特許第6099103号(P6099103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーアールエス ホールディングス,インコーポレイテッドの特許一覧

特許6099103高強度鋼合金及びそれから作製されたストリップ製品及びシート製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099103
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】高強度鋼合金及びそれから作製されたストリップ製品及びシート製品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20170313BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C22C38/00 301U
   C22C38/58
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-257823(P2014-257823)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-134962(P2015-134962A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/919,081
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595012659
【氏名又は名称】シーアールエス ホールディングス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CRS HOLDINGS, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エム・ノボトニー
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−508854(JP,A)
【文献】 特開2011−184756(JP,A)
【文献】 特開2012−224900(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061545(WO,A1)
【文献】 特開2013−076162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセントで、
C 0.3−0.6
Mn 3.0−4.5
Si 1.0−2.0
Cr 0.6−2.5
Ni 0.6−5.0
Mo+1/2W 0.5以下
Cu 0.3−1.0
Co 0.01以下(0を含む)
V+5/9Nb 0.1−0.5
Ti 0.025以下(0を含む)
Al 0.025以下(0を含む
Ca 0.005以下(0を含む)
N 0.02以下(0を含む)
を含有し、残部は鉄及び通常の不純物であり、
上記不純物は、0.03%以下のリン、及び、0.003%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
2 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 34
となるようにバランスされている鋼合金。
【請求項2】
重量パーセントで、
C 0.30−0.45
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.8
Cr 0.75−2.35
Ni 0.7−4.5
Mo+1/2W 0.3以下
Cu 0.4−0.7
V+5/9Nb 0.2−0.4
Ti 0.020以下(0を含む)
Al 0.020以下(0を含む)
Ca 0.002以下(0を含む)
を含有し、上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている請求項1記載の鋼合金。
【請求項3】
重量パーセントで、
C 0.30−0.40
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 1.6−2.35
Ni 3.7−4.3
Mo+1/2W 最大0.1
Cu 0.4−0.6
V+5/9Nb 0.30−0.40
Ti 0.020以下(0を含む)
Al 0.020以下(0を含む)
Ca 0.002以下(0を含む)
を含有し、上記不純物は、0.025%以下のリン、及び、0.0025%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
(a) 4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされ、
上記Mo、Cr及びC元素は、
(b) 4.25 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされ、
上記Mn及びNi元素は、
(c) 3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8.0
となるようにバランスされている請求項1記載の鋼合金。
【請求項4】
重量パーセントで、
C 0.30−0.36
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 0.75−1.5
Ni 0.7−2.5
Mo+1/2W 0.15−0.25
Cu 0.4−0.6
V+5/9Nb 0.20−0.30
Ti 0.020以下(0を含む)
Al 0.020以下(0を含む)
Ca 0.002以下(0を含む)
を含有し、
上記不純物は、0.025%以下のリン、及び、0.0025%以下の硫黄を含む請求項1記載の鋼合金。
【請求項5】
(Mo+1/2W)は、少なくとも0.20%である請求項1、2および4のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項6】
上記Mo、Cr及びC元素が、
3.5 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされている請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項7】
上記Mn及びNi元素が、
3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8
となるようにバランスされている請求項1、2、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項8】
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項9】
0.001−0.025%のイットリウムをさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項10】
0.001−0.01%のマグネシウムをさらに含む請求項1〜9のいずれかに記載の鋼合金。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の鋼合金からなる薄板製品。
【請求項12】
請求項11に記載の薄板製品から作製されている成形パーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度、高靭性、及び、高延性の独特な組み合わせ(unique combination)を有する鋼合金に関する。また、本発明は、薄板(thin gauge)の製品形態(例えば自動車用途のパーツに容易に形成可能なストリップ及びシート等)を作製するために上記鋼合金を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)は、2025年までに、新しい車が54.5マイル/ガロンの企業平均燃費基準(corporate average fuel economy standard)を満たさなければならないことを要求している。この要求により、自動車製造業者は彼らの車両の重量をおそらく減少させるであろう。既知の鋼合金と比較して高い強度及び重量の大幅な減少をもたらす例えばアルミニウム等の軽重量の材料及び複合材料が薄板の自動車用ボディ及びフレームパーツを製造するために使用されうる。しかしながら、そのような材料の使用により、自動車製造業者に対して課題が課されるであろう。これは、彼らの製品ラインナップが、鋼合金を使用することに合わせて設計されており、アルミニウム等の非スチール材料及び複合材料への変更により実質的な設備投資が必要となり、おそらく実質的に材料コストの増加が必要となるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この”軽量化”努力において、鍛造された(stamped)自動車用ボディ及びフレームパーツの重量を減少させるため、自動車用ボディ及びフレーム用途のために使用される従来のスチールより高い強度を与えるスチールシート及びストリップを、それらが充分頑丈で成形可能である限り使用してもよい。スチールの強度及び成形性の尺度(measure)は、ストリップインデックスナンバー(Strip Index Number)(SIN)であり、これは、最大抗張力(UTS)(MPa)と伸張率(%)との積である。多くの自動車用途について、少なくとも約20,000のSINを有するスチールシートおよびストリップは、重量を大きく減少させるとともに充分な強度及び成形性を提供する。しかしながら、より高い強度を要求する構造部品(構造パーツ;structural parts)にとって、少なくとも約30,000のSINが好ましい。改良された高強度スチール(AHSS)として知られているスチールの多くは、延性について少し物足りない。これは、強度と延性とは逆相関した特性(inversely related properties)であるからである。高強度スチール材料のストリップ及びシートの形態のために良好な延性が必要とされ、それにより良好な成形性が提供される。したがって、自動車用ボディ及びフレームパーツにおいて、大きな重量の減少となるだけでなく、そのような製品に容易に成形されうる、高強度と高延性との組み合わせを提供するシート合金を持ち合わせている(have)ことが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述のニーズは、本発明に係る鋼合金により大幅に解決される。本発明に係る合金は、非常に高い強度、靭性及び延性の独特な組み合わせ(unique combination)を提供する。この発明の合金は、下記の、広範の、中間の、及び、好適な重量パーセントの組成物により特徴づけられうる。
【表1】
【0005】
合金の残部(balance)は鉄、及び、同様の用途及び特性のために製造された市販等級の鋼合金中に見られる通常の不純物である。上記不純物の中で、リンは最大約0.03%以下に限定されていることが好ましく、硫黄は最大約0.003%以下に限定されていることが好ましい。
【0006】
上掲表は、便宜的に要約したものであって、互いに組み合わせて用いられる各元素範囲の下限値及び上限値を限定するものでも又は単に互いに組み合わせて用いられる元素の範囲を限定するものでもない。したがって、残りの元素についての1以上の他の範囲と併せて、1以上の範囲を用いてもよい。さらに、他の好適な若しくは中間の組成の同じ成分についての最小値若しくは最大値と併せて、広範の、若しくは、好適な組成についての最小値若しくは最大値を用いてもよい。さらに、本発明に係る合金は、上述の、及び、本願の始めから終わりに至るまで記載された構成元素を含有し、基本的に当該構成元素からなり、若しくは、当該構成元素からなってもよい。ここにおいて、及び、本明細書の始めから終わりに至るまでに記載された、”パーセント”なる用語、若しくは、”%”なる記号は、特別の定めがない限り、重量パーセント若しくは質量パーセントによる割合を意味する。さらに、重量パーセントの値若しくは範囲に関連して使用されている”約”なる用語は、当該技術分野における当業者により要求される(expected)通常の分析許容性(usual analytical tolerance)若しくは実験誤差(experimental error)であって、既知の、標準化された測定技術に基づく、通常の分析許容性若しくは実験誤差を意味する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、表に示されている鋼合金の1つから構成されているシート製品若しくはストリップ製品等の薄板スチール製品を提供する。薄板製品は、それらの良好な延性のため、容易に成形され自動車用途のパーツとされうる。本発明のこの態様に係る薄板スチール製品は、少なくとも約20,000のSINを有し、さらに好ましくは、少なくとも25,000のSINを有する。スチール製品の好ましい実施の形態は、少なくとも約30,000のSINを有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述の重量パーセント範囲は、本発明の合金において当該元素が果たす役割によりさらに定義されうる。シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに、ニオブの元素の組み合わせは、それらが存在する場合、本発明の目的のために、拡散修正剤(diffusion modifier)として機能する。これは、それらが、炭素、及び、P及びS等の有害なトランプエレメント(トランプ元素;tramp elements)の合金粒界への拡散を減少させることが示されたからである。上述の重量パーセント範囲内において、シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに、ニオブは、それらが存在するとき、以下のように広範にバランスされている
2 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 34。
SINが少なくとも約30,000であることが要求されるストリップ用途については、シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに任意ではあるがニオブは、好ましくは、以下のようにバランスされている
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10。
モリブデンは、本発明に係る合金においてオプションとして存在しており、タングステンは、この合金においてモリブデンのいくらか若しくは全てと置き換えられていてもよい。タングステンは、それが存在するとき、Mo+1/2Wが約0.20〜0.5%、好ましくは、約0.15〜0.3%となるように、2:1の比率でモリブデンに置き換えられている。また、イットリウム及びマグネシウムは、別々に若しくは組み合わせて、この合金内に存在していてもよい。これに関し、当該合金は、約0.001〜0.025%のイットリウムを含んでいてもよいし、好ましくは、約0.002〜0.020%のイットリウムを含んでいてもよい。当該合金はまた約0.001〜0.01%のマグネシウムを含んでいてもよいし、より好ましくは、約0.001〜0.006%のマグネシウムを含んでいてもよい。当該マグネシウム及び/又はイットリウムは、鋼合金を脱酸素に供するための最初の溶解の間に加えられる。マグネシウム及びイットリウムは、また、加工処理の間において、合金の結晶粒微細化(grain refinement)を助力することによりこのスチールの強度及び靭性について利益をもたらす。
【0009】
モリブデン、タングステン及びクロム元素は、焼き戻しの間炭素と結合し、MCカーバイド(MはCr、Mo及び/又はWである)が形成される。Mo、W及びCr元素は、本発明に係る合金の目的のため、焼き戻されたカーバイド形成体(tempered carbide former)と称されうる。そのため、クロム、モリブデン及びタングステンは、それらが存在するとき、MCカーバイドの形成を促進し、当該合金において、それぞれ置換されていてもよい。少なくとも30,000のSINが望まれるストリップ及びシート等の薄板製品形態について、上述されているように、モリブデン及び/又はタングステンを正量加えること(positive addition)が含まれている。さらに、前述の重量パーセント範囲内において、モリブデン、クロム及び炭素は、好ましくは、
3.5 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5となるようにバランスされている。
【0010】
マンガン元素及びニッケル元素はオーステナイト安定化剤であり、この合金の良好な焼入硬化性(hardenability)に貢献する。マンガン及びニッケルは、オーステナイトを安定化させるため、限られた限度で互いに置換されてもよい。少なくとも約30,000のSINが必要とされる薄板製品用途について、前述の重量パーセント範囲内において、マンガン及びニッケルは、
3.5 ≦ (%Mn + %Ni) ≦ 8.0となるように広くバランスされている。
【0011】
この合金及びこれから製造される製品は、好ましくは真空溶解技術により製造される。この点で、合金を最初に溶解させることは、真空誘導溶解(VIM)とともに実行されることが好ましい。望まれる場合、より厳格な用途に関しては、当該合金は、真空アーク再溶解(VAR)を用いて精錬(refine)してもよい。予備的な溶解は、望まれる場合は、空気中アーク溶解(ARC)により実行してもよい。ARC溶解の後、当該合金は、エレクトロスラグ再溶解(ESR)若しくはVARにより精錬してもよい。
【0012】
本発明の合金は、ストリップ若しくはシート等の薄板形態に加工されることが好ましい。ストリップ形態若しくはシート形態において、合金から形成されているパーツは、約1400〜1900°F(760〜1038°C)の温度で短時間オーステナイト化され、その後、空気冷却されてもよい。このパーツは、その後、供給に(in service)用いられてもよい。別の態様では、アニールされたストリップ若しくはシートを成形して、一つの成形パーツとし、その後、1400〜1900°F(760〜1038°C)のオーステナイト化温度まで誘導加熱することにより選択的に熱処理し、その後空気中において冷却してもよい。他のオプションは、1400〜1900°F(760〜1038°C)のオーステナイト化温度までストリップ若しくはシート材料を加熱し、その後、当該パーツを鍛造(stamp)してそれを形成し、熱間鍛造された(hot stamped)パーツを空気冷却することである。当該パーツは、空気冷却された条件で、若しくは、400〜700°F(204.4〜371°C)で短い焼き戻しを行った後使用してもよい。当該合金は、アニールされた条件下において、すなわち、平均して約150ksi(1025MPa)において、比較的高い最大抗張力(UTS)を有し、非常に高い延性(すなわち、10〜25%の伸張率)と組み合わされている。それゆえ、アニールされた合金ストリップ若しくはシートから作製されたパーツは、更なる熱処理を全く必要とすることなく、いくつかの用途において使用することができる。
【0013】
当該合金は、また、ビレットやバー等の様々な中間製品形態を作製するため、約2100°F(1149°C)以下、好ましくは、約1800°F(982°C)の温度から熱間加工されてもよい。当該合金は、約1〜2時間、約1585°F(863°C)から約1835°F(1002°C)までオーステナイト化することにより熱処理することが好ましい。その後、当該合金は空気冷却され、オーステナイト化温度からオイル急冷される。望まれる場合は、当該合金は真空熱処理され、及び、ガス急冷されてもよい。バー形態の合金からなるパーツは、約1〜8時間、−100°F(−73.3°C)若しくは−320°F(−196°C)のいずれかにおいてディープ急冷(deep chill)され、その後空気中において暖められることが好ましい。より低い強度が許容されうる場合、冷蔵工程は、バー製品からなるパーツについては省略してもよい。当該合金は、好ましくは、約2〜3時間、約400°F〜600°F(204.4〜316°C)において焼き戻され、その後空気冷却されることが好ましい。当該合金は、最適な強度と靭性との組み合わせが要求されない場合、700°F(371°C)以下まで焼き戻されてもよい。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、上述の合金の薄板製品形態からなる成形されたパーツが提供される。当該成形されたパーツは、自動車用の、鍛造された(stamped)ボディ若しくはフレームパーツとして具体化されることが好ましい。本発明に係る薄板製品は、少なくとも約0.0009インチ(0.0229mm)、0.25インチ(6.35mm)未満の薄さを有するシート若しくはストリップからなるパーツ若しくは構成要素である。
【実施例】
【0015】
(実施例I)
本発明に係る合金によりもたらされる特性の独特な組み合わせを示すため、合金の代表例及び比較される合金の一例を溶解し加工処理し及び試験した。試験される合金の重量パーセント組成は以下の表1に示されている。実施例2は、本発明に係る合金を示している。合金A及びBは比較のための合金である。
【表1】

表1において各組成の残部は、鉄と不純物である。
【0016】
実施例比較例及び参考例の合金を真空誘導溶解し、35lb(15.9kg)の溶融金属(heats)を鋳造した。当該金属を熱間加工し(hot worked)、粗加工して複数セットの二つ折り標準引張サンプル(duplicate standard tensile specimens)とした。各セットの中の複数対のサンプル(pairs of specimens)を1.5時間様々な温度でオーステナイト化し、その後、オイル急冷した(oil quenched)。その後、当該複数対のサンプルを2時間焼き戻しし、空気冷却した。各合金の複数対のサンプルについて使用されるオーステナイト化温度及びテンパリング温度(焼き戻し温度)が以下の表2に示されている。
【表2】

熱処理後、テストサンプルを最終寸法まで機械加工し試験した。各具体例についての室温引張試験の結果が以下の表3A〜3Dに示されている。これらには0.2%オフセット降伏強度(Y.S.)、最大抗張力(U.T.S.)、伸張割合(%El.)、及び、面積の減少割合(%R.A.)が含まれている。各サンプルについてSINの計算結果が表に含まれている(SIN=UTS(MPa)×%El.)。また、試験されたサンプルのそれぞれの対の平均値が表に示されている。
【0017】
【表3A】
【0018】
【表3B】
1 鍛造欠陥のため試験されなかったサンプル
【0019】
【表3C】
【0020】
【表3D】
【0021】
(実施例II)
本発明の合金が、市販品サイズの金属(commercial production-size heats)までスケールアップしたときの特性の所望の組み合わせを提供することができることを示すため、2つの付加的な金属を溶解し加工処理し試験した。試験された合金の重量パーセント組成が以下の表4に示されている。表3は、本発明に係る合金の好適な組成Aの合金を示し、表4は、本発明に係る合金の好適な組成Bの合金を示している。
【表4】

表4における各組成の残部は鉄と不純物である。
【0022】
実施例3及び4は、40トンの溶融金属として、ARC及びAODにより溶解され精錬され(refined)、その後、連続鋳造装置においてビレット(鋼片;billet)として鋳造されたものである。連続鋳造綱片を熱間加工し(hot worked)、粗加工して複数セットの二つ折り標準引張サンプル(duplicate standard tensile specimens)とした。実施例3についての二つ折り引張試験サンプルを0.150インチの厚さのホットロールバンド(hot rolled band)から調製した。実施例4についての二つ折り引張試験サンプルを、以下のように、0.150インチの厚さのホットロールバンドから調製した。バンド材料を0.110インチの最終厚さまで研磨(grinding)した後、0.150インチのバンドから第1のサンプルセットを調製した。0.130インチの厚さを有するストリップを形成するため、0.150インチのバンドを冷間圧延することにより第2のサンプルセットを調製した。当該ストリップ材料を0.087インチの最終厚さまで研磨した(ground)。0.110インチの厚さを有するストリップを形成するため、バンド材料を冷間圧延し0.0074インチの最終厚さまでストリップ材料を研磨することにより第3のサンプルセットを調製した。
【0023】
実施例3の複数対の引張サンプルを、当該サンプルをステンレススチールバッグに配置することにより熱処理した。その後、当該バッグはアルゴンガスによりバックフィルし(backfilled with)、サブセットに分けた。各サブセットを、前述の表2に示された熱処理A−Hの1つにしたがって熱処理した。1.5時間その温度にサンプルサブセットを保持し、その後室温までオイル急冷することにより、オーステナイト化を実行した。2時間、各焼き戻し温度においてサンプルサブセットを保持し、その後室温まで空気冷却を行うことにより、焼き戻しを実行した。
【0024】
実施例4の複数対の引張サンプルは、3つのグループにおいて熱処理した。1つのグループは、前述の表2の熱処理Aにより熱処理した。第2グループは、表2の熱処理Cにより熱処理した。第3のグループは、表2の熱処理Eにより熱処理した。1.5時間各温度でサンプルを保持し、その後室温まで空気冷却することにより、オーステナイト化を実行した。2時間、各焼き戻し温度にサンプルを保持しその後室温まで空気冷却することにより焼き戻しを実行した。
【0025】
実施例3についての室温引張試験の結果が以下の表5に示されている。これには、0.2%オフセット降伏強度(Y.S.)、最大抗張力(U.T.S.)、伸張割合(%El.)、及び、面積の減少割合(%R.A.)が含まれている。各サンプルについてSINの計算結果が表に含まれている(SIN=UTS(MPa)×%El.)。また、試験されたサンプルのそれぞれの対の平均値が表に示されている。
【0026】
【表5】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側で破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0027】
実施例4についての室温引張試験の結果が、以下の表6A、6B及び6Cに表されている。
【0028】
【表6A】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側で破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0029】
【表6B】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側において破断したサンプルである。
**は、加工処理の間サンプルがダメージを受けたため試験を行っていない。
***は値を計算することができなかったものである。
【0030】
【表6C】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側において破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0031】
表3A〜3D、5及び6A〜6Cに示されているデータは、本発明に係る好ましい合金が、強度と靭性との所望の組み合わせを提供することを示しており、強度と靭性との所望の組み合わせにより、上記合金は、他に類を見ない程(uniquely)、薄板製品形態(ストリップ及びシート等)から作製された自動車パーツにおいて使用されるのに適したものとされる。サンプルの1つはダメージが大きすぎて試験されず、サンプルのいくつかについての伸張率の測定は妥当ではないけれども、全体として考慮すると、そのデータは、本発明の合金の好ましい実施の形態が、合金が対象とされている特性(properties for which the alloy was designed)の組み合わせを提供することを示している。非常に高い強度と予想より高い延性との独特の組み合わせにより自動車産業に対する新たな解決手段が提供され、強度と靭性とを犠牲にすることなく、重量が減少した成形されたボディ及びフレームのパーツが作製される。
【0032】
本明細書の開示内容は、以下の態様を含む。
態様1:
強度、靭性及び延性の独特な組み合わせを提供する鋼合金であって、
上記鋼合金は、重量パーセントで、基本的に、
C 0.3−0.6
Mn 3.0−4.5
Si 1.0−2.0
Cr 0.6−2.5
Ni 0.6−5.0
Mo+1/2W 0.5以下
Cu 0.3−1.0
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.1−0.5
Ti 最大0.025
Al 最大0.025
Ca 最大0.005
N 最大0.02
を含有し、残部は鉄及び通常の不純物であり、
上記不純物は、約0.03%以下のリン、及び、約0.003%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
2 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 34
となるようにバランスされている鋼合金。

態様2:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.45
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.8
Cr 0.75−2.35
Ni 0.7−4.5
Mo+1/2W 0.3以下
Cu 0.4−0.7
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.2−0.4
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている態様1記載の鋼合金。

態様3:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.40
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 1.6−2.35
Ni 3.7−4.3
Mo+1/2W 最大0.1
Cu 0.4−0.6
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.30−0.40
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、上記不純物は、約0.025%以下のリン、及び、約0.0025%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
(a) 4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされ、
上記Mo、Cr及びC元素は、
(b) 4.25 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされ、
上記Mn及びNi元素は、
(c) 3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8.0
となるようにバランスされている態様1記載の鋼合金。

態様4:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.36
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 0.75−1.5
Ni 0.7−2.5
Mo+1/2W 0.15−0.25
Cu 0.4−0.6
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.20−0.30
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、
上記不純物は、約0.025%以下のリン、及び、約0.0025%以下の硫黄を含む態様1記載の鋼合金。

態様5:
(Mo+1/2W)は、少なくとも約0.20%である態様1〜4のいずれかに記載の鋼合金。

態様6:
上記Mo、Cr及びC元素が、
3.5 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされている態様1、2、4及び5のいずれかに記載の鋼合金。

態様7:
上記Mn及びNi元素が、
3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8
となるようにバランスされている態様1、2、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。

態様8:
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9) × %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている態様1、2、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。

態様9:
0.001−0.025%のイットリウムをさらに含む態様1〜8のいずれかに記載の鋼合金。

態様10:
0.001−0.01%のマグネシウムをさらに含む態様1〜9のいずれかに記載の鋼合金。

態様11:
態様1〜10のいずれかに記載の鋼合金からなる薄板製品。

態様12:
態様11に記載の薄板製品から作製されている成形パーツ。