【0008】
上述の重量パーセント範囲は、本発明の合金において当該元素が果たす役割によりさらに定義されうる。シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに、ニオブの元素の組み合わせは、それらが存在する場合、本発明の目的のために、拡散修正剤(diffusion modifier)として機能する。これは、それらが、炭素、及び、P及びS等の有害なトランプエレメント(トランプ元素;tramp elements)の合金粒界への拡散を減少させることが示されたからである。上述の重量パーセント範囲内において、シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに、ニオブは、それらが存在するとき、以下のように広範にバランスされている
2 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 34。
SINが少なくとも約30,000であることが要求されるストリップ用途については、シリコン、銅、及び、バナジウム、並びに任意ではあるがニオブは、好ましくは、以下のようにバランスされている
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 10。
モリブデンは、本発明に係る合金においてオプションとして存在しており、タングステンは、この合金においてモリブデンのいくらか若しくは全てと置き換えられていてもよい。タングステンは、それが存在するとき、Mo+1/2Wが約0.20〜0.5%、好ましくは、約0.15〜0.3%となるように、2:1の比率でモリブデンに置き換えられている。また、イットリウム及びマグネシウムは、別々に若しくは組み合わせて、この合金内に存在していてもよい。これに関し、当該合金は、約0.001〜0.025%のイットリウムを含んでいてもよいし、好ましくは、約0.002〜0.020%のイットリウムを含んでいてもよい。当該合金はまた約0.001〜0.01%のマグネシウムを含んでいてもよいし、より好ましくは、約0.001〜0.006%のマグネシウムを含んでいてもよい。当該マグネシウム及び/又はイットリウムは、鋼合金を脱酸素に供するための最初の溶解の間に加えられる。マグネシウム及びイットリウムは、また、加工処理の間において、合金の結晶粒微細化(grain refinement)を助力することによりこのスチールの強度及び靭性について利益をもたらす。
【実施例】
【0015】
(実施例I)
本発明に係る合金によりもたらされる特性の独特な組み合わせを示すため、合金の代表例及び比較される合金の一例を溶解し加工処理し及び試験した。試験される合金の重量パーセント組成は以下の表1に示されている。
実施例2は、本発明に係る合金を示している。合金A及びBは比較のための合金である。
【表1】
表1において各組成の残部は、鉄と不純物である。
【0016】
実施例
、比較例
及び参考例の合金を真空誘導溶解し、35lb(15.9kg)の溶融金属(heats)を鋳造した。当該金属を熱間加工し(hot worked)、粗加工して複数セットの二つ折り標準引張サンプル(duplicate standard tensile specimens)とした。各セットの中の複数対のサンプル(pairs of specimens)を1.5時間様々な温度でオーステナイト化し、その後、オイル急冷した(oil quenched)。その後、当該複数対のサンプルを2時間焼き戻しし、空気冷却した。各合金の複数対のサンプルについて使用されるオーステナイト化温度及びテンパリング温度(焼き戻し温度)が以下の表2に示されている。
【表2】
熱処理後、テストサンプルを最終寸法まで機械加工し試験した。各具体例についての室温引張試験の結果が以下の表3A〜3Dに示されている。これらには0.2%オフセット降伏強度(Y.S.)、最大抗張力(U.T.S.)、伸張割合(%El.)、及び、面積の減少割合(%R.A.)が含まれている。各サンプルについてSINの計算結果が表に含まれている(SIN=UTS(MPa)×%El.)。また、試験されたサンプルのそれぞれの対の平均値が表に示されている。
【0017】
【表3A】
【0018】
【表3B】
1 鍛造欠陥のため試験されなかったサンプル
【0019】
【表3C】
【0020】
【表3D】
【0021】
(実施例II)
本発明の合金が、市販品サイズの金属(commercial production-size heats)までスケールアップしたときの特性の所望の組み合わせを提供することができることを示すため、2つの付加的な金属を溶解し加工処理し試験した。試験された合金の重量パーセント組成が以下の表4に示されている。表3は、本発明に係る合金の好適な組成Aの合金を示し、表4は、本発明に係る合金の好適な組成Bの合金を示している。
【表4】
表4における各組成の残部は鉄と不純物である。
【0022】
実施例3及び4は、40トンの溶融金属として、ARC及びAODにより溶解され精錬され(refined)、その後、連続鋳造装置においてビレット(鋼片;billet)として鋳造されたものである。連続鋳造綱片を熱間加工し(hot worked)、粗加工して複数セットの二つ折り標準引張サンプル(duplicate standard tensile specimens)とした。実施例3についての二つ折り引張試験サンプルを0.150インチの厚さのホットロールバンド(hot rolled band)から調製した。実施例4についての二つ折り引張試験サンプルを、以下のように、0.150インチの厚さのホットロールバンドから調製した。バンド材料を0.110インチの最終厚さまで研磨(grinding)した後、0.150インチのバンドから第1のサンプルセットを調製した。0.130インチの厚さを有するストリップを形成するため、0.150インチのバンドを冷間圧延することにより第2のサンプルセットを調製した。当該ストリップ材料を0.087インチの最終厚さまで研磨した(ground)。0.110インチの厚さを有するストリップを形成するため、バンド材料を冷間圧延し0.0074インチの最終厚さまでストリップ材料を研磨することにより第3のサンプルセットを調製した。
【0023】
実施例3の複数対の引張サンプルを、当該サンプルをステンレススチールバッグに配置することにより熱処理した。その後、当該バッグはアルゴンガスによりバックフィルし(backfilled with)、サブセットに分けた。各サブセットを、前述の表2に示された熱処理A−Hの1つにしたがって熱処理した。1.5時間その温度にサンプルサブセットを保持し、その後室温までオイル急冷することにより、オーステナイト化を実行した。2時間、各焼き戻し温度においてサンプルサブセットを保持し、その後室温まで空気冷却を行うことにより、焼き戻しを実行した。
【0024】
実施例4の複数対の引張サンプルは、3つのグループにおいて熱処理した。1つのグループは、前述の表2の熱処理Aにより熱処理した。第2グループは、表2の熱処理Cにより熱処理した。第3のグループは、表2の熱処理Eにより熱処理した。1.5時間各温度でサンプルを保持し、その後室温まで空気冷却することにより、オーステナイト化を実行した。2時間、各焼き戻し温度にサンプルを保持しその後室温まで空気冷却することにより焼き戻しを実行した。
【0025】
実施例3についての室温引張試験の結果が以下の表5に示されている。これには、0.2%オフセット降伏強度(Y.S.)、最大抗張力(U.T.S.)、伸張割合(%El.)、及び、面積の減少割合(%R.A.)が含まれている。各サンプルについてSINの計算結果が表に含まれている(SIN=UTS(MPa)×%El.)。また、試験されたサンプルのそれぞれの対の平均値が表に示されている。
【0026】
【表5】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側で破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0027】
実施例4についての室温引張試験の結果が、以下の表6A、6B及び6Cに表されている。
【0028】
【表6A】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側で破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0029】
【表6B】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側において破断したサンプルである。
**は、加工処理の間サンプルがダメージを受けたため試験を行っていない。
***は値を計算することができなかったものである。
【0030】
【表6C】
*は不当な測定−ゲージセクションの外側において破断したサンプルである。
**は値を計算することができなかったものである。
【0031】
表3A〜3D、5及び6A〜6Cに示されているデータは、本発明に係る好ましい合金が、強度と靭性との所望の組み合わせを提供することを示しており、強度と靭性との所望の組み合わせにより、上記合金は、他に類を見ない程(uniquely)、薄板製品形態(ストリップ及びシート等)から作製された自動車パーツにおいて使用されるのに適したものとされる。サンプルの1つはダメージが大きすぎて試験されず、サンプルのいくつかについての伸張率の測定は妥当ではないけれども、全体として考慮すると、そのデータは、本発明の合金の好ましい実施の形態が、合金が対象とされている特性(properties for which the alloy was designed)の組み合わせを提供することを示している。非常に高い強度と予想より高い延性との独特の組み合わせにより自動車産業に対する新たな解決手段が提供され、強度と靭性とを犠牲にすることなく、重量が減少した成形されたボディ及びフレームのパーツが作製される。
【0032】
本明細書の開示内容は、以下の態様を含む。
態様1:
強度、靭性及び延性の独特な組み合わせを提供する鋼合金であって、
上記鋼合金は、重量パーセントで、基本的に、
C 0.3−0.6
Mn 3.0−4.5
Si 1.0−2.0
Cr 0.6−2.5
Ni 0.6−5.0
Mo+1/2W 0.5以下
Cu 0.3−1.0
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.1−0.5
Ti 最大0.025
Al 最大0.025
Ca 最大0.005
N 最大0.02
を含有し、残部は鉄及び通常の不純物であり、
上記不純物は、約0.03%以下のリン、及び、約0.003%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
2 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 34
となるようにバランスされている鋼合金。
態様2:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.45
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.8
Cr 0.75−2.35
Ni 0.7−4.5
Mo+1/2W 0.3以下
Cu 0.4−0.7
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.2−0.4
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている態様1記載の鋼合金。
態様3:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.40
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 1.6−2.35
Ni 3.7−4.3
Mo+1/2W 最大0.1
Cu 0.4−0.6
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.30−0.40
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、上記不純物は、約0.025%以下のリン、及び、約0.0025%以下の硫黄を含み、
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
(a) 4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされ、
上記Mo、Cr及びC元素は、
(b) 4.25 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされ、
上記Mn及びNi元素は、
(c) 3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8.0
となるようにバランスされている態様1記載の鋼合金。
態様4:
重量パーセントで、基本的に、
C 0.30−0.36
Mn 3.5−4.5
Si 1.3−1.7
Cr 0.75−1.5
Ni 0.7−2.5
Mo+1/2W 0.15−0.25
Cu 0.4−0.6
Co 最大0.01
V+5/9Nb 0.20−0.30
Ti 最大0.020
Al 最大0.020
Ca 最大0.002
N 最大0.02
を含有し、
上記不純物は、約0.025%以下のリン、及び、約0.0025%以下の硫黄を含む態様1記載の鋼合金。
態様5:
(Mo+1/2W)は、少なくとも約0.20%である態様1〜4のいずれかに記載の鋼合金。
態様6:
上記Mo、Cr及びC元素が、
3.5 ≦ (%Mo +% Cr)/(%C) ≦ 7.5
となるようにバランスされている態様1、2、4及び5のいずれかに記載の鋼合金。
態様7:
上記Mn及びNi元素が、
3.5 ≦ %Mn+%Ni ≦ 8
となるようにバランスされている態様1、2、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。
態様8:
上記Si、Cu、V及びNb元素は、
4.5 ≦ (%Si + %Cu)/(%V+(5/9)
× %Nb) ≦ 10
となるようにバランスされている態様1、2、4、5及び6のいずれかに記載の鋼合金。
態様9:
0.001−0.025%のイットリウムをさらに含む態様1〜8のいずれかに記載の鋼合金。
態様10:
0.001−0.01%のマグネシウムをさらに含む態様1〜9のいずれかに記載の鋼合金。
態様11:
態様1〜10のいずれかに記載の鋼合金からなる薄板製品。
態様12:
態様11に記載の薄板製品から作製されている成形パーツ。