(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098822
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20170313BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20170313BHJP
G21F 9/10 20060101ALI20170313BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20170313BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
G21F9/28 521A
G21F9/12 501B
G21F9/12 501F
G21F9/10 G
G21F9/06 521B
G21F9/10 E
G21F9/06 511B
G21F9/08 511F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-208081(P2013-208081)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-72199(P2015-72199A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋平
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−334509(JP,A)
【文献】
特開2013−101098(JP,A)
【文献】
特開2013−186025(JP,A)
【文献】
特開2013−160666(JP,A)
【文献】
特開2013−186084(JP,A)
【文献】
特開2014−035193(JP,A)
【文献】
特開2014−062737(JP,A)
【文献】
特開2014−199187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/12
G21F 9/10
G21F 9/06
G21F 9/08
B09B 1/00−5/00
C02F 1/58−1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する飛灰洗浄装置において、
放射性物質および塩類を含む上記飛灰を収容し該飛灰の洗浄のための一次洗浄水の注入を受ける一次洗浄槽を有し、該一次洗浄槽内で上記飛灰を一次洗浄水により洗浄して、上記放射性物質および塩類が溶解した一次溶解水と飛灰のスラリとを生成して、該一次溶解水を一次洗浄排水として排水するとともに、上記スラリを一次スラリとして排出する一次洗浄装置と、
上記一次洗浄装置からの上記一次スラリを受けて収容し該一次スラリの洗浄のための二次洗浄水の注入を受ける二次洗浄槽を有し、該二次洗浄槽内で上記一次スラリを二次洗浄水により洗浄して、該一次スラリに含まれる放射性物質が溶解した二次溶解水と、上記一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリとを生成して、該二次溶解水を二次洗浄排水として排水するとともに、上記二次スラリを排出する二次洗浄装置と、
該二次洗浄装置からの二次洗浄排水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、又は分離除去剤と凝集剤を供給し放射性物質を吸着した分離除去剤粒子を凝集沈殿分離して除去し、放射性物質が除去された上記二次洗浄排水を除去処理排水として排水する除去装置と、
上記二次洗浄装置からの上記二次スラリを受け該二次スラリを脱水処理する脱水処理装置と、
上記一次洗浄装置からの上記一次洗浄排水および上記脱水処理装置からの脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を固化処理する固化処理装置とを備え、
該固化処理装置は、上記一次洗浄排水と上記脱水処理排水とを受け上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を逆浸透膜で分離除去する逆浸透膜処理装置と、該逆浸透膜処理装置で分離除去された放射性物質および塩類を含む濃縮水を受け加熱して水分を蒸発させ放射性物質および塩類を固化する蒸発固化処理装置とを有しており、上記逆浸透膜処理装置で放射性物質および塩類が除去された上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水を固化処理排水として排水し、
上記二次洗浄装置は、上記除去装置からの除去処理排水と上記固化処理装置からの固化処理排水とを、外部から供給される補給水とともに上記二次洗浄水として上記二次洗浄槽に受けることを特徴とする飛灰洗浄装置。
【請求項2】
二次洗浄装置からの二次洗浄排水を受け該二次洗浄排水に含まれる飛灰を濾過材で捕捉して除去する濾過装置をさらに備えることとする請求項1に記載の飛灰洗浄装置。
【請求項3】
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する飛灰洗浄方法において、
放射性物質および塩類を含む上記飛灰を一次洗浄槽に収容し、該飛灰の洗浄のための一次洗浄水により該飛灰を上記一次洗浄槽内で洗浄して、上記放射性物質および塩類が溶解した一次溶解水と飛灰のスラリとを生成して、該一次溶解水を一次洗浄排水として排水するとともに、上記スラリを一次スラリとして排出する一次洗浄工程と、
上記一次洗浄工程で排出された上記一次スラリを二次洗浄槽に収容し、該一次スラリの洗浄のための二次洗浄水により該一次スラリを上記二次洗浄槽内で洗浄して、該一次スラリに含まれる放射性物質が溶解した二次溶解水と、上記一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリとを生成して、該二次溶解水を二次洗浄排水として排水するとともに、上記二次スラリを排出する二次洗浄工程と、
上記二次洗浄工程で排水された上記二次洗浄排水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、又は分離除去剤と凝集剤を供給し放射性物質を吸着した分離除去剤粒子を凝集沈殿分離して除去し、放射性物質が除去された上記二次洗浄排水を除去処理排水として排水する除去工程と、
上記二次洗浄工程で排出された上記二次スラリを脱水処理する脱水処理工程と、
上記一次洗浄工程で排出された上記一次洗浄排水および上記脱水処理工程で排水された脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を固化処理する固化処理工程とを備え、
該固化処理工程は、上記一次洗浄排水と上記脱水処理排水とを受け上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を逆浸透膜で分離除去する逆浸透膜処理工程と、該逆浸透膜処理工程で分離除去された放射性物質および塩類を含む濃縮水を受け加熱して水分を蒸発させ放射性物質および塩類を固化する蒸発固化処理工程とを有しており、上記逆浸透膜処理工程で放射性物質および塩類が除去された上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水を固化処理排水として排水し、
上記二次洗浄工程にて、上記除去工程で排水された除去処理排水と上記固化処理工程で排水された固化処理排水とを、外部から供給される補給水とともに上記二次洗浄水として、上記二次洗浄槽に受けることを特徴とする飛灰洗浄方法。
【請求項4】
二次洗浄工程で排水された二次洗浄排水に含まれる飛灰を濾過材で捕捉して除去する濾過工程をさらに備えることとする請求項3に記載の飛灰洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質(放射性セシウム等)により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰には、上記放射性物質が含まれる。該放射性物質を含む飛灰が規定値以下の低汚染状態のものであれば、既存の最終処分場に埋立処分することが可能であるが、高汚染状態のものである場合には、既存の最終処分場に直接埋立処分することができず、飛灰をセメント固化したり容器に収容したりして放射性物質の溶出防止対策を施してから、管理型埋立処分場に埋立処分することになっている。
【0003】
しかし、実際には、溶出防止対策を施す処分は進んでおらず、放射性物質を含む飛灰は処分されずに保管されたままになっており、膨大な量(体積)となってしまっている。そこで、放射性物質を含む飛灰を既存の最終処分場に埋立処分可能とするために、例えば非特許文献1のように、飛灰を、該最終処分場での埋立処分が可能なレベルにまで放射性物質の濃度を低減するように洗浄して除染する技術が検討されている。
【0004】
非特許文献1に記載の飛灰洗浄を行うための飛灰洗浄装置の構成の概要を
図2に示す。
図2に見られるように、この飛灰洗浄装置は、放射性物質(セシウム等)を含む飛灰を洗浄水で洗浄して飛灰のスラリを生成する洗浄装置11と、該洗浄装置11に接続され上記スラリを脱水するとともに飛灰粒子間の間隙水に含まれている放射性物質をリンス用水に溶解して移行させる脱水リンス装置12と、洗浄装置11および脱水リンス装置12に接続され、洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置13と、該吸着装置13に接続され該吸着装置13からの吸着処理排水に含まれる放射性物質を固化する固化処理装置14とを有している。
【0005】
固化処理装置14は、後述する逆浸透膜処理装置15を有しており、該逆浸透膜処理装置15で放射性物質を分離された固化処理排水は、洗浄水およびリンス用水として用いるために戻される。具体的には、上記固化処理排水は、外部からの補給水とともに、洗浄水として洗浄装置11に供給され、また、リンス用水として脱水リンス装置12に供給される。
【0006】
洗浄装置11は、飛灰を受け入れて収容するとともに該飛灰を洗浄するための洗浄水の注入を受ける洗浄槽(図示せず)を有しており、該洗浄槽内にて、飛灰に含まれる放射性物質を洗浄水に溶解させるとともに上記飛灰のスラリを生成するようになっている。
【0007】
脱水リンス装置12は、スラリを脱水するためのベルトフィルタ、フィルタプレス等の脱水機(図示せず)を有している。該脱水リンス装置12は、洗浄装置11からのスラリを受けて上記脱水機でスラリを脱水する際、リンス用水をスラリに散水して、該スラリの飛灰粒子の間の間隙水に含まれる放射性物質をリンス用水に溶解して移行させるようになっている。
【0008】
吸着装置13は、放射性物質を吸着するための吸着剤が充填されており、洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水を受けて、該洗浄排水および該リンス排水に含まれる放射性物質を上記吸着剤によって吸着除去するようになっている。
【0009】
固化処理装置14は、吸着装置13からの吸着処理排水、すなわち該吸着装置13で放射性物質が吸着され放射性物質の含有濃度が低減された洗浄排水およびリンス排水に含まれる放射性物質を逆浸透膜(RO膜。図示せず)で放射性物質を分離除去するための逆浸透膜処理装置15と、該逆浸透膜処理装置15で分離除去された放射性物質を含む濃縮水を加熱器(図示せず)で加熱して水分を蒸発させて放射性物質を固化させる蒸発固化処理装置16とを有している。
【0010】
また、
図2に見られるように、逆浸透膜処理装置15の逆浸透膜処理を施され固化処理装置14外へ排出された排水(固化処理排水)を移送するための移送管は、補給水の供給管に接続されている。これによって、戻された固化処理排水に補給水が補給され、洗浄水またはリンス用水として、それぞれ洗浄装置11または脱水リンス装置12に供給される。
【0011】
このような構成の飛灰洗浄装置によって、飛灰は以下の要領で処理される。まず、洗浄装置11の洗浄槽に、放射性物質を含む飛灰が供給されるとともに洗浄水が注入される。上記洗浄槽内にて、洗浄水と飛灰との液固比を3〜5程度とした状態で該飛灰を洗浄水中に撹拌しながら浸漬して、該飛灰のスラリを生成するとともに、該飛灰から放射性物質を洗浄水に溶解させる。このようにして生成されたスラリの飛灰粒子同士間の間隙水には放射性物質が含まれている。
【0012】
洗浄装置11で生成されたスラリは、脱水リンス装置12へ送られて、脱水機で脱水処理される。この脱水処理の際、リンス用水がスラリに散水され、該スラリの飛灰粒子同士間の間隙水に含まれる放射性物質がリンス用水に溶解して移行する。スラリが脱水処理された後の飛灰(脱水灰)は、放射性物質の含有濃度が十分に低減されており、既存の埋立処分場で埋立処分される。
【0013】
洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水は吸着装置13に送られて、該洗浄排水および該リンス排水に含まれる放射性物質が吸着剤によって吸着除去される。吸着装置13からの排水、すなわち放射性物質の含有濃度が低減された吸着処理排水は、固化処理装置14に送られて、該固化処理装置14の逆浸透膜処理装置15で該吸着処理排水に含まれる放射性物質が分離される。この分離された放射性物質を含む濃縮水は蒸発固化処理装置16で加熱され、その結果、水分が蒸発して放射性物質が固化される。その固化物は、当初の飛灰に比べて放射性物質が大幅に濃縮され減容されており、容器に収容されて保管される。
【0014】
一方、逆浸透膜処理装置15で逆浸透膜処理を施され放射性物質が分離除去された排水は、固化処理排水として固化処理装置14から排出される。この固化処理排水は、洗浄水やリンス用水として利用可能な程度まで、放射性物質が十分に除去されており、
図2に見られるように帰還され、補給水とともに、洗浄水またはリンス用水として洗浄装置11または脱水リンス装置12へ供給される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「飛灰中セシウムの洗浄分離に関する研究」、第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集 廃棄物資源循環学会 2012年10月22日、E2-2、p.573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
非特許文献1では、既述したように、脱水リンス装置12は、飛灰のスラリを脱水する際、飛灰粒子同士間の間隙水に含まれる放射性物質を除去するために、リンス用水を散水しながら脱水する。しかし、脱水灰(脱水処理された飛灰)中の放射性物質の残留濃度をリンスで十分に低くするには多量のリンス用水が必要であり、その分、脱水リンス装置12からのリンス排水の量も多量となる。また、非特許文献1では、洗浄装置11からの洗浄排水や脱水リンス装置12からのリンス排水を洗浄水やリンス用水として再利用するために、洗浄排水およびリンス排水の放射性物質濃度を低減すべく、該洗浄排水およびリンス排水に含まれる放射性物質を、吸着処理や逆浸透膜処理により除去している。しかし、上述したように、リンス排水量が多量となる結果、吸着装置13および逆浸透膜処理装置15の規模を大きくする必要が生じ、設備費や運転費が嵩むという問題点がある。
【0017】
本発明では、このような事情に鑑みて、設備費や運転費を低く抑えつつ、飛灰から放射性物質を効率良く除去できる飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
<第一発明>
第一発明に係る飛灰洗浄装置は、放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する。
【0019】
かかる飛灰洗浄装置において、第一発明では、放射線物質を含む上記飛灰を収容し該飛灰の洗浄のための一次洗浄水の注入を受ける一次洗浄槽を有し、該一次洗浄槽内で上記飛灰を一次洗浄水により洗浄して、上記放射性物質が溶解した一次溶解水と飛灰のスラリとを生成して、該一次溶解水を一次洗浄排水として排水するとともに、上記スラリを一次スラリとして排出する一次洗浄装置と、上記一次洗浄装置からの上記一次スラリを受けて収容し該一次スラリの洗浄のための二次洗浄水の注入を受ける二次洗浄槽を有し、該二次洗浄槽内で上記一次スラリを二次洗浄水により洗浄して、該一次スラリに含まれる放射性物質が溶解した二次溶解水と、上記一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリとを生成して、該二次溶解水を二次洗浄排水として排水するとともに、上記二次スラリを排出する二次洗浄装置と、該二次洗浄装置からの二次洗浄排水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、又は分離除去剤と凝集剤を供給し放射性物質を吸着した分離除去剤粒子を凝集沈殿分離して除去し、放射性物質が除去された上記二次洗浄排水を除去処理排水として排水する除去装置と、上記二次洗浄装置からの上記二次スラリを受け該二次スラリを脱水処理する脱水処理装置と、上記一次洗浄装置からの上記一次洗浄排水と上記脱水処理装置からの脱水処理排水とを受け該一次洗浄排水と該脱水処理排水とに含まれる放射性物質を固化処理し、放射性物質が除去された上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水を固化処理排水として排水する固化処理装置とを備え、上記二次洗浄装置は、上記除去装置からの除去処理排水と上記固化処理装置からの固化処理排水とを、外部から供給される補給水とともに上記二次洗浄水として上記二次洗浄槽に受けることを特徴としている。
【0020】
第一発明に係る飛灰洗浄装置では、一次洗浄装置の一次洗浄槽内で生成された飛灰スラリ(一次スラリ)は二次洗浄装置の二次洗浄槽内に収容されてから二次洗浄水により洗浄される。この二次洗浄水による洗浄の結果、飛灰スラリの飛灰粒子間の間隙水に含まれる放射性物質が二次洗浄水に移行し、多くの放射性物質が二次洗浄排水に含まれて排出され、二次スラリに含まれる放射性物質の量が少なくなる。この二次洗浄装置から放射性物質を高濃度で含む二次溶解水を二次洗浄排水として抜き出し、除去装置に導き放射性物質を除去することにより、飛灰粒子間の間隙水に含まれる放射性物質が効率よく除去される。また、放射性物質が除去された二次洗浄排水を除去処理排水として排水し二次洗浄槽に二次洗浄水として戻すことにより、外部からの補給水の補給をできる限り少なくして二次洗浄を行うことができる。
【0021】
二次洗浄装置では、従来の脱水リンス装置のように多量のリンス用水をスラリに散水するのではなく、二次スラリを生成可能な程度の量の二次洗浄水を供給するだけでよく、該二次洗浄水を二次洗浄槽に注入して一次スラリを洗浄する。このように、第一発明では、一次スラリの洗浄に使用される二次洗浄水の量は、従来必要とされた上記リンス用水の量と比較して少量で済む。したがって、除去装置で除去処理される二次洗浄排水の量もその分少なくなるので、上記除去装置の規模を小さくすることができ、除去装置の設備費や運転費を抑制することができる。
【0022】
また、第一発明では、脱水処理装置は、二次スラリを脱水処理する際に、従来のようにリンス用水の供給を受けない。したがって、上記脱水処理装置から排出される脱水処理排水は、二次スラリに含まれる水分だけであり、脱水リンス装置でリンス用水を散水していた従来と比較して少量である。この結果、固化処理装置で固化処理される排水の量もその分少なくなるので、上記固化処理装置の規模を小さくすることができ、固化処理装置の設備費や運転費を抑制することができる。
【0023】
また、除去装置からの除去処理排水および固化処理装置からの固化処理排水は、二次洗浄装置の二次洗浄槽へ帰還して二次洗浄水として再利用される。この除去処理排水および固化処理排水によって二次洗浄水を賄うことができるので、外部から新たに二次洗浄槽へ補給する補給水はわずかな量で済み、二次洗浄水による一次スラリの洗浄を効率よく行うことができる。
【0024】
第一発明において、飛灰洗浄装置は、二次洗浄装置からの二次洗浄排水を受け該二次洗浄排水に含まれる飛灰を濾過材で捕捉して除去する濾過装置をさらに備えていてもよい。
【0025】
<第二発明>
第二発明に係る飛灰洗浄方法は、放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する。
【0026】
かかる飛灰洗浄方法において、第二発明では、放射線物質を含む上記飛灰を一次洗浄槽に収容し、該飛灰の洗浄のための一次洗浄水により該飛灰を上記一次洗浄槽内で洗浄して、上記放射性物質が溶解した一次溶解水と飛灰のスラリとを生成して、該一次溶解水を一次洗浄排水として排水するとともに、上記スラリを一次スラリとして排出する一次洗浄工程と、上記一次洗浄工程で排出された上記一次スラリを二次洗浄槽に収容し、該一次スラリの洗浄のための二次洗浄水により該一次スラリを上記二次洗浄槽内で洗浄して、該一次スラリに含まれる放射性物質が溶解した二次溶解水と、上記一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリとを生成して、該二次溶解水を二次洗浄排水として排水するとともに、上記二次スラリを排出する二次洗浄工程と、上記二次洗浄工程で排水された上記二次洗浄排水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、又は分離除去剤と凝集剤を供給し放射性物質を吸着した分離除去剤粒子を凝集沈殿分離して除去し、放射性物質が除去された上記二次洗浄排水を除去処理排水として排水する除去工程と、上記二次洗浄工程で排出された上記二次スラリを脱水処理する脱水処理工程と、上記一次洗浄工程で排出された上記一次洗浄排水と上記脱水処理工程で排水された脱水処理排水とに含まれる放射性物質を固化処理し、放射性物質が除去された上記一次洗浄排水および上記脱水処理排水を固化処理排水として排水する固化処理工程とを備え、上記二次洗浄工程にて、上記除去工程で排水された除去処理排水と上記固化処理工程で排水された固化処理排水とを、外部から供給される補給水とともに上記二次洗浄水として、上記二次洗浄槽に受けることを特徴としている。
【0027】
第二発明において、飛灰洗浄方法は、二次洗浄工程で排水された二次洗浄排水に含まれる飛灰を濾過材で捕捉して除去する濾過工程をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、一次洗浄装置の一次洗浄槽内で生成された飛灰スラリ(一次スラリ)は二次洗浄装置の二次洗浄槽内に収容されてから二次洗浄水により洗浄され、飛灰スラリの飛灰粒子間の間隙水に含まれる放射性物質が二次洗浄水に移行し、多くの放射性物質が二次洗浄排水に含まれて排出され、吸着剤による吸着処理あるいは分離除去剤および凝集剤による凝集沈殿分離により二次洗浄排水から放射性物質を除去することにより、飛灰粒子間の間隙水に含まれる放射性物質が効率よく除去される。また、放射性物質が除去された二次洗浄排水を除去処理排水として排水し二次洗浄槽に二次洗浄水として戻すことにより、外部からの補給水の補給をできる限り少なくして二次洗浄を行うことができる。また、一次スラリの洗浄に使用される二次洗浄水の量は、従来必要とされた上記リンス用水の量と比較して少量で済み、除去装置で除去処理される二次洗浄排水の量が少なくなるので、除去装置の規模を小さくすることができ、除去装置の設備費や運転費を抑制することができる。
【0029】
また、脱水処理装置では、二次スラリを脱水処理する際にリンス用水の供給を受けない。したがって、上記脱水処理装置から排出される脱水処理排水は、二次スラリに含まれる水分だけであり、リンス用水を散水していた従来と比較して少量である。この結果、固化処理装置で固化処理される排水の量もその分だけ少なくなるので、上記固化処理装置の規模を小さくすることができる。したがって、固化処理装置の設備費や運転費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。
【
図2】従来の飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。本実施形態に係る飛灰洗浄装置は、放射性物質(セシウム等)を含む飛灰の該放射性物質の含有濃度を、既存の埋立処分場で埋立処分可能な程度にまで低減させるように、該飛灰を洗浄する。洗浄後の放射性物質を高濃度で含有する排水から放射性物質を吸着剤により吸着除去し、洗浄後の飛灰を脱水処理した排水中の放射性物質を逆浸透膜処理により濃縮し、該濃縮水の水分蒸発固化後の放射性物質を含む固化物を保管する。また、本実施形態では、飛灰が放射性物質の他に塩類(Na,Ca,K,Cl等)をも含んでいる場合について説明する。
【0033】
図1に見られるように、飛灰洗浄装置は、放射性物質を含む飛灰を一次洗浄水で洗浄して飛灰のスラリ(後述の一次スラリ)を生成する
一次洗浄装置1と、該
一次洗浄装置1に接続され、上記一次スラリを二次洗浄水で洗浄して後述の二次スラリを生成する二次洗浄装置2と、該二次洗浄装置2からの二次洗浄排水を選択的に受けて該二次洗浄排水に含まれる飛灰を濾過材により捕捉して除去する濾過装置9と、二次洗浄装置2からの二次洗浄排水あるいは濾過装置9からの濾過処理排水に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する除去装置としての吸着装置3と、二次洗浄装置2からの二次スラリおよび濾過装置9からの濾過残渣(飛灰)を脱水処理する脱水処理装置4と、一次洗浄装置1からの一次洗浄排水および脱水処理装置4からの脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を固化処理する固化処理装置5とを有している。
【0034】
一次洗浄装置1は、放射性物質および塩類を含む飛灰を受け入れて収容するとともに該飛灰の洗浄のための一次洗浄水の注入を受ける一次洗浄槽(図示せず)を有しており、該一次洗浄槽内で飛灰を一次洗浄水により洗浄して、上記放射性物質および塩類が溶解した一次溶解水と上記飛灰のスラリ(一次スラリ)とを生成するようになっている。飛灰に含まれる塩類はそのほとんどが一次溶解水に溶解しており、一次スラリには残留していない。上記一次洗浄槽内では、一次スラリが沈降して下層を占めるので、一次溶解水は上層を形成し、一次洗浄排水として排水される。また、本実施形態では、上記一次洗浄槽は、後述する二次洗浄装置2の二次洗浄槽の上部と配管を介して接続されており、該二次洗浄槽内で生成されて上層を形成する二次溶解水が一次洗浄水として上記一次洗浄槽に注入されている。
【0035】
二次洗浄装置2は、一次洗浄装置1の一次洗浄槽の下部と配管を介して接続されており、該一次洗浄槽の下部に沈降している一次スラリを受けて収容し該一次スラリの洗浄のための二次洗浄水の注入を受ける二次洗浄槽(図示せず)を有している。該二次洗浄装置2は、該二次洗浄槽内で一次スラリを二次洗浄水により洗浄して、上記一次スラリに含まれる放射性物質が溶解した二次溶解水と、一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリとを生成するようになっている。上記二次洗浄槽内では、二次スラリが沈降して下層を占めるので、二次溶解水は上層を形成し、二次洗浄排水として排水される。
【0036】
また、二次洗浄装置2の二次洗浄槽には、二次洗浄水供給管8が接続されており、該二次洗浄水供給管8から二次洗浄水が供給されるようになっている。本実施形態では、二次洗浄水として、吸着装置3からの除去処理排水としての吸着処理排水と、固化処理装置5からの固化処理排水と、さらには、吸着処理排水および固化処理排水による水量に対する不足分(例えば、後述の蒸発固化処理装置7で蒸発する分)を補う量だけ外部から補給される補給水とが、二次洗浄水供給管8を経て上記二次洗浄槽に供給される。
【0037】
濾過装置9は、二次洗浄装置2の二次洗浄槽の上部に配管を介して接続されており、二次洗浄槽から排水された二次溶解水、すなわち二次洗浄排水を受ける。該濾過装置9は、二次洗浄排水に混ざっている飛灰を捕捉するための濾過材(図示せず)を有している。該濾過材は、例えば、メッシュフィルターや濾過膜等により構成される。濾過装置9は、濾過材に付着した飛灰による閉塞を防止するために該濾過材の逆洗処理を行う逆洗機構(図示せず)を有していている。該逆洗機構は、例えば、濾過材に機械的振動を与えて飛灰を除去する機構や、圧縮空気を吹き込んで濾過材に振動を与えて飛灰を除去する機構によって構成することができる。濾過材により飛灰が除去された二次洗浄排水は、濾過処理排水として排水される。
【0038】
本実施形態では、
図1に見られるように、二次洗浄装置2から二次洗浄排水を濾過装置9へ供給する供給管には切換バルブ10が設けられており、該切換バルブ10の切替操作により、二次洗浄排水を濾過装置9へ供給するか、または濾過装置9へ供給することなく吸着装置3へ供給するかを選択できるようになっている。例えば、二次洗浄排水に飛灰が混ざっている場合には、該二次洗浄排水を濾過装置9へ供給し、二次洗浄排水にほとんど飛灰が混ざっていない場合には、該二次洗浄排水を吸着装置3へ直接供給することができる。また、上記切換バルブ10は必須ではなく、二次洗浄装置2からの二次洗浄排水が必ず濾過装置9で濾過処理されてから吸着装置3へ濾過処理排水として供給されるようにしてもよく、また、濾過装置9を設けずに、上記二次洗浄排水が吸着装置3へ直接供給されるようにしてもよい。
【0039】
吸着装置3は、二次洗浄装置2の二次洗浄槽の上部および濾過装置9に配管を介して接続されており、二次洗浄槽からの二次洗浄排水または濾過装置9からの濾過処理排水を選択的に受ける。該吸着装置3は、放射性物質を吸着するための吸着剤が充填された充填層を有しており、上記二次洗浄排水または濾過処理排水に含まれる放射性物質を上記吸着剤によって吸着除去するようになっている。本実施形態では、上記吸着剤として、例えばゼオライト等が使用されている。また、吸着装置3は、既述の二次洗浄水供給管8に接続されており、吸着装置3から排出された吸着処理排水が上記二次洗浄水供給管8に送られるようになっている。
【0040】
本実施形態では、二次洗浄排水または濾過処理排水に含まれる放射性物質を除去するための除去装置として、上述の吸着装置3を設けることとしたが、これに代えて、上記除去装置として、二次洗浄排水または濾過処理排水に含まれる放射性物質を凝集沈殿分離により除去する凝集沈殿分離装置を設けてもよい。該凝集沈殿分離装置は、二次洗浄排水または濾過処理排水の注水を受ける凝集沈殿槽を有し、該二次洗浄排水または濾過処理排水に分離除去剤粒子を添加して該分離除去剤粒子に放射性物質を吸着させ、さらに凝集剤を添加して、懸濁している分離除去剤粒子を凝集そして沈殿させ、その沈殿物を抜き出すことにより上記放射性物質を除去する。上記分離除去剤粒子としては、例えば、フェロシアン化金属錯塩、例えばフェロシアン化ニッケル錯塩、プルシアンブルー(フェロシアン化鉄錯塩)が使用され、また、上記凝集剤としては、例えば、硫酸第二鉄などが使用される。
【0041】
脱水処理装置4は、二次洗浄装置2の二次洗浄槽の下部および濾過装置9に配管を介して接続されており、該二次洗浄槽の下部に沈降している二次スラリおよび濾過装置9で捕捉除去された濾過残渣(飛灰)を受けるようになっている。該脱水処理装置4は、例えばベルトフィルタ、フィルタプレス等の脱水機(図示せず)を有しており、該脱水機で二次スラリおよび濾過残渣を脱水処理する。
【0042】
固化処理装置5は、一次洗浄装置1の一次洗浄槽の上部および脱水処理装置4のそれぞれと接続されており、上記一次洗浄槽から排水される一次溶解水、すなわち放射性物質および塩類を含む一次洗浄排水と、脱水処理装置4から排水される放射性物質を含む脱水処理排水とを受けるようになっている。固化処理装置5は、一次洗浄排水および脱水処理排水に含まれる放射性物質および塩類を逆浸透膜(RO膜。図示せず)で分離除去するための逆浸透膜処理装置6と、該逆浸透膜処理装置6で分離除去された放射性物質および塩類を含む濃縮水を加熱器(図示せず)で加熱して水分を蒸発させることにより放射性物質を濃縮して固化させる蒸発固化処理装置7とを有している。
【0043】
また、逆浸透膜処理装置6は、既述の二次洗浄水供給管8に接続されており、逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理を施され固化処理装置5外へ排水された固化処理排水が上記二次洗浄水供給管8に送られるようになっている。
【0044】
このような構成を有する本実施形態の飛灰洗浄装置によって、放射性物質および塩類を含む飛灰は以下の要領で処理される。まず、一次洗浄装置1の一次洗浄槽に、放射性物質および塩類を含む飛灰が供給されるとともに一次洗浄水が注入される。ここでは、
図2に示した従来の洗浄装置11と同様に、上記一次洗浄槽内にて、一次洗浄水と飛灰との液固比を3〜5程度とした状態で該飛灰を一次洗浄水中に撹拌しながら浸漬して、上記放射性物質および塩類が溶解した一次溶解水と飛灰のスラリ(一次スラリ)とを生成する。このとき、塩類は放射性物質と比較して一次洗浄水に溶解しやすいので、飛灰に含まれる塩類の大部分は一次洗浄水に溶解する。また、生成された一次スラリは一次洗浄槽内の下部に沈降し、一次溶解水は上層を形成する。該一次スラリの飛灰粒子同士間の間隙水には放射性物質が含まれている。
【0045】
上記一次洗浄槽で生成された一次溶解水は、一次洗浄排水として排水されて固化処理装置5の逆浸透膜処理装置6へ送られる。また、上記一次洗浄槽で生成された一次スラリは、二次洗浄装置2の二次洗浄槽へ送られて、二次洗浄水により洗浄される。上記二次洗浄槽内では、一次スラリを二次洗浄水中で撹拌しながら一次スラリの飛灰粒子同士間の間隙水を二次洗浄水と置換することにより、該間隙水に含まれる放射性物質を二次洗浄水に移行させる。この結果、該放射性物質が溶解した二次溶解水と上記一次スラリよりも放射性物質の濃度が低い二次スラリが生成される。生成された二次スラリは二次洗浄槽内の下部に沈降し、二次溶解水は上層を形成する。
【0046】
上記二次洗浄槽で生成された二次溶解水は、二次洗浄排水として二次洗浄槽から排出されて、濾過装置9あるいは吸着装置3へ送られる。上記二次洗浄排水が濾過装置9へ送られた場合には、該二次洗浄排水中に混ざっている飛灰が濾過材で捕捉されて除去され、濾過処理を受けた二次洗浄排水が濾過処理排水として吸着装置3へ送られる。該吸着装置3へ送られた二次洗浄排水あるいは濾過処理排水は、吸着剤の充填層を透過することにより、二次洗浄排水に含まれる放射性物質が上記充填層における吸着剤によって吸着除去される。この結果、二次洗浄排水は、二次洗浄水として再利用可能な程度まで放射性物質が上記吸着剤により吸着除去されてから、吸着処理排水として吸着装置3から排水される。該吸着処理排水は、二次洗浄水供給管8へ送られて、二次洗浄装置2の二次洗浄槽へ二次洗浄水として供給される。また、上述の吸着処理を繰り返して放射性物質を吸着した上記吸着剤は、適宜、吸着装置3から取り出された後、保管される。また、吸着装置3には新たな吸着剤が充填される。
【0047】
また、上記二次洗浄槽で生成された二次スラリおよび濾過装置9で捕捉除去された濾過残渣(飛灰)は、脱水処理装置4へ送られて、脱水機により脱水処理される。二次スラリおよび濾過残渣が脱水処理された後の飛灰(脱水灰)は、放射性物質の含有濃度が十分に低減されており、既存の埋立処分場で埋立処分される。
【0048】
一次洗浄装置1からの一次洗浄排水および脱水処理装置4からの脱水処理排水は、固化処理装置5の逆浸透膜処理装置6へ送られて、該逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理されて放射性物質および塩類が分離除去される。分離除去された放射性物質および塩類を含む濃縮水は、蒸発固化処理装置7へ送られて、加熱器で加熱され、水分が蒸発することにより、放射性物質および塩類が固化される。該放射性物質および塩類の固化物は容器に収容されて保管される。
【0049】
一次洗浄排水および脱水処理排水は、逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理された後には、二次洗浄水として再利用可能な程度までに放射性物質および塩類が除去されており、固化処理排水として固化処理装置5から排水される。該固化処理排水は、二次洗浄水供給管8へ送られて、二次洗浄装置2の二次洗浄槽へ二次洗浄水として供給される。
【0050】
本実施形態では、既述したように、一次洗浄装置1で生成された一次スラリは、二次洗浄装置2の二次洗浄槽内に収容されて二次洗浄水で洗浄される。該二次洗浄装置2は、従来の脱水リンス装置(
図2参照)のように多量のリンス用水をスラリに散水するのではなく、二次スラリを生成可能な程度の量の二次洗浄水を二次洗浄槽に注入して一次スラリを洗浄する。つまり、一次スラリの洗浄に使用される二次洗浄水の量は、従来の脱水リンス装置で散水されたリンス用水の量と比較して少ない。したがって、二次洗浄装置2から排水されて吸着装置3で放射性物質が吸着処理される二次洗浄排水も少量となるので、上記吸着装置3の規模を小さくすることができ、吸着装置3の設備費や運転費を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、脱水処理装置4は、二次スラリを脱水処理する際に従来のようにリンス用水の供給を受けない。したがって、脱水処理装置4から排水される脱水処理排水は、二次スラリに含まれる水分だけであり、この水分の量は、従来の脱水リンス装置で散水されたリンス用水の量と比較して少ない。この結果、固化処理装置5で放射性物質および塩類が固化処理される脱水処理排水の量もその分少なくなるので、固化処理装置5の規模を小さくすることができる。したがって、固化処理装置5の設備費や運転費を抑制することができる。
【0052】
また、吸着装置3からの吸着処理排水および固化処理装置4からの固化処理排水は、二次洗浄装置2の二次洗浄槽へ帰還して二次洗浄水として再利用されるので、再利用を繰り返す過程で次第に不足する分(例えば、蒸発固化処理装置16での蒸発分)を補給水で補えばよい。したがって、外部から二次洗浄槽へ新たに補給する上記補給水はわずかな量で済むので、二次洗浄水による一次スラリの洗浄を効率良く行うことができる。また、本実施形態では、一次洗浄装置1の一次洗浄槽に供給される一次洗浄水として上記二次洗浄槽からの二次洗浄水が供給される構成となっているので、一次洗浄水を外部から取り入れる必要がなくなり、一次洗浄水による飛灰の洗浄を効率良く行うことができる。なお、上述の構成に代えて、外部から一次洗浄槽に一次洗浄水を取り入れる構成としてもよいことは言うまでもない。
【0053】
ところで、放射性物質の他に塩類が飛灰に含まれている場合、
図2で示した従来の飛灰洗浄装置では、塩類の殆どが洗浄装置11で洗浄水に溶解し、洗浄排水に含まれた状態で吸着装置13に送られる。この従来の飛灰洗浄装置において、吸着装置13に充填される充填剤としては、塩類の影響を受けずに放射性物質を吸着できるような種類の吸着剤を選定する必要があり、吸着剤の費用が高価になるという問題がある。
【0054】
これに対して本実施形態では、既述したように、飛灰に含まれる塩類の殆どは一次洗浄装置1の一次洗浄内で一次洗浄水に溶解して一次溶解水に含まれており、該一次溶解水が一次洗浄排水として、吸着装置3を経ることなく逆浸透膜処理装置6へ送られる。つまり、吸着装置3に供給される二次洗浄排水に含まれている塩類は少量である。したがって、吸着装置3の吸着剤として、安価な吸着剤であるゼオライト等を採用しても、塩類の影響がないため、該吸着剤で多量の放射性物質を吸着することができる。このように、本実施形態によれば、吸着装置3の吸着剤として安価な吸着剤を選定しても二次洗浄水に含まれる放射性物質の濃度を十分に低減させることができる。
【0055】
本実施形態では、固化処理装置5は、逆浸透膜処理装置6で分離除去された放射性物質および塩類を、蒸発固化処理装置7の加熱器で加熱して水分を蒸発させることにより、固化させることとしたが、この蒸発固化処理装置7に代えて、例えば、セメント固化処理装置を設けて、上記放射性物質および塩類をセメントで固化することとしてもよい。セメントで固化された固化物は、そのまま保管してもよいし、容器に収容して保管してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 一次洗浄装置
2 二次洗浄装置
3 吸着装置(除去装置)
4 脱水処理装置
5 固化処理装置
9 濾過装置