特許第6099054号(P6099054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099054
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】油脂および脂肪酸の新規分解微生物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/16 20060101AFI20170313BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170313BHJP
   C02F 3/34 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C12N1/16 GZNA
   !C12N15/00 A
   !C02F3/34 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-71923(P2014-71923)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-192611(P2015-192611A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年9月26日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01813
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】稲川 顕嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】倉根 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 達也
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−146689(JP,A)
【文献】 特開2012−095587(JP,A)
【文献】 日本農芸化学会2014年度大会講演要旨集(オンライン),2014年 3月 5日,2A02a15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C02F 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株(受託番号NITE P−01813)として寄託されている、微生物。
【請求項2】
H3.5〜10.5、30℃の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で50重量%以上低減する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
以下の菌学的性質を示す、請求項1または2に記載の微生物。
【表1】
【表2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属し、pH3.5〜10.5の条件で1%(w/v)の油分を50重量%以上低減する、新規微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
厨房や食品工場からの排水には、通常、生ゴミや調理用油が含まれている。生ゴミ等の固形物は、排水口にカゴ等を設けることによって容易に排水から除去することが可能であるが、調理油のように液状のものを除去することは容易ではない。したがって、多量の油分が混入した排水を排出する厨房や食品工場などの施設において、油分を集積し上層部に浮上した油分を分離して廃棄するためのグリーストラップが設けられている。
【0003】
しかしながら、グリーストラップ内で集積した油分が固形化し、グリーストラップの水面にスカム(油の塊)として残留したり、グリーストラップの内壁面や配管内部に集積・付着して配管を閉塞したりすることがある。このとき、集積した油分は、酸化・腐敗して、悪臭・害虫の発生原因となることがある。また、集積した油分を放置すると、グリーストラップの油分除去能力が低下し、下水や河川に油分を流出させてしまう。そのため、グリーストラップ内で油分が集積した場合、専門の業者に依頼してバキューム処理や高圧洗浄処理などで油分の除去を行う必要があるためコストがかかってしまう。
【0004】
そこで、グリーストラップにおいて、効率よく油分を低減する方法、特に、油分の分解・資化を行うヤロウィア・リポリティカ等の微生物を用いる方法が検討されている。例えば、特許文献1には、(1)遊離脂肪酸を資化すること、(2)リパーゼを分泌しないこと、および(3)バークホルデリア アルボリスと共生可能なこと、といった特性を備える、ヤロウィア・リポリティカに関する発明、ならびに該ヤロウィア・リポリティカを用いた油分解除去方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−146689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のヤロウィア・リポリティカの微生物では、十分に油分の低減を行うことが困難であった。特に、グリーストラップ内の排水のpH等の水質は、排出される生ゴミ等によって大きく変化し得るため、グリーストラップ内で使用される微生物には、幅広いpH等の水質環境においても排水を浄化し得る特性が求められる。しかしながら、従来公知のヤロウィア・リポリティカの微生物では、そのような特性が十分なものではなかった。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、グリーストラップ内における油分の低減効果に優れたヤロウィア・リポリティカの微生物を提供することを課題とする。特に、幅広いpH等の水質環境においても排水を浄化し得る特性を有するヤロウィア・リポリティカの微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属し、pH3.5〜10.5の条件で1%(w/v)の油分を50重量%以上低減する新規微生物を見出し、本発明の完成に至った。本発明は、以下の内容をその骨子とする。
(1) ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属し、pH3.5〜10.5の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で50重量%以上低減する、微生物。
(2) 以下の菌学的性質を示す、(1)に記載の微生物。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2】
【0011】
(3) ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株(受託番号NITE P−01813)である、(1)または(2)に記載の微生物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グリーストラップ内における油分の低減効果に優れたヤロウィア・リポリティカの微生物が提供される。また、本発明によれば、幅広いpH等の水質環境においても排水を浄化し得る特性を有するヤロウィア・リポリティカの微生物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0014】
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
【0015】
本発明に係る微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属する酵母である。また、本発明に係る微生物は、pH3.5〜10.5の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で50重量%以上低減する。
【0016】
[スクリーニング]
本発明に係る微生物は、以下のスクリーニング方法により、愛知県春日井市の土壌から単離した。
【0017】
1.スクリーニング方法
土壌またはグリーストラップの廃液、下水、河川水、温泉水などから採取したサンプルを、以下の方法で作製された一次スクリーニング用液体培地に適量添加し、30℃で2週間培養した。培養後の培養液100μLをさらに一次スクリーニング用液体培地に接種し、再度30℃で2週間培養した。この操作をさらに2回繰り返した(合計2週間培養×4回)。
【0018】
一次スクリーニング用液体培地の作製方法: 終濃度が0.9%(w/v)KHPO、1%(w/v)(NHSO、0.1%(w/v)MgSO・7HO、0.005%(w/v)FeSO・7HO、0.01%(w/v)CaCl・2HO、0.05%(w/v)NaCl、0.01%(w/v)酵母エキスとなるように純水に溶解した。塩酸にてpH5に調整したものを試験管に10mLずつ分注した。各試験管に油分(菜種油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w))を2mLずつ添加後、高圧滅菌したものを一次スクリーニング用液体培地とした。
【0019】
一次スクリーニング後の培養液100μLを、以下の方法で作製された二次スクリーニング用寒天培地に塗抹し、30℃で1週間培養した。培養後、油分の分解によるハローが確認できた菌株を単離した。
【0020】
二次スクリーニング用寒天培地の作製方法: 終濃度が0.9%(w/v)KHPO、1%(w/v)(NHSO、0.1%(w/v)MgSO・7HO、0.005%(w/v)FeSO・7HO、0.01%(w/v)CaCl・2HO、0.05%(w/v)NaCl、0.01%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)Triton(登録商標)X−100となるように純水に溶解した。塩酸にてpH5に調整後、終濃度が3%(w/v)寒天、1%(w/v)油分(菜種油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w))となるように添加し、高圧滅菌したものをシャーレに20mLずつ分注して平板培地とした。
【0021】
次に、油分0.05g(ナタネ油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w))を、以下の方法で作製された三次スクリーニング用液体培地(5mL)に加えて、高圧滅菌したものを試験液とした(油分1%(w/v))。上記二次スクリーニングで得た各単離菌株を白金耳で一白金耳ずつ試験液に接種し、30℃で20時間振盪(140rpm)培養した。
【0022】
三次スクリーニング用液体培地の作製方法: 終濃度が0.18%(w/v)ポリペプトン、0.12%(w/v)肉エキス、0.07%(w/v)NaHCO、0.005%(w/v)NaCl、0.002%(w/v)KCl、0.002%(w/v)CaCl・2HO、0.003%(w/v))MgSO・7HOとなるように純水に溶解した。塩酸にてpH5に調整後、試験管に5mLずつ分注し、高圧滅菌したものを三次スクリーニング用液体培地とした。
【0023】
培養後、JIS K0102:2013改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油分の残存量とし、試験液の調製時に添加した油分(0.05g)と油分の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、下記数式(1)により油分減少率を求めた。その結果、油分減少率の高い菌株を単離した。
【0024】
【数1】
【0025】
単離した菌株について、26S rDNA−D1/D2領域の塩基配列を決定した。決定された単離微生物の26S rDNA−D1/D2領域の塩基配列を下記配列番号:1に示す。
【0026】
【化1】
【0027】
GenBank/DDBJ/EMBLなどの国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果、単離微生物の26S rDNA−D1/D2領域の塩基配列は、子嚢菌系酵母の一種であるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の基準株NRRL YB−423(アクセッション番号U40080)に対して相同率100%の相同性を示したほか、Y.lipolyticaで登録されている多数のデータに対して相同率99.8〜100%の高い相同性を示した。以上より、単離された微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に帰属すると推定された。
【0028】
2.培養的・形態的性質
上記スクリーニングによって得られた菌株の菌学的性質を以下に示す。形態観察には、以下を用いた。
顕微鏡: 光学顕微鏡BX51(微分干渉観察、オリンパス社製)
マウント液: 滅菌蒸留水。
【0029】
2−1.YM寒天培地(1.0%(w/v)グルコース、0.5%(w/v)ポリペプトン、0.3%(w/v)麦芽エキス、0.3%(w/v)酵母エキス、1.5%(w/v)寒天)(pH6.0)上で25℃下で3日間好気培養したときのコロニーは、以下の性状を示した。
周縁の形状 全縁から波状
隆起状態 周縁部は偏平で、中央部はクッション形
表面の形状 平滑から粗面
光沢および性状 輝光性、バター様、湿性
色調 白色からクリーム色。
【0030】
2−2.YM寒天培地(pH6.0)上で25℃下で好気培養開始3日目に、栄養細胞は亜球形から卵形、長楕円形であり、増殖は多極出芽によることが確認された。YM寒天培地上で25℃下において、好気培養開始3週間を経過した時点で、有性生殖器官の形成は認められなかった。
【0031】
2−3.生理性状試験
生理性状試験の方法は、Kurtsman,C.P., Fell,J.W. and Boekhout,T. (2011) The Yeasts, a taxonomic study, 5th Edition. Elsevier, Amsterdam, Netherlands.に準拠し、温度耐性試験を除いて25℃で行った。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
3.諸性質
単離された菌株はビタミンフリー培地で生育可能であるなど、従来公知のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属する酵母とは性質の異なるものであった。従って、単離された菌株は新規な微生物であると判断し、本菌株をヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株(以下、単に「LM02−011株」とも称する)と命名した。また、このLM02−011株は、平成26年3月6日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されており、その受託番号は、NITE P−01813である。
【0035】
LM02−011株はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属し、pH3.5〜10.5(30〜35℃)の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で50重量%以上低減する。また、LM02−011株はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に属し、pH3.5〜9(30℃)の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で60重量%以上低減する。
【0036】
[油分低減効果の評価]
本明細書において、油分の低減は、以下の方法により評価される。すなわち、ナタネ油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w)である油分0.05gを、pH以外は上記の3次スクリーニング用液体培地と同じである無菌処理済の油分分解評価用培地(5ml)に加えて試験液を調製する(油分1%(w/v))。このとき使用する油分分解評価用培地としては、pHを3.5および10.5に調整したものを用いる。また、必要に応じて、3.5を超えて10.5未満の範囲の任意のpHに調整したものを、1〜2つさらに用いてもよい(例えば、pH3.5、5.0、9.0および10.5の油分分解評価用培地)。pHの調整は塩酸、硝酸、炭酸、硫酸などの無機酸やクエン酸、乳酸などの有機酸等の任意の酸やこれらの塩;および/または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の任意のアルカリ;によって行えばよいが、好ましくは塩酸(酸性側)または水酸化ナトリウム(アルカリ側)である。
【0037】
この試験液に対し、平板培地(例えば、二次スクリーニング用寒天培地)上で培養した微生物を接種し、任意の温度帯で20時間振盪(140rpm)培養する。接種する菌の量は、白金耳で一白金耳程度である。試験液に接種する微生物は、三次スクリーニング用液体培地などで前培養したものを用いても良い。前培養することにより、接種する菌量を容易に調節できる。前培養した微生物を用いる場合は、試験液1mlに対し、1.5×10CFU/mlとなるように接種する。培養温度は菌体の油分分解・資化能が高い温度帯に合わせて設定すればよいが、例えば15〜40℃、好ましくは25〜35℃である。
【0038】
培養後、JIS K0102:2013改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製する。ノルマルヘキサン抽出物を油分の残存量とし、試験液の調製時に添加した油分(0.05g)と油分の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、数式(1)により油分減少率を求める。本発明に係る微生物は、pHを3.5および10.5、ならびに任意に用いられるpHが3.5を超えて10.5未満の範囲で設定した油分分解評価用培地を使用して調製された試験液全てにおいて、上記方法で求められる油分減少率が50重量%以上であればよい。好ましくは、35℃で培養した場合における油分減少率が50重量%以上である。さらに好ましくは、本発明に係る微生物は、30℃で培養した場合における油分減少率が55重量%以上である。油分減少率は高いほど好ましいので、上限は特に設定されないが、例えば、上記方法にて測定される油分減少率が70%以下である。長時間培養すれば油分減少量は多くなる。しかしながら、微生物はグリーストラップ内から順次排泄されるため、通常、約1〜3日ごとにグリーストラップへ微生物が補給される。従って、短時間(例えば20時間以内)で50重量%以上の油分減少率を示す微生物は、実用面で優れる。
【0039】
グリーストラップ内の排水の栄養成分は、排出される生ゴミの種類等によって容易に変動し得る。従って、グリーストラップ内で使用される微生物には、ビタミン等が乏しい環境においても排水を浄化し得ることが好ましい。LM02−011株はビタミンフリー培地でも生育することから、ビタミンを含まない排水中においても油分を分解し得るという点において優れている。
【0040】
本明細書において「油分」とは、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドのようなグリセリド類を多く含む食用または工業用油脂、ならびに脂肪酸を指す。前記油脂としては、例えば、オリーブ油、キャノーラ油、ココナッツ油、ごま油、米油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、牛脂、ラード、鶏油、魚油、鯨油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の食用油脂;およびアマニ油、ジャトロファ油、トール油、ハマナ油、ひまし油、ホホバ油等の工業用油脂;が含まれるが、好ましくはグリーストラップが設置されることが多いレストラン等で頻繁に排出される食用油脂である。 脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;デセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、イコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ヘンイコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸;が挙げられる。脂肪酸は、食用または工業用油脂が分解されて生じたものであっても良い。
【0041】
[微生物の培養]
本発明のヤロウィア・リポリティカの微生物(以下、単に「微生物」とも称する)の培養方法は、当該微生物が生育・増殖できるものであれば、いずれのものであってよい。例えば、本発明の微生物の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。通常、培地は、炭素源、窒素源および無機物を含む。
【0042】
本発明の微生物の培養において使用できる炭素源としては、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。具体的には、微生物の資化性を考慮して、グルコース、フラクトース、セロビオース、ラフィノース、キシロース、マルトース、ガラクトース、ソルボース、グルコサミン、リボース、アラビノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、α−メチル−D−グルコシド、サリシン、メリビオース、ラクトース、メレジトース、イヌリン、エリスリトール、グルシトール、マンニトール、ガラクチトール、N−アセチル−D−グルコサミン、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜等の糖類、麦、米等の天然物、グリセロール、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、ピルピン酸、クエン酸等の有機酸類、ヘキサデカン等の炭化水素などが挙げられる。上記炭素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。例えば、LM02−011株を用いる場合は、上記炭素源のうち、グルコース、ガラクトース、ソルボース、リボース、サリシン、エリスリトール、グルシトール、マンニトール、N−アセチル−D−グルコサミン、グリセロール、エタノール、乳酸、コハク酸、クエン酸、ヘキサデカン等を用いることが好ましい。また、上記炭素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
【0043】
また、本発明の微生物の培養において使用できる窒素源としては、肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、カゼイン、ミルクカゼイン、カザミノ酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素源;アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、尿素等の無機窒素源などが挙げられる。上記窒素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。例えば、LM02−011株を用いる場合は、上記窒素源のうち、肉エキス、ポリペプトン、酵母エキス等を用いることが好ましい。また、上記窒素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
【0044】
本発明において使用できる無機物としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などの、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等のハロゲン化物などが挙げられる。上記無機物は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記無機物を1種または2種以上選択して使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、界面活性剤等を添加してもよい。
【0045】
本発明の微生物に効率よく油分を分解・資化させるあるいは微生物の油分分解・資化能を維持するためには、培地中に油分を添加することが好ましい。油分としては、上述の食用油脂、工業用油脂、ならびに脂肪酸が例示できる。油分の添加量は、特に制限されず、培養する微生物による油分分解・資化能などを考慮して適宜選択されうる。具体的には、油分(菜種油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w))を、培地1L中に1〜30g、より好ましくは5〜15gの濃度で添加することが好ましい。このような添加量であれば、微生物は、高い油分分解・資化能を維持できる。なお、油分は、単独で添加してもまたは2種以上の混合物の形態で添加してもよい。
【0046】
本発明の微生物の培養は、通常の方法によって行える。例えば、微生物の種類によって、好気的条件下または嫌気的条件下で、微生物を培養する。前者の場合には、微生物の培養は、振盪あるいは通気攪拌などによって行われる。また、微生物を連続的にまたはバッチで培養してもよい。培養条件は、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本発明の微生物が増殖できる条件であれば特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて適宜選択されうる。通常は、培養温度が、好ましくは15〜40℃、より好ましくは25〜35℃である。また、培養に適当な培地のpHは、好ましくは3〜11、より好ましくは3.5〜10.5である。さらに、培養時間は、特に制限されず、培養する微生物の種類、培地の量、培養条件などによって異なる。通常は、培養時間は、好ましくは16〜48時間、より好ましくは20〜30時間である。
【実施例】
【0047】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0048】
実施例1:微生物の単離
土壌またはグリーストラップの廃液、下水、河川水、温泉水などから採取したサンプルを、上記方法にて一次スクリーニング用液体培地に適量添加し、30℃で2週間培養した。培養後の培養液100μLをさらに一次スクリーニング用液体培地に接種し、再度30℃で2週間培養した。この操作をさらに2回繰り返した(合計2週間培養×4回)。
【0049】
一次スクリーニング後の培養液100μLを、上記の方法で作製された二次スクリーニング用寒天培地に塗抹し、30℃で1週間培養した。培養後、油分の分解によるハローが確認できた菌株を単離した。
【0050】
次に、油分0.05g(ナタネ油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w))を、上記の方法で作製された三次スクリーニング用液体培地(5mL)に加えて、滅菌した試験液を調製した(油分1%(w/v))。上記二次スクリーニングで得た各単離菌株を白金耳で一白金耳ずつ、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で20時間振盪(140rpm)培養した。
【0051】
培養後、JIS K0102:2013改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油分の残存量とし、試験液の調製時に添加した油分(0.05g)と油分の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、数式(1)により油分減少率を求めた。その結果、油分減少率の高い菌株を単離した。
【0052】
単離された菌株をヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号NITE P−01813)。
【0053】
実施例2:油分減少率
LM02−011株と、従来公知の菌株とを用いて油分減少率を、以下の方法により評価した。公知菌株としては、標準株であるヤロウィア・リポリティカNBRC0746株(以下、単に「NBRC0746株」とも称する。)およびヤロウィア・リポリティカNBRC1209株(以下、単に「NBRC1209株」とも称する。)(いずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用いた。
【0054】
塩酸(酸側)または水酸化ナトリウム(アルカリ側)を用いてpHを3.5、5.0または9.0に調整した5mlの油分分解評価用培地を含む試験管それぞれに対し、ナタネ油:大豆油:牛脂=2:2:1(w/w/w)である油分0.05gを添加した(試験液、油分1%(w/v))。
【0055】
二次スクリーニング用寒天培地上で培養したLM02−011株、NBRC0746株またはNBRC1209株を白金耳で一白金耳ずつ、各試験液を含むそれぞれ別々の試験管に接種した。接種後、30℃または35℃で20時間振盪(140rpm)培養した。
【0056】
培養後、JIS K0102:2013改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油分の残存量とし、試験液の調製時に添加した油分(0.05g)と油分の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、数式(1)により油分減少率を求めた。結果を下表に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5に示す通り、LM02−011株は、35℃で培養したとき、pH3.5〜10.5の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で50重量%以上低減した。また、LM02−011株は、30℃で培養したとき、pH3.5〜10.5の条件で、1%(w/v)の油分を20時間で55重量%以上低減した。LM02−011株は、30℃および35℃のいずれにおいても、pH3.0〜11.0の全範囲において標準株よりも高い油分減少率を示した。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]