特許第6098906号(P6098906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6098906車両用の加熱デバイス及び加熱デバイスを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098906
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】車両用の加熱デバイス及び加熱デバイスを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/03 20060101AFI20170313BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20170313BHJP
   F28F 13/12 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   B60H1/03 C
   B60H1/22 611C
   !F28F13/12 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-509405(P2015-509405)
(86)(22)【出願日】2013年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-516920(P2015-516920A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2013058919
(87)【国際公開番号】WO2013164314
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】102012207305.1
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エッケルト
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ヴェーゲナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュターケ
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056044(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069578(WO,A1)
【文献】 特開2002−283826(JP,A)
【文献】 特開2004−162941(JP,A)
【文献】 特開2012−017031(JP,A)
【文献】 特開平10−227582(JP,A)
【文献】 特開平10−160249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/03
B60H 1/22
F28F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の加熱デバイス(10)において、
− 液体熱輸送媒体用の流路(14、16、20、22、24)と、
− 前記流路の加熱部分の前記熱輸送媒体を加熱するための電気加熱ユニット(25)と、
を含み、
前記加熱部分が、前記熱輸送媒体が並列で流れうる少なくとも2つの蛇行チャネル(20)を含み、
前記少なくとも2つの蛇行チャネル(20)のそれぞれが、正確に2Nのヘアピンカーブを含み、Nが自然数であり、
前記流路が、
− 前記加熱部分の上流側にある入口部分(16)と、
− 前記加熱部分の下流側にある出口部分(22)と、
を含み、
前記蛇行チャネル(20)が、前記入口部分(16)から分岐部(36)で分岐し、前記出口部分(22)に合流部(38)で合流し、
前記加熱デバイスの加熱電力を制御するための電子制御ユニット(26)を含み、前記電子制御ユニット(26)に、前記電子制御ユニット(26)からの廃熱を前記流路の前記入口部分(16)の前記熱輸送媒体に排出するための熱排出本体(28)が提供され、
前記電気加熱ユニット(25)から前記加熱部分内の前記熱輸送媒体に熱を伝達するための伝熱ユニット(18)を含み、前記伝熱ユニット(18)と前記熱排出本体(28)とが単一部品で形成され、
前記伝熱ユニット(18)と前記熱排出本体(28)とを相互接続し、前記伝熱ユニット(18)と前記熱排出本体(28)との間の熱抵抗が最短線と比較して増加するように非直線に沿って延在する連結部品(44)を含み、
前記非直線がU、V、S、Z、N、M又はW字形であることを特徴とする、
加熱デバイス(10)。
【請求項2】
前記蛇行チャネル(20)の少なくとも1つが、前記蛇行チャネル(20)内を流れる前記熱輸送媒体の回転を発生させるための少なくとも1つの回転要素(48)を含み、前記回転が前記蛇行チャネル(20)の長手方向の軸線を中心とする、請求項1に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項3】
前記回転要素(48)が、前記蛇行チャネル(20)内部の前記熱輸送媒体を混合するように配置されている、請求項2に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項4】
前記蛇行チャネル(20)が互いに同様の形状である、請求項1〜のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項5】
前記熱輸送媒体の流れの方向において、前記少なくとも2つの蛇行チャネル(20)が前記入口部分(16)からそれぞれ分岐するのにしたがって、前記入口部分(16)の断面積が減少することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項6】
前記入口部分(16)と前記出口部分(22)とが長尺状であり、互いに平行して延在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの蛇行チャネル(20)がそれぞれ、前記入口部分(16)から垂直に分岐し、前記出口部分(22)に垂直に合流することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項8】
前記少なくとも2つの蛇行チャネル(20)が、前記入口部分(16)から前記出口部分(22)への方向において、互いに隣り合って配置されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項9】
前記流路が、
− 前記入口部分(16)の上流側にある、前記熱輸送媒体を前記加熱デバイス(10)内に入れるための入口(14)と、
− 前記出口部分(22)の下流側にある、前記加熱デバイス(10)から前記熱輸送媒体を排出するための出口(24)と、
を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項10】
前記伝熱ユニット(18)が前記蛇行チャネル(20)を少なくとも部分的に画定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項11】
前記伝熱ユニット(18)が前記電気加熱ユニット(25)に面して配置されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の加熱デバイス(10)を車両(52)内で動作させる方法であって、
液体熱輸送媒体が、前記加熱デバイスの前記少なくとも2つの蛇行チャネル内を同時に流れ、それによって前記熱輸送媒体が前記車両(52)の電気加熱ユニットにより加熱されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の加熱デバイス及び車両内の加熱デバイスを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱デバイスは、例えば、自動車において、補助暖房として又は停車中の暖房(park heating)として使用される。電気加熱デバイスは、通常、熱を発生させるための、及び発生した熱を熱輸送媒体に排出するための少なくとも1つの電気加熱ユニットを含む。熱輸送媒体は、例えば、水であっても別の適切な熱輸送液体であってもよい。
【0003】
電気加熱ユニットは、加熱ユニットの加熱電力の制御を可能にする電子制御ユニットに連結されてもよい。電子制御ユニットは、例えば、加熱ユニット中の電流を制御するための、又は加熱ユニットに印加される電圧を制御するための、例えば、パワートランジスタ又は半導体ベースの電子回路を含んでもよい。パワートランジスタは、例えば、絶縁されたゲート電極を有するバイポーラトランジスタ(IGPT)であってもよい。パワートランジスタは、発熱体、例えば、加熱抵抗器と電気的に直列で接続されてもよい。副次的影響として、電子制御ユニットは、通常、熱を発生させるが、この熱は制御ユニットが過熱することを防止するために放散させなければならない。例えば、入れた空気を通じて廃熱を排出するように空気冷却が提供されてもよい。電子制御ユニットは、例えば、空気ダクトの内部に配置されてもよく、空気ダクト内には空気が流れうる。空気の流れを発生させるために、送風機、例えば、ファンがダクト内部に配置されてもよい。電子制御ユニットによって予熱された空気はそれを更に所望の温度まで加熱するために更に加熱ユニット内において経路を定められてもよい。加熱空気は、その後、更にその目的地に、例えば、車両の乗員用車室に経路を定められてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、小型で、頑丈な、省エネルギの、構造的にシンプルな電気加熱デバイスを提供することである。本発明の別の目的は、構造的にシンプルな手法で実施されうる車両内の加熱デバイスを動作させる省エネルギの方法を記載することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これら目的は独立請求項の特徴によって解決される。従属請求項は改良形態及び有利な実施形態を記載する。
【0006】
以下、液体熱輸送媒体用の流路と、流路の加熱部分の熱輸送媒体を加熱するための電気加熱ユニットと、を含む車両用の加熱デバイスについて記載する。
【0007】
加熱部分は、熱輸送媒体が並列で流れうる少なくとも2つの蛇行チャネルを含んでもよい。チャネルの並列接続は、単一の蛇行チャネルのみを備えた別の設計、又は直列接続と比較した場合、加熱部分における熱輸送媒体の圧力損失が低下するという利点を有する。ポンプ又は熱輸送媒体を移動させるための他の駆動手段は、従って、より低い電力を使用して動作させることができ、従って、あまり強力でなくてもよい。いくつかの、つまり、少なくとも2つの直線チャネルが並列で接続された別の代替的な設計と比較すると、本明細書中に記載される蛇行形状は、熱輸送媒体内に乱流を発生させ、故に、熱輸送媒体の過熱又は沸騰を防止又は遅延させるという利点を有する。いくつかの蛇行チャネルの並列接続は、従って、これら2つの代替的実施形態の間の妥協点、即ち、単一の蛇行チャネルと並列で接続されたいくつかの直線チャネルとの間の妥協点である。この妥協点は乱流に好適であると同時に、加熱部分の比較的小さな圧力損失を生じる。
【0008】
流路は、加熱部分の上流側にある口部分と、加熱部分の下流側にある口部分と、を含んでもよく、チャネルは口部分から分岐し、口部分に排出する。チャネルは、従って、口部分を口部分に連結する。従って、チャネルに、共通の口部分及び共通の口部分が提供される。これにより、例えば、それぞれがちょうど1つのチャネルを含む同一の加熱デバイスの群と比較して低減された数の構成要素を可能にする。
【0009】
口部分は、その断面積がチャネルの分岐部に従い熱輸送媒体の流れの方向に低減するように設計されてもよい。同様に、口部分は、その断面積がチャネルの排出点に従い熱輸送媒体の流れの方向に増加するように設計されてもよい。従って、圧力が分岐点のそれぞれにおいてほぼ同じということが実現されてもよい。例えば、分岐点及び/又は排出点はそれぞれ、口部分及び口部分をそれぞれ画定するボックスによって連結されてもよい。ボックスはどのチャネルにも同じ圧力がかかるように設計されてもよい。従って、口部分を画定するボックス(インレットボックス)は流れの方向に狭くなると想定してもよい。同様に、口部分を画定するボックス(アウトレットボックス)は流れの方向に広くなると想定してもよい。個々のチャネルは同様の形状であってもよい。これは、それらの幾何学的形状を計算するにあたり利点をもたらしてもよい。
【0010】
口部分及び口部分は、例えば、長尺状であり、且つ互いに平行して延在してもよい。口部分と口部分との間の体積は、従って、一定の横断寸法を有し、口部分と口部分との間のチャネルの配置において有利である。チャネルはそれぞれ口部分から垂直に分岐し、口部分に垂直に排出すると想定してもよい。これは分岐点及び排出点において乱流を発生させるのに好都合である。更に、それは熱輸送媒体の口及び口を共通の面に、例えば、加熱デバイスの前側に配置することを可能にする。
【0011】
更に、チャネルのそれぞれ正確に2Nのヘアピンカーブを呈すると想定してもよい。ここで、Nは自然数である。この状況において、ヘアピンカーブは150°〜180°の角度を有するカーブである。ヘアピンカーブは、従って、その角度によって熱輸送媒体
の流れの向きの変化を発生させる。口部分と口部分との間の距離が大きくなるほどヘアピンカーブの合計数が対であると好都合である。これは流路の幾何学的形状を簡略化してもよい。
【0012】
流路は、口部分の上流側に、熱輸送媒体を加熱デバイス内に入れるための口、口部分の下流側に、加熱デバイスから熱輸送媒体を排出するための口を含んでもよい。加熱デバイスは、従って、熱回路内のモジュールとして使用されうる。熱回路は、熱輸送媒体から、加熱される空気に熱を伝達するための空気熱交換器、及び熱輸送媒体の流れを発生させるための、ポンプ等の駆動デバイスなどの更なる構成要素又はモジュールを含んでもよい。
【0013】
チャネルのそれぞれには、チャネル内を、チャネルの長手方向の軸線を中心として流れる熱輸送媒体の回転運動を発生させるための1つ又は複数の回転要素が配置されてもよい。各々の回転要素は、従って、流れに回転成分を付与することが可能である。回転要素は受動回転要素であってもよい。つまり、それは駆動手段を欠いてもよい。受動回転要素はそれが熱輸送媒体の並進運動エネルギの一部を回転運動エネルギに変換するように幾何学的に設計されてもよい。
【0014】
回転要素は、更に、チャネル内の熱輸送媒体を混合するように設計されてもよい。回転要素は、換言すると、熱輸送媒体中に乱流を発生させるように設計されてもよい。これは発熱体から熱輸送媒体に熱を伝達するのに好都合である。
【0015】
制御ユニットには、制御ユニットから、加熱部分の上流側にある流路の口部分の熱輸送媒体に廃熱を排出するための熱排出本体が提供されてもよい。この場合、口部分は予熱部分を形成する。電子制御ユニットからの廃熱は、従って、主に、加熱される標的媒体(例えば、車両の乗員用車室に供給される空気)に直接伝達されず、液体熱輸送媒体に伝達される。これに必要な構造の体積(construction volume)は、例えば、電子制御ユニットの空気冷却と比較して小型化されてもよい。空気ダクト、又は加熱デバイス内部の空気流路を画定するための他の構成要素及び送風機を排除してもよい。熱排出本体は、例えば、熱輸送媒体用の入口チャンバの内部に、又は加熱部分の上流側にある熱輸送媒体の別の流れ領域の内部に配置されてもよい。
【0016】
電子制御ユニットから熱排出本体を介した熱輸送媒体への十分に高い比率の熱伝達が、熱輸送媒体の適切な流れ速度とともに、熱排出本体の適切な寸法決め及び幾何学的形状によって確実とされてもよい。熱排出本体を越えて流れる熱輸送媒体、例えば、水は、従って、沸騰することを防止されてもよい。熱排出本体における熱輸送媒体の沸騰は望ましくない場合があるが、その理由は、それが、熱分離効果(thermal isolation effect)を有する可能性があり、従って、電子制御ユニットからの廃熱の排出を妨げる可能性のある気泡を熱排出本体において形成する可能性があるからである。熱排出本体の適切な寸法決め及び成形は、しかしながら、熱輸送媒体の沸騰の場合であっても、熱排出本体において形成する気泡が熱輸送媒体の流れとともに押し流されることを可能にする。従って、滑らかな(粗くない)及び/又は流線形の表面を有する熱排出本体が有利であってもよい。粗く、平坦でなく、流線形でない表面は熱排出本体から熱輸送媒体への熱の流れに好適な熱輸送媒体の乱流を表面において発生させるという利点を有してもよいが、それは、熱輸送媒体の沸騰の場合、形成された気泡が熱排出本体に留まったままになる効果を有する可能性がある。しかしながら、沸騰のリスクがごくわずかである場合、乱流に好適な熱排出本体の表面の設計はより良好な選択肢となってもよい。
【0017】
熱排出本体は、熱輸送媒体におけるその流れ抵抗が最小になるように配向されてもよい。熱輸送媒体を流路に沿って移動させるのに必要な電力、つまり、熱輸送媒体の流れを発
生させるために必要な電力はこのような手法で最小にすることができる。例えば、熱輸送媒体を送るためにポンプが使用される場合、比較的低電力、故に、比較的低いエネルギ消費を有するポンプが使用されてもよい。更に、熱排出本体において気泡が形成されるおそれが低減されてもよい。
【0018】
加熱デバイスには、加熱部分の下流側にある熱輸送媒体から空気に熱を伝達するための空気熱交換器が提供されてもよい。空気熱交換器は、例えば、熱の、空気への最適な輸送を確実とするため、互いに近傍に配置される熱輸送媒体用のいくつかのチャネルと、空気用のいくつかのチャネルと、を含んでもよい。加熱デバイスは、予熱部分内の流路を少なくとも部分的に画定する壁を更に含んでもよく、熱排出本体は壁から予熱部分に延在する。熱排出本体は、例えば、壁の突起物として、又はピン、ボルトもしくはフィンとして形成されてもよい。加えて、熱排出本体が壁の反対側部分まで延在することも想定されてもよい。予熱部分において利用可能な体積が、従って、最適な状態で使用されうる。熱排出本体は、例えば、壁の両側に取り付けられた2つの端部を含んでもよい。この配置は特に頑丈であってもよい。加熱デバイスがいくつかの電子制御ユニットを含む場合、2つの端部のそれぞれに電子制御ユニットが配置されてもよい。例えば、加熱デバイスは、いくつかの電気加熱ユニット、例えば、並列で接続されたいくつかの加熱抵抗器を含んでもよく、そのそれぞれは、それと各々関連付けられた電子制御ユニット、例えば、電源スイッチを有する。熱排出本体と壁とは単一部品で形成されてもよい。これは、加熱デバイスの製造を容易にしてもよく、且つ高い頑強性を確実にしてもよい。熱排出本体及び壁は、例えば、高熱伝導率を有する適切な材料から成形部品として作製されてもよい。別法として、熱排出本体は、例えば、高熱伝導率を有する材料、例えば、アルミニウムなどの金属から作製されてもよく、壁は、熱絶縁材料、例えば、プラスチック材料又はセラミックスから作製されてもよい。熱排出本体と熱輸送媒体との間の熱伝達は、従って、最適化されてもよい一方で、加熱デバイスの近傍の構成要素又は空気などの別の環境への、壁を介した熱の損失が最小になってもよい。上に言及したように、加熱デバイスは第2電子制御ユニットを含んでもよく、熱排出本体は第1制御ユニットから第2制御ユニットに延在する。この場合、第1制御ユニットと第2制御ユニットは共通の熱排出本体を共用する。製造コストをこのような手法で削減することができ、且つ頑強性を強化することができる。
【0019】
加熱デバイスは、発熱体から加熱部分内の熱輸送媒体に熱を伝達するための伝熱ユニットを更に含んでもよい。別法として、電気加熱ユニットは熱輸送媒体と直接接触していてもよい。伝熱ユニットと熱排出本体とは単一部品で形成されてもよい。伝熱ユニット及び熱排出本体を含む構成要素は、例えば、フィンの第1の群及びフィンの第2の群を含んでもよく、各群は、少なくとも1つのフィンを含み、第1の群は流路の加熱部分内に配置されている一方で、第2の群は流路の予熱部分内に配置されている。つまり、フィンの第1の群は伝熱ユニット又は伝熱ユニットの一部とみなされてもよい一方で、フィンの第2の群は熱排出本体又は熱排出本体の一部とみなされてもよい。近傍のフィンは、例えば、流路の一部である熱輸送媒体のためのチャネルを画定してもよい。
【0020】
加熱デバイスは、伝熱ユニットと熱排出本体とを互いに連結し、且つ伝熱ユニットと熱排出本体との間の熱抵抗が最短線と比較して増加されるように非直線に沿って延在する連結部品を更に含んでもよい。電気加熱デバイスから電子制御ユニットへの熱の流れはこのような手法で最小にされてもよい。連結部品は、例えば、波形として、又はいくつかの連続波形として形成されてもよい。
【0021】
言及した非直線は、例えば、以下の文字、L、U、V、S、Z、N、M、及びWのうちの1つの形状とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】加熱デバイスの一例の頂面図を示す。
図2図1の加熱デバイスの斜視図を示す。
図3図1の加熱デバイスの更なる斜視図を示す。
図4図1の加熱デバイスの拡大図を示す。
図5図1の加熱デバイスの更なる斜視図を示す。
図6】流路の一例の概略図を示す。
図7】電子制御ユニット用の熱排出本体を有する伝熱ユニットの一例を概略的に示す。
図8】加熱デバイスの一例の断面図を示す。
図9】加熱デバイスの別の例の断面図を示す。
図10】混合デバイスの一例を示す。
図11】チャネル内にある図10の混合デバイスを示す。
図12】混合デバイスの別の例を示す。
図13】チャネル内にある図12の混合デバイスを示す。
図14】流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面の以下の説明においては、同一の参照符号は同一又は類似の構成要素を意味する。
【0024】
図1〜5は、車両用、例えば、自動車、又は移動式生活又は作業コンテナ(mobile living or working container)用の電気加熱デバイス10を示す。図1〜4において、デバイス10は、デバイス10の内部領域の図を見せるためにその上部側を開いて示される。加熱デバイス10はハウジング12を含む。水などの液体熱輸送媒体の流路がハウジング12内部に画定される。示される例においては、流路は、以下の部分、口14、入口チャンバ16(口部分)、伝熱ユニット18によって画定されるいくつかのチャネル20、出口チャンバ22(口部分)、及び口24を、この順序において含む。チャネル20は並列で連結されており、入口チャンバ16を出口チャンバ22に連結している。
【0025】
少なくとも1つの加熱ユニット25(図8及び図9に示される)が熱キャリアユニット18に組み込まれるか、熱キャリアユニット18の上又は下に配置されており、且つ加熱ユニット25と伝熱ユニット18との間の熱抵抗が最小限であるように熱キャリアユニット18に機械的に連結されている。示される例においては、加熱デバイス10は、複数の電気加熱ユニット25(図8及び図9に示される)と、加熱ユニット25のそれぞれの個々の加熱電力を制御するための、対応する数の電子制御ユニット26(同様に図8及び図9に概略的に示される)を含む。各加熱ユニット25は、従って、それと関連付けられた対応する電子制御ユニット26を有する。加熱ユニット25は1つ又はいくつかの発熱体を含んでもよい。加熱ユニット25及び制御ユニット26は、例えば、加熱抵抗器及び加熱抵抗器と直列で接続されたパワートランジスタであってもよい。別法として、いくつかの加熱ユニット25の群はそれと関連付けられた共通の制御ユニット26を有してもよい。例えば、群が加熱デバイス10の全ての加熱ユニット25を含み、この群が電源スイッチ26と直列で接続され、加熱ユニット25の総電力を制御する実施形態が想定されてもよい。いくつかの制御ユニット26が提供される場合、これらは単一構成要素において実装されてもよい。示される例においては、電源電圧を印加するため、制御ユニット26はそれぞれ少なくとも2つの電気接点30を介して接触されうる。
【0026】
制御ユニット26のそれぞれは熱排出本体28に機械的に連結されている。熱排出本体28は電子制御ユニット26から入口チャンバ16内の熱輸送媒体に廃熱を排出する機能を果たす。入口チャンバ16は、従って、流路の予熱部分とも呼ばれる。各制御ユニット26はそれと関連付けられた1つ又は複数の熱排出本体28を有してもよい。あるいは、いくつかの熱排出本体28は単一のより大型の熱排出本体とみなされてもよい。示される
例においては、熱排出本体28は制御ユニット26から入口チャンバ16に延在し、加熱デバイス10の動作時、熱輸送媒体がそれらを越えて流れ、それにより、熱排出本体28から熱輸送媒体に熱が伝達される。熱排出本体28、故に、制御ユニット26は、従って、冷却される一方で、熱輸送媒体は予熱される。予熱された熱輸送媒体は入口チャンバ16からチャネル20内を更に流れる。それによって、予熱された熱輸送媒体はチャネル20を画定する伝熱ユニット18を越えて流れ、加熱ユニット25によって発生した熱を吸収する。チャネル20のそれぞれ、又はチャネル20は集合的に、従って、流路の加熱部分とも呼ばれる。熱輸送媒体は、従って、加熱され、その後、出口チャンバ22内を更に流れ、口24を通じて加熱デバイス10を出る。
【0027】
熱排出本体28は、例えば、それぞれ、パワー半導体などの制御ユニットから熱輸送媒体に熱を放出するための、例えば、矩形又はV字形の断面を有するフィンとして形成されてもよい。熱排出本体28は、従って、また、熱輸送媒体を経路設定するための機能を果たす。別法として、熱排出本体28は、例えば、各々の制御装置の下、例えば、比較的狭いチップ領域の下の場所から熱を排出する、円錐体であってもボルトであってもピンであってもよい。そのような円錐体、ボルト又はピンは、熱輸送媒体の乱流を更に強めてもよいため、熱の排出が増加してもよい。電子制御ユニットの過熱を、従って、回避することができ、制御ユニットからの廃熱は熱輸送媒体を加熱するために使用される。
【0028】
示される例においては、口部分16はハウジング12の壁32によって外部に限定されている。口部分22はハウジング12の壁34によって外部に限定されている。壁32及び壁34はそれぞれ、口14及び口24それぞれから、第1の方向及び第2の方向それぞれに延在し、第1の方向及び第2の方向は、略方形のハウジング12の3つの主要な軸のうち2つに対して傾斜する。壁32により、従って、口部分16が流れの向きに(つまり、口14から離れる方向に)狭くなる。壁34は、口部分22が流れの向き、つまり口24に向かう方向に広くなるように延在する。これにより、チャネル20は熱輸送媒体とほぼ同じ圧力を有する。
【0029】
加熱ユニット10によって画定される流路は更に図6に概略的に示される。示される例においては、チャネル20は適切に形成された伝熱ユニット18によって形成される。動作時、熱輸送媒体は口部分16から分岐部36及び個々のチャネル20を通じて同時に流れ、合流38において口部分22に排出される。3つの示されるチャネル20のそれぞれは蛇行線に沿って延在し、例えば、4つのヘアピンカーブを含む。合流38は、従って、同じチャネルの分岐部36に対してオフセットする。各チャネル20内には、伝熱ユニット18から熱輸送媒体への熱の流れを増加するための1つ又は複数の混合デバイスが配置されてもよい(図10〜13を参照)。
【0030】
図7は、伝熱ユニット18、制御ユニット26及び熱排出本体28の一例の側面図を概略的に示す。示される例においては、伝熱ユニット18及び熱排出本体28はそれぞれ、いくつかのフィンを含む群を含む。フィンは、冷却フィンとしても公知であり、且つ流路の加熱部分及び予熱部分それぞれの熱輸送媒体への、熱の急速な伝達のために機能する。加熱ユニット26は、例えば、半導体チップであってもよく、熱排出本体28に取り付けられてもよい。示される例においては、伝熱ユニット18と熱排出本体28とは単一部品で形成される。それらは非直線に沿って延在する連結部品44を介して互いに連結される。従って、一方では製造の簡略化と良好な頑強性との間の妥協、他方では伝熱ユニット18と熱排出本体28との間の効果的な熱分離が達成される。少なくとも、伝熱ユニット18に熱接触している加熱ユニット25(図8及び図9を参照)が制御ユニット26よりも高い動作温度に達することになっている場合は、熱排出本体28が熱排出ユニット18から熱的に十分に絶縁されることが所望されてもよい。示される例においては、連結部品44は実質的にU字形である。同じ距離の終端であれば、連結部品44は仮想の真直連結部
品と比較するとより長く、故に、電子制御ユニットの加熱を低減する、より高い熱抵抗を有する。伝熱ユニット18と熱排出本体28は、従って、互いにある程度熱的に分離されている。換言すると、伝熱ユニット18と熱排出本体28との間が同じ距離(距離は最小とすべきである)であれば、非真直連結部品は、等しく可能な真直連結部品と比較して、加熱ユニット25から制御ユニット26への低減された熱の流れを生じる。加熱ユニット25によって電子制御ユニット26を加熱しすぎることなく、伝熱ユニット18(加熱伝熱ユニット)と熱排出本体28(電子伝熱ユニット)とが単一構成要素において実装されてもよい小型の構造が、従って、実現されてもよい。
【0031】
図8は、伝熱ユニット18と熱排出本体28とが真直連結部品44を介して互いに連結されている、加熱デバイス10の一実施形態を示す。
【0032】
図9に概略的に示される実施形態は、加熱デバイス10の同じ総体積を前提として、伝熱ユニット18と熱排出本体28との間により良好な熱分離を達成するため、連結部品44が非直線、例えば、S字形であるという点においてのみ図8と異なる。制御ユニット26は、制御ユニット26から、熱排出本体28を介した廃熱の迅速な排出を達成するため、材料の直接の連結によって熱排出本体28に取り付けられてもよい。
【0033】
図10は、混合デバイス46の第1の例を示す。混合デバイス46は、例えば、チェーンを共に形成する、いくつかの回転要素48及び1つ又は複数の偏向要素50からなる。回転要素48は、それぞれ、スクリュー形状であってもファン形状であってもよい。液体輸送媒体の異なる「パケット」を混合するため、2つの直に連続する回転要素42は、互いに対して、例えば、90°の回転角度を有してもよい。
【0034】
図11は、図1〜9のチャネル20の1つを混合デバイス46とともに示す。回転チェーンとも呼ばれる混合デバイス46はチャネル20内に配置されている。偏向要素50はそれぞれチャネル20の各々のヘアピンカーブ(hairpin curve)に取り付けられている。回転チェーン46は、少なくともチャネル20内に配置される場合に剛体であっても固定されていてもよい。回転要素48及び偏向要素50は高熱伝導率を有する材料を必ずしも含まなくてもよいが、これは幾分熱の輸送を向上させうる。回転要素48及び偏向要素50は、例えば、プラスチック材料から作製されてもよい。混合デバイス46は、流れる熱輸送媒体に回転を付与するように、及び熱輸送媒体を一度又は繰り返し分割するように設計されている。回転により、熱輸送媒体の分子が伝熱ユニットの異なる温度領域に経路を定めることができ、且つチャネルの壁の高温境界層を裂くことができる。流れる熱輸送媒体のいずれの分割も異なる温度領域の分子を混合してもよい。
【0035】
例えば、複数成分の接着剤の噴流の混合により、公知のデバイスを混合デバイスとして使用してもよい。本明細書中に記載される実施においては、しかしながら、異なる物質ではなく同じ熱輸送媒体の異なる温度領域が混合される。
【0036】
偏向要素50の合計数及びそれらの偏向角度(例えば、150°〜180°)はチャネル20の形状に応じて変更してもよい。混合デバイス46自体は比較的小さな体積のみを入れ替え、且つ流線であってもよいため、例えば、流れの遮断(cut−offs)及び死水領域を回避することが可能である。混合デバイス46から生じる更なる圧力損失は、従って、非常にわずかであってもよい一方で、熱の流れを大幅に増加する。
【0037】
図12及び図13はそのような混合デバイス46の更なる例を示す。
【0038】
図14の流れ図は加熱デバイス10の動作モードを示す。ブロックS1では、加熱デバイス10がオンに切り換えられる。例えば、熱輸送媒体を流路に沿って駆動するためポン
プ(不図示)がオンに切り換えられてもよい。同時に、又はこれの前又は後、加熱ユニット25に電流が供給され、熱を発生させるように、電子制御ユニット26が作動されてもよい。電気加熱ユニット25は、従って、流路の加熱部分の熱輸送媒体に加熱用の熱を排出する(ブロックS2)。これの前に、熱排出本体28を越え、且つ周囲を流れる熱輸送媒体は熱排出本体28を介して制御ユニット26から廃熱を吸収し、それにより、制御ユニット26が冷却され、熱輸送媒体が予熱される。ブロックS3では、加熱デバイス10がオフに切り替えられる。
【0039】
前述の明細書、図面及び特許請求の範囲に開示される本発明の特徴は、個々に、並びに任意の組み合わせにおいて、本発明を実施するのに適切であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 加熱デバイス
12 ハウジング
14
16 入口チャンバ
20 チャネル
22 出口チャンバ
24
25 加熱ユニット
26 制御ユニット
28 熱排出本体
30 電気接点
32 壁
34 壁
36 分岐部
38 合流
40 上部壁
42 伝熱ユニット
44 連結部品
46 混合デバイス
48 回転要素
50 偏向要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14