【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の電極及び第1の電位を前記第1の電極に印加する手段が設けられ、第2の電極及び第2の電位を前記第2の電極に印加する手段が、前記荷電粒子ビーム光学系中に電界を発生させるよう設けられ、前記電界中の前記荷電粒子ビームは、第1のエネルギーからこれよりも低い第2のエネルギーに減速されるようになっている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコラム。
荷電粒子ビーム装置であって、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームコラムを有し、前記荷電粒子ビーム装置が電子検査ツールである、荷電粒子ビーム装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の種々の実施形態を詳細に参照し、これら実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が図示されている。各実施例は、本発明の説明のために提供されており、本発明を限定するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示され又は説明される特徴を他の実施形態に又はこれと関連して使用することができ、それにより更に別の実施形態が得られる。本発明は、かかる改造例及び変形例を含むものである。
【0012】
本願の保護範囲を限定するものではなく、以下の説明において、荷電粒子ビーム装置又はそのコンポーネントは、例示として二次電子の検出を含む荷電粒子ビーム装置と称する。本発明は、更に、試料像を得る目的で粒子、例えば電子若しくはイオン、光子、X線又は他の信号の形態をした二次及び/又は後方散乱荷電粒子を検出する装置及びコンポーネントに利用できる。
【0013】
一般に、粒子という場合、これは、粒子が光子である光信号並びに粒子がイオン、原子、電子又は他の粒子である粒子と理解されるべきである。
【0014】
以下の図面の説明の範囲内において、同一の参照符号は、同一のコンポーネントを示している。一般に、個々の実施形態に関する相違点についてのみ説明する。
【0015】
本明細書において用いられる「試料」という用語は、半導体ウェーハ、半導体ワーク及び他の加工物、例えばメモリディスク等を含むが、これらには限定されない。本発明の実施形態は、吟味又は検査されなければならず或いは構造観察されなければならない材料が被着される任意の加工物に利用できる。試料は、検査され、試験され、構造観察されるべき表面又は層が被着される表面、縁及び典型的にはベベルを含む。
【0016】
本明細書において説明する実施形態によれば、画像化(イメージング)、試料検査、試験、リソグラフィー及び試料変性又は修整のための荷電粒子ビームシステムが提供される。特に、実施形態は、シングルビーム装置と比較してスループットが増大した電子ビーム検査システムに関する。
【0017】
スループットは、高分解能ツインビーム光学系の提供により増大する。それにより、このマルチビーム光学系は、他のマルチビーム光学系と比較して導入する収差が小さく、しかも通常のマルチビーム光学系の複雑さを軽減する。したがって、コラム1つ当たり2本のビームを提供することができ、かかるコラム1つ当たりの2本のビーム方式は、シングルビームコラムと比較して同一の性能又はほぼ同一の性能を有する。
【0018】
本発明の実施形態が
図1Aに概略的に示されている。荷電粒子ビーム装置用のコラム1は、荷電粒子エミッタに又は荷電粒子源を有し、かかる荷電粒子エミッタは、荷電粒子のビーム4を放出する。電子ビーム装置では、電子源、例えばタングステン‐ヘアピン(Tungsten-Hairpin)ガン、ランタン‐六ホウ化物(Lanthanum-Hexaboride)ガン、電界放出ガン等を用いることができる。しかしながら、本発明は、電子源には限定されず、本発明は、あらゆる種類の荷電粒子源と共に利用できる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、エミッタは、熱陰極、熱(サーマル)電界放出陰極、冷(コールド)電界放出陰極、光電陰極、ナノチューブ、例えばカーボンナノチューブ、ガス電界イオン源、液体金属イオン源等であるのが良い。
【0019】
荷電粒子ビーム4は、荷電粒子源2を出た後、バイプリズム素子6を通る。荷電粒子ビームは、バイプリズム素子6を通ることにより、2つの仮想源2′が作られるよう影響を受ける。したがって、荷電粒子ビームは、2つのサブビーム4A,4Bを有し、これらサブビームは、互いに異なる源によって放出されているように見える。バイプリズム素子6と荷電粒子ビーム光学系、例えば対物レンズ10の作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子ビーム4A,4Bの各々にそれぞれ対応した2つのスポット(粒子源2の像)が試料8上に作られる。
【0020】
ビーム4A,4Bの粒子が試料8の表面に当たると、これら粒子は、試料の原子の核及び電子と一連の複雑な相互作用を起こす。相互作用により、種々の二次生成物、例えば異なるエネルギーの電子、X線、熱及び光が生じる。これら二次生成物の多くは、試料の像を作り、試料を検査し、試料を修整すると共に/或いは試料から追加のデータを収集するために用いられる。試料の吟味又は像生成にとって非常に重要な二次生成物は、試料8から比較的低いエネルギー(0.5〜50eV)で種々の角度をなして出る二次電子である。したがって、試料上の2つのスポットの各々により、1つ又は2つ以上の検出器上に対応の信号が生じる。試料全体にわたって荷電粒子ビームを走査し、検出器ユニットの出力を表示/記録することにより、試料8の表面の多数の独立した像を形成することができる。各像は、試料の表面の異なる部分についての情報を含む。したがって、データ収集の速度は、従来型シングルビームの場合と比較して2倍になる。試料8は、ステージ7(試料支持体)上に支持され、このステージは、荷電粒子ビームが検査されるべき試料上の標的領域に達することができるようにするためにあらゆる方向に水平に動くことができる。
【0021】
本発明の実施形態のオプションとしての別の細部が
図1Bに概略的に示されている。荷電粒子ビーム装置用のコラム1は、荷電粒子のビーム4を放出する荷電粒子源2を有している。電子ビーム装置では、電子源、例えばタングステン‐ヘアピンガン、ランタン‐六ホウ化物ガン、電界放出ガン等を用いることができる。しかしながら、本発明は、電子源には限定されず、本発明は、あらゆる種類の荷電粒子源と共に利用できる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、エミッタは、熱陰極、熱(サーマル)電界放出陰極、冷(コールド)電界放出陰極、光電陰極、ナノチューブ、例えばカーボンナノチューブ、ガス電界イオン源、液体金属イオン源等であるのが良い。荷電粒子は、荷電粒子源2に供給される加速電圧によって加速される。
【0022】
荷電粒子ビーム4は、荷電粒子源2を出た後、多数の、代表的には2つのアパーチュア5A,5Bを備えたアパーチュアプレート5を通り、これらアパーチュアは、例えば、アパーチュアプレート5の軸線と同心状に位置決めされている。多数の荷電粒子ビーム、代表的には2つの荷電粒子ビーム4A,4Bがアパーチュアプレート5を通過することにより作られる。さらに、本明細書において説明する実施形態によれば、バイプリズム素子6が設けられている。代表的には、バイプリズムは、1対の静電プレート6B相互間に配置されたワイヤ(電線)6A又はロッド、例えば細いワイヤを含む。
【0023】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、ワイヤ6Aは、静電プレート6B相互間の中央に設けられ、このワイヤは、一方向に(
図1Bの平面に垂直に)実質的に円筒状に延びる。さらに、ワイヤの直径は、約1μm〜2mmであるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、ワイヤは又、正方形又は長方形の断面を有する。かかる場合、上述の直径の値は、同様に、断面の最大寸法に適用可能である。
【0024】
例えば、電子ビームについて2つの仮想源(
図1Aの2′)を作る場合、1対の電極6Bに対するワイヤ6Aの正の電位(正電荷)が利用されるべきである。荷電粒子ビームは、バイプリズム素子6を通ることにより、2つのサブビーム4A,4Bについて2つの仮想源2′が作られるよう影響を受ける。したがって、荷電粒子ビームは、2つのサブビーム4A,4Bを有し、これらサブビームは、互いに異なる源によって放出されているように見える。バイプリズム素子6と荷電粒子ビーム光学系、例えば対物レンズ10の作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子ビーム4A,4Bの各々にそれぞれ対応した2つのスポット(粒子源2の像)が試料8上に作られる。
【0025】
次に、荷電粒子ビーム4A,4Bは、検出器9を通り、この検出器は、試料8の多数の像を作るために試料8から来た粒子を検出するために用いられる。検出器9は、荷電粒子のビームに対応したセグメントに分割されるのが良い。それにより、検出器の各セグメントは、検出器9の他の全てのセグメントとは独立して試料8から来た粒子を検出することができる。さらに、検出器9は、荷電粒子のビームを通過させる多数の開口部を有する。
【0026】
検出器9の後に走査コイル12が設けられ、これら走査コイルは、荷電粒子サブビーム4A,4Bを試料8の表面上でこれに沿ってラスタ状態で動かすために用いられる。オプションとしての種々の具体化例によれば、走査のための偏向コイルをレンズの前で光軸の方向にコラムの長さの約10%というかなりの距離のところに位置決めするのが良い。更に別の変形例として、二重ステージ型スキャン偏向器を有利に利用することができる。偏向器がレンズの近く又はレンズ内に位置する場合、シングルステージ型偏向器を用いても良い。更に別の改造例によれば、走査のための偏向器は、磁気式又は静電式であるのが良い。
【0027】
荷電粒子ビームは、走査コイル12の後、対物レンズ10に入り、この対物レンズは、荷電粒子ビーム4A,4Bを試料8上に集束させる。対物レンズ10は、荷電粒子ビームを集束させるだけでなく、荷電粒子ビームを回転させる。しかしながら、この作用効果は図示されていない。というのは、2次元の作図で図示することが困難であると共に当業者であればこの追加の作用効果について十分知っているからである。偏向器6と対物レンズ10の作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子サブビーム4A,4Bの各々にそれぞれ対応した多数のスポット(粒子源2の像)が試料8上に作られる。
【0028】
ビーム4A,4Bの粒子が試料8の表面に当たると、これら粒子は、試料の原子の核及び電子と一連の複雑な相互作用を起こす。相互作用により、種々の二次生成物、例えば異なるエネルギーの電子、X線、熱及び光が生じる。これら二次生成物の多くは、試料の像を作り、試料を検査し、試料を修整すると共に/或いは試料から追加のデータを収集するために用いられる。試料の吟味又は像生成にとって非常に重要な二次生成物は、試料8から比較的低いエネルギー(0.5〜50eV)で種々の角度をなして出る二次電子である。二次電子は、対物レンズ10中に引き込まれて検出器9に達し、次に測定される。それにより、対物レンズ10のパラメータは、試料から来た二次電子及び/又は後方散乱粒子が検出器9に向かって加速されると共に/或いは検出器9に差し向けられるよう選択される。したがって、試料上の各スポットにより、対応の信号が検出器上に生じる。セグメント化検出器の場合、検出器9のセグメントは、各サブビームが基本的に1つのセグメントに対応するよう選択されるのが良い。
【0029】
試料全体にわたって荷電粒子サブビーム4A,4Bを走査し、検出器9の出力を表示/記録することにより、試料8の表面の多数の独立した像を形成することができる。各像は、試料の表面の異なる部分についての情報を含む。したがって、データ収集の速度は、従来型シングルビームの場合と比較して2倍になる。試料8は、ステージ7(試料支持体)上に支持され、このステージは、荷電粒子サブビームが検査されるべき試料上の標的領域に達することができるようにするためにあらゆる方向に水平に動くことができる。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、システムの性能を向上させるため、
図1A及び
図1Bを参照して説明する実施形態は、磁気レンズ10Aと静電レンズ10Bの組み合わせである対物レンズ10を有するのが良い。したがって、対物レンズ10は、複合磁気‐静電レンズである。代表的には、複合磁気‐静電レンズ10の静電部分は、静電リターディングレンズ10Bである。かかる複合磁気‐静電レンズ10を用いることにより、低加速エネルギー、例えばSEMの場合、数百電子ボルトで優れた分解能が得られる。かかる低加速エネルギーは、放射線に敏感な試料の荷電及び/又は損傷を回避するうえで特に最新式の半導体業界において望ましい。しかしながら、本発明の利点は、たった1つの磁気レンズ又はたった1つの静電レンズが用いられる場合であっても達成される。
【0031】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、ロッド又はワイヤ6A及びアパーチュアプレート5は、一マクロシステムテクノロジー要素として製造可能である。それにより、アパーチュアを基板にエッチングすることができ、ワイヤを基板上に被着させることができ、オプションとして、所望の形状にエッチングすることができる。さらに、マイクロ電子技術を利用すると、電荷をワイヤに与える配線を提供することができる。
【0032】
図2及び
図3は、
図1A及び
図1Bに示されている複合磁気‐静電レンズ10及び試料8の拡大図である。短い焦点距離を達成するため、励振コイルを通る電流により生じる磁束は、磁極片を通って導かれ、磁気レンズの光軸に沿って狭い領域に集中される。磁界は、光軸に関して回転対称であり、上側磁極片と下側磁極片との間の磁極隙間内でその最大値に達する。磁気レンズ10Aに加えて、
図1A〜
図3に示されている実施形態は、磁気レンズ10Aの近くに位置した静電リターディングレンズを有する。静電リターディングレンズ10Bは、互いに異なる電位に保持された2つの電極を有する。図示の実施形態では、これら2つの電極のうちの一方は、光軸に沿って磁気レンズ10A内に配置された円筒形ビーム管14によって形成されている。静電リターディングレンズ10Bの第2の電極は、磁気レンズ10Aの下に設けられた金属製のカップである。このシステムの動作に当たり、第1の電極は、通常、高い正の電位、例えば8kVに保持され、第2の電極は、これよりも低い正の電位、例えば3kVに保持され、その結果、電子は、対応の静電場(フィールド)内で減速されて第1のエネルギーからこれよりも低い第2のエネルギーの状態になる。
代表的な実施形態によれば、第2のエネルギーは、5kV以下であっても良く、3kV以下であっても良く、それどころか1kV以下であっても良い。
【0033】
図2及び
図3に示されている実施例では、試料8は、アース電位に保持される。したがって、金属製カップと試料8との間には別の静電リターディングフィールドが生じる。しかしながら、試料の表面は、アースされる必要がない。試料の表面上の電位も又、電圧を試料に印加することにより調節できる。回路中の短絡を検出するために用いられる電位コントラストイメージングを得るために例えば電圧をウェーハに印加するのが良い。金属製カップの電位が試料の表面上の電位よりも高い限り、静電リターディングフィールドが作られる。さらに、金属製カップの電位が試料の表面上の電位よりも高い限り、二次電子(後方散乱粒子)が対物レンズ10に引き込まれて検出器9に達する。
【0034】
図5は、本明細書において説明する実施形態としてのコラムに用いることができるアパーチュアプレート5の平面図を概略的に示している。アパーチュアプレート5は、2つのアパーチュア5A,5Bを有する。アパーチュアプレート5は、帯電効果を回避するために導電性材料で作られている。アパーチュア5A,5Bのサイズは、所定の電流を得ることができるよう選択される。別のオプションとしての実施形態によれば、追加のアパーチュア、即ちアパーチュア開口部が設けられる場合がある。これらアパーチュア開口部は、
図6に示されているアパーチュア5A,5Bが汚染された場合にこれらアパーチュアに取って代わるためにアパーチュア5A,5Bと同一サイズを有するのが良い。交換は、例えば、アパーチュアプレートを回転させることによって実施できる。追加のアパーチュアは、追加の開口部が所望の荷電粒子ビーム経路内に位置するよう位置決めされた場合に別のビーム電流を発生させることができるよう異なるサイズを備えるのが良い。
【0035】
図4A〜
図4Cは、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な別の実施形態を示している。エミッタ2が荷電粒子ビーム4を放出する。
図4A〜
図4Cに示されているように、別々のサブビーム4A,4Bが既にアパーチュアプレートによって提供されるよう2つ又は3つ以上のアパーチュア5A,5Bを備えたアパーチュアプレートが提供されるのが良い。ワイヤ6A及び1対の静電プレート6Bを備えたバイプリズム6は、荷電粒子ビーム光学系(例えば、
図4A〜
図4Cの対物レンズ10を参照されたい)と組み合わさって一次電子ビーム4に影響を及ぼし、その結果、サブビーム4A,4Bが仮想源2′から出てきているように見えるようになる。ビームは、荷電粒子ビーム光学系によって試料8上に集束され、試料は、ステージ7の試料配置場所に置かれている。
【0036】
図4Aは、バイプリズム6の第1の又は最初の励振に対応した荷電粒子ビーム4のビーム経路を概略的に示している。それにより、例えば、電極6Bは、アース電位の状態にあり、ワイヤ6Bは、正の電位の状態にある。
図4Bは、
図4Aに示されている励振よりも高いバイプリズムの励振が生じている別の状況を示している。それにより、仮想源2′の距離を増大させることができ、サブビーム4A,4Bの距離も又変化させることができる。変形例として、試料8に対する入射角は、バイプリズムの励振によって制御可能である。一例として、
図4Bは、試料8へのビーム4A,4Bの垂直入射(傾斜角=0°)の励振を示している。励振を
図4Cに示されているように一段と大きくした場合、仮想源2′の距離が一段と長くなり、傾斜角は、
図4Aに示されている傾斜角と比較して逆の符号を持つ。それにより、例えば、電極6Bは、アース電位状態にあり、ワイヤ6Bは、正の電位状態にある。
【0037】
種々の実施形態によれば、本明細書において説明しているツインビーム光学系を備えたコラムを動作させるのに、バイプリズム6の励振を変化させるのが良い。それにより、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、2つの仮想源相互間の距離を変化させることができる。例えば、2つの仮想源相互間の距離を連続して0μmから数マイクロメートル、例えば10μm又は50μm、それどころかミリメートル範囲、例えば1mm又は2mmの距離まで変化させることができる。それにより、変化は、かかる構成の励振及び幾何学的寸法に相当する。さらに他の実施形態によれば、試料に対する荷電粒子サブビームの傾斜角を変化させることができ、この場合、正、平行(0°)及び負の角度が可能である。それにより、角度及び仮想源の距離の変化分が同時に変わることになる。
【0038】
一般に、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置用のコラム又は荷電粒子ビーム装置は、アライメント偏向器、別のアパーチュア、例えばビームシェーピング又はビーム制限アパーチュア、スチグマトール又は球面若しくは色収差を補正する素子のような補正素子、スキャン偏向器及び/又は別のレンズ、例えばコンデンサーレンズを含むのが良い。
【0039】
バイプリズムの形態で本明細書において説明しているツインビーム光学系は、2つ又は3つ以上の荷電粒子ビームをもたらす他の荷電粒子ビーム光学系と比較して導入収差が少ない。したがって、2つのコラムを備えると共に複雑さが減少したコラムを提供することができる。しかしながら、エミッタにより放出される1つの荷電粒子ビームが2つになることに照らして、第1のサブビーム及び第2のサブビームは、軸外し状態で、即ち、例えば対物レンズにより定められたシステムの光軸上には位置しない状態で又は傾動方式で進む。したがって、サブビームは、対物レンズに軸外し状態で且つ/或いは傾動状態で侵入することができる。この結果は、ビーム収差、例えば球面収差又は色収差が生じることがある。
【0040】
上述したように、用途及び用途の所望の分解能に応じて、収差補正素子をコラム内に設けることができる。しかしながら、本明細書において説明する実施形態によれば、これらシステムに導入される収差を他の多数の荷電粒子ビーム装置と比較して容易に補正することができる。したがって、より簡単な補正素子をコラム中に設けることができる。
【0041】
これ又互いに組み合わせて提供できる種々の実施形態によれば、静電及び/又は磁気オクタポール(八極子)を球面収差の補正のために使用でき、組み合わせ型静電磁気クワドロポール(四極子)素子を色収差の補正のために使用できる。
【0042】
一例として、
図6は、組み合わせ型静電磁気クワドロポール素子71が
図7において対物レンズ10の前にビーム方向に位置決めされている点を除き、
図1Bに示されているコラムとほぼ同じコラム1を示している。それにより、静電クワドロポールを生じさせる二対の静電プレート(
図7の素子72)及び磁気クワドロポールを生じさせる4つの磁気素子(
図7の素子73)が補正のために設けられている。それにより、磁気クワドロポールを
図7に示すように本質的に45°だけ回転させる。
【0043】
もう1つの例として、
図8Aは、これ又
図1Bに示されているコラムとほぼ同じコラム1を示しており、異なる点は、システム中の球面収差の補正のための磁気オクタポール82がバイプリズム型ツインビーム光学系を有することである。8つの磁気素子73を備えた磁気オクタポールが、例えば
図8Bに示されている。
【0044】
これら磁気素子は、主として一方向におけるビーム補正にとって且つバイプリズムのようなビーム分離装置によって導入される追加の収差がゼロであり又はほんの僅かである場合に有効である。さらに別の変形改造例又は追加の改造例によれば、
図7及び
図8に示されている補正素子は両方共、コラム内に設けられるのが良く又は補正フィールドが重ね合わされる組み合わせ補正素子として提供されるのが良い。磁気素子は、対物レンズ中に、対物レンズの近くに、又はコラム内の更に上流側の位置で、例えば対物レンズとバイプリズムとの間に設けられるのが良い。
【0045】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、信号検出のため、二次及び/又は後方散乱粒子を検出ユニットにより検出する。それにより、典型的には、検出ユニットは、少なくとも2つの検出器及び/又は少なくとも2つのセグメントを備えた検出器を含む。したがって、一次荷電粒子ビームの2つのサブビームにより生じる信号を別個独立に検出することができる。
【0046】
一具体化例によれば、2つのエバーハルト・トーンリー(Everhart Thornely)型検出器90A,90Bが設けられるのが良い。それにより、グリッド94A,94Bは、電子が検出器90A,90Bに向かって加速されるよう正の電位(二次及び/又は後方散乱電子の検出の場合)に基づくのが良い。代表的には、グリッド94A,94Bには、導体93A/93Bを介してコネクタ92A/92Bによって所望の電圧が印加されるのが良い。代表的な具体化例によれば、これらグリッドは、試料8の電位よりも10〜500V高い電位に付勢される。さらに、更に別の変形改造例によれば、これらグリッドは、スペクトロメータとして用いられるのが良い。それにより、グリッドは、検出されるべきではない単一荷電粒子の一部分について電位障壁となる電位まで付勢される。検出されるべき単一荷電粒子は、電位障壁を通過するのに十分なエネルギーを有し、検出器90A/90Bにより検出可能であり、これら検出器は、グリッドを通過した荷電粒子を検出器の検出面に向かって加速するよう高い電位に設定されている。
【0047】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、クワドロポール型検出器が
図10に示されているようにコラム内に設けられるのが良く又は一方法で使用可能である。それにより、少なくとも2つの検出器、例えば4つの検出器を備えた多検出器組立体を用いることができ、この場合、クワドロポールフィールド(この場合、フィールドは、「電界」又は「磁界」の場合がある)、例えばクワドロポール磁界が提供される。
図10に示されている実施例では、クワドロポール磁界は、45°だけ光軸に対して回転し、図示されていない。かかる検出構成の実施例は、2008年10月8日に出願された同時係属中の欧州特許出願第08166151号明細書(発明の名称:Charged particle detection apparatus and detection method)に記載されており、この欧州特許出願を参照により引用し、この出願が本発明の開示内容と不一致ではない程度までその記載内容を本明細書の一部とする。具体的に言えば、この欧州特許出願の
図4を参照した当該明細書の13頁28行から17頁16行までを参照されたい。それにより、
図10に示されている実施形態の場合、代表的には、2つの検出器だけが同時に動作状態にある。
【0048】
例えば、かかる検出装置は、4つの検出器及びクワドロポール電界及びクワドロポール磁界を発生させる分離フィールド発生装置を有するのが良い。分離フィールド発生装置は、4つの電極、即ち、
図10のグリッド94A,94B,94Cを有する。この場合、2つの電極、例えばグリッドは、正の電圧U1により付勢されるのが良く、2つの電極、例えばグリッドは、負の電圧−U1により付勢されるのが良い。分離フィールド発生装置は、磁気クワドロポール発生装置を更に有するのが良く、この磁気クワドロポール発生装置は、2つのS極及び2つのN極を有する。これら磁極は、例えば、コイル及びそれぞれの磁極片により形成されるのが良い。かかるクワドロポール構成では、光軸は、実質的にフィールドフリー(field-free)である。光軸に沿って進む一次ビームは、フィールドによっては全く影響を受けない。
【0049】
実施形態によれば、負に帯電した粒子、例えば負に帯電した二次粒子、例えば二次電子は、正に帯電した粒子、例えば正に帯電した二次粒子、例えば二次イオンから分離される。
【0050】
図10を参照して説明する実施形態によれば、2つ又は3つ以上の検出器を用いるのが良い。例えば、4つの検出器90A/Bが用いられる場合、クワドロポール構成により、2つの対をなす検出器各々相互間の切り換えが可能である。それにより、2つの検出器は、同時に動作状態になることができる。二対の検出器は、例えば、二対の互いに異なる形式の検出器を利用することができるよう大電流動作モード及び小電流動作モードに対応するのが良い。
【0051】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、バイプリズム光学系を備えたコラムが代替的に又は追加的に以下の検出ユニットを備えるのが良い。実施例が
図11及び
図12に示されている。荷電粒子ビーム装置用のコラム1は、荷電粒子のビーム4を放出する荷電粒子源2を有している。電子ビーム装置では、電子源、例えばタングステン‐ヘアピンガン、ランタン‐六ホウ化物ガン、電界放出ガン等を用いることができる。しかしながら、本発明は、電子源には限定されず、本発明は、あらゆる種類の荷電粒子源と共に利用できる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、エミッタは、熱陰極、熱(サーマル)電界放出陰極、冷(コールド)電界放出陰極、光電陰極、ナノチューブ、例えばカーボンナノチューブ、ガス電界イオン源、液体金属イオン源等であるのが良い。荷電粒子は、荷電粒子源2に供給される加速電圧によって加速される。
【0052】
荷電粒子ビーム4は、荷電粒子源2を出た後、多数の、代表的には2つのアパーチュア5A,5Bを備えたアパーチュアプレート5を通り、これらアパーチュアは、例えば、アパーチュアプレート5の軸線と同心状に位置決めされている。多数の荷電粒子ビーム、代表的には2つの荷電粒子ビーム4A,4Bがアパーチュアプレート5を通過することにより作られる。さらに、本明細書において説明する実施形態によれば、バイプリズム素子6が設けられている。代表的には、バイプリズムは、1対の静電プレート6B相互間に配置されたワイヤ6A又はロッド、例えば細いワイヤを含む。
【0053】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、ワイヤ6Aは、静電プレート6B相互間の中央に設けられ、このワイヤは、一方向に(
図1Bの平面に垂直に)実質的に円筒状に延びる。さらに、ワイヤの直径は、約1μm〜2mmであるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、ワイヤは又、正方形又は長方形の断面を有する。かかる場合、上述の直径の値は、同様に、断面の最大寸法に適用可能である。
【0054】
例えば、電子ビームについて2つの仮想源(
図1Aの2′)を作る場合、1対の電極6Bに対するワイヤ6Aの正の電位(正電荷)が利用されるべきである。荷電粒子ビームは、バイプリズム素子6を通ることにより、2つのサブビーム4A,4Bについて2つの仮想源2′が作られるよう影響を受ける。したがって、荷電粒子ビームは、2つのサブビーム4A,4Bを有し、これらサブビームは、互いに異なる源によって放出されているように見える。バイプリズム素子6と荷電粒子ビーム光学系、例えば対物レンズ10の作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子ビーム4A,4Bの各々にそれぞれ対応した2つのスポット(粒子源2の像)が試料8上に作られる。
【0055】
走査コイル12が設けられ、これら走査コイル12は、荷電粒子サブビーム4A,4Bを試料8の表面上でこれに沿ってラスタ状態で動かすために用いられる。荷電粒子ビームは、走査コイル12の後、対物レンズ10に入り、この対物レンズは、荷電粒子ビーム4A,4Bを試料8上に集束させる。対物レンズ10は、荷電粒子ビームを集束させるだけでなく、荷電粒子ビームを回転させる。しかしながら、この作用効果は図示されていない。というのは、2次元の作図で図示することが困難であると共に当業者であればこの追加の作用効果について十分知っているからである。偏向器6と対物レンズ10の作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子サブビーム4A,4Bの各々にそれぞれ対応した多数のスポット(粒子源2の像)が試料8上に作られる。
【0056】
ビーム4A,4Bの粒子が試料8の表面に当たると、これら粒子は、試料の原子の核及び電子と一連の複雑な相互作用を起こす。相互作用により、種々の二次生成物、例えば異なるエネルギーの電子、X線、熱及び光が生じる。これら二次生成物の多くは、試料の像を作り、試料を検査し、試料を修整すると共に/或いは試料から追加のデータを収集するために用いられる。試料の吟味又は像生成にとって非常に重要な二次生成物は、試料8から比較的低いエネルギー(0.5〜50eV)で種々の角度をなして出る二次電子である。
【0057】
試料全体にわたって荷電粒子サブビーム4A,4Bを走査し、検出器9の出力を表示/記録することにより、試料8の表面の多数の独立した像を形成することができる。各像は、試料の表面の異なる部分についての情報を含む。したがって、データ収集の速度は、従来型シングルビームの場合と比較して2倍になる。試料8は、ステージ7(試料支持体)上に支持され、このステージは、荷電粒子サブビームが検査されるべき試料上の標的領域に達することができるようにするためにあらゆる方向に水平に動くことができる。
【0058】
図11に示されているように、2つの検出器119A,119Bを備え又は対物レンズ10の下に2つのセグメントを備えた検出ユニットを提供することが可能である。それにより、一次荷電粒子ビームの各サブビームが検出ユニットを通過することができるよう検出器又はセグメントにはそれぞれ開口部120が設けられる。
図11の参照符号4sで示された二次及び/又は後方散乱粒子が試料8から放出されてそれぞれ検出器119A,119Bに当たり、これら検出器は、像を発生させ又は信号を検出するようになっており、各信号は、2つのサブビームの各々にそれぞれ対応する。
【0059】
高分解能用途及びシステム又は高電流密度を備えた用途及びシステムを得るため、代表的には、短い焦点距離及び少ない収差向きの対物レンズの使用を可能にするコラムが提供されるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、
図12に示されているように、二次及び/又は後方散乱粒子が対物レンズを通過する検出ユニットが設けられるのが良い。かかるシステム及び用途に関し、浸漬レンズが用いられるのが通例であり、かかる浸漬レンズは、一次荷電粒子ビームを対物レンズ内で且つ/或いは対物レンズと試料との間で減速する。これについては
図2及び
図3を参照して詳細に上述してある。また、一次電子の原則の結果として、二次及び/又は後方散乱電子の加速が生じる。全ての信号電子が試料から抽出され、かかる電子を
図12に示されているように対物レンズ内で又は対物レンズの上方で検出することができる。
【0060】
図12を参照すると、荷電粒子ビーム4A,4Bは次に、試料8の多数の像を作るために試料8から来た粒子を検出するために用いられる検出器129A,129B相互間を通る。検出器129A,129Bは、荷電粒子のビームに対応したセグメントの状態に分割された1つの検出器であっても良い。それにより、検出器の各セグメントは、検出器8から来た粒子を検出器の他の全てのセグメントとは独立して、検出することができる。さらに、荷電粒子のビームを通過させる開口部が検出器129A,129B相互間又は検出器に設けられる。
【0061】
二次電子は、対物レンズ10中に引き込まれて検出器9に達し、次に測定される。それにより、対物レンズ10のパラメータは、試料から来た二次電子及び/又は後方散乱粒子が検出器9に向かって加速されると共に/或いは検出器9に差し向けられるよう選択される。したがって、試料上の各スポットにより、検出器上に対応の信号が生じる。セグメント化検出器の場合、検出器9のセグメントは、各サブビームが基本的に1つのセグメントに対応するよう選択されるのが良い。
【0062】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、第1のビーム及び第2のビームを有する一次荷電粒子ビームに関し、それによる2つの検出器又はセグメント化検出器の典型的な使用により、有利には、一次荷電粒子ビームと二次(信号)荷電粒子の分離が行われる。それにより、信号荷電粒子用の検出器は、一次ビームに関するどのような制約とも無関係に構成できる。さらに、二次粒子の分離により、スペース上の制限が軽減されるよう検出ユニットの位置決めが可能である。
【0063】
種々の実施形態によれば、ビーム分離は、静電構成、磁気構成又は組み合わせ型静電磁気偏向構成により可能になる。幾つかの例は、ウィーナーフィルタ、E×Bフィルタ、2B若しくは4B偏向器又は無色ビーム分離素子であるのが良い。かかるビーム分離器は、ツインビーム光学系にも利用できる。というのは、一次荷電粒子ビームの2つのサブビームにより生じる二次及び/又は後方散乱粒子の2つの束が検出器空間中に画像化され、2つの別々の検出器又は検出器の2つの別々のセグメント上に検出可能である。
【0064】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な例示の一実施形態によれば、2B偏向構成がビーム分離器として用いられる。この実施例は、一次電子ビーム並びに二次及び/又は後方散乱電子の検出のために提供されている。例えば、一次イオンビームが用いられ、二次及び/又は後方散乱電子が検出される場合、同様なシステムが二段静電偏向組立体を備えるのが良い。
図13に作図し易いようにするためにのみ1つのコイルで示されている第1の対をなす偏向コイル132は、サブビーム4A,4Bを含む一次ビームをエミッタ2から一方向に偏向する。一例として、これは、バイプリズム6の後で行われるのが良い。
図13に作図し易いようにするためにのみ1つのコイルで示されている第2の対をなす偏向コイル134は、対物レンズ10により定められた光軸に実質的に沿って進むようにするためにビーム4A,4Bを偏向し、即ち、向け直す。二次及び/又は後方散乱電子が第2の磁気偏向ステージ134を通って検出器139A,139Bの途中まで逆方向に進むという事実に照らして、二次及び/又は後方散乱粒子の偏向方向は、一次電子と信号電子が分離されるようなものである。検出器139A,139Bは、一次ビームの経路の外側に位置したコラム領域内に位置決めされるのが良い。したがって、検出器に開口部を設けることは不用であり、例えば、引きつけのための正の電位は、一次電子に対する影響がゼロであり又は減少する。
【0065】
図14を参照してさらに別の例示の実施形態を説明することができる。この場合、ビーム分離は、無色ビーム分離器142によって提供される。無色ビーム分離器は、E×B偏向器を備えるのが良く、このE×B偏向器については、2009年12月11日に出願された欧州特許出願第09178967.7号明細書(発明の名称:Achromatic beam separator with reduced electron collision)及び2009年10月15日に出願された欧州特許出願第09173111.7号明細書(発明の名称:Achromatic beam deflector, achromatic beam separator, charged particle device, method of operating )に詳細に説明されており、この2つの欧州特許出願を参照により引用し、これらの出願が本発明の開示内容と不一致ではない程度までこれらの記載内容を本明細書の一部とする。それにより、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態によれば、一次荷電粒子ビームを偏向すると共に光軸上の一次荷電粒子ビームを提供する無色ビーム偏向器装置が設けられる。ビーム分離器は、一次荷電粒子ビーム入口、光軸を含む一次荷電粒子ビーム出口、磁界を生じさせるようになった磁気偏向素子及び磁界とオーバラップした電界を生じさせるようになった静電偏向素子を有し、静電偏向素子及び磁気偏向素子から選択された少なくとも1つの素子がオクタポールの影響を補償するよう位置決めされると共に/或いは位置決め可能である。代表的には、偏向軸線は、磁気的力が電気的力の2倍に等しい条件が満足される状況下において電子の速度とは無関係である。本明細書において説明する幾つかの実施形態では、無色ビーム偏向器又は無色ビーム分離器を少なくとも以下の特徴のうちの1つによって説明することができる。一実施形態によれば、20〜100アンペア回数(A回数という)、例えば50A回数がコラム電圧の増大又は偏向角度の増大用途であってもこれらについて使用可能である。さらに別の実施形態によれば、約10〜400コイル巻き数を使用することができる。さらに別の実施形態によれば、50〜500コイル巻き数を使用することができる。それにもかかわらず、これよりも多いコイル巻き数、例えば最高数百回のコイル巻き数を提供することが可能な場合がある。他の重要なパラメータは、例えば、コイルの幾何学的形状(鉄心が存在している場合)、偏向器又は分離器内のビームエネルギー又は偏向角度である。
【0066】
さらに、
図14に示されているように、更に別のバイプリズム60が提供される。バイプリズム60は、1対の電極60B及び1対の静電プレート60B相互間に配置されたワイヤ60A又はロッド、例えば細いワイヤを有する。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、ワイヤは、静電プレート60B相互間の中央に設けられ、このワイヤは、一方向(
図14の平面に垂直な方向)に実質的に円筒状に延びる。さらに、ワイヤの直径は、約1μm〜2mmであるのが良い。バイプリズム60は、試料上の2つのスポットに対応した信号電子の束のビーム分離度を増大させる。したがって、検出器139A,139Bを含む検出ユニットに関するスペース上の制約を一段と軽減することができる。
【0067】
さらに別の実施形態を生じさせるために
図15A及び
図15Bの以下の教示の結果として得られる別の実施形態について以下に説明する。
図15Aは、1本の一次荷電粒子ビームを放出するエミッタ2を示している。オプションとしての特徴として、2つの別々のサブビームを生じさせるためにアパーチュア5A,5Bを備えたアパーチュアプレート5を用いるのが良い。一方向(
図15Aの平面に垂直な方向)に実質的に円筒状に延びるワイヤ156A又はロッド、例えば細いワイヤによって提供される。
【0068】
図15Aに示されているように、バイプリズムは、必ずしも、1対の電極を備える必要がない場合があり、この場合、ワイヤは、電極相互間に設けられる。特にワイヤの近くに位置するバイプリズムのフィールドは、ワイヤそれ自体によって定められる。これは、本明細書において説明する他の実施形態にも当て嵌まり、これら実施形態は、例えば、静電バイプリズムに関する。したがって、用途及び一次ビームの幾何学的形状に応じて、1対のプレートの影響を無視できる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、たとえバイプリズムの静電プレートの影響が同等に小さいとしても、バイプリズムのフィールドの一層の改善は、平らなプレート、平行な平べったいプレート、例えばワイヤと同心の円筒形プレート及び湾曲したプレートから成る群から選択された形状のプレートを提供することによって実現可能である。
【0069】
図15Bは、ワイヤ156Aの延長部を示しており、この図は、ワイヤ中の電流IBPを更に示している。ワイヤ中の電流は、磁気プリズムが形成されるよう磁界を誘発する。それにより、
図1Aを参照して説明した実施形態と同様、エミッタの位置2は、2つの仮想エミッタ位置22′に分離される。荷電粒子ビームは、磁気プリズム素子を通過することにより、2つの仮想源2′が作られるよう影響を受ける。したがって、荷電粒子ビームは、互いに異なる源によって放出されたように見える2つのサブビームを有する。磁気バイプリズム素子と荷電粒子ビーム光学系、例えば対物レンズの作用の組み合わせにより、各々が荷電粒子ビームの各々にそれぞれ対応した2つのスポット(粒子源2の像)が試料上に作られる。それにより、ビームの分離は、
図15Aの紙面に本質的に垂直な平面内で生じる。したがって、
図1A〜
図4C及び
図6〜
図14を参照して説明した全ての観点は、
図15A及び
図15Bに示されているバイプリズムに同様に当て嵌まり、それにより、ビーム分離の平面は、異なっており、素子の位置及び向きは、それに応じて合わせられなければならない。
【0070】
上述したことに照らして、複数の種々の実施形態について説明した。例えば、これら実施形態のうちの幾つかは、荷電粒子ビーム装置用のコラムを含み、コラムは、一次荷電粒子ビームを一次荷電粒子ビームの1つの源として放出する荷電粒子エミッタと、2つの仮想源が作られるように一次荷電粒子ビームに作用するようになったバイプリズムと、荷電粒子ビームを2つの仮想源の像に対応した試料の2つの位置に同時に集束させるようになった荷電粒子ビーム光学系とを有する。さらに別の実施形態は、互いに組み合わせ可能な以下のオプションとしての改造例のうちの1つ又は2つ以上を含むのが良く、コラムは、一次荷電粒子ビームの少なくとも2つのサブビームを作る少なくとも2つのアパーチュアを備えたアパーチュアプレートを更に有するのが良く、バイプリズムは、特に1対の静電プレート相互間に設けられると共に/或いは一方向に実質的に円筒状に延びる1本のワイヤ又はロッドを含むのが良く、コラムは、試料から来た二次粒子と、試料から来た後方散乱粒子と、試料から来た二次粒子及び後方散乱粒子とから成る群から選択された粒子を測定する少なくとも1つの検出器を更に有するのが良く、検出器は、エミッタと荷電粒子ビーム光学系の対物レンズとの間に位置決めされ、検出器は、荷電粒子ビームを通過させる少なくとも1つの開口部を有する。それにより、さらに別の変形又は追加改造例によれば、検出器は、2つ又は3つ以上のセグメントに細分されるのが良く、対物レンズは、二次粒子と、後方散乱粒子と、二次粒子及び後方散乱粒子とから成る群から選択された粒子を検出器に当てるよう案内するようになっているのが良く且つ/或いは対物レンズは、磁気レンズ及び静電レンズを含むのが良い。
【0071】
上述の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、以下の観点のうちの1つ又は2つ以上が具体化可能であり、即ち、第1の電極及び第1の電位を第1の電極に印加する手段が設けられ、第2の電極及び第2の電位を第2の電極に印加する手段が、荷電粒子ビーム光学系中に電界を発生させるよう設けられるのが良く、電界中の荷電粒子ビームは、第1のエネルギーからこれよりも低い第2のエネルギーに減速されるようになっており、バイプリズムと荷電粒子光学系の作用の組み合わせにより、ビームは、傾けられて所定の入射角で試料に当たるのが良く、コラムは、球面収差及び/又は色収差を補正するようになった少なくとも1つの収差補正ユニットを有するのが良く、代表的には、少なくとも1つの収差補正ユニットが、組み合わせ型静電磁気クワドロポール素子、磁気オクタポール又は静電オクタポールから成る群から選択される。
【0072】
さらに別の実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、本明細書において説明した観点、細部及び実施形態のうちの任意のものを備えたコラムを有するのが良い。代表的には、荷電粒子ビーム装置は、電子検査ツールであるのが良い。
【0073】
さらに別の実施形態によれば、荷電粒子ビームコラムを動作させる方法が提供される。この方法は、1つの源から荷電粒子ビームを放出するステップと、2つのサブビームをバイプリズムにより生じさせるステップと、2つのサブビームを試料の2つの位置に集束させて2つの仮想源の像を生じさせるようにするステップとを有する。代表的な改造例によれば、次の観点のうちの1つ又は2つ以上を更に利用することができ、即ち、バイプリズムは、第1の方向に延びるワイヤ又はロッドを有するのが良く、第1の方向に垂直な平面内に配置されるべき仮想源が作られる。
【0074】
上記の内容は本発明の実施形態に関するが、本発明の他の実施形態及び別の実施形態を本発明の基本的な範囲から逸脱することなく案出可能であり、本発明の範囲は、次の添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。