(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性エステル化合物が、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシエステルからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
前記イミダゾール化合物が、1−ベンジル−2-フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2‘−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−
エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2‘−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1‘)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチル
イミダゾリル−(1‘)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体及び2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
前記第1層が、該第1層中の不揮発成分を100質量%とした場合、0質量%以上5質量%未満の活性エステル化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
前記第2層中のエポキシ樹脂が、該エポキシ樹脂を100質量部とした場合、20℃で液状のエポキシ樹脂を1〜50質量部含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術の問題点を克服し、線熱膨張係数が低いにもかかわらず、スミア除去性、めっきピール強度に優れた支持体含有プレポリマーシートを提供することを目的とする。特に、本発明の出願以前において、活性エステル化合物を含む樹脂組成物を硬化させてなる硬化物を多層プリント基板絶縁材料として用いることは知られていたものの(特許文献1)、活性エステル化合物を含む場合はスミア除去性が悪くなると言う課題は知られていなかった。本発明は、かかる活性エステル化合物に起因するスミア除去性の問題を解決するという課題を新たに見出し、ここに着目したものである。ここで、スミアとは、導体層上に適用された絶縁層の一部に穴を開けてビアホールを作成した際に生じる絶縁層を構成していた樹脂片をいい、スミア除去性とは当該ビアホール(底部導体上)からの当該樹脂片の除去の程度を言う。
具体的には、本発明の第1の目的は、当該多層プリント基板絶縁材料のスミア除去性を向上することにある。
本発明の第2の目的は、スミア除去性を向上した層(第2層)とは別に、無機充填材の量を少なくした層(第1層)を設けることにより、多層プリント基板絶縁材料のめっきピール強度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、支持体と、前記支持体上に形成された特定の第1層と、前記第1層上に形成された特定の第2層とを含むことを特徴とする支持体含有プレポリマーシートを用いることにより、本発明を完成するに至った。特に本発明は、活性エステル化合物とイミダゾール化合物とを併用した第2層を用いることにより、第2層から得られる絶縁層のスミア除去性を向上できることを見出したものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下の内容を含み得るものである。
[1] 支持体と、
前記支持体上に形成された、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する第1層と、
前記第1層上に形成された、エポキシ樹脂、硬化剤としての活性エステル化合物、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物及び無機充填材を含有する第2層と、
を含み、前記第1層中の不揮発成分100質量%に対する前記第1層の無機充填材の割合が、前記第2層中の不揮発成分100質量%に対する前記第2層の無機充填材の割合よりも少ないことを特徴とする支持体含有プレポリマーシート。
[2] 前記第1層の厚みが、1〜15μmである、[1]記載の支持体含有プレポリマーシート。
[3] 前記第2層の厚みが、3〜300μmである、[1]又は[2]記載の支持体含有プレポリマーシート。
[4] 前記活性エステル化合物が、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシエステルからなる群より選択される、[1]〜[3]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[5] 前記活性エステル化合物が、以下の一般式(II)
(式中、Xは置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基であり、mは0又は1であり、nは0.25〜1.5である)で表される、[1]〜[3]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[6] 前記イミダゾール化合物が、以下の一般式(I)
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、C
1~20アルキル基、C
2~20アルケニル基、C
2~20アルキニル基、C
3~20アリル基、C
4~20アルキルジエニル基、C
4~20ポリエニル基、C
6~20アリール基、C
6~20アルキルアリール基、C
6~20アリールアルキル基、C
4~20シクロアルキル基、C
4~20シクロアルケニル基、(C
5~10シクロアルキル)C
1~10アルキル基、C
1~10炭化水素基を有していてもよいシリル基、エポキシ樹脂に由来するヒドロキシエチル基である、)で表される、[1]〜[5]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[7] 前記イミダゾール化合物が、1−ベンジル−2-フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2‘−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2‘−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1‘)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1‘)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体及び2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンからなる群から選択される、[1]〜[5]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[8]前記無機充填材の平均粒径が、0.01〜3μmである、[1]〜[7]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[9] 前記無機充填材の表面が、コーティングされている、[1]〜[8]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[10] 前記第1層が、該第1層中の不揮発成分を100質量%とした場合、0質量%以上5質量%未満の活性エステル化合物を含有し、かつ、前記第2層が、該第2層中の不揮発成分を100質量%とした場合、5質量%以上の活性エステル化合物を含有する、[1]〜[9]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[11] 前記第2層中のエポキシ樹脂が、該エポキシ樹脂を100質量部とした場合、20℃で液状のエポキシ樹脂を1〜50質量部含む、[1]〜[10]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシート。
[12] [1]〜[11]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して得られた絶縁層とを含む、多層プリント配線板。
[13] [12]記載の多層プリント配線板を含む、半導体装置。
[14](1)エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物Aを調製し、該樹脂組成物Aを支持体上に適用して第1層を形成する工程、
(2)エポキシ樹脂、硬化剤としての活性エステル化合物、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物及び無機充填材を含有する樹脂組成物Bを調製し、前記樹脂組成物Bを前記第1層上に適用して第2層を形成する工程、
を含み、前記第1層中の不揮発成分100質量%に対する前記第1層の無機充填材の割合が、前記第2層中の不揮発成分100質量%に対する前記第2層の無機充填材の割合よりも少ないことを特徴とする、支持体含有プレポリマーシートの製造方法。
[15](A)基板の片面又は両面にパターン加工された第1導体層を形成して内装回路基板を作成する工程、
(B)[1]〜[11]のいずれか1項記載の支持体含有プレポリマーシートを、前記導体層が形成された面に前記支持体含有プレポリマーシートの第2層が接するように前記内装回路基板に積層する工程、
(C)前記支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
(D)前記支持体含有プレポリマーシートの前記絶縁層の一部を除去して前記パターン加工された第1導体層の一部を露出させる工程、
(E)前記支持体を剥離する工程、
(F)前記絶縁層の表面を粗化処理する工程、
(G)粗化処理後の前記絶縁層表面をめっきして第2導体層を形成する工程、
を含有する、多層プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のように、支持体と、前記支持体上に形成された特定の第1層と、前記第1層上に形成された特定の第2層とを有することを特徴とする支持体含有プレポリマーシートを用いることにより、当該第1層から得られる絶縁層は、めっきピール強度に優れており、かつ、当該第2層から得られる絶縁層は、線熱膨張係数を低く抑えつつも、スミア除去性に優れているという、優れた特徴を有する支持体含有プレポリマーシート、多層プリント配線板及び半導体装置を提供することが可能となった。ここで、めっきピール強度とは、絶縁層と、該絶縁層上に適用される導体層を構成するめっきとの密着性(剥離耐性)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[A]支持体含有プレポリマーシート
本発明の態様の一つは、支持体と、該支持体上に形成された、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する第1層と、該第1層上に形成された、エポキシ樹脂、硬化剤としての活性エステル化合物、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物及び無機充填材を含有する第2層とを含み、前記第1層中の不揮発成分100質量%に対する前記第1層の無機充填材の割合が、前記第2層中の不揮発成分100質量%に対する前記第2層の無機充填材の割合よりも少ないことを特徴とする支持体含有プレポリマーシートである。該支持体含有プレポリマーシートは、任意に、該第2層上に形成された保護層を有していてもよい。以下、本発明の支持体含有プレポリマーシートについて詳細に説明する。
【0009】
[第1層及び第2層]
本発明の支持体含有プレポリマーシートに含まれる第1層は、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含み、任意に、硬化促進剤及びその他の成分を含み得る。また、第2層はエポキシ樹脂、活性エステル化合物、イミダゾール化合物及び無機充填材を含み、任意に、その他の成分を含み得る。但し、第1層及び第2層は同一物ではあり得ず、第1層に含まれる成分と、第2層に含まれる成分は、異なっている。
第1層の厚みは、特に限定されないが、例えば、1〜15μm、好ましくは2〜10μm、より好ましくは2.5〜5μmが適当である。第2層の厚みは、特に限定されないが、例えば、3〜300μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは15〜50μmが適当である。
【0010】
[エポキシ樹脂]
本発明で使用し得るエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有するのが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0011】
これらのエポキシ樹脂の中でも、耐熱性向上という観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「エピコート828EL」、「YL980」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER806H」、「YL983U」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」、「EXA4032SS」)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」、「HP4710」)、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、三菱化学(株)製「YX4000」、「YX4000H」、「YX4000HK」、「YL6121」)、アントラセン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX8800」)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7310」、「EXA−7311」、「EXA−7311L」、「EXA7311−G3」)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX711」、「EX721」、(株)プリンテック製「R540」)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP7200HH」)などが挙げられる。
【0012】
エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂を含むことでプレポリマーシートの取り扱い性を向上させることができる。更に、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用することが好ましい。ここで、液状エポキシ樹脂とは、20℃で液状のエポキシ樹脂を言う。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく、芳香族系エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂とは、20℃で固体状のエポキシ樹脂を言う。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく、芳香族系エポキシ樹脂がより好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用する場合、樹脂組成物の硬化特性のバランスを備えるという点から、その配合割合(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は質量比で1:0.1〜1:5の範囲が好ましく、1:0.5〜1:4の範囲がより好ましく、1:0.8〜1:4の範囲が更に好ましい。第1層中のエポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂を100質量部とした場合、20℃で液状のエポキシ樹脂を1〜50質量部、好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部含むことが適当である。また、第2層中のエポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂を100質量部とした場合、20℃で液状のエポキシ樹脂を1〜50質量部、好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部含むことが適当である。特に、線熱膨張係数を低くし、めっきピール強度を向上させるという点から、第1層中のエポキシ樹脂を100質量部とした場合の液状エポキシ樹脂の割合が、第2層中のエポキシ樹脂を100質量部とした場合の液状エポキシ樹脂の割合よりも多いことが好適である。例えば、液状エポキシ樹脂の割合の差は、第1層中の液状エポキシ樹脂の割合/第2層中の液状エポキシ樹脂の割合で1より大きく5以下、好ましくは、1.5〜4、より好ましくは2〜3である。
【0013】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、結晶性2官能エポキシ樹脂、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
第1層中のエポキシ樹脂の含有量は、プレポリマーシートの硬化物(絶縁層)のめっきピール強度を向上させるという観点から、第1層中の不揮発成分を100質量%とした場合は、3〜45質量%であるのが好ましく、5〜40質量%であるのがより好ましく、7〜35質量%であるのが更に好ましい。また、第2層中のエポキシ樹脂の含有量は、線熱膨張係数を低下させるという観点から、第2層中の不揮発成分を100質量%とした場合は、3〜30質量%であるのが好ましく、5〜25質量%であるのがより好ましく、7〜20質量%であるのが更に好ましい。
【0015】
[硬化剤]
本発明で使用し得る硬化剤としては、上記エポキシ樹脂を架橋して硬化することができるものであればいかなる硬化剤も使用することができるが、例えば、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及び活性エステル化合物等が挙げられる。中でも、活性エステル化合物は、第2層の硬化剤として用いられ、線熱膨張係数を低下させる。第2層の硬化剤は、第2層の硬化剤全体の質量に対して活性エステル化合物が50質量%以上、好ましくは70〜100質量%であることが適当である。
ここで、第1層の硬化剤は、特に限定されず、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル化合物を用いることができるが、活性エステル化合物を含まないか又は第2層の活性エステル化合物の量よりも少ない量の活性エステル化合物を含むことが適当である。例えば、第1層の硬化剤は、活性エステル化合物を含まないか又は硬化剤全体の質量に対して活性エステル化合物が5質量%以下、好ましくは3質量%以下であることが適当である。
【0016】
本発明で使用し得る活性エステル化合物は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する化合物である。ここで、「活性エステル基」とは、エポキシ樹脂と反応するエステル基を意味する。活性エステル化合物は、未硬化エポキシ樹脂と反応することができ、1分子中に活性エステル基を2個以上有する化合物が好ましい。一般的には、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシ化合物エステルからなる群より選択される、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が、活性エステル化合物として好ましく用いられる。
【0017】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを縮合反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましい。フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物とから選択される1種又は2種以上と、カルボン酸化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が更に好ましい。カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に一層好ましい。少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が殊更好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0018】
上記カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、具体的には、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0019】
上記フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性向上、溶解性向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノールが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。活性エステル化合物は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0020】
活性エステル化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、なかでもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC−8000−65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてEXB9416−70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、などが挙げられる。
【0021】
特に好ましい活性エステル化合物は、以下の一般式(II)
(式中、Xは置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基であり、mは0又は1であり、nは0.25〜1.5である)で表される化合物である。
【0022】
線熱膨張係数を低くし、かつめっきピール強度を向上させるという観点から、第1層に含まれる活性エステル化合物の含有量は、第1層中の不揮発成分を100質量%とした場合、0質量%以上5質量%未満、好ましくは0〜4質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%であり、更に好ましくは1〜2質量%である。
一方、誘電正接及び線熱膨張係数を低くし、かつ炭酸ガスレーザー加工等でのスミア除去性を良好にするという観点から、第2層に含まれる活性エステル化合物の含有量は、第2層中の不揮発成分を100質量%とした場合、5質量%以上、好ましくは7〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%であり、更に好ましくは15〜20質量%である。
【0023】
フェノール樹脂としては、特に制限はないが、ビフェニル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂が好ましい。具体的には、ビフェニル型フェノール樹脂のMEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、ナフタレン型フェノール樹脂のNHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(新日鐵化学(株)製)、EXB9500(DIC(株)製)、フェノールノボラック樹脂のTD2090(DIC(株)製)、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂のEXB−6000(DIC(株)製)、トリアジン骨格含有フェノール樹脂のLA3018、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、硬化物の機械特性を向上させるという点から、硬化剤の反応基数は、0.2〜2が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.4〜1が更に好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
【0025】
[硬化促進剤]
本発明で使用し得る硬化促進剤としては、上記硬化剤による上記エポキシ樹脂の架橋及び硬化を促進することができるものであればいかなる硬化促進剤も使用することができるが、例えば、アミン化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物及びホスホニウム化合物などが挙げられる。中でも、イミダゾール化合物は、第2層の硬化促進剤として用いられ、スミア除去性を向上させる。第2層の硬化促進剤は、第2層の硬化促進剤全体の質量に対してイミダゾール化合物が50質量%以上、好ましくは70〜100質量%であることが適当である。
ここで、第1層の硬化促進剤は必須ではないが、使用する場合は特に限定されず、アミン化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物及びホスホニウム化合物を用いることができるが、アミン化合物を用いることが好ましい。本発明で使用し得るアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
硬化促進剤の含有量は、第1層又は第2層中の不揮発成分の合計を100質量%とした場合、それぞれ0.01〜3質量%の範囲で使用することが好ましく、0.15〜2質量%の範囲で使用することがより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記イミダゾール化合物は、以下の一般式(I)
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、C
1~20アルキル基、C
2~20アルケニル基、C
2~20アルキニル基、C
3~20アリル基、C
4~20アルキルジエニル基、C
4~20ポリエニル基、C
6~20アリール基、C
6~20アルキルアリール基、C
6~20アリールアルキル基、C
4~20シクロアルキル基、C
4~20シクロアルケニル基、(C
5~10シクロアルキル)C
1~10アルキル基、C
1~10炭化水素基を有していてもよいシリル基、エポキシ樹脂に由来するヒドロキシエチル基である)で表される化合物であってもよい。
【0028】
より具体的には、イミダゾール化合物は、1−ベンジル−2-フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体及び2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンからなる群から選択される化合物であり得る。
【0029】
[無機充填剤]
本発明で使用し得る無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ等のシリカが好ましく、球状シリカ、溶融シリカがより好ましい。プレポリマーシートへの充填性向上の観点から、球状溶融シリカが更に好ましい。1種又は2種以上の無機充填材を使用することができる。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
【0030】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、絶縁層上へ微細配線形成を行うという観点、無機充填材の総表面積を増大させることで穴あけ加工時のスミア発生を抑制させるという観点から、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.8μm以下が更に一層好ましく、0.6μm以下が殊更好ましい。一方、樹脂組成物をワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.07μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が更に一層好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−950等を使用することができる。
【0031】
無機充填材の含有量は、特に制限されないが、シート形態の可撓性が低下するのを防止するという観点から、第2層中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の量が90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。また、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点、無機充填材の総表面積を増大させることで穴あけ加工時のスミア発生を抑制させ、粗化処理時にスミアを除去しやすくするという観点から、第2層中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の量が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が更に一層好ましく、65質量%以上が殊更好ましい。第1層については、めっきピール強度を向上させるという観点から、第1層中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の量は0〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましく、35〜55質量%がとくに好ましい。特に、第1層中の不揮発成分100質量%に対する無機充填材の割合が、第2層中の不揮発成分100質量%に対する無機充填材の割合よりも少ないことが好適である。特に第1層中の不揮発成分100質量%に対する第1層の無機充填材の割合が、第2層中の不揮発成分100質量%に対する第2層の無機充填材の割合よりも少ないことが好ましい。例えば、無機充填材の割合の差は、第1層の無機充填材の上記割合/第2層の無機充填材の上記割合が、0.01以上1未満、好ましくは、0.1〜0.8、より好ましくは0.4〜0.7、更に好ましくは0.5〜0.6である。
【0032】
無機充填材は、耐湿性向上、分散性向上のためにカップリング剤等でコーティング(表面処理)されたものが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤から選択される1種以上が好ましい。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤は耐湿性、分散性、硬化物の特性などに優れていて好ましく、フェニルアミノシラン系カップリング剤がより好ましい。市販品としては、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0033】
[その他の成分]
本発明の第1層及び第2層には、上述した成分の他、その他の成分として、熱可塑性樹脂;リン系化合物、水酸化金属物等の難燃剤;シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー、ゴム粒子等の有機充填剤;有機溶媒;添加剤などを適宜配合することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シクロオレフィンポリマー及びポリスルホン樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8000〜70000の範囲が好ましく、10000〜60000の範囲がより好ましく、20000〜60000の範囲が更に好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0035】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製「1256」、「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、「YL7553」(フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂)、東都化成(株)製「FX280」、「FX293」、三菱化学(株)製「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」等が挙げられる。
【0036】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の含有量は、第1層中の不揮発成分100質量%に対して、0.5〜15質量%が好ましい。第2層も同様の範囲が好ましい。
【0037】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0038】
[支持体]
本発明で使用し得る支持体としては、プラスチックフィルムや金属箔が挙げられる。具体的に、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET 」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、特に安価で入手容易なポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
汎用性の点から、プラスチックフィルムが好ましく、プラスチックフィルムを使用する場合、剥離性を向上させるために、第1層と接する面が離型処理された支持体を使用するのが好ましい。離型処理に使用する離型剤としては、第1層が支持体から剥離可能であれば特に限定されず、例えば、シリコン系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なお、離型処理された支持体として、市販されている離型層付きプラスチックフィルムを用いてもよく、好ましいものとしては、例えば、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムであるSK−1、AL−5、AL−7(リンテック(株)製)などが挙げられる。また、プラスチックフィルムは、マット処理又はコロナ処理を施してあってもよく、当該処理面上に離型層を形成してもよい。一方、金属箔はエッチング溶液により除去することもできるし、除去せずに該金属箔を導体層として利用してもよい。
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が好ましく、20〜50μmの範囲がより好ましく、25〜45μmの範囲がさらに好ましい。
【0039】
[保護層]
本発明で使用し得る保護層は、第2層へのごみ等の付着防止等を目的として設けられてもよい。当該保護層としては、支持体と同様のプラスチックフィルムを使用することができる。また保護層には、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよく、上記と同様の離型処理が施してあってもよい。保護層の厚みは、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0040】
[支持体含有プレポリマーシートの製造方法]
本発明で使用され得る支持体含有プレポリマーとは、以下の工程:
(1)エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物Aを調製し、該樹脂組成物Aを支持体上に適用して第1層を形成する工程、
(2)エポキシ樹脂、硬化剤としての活性エステル化合物、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物及び無機充填材を含有する樹脂組成物Bを調製し、前記樹脂組成物Bを前記第1層上に適用して第2層を形成する工程、
により製造され得る。
【0041】
(1)第1層形成工程
第1層形成工程では、まず、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及びその他の任意成分を混合して樹脂組成物Aを作成する。エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及びその他の任意成分の詳細は上述したとおりである。当該樹脂組成物Aは、有機溶媒を含み、液体の樹脂ワニスの状態であってもよい。当該混合は、例えば、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により行われる。
この際、前記第1層中の不揮発成分100質量%に対する該第1層の無機充填材の割合は、後述する第2層中の不揮発成分100質量%に対する該第2層の無機充填材の割合よりも少ないことは、すでに上述したとおりである。
このようにして得られた樹脂組成物Aを支持体上に適用し、加熱・乾燥して樹脂組成物層である第1層を形成する。加熱・乾燥条件としては、平均温度80〜170℃で1〜60分の範囲で適宜設定可能であるが、平均温度80〜150℃で1〜30分が好ましい。加熱時の温度幅は、平均温度を中心として、±10〜100℃、好ましくは±20〜50℃とすることが適当である。
【0042】
(2)第2層形成工程
第2層形成工程も、第1層形成工程と同様に行われ得る。即ち、第2層形成工程では、まず、エポキシ樹脂、硬化剤としての活性エステル化合物、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物、無機充填材及びその他の任意成分を混合して樹脂組成物Bを作成する。当該樹脂組成物Bも、有機溶媒を含み、液体の樹脂ワニスの状態であってもよい。このようにして得られた樹脂組成物Bを上記第1層の上に適用し、加熱・乾燥して樹脂組成物層である第2層を形成する。加熱・乾燥条件としては、平均温度80〜170℃で1〜60分の範囲で適宜設定可能であるが、平均温度80〜130℃で1〜30分が好ましい。加熱時の温度幅は、平均温度を中心として、±10〜100℃、好ましくは±20〜50℃とすることが適当である。
(3)その他の任意工程
支持体含有プレポリマーシートの製造方法は、その他、任意の樹脂層や保護層を適用する工程を含み得る。
【0043】
上述した製造方法の他に、支持体上に第1層用の樹脂組成物層を形成したもの、及び、別の支持体上に第2層用の樹脂組成物層を形成したものをそれぞれ作製した後、各樹脂組成物層の面同士をラミネートにより貼り合わせる方法も挙げられる。ラミネートにより貼り合わせる際の条件は、ラミネート温度70〜110℃、ラミネート時間5〜30秒、ラミネート圧力1〜10kgf/cm
2(9.8〜98N/cm
2)が好ましい。また、支持体上に樹脂組成物Aを塗布しながら、その上に同時に樹脂組成物Bを塗布し、その後乾燥させ、第1層と第2層を同時に作成することもできる。
第1層と第2層の厚みの比は、必要な性能に応じて適宜設定することができるが、1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
【0044】
[多層プリント配線板]
本発明で使用され得る多層プリント配線板は、本発明の支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して得られた絶縁層を含む、多層プリント配線板である。
ここで、熱硬化は、第1層及び第2層に対して同時に行ってもよいし、予め第1層の硬化を進めておいてもよい。熱硬化は、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜210℃で30〜120分の範囲で選択される。また、支持体を剥離せずに熱硬化することで、熱硬化中のごみや埃等の異物付着を防止することができる。
【0045】
[多層プリント配線板の製造方法]
本発明で好ましく使用される多層プリント配線板は、例えば、
(A)基板の片面又は両面にパターン加工された第1導体層を形成して内装回路基板を作成する工程、
(B)本発明で使用され得る支持体含有プレポリマーシートを、前記導体層が形成された面に前記支持体含有プレポリマーシートの第2層が接するように前記内装回路基板に積層する工程、
(C)前記支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
(D)前記支持体含有プレポリマーシートの支持体及び前記絶縁層の一部を除去して前記パターン加工された第1導体層の一部を露出させる工程、
(E)前記支持体を剥離する工程、
(F)前記絶縁層の表面を粗化処理する工程、
(G)粗化処理後の前記絶縁層表面をめっきして第2導体層を形成する工程、
を含む方法により製造される。以下、本発明の支持体含有プレポリマーシートを使用した多層プリント配線板の製造方法の一例について詳述する。
【0046】
(A)基板の片面又は両面にパターン加工された第1導体層を形成して内装回路基板を作成する工程
まず、基板を準備し、当該基板の片面又は両面にパターン加工された第1導体層を形成して内装回路基板を作成する。基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂基板(BTレジン基板)、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。この基板の少なくとも一方の面にパターン加工、即ち回路形成された導体層を形成する。導体層を形成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられ、銅が最も好ましい。導体層の回路パターンは、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
なお導体層表面は、黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層と内層回路基板の密着性向上の観点から好ましい。ここで、黒化処理とは、導体上の酸化・粗面化処理をいう。
【0047】
(B)本発明で使用され得る支持体含有プレポリマーシートを、前記導体層が形成された面に前記支持体含有プレポリマーシートの第2層が接するように前記内装回路基板に積層する工程
(B)工程では、本発明で使用され得る支持体含有プレポリマーシートを内装回路基板に積層する。この支持体含有プレポリマーシートは、該支持体含有プレポリマーシートの第2層と、内装回路基板の導体層が形成された面とが接するように積層される。導体層が内装回路基板の一方の面にのみ形成されている場合は当該面側のみに、双方の面に形成されている場合は双方の面に、支持体含有プレポリマーシートが積層されることが好ましい。
支持体含有プレポリマーシートが保護層を有している場合には該保護層を除去した後、必要に応じて支持体含有プレポリマーシート及び内装回路基板を予備加熱し、支持体含有プレポリマーシートを加圧及び加熱しながら内装回路基板に圧着して積層を完了する。本発明においては、真空ラミネート法により減圧下で支持体含有プレポリマーシートを回路基板に積層する方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力(ラミネート圧力)を好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)とし、圧着時間(ラミネート時間)を好ましくは5〜180秒とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0048】
(C)前記支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
(C)工程では、支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化することにより、内装回路基板上に絶縁層(硬化物)を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜210℃で30分〜120分の範囲で選択される。また、支持体を剥離せずに熱硬化することで、熱硬化中のごみや埃等の異物付着を防止することができる。
得られた絶縁層の線熱膨張係数(JIS K7197)は、25〜150℃の温度範囲で測定して、25ppm/℃以下となるのが好ましく、20ppm/℃以下となるのがより好ましい。下限値に特に制限はないが、一般的に4ppm/℃となる。これにより、絶縁層(ビルドアップ層)と導体層(配線)とのひずみを防止し、信頼性の高い多層プリント配線板を得ることができる。
得られた絶縁層の誘電正接(測定周波数5.8GHz)は、0.0065以下が好ましく、0.006以下がより好ましい。下限値に特に制限はないが、一般的に0.001以上とすることが適当である。これにより、電気信号ロスの少ない多層プリント配線板を得ることができる。
【0049】
(D)前記支持体含有プレポリマーシートの前記絶縁層の一部を除去して前記パターン加工された第1導体層の一部を露出させる工程
(D)工程では、まず、支持体含有プレポリマーシートの絶縁層の一部を除去する。具体的には、内装回路基板上に適用され、熱硬化された支持体含有プレポリマーシートの一部に穴あけ加工を施し、いわゆるビアホールを形成する。これにより、内装回路基板上にパターン加工された第1導体層の一部が外部に露出することになる。
この穴あけ加工は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができる。中でも炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ加工が好ましく、汎用性の観点から炭酸ガスレーザーがより好ましい。
【0050】
炭酸ガスレーザーでビアホールを形成する場合は、ショット数は、形成すべきビアホールの深さ、孔径によっても異なるが、通常1〜5ショットの間で選択される。ビアホールの加工速度を速め、多層プリント配線板の生産性を向上させるためにショット数は少ない方が良く、ショット数は1〜3が好ましい。ここで、1ショットのレーザーエネルギーは、スミア除去性を良好にするという点から、例えば、0.1〜3Wに調整することが好ましく、0.3〜2Wに調整することがより好ましい。
【0051】
なお、複数のショットで加工する場合、連続的なショットであるバーストモードでもよく、時間的間隔を持たせた複数ショットであるサイクルモードでもよい。
炭酸ガスレーザーのパルス幅は特に限定されず、28μ秒のミドルレンジから4μ秒の短パルスまで広い範囲で選択可能である。効率性の観点から、10μ秒〜26μ秒がより好ましい。
本発明の支持体含有プレポリマーシートは、スミア除去性が向上しているため、多層プリント配線板の薄膜化のために、絶縁層のビアホールのトップ径(直径)を小さくしても、良好な穴あけ加工が可能である。具体的には、ビアホールのトップ径(直径)は、65μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、55μm以下が更に好ましい。一方で、ビアホールの内面の粗化処理を容易に行えるようにするため、ビアホールのトップ径(直径)は15μm以上とするのが好ましい。
【0052】
(E)前記支持体を剥離する工程
(E)工程では、支持体含有プレポリマーシートに付された支持体を剥離する。支持体がプラスチックフィルムの場合は、支持体の剥離は、手動または自動剥離装置により機械的に除去することによって行うことができる。また、支持体が金属箔の場合は、エッチング液などにより金属箔を溶解して、金属箔を剥離、除去することができる。なお、(E)工程は、(D)工程の前に行ってもよく、(D)工程の後に行ってもよいが、スミア除去性向上の点から、(D)工程を(E)工程の前に行うことが好ましい。
【0053】
(F)前記絶縁層の表面を粗化処理する工程
(F)工程では、支持体剥離後、絶縁層表面を粗化処理する。乾式の粗化処理としてはプラズマ処理等が挙げられる。湿式の粗化処理は、例えば、種々の処理液を適用することによって行われる。膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。従って、処理液はこれら膨潤液、酸化剤、中和液のキットであってもよい。湿式の粗化処理の方が、絶縁層表面に凸凹のアンカー形状を形成しながら、ビアホール内のスミアを除去することができる点で好ましい。
膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50〜80℃で5〜20分間(好ましくは55〜70℃で8〜15分間)、膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としては、例えばアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。
【0054】
酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60〜80℃で10〜30分間(好ましくは70〜80℃で15〜25分間)、酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液による中和処理は、30〜50℃で3〜10分間(好ましくは35〜45℃で3〜8分間)、中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
【0055】
粗化処理後の絶縁層表面の表面粗さは、微細配線形成向上のために、算術平均粗さ(Ra)が250nm以下となるのが好ましく、200nm以下となるのがより好ましく、150nm以下となるのがさらに好ましい。算術平均粗さ(Ra)の下限値に制限はないが、一般的に10nm以上、40nm以上、70nm以上などとなる。二乗平均平方根粗さ(Rq)は350nm以下となるのが好ましく、300nm以下となるのがより好ましく、250nm以下となるのが更に好ましい。二乗平均平方根粗さ(Rq)の下限値に制限はないが、一般的に20nm以上、50nm以上、90nm以上などとなる。なお、二乗平均平方根粗さ(Rq)は絶縁層表面の局所的な状態が反映されるため、Rqの把握によってより緻密で平滑な絶縁層表面になっていることが確認でき、ピール強度が安定化する。これは、第1層を熱硬化して、粗化処理した後の絶縁層の表面粗さに相当する。
【0056】
(G)粗化処理後の前記絶縁層表面をめっきして第2導体層を形成する工程
粗化処理後の絶縁層表面には、第2導体層をめっきにより形成することができる。めっき形成の方法としては、乾式めっき又は湿式めっきが挙げられる。乾式めっきとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を挙げることができる。湿式めっきとしては、粗化処理後に無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成する方法、等が挙げられる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
絶縁層とその上の第2導体層とのピール強度は、例えば0.35kgf/cm(3.4N/cm)以上が好ましく、0.45kgf/cm(4.4N/cm)以上がより好ましく、0.55kgf/cm(5.4N/cm)以上が更に好ましい。上限値に特に制限はないが、一般的に1.2kgf/cm(11.8N/cm)以下、1.0kgf/cm(9.8N/cm)以下などとなる。これは、第1層を熱硬化して、粗化処理した後の絶縁層表面と第2導体層とのピール強度に相当する。
本発明において、第2層はスミア除去性が良好であるもののめっきピール強度が低くなってしまうが、第1層によりめっきピール強度を向上させることで、優れた支持体含有プレポリマーシートを得ることができる。つまり、第1層と第2層を別々に用意し、それぞれ80℃30分間、次いで170℃30分間の硬化条件で熱硬化し、60℃10分間の膨潤処理、80℃20分間の粗化処理、40℃5分で中和処理を施し、該第1層と第2層にそれぞれ導体層を形成したときの、第2層と導体層とのめっきピール強度をA
2(kgf/cm(N/cm))とし、第1層と導体層とのめっきピール強度をA
1(kgf/cm(N/cm))とした場合、A
1/A
2>1となることが好ましく、A
1/A
2>1.5となることがより好ましい。
【0057】
上述の一連の工程を複数回繰り返すことで、絶縁層(ビルドアップ層)を多段に積層した多層プリント配線板とすることができる。本発明の支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を熱硬化して得られた絶縁層は、線熱膨張係数が低いにもかかわらず、スミア除去性、めっきピール強度に優れる。従って、本発明は、好適な多層プリント配線板の絶縁層(ビルドアップ層)用支持体含有プレポリマーシートを提供することができる。
【0058】
[半導体装置]
上述のようにして製造された多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明で使用され得る多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、導通するのであれば、導体層の一部であってもそれ以外のコネクタ等の導電部分であってもよい。「半導体チップ」とは、半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0059】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は、特に断らない限り「質量部」を意味する。
まず、本明細書での物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
【0061】
<支持体含有プレポリマーシートの調製>
<樹脂ワニス1の調製(活性エステル化合物あり、イミダゾール化合物あり)>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、液状エポキシ樹脂)5部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185、固体状エポキシ樹脂)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269、固体状エポキシ樹脂)5部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量280、固体状エポキシ樹脂)5部、熱可塑性樹脂としてのフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)10部を、有機溶媒としてのソルベントナフサ(出光石油化学(株)製、イプゾール150)30部と混合し、撹拌しながら60℃にて加熱溶解した。得られた溶解物を室温(25℃)まで冷却後、以下の一般式(III)(n=1.10)で表される活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(1−ベンジル2-フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製キュアゾール1B2PZ)、固形分10質量%のMEK溶液)7部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)200部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
【0062】
<樹脂ワニス2の調製(活性エステル化合物あり、イミダゾール化合物あり)>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、液状エポキシ樹脂)5部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185、固体状エポキシ樹脂)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269、固体状エポキシ樹脂)5部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量280、固体状エポキシ樹脂)5部、熱可塑性樹脂としてのフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)6部を、有機溶媒としてのソルベントナフサ(出光石油化学(株)製、イプゾール150)30部と混合し、撹拌しながら60℃にて加熱溶解した。得られた溶解物を室温(25℃)まで冷却後、上述の一般式(III)で表される活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(三菱化学(株)製「jERcure P200H50」、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂のアダクト体、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)2.5部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.24μm、(株)アドマテックス製「SOC1」)140部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を作製した。
【0063】
<樹脂ワニス3の調製(活性エステル化合物なし、イミダゾール化合物あり)>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、液状エポキシ樹脂)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269、固体状エポキシ樹脂)25部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量280、固体状エポキシ樹脂)5部、熱可塑性樹脂としてのフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)20部を、有機溶媒としてのソルベントナフサ(出光石油化学(株)製、イプゾール150)20部と混合し、撹拌しながら60℃にて加熱溶解させた。得られた溶解物を室温(25℃)まで冷却後、トリアジン含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125)の固形分60%のMEK溶液20部、ナフトール系硬化剤(新日鐵化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215)の固形分60%のMEK溶液20部、熱可塑性樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂溶液(積水化学工業(株)製「KS−1」、固形分15質量%のトルエン:エタノール=1:1(質量比)混合溶液)20部、ゴム粒子(ガンツ化成社製、AC3816N)3部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、東京化成工業(株)社製、固形分2質量%のMEK溶液)1部、硬化促進剤(三菱化学(株)製「jERcure P200H50」、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂のアダクト体、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)2.5部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)65部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を作製した。
【0064】
<樹脂ワニス4の調製(活性エステル化合物あり、イミダゾール化合物なし)>
樹脂ワニス1のイミダゾール化合物(1−ベンジル2-フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)7部に代えて、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、東京化成工業(株)社製、固形分2質量%のMEK溶液)7部を使用する以外は、樹脂ワニス1の調製方法と全く同様にして、樹脂ワニス4を作製した。
【0065】
<実施例1>
(支持体含有プレポリマーシート1の作製)
アルキド樹脂離型層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)の該離型層の表面上に、乾燥後の第1層の厚みが2.5μmとなるように樹脂ワニス3を均一に塗布し、80〜140℃(平均110℃)で4分間乾燥し、第1層を調製した。さらに、得られた第1層上に、乾燥後の第2層の厚みが22.5μmとなるようにダイコーターにて樹脂ワニス1を塗布し、80〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、第2層を調製した。得られた第2層の表面と、保護層としての厚さ15μmのポリプロピレンカバーフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」)の平滑面側とを貼り合わせ、支持体/第1層/第2層/保護層という構成の支持体含有プレポリマーシートを得た。
【0066】
<実施例2>
(支持体含有プレポリマーシート2の作製)
第2層を作製するために、樹脂ワニス1の代わりに樹脂ワニス2を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体/第1層/第2層/保護層という構成の支持体含有プレポリマーシートを得た。
【0067】
<比較例1>
(支持体含有プレポリマーシート3の作製)
実施例1と同じ支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に、乾燥後の第1層の厚みが27.5μmとなるようにダイコーターにて樹脂ワニス1を塗布し、80〜120℃(平均100℃)で4.5分間乾燥し、第1層を調製した。得られた第1層の表面と、保護層としての実施例1と同じポリプロピレンカバーフィルムの平滑面側とを貼り合わせ、支持体/第1層/保護層という構成の支持体含有プレポリマーシートを得た。
【0068】
<比較例2>
(支持体含有プレポリマーシート4の作製)
樹脂ワニス1の代わりに樹脂ワニス2を使用した以外は、比較例1と同様にして、支持体/第1層/保護層という構成の支持体含有プレポリマーシートを得た。
【0069】
<比較例3>
(支持体含有プレポリマーシート5の作製)
樹脂ワニス1の代わりに樹脂ワニス4を使用した以外は、比較例1と同様にして、支持体/第1層/保護層という構成の支持体含有プレポリマーシートを得た。
【0070】
<各種測定用サンプルの調製>
(1)内装回路基板の下地処理
銅製の内装回路を両面に形成した、ガラス布を含むエポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、積層版厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)の当該両面の銅回路部分をメック(株)製CZ8100にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0071】
(2)支持体含有プレポリマーシートのラミネート
実施例及び比較例で作成した支持体含有プレポリマーシートを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、上記粗化処理を行ったエポキシ樹脂両面銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、まず、実施例及び比較例で作成した支持体含有プレポリマーシートの保護層を剥離し、暴露した第2層と当該積層板の銅回路部分が接するようにして重ね合わせた。次いで、これらを30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、110℃、圧力0.74MPaで圧着してラミネートを完成させた。
【0072】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートした支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を80℃にて30分間、次いで170℃にて30分間の硬化条件で熱硬化して絶縁層を得た。
【0073】
(4)ビアホール形成
日立ビアメカニクス(株)製CO
2レーザー加工機(LC−2E21B/1C)を使用し、マスク径1.60mm、フォーカスオフセット値0.050、パルス幅25μs、パワー0.66W、アパーチャー13、ショット数2、バーストモードの条件で絶縁層の一部にレーザーを照射し、当該絶縁層の一部に穴あけ加工を施した。穴あけ加工により形成した穴(ビアホール)のトップ径(直径)は、50μmであった。その後、支持体であるPETフィルムを剥離した。
【0074】
(5)粗化処理
絶縁層を形成した内装回路基板を、膨潤液、酸化剤、中和液の表面処理剤のキットを用いて湿式粗化処理した。具体的には、絶縁層を形成した内装回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次に酸化剤として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬し、その後80℃で30分で乾燥した。得られた基板を評価基板Aとした。
【0075】
(6)セミアディティブ工法によるめっき
評価基板Aをめっきして第2導体層を形成した。具体的には、評価基板Aを、PdCl
2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。浸漬した評価基板Aを、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後、硫酸銅電解めっきを施し、30μmの厚さで第2導体層を形成した。得られた第2導体層を有する評価基板Aを、190℃にて60分間アニール処理し、得られた基板を評価基板Bとした。
【0076】
<算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)の測定及び評価>
評価基板Aを、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値、Rq値を求めた。それぞれ、無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定した。評価は以下の通りである。
○:Ra値が250nm以下
×:Ra値が250nmより大きい
○:Rq値が350nm以下
×:Rq値が350nmより大きい
【0077】
<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>
評価基板Bの第2導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm(N/cm))を測定した。評価は以下の通りである。
:ピール強度が0.6kgf/cm(5.9N/cm)以上
△ :ピール強度が0.35kgf/cm(3.4N/cm)以上、0.6kgf/cm(5.9N/cm)未満
× :ピール強度が0.35kgf/cm(3.4N/cm)未満
【0078】
<ビアホール底部のスミア除去性の評価>
ビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定した。ここで、「最大スミア長」とは、ビア底面の円周から円中心へのスミアの最大長さを意味する。評価は以下の通りである。
○:最大スミア長が3μm未満
×:最大スミア長が3μm以上
【0079】
<線熱膨張係数の測定及び評価>
実施例及び比較例において得られた支持体含有プレポリマーシートの第1層及び第2層を200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、さらに支持体であるPETフィルムを剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。評価は以下の通りである。
○:平均線熱膨張係数が25ppm/℃以下
×:平均線熱膨張係数が25ppm/℃より大きい
【0080】
実施例及び比較例の組成を表1に、ならびに各種測定結果を表2に示す。
【表1】
【表2】