特許第6098892号(P6098892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098892
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】フェニルピロール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20170313BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20170313BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20170313BHJP
   C07D 491/107 20060101ALI20170313BHJP
   C07D 207/34 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   C07D401/14
   C07D413/14
   C07D491/107
   C07D207/34
   A61K31/4025
   A61K31/454
   A61K31/4545
   A61K31/5377
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P11/02
   A61P25/00 101
   A61P25/08
   A61P25/14
   A61P25/18
   A61P25/20
   A61P25/24
   A61P25/28
   A61P37/08
   A61P43/00 113
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-548307(P2013-548307)
(86)(22)【出願日】2012年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2012081744
(87)【国際公開番号】WO2013085018
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-268561(P2011-268561)
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】中村 年男
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠治
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/072724(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/012190(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/063953(WO,A1)
【文献】 特開2010−285423(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094962(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/072703(WO,A1)
【文献】 FAGHIH,R. et al. ,Aminoalkoxybiphenylnitriles as histamine-3 receptor ligands,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2002年,Vol.12, No.21,p.3077-3079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
413/14
491/107
A61K 31/454、4025、5377
A61P 3/04、06
11/02
25/00、08、14、18、20、24、28
37/08
43/00
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式(I)中、Qは、下記式(A)又は(B)で表される基を示し、
【化2】

1は、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ又はNR1A1Bを示し、
1A及びR1Bは、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル又はC3〜C7シクロアルキルを示し、
又はR1A及びR1Bは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環(該飽和複素環は1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を形成してもよく、
2は、水素原子、ハロゲン原子又はC1〜C6アルキルを示し、
nは、1又は2を示し、
3は、水素原子、ハロゲン原子又はC1〜C6アルキルを示し、
4は、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは1又は2個のC3〜C7シクロアルキルで置換されてもよい。)又はC3〜C7シクロアルキル(該C3〜C7シクロアルキルは1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を示し、
5及びR6は、同一又は異なって、C1〜C6アルキル又はC3〜C7シクロアルキルを示し、
又はR5及びR6は、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環(該飽和複素環は1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を形成してもよい。]
で表される化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項2】
Qが式(A)
【化3】

(式中、Rは、請求項1で定義された通りである)
である、請求項1に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項3】
1がNR1A1B(式中、R1A及びR1Bは、請求項1で定義された通りである)である、請求項1又は2に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項4】
2及びR3が水素原子であり、nが1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項5】
がC3〜C7シクロアルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項6】
メチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキシラート、
1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボン酸、
アゼチジン−1−イル(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)メタノン、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピペリジン−1−イル)メタノン、
1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N,N−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(モルホリン−4−イル)メタノン、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)[(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−イル]メタノン、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(2−オキサ−6−アザスピロ[3.3]ヘプタ−6−イル)メタノン、
N−tert−ブチル−1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−シクロブチル−1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
メチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキシラート、
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン、
[1−(4−{3−[(2R)−2−メチルピロリジン−1−イル]プロポキシ}フェニル)−1H−ピロール−3−イル](ピロリジン−1−イル)メタノン、
(1−{4−[(1−イソプロピルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン、
1−{4−[(1−イソプロピルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
(1−{4−[(1−tert−ブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン、
及び1−{4−[(1−tert−ブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミドからなる群より選ばれる、請求項1に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩。
【請求項7】
下記構造式で示される1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミドである請求項1に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩
【化4】


【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項9】
ヒスタミンH3受容体拮抗剤又は逆作動剤である、請求項に記載の医薬。
【請求項10】
認知症、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性症、統合失調症、てんかん、中枢性痙攣、肥満、糖尿病、高脂血症、ナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病、若しくはアレルギー性鼻炎の予防剤又は治療剤である、請求項8又は9に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェニルピロール誘導体及びその医薬用途、特に、ヒスタミンH3受容体関連疾患の予防または治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは肥満細胞、肺、肝臓、及び胃粘膜などで普段は細胞内の顆粒に貯蔵されており、細胞表面の抗体に抗原が結合するなどの外部刺激を受けて細胞外へ放出される。例えば、肥満細胞が外部から進入した抗原で刺激されると、ヒスタミンは肥満細胞から放出され、血管や平滑筋上に存在するヒスタミンH1(H1)受容体を刺激することによりアレルギー反応を引きおこす。また、胃粘膜上のECL細胞(enterochromaffin−like cell)から放出されたヒスタミンは壁細胞上のヒスタミンH2(H2)受容体を刺激し、胃酸分泌を促進する。これらの事実に基づき、アレルギー疾患治療薬、又は胃潰瘍治療薬としてH1受容体拮抗物質、又はH2受容体拮抗物質の開発が行われ、現在は医薬品として広く使用されている。
【0003】
さらに、ヒスタミンは神経伝達物質として中枢神経及び末梢神経に存在するヒスタミン受容体(ヒスタミンH3(H3)受容体)に作用し、種々の生理機能を発揮することが明らかになった。この受容体は1999年にクローニングされ、その遺伝子配列およびアミノ酸配列が明らかになったが、H1受容体及びH2受容体とのアミノ酸配列相同性は、それぞれ22%、及び21.4%と低いものであった(非特許文献1参照)。H3受容体はシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの合成と遊離を制御するオートレセプターとして機能することが示された(非特許文献2参照)。また、H3受容体は、ヒスタミンの放出を制御するとともに、アセチルコリン、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンといった他の神経伝達物質の放出をも制御することが明らかとなった(非特許文献3参照)。さらに、H3受容体は、アゴニストの不在下で活性であることが示唆されており、この活性は、逆作動物質として作用する化合物により阻害されることができる。これらの事実は、H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質が、H3受容体により制御される神経伝達物質の放出を増大し、放出異常に関連した各種疾患の治療薬になりうることを示唆している。
【0004】
実際、動物モデルを用いた実験結果は、H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質が、認知症、アルツハイマー病(非特許文献4及び5参照)、注意欠陥・多動性症(非特許文献6参照)、統合失調症(非特許文献7参照)、てんかん、中枢性痙攣などの治療薬として利用できる可能性を示している。
【0005】
また、H3受容体が摂食行動に関与することが示されており(非特許文献8参照)、H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質の適応疾患として肥満、糖尿病、高脂血症などの代謝系疾患も想定される。
【0006】
また、ヒスタミンは脳内の日周リズムを調節し、覚醒と睡眠のバランスを保つ役割があることが示されており(非特許文献9及び10参照)、H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質の適応疾患としてナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病など睡眠障害に伴う疾患も想定される。
【0007】
さらに、H3受容体は鼻粘膜の交感神経に存在していることが示され、H3受容体拮抗物質とH1受容体拮抗物質の併用により鼻閉が顕著に改善されることが報告されている(非特許文献11参照)。このことは、H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質は単独で、又はH1受容体拮抗物質との併用でアレルギー性鼻炎等の治療に有用である可能性を示している。
【0008】
H3受容体拮抗物質、又は逆作動物質については、複数のレビューにまとめられており(非特許文献12〜15参照)、これらを参照することができる。初期にはヒスタミン自身をリード化合物としたイミダゾール系化合物が数多く報告されたが、薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)の阻害作用等の懸念が示され、医薬品として開発されるには至っていない。
【0009】
最近になって、非イミダゾール系のH3受容体拮抗物質あるいは逆作動物質の文献及び特許が数多く報告されている(特許文献1〜10参照)。
【0010】
また、ピラゾール環等の5員芳香環を有するヒスタミンH3受容体拮抗物質が報告されている(特許文献11〜14参照)。更に、アリールオキシピペリジン骨格を有するヒスタミンH3受容体拮抗物質の中で、置換基として非置換ピロールを有する化合物が報告されている(特許文献15参照)。しかし、本発明に開示された構造を有する化合物についての報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2005097751国際公開公報
【特許文献2】WO2005097778国際公開公報
【特許文献3】WO2005118547国際公開公報
【特許文献4】WO2006014136国際公開公報
【特許文献5】WO2006045416国際公開公報
【特許文献6】WO2006046131国際公開公報
【特許文献7】WO2006059778国際公開公報
【特許文献8】WO2006061193国際公開公報
【特許文献9】WO2006107661国際公開公報
【特許文献10】WO2006103057国際公開公報
【特許文献11】WO2006103045国際公開公報
【特許文献12】WO2007094962国際公開公報
【特許文献13】WO2008072724国際公開公報
【特許文献14】WO2009063953国際公開公報
【特許文献15】WO2002012190国際公開公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lovenberg T.W.ら、Molecular pharmacology, 55, 1101-1107, 1999
【非特許文献2】Arrang J-M.ら、Nature, 302, 832-837, 1983
【非特許文献3】Brown R.E. ら、Progress in Neurobiology, 63, 637-672, 2001
【非特許文献4】Huang Y-W.ら、Behavioural Brain Research, 151, 287-293, 2004
【非特許文献5】Komater V.A.ら、Behavioural Brain Research, 159, 295-300, 2005
【非特許文献6】Passani M.B.ら、Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 24, 107-113, 2000
【非特許文献7】Fox G.B.ら、J. Pharmacol. Exp. Ther., 313, 176-190, 2005
【非特許文献8】Hancock A.A. ら、Curr. Opin. Investig. Drug, 4, 1190-1197
【非特許文献9】Huang Z-L.ら、Prog. Natr. Acad. Sci., 103, 4687-4692, 2006
【非特許文献10】Babier A.J.ら、Br. J. Pharmacol., 143, 649-661, 2004
【非特許文献11】McLeod R.L.ら、Am. J. Rhinol., 13, 391-399, 1999
【非特許文献12】Schwartz J.C.ら、Trends in Pharmacol. Sci., 7, 24-28, 1986
【非特許文献13】Passani M.B.ら、Trends in Pharmacol. Sci., 25, 618-625, 2004
【非特許文献14】Leurs R.ら、Nature Drug Discovery, 4, 107-122, 2005
【非特許文献15】Leurs R.ら、Drug Discovery Today, 10, 1613-1627, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ヒスタミンH3受容体へのヒスタミンの結合に対し強力な阻害作用を有し、ヒスタミンH3受容体に起因する障害、例えば、認知症、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性症、統合失調症、てんかん、中枢性痙攣、肥満、糖尿病、高脂血症、ナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病、若しくはアレルギー性鼻炎等の疾患の予防又は治療に有用な新規な化合物又はその医薬上許容される塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記目的のため鋭意研究を行った結果、ピロールの3位がカルボニルを有する基で置換されているフェニルピロール誘導体が、ヒスタミンH3受容体へのヒスタミンの結合に対して強力な阻害活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の態様(以下、化合物の態様を「本発明化合物」という)は以下に示すものである。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
[式(I)中、Qは、下記式(A)又は(B)で表される基を示し、
【0019】
【化2】
【0020】
1は、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ又はNR1A1Bを示し、
1A及びR1Bは、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル又はC3〜C7シクロアルキルを示し、
又はR1A及びR1Bは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環(該飽和複素環は1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を形成してもよく、
2は、水素原子、ハロゲン原子又はC1〜C6アルキルを示し、
nは、1又は2を示し、
3は、水素原子、ハロゲン原子又はC1〜C6アルキルを示し、
4は、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは1又は2個のC3〜C7シクロアルキルで置換されてもよい。)又はC3〜C7シクロアルキル(該C3〜C7シクロアルキルは1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を示し、
5及びR6は、同一又は異なって、C1〜C6アルキル又はC3〜C7シクロアルキルを示し、
又はR5及びR6は、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環(該飽和複素環は1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を形成してもよい。]
で表される化合物、又はその医薬上許容される塩、
(2)Qが式(A)
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、Rは、(1)で定義された通りである)
である、(1)に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩、
(3)R1がNR1A1B(式中、R1A及びR1Bは、(1)で定義された通りである)である、(1)又は(2)に記載の化合物、又はその医薬上許容される塩、
(4)R2及びR3が水素原子であり、nが1である、(1)〜(3)のいずれかに記載の化合物、又はその医薬上許容される塩、
(5)RがC3〜C7シクロアルキルである、(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物、又はその医薬上許容される塩、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬、
(7)ヒスタミンH3受容体拮抗剤又は逆作動剤である、(6)に記載の医薬、又は
(8)認知症、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性症、統合失調症、てんかん、中枢性痙攣、肥満、糖尿病、高脂血症、ナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病、若しくはアレルギー性鼻炎の予防剤又は治療剤である、(6)又は(7)に記載の医薬である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化合物は、優れたヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で用いられる用語は、以下に定義される通りである。
【0025】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0026】
「C1〜C6アルキル」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル又はn−ヘキシル等の基を示す。
【0027】
「C3〜C7シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルの基を示す。
【0028】
「C1〜C6アルコキシ」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基を示し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ又はn−ヘキシルオキシ等の基を示す。
「隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環」とは、前記窒素原子を含み、さらにO、N、およびSから選択される1個のヘテロ原子を含んでもよい、3〜7個の環構成原子から構成される飽和の単環若しくはスピロ環を示し、例えば、1−アジリジニル、1−アゼチジニル、1−ピロリジニル、ピペリジノ、1−アゼパニル、モルホリノ又は2−オキサ−6−アザスピロ[3,3]ヘプタン−6−イル等の基があげられる。
【0029】
本発明化合物の好ましい態様を以下に示す。
【0030】
本発明の式(I)の化合物の好ましい1つの態様は、Qが式(A)である。
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、R4は、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは1又は2個のC3〜C7シクロアルキルで置換されてもよい。)又はC3〜C7シクロアルキル(該C3〜C7シクロアルキルは1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を示す。)
式(A)におけるRは好ましくは、C3〜C7シクロアルキルであり、さらに好ましくは、シクロブチルである。
【0033】
本発明の式(I)の化合物の好ましい1つの態様は、R1がNR1A1Bである(式中、R1A及びR1Bは、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル又はC3〜C7シクロアルキルを示し、又はR1A及びR1Bは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した3〜7員の飽和複素環(該飽和複素環は1又は2個のC1〜C6アルキルで置換されてもよい。)を形成してもよい)。
【0034】
本発明の式(I)の化合物の好ましい1つの態様は、R2及びR3が水素原子であり、nが1である。
【0035】
本発明の化合物における望ましいプロファイルとしては、薬効が優れていること、体内動態が優れていること(経口吸収性が良い・特定の組織に蓄積性を有さない)、医薬品として優れた物性を示すこと、低毒性であること、等が挙げられる。本発明の好ましい化合物は、薬物の脳移行性を制御している排出トランスポーターであるP−糖タンパク質の基質としての認識性が低いため、優れた脳内移行性を有することが期待される。
【0036】
本発明において、医薬上許容される塩とは、例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸との塩、酢酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸との塩、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどの1種又は複数の金属イオンとの塩、アンモニア、アルギニン、リシン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ベンザチンなどのアミンとの塩が含まれる。
【0037】
本発明の化合物は、各種溶媒和物としても存在し得る。また、医薬としての適用性の面から水和物の場合もある。
【0038】
本発明の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、平衡化合物、これらの任意の割合の混合物、ラセミ体等の全ての形態を包含する。個々の異性体は公知の方法、例えば光学活性な出発物質若しくは中間体の使用、中間体若しくは最終生成物の製造における光学選択的な反応又はジアステレオ選択的な反応、或いは中間体又は最終生成物の製造におけるクロマトグラフィーを用いた分離等により得ることが可能である。
【0039】
本発明の化合物には、一つ以上の水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が放射性同位元素や安定同位元素と置換された化合物も含まれる。これらの標識化合物は、例えば代謝や薬物動態研究、受容体のリガンドとして生物学的分析等に有用である。
【0040】
本発明の化合物、又はその医薬上許容される塩は、一つ又は二つ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合せて医薬的製剤とすることができる。上記担体、賦形剤及び希釈剤として、例えば水、乳糖、デキストロース、フラクトース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、デンプン、ガム、ゼラチン、アルギネート、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルキルパラヒドロキシベンゾソルベート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリン、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の各種油等が含まれる。
【0041】
また、上記の担体、賦形剤又は希釈剤に必要に応じて一般に使用される増量剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶解剤等の添加剤を混合し、常用の製剤技術によって錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、液剤、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、注射剤、皮膚貼付剤等の経口又は非経口用医薬として調製することができる。本発明の化合物は、成人患者に対して1回の投与量として0.001〜500mgを1日1回又は数回に分けて経口又は非経口で投与することが可能である。なお、この投与量は治療対象となる疾病の種類、患者の年齢、体重、症状等により適宜増減することが可能である。
【0042】
本発明の化合物、又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬は、ヒスタミンH3受容体拮抗剤又は逆作動剤として有用である。
【0043】
また、本発明の化合物、又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬は、認知症、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性症、統合失調症、てんかん、中枢性痙攣、肥満、糖尿病、高脂血症、ナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病、若しくはアレルギー性鼻炎の予防剤又は治療剤として有用である。
【0044】
本発明の化合物は、公知の有機化学的手法によって製造することができる。以下の反応式による方法は、本発明の化合物の製造法の例示であり、これに限定されるものではない。下記反応式1〜4において、R、R、R、R、R、R及びnは前記と同義である。また、X、Y及びYは、同一又は異なって、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子又はメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の有機スルホニルオキシ基等の脱離基を示す。
【0045】
以下、反応式1で示される本発明の化合物の製造方法について説明する。この製造工程は、化合物(1)から本発明の化合物(IA)を製造するための工程である。
(反応式1)
【0046】
【化5】

【0047】
(工程1a)
工程1aは、化合物(1)と化合物(2)とをカップリング反応により縮合して化合物(3)を得るための工程である。化合物(1)及び(2)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。
【0048】
がハロゲン原子又は有機スルホニルオキシ基等の脱離基である場合、該カップリング反応は、塩基の存在下又は非存在下、溶媒中又は無溶媒でフェノールのヒドロキシル基のアルキル化を行う一般的な方法により実施できる。また、必要に応じて、例えば、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム等の添加物を加えることができる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類;tert−ブトキシカリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、15℃〜150℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜16時間である。
【0049】
が水酸基である場合、該カップリング反応としてはミツノブ反応が挙げられ、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機リン化合物とアゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジtertブチル等のアゾ化合物とを組み合わせた試薬、或いはシアノメチルトリブチルホスホラン等のリンイリド試薬の存在下溶媒中で行う方法が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは、15℃〜100℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜16時間である。
(工程2a)
工程2aは、化合物(3)と化合物(4)とをクロスカップリング反応により縮合して本発明の化合物(IA)を得るための工程である。化合物(4)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。該クロスカップリング反応は、触媒及びそのリガンドの存在下溶媒中で反応を行う一般的な方法により実施でき、例えば、Kunzら,Synlett,2003年,15巻,2428−2439頁に記載の方法又はそれに準じた方法に従って実施できる。また、本反応は塩基の存在下行うことが好ましい。本反応で用いられる触媒としては、銅、ニッケル又はパラジウム等のクロスカップリング反応に一般的に用いられる遷移金属触媒が挙げられ、より具体的には、銅(0)、ヨウ化銅(I)、塩化銅(I)、酸化銅(I)、臭化銅(I)トリストリフェニルホスフィン錯体、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼン錯体、硫酸銅(II)、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)等が挙げられる。本反応で用いられるリガンドとしては、金属触媒を用いる縮合反応に一般的に用いられるリガンド、例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、2−アミノピリジン、1,10−フェナンスロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナンスロリン、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム、エチレングリコール、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン等が挙げられる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、炭酸カリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、40℃〜150℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜16時間である。
【0050】
また、化合物(IA)は、反応式2に示す方法に従って製造することもできる。
(反応式2)
【0051】
【化6】

【0052】
(工程3a)
工程3aは、本発明の化合物(IA)のうちR=メトキシ基である化合物(5)のメトキシカルボニル基を加水分解によりカルボン酸に変換してR=ヒドロキシ基である本発明の化合物(6)を得るための工程である。該加水分解反応は、一般的なエステルの加水分解反応により実施することができ、例えば、強酸存在下溶媒中又は無溶媒で反応させる方法、塩基存在下溶媒中で反応させる方法等、T.W.Greene and P.G.M.Wuts著 Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley and Sons社に記載の方法又はそれに準じた方法に従って実施できる。本反応における反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは、15℃〜80℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜12時間である。
(工程4a)
工程4aは、化合物(6)とアミン誘導体(7)とをカップリング反応により縮合し、本発明の化合物(IA)を得るための工程である。アミン誘導体(7)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。該カップリング反応は、一般的なカルボン酸のアミド化の方法により実施でき、例えば、カルボン酸をカルボン酸クロリドやカルボン酸ブロミド等のカルボン酸ハライドに導いた後にアミンと反応させる方法、カルボン酸とクロル炭酸エステル等から得られる混合酸無水物をアミンと反応させる方法、カルボン酸を1−ベンゾトリアゾリルエステルやスクシンイミジルエステル等の活性エステルに導いた後にアミンと反応させる方法、カルボン酸を脱水縮合剤存在下アミンと反応させる方法等が挙げられる。これらの反応は、全て塩基の存在下又は非存在下、溶媒中で行うことができる。本反応で用いられる脱水縮合剤としては、例えば、3−(3−ジメチルアミノプロピル)−1−エチルカルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルホスホリルアジド、カルボニルジイミダゾール等が挙げられ、必要に応じて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシスクシンイミド等の活性化剤を用いることができる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられ、これらのうち、トルエン、テトラヒドロフラン又はN,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。本反応における反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは、15℃〜40℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜12時間である。
【0053】
以下、反応式3で示される本発明の化合物の製造方法について説明する。この製造工程は、化合物(1)から本発明の化合物(IB)を製造するための工程である。
(反応式3)
【0054】
【化7】

【0055】
(工程1b)
工程1bは、化合物(1)と化合物(8)とのカップリング反応により化合物(9)を得るための工程である。化合物(8)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。該カップリング反応は、工程1aと同様の方法により実施できる。
(工程2b)
工程2bは、化合物(9)と化合物(4)とをクロスカップリング反応により縮合して本発明の化合物(IB)を得るための工程である。該カップリング反応は、工程2aと同様の方法により実施できる。
【0056】
また、化合物(IB)は、反応式4に示す方法に従って製造することもできる。
(反応式4)
【0057】
【化8】

【0058】
(工程3b)
工程3bは、本発明の化合物(IB)のうちR=メトキシ基である化合物(9)のメトキシカルボニル基を加水分解によりカルボン酸に変換してR=ヒドロキシ基である本発明の化合物(10)を得るための工程である。該加水分解反応は、工程3aと同様の方法により実施できる。
(工程4b)
工程4bは、化合物(10)とアミン誘導体(7)とをカップリング反応により縮合し、本発明の化合物(IB)を得るための工程である。該カップリング反応は、工程4aと同様の方法により実施できる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例中記載の各機器データは以下の測定機器で測定した。
MSスペクトル:micromass Platform LC又はmicromass GCT
NMRスペクトル:[1H-NMR]600MHz:JNM−ECA600(日本電子)
(実施例1)
メチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキシラート(化合物番号1)の製造
【0061】
【化9】
【0062】
1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジン(3g、WO2008072703に記載の方法に従って合成できる)、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸(1.75g)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(0.592g)、ヨウ化銅(0.32g)及び炭酸セシウム(2.32g)のトルエン(8.4mL)懸濁液を110℃にて4時間攪拌した。反応混合物を室温まで放冷し、クロロホルムを加え、セライト(登録商標)濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH型シリカゲル、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=88/12〜0/100)にて精製して無色固体の表題化合物(1.42g)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.61 - 1.74 (m, 2 H) 1.78 - 1.92 (m, 4 H) 1.95 - 2.08 (m, 4 H) 2.10 - 2.27 (m, 2 H) 2.62 (br. s., 2 H) 2.73 (t, J=8.05 Hz, 1 H) 3.82 (s, 3 H) 4.32 (br. s., 1 H) 6.71 (dd, J=2.89, 1.65 Hz, 1 H) 6.88 - 6.92 (m, 1 H) 6.93 - 6.99 (m, 2 H) 7.26 - 7.31 (m, 2 H) 7.58 (t, J=1.86 Hz, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 355
(実施例2)
1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボン酸(化合物番号2)の製造
【0063】
【化10】
【0064】
実施例1で合成したメチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボキシラート(1.4g)のエタノール(8mL)溶液に6規定水酸化ナトリウム水溶液(1.32mL)を加え、60℃にて4時間攪拌した。反応混合物を室温まで放冷し、水を加え、クロロホルムで抽出した。水層を塩酸で中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を併せて硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮して無色非晶質の表題化合物(1.22g)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.52 - 3.32 (m, 15 H) 4.13 - 4.87 (m, 1 H) 6.76 (dd, J=2.89, 1.65 Hz, 1 H) 6.86 - 7.03 (m, 3 H) 7.31 (d, J=8.67 Hz, 2 H) 7.58 - 7.68 (m, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 341
(実施例3)
アゼチジン−1−イル(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)メタノン(化合物番号3)の製造
【0065】
【化11】
【0066】
実施例2で合成した1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−カルボン酸(0.1g)、1−{3−(ジメチルアミノ)プロピル}−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.085g)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.067g)及びアジリジン(0.034g)をN,N−ジメチルホルムアミド(0.1ml)に加えて懸濁液とし、室温にて16時間攪拌した。反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH型シリカゲル、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=88/12〜0/100)にて精製して無色固体の表題化合物(0.056g)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.60 - 1.73 (m, 2 H) 1.76 - 1.93 (m, 4 H) 1.95 - 2.08 (m, 4 H) 2.10 - 2.22 (m, 2 H) 2.34 (t, J=7.64 Hz, 2 H) 2.54 - 2.68 (m, 2 H) 2.70 - 2.82 (m, 1 H) 4.11 - 4.23 (m, 2 H) 4.28 - 4.35 (m, 1 H) 4.37 - 4.55 (m, 2 H) 6.53 (dd, J=2.89, 1.65 Hz, 1 H) 6.83 - 7.00 (m, 3 H) 7.25 - 7.33 (m, 2 H) 7.44 (t, J=1.86 Hz, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 380
実施例3に示した方法と同様の方法で以下の表1−1及び1−2に示す化合物(化合物番号4〜13)を製造した。
【0067】
【化12】
【0068】
【表1-1】

【0069】
【表1-2】

【0070】
(実施例4)
メチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキシラート(化合物番号14)の製造
【0071】
【化13】
【0072】
実施例1と同様の手法により、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりにメチル 2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸を用いて無色非晶質の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.60 - 1.73 (m, 2 H) 1.77 - 1.90 (m, 4 H) 1.93 (s, 3 H) 1.97 - 2.07 (m, 4 H) 2.08 - 2.20 (m, 2 H) 2.25 (s, 3 H) 2.53 - 2.78 (m, 3 H) 3.77 (s, 3 H) 4.33 (br. s., 1 H) 6.30 (d, J=1.24 Hz, 1 H) 6.88 - 6.96 (m, 2 H) 7.00 - 7.08 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 383
(実施例5)
(1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン(化合物番号15)の製造
【0073】
【化14】
【0074】
実施例4で合成したメチル 1−{4−[(1−シクロブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−2,5−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキシラート(0.06g)及びピロリジン(0.112g)の混合物を封管中100℃にて16時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH型プレパラティブシリカゲルプレート、0.5mm厚、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=50/50)にて精製して無色固体の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.59 - 1.93 (m, 12 H) 1.95 (s, 3 H) 1.98 - 2.09 (m, 4 H) 2.17 (s, 3 H) 2.64 (br. s., 2 H) 2.74 (t, J=8.05 Hz, 1 H) 3.62 (d, J=9.91 Hz, 4 H) 4.34 (br. s., 1 H) 6.06 (s, 1 H) 6.88 - 6.98 (m, 2 H) 7.02 - 7.11 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 422
(実施例6)
[1−(4−{3−[(2R)−2−メチルピロリジン−1−イル]プロポキシ}フェニル)−1H−ピロール−3−イル](ピロリジン−1−イル)メタノン(化合物番号16)の製造
【0075】
【化15】
【0076】
実施例1と同様の手法により、1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンの代わりに(2R)−1−[3−(4−ヨードフェノキシ)プロピル]−2−メチルピロリジン(WO2009063953に記載の方法に従って合成できる)を、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりに3−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−1H−ピロールを、それぞれ用いて無色非晶質の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.08 (d, J=5.78 Hz, 3 H) 1.35 - 1.48 (m, 1 H) 1.63 - 1.83 (m, 2 H) 1.85 - 2.04 (m, 3 H) 2.11 (d, J=9.08 Hz, 1 H) 2.16 - 2.23 (m, 1 H) 2.25 - 2.33 (m, 1 H) 2.92 - 2.99 (m, 1 H) 3.17 (d, J=2.48 Hz, 1 H) 3.65 (br. s., 4 H) 3.73 (br. s., 4 H) 3.96 - 4.15 (m, 2 H) 6.63 (dd, J=3.10, 1.86 Hz, 1 H) 6.89 - 6.97 (m, 3 H) 7.27 - 7.32 (m, 2 H) 7.45 - 7.49 (m, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 382
(実施例7)
(1−{4−[(1−イソプロピルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン(化合物番号17)の製造
【0077】
【化16】

【0078】
実施例1と同様の手法により、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりに(1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノンを、1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンの代わりに4−(4−ヨードフェノキシ)−1−イソプロピルピペリジン(WO2004089373に記載の方法に従って合成できる)を用いて無色非晶質の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.05 (d, J=6.61 Hz, 6 H) 1.74 - 2.07 (m, 8 H) 2.39 (br. s., 2 H) 2.66 - 2.84 (m, 3 H) 3.60 - 3.81 (m, 4 H) 4.24 - 4.34 (m, 1 H) 6.63 (dd, J=3.10, 1.86 Hz, 1 H) 6.87 - 7.00 (m, 3 H) 7.22 - 7.32 (m, 2 H) 7.47 (t, J=2.06 Hz, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 382
(実施例8)
1−{4−[(1−イソプロピルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(化合物番号18)の製造
【0079】
【化17】

【0080】
実施例1と同様の手法により、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりにN−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミドを、1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンの代わりに4−(4−ヨードフェノキシ)−1−イソプロピルピペリジンを用いて無色結晶の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.06 (d, J=6.61 Hz, 6 H) 1.82 (d, J=9.08 Hz, 2 H) 1.95 - 2.09 (m, 2 H) 2.39 (br. s., 2 H) 2.79 (br. s., 3 H) 2.96 (d, J=4.95 Hz, 3 H) 4.19 - 4.39 (m, 1 H) 5.59 - 5.86 (m, 1 H) 6.45 (dd, J=2.89, 1.65 Hz, 1 H) 6.84 - 6.99 (m, 2 H) 7.17 - 7.32 (m, 2 H) 7.52 (t, J=2.06 Hz, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 342
(実施例9)
(1−{4−[(1−tert−ブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン(化合物番号19)の製造
【0081】
【化18】

【0082】
実施例1と同様の手法により、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりに(1H−ピロール−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノンを、1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンの代わりに1−tert−ブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジン(WO2008072724に記載の方法に従って合成できる)を用いて無色結晶の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.09 (s, 9 H) 1.81 (dd, J=8.46, 3.92 Hz, 2 H) 1.86 - 2.06 (m, 6 H) 2.41 (br. s., 2 H) 2.87 (br. s., 2 H) 3.56 - 3.80 (m, 4 H) 4.22 - 4.32 (m, 1 H) 6.63 (dd, J=3.10, 1.86 Hz, 1 H) 6.85 - 6.99 (m, 3 H) 7.23 - 7.31 (m, 2 H) 7.41 - 7.50 (m, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 396
(実施例10)
1−{4−[(1−tert−ブチルピペリジン−4−イル)オキシ]フェニル}−N−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(化合物番号20)の製造
【0083】
【化19】

【0084】
実施例1と同様の手法により、メチル 1H−ピロール−3−カルボン酸の代わりにN−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミドを、1−シクロブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンの代わりに1−tert−ブチル−4−(4−ヨードフェノキシ)ピペリジンを用いて無色結晶の表題化合物を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.09 (s, 9 H) 1.81 (dd, J=8.46, 3.92 Hz, 2 H) 1.96 - 2.06 (m, 2 H) 2.41 (br. s., 2 H) 2.87 (br. s., 2 H) 2.96 (d, J=4.95 Hz, 3 H) 4.27 (br. s., 1 H) 5.69 - 5.82 (m, 1 H) 6.38 - 6.50 (m, 1 H) 6.86 - 7.00 (m, 3 H) 7.21 - 7.31 (m, 2 H) 7.52 (t, J=1.86 Hz, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; (M+H)+ 356
(試験例1:ラットH3受容体結合試験)
ラットより摘出した前頭皮質を、テフロンホモジナイザーを用いて、タンパク質分解酵素阻害剤(Complete EDTA−free、ロシュ・ダイアグノスティックス)及び5mM EDTAを含んだ50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中でホモジナイズした。このホモジネートを48,000×gで15分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを5mM EDTAを含んだ50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁し、さらに48,000×gで15分間遠心分離した。この上清を除去し、ペレットを5mM EDTAを含んだ50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁し、膜分画とした。膜分画(最終反応液中のタンパク質量75μg)、N−α−メチル[3H]ヒスタミン(パーキンエルマー、終濃度0.75nM)、及び試験薬物を混合し、室温にて1時間反応させた。反応終了後に、反応混合物を、0.3%ポリエチレンイミンで処理した96well GF/Cフィルタープレートに吸引濾過し、フィルターを、5mM EDTAを含んだ50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で5回洗浄した。洗浄後に、フィルターを乾燥し、シンチレーターを加え、フィルター上の残存放射活性をトップカウント(パーキンエルマー)で測定した。
【0085】
10μMチオペラミドの存在下での残存放射活性を非特異的結合とし、チオペラミド非存在下での残存放射活性との差を、特異的結合とした。試験薬物はDMSOにて溶解及び希釈し、各濃度存在下での残存放射活性より得られた用量反応曲線より、特異的結合が50%阻害される試験薬物濃度(IC50)を求めた。実施例化合物のIC50値を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
(試験例2:[35S]GTP―γ―S結合試験)
ラットより摘出した前頭皮質を、テフロンホモジナイザーを用いて、2.5mM 塩化カルシウム二水和物を含んだ30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中でホモジナイズした。このホモジネートを48,000×gで15分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを2.5mM 塩化カルシウム二水和物を含んだ30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁し、さらに48,000×gで15分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを2.5mM 塩化カルシウム二水和物を含んだ30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁し、37℃で30分間インキュベーションした後、48,000×gで15分間遠心分離した。この上清を除去し、ペレットを100mM 塩化ナトリウム、10mM 塩化マグネシウムを含んだ20mM HEPES緩衝液(pH7.4)に懸濁し、膜画分とした。膜画分(最終反応液中のタンパク質量20μg)、GDP(終濃度300μM)、アデノシンデアミナーゼ(終濃度1U/mL)、R(−)―α―メチルヒスタミン(終濃度300nM)、及び試験化合物を混合し、30℃にて20分間反応させた。反応終了後、さらに[35S]GTP−γ−S(終濃度0.3nM)を添加し、引き続き90分間反応を続けた。反応終了後に、反応混合物を、96well GF/Cフィルタープレートに吸引濾過し、フィルターを100mM 塩化ナトリウム、10mM 塩化マグネシウムを含んだ20mM HEPES緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。洗浄後に、フィルターを乾燥し、シンチレーターを加え、フィルター上の残存放射活性をトップカウント(パーキンエルマー)で測定した。
【0088】
R(−)−α―メチルヒスタミン非存在下での残存放射活性を非特異的結合とし、R(−)−α―メチルヒスタミン存在下での残存放射活性との差を、特異的結合とした。試験薬物はDMSOにて溶解及び希釈し、各濃度存在下での残存放射活性より得られた用量反応曲線より、特異的結合が50%阻害される試験薬物濃度(IC50)を求めた。その結果、本発明の化合物3及び7はIC50100nM以下の活性を示した。
(試験例3:ラット体内動態試験)
SDラットを用い、化合物3、4及び化合物7を3mg/kg単回経口投与し、投与1時間後の血漿・脳・脳脊髄液への組織分布を確認した。定量には高速液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析計API4000(LC−MS/MS、ABサイエックス)を用いた。その結果、化合物3、4及び化合物7の脳/血漿移行比はそれぞれ4.5、2.9及び2.2と良好であり、その時の脳内濃度はそれぞれ78.2ng/g、7.06ng/g及び408ng/gであった。また化合物3及び化合物7の脳脊髄液/血漿移行比は両化合物とも0.3であり、その時の脳脊髄液濃度はそれぞれ、5.75ng/mL及び50.5ng/mLであった。
(試験例4:P−糖タンパク基質認識性試験)
トランスウェル上にLLC−GA5−COL300細胞(ブタ腎由来培養腎上皮細胞株LLC−PK1由来Human MDR1 発現系)を培養した。試験直前には、Hank's balanced salt solution(HBSS)に置換して試験に供した。最終濃度10μMに調整した評価化合物溶液を、LLC−GA5−COL300細胞のDonor側に添加し一定時間後、Acceptor側から一定量を採取した。サンプル中化合物濃度はLC−MS/MSにより測定した。Acceptor側への化合物の蓄積透過量より、Apical→Basal及びBasal→Apicalそれぞれの膜透過係数(×10−6 cm/sec)を算出し、その比(Efflux Ratio)からP−糖タンパク基質認識性を評価した。実施例化合物のEfflux Ratio値を表3に示す。
【0089】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、ヒスタミンH3受容体への強力な結合阻害作用を有し、ヒスタミンH3受容体に起因する障害、例えば、認知症、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性症、統合失調症、てんかん、中枢性痙攣、肥満、糖尿病、高脂血症、ナルコレプシー、特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、不眠症、うつ病、若しくはアレルギー性鼻炎等の疾患の予防又は治療に有用な医薬品を提供することが可能となり、医薬品産業の発達に大きく寄与することが考えられる。