特許第6099089号(P6099089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

<>
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000007
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000008
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000009
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000010
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000011
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000012
  • 特許6099089-酸窒化物蛍光体と発光器具 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099089
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】酸窒化物蛍光体と発光器具
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20170313BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20170313BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20170313BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20170313BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20170313BHJP
【FI】
   C09K11/80CQD
   C09K11/08 J
   C09K11/64CQH
   C09K11/79
   H01L33/50
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-70207(P2013-70207)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193952(P2014-193952A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
(72)【発明者】
【氏名】北畠 拓哉
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−067837(JP,A)
【文献】 特開2006−307081(JP,A)
【文献】 特開2005−036038(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/019376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liを含有し、Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶を含み、
前記JEM結晶の含有量は50質量%以上である、蛍光体。
【請求項2】
前記Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶は、MAl(Si,Al)(O,N)10(ただし、M元素は、Ca、Sr、Ba、Eu、La、Ce、Sc、Y、および、ランタノイド元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であり、EuまたはCeを少なくとも1種含む)で示され、これがLiを含有する、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、組成式LiCaSrBaEuLaCeSiAlで示され、
数値a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k(ただし、a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1とする)が、
0.0006 ≦ a ≦ 0.017
0.01 ≦ b+c+d+f ≦ 0.05
0.0006 ≦ e+g ≦ 0.05
0.2 ≦ h ≦ 0.32
0.08 ≦ i ≦ 0.17
0.03 ≦ j ≦ 0.13
0.43 ≦ k ≦ 0.52
の条件を満たす、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
で示され、パラメータs、t、u、x、y、z(ただし、s+t+u+x+y=1とする)

0.01 ≦ s ≦ 0.3
0 ≦ u ≦ 0.8
0 ≦ y ≦ 0.8
0.01 ≦ u+y ≦ 0.8
0.5 ≦ z ≦ 2
の条件を満たす、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記パラメータtが、t=0である、請求項4に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記パラメータuが、u=0である、請求項4に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記パラメータyが、y=0である、請求項4に記載の蛍光体。
【請求項8】
前記パラメータzが、
1.1 ≦ z ≦ 1.5
の条件を満たす、請求項4に記載の蛍光体。
【請求項9】
蛍光スペクトルにおいて、最大発光波長が460nm以上520nm以下であり、励起スペクトルにおいて最大励起波長が250nm以上405nm以下である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項10】
蛍光スペクトルにおいて、405nmの光で励起した発光強度が、最大発光強度の0.5以上である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項11】
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶とは異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項12】
発光光源と蛍光体とから構成される照明器具において、少なくとも請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体を用いる、照明器具。
【請求項13】
前記発光光源は、330〜420nmの波長の光を発するLEDである、請求項12に記載の照明器具。
【請求項14】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、
前記LEDの光により520nm以上570nm以下の波長の光を発する緑色蛍光体と、
前記LEDの光により570nm以上700nm以下の波長の光を発する赤色蛍光体と
を用い、前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体による青色の光と、前記緑色蛍光体による緑色の光と、前記赤色蛍光体による赤色の光とを混ぜて白色光を発する、請求項13に記載の照明器具。
【請求項15】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、
前記LEDの光により550nm以上600nm以下の波長の光を発する黄色蛍光体を用い、前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体による青色の光と、前記黄色蛍光体による黄色の光とを混ぜて白色光を発する、請求項13に記載の照明器具。
【請求項16】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、Euを固溶させたβサイアロン緑色蛍光体をさらに用いる、請求項12に記載の照明器具。
【請求項17】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、Euを固溶させたαサイアロン黄色蛍光体をさらに用いる、請求項12に記載の照明器具。
【請求項18】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、Euを固溶させたCaAlSiN赤色蛍光体をさらに用いる、請求項12に記載の照明器具。
【請求項19】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体に加えて、Ceを固溶させたLaSi11黄色蛍光体をさらに用いる、請求項12に記載の照明器具。
【請求項20】
励起源と蛍光体とから構成される画像表示装置において、少なくとも請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体を用いる、画像表示装置。
【請求項21】
画像表示装置が、液晶ディスプレイ(LCD)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかである、請求項20に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸窒化物蛍光体とその用途に関する。さらに詳細には、該用途は、該蛍光体の有する性質、すなわち420nm以上の波長の蛍光を発光する特性を利用した照明器具、画像表示装置の発光器具に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、可視光線を発する。
【0003】
このような蛍光体として、一般式MAl(Si6−zAl)N10−z(ただし、MはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる1種または2種以上の元素)で示されるJEM相を主成分として含有する酸窒化物蛍光体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、MとしてLaおよびCeを含む酸窒化物蛍光体は、青色発光する蛍光体であり、MとしてLaおよびEuを含む酸窒化物蛍光体は、緑色発光する蛍光体である。
【0004】
さらに、Laの一部をCaで置換したJEM相を主成分とする蛍光体が開発された(例えば、特許文献2を参照)。その後の研究で、我々は、結晶構造を維持したままLaの一部を様々な金属で置換できることを見いだした。
【0005】
しかしながら、特許文献1あるいは2で開発されたJEM相を主成分とする蛍光体(JEM蛍光体とも呼ぶ)は、紫色での励起特性が十分でなかったため、405nmの紫色LEDで励起する用途には向かなかった。また、発光強度も十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/019376号パンフレット
【特許文献2】特開2007−326914号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jekabs Grins ほか3名“Journal of Materials Chemistry” 1995年、5巻、11月号、2001〜2006ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、紫色での励起特性に優れた酸窒化物蛍光体、および、それを用いた用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、JEM蛍光体に様々な金属元素を添加して発光特性との関係を鋭意研究した結果、以下に記載する構成を講ずることによって、紫外線だけでなく紫色での励起波長領域で輝度特性に優れた発光現象があることを知見したものである。本発明は、前記した知見に基づく一連の研究の結果なされたものであって、これによって高輝度発光する酸窒化物蛍光体および蛍光体を利用した照明器具、画像表示装置の発光器具を提供することに成功したものである。すなわち、その構成は、以下のとおりである。
【0010】
本発明による蛍光体は、Liを含有し、Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶を含み、これにより上記課題を解決する。
前記Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶は、MAl(Si,Al)(O,N)10(ただし、M元素は、Ca、Sr、Ba、Eu、La、Ce、Sc、Y、および、ランタノイド元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であり、EuまたはCeを少なくとも1種含む)で示され、これがLiを含有してもよい。
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、組成式LiCaSrBaEuLaCeSiAlで示され、数値a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k(ただし、a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1とする)が、
0.0006 ≦ a ≦ 0.017
0.01 ≦ b+c+d+f ≦ 0.05
0.0006 ≦ e+g ≦ 0.05
0.2 ≦ h ≦ 0.32
0.08 ≦ i ≦ 0.17
0.03 ≦ j ≦ 0.13
0.43 ≦ k ≦ 0.52
の条件を満たしてもよい。
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
で示され、パラメータs、t、u、x、y、z(ただし、s+t+u+x+y=1とする)

0.01 ≦ s ≦ 0.3
0 ≦ u ≦ 0.8
0 ≦ y ≦ 0.8
0.01 ≦ u+y ≦ 0.8
0.5 ≦ z ≦ 2
の条件を満たしてもよい。
前記パラメータtが、t=0であってもよい。
前記パラメータuが、u=0であってもよい。
前記パラメータyが、y=0であってもよい。
前記パラメータzが、1.1≦z≦1.5の条件を満たしてもよい。
蛍光スペクトルにおいて、最大発光波長が460nm以上520nm以下であり、励起スペクトルにおいて最大励起波長が250nm以上405nm以下であってもよい。
蛍光スペクトルにおいて、405nmの光で励起した発光強度が、最大発光強度の0.5以上であってもよい。
前記Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶とは異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記JEM結晶の含有量は50質量%以上であってもよい。
本発明による照明器具は、発光光源と蛍光体とから構成され、少なくとも上述の蛍光体を用いる。
前記発光光源は、330〜420nmの波長の光を発するLEDであってもよい。
上述の蛍光体に加えて、前記LEDの光により520nm以上570nm以下の波長の光を発する緑色蛍光体と、前記LEDの光により570nm以上700nm以下の波長の光を発する赤色蛍光体とを用い、上述の蛍光体による青色の光と、前記緑色蛍光体による緑色の光と、前記赤色蛍光体による赤色の光とを混ぜて白色光を発してもよい。
上述の蛍光体に加えて、前記LEDの光により550nm以上600nm以下の波長の光を発する黄色蛍光体を用い、上述の蛍光体による青色の光と、前記黄色蛍光体による黄色の光とを混ぜて白色光を発してもよい。
上述の蛍光体に加えて、Euを固溶させたβサイアロン緑色蛍光体をさらに用いてもよい。
上述の蛍光体に加えて、Euを固溶させたαサイアロン黄色蛍光体をさらに用いてもよい。
上述の蛍光体に加えて、Euを固溶させたCaAlSiN赤色蛍光体をさらに用いてもよい。
上述の蛍光体に加えて、Ceを固溶させたLaSi11黄色蛍光体をさらに用いてもよい。
本発明による画像表示装置は、励起源と蛍光体とから構成され、少なくとも上述の蛍光体を用いる。
画像表示装置が、液晶ディスプレイ(LCD)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光体は、Liを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶を含む。Liを含有することにより、本発明の励起スペクトルは、従来のJEM蛍光体の励起スペクトルよりもレッドシフトするので、紫色での励起発光特性に優れる。このような蛍光体は、405nmの紫色LEDを用いた発光器具に好ましい。
【0012】
また、本発明の蛍光体は、励起源に曝されても材料劣化や、輝度の低下が少ない。そのため、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどの用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の励起発光スペクトルを示す図
図2】実施例8の励起発光スペクトルを示す図
図3】比較例13の励起発光スペクトルを示す図
図4】本発明による照明器具(砲弾型LED照明器具)を示す概略図
図5】本発明による照明器具(基板実装型LED照明器具)を示す概略図
図6】本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)を示す概略図
図7】本発明による画像表示装置(フィールドエミッションディスプレイパネル)を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
【0015】
本願発明者らは、既存のJEM蛍光体を構成するJEM結晶に着目し、Ceおよび/またはEuで付活したJEM結晶がLiを含有することにより、励起発光特性が改善することを見出した。すなわち、JEM結晶がLiを含有することにより、励起スペクトルが既存のそれよりも長波長側にシフト(レッドシフト)させることに成功した。これにより、本発明の蛍光体は、紫色、例えば波長405nmのLEDを用いて励起した場合であっても、優れた発光特性を示すことができる。
【0016】
本発明では、蛍光発光の点からは、その構成成分たるJEM相(JEM結晶)は、高純度で極力多く含むこと、できれば単相から構成されていることが望ましいが、特性が低下しない範囲内で他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成することもできる。この場合、JEM相の含有量が50質量%以上であることが高い輝度を得るために望ましい。本発明において主成分とする範囲は、JEM相の含有量が少なくとも50質量%以上である。
【0017】
Ceおよび/またはEuで付活したJEM結晶は、MAl(Si,Al)(O,N)10で示される(ただし、MはCa、Sr、Ba、Eu、La、Ce、Sc、Y、ランタノイド元素から選ばれる1種または2種以上の元素であり、EuまたはCeを少なくとも1種含む)。
【0018】
従来のJEM相は、一般式MAl(Si6−zAl)N10−z(ただし、MはLa、Ceなどのランタノイド元素)で示されることが多かったが、本発明では、結晶中のMに代えて、LiやCaなどの1価や2価の金属イオンを置換できることができることがわかったため、
MAl(Si,Al)6(O,N)10
の表記をとる。これは、このような置換においてもJEM構造を維持するためには結晶中のSiとAlの合計数およびOとNの合計数は不変であるためである。ただし、Mとして1価や2価の価数が異なる元素を用いると、Mの全体の価数が変わる。この場合は電気的中性を保つために、Si/Al比やO/N比は変化することがある。
【0019】
なお、上述の一般式で示されるJEM結晶(JEM相)は、Jekabs Grinsらによって希土類金属によって安定化されたα−サイアロンを調整するプロセスにおいて生成することが確認された物質であり、表1に示すように結晶構造パラメータが報告されている(例えば、非特許文献1)。
【0020】
【表1】
【0021】
すなわち、表1によって示されるJEM相は、(1)特定のPbcn空間群(Space group)、(2)格子定数(a=9.4225、b=9.7561、c=8.9362Å)、および(3)特定の原子サイトと原子座標によって特徴づけられる物質であるが、その構成成分M、Al、Si、NおよびOの固溶量が変化することによって表1中の格子定数は変化するが、(1)Pbcn空間群で示される結晶構造と(3)原子が占めるサイトとその座標によって与えられる原子位置は変わることはない。
【0022】
表1に記載されているようにこれらの基本的データが与えられれば、当該物質の結晶構造はこれによって一義的に決定され、その結晶構造の有するX線回折強度(X線回折チャート)をこのデータに基づいて計算することができる。そして、測定したX線回折結果と計算した回折データとが一致したときに当該結晶構造が同じものと特定することができる。当然ながら、Liを含有し、Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶においても、同様の手順で結晶構造を特定できる。
【0023】
座標はx、y、zの格子に対して0から1の値をとる。また、MはSiまたはAlで、XはOまたはNを示している。
【0024】
本発明による、上述のLiを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、好ましくは、組成式LiCaSrBaEuLaCeSiAlで示され、数値a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k(ただし、a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1とする)が、
0.0006 ≦ a ≦ 0.017
0.01 ≦ b+c+d+f ≦ 0.05
0.0006 ≦ e+g ≦ 0.05
0.2 ≦ h ≦ 0.32
0.08 ≦ i ≦ 0.17
0.03 ≦ j ≦ 0.13
0.43 ≦ k ≦ 0.52
の条件を満たす。これにより、発光強度が高い蛍光体が得られる。
【0025】
パラメータaは、リチウムの添加量であり、0.0006より低いとLiによる発光強度向上および励起スペクトルのレッドシフトの効果が少なくなる。また0.017より多いとJEM相の結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0026】
パラメータb、c、d、fは、MAl(Si,Al)6(O,N)10において結晶中のM原子位置を占める主要金属であり、b+c+d+fが0.01未満あるいは0.05を超えると結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0027】
パラメータe、gは、発光中心となるEuとCeの添加量であり、e+gが0.0006未満では発光中心が少なくなり発光強度が低下する。また、0.05を超えると発光中心間でエネルギーが散逸する濃度消光が起きることがあり、発光強度が低下する。
【0028】
パラメータhは、結晶の骨格を形成するSiの添加量であり、0.2未満あるいは0.32を超えると結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0029】
パラメータiは、結晶の骨格を形成するAlの添加量であり、0.08未満あるいは0.17を超えると結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0030】
パラメータjは、結晶の骨格を形成する酸素の添加量であり、0.03未満あるいは0.13を超えると結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0031】
パラメータkは、結晶の骨格を形成する酸素の添加量であり、0.43未満あるいは0.52を超えると結晶構造を維持するのが難しくなるため、発光強度が低下する。
【0032】
なお、上記パラメータa〜kは、一般式MAl(Si,Al)6(O,N)10を満たすように、上述の範囲から選択される。
【0033】
本発明による、上述のLiを含有し、Euおよび/またはCeで付活されたJEM結晶は、好ましくは、
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
で示され、パラメータ−s、t、u、x、y、z(ただし、s+t+u+x+y=1とする)が
0.01 ≦ s ≦ 0.3
0 ≦ u ≦ 0.8
0 ≦ y ≦ 0.8
0.01 ≦ u+y ≦ 0.8
0.5 ≦ z ≦ 2
の条件を満たす。これにより、特に発光強度が高い蛍光体が得られる。
【0034】
この式は、1価のLiイオン、2価のCa、Sr、Ba、Euイオン、3価のLa、Ceイオンを含むJEM結晶において、発光特性改善に効果があると同時に安定な結晶が得られる組成である。
【0035】
パラメータsは、Liの含有量であり、0.01未満では発光特性改善の効果が少ない。また、0.3を超えると結晶構造が不安定になり、発光強度が低下する。
【0036】
パラメータtは、Ca、Sr、Baの2価のイオンの含有量であり、s+t+u+x+y=1の条件で決まる値を含むことができる。また、これらの2価のイオンを含まなくてもよい。
【0037】
パラメータxは、Laの3価のイオンの含有量であり、s+t+u+x+y=1の条件で決まる値を含むことができる。また、この3価のイオンを含まなくてもよい。
【0038】
パラメータu、は発光中心となるEu2価イオンの含有量であり、0.8を超えると発光中心イオン間の相互作用により発光強度が低下(濃度消光)することがある。
【0039】
パラメータyは、発光中心となるCe3価イオンの含有量であり、0.8を超えると発光中心イオン間の相互作用により発光強度が低下(濃度消光)することがある。
【0040】
本発明では発光中心としてEuとCeとを用いることができ、0.01≦u+y≦0.8の条件を満たす範囲を含むことができる。合計で0.01未満では発光を担うイオンの濃度が低く発光強度が低下する。また、合計で0.8を超えると発光中心イオン間の相互作用により発光強度が低下(濃度消光)することがある。
【0041】
パラメータzは、SiとAlの比を決める値である。結晶構造中にはAlの指定位置が1個と、SiとAlのいずれかが入ることができる位置が6個ある。パラメータzを変えることにより、結晶構造を保ったまま結晶中の6個の位置に占めるSiとAlの比を変えることができる。zは0.5以上2以下の値が良い。0.5未満あるいは2を超えると結晶構造の安定性が低下して発光強度が低下する。中でも、1.1以上1.5以下は特に安定な結晶が得られるため発光強度が高い。
【0042】
結晶構造中にはOとNとのいずれかが入ることができる位置が10個ある。Oは2価、Nは3価なので、電気的中性の条件より、Nのパラメータは、10−z−2s−2u−t、
Oのパラメータは、z+2s+2u+t、であるとき結晶構造が安定化するため、発光強度が高い。
【0043】
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータtが、t=0である場合、すなわち、
(Li,Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2uz+2s+2u
は、結晶構造が安定であり、発光強度が高い。
【0044】
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータuが、u=0である場合、すなわち、
(Li,(Ca,Sr,Ba),La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−tz+2s+t
は、Ceからの発光であり、500nm以下の発光成分が多い蛍光体を所望の場合は適している。
【0045】
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータyが、y=0である場合、すなわち、
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
は、Euからの発光であり、500nm以上の発光成分が多い蛍光体を所望の場合は適している。
【0046】
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータtが、t=0であり、パラメータuが、u=0である場合、すなわち、
(Li,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2sz+2s
は、La系のJEMにLiとCeとが固溶した蛍光体であり、発光強度が高く、熱的安定性も高い。
【0047】
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータzが、1.1 ≦ z ≦ 1.5の条件を満たす値である場合は結晶構造が安定であり、発光強度が高い。
【0048】
本発明によれば、組成を選ぶことにより、蛍光スペクトルにおいて、最大発光波長が460nm以上520nm以下であり、励起スペクトルにおいて最大励起波長が250nm以上405nm以下である蛍光体を得ることができる。このような蛍光体は紫外あるいは紫励起用途の青色蛍光体として用いることができる。
【0049】
本発明によれば、組成を選ぶことにより、蛍光スペクトルにおいて、405nmの光で励起した発光強度が、最大発光強度の0.5以上である蛍光体を得ることができる。このような蛍光体は405nm近辺の発光をするLEDやレーザダイオードを励起源とする発光デバイス用途の蛍光体として適している。
【0050】
上述したように、本発明では、結晶相としてJEM相(JEM結晶)の単相から構成されることが望ましいが、特性が低下しない範囲内で他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成することもできる。この場合、JEM結晶の含有量が50質量%以上であることが高い輝度を得るために望ましい。本発明において主成分とする範囲は、JEM結晶の含有量が少なくとも50質量%以上である。JEM結晶の含有量の割合は、X線回折測定を行い、それぞれの相の最強ピークの強さの比から求めることができる。
【0051】
本発明の蛍光体を電子線で励起する用途に使用する場合は、導電性を持つ無機物質を混合することにより蛍光体に導電性を付与することができる。導電性を持つ無機物質としては、Zn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0052】
本発明の蛍光体は、高い輝度を示し、励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に有する酸窒化物蛍光体である。
【0053】
本発明の蛍光体の製造方法は特に規定されないが、例えば、金属化合物の混合物であって、焼成することにより、JEM結晶の蛍光体を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより得ることができる。
【0054】
本発明の照明器具は、少なくとも発光光源と本発明の蛍光体とを用いて構成される。照明器具としては、LED照明器具、蛍光ランプなどがある。LED照明器具では、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609、特開平7−99345、特許公報第2927279号などに記載されているような公知の方法により製造することができる。この場合、発光光源は100〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも330〜420nmの紫外(または紫)LED発光素子が好ましい。
【0055】
これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより、所定の波長の光を発する発光光源となり得る。
【0056】
照明器具において本発明の蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する照明器具を構成することができる。この一例として、330〜420nmの紫外LEDあるいは紫LED発光素子と、この波長で励起され520nm以上570nm以下の波長の光を発する緑色蛍光体と、この波長で励起され570nm以上700nm以下の光を発する赤色蛍光体と、本発明の蛍光体との組み合わせがある。このような緑色蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu,Mnを、赤色蛍光体としてはY:Euを挙げることができる。この構成では、LEDが発する紫外線が蛍光体に照射されると、赤、緑、青の3色の光が発せられ、これの混合により白色の照明器具となる。
【0057】
別の手法として、330〜420nmの紫外LEDあるいは紫LED発光素子と、この波長で励起されて550nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ黄色蛍光体と、本発明の蛍光体との組み合わせがある。このような黄色蛍光体としては、特許公報第2927279号に記載の(Y、Gd)(Al、Ga)12:Ceや特開2002−363554に記載のα−サイアロン:Euを挙げることができる。なかでもEuを固溶させたCa−α−サイアロンが発光輝度が高いのでよい。この構成では、LEDが発する紫外あるいは紫光が蛍光体に照射されると、青、黄の2色の光が発せられ、これらの光が混合されて白色または赤みがかった電球色の照明器具となる。
【0058】
本発明の照明器具において、本発明の蛍光体とともに用いられる緑色蛍光体として、上記以外にEuを固溶させたβサイアロン緑色蛍光体が好ましい。
【0059】
本発明の照明器具において、本発明の蛍光体とともに用いられる黄色蛍光体として、上記以外にもEuを固溶させたαサイアロン黄色蛍光体あるいはCeを固溶させたLaSi11黄色蛍光体がある。
【0060】
本発明の照明器具において、本発明の蛍光体とともに用いられる赤色蛍光体として、上記以外にもEuを固溶させたCaAlSiN赤色蛍光体がある。
【0061】
本発明の蛍光体は、電子線を照射すると青色ないし緑色に発光することから、CRTやフィールドエミッションディスプレイ用の蛍光体として機能する。具体的には、本発明の画像表示装置を、少なくも励起源と本発明の蛍光体とで構成してもよい。画像表示装置には、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などがある。本発明の蛍光体は、100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などの励起で発光することが確認されており、これらの励起源と本発明の蛍光体との組み合わせで、上記のような画像表示装置を構成することができる。
【実施例】
【0062】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
次の原料粉末を用いて蛍光体を合成した。
(1)窒化リチウム:マテリオン製純度99.5%、−60メッシュ
(2)窒化カルシウム:マテリオン製純度99%、−200メッシュ
(3)窒化ストロンチウム:マテリオン製99.5%、−60メッシュ
(4)窒化バリウム:マテリオン製純度99.7%、−20メッシュ
(5)窒化ユーロピウム:日本イットリウム製ユーロピウム金属(純度99.9%)をアンモニア気流中で800℃で加熱して合成
(6)窒化ランタン:高純度化学製
(7)窒化セリウム:日本イットリウム製セリウム金属(純度99.9%)をアンモニア気流中で600℃で加熱して合成
(8)窒化イットリウム:マテリオン製純度99.9%、−60メッシュ
(9)窒化ケイ素:宇部興産製SNーE10グレード
(10)窒化アルミニウム:トクヤマ製Eグレード
(11)酸化アルミニウム:高純度化学製純度99.9%
【0064】
[蛍光体:実施例1〜12および比較例13]
組成式
(Li,(Ca,Sr,Ba),Eu,La,Ce)AlSi6−zAl10−z−2s−2u−tz+2s+2u+t
において、パラメータs、t、u、x、y、zが表2の値となるように組成を設計した。この組成設計により、組成式
LiCaSrBaEuLaCeSiAl
におけるパラメータa、b、c、d、e、f、g、h、i、j、kは表2の値となった。また、この式をパラメータの合計が1となるように表示すると表3の様になった。次に、この組成となるように、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ランタン、窒化セリウムを表4の割合(モル比)で秤量し、窒化ケイ素製乳鉢と乳棒で10分間混合した。秤量および混合は、水分および酸素不純物が1ppm以下の窒素雰囲気であるグローブボックス中で行った。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で設定温度まで昇温し、設定温度で2時間保持して行った。設定温度は、実施例1から6および比較例13では1800℃、実施例7から12では1850℃とした。
【0069】
焼成後、合成物である粉体の構成結晶を以下のような手順によって同定した結果、JEM結晶であると判定された。先ず、合成した試料を窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒を用いて粉末に粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った。その結果、得られたチャートはJEM結晶に特異のパターンを示した。測定結果を、リートベルト解析計算ソフト(RIETAN−2000、泉富士夫作、朝倉書店、粉末X線解析の実際)によりX線回折図形シミュレーションを行ったところ、実施例の物質はJEM結晶であると判定された。JEM結晶の割合は85%以上であった。
【0070】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、青色に発光することを確認した。
【0071】
日立ハイテクノロジーズ製F4500型蛍光分光光度計を用いて、発光スペクトルおよび励起スペクトルを測定した結果、これらの粉末は、表5に示す波長に励起スペクトルのピークがあり、表5に示す波長に発光スペクトルのピークがあり、表5に示す最大発光強度を持つ蛍光体であることが確認された。
【0072】
図1は、実施例1の励起発光スペクトルを示す図である。
図2は、実施例8の励起発光スペクトルを示す図である。
図3は、比較例13の励起発光スペクトルを示す図である。
【0073】
【表5】
【0074】
図1〜3および表5に示すように、実施例で合成した試料は、紫外線および紫光で励起することにより青色発光する蛍光体であることが確認された。図1〜2と、図3との励起スペクトルを比較すると、図1〜2の励起スペクトルは、図3のそれに比べてレッドシフトしていた。
【0075】
また、表5に示す405nm励起による発光強度に注目すると、実施例はいずれも高い発光強度を示しており、405nmの紫光においても励起することができることが分かった。一方、Liを含まない比較例13によれば、発光強度が低く、とくに405nm励起による発光強度が低いことが分かった。
【0076】
これらから、Ceおよび/またはEuで付活されたJEM結晶がLiを含むことにより、励起スペクトルをレッドシフトさせることが示され、紫光の励起光によっても実用可能な発光強度を有することが分かった。本発明の蛍光体は、紫光LEDを光源とする白色または有色LED用の蛍光体として有用である。
【0077】
[発光装置および画像表示装置;実施例14から17]
次ぎに、本発明の蛍光体を用いた発光装置について説明する。
【0078】
[実施例14]
図4は、本発明による照明器具(砲弾型LED照明器具)を示す概略図である。
【0079】
図4に示すいわゆる砲弾型白色発光ダイオードランプ(1)を製作した。2本のリードワイヤ(2、3)があり、そのうち1本(2)には、凹部があり、405nmに発光ピークを持つ紫色発光ダイオード素子(4)が載置されている。紫色発光ダイオード素子(4)の下部電極と凹部の底面とが導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(3)とが金細線(5)によって電気的に接続されている。蛍光体(7)が樹脂に分散され、発光ダイオード素子(4)近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(6)は、透明であり、紫色発光ダイオード素子(4)の全体を被覆している。凹部を含むリードワイヤの先端部、紫色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明な第二の樹脂(8)によって封止されている。透明な第二の樹脂(8)は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっていて、砲弾型と通称されている。
【0080】
本実施例では、実施例1で作製した蛍光体と、Euを固溶させたα−サイアロン黄色蛍光体を質量比で7:3に混合した蛍光体粉末を37重量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサを用いて適量滴下して、蛍光体を混合したもの(7)を分散した第一の樹脂(6)を形成した。得られた発光装置は白色光を発した。
【0081】
[実施例15]
図5は、本発明による照明器具(基板実装型LED照明器具)を示す概略図である。
【0082】
図5に示す基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(11)を製作した。可視光線反射率の高い白色のアルミナセラミックス基板(19)に2本のリードワイヤ(12、13)が固定されており、それらワイヤの片端は基板のほぼ中央部に位置し、他端はそれぞれ外部に出ていて電気基板への実装時ははんだづけされる電極となっている。リードワイヤのうち1本(12)は、その片端に、基板中央部となるように発光ピーク波長365nmの紫外発光ダイオード素子(14)が載置され固定されている。紫外発光ダイオード素子(14)の下部電極と下方のリードワイヤとは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(13)とが金細線(15)によって電気的に接続されている。
【0083】
第一の樹脂(16)と実施例1で作製した蛍光体と、Euを固溶したα−サイアロン黄色蛍光体を質量比で7:3に混合した蛍光体(17)を混合したものが、発光ダイオード素子近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明であり、紫外発光ダイオード素子(14)の全体を被覆している。また、セラミック基板上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材(20)が固定されている。壁面部材(20)は、その中央部が紫外発光ダイオード素子(14)及び蛍光体(17)を分散させた樹脂(16)がおさまるための穴となっていて、中央に面した部分は斜面となっている。この斜面は光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面の曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する面は白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。本実施例では、該壁面部材(20)を白色のシリコーン樹脂によって構成した。壁面部材の中央部の穴は、チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには紫外発光ダイオード素子(14)及び蛍光体(17)を分散させた第一の樹脂(16)のすべてを封止するようにして透明な第二の樹脂(18)を充填している。本実施例では、第一の樹脂(16)と第二の樹脂(18)とには同一のエポキシ樹脂を用いた。得られた発光装置は白色光を発した。
【0084】
次に、本発明の蛍光体を用いた画像表示装置の設計例について説明する。
【0085】
[実施例16]
図6は、本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)を示す概略図である。
【0086】
赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu2+)(31)と緑色蛍光体(β−サイアロン:Eu2+)(32)および本発明の実施例1の青色蛍光体(33)が、ガラス基板(44)上に電極(37、38、39)および誘電体層(41)を介して配置されたそれぞれのセル(34、35、36)の内面に塗布されている。電極(37、38、39、40)に通電するとセル中でXe放電により真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて、赤、緑、青の可視光を発し、この光が保護層(43)、誘電体層(42)、ガラス基板(45)を介して外側から観察され、画像表示装置として機能する。
【0087】
[実施例17]
図7は、本発明による画像表示装置(フィールドエミッションディスプレイパネル)を示す概略図である。
【0088】
本発明の実施例8の青色蛍光体(56)が陽極(53)の内面に塗布されている。陰極(52)とゲート(54)の間に電圧をかけることにより、エミッタ(55)から電子(57)が放出される。電子は陽極(53)と陰極の電圧により加速されて、青色蛍光体(56)に衝突して蛍光体が発光する。全体はガラス(51)で保護されている。図は、1つのエミッタと1つの蛍光体からなる1つの発光セルを示したが、実際には青色の他に、緑色、赤色のセルが多数配置されて多彩な色を発色するディスプレイが構成される。緑色や赤色のセルに用いられる蛍光体に関しては特に指定しないが、低速の電子線で高い輝度を発するものを用いると良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の蛍光体は、既存のJEM蛍光体よりも優れた励起・発光特性を有し、とりわけ、405nmに代表される紫色LEDと組み合わせた場合でも発光強度が高く、化学的および熱的に安定であり、さらに励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種表示装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0090】
1.砲弾型発光ダイオードランプ。
2、3.リードワイヤ。
4.発光ダイオード素子。
5.ボンディングワイヤ。
6、8.樹脂。
7.蛍光体。
11.基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ。
12、13.リードワイヤ。
14.発光ダイオード素子。
15.ボンディングワイヤ。
16、18.樹脂。
17.蛍光体。
19.アルミナセラミックス基板。
20.側面部材。
31.赤色蛍光体。
32.緑色蛍光体。
33.青色蛍光体。
34、35、36.紫外線発光セル。
37、38、39、40.電極。
41、42.誘電体層。
43.保護層。
44、45.ガラス基板。
51.ガラス。
52.陰極。
53.陽極。
54.ゲート。
55.エミッタ。
56.蛍光体。
57.電子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7