、このような性能を有する味噌調味材を調製することができる。
なお、特許文献1に見られるように、本発明の味噌調味材とは別に、調味ソースに味噌を加配することもできるが、その場合、調味ソースに味噌の臭味が生じやすいため、使用する味噌の種類及び添加量については、本発明の効果を損なわない範囲のものに調整することが好ましい。
本発明では、特に肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁と味噌とを加配して味噌調味材を調製することに意義がある。すなわち、出汁と味噌とが加熱処理されて各々の食味が融合し、デミグラスソースの優れた食味が得られると共に、味噌特有の醗酵臭をより有さないものとなる。このため、味噌を比較的多くの添加量で加配することができるため、デミグラスソースの食味がより濃厚に得られる。
(糖類)
味噌調味材の調製に用いられる糖類としては、特に限定されるものではなく、従来公知の糖類を使用することができる。具体的には、ショ糖、ブドウ糖、ハチミツ、果糖等を挙げることができる他、タマネギ細断物等を糖類を含む原料として用いてもよい。糖類としては、特にショ糖が好ましい。これらの糖類は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
味噌調味材中の糖類の使用量は、上記の混合物に対し、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上45質量%以下であることが更に好ましい。上記の含有量で味噌調味材に糖類を配合することにより、調味ソースに好適な風味を付与可能な味噌調味材を調製することができる。
【0010】
(ペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料)
本発明の味噌調味材において、上記の出汁や味噌等を含む混合物の加熱処理にあたっては、上記の混合物にペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を添加することが好ましい。上記の混合物に、これらペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を添加することにより、調味ソースにデミグラスソースの優れた煮込み感、コク味、旨み、まろやかさを有しつつ、芯のある調和の取れた旨みをさらに良好に付与し得る味噌調味材を提供することができる。ここで、ペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料を用いることにより、上記の肉類及び野菜類を煮詰めることにより得られる出汁の使用量を低減しても、求める食味を有する調味ソースを調製可能な味噌調味材を調製することができる。
ペースト状の野菜原料及び/又はペースト状の肉原料としては、上記の出汁の調製に用いられる野菜類及び肉類と同じ種類の野菜原料及び/又は肉原料、並びに、調味ソースにおいて具材として用いられる野菜原料及び/又は肉原料をペースト状にしたもの等を用いることができる。
具体的には、野菜原料としてタマネギ、ニンジン、セロリ、トマト、ポテト、ゴボウ、ダイコン、チェーチ、枝豆、レンコン、アスパラ、ホウレンソウ、ハクサイ、キャベツ、ナス、トマト、オクラ、ブロッコリー、カリフラワー、ワカメ、ヒジキ、コンブ、シメジ、マッシュルーム、マイタケ、パイナップル、リンゴ、カボチャ、アーモンド、及びゴマを挙げることができる。また、肉原料としては、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、及びシーフードを挙げることができる。これらの中でも、野菜原料として、タマネギ、ニンジン、セロリ、トマト、ポテト、リンゴ、カボチャ、及びブロッコリーを用いることが好ましく、肉原料として、牛肉、豚肉、羊肉、及び鶏肉を用いることが好ましい。
(トマト原料)
本発明において、味噌調味材を調製するにあたっては、ペースト状の野菜原料の調製に用いる野菜原料として、トマト原料を用いるのがよい。トマト原料としては、トマトを含むペースト化可能な原料であれば特に限定されるものではなく、トマト、トマトソース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトケチャップ、ダイストマト等を挙げることができる。トマト加工品の日本農林規格の規格品が好適に挙げられる。また、これらのトマト原料に果汁等を混合したものを用いてもよい。
なお、前述のとおり、味噌調味材中の野菜原料の含有量を、固形分換算で0.03質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。この場合に、出汁に含まれる野菜原料と、トマト原料を含むペースト状の野菜原料等とを合せて、味噌調味材中に野菜原料が上記の範囲で含まれるようにすればよい。出汁に含まれる野菜原料が少ない場合には、ペースト状の野菜原料等の添加量を調整すればよい。味噌調味材中の肉原料の含有量についても、出汁に含まれる肉原料とペースト状の肉原料等の添加量等を調整して達成すればよい。
味噌調味材の調製にあたって、トマト原料等のペースト状の野菜原料を用いることにより、より良好な煮込み感コク味、旨み、まろやかさを有する調味ソースを調製可能な味噌調味材を提供することができる。
(水)
味噌調味材の調製の際の水の使用量は、上記の混合物に対して、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
(味噌調味材の調製の際の加熱処理)
味噌調味材の調製の際の加熱処理は、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁、味噌、糖類、及び水を含む混合物を品温85℃以上で30分以上行うことが好ましい。上記の加熱処理は、混合物の品温を180℃以下とすることが好ましく、混合物の品温90℃以上100℃以下で30分、100℃以上120℃以下で20分、120℃以上180℃以下で10分加熱することが更に好ましい。ここで、上記の条件は、混合物の品温が、上記指定の温度で上記指定の時間保持されることを指す。
なお、特許文献1の発明においては、80℃から90℃達温の加熱条件とすることにより、味噌のアミラーゼを失活させ、カレー風味食品に香ばしい風味を付与している。一方、本発明においては、上記混合物に一定温度でより長い時間加熱処理を施すことにより、上記混合物中の各原料の化学反応を進めて、味噌調味材を、味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)をなくし、より優れたコク及び煮込み感を調味ソースに付与可能なものとしている。味噌調味材は、加熱処理を施すことにより、アルコールを含有しないものとすることが、前記の性能を得る上で望ましい。アルコールを含有しないとは、例えばガスクロマティーによる測定結果において、アルコール含有量が検出限界以下となることを指す。
【0011】
[味噌調味材をルウと共に加熱混合する工程]
本発明の調味ソースの製造方法は、上記の味噌調味材を調製する工程で調製した味噌調味材を、ルウと共に加熱混合する工程を有する。
(ルウ)
本発明の調味ソースの製造方法において用いられるルウは、小麦粉や米粉等の穀物粉及び/又は澱粉と、食用油脂とを含む原料から得られるものである。
一般に、「ルウ」とは、小麦粉及び/又は澱粉と、食用油脂とを含む原料を加熱処理して得られたものをいう。
また、「小麦粉」としては、中力粉、強力粉、準強力粉、及び薄力粉等から選ばれた1種以上を用いることができる。
なお、澱粉としては、従来公知の澱粉を挙げることができ、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、及びもち米澱粉等、並びにこれらの加工澱粉等を挙げることができる。本発明の調味ソースの製造方法においては、澱粉は、物質として100%純粋な澱粉に限らず、適当量の不純物を含むものでもよく、未処理澱粉に限らず各種加工澱粉であってもよい。
また、ルウの原料として用いることができる食用油脂としては、天然油脂、加工油脂、及びこれらの混合物のいずれをも用いることができる。具体的には、バター、マーガリン、豚脂、牛脂、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
小麦粉及び/又は澱粉と、食用油脂を含む原料を加熱処理する場合、加熱温度は、原料の品温が110℃以上となるように加熱することが好ましく、110℃以上140℃以下に達するように加熱することが更に好ましい。また、加熱処理の時間は、3分から120分程度行うことが好ましい。
本発明の調味ソースの製造方法においては、調味ソース全体に対して、上記のルウを0.1質量%以上30質量%以下使用することが好ましく、1質量%以上20質量%以下使用することが更に好ましい。
ルウは、カレーパウダー等の香辛料、糖類、タンパク原料等の調味料を添加して調製したものであってもよい。
(調味ソース中の調味材の含有量)
本発明の調味ソースには、味噌調味材を1質量%以上70質量%以下含ませることが好ましく、5質量%以上35質量%以下含ませることが更に好ましい。また、味噌調味材中の味噌の含有量及び調味ソース中の味噌調味材の含有量を適宜調整することにより、調味ソース中、味噌調味材として添加される味噌を、タンパク質含量で、0.0005質量%以上0.4質量%以下とすることが好ましく、0.0015質量%以上0.2質量%以下とすることが更に好ましい。
【0012】
[調味ソース及びこれに含まれる他の原料]
本発明の調味ソースは、香辛料を含む調味ソースであることが好ましい。上記の調味ソースとしては、カレーソース、シチューソース、ハヤシソース等を挙げることができ、特に、カレーソースが好ましい。また、本発明の調味ソースは、容器に充填された容器入りの調味ソースであることが好ましく、レトルト殺菌された容器入り調味ソースであることが更に好ましい。
上記調味ソースは、その目的とする最終形態に応じて、各種香辛料(カレーパウダー、こしょう、唐辛子、ナツメグ、シナモン等)や各種調味料等の風味原料、植物性原料のペースト状物(例えば、ポテトペースト、リンゴペースト、オニオンペースト、カボチャペースト、ブロッコリーペースト等)等を含んでいてもよい。
上記調味ソースに配合される各種風味原料及びペースト状物の含有量は、調味ソースの目的とする最終形態に応じて、適宜設定される。
前述のとおり、本発明の味噌調味材は、糖分やアミノ酸を有する複合系である味噌と、さらに肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁を原料の混合物に含み、特定の加熱処理を施すことにより優れた食味を有している。これを配合して、さらに加熱処理(一般に煮込みといわれる)等を施した調味ソースは、ルウと味噌調味材とが加熱されることにより、優れたコク及び煮込み感を有する高品質のものとなる。
【0013】
[具材]
本発明の調味ソースは、好ましくは、各種の具材を含む。
具材は、動物性のものであっても、植物性のものであってもよいが、動物性の具材としては、鶏肉、豚肉、牛肉、シーフード等、植物性の具材としては、ポテト、人参、ゴボウ、ダイコン等の根菜類;チェーチ、枝豆等の豆類;レンコン、アスパラ等の茎菜類;ホウレンソウ、ハクサイ、キャベツ等の葉菜類;ナス、トマト、オクラ等の果菜類;ブロッコリー、カリフラワー等の花菜類;ワカメ、ヒジキ、コンブ等の藻類;シメジ、マッシュルーム、マイタケ等のきのこ類;パイナップル、リンゴ等の果実類;及びアーモンド、ゴマ等の種子類を挙げることができる。
これらの具材の処理方法については、各具材について従来知られている方法を採用すればよい。
【0014】
[調味ソースの製造及びレトルト処理]
本発明の調味ソースは、前述したルウと、味噌調味材と、適宜他の原料や具材を配合して、常法により製造することができる。調味ソースは、保存形態に応じて適宜殺菌処理を施してもよい。
本発明の調味ソースがレトルト殺菌された容器入り調味ソースである場合、レトルト殺菌処理は、常法により行うことができる。例えば、本発明の調味ソースをレトルトパウチに充填した後、密封し、これを例えば120℃から125℃で、10分から120分間加熱することにより、レトルト処理することができる。レトルト処理を施すことにより、味噌調味材に由来する優れた食味品質を調味ソースにより活かすことができる。
なお、濃縮タイプの調味ソースを調製する場合、希釈して調製される調味ソースに、上記の味噌を含む各成分が、本発明において規定された含有量で含まれることが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0016】
<実施例1から6及び比較例1から4>
各実施例及び比較例について、表1及び表2に示した原料(配合量は質量%で表示される)の、デミグラスソース(固形分含量68質量%)、生味噌(タンパク質含量10質量%、水分40質量%)、トマトペースト(JAS規格品、固形分含量40質量%)、砂糖、及び水を加熱釜で撹拌しながら加熱して味噌調味材を調製した。味噌調味材中には、各々固形分換算で野菜原料が6.4質量%、肉類が0.7質量%含まれた。
前記のデミグラスソースは、牛肉25質量%、チキンブイヨン25質量%、チキンエキス5質量%、トマトペースト(JAS規格品、固形分含量40質量%)30質量%、水15質量%を煮込んだ後に、上記の材料の50体積%程度となり、水分が30質量%となるように水分を除いて濃縮したものである。前記のデミグラスソースが、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁に相当する。
なお、各実施例及び比較例においては、味噌調味材を調製する際に、デミグラスソース、味噌、糖類、及び水を加熱する際の加熱条件を以下のとおりとした。
実施例1から4及び比較例1から3:品温98℃で50分間
比較例4:品温85℃に達温
【0017】
<評価>
各実施例及び比較例で得られた調味材について、以下の基準で、「野菜のコク(旨味・甘味)」及び「肉のコク(旨味・甘味)」(これらは「デミグラス感」を表す)、「煮込み感、まとまり」、並びに「味噌臭さ」を、10名のパネリストの官能評価により5段階で評価し、平均値を小数点以下第2位を四捨五入して表示した。結果を表1及び表2に示す。
(A)野菜のコク(旨味・甘味)
5:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味をしっかりと感じ、密度性のある風味である。
4:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を感じるが、5よりは弱い。
3:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味をほのかに感じるが、味の密度が弱い。
2:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を殆ど感じることができない。
1:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を全く感じることができず、間の抜けた風味である。
(B)肉のコク(旨味・甘味)
5:肉の香ばしい旨味と甘味をしっかりと感じ、密度性のある風味である。
4:肉の香ばしい旨味と甘味を感じるが、5よりは弱い。
3:肉の香ばしい旨味と甘味をほのかに感じるが、味の密度が弱い。
2:肉の香ばしい旨味と甘味を殆ど感じることができない。
1:肉の香ばしい旨味と甘味を全く感じることができず、間の抜けた風味である。
(C)煮込み感、まとまり
5:素原料の突出がなく、加熱反応による複雑な香味を有し、まとまりがある。
4:素原料の突出はないが、加熱反応による香味がやや弱く、まとまりは5より弱い。
3:素原料がやや突出しており、加熱反応による香味も弱く、まとまりにやや欠ける。
2:素原料がやや突出しており、加熱反応による香味もなく、まとまりに欠ける。
1:複雑な香味を全く有しておらず、素原料の風味を強く感じ、まとまりが全くない。
(D)味噌臭さ
5:味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)が全くない。
4:口に入れた後、暫くしてほのかに味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じるが、製品の風味バランスを崩していない。
3:口に入れた後、暫くしてほのかに味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じ、且つ、製品の風味バランスを崩している。
2:口に入れた後、暫くして3よりは明らかに強い味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じる。
1:口に入れた瞬間にツンとくる味噌臭さを感じる。
【0018】
表1
【0019】
表2
【0020】
表1及び表2から明らかなように、本発明の味噌調味材は、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁、味噌、糖類、及び水を混合して得られる混合物を、所定の条件で加熱することにより、野菜のコク及び肉のコクに優れ、煮込み感及びまとまった風味を有する、デミグラスソースの風味が豊かなものであった。
さらに、肉類及び野菜類を煮詰めることによって得られた出汁と味噌とを組み合わせることにより、前記の豊かな風味を達成すると共に、味噌特有の醗酵臭をより有さないものものであった(実施例1と比較例1を参照)。
【0021】
<実施例5及び比較例5から8>
加熱釜で、小麦粉及び小麦澱粉を、油脂と共に加熱釜で撹拌しながらルウを調製し、これに前記の味噌調味材、その他の原料として調味料、香辛料、及び水を入れ、品温90℃に達温させてカレーソースを調製し、レトルトパウチに充填密封し、レトルト処理を施した。なお、各実施例及び比較例においては、次の味噌調味材を用いた。
実施例5:実施例1で調製した味噌調味材
比較例5:比較例1で調製した味噌調味材
比較例6:比較例2で調製した調味材
比較例7:比較例3で調製した味噌調味材
比較例8:比較例4で調製した味噌調味材
なお、得られたレトルトカレーには、味噌調味材の形で添加された味噌がタンパク質量換算で0質量%から0.13質量%含まれている(表3参照)。
得られたレトルトカレーについて、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
【0022】
(A)野菜のコク(旨味・甘味)
5:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味をしっかりと感じ、密度性のある風味である。
4:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を感じるが、5よりは弱い。
3:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味をほのかに感じるが、味の密度が弱い。
2:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を殆ど感じることができない。
1:野菜を煮込んだ芯のある旨味と甘味を全く感じることができず、間の抜けた風味である。
(B)肉のコク(旨味・甘味)
5:肉の香ばしい旨味と甘味をしっかりと感じ、密度性のある風味である。
4:肉の香ばしい旨味と甘味を感じるが、5よりは弱い。
3:肉の香ばしい旨味と甘味をほのかに感じるが、味の密度が弱い。
2:肉の香ばしい旨味と甘味を殆ど感じることができない。
1:肉の香ばしい旨味と甘味を全く感じることができず、間の抜けた風味である。
(C)煮込み感、まとまり
5:素原料の突出がなく、加熱反応による複雑な香味を有し、まとまりがある。
4:素原料の突出はないが、加熱反応による香味がやや弱く、まとまりは5より弱い。
3:素原料がやや突出しており、加熱反応による香味も弱く、まとまりにやや欠ける。
2:素原料がやや突出しており、加熱反応による香味もなく、まとまりに欠ける。
1:複雑な香味を全く有しておらず、素原料の風味を強く感じ、まとまりが全くない。
(D)香り立ち
5:焙煎した香辛料の香味、単品香辛料や風味原料のフレッシュな香り立ちを強く感じる。
4:焙煎した香辛料の香味を感じるものの、単品香辛料や風味原料のフレッシュな香り立ちは5に比べ弱い。
3:焙煎した香辛料の香味をほのかに感じるが、単品香辛料や風味原料のフレッシュな香り立ちはあまり感じない。
2:焙煎した香辛料の香味、単品香辛料や風味原料の香りをあまり感じない。
1:口に入れた瞬間に味噌の香りを感じ、焙煎した香辛料の香味、単品香辛料や風味原料の香りを殆ど感じることができない。
(E)味噌臭さ
5:味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)が全くない。
4:口に入れた後、暫くしてほのかに味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じるが、製品の風味バランスを崩していない。
3:口に入れた後、暫くしてほのかに味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じ、且つ、製品の風味バランスを崩している。
2:口に入れた後、暫くして3よりは明らかに強い味噌臭さ(発酵臭、豆臭さ)を感じる。
1:口に入れた瞬間にツンとくる味噌臭さを感じる。
【0023】
表3
【0024】
表3から明らかなように、本発明の調味ソースは、味噌調味料を使用することにより、野菜のコク及び肉のコクに優れ、煮込み感及びまとまった風味を有する、デミグラスソースの風味が豊かなものであると共に、焙煎した香辛料に由来する香り立ちも優れたものであった。