(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099077
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】拡幅車体
(51)【国際特許分類】
B60P 3/34 20060101AFI20170313BHJP
B60P 3/025 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
B60P3/34 Z
B60P3/025 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-208529(P2012-208529)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61813(P2014-61813A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230445
【氏名又は名称】日本リフト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502036147
【氏名又は名称】株式会社トノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠彦
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05090749(US,A)
【文献】
実開昭47−026912(JP,U)
【文献】
日本の消防車2012,イカロス出版,2011年 8月10日,42〜51頁,公告頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/34
B60P 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の側面に開口を有する車体本体と、
側壁部、床部、天井部、前壁部及び後壁部を有し、前記車体本体に対し側方に移動自在で、引き込み時に前記側壁部が前記側面の開口を閉じる箱形拡幅部と、
前記車体本体に対して前記箱形拡幅部を移動させる駆動機構と、
前記箱形拡幅部の引き込み時に前記床部に当たらないように昇降自在な前記車体本体側の昇降床部と、
前記昇降床部を昇降駆動する昇降機構とを備え、
前記箱形拡幅部は前壁部及び後壁部の上下に上段スライダ及び下段スライダをそれぞれ有し、前記上段スライダ及び下段スライダは前記車体本体に固定された上段ガイドレール及び下段ガイドレールでそれぞれ移動自在でかつ前記箱形拡幅部の床部と前記車体本体の床面高さとが一致した状態で支持され、
前記駆動機構は、前記昇降床部を囲むように、前後の前記下段ガイドレールの下側に沿ってそれぞれ前記車体本体に固定配置された横フレームと、それらを連絡する縦フレームとからなる略コ字状固定フレームと、
各下段スライダにそれぞれ一端が固定された前記箱形拡幅部の引き出し用ワイヤーロープと、引き込み用ワイヤーロープと、
各横フレームにおける前記側面の開口の近傍に枢支されたシーブと、
前記縦フレームに設けられていて、各ワイヤーロープを引っ張り又は繰り出すシリンダとを有し、
前記引き出し用ワイヤーロープは前記シーブに巻き掛けられてから前記シリンダで引っ張られる、拡幅車体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展示車や宿泊車等に用いることのできる拡幅車体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の拡幅車体としては、下記特許文献1で提案されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−85378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の拡幅車体は、構造が複雑で高価格となり、重量も多くなるきらいがあった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、車体本体に対する箱形拡幅部の引き出し、引き込み動作をワイヤーロープを介してシリンダの伸縮で行うことにより、簡単な構成で安価で、軽量の拡幅車体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は拡幅車体であり、少なくとも一方の側面に開口を有する車体本体と、
側壁部、床部、天井部、前壁部及び後壁部を有し、前記車体本体に対し側方に移動自在で、引き込み時に前記側壁部が前記側面の開口を閉じる箱形拡幅部と、
前記車体本体に対して前記箱形拡幅部を移動させる駆動機構と、
前記箱形拡幅部の引き込み時に前記床部に当たらないように昇降自在な前記車体本体側の昇降床部と、
前記昇降床部を昇降駆動する昇降機構とを備え、
前記箱形拡幅部は前壁部及び後壁部の上下に上段スライダ及び下段スライダをそれぞれ有し、前記上段スライダ及び下段スライダは前記車体本体に固定された上段ガイドレール及び下段ガイドレールでそれぞれ移動自在でかつ前記箱形拡幅部の床部と前記車体本体の床面高さとが一致した状態で支持され、
前記駆動機構は
、前記昇降床部を囲むように、前後の前記下段ガイドレールの下側に沿ってそれぞれ前記車体本体に固定配置された横フレームと、それらを連絡する縦フレームとからなる略コ字状固定フレームと、
各下段スライダに
それぞれ一端が固定された前記箱形拡幅部の引き出し用ワイヤーロープと、引き込み用ワイヤーロープと、
各横フレームにおける前記側面の開口の近傍に枢支されたシーブと、
前記縦フレームに設けられていて、各ワイヤーロープを引っ張り又は繰り出すシリンダとを有
し、
前記引き出し用ワイヤーロープは前記シーブに巻き掛けられてから前記シリンダで引っ張られることを特徴とする。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る拡幅車体によれば、車体本体に対する箱形拡幅部の引き出し、引き込み動作をワイヤーロープを介してシリンダの伸縮で行うため、構造が簡単で安価であり、かつ車体重量の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る拡幅車体の実施の形態であって、拡幅状態の斜視図である。
【
図4】実施の形態において、拡幅車体の後側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1乃至
図4に示すように、1は貨物自動車であって、一方の側面に開口4を有する直方体状の箱形車体本体3と、これに対し中子構造となっていて引き込み時に開口4を閉じる箱形拡幅部10とを組み合わせた拡幅車体2をシャーシ(図示せず)上に搭載したものである。
【0013】
箱形拡幅部10は側壁部11、床部12、天井部13、前壁部14及び後壁部15を有しており、その内部は車体本体3に連通している。箱形拡幅部10は前壁部14及び後壁部15の上下に上段スライダ16及び下段スライダ17をそれぞれ一体に有し、上段スライダ16及び下段スライダ17は車体本体3に固定された上段ガイドレール6及び下段ガイドレール7でそれぞれ摺動(スライド移動)自在に支持されている。この結果、箱形拡幅部10は車体本体3に対し側方に摺動自在で、側方に引き出し時には拡幅車体2の車体幅を拡幅でき、また引き込み時には側壁部11が車体本体3の側面の開口4を閉じて通常の車体幅の箱形車体を構成する。
【0014】
上段スライダ16及び下段スライダ17は前壁部14及び後壁部15の上下縁部の延長線に沿って固定されいる。上段ガイドレール6及び下段ガイドレール7は例えば断面コ字状であり、これに対して上段スライダ16及び下段スライダ17がそれぞれ円滑に摺動できるように、上段及び下段ガイドレール6,7の天井面及び底面にそれぞれ当接するローラ21、22がスライダ16,17に枢着されて(回転自在に取り付けられて)いる。ローラの個数、配置は任意である。
【0015】
なお、
図4及び
図5のように、箱形拡幅部10の引き込み時にその床部12が入り込む車体本体3の床面の一部は床部12の移動の妨げにならない下降位置から、箱形拡幅部10の引き出し時(拡幅時)に床部12と同じ高さとなる上昇位置にまで昇降自在な昇降床部30となっている。昇降床部30の昇降機構は後述する。
【0016】
車体本体3に対して箱形拡幅部10を摺動させる駆動機構40は、前後の下段スライダ17に一端が固定された箱形拡幅部10の引き出し用ワイヤーロープ41F,41Rと、引き込み用ワイヤーロープ42F,42Rと、各ワイヤーロープ41F,41R,42F,42Rを引っ張り又は繰り出す拡幅用油圧シリンダ50とを有する。
【0017】
具体的には、箱形拡幅部10の引き込み時の床部12を取り囲むように(換言すれば昇降床部30を取り囲むように)略コ字状固定フレーム60が車体本体3に固定されている。固定フレーム60は前後の横フレーム60a,60bとそれらを連絡する縦フレーム60cとからなり、拡幅用油圧シリンダ50の本体は縦フレーム60cに取り付けられている。シリンダ50のピストンロッド50a先端部に固定したブラケット50bには4個のシーブ(プーリ)51A〜51Dが枢着されている。ピストンロッド50aに横方向の荷重が加わらないように、ピストンロッド50aを直線的にガイドする機構が設けられている(図示省略)。前後の横フレーム60a,60bは、前後の下段ガイドレール7を支持するように、その下側に沿って配置されており、各横フレーム60a,60bの先端部(側面の開口の近傍)にシーブ52F,52Rが枢支(回転自在に支持)されている。
図3の模式的説明図に示すように、シーブ52F,52Rには下段スライダ17に長さ調整具57F,57Rを介して一端が固定された引き出し用ワイヤーロープ41F,41Rが巻き掛けられることで、ワイヤロープ41F,41Rが引っ張られたときに箱形拡幅部10を引き出す向きの駆動力をそれぞれ発生するためのものである。略コ字状固定フレーム60の前側角部にはワイヤロープ41F,42Fの方向変換用シーブ53A,53Bが枢支されている。同様に、略コ字状固定フレーム60の後側角部にはワイヤロープ41R,42Rの方向変換用シーブ53C,53Dが枢支されている。さらに、縦フレーム60cにはシーブ54,55が枢支されている。
【0018】
図3の模式的説明図では、ワイヤーロープの張架状況がわかるように、実際には上下方向に重なるシーブ配置のものもずらして図示してある。この図において、前側の下段スライダ17に長さ調整具57Fを介し一端が固定された引き出し用ワイヤーロープ41Fは、シーブ52F,53A,51Aの順に張架されて縦フレーム60cに他端が固定具58Fで固定されている。同様に後側の下段スライダ17に長さ調整具57Rを介し一端が固定された引き出し用ワイヤーロープ41Rは、シーブ52R,53C,54,51Cの順に張架されて縦フレーム60cに他端が固定具58Rで固定されている。
【0019】
一方、前側の下段スライダ17に長さ調整具59Fで一端が固定されかつスライダ17に固定のワイヤガイド56Fで折り返された引き込み用ワイヤーロープ42Fは、シーブ53B,55,51Bの順に張架されて縦フレーム60cに他端が固定具61Fで固定されている。同様に後側の下段スライダ17に長さ調整具59Rで一端が固定されかつスライダ17に固定のワイヤガイド56Rで折り返された引き込み用ワイヤーロープ42Rは、シーブ53D,51Dの順に張架されて縦フレーム60cに他端が固定具61Rで固定されている。
【0020】
この結果、シリンダ50のピストンロッド50aが伸長すると、引き出し用ワイヤロープ41はピストンロッド50aのストロークの約2倍の長さ相当分だけ引っ張られることになり、箱形拡幅部10は車体本体3から側方に突出した拡幅状態となる。なお、このとき引き込み用ワイヤーロープ42は等量繰り出されるため、拡幅動作の妨げにはならない。
【0021】
シリンダ50のピストンロッド50aが縮動すると、今度は引き込み用ワイヤロープ42がピストンロッド50aのストロークの約2倍の長さ相当分だけ引っ張られることになり、箱形拡幅部10は車体本体3に収納され、開口4が側壁部11で閉じられた状態(車体本体3の側面と側壁部11の外面がほぼ面一となった状態)となる。なお、このとき引き出し用ワイヤーロープ41は等量繰り出されるため、収納動作の妨げにはならない。
【0022】
箱形拡幅部10の床部12が入り込む車体本体3の床面の一部、つまり略コ字状固定フレーム60の内側部分は、昇降床部30となっていて、床部12の引き込みの妨げとならないように下降位置となっている。また、箱形拡幅部10を引き出した拡幅状態では、床部12が移動した後、昇降床部30が低いままであると、車体本体3の床面及び床部12との間に段差が生じる。このために、
図5の昇降機構70が設けられている。この図において、昇降床部30は床板支持フレーム31上に床板32を載置、固定したものであり、貨物自動車1のシャーシ上に固定された前後方向の根太33上に固定のブラケット34と、フレーム31間がリンク35で連結されている。つまり、リンク35の上端はフレーム31に枢着され、下端はブラケット34に枢着されている。また、シャーシ上に固定された横方向の根太36上にブラケット37が固定され、ブラケット37とリンク35の中間部との間に昇降用油圧シリンダ38が連結されている。従って、昇降床部30はシリンダ38の縮動時は
図4及び
図5の下降位置Dにあって、箱形拡幅部10を引き込み可能であり、シリンダ38の伸長時にはリング35を起立方向に回動させることで昇降床部30は上昇位置Uに駆動される。上昇位置Uは箱形拡幅部10の床部12と同じ高さである。
【0023】
図6は実施の形態の油圧回路であり、貨物自動車1のバッテリーを電源とするパワーユニット80から供給される作動油で複動油圧シリンダである拡幅用油圧シリンダ50及び単動油圧シリンダ(戻し用スプリング内蔵)である昇降用油圧シリンダ38がそれぞれ電磁弁81,82を含む回路で駆動されるようになっている。そして、昇降用油圧シリンダ38の縮動時(昇降床部30の下降位置D)にのみ拡幅用油圧シリンダ50の縮動(箱形拡幅部10の引き込み)を可能にし、拡幅用油圧シリンダ50の伸長時(箱形拡幅部10の拡幅時)にのみ昇降用油圧シリンダ38の伸長(昇降床部30の上昇位置Uへの駆動)を可能にするように電磁弁81,82を制御する。
【0024】
本実施の形態の全体的な動作説明を行う。貨物自動車1として走行するときは、拡幅用油圧シリンダ50を縮動させて箱形拡幅部10を引き込み、側壁部11が車体本体3の側面の開口4を閉じてほぼ面一となった通常の車体幅の箱形車体を構成する。このとき、昇降床部30は予め下降位置Dに降下され、箱形拡幅部10の引き込み動作を妨げないようにする。また、箱形拡幅部10の床部12と車体本体3の床面の高さが一致している。
【0025】
貨物自動車1が駐車した状態において、展示車や宿泊車等として使用する場合、拡幅車体2における拡幅用油圧シリンダ50を伸長させて箱形拡幅部10を外側ら引き出し、拡幅された車体を構成する。その後、昇降床部30を上昇位置Uにまで上昇させて、箱形拡幅部10の床部12と同じ高さとする。
【0026】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0027】
(1) 駐車時に箱形拡幅部10を箱形車体本体3から引き出すことで、床面積及び車体容積を拡大することが可能であり、展示車や宿泊車等に有効利用できる。
【0028】
(2) 箱形拡幅部10を車体本体3に格納して、箱形拡幅部10の側壁部11が車体本体3の側面の開口4を閉じてほぼ面一となった状態とすれば、通常の車体幅の車両として走行可能である。
【0029】
(3) 1本の拡幅用油圧シリンダ50と、ワイヤロープ及びシーブを用いた機構を組み合わせることで、箱形拡幅部10の摺動駆動が可能であり、駆動機構40が簡単で安価である。
【0030】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0031】
1 貨物自動車
2 拡幅車体
3 箱形車体本体
4 開口
6,7 ガイドレール
10 箱形拡幅部
11 側壁部
12 床部
13 天井部
14 前壁部
15 後壁部
16,17 スライダ
21,22 ローラ
30 昇降床部
38 昇降用油圧シリンダ
40 駆動機構
41F,41R 引き出し用ワイヤーロープ
42F,42R 引き込み用ワイヤーロープ
50 拡幅用油圧シリンダ
51A〜51D,52F,52R,53A〜53D,54,55 シーブ
60 略コ字状固定フレーム
70 昇降機構
80 パワーユニット
81,82 電磁弁